説明

スクリーン印刷用メッシュおよびこれを用いてなるスクリーン印刷用原板

【課題】 感光材のエッジ部分がシャープで元の画像フィルムを高精度に再現でき、極めて優れた解像性を得ることができる、スクリーン印刷用メッシュの提供。
【解決手段】 紫外線吸収剤と染料を付与させた黒色の合成繊維からなることを特徴とするスクリーン印刷用メッシュ、およびこのスクリーン印刷用メッシュと感光材層からなることを特徴とする、スクリーン印刷用原板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷用メッシュに関するものである。さらに詳細には、本発明は、特に解像性が改良されたスクリーン印刷用メッシュおよびこれを用いてなるスクリーン印刷用原板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年プリント回路、IC回路あるいはプラズマディスプレイ等の各種ディスプレイ装置等の電子部品基板の印刷において、その製板法の簡便さからスクリーン印刷が多用されている。従来、上記スクリーン印刷におけるスクリーン版としては、ポリエステル、ナイロン、ポリアリレート等の合成繊維製の紗で構成された印刷用メッシュの片面に、例えば1〜200μm程度の感光性樹脂膜を形成し、この表面に画像フィルムを重ねて紫外線照射によって樹脂膜を感光した後現像を行うことによって、適度な可撓性を有する印刷用メッシュ上に、樹脂膜による所望パターンを形成して構成したスクリーン版を使用していた。合成繊維から形成されたスクリーン印刷用メッシュは、光の透過性に優れているのでスクリーン印刷版の裏面(スキージ面)の感光材の硬化性が良い事、比較的安価である事などから、従来から広く採用されている。しかしながら、これまでの合成繊維は光が乱反射しやすいことから、感光材を感光させる際にも光の乱反射が生じ、硬化させる必要のない領域の感光材も硬化させてしまう。したがってこのスクリーンを使用して印刷した場合、硬化した感光材のエッジ部分にムラができ、元の画像フィルムを高精度に再現できなかった。つまり、合成繊維のスクリーン紗は解像性に問題があった。さらに、乱反射の影響を少なくするため露光時間を短時間にする措置もとられていたが、この場合感光材の硬化が不十分となり、耐刷性が不十分であるという問題点もあった。
【0003】
実際にスクリーン印刷用刷版に使用される一般的な光源の波長は300〜450nm付近であること、特に375nm、420nm付近の発光が強いことがわかっている。またこれらはスクリーン印刷版に使用される感光材の感光波長領域でもある。
【0004】
そこで、これらの問題を解決する為に、合成繊維を黄色に着色したスクリーンが使われていたが、その吸収波長の特性上400〜450nm付近の反射を抑えるものの、400nm未満の反射防止には十分な防止効果が得られない。その欠点を補うために、黄色のスクリーンにさらに紫外線吸収剤を付与し、280〜450nmの反射を抑えるものも使用されているが、このような特性のスクリーンでも不十分であることがわかってきた。この原因は、近年明らかになってきた波長変換作用によるものであり、元の波長以外の光が発生し、感光に影響する。つまり、紫外領域から可視光領域全ての波長の反射を抑制する特性が必要になってくる。
【0005】
特許文献1には、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維を黒色に着色したスクリーン印刷用メッシュが記載されている。しかしながら、合成繊維には、200〜400nmの波長を反射する特有の性質があり、黒色であってもこれを完全抑制するまでには至っていなかった。
【0006】
他方で、顔料を用いて着色しているスクリーンも存在する。一般的に水や油に溶解しない着色剤を顔料と定義しているが、顔料を用いて着色した場合、光の透過を完全に抑えてしまうので、これを用いたスクリーンで感光した場合、スクリーン印刷版の裏面(スキージ面)の感光材が硬化せず、かえって性能が低下する原因となっていた。
【0007】
特許文献2には、着色のしやすさ、着色色素の耐刷性、および、強度や寸法が維持できることから、芯部がポリエステル、鞘部がポリアミドである複合モノフィラメントが提案されている。しかしながら、複合フィラメントは、大幅なコストアップが見込まれるし、強度や寸法を保つために存在する芯部のポリエステルが細くなった場合、実際に充分な強度や寸法を維持できない。また強度や寸法を維持するためにポリエステルの芯部を太くした場合、鞘部のポリアミドが相対して細くなる。ポリアミドに紫外線吸収剤や顔料、染料を付与するとしているが、細い鞘部にこれらを付与したとしても、求める性能は発揮できない。
【0008】
また、鞘部のポリアミドに紫外線吸収剤や顔料、染料を付与する場合、単なる混入や原液着色なる簡易な手法が示されているが、これでは、高負荷のかかる印刷原版工程や印刷そのものに耐え切れない。例えば紫外線吸収剤は、100℃程度の温度で昇華してしまう性質があるため、混入や原液着色は困難である。低温で顔料、染料を付与しても、通常印刷分野で使用する摩擦や温度には耐えがたい。
【特許文献1】特開平10-119447号公報
【特許文献2】特許第2603481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
合成繊維から形成されたスクリーン印刷用メッシュを使用したスクリーン版の解像度を向上させるため、紫外領域から可視光領域全て、つまり200〜760nmにおいて、特に光源の発光波長である375nm付近と420nm付近、および可視光の長波長領域の700nm付近において光反射および乱反射を抑え、耐久性も現状の合成繊維と同レベルにある必要がある。これにより解像度が向上するだけでなく、必要充分な時間での露光が可能となり、感光材が充分に硬化し、耐刷性も向上する。また、スキージ面の硬化のため、必要充分な光透過性も維持している必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためのものである。
従って、本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、紫外線吸収剤と染料を付与させた黒色の合成繊維からなること、を特徴とするものである。
【0011】
このような本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、好ましい態様として、合成繊維が、ポリエステル、ポリアリレートから選択された少なくとも1種であるもの、を含有する。
【0012】
このような本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、好ましい態様として、合成繊維がモノフィラメントであるもの、を含有する。
【0013】
このような本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、好ましい態様として、波長300〜380nmの紫外線を吸収する紫外線吸収剤、を含有する。
【0014】
このような本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、さらに好ましい態様として、紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、クロロベンゾトリアゾール系誘導体、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、ヒドラジン系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選択された少なくとも1種であるもの、を含有する。
【0015】
このような本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、紫外線吸収剤と染料を合成繊維に吸尽させ強固に付着させるため、紫外線吸収剤と染料を合成繊維に付与する際100℃以上の温度で処理することを特徴とする。
【0016】
このような本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、好ましい態様として、スクリーン印刷用メッシュを16枚重ねた状態において、スクリーン印刷用刷版に使用される一般的な感光材の主たる吸収波長の375nmの反射率が、紫外線吸収剤および染料を付与させていない未加工のスクリーン印刷用メッシュに比べて、30%以下、好ましくは20%以下であるもの、を含有する。
【0017】
このような本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、好ましい態様として、スクリーン印刷用メッシュを16枚重ねた状態において、スクリーン印刷用刷版に使用される一般的な光源の主たる波長420nm付近の反射率が、紫外線吸収剤および染料を付与させていない未加工のスクリーン印刷用メッシュに比べて、20%以下、好ましくは10%以下であるもの、を含有する。
【0018】
このような本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、好ましい態様として、スクリーン印刷用メッシュを16枚重ねた状態において、スクリーン印刷用刷版に使用される一般的な光源の主たる波長700nm付近の反射率が、紫外線吸収剤および染料を付与させていない未加工のスクリーン印刷用メッシュに比べて、40%以下、好ましくは30%以下であるもの、を含有する。
【0019】
そして、本発明によるスクリーン印刷用原板は、前記のいずれかのスクリーン印刷用メッシュと感光材層とからなること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明による紫外線吸収剤と染料を付与した合成繊維からなるスクリーン印刷用メッシュは、従来の黒色スクリーンとは異なり、紫外領域の光も吸収し、且つ黒色という色相だけでなく、重要な波長の反射率を規定することにより有効な性能を発揮できる。即ち、200〜760nm、特に光源の発光波長である375nm付近と420nm付近、および可視光の長波長領域の700nm付近において光の反射を抑制するため、感光時の光の乱反射を防止できる。また、染料を使用していることから、必要充分な光透過性も維持しているため、スキージ面の硬化も従来の繊維と同レベルにあり優れている。
紫外線吸収剤と染料は、合成繊維内部に強固に吸尽されているため、耐久性もある。
【0021】
合成繊維はモノフィラメントであるので、低コスト、高強度、および加工性も良好である。さらに紫外線吸収剤と染料付与前に180℃以上の乾熱で熱処理しておくと、その後の工程で収縮することが無くなり、元の形状、密度を保った状態で最終印刷まで可能である。
【0022】
よって、このスクリーン印刷用メッシュと感光材層とからなる本発明によるスクリーン印刷用原板により現像した場合、硬化した感光材のエッジ部分がシャープで元の画像フィルムを高精度に再現でき、解像性が極めて優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<スクリーン印刷用メッシュ>
本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、紫外線吸収剤と染料を付与させた合成繊維からなることを特徴とするものである。ここで、「紫外線吸収剤と染料を付与」とは、紫外線吸収剤と染料を合成繊維分子の表面および内部に、吸尽または含浸させることをいうものである。紫外線吸収剤は一般的な紫外線吸収剤と同一ないし類似の方法によって、および染料についても一般的な染色と同一ないし類似の方法によって付与することができる。これらの方法により紫外線吸収剤と染料の両方を付与することができる。
【0024】
合成繊維
本発明によるスクリーン印刷用メッシュにおける合成繊維としては、従来から、この種のスクリーン印刷用メッシュとして用いられてきたものを使用することが出来る。本発明では、好ましくは、ポリエステル、ポリアリレートから選択された少なくとも1種である。ポリエステル繊維はコスト面、品質両面で好ましい。さらに、モノフィラメントであることが好ましく、複合フィラメントより、低コスト、高強度および加工性も良好である。紫外線吸収剤や染料も糸全域に吸尽できるので、表面にしか付与できない複合フィラメントに比べて、高性能である。
【0025】
合成樹脂繊維の繊維径およびスクリーン印刷用メッシュの織密度は任意である。例えば、繊維径は10〜500μm、特に20〜300μmであり、織密度は、10〜600メッシュ、特に80〜500メッシュ、が好ましい。
【0026】
紫外線吸収剤
本発明によるスクリーン印刷用メッシュにおける好ましい紫外線吸収剤は、波長200〜400nmに、好ましくは300〜380nmに吸収領域を有するものである。この波長領域は、スクリーン印刷版に使用される光源の波長であり、スクリーン印刷版に使用される感光材の感光波長領域でもある。
【0027】
なお、本発明の紫外線吸収剤は、上記波長領域内の紫外線および上記波長領域外の紫外線の両方を吸収するものであってもよい。
【0028】
そのような紫外線吸収剤の好ましい具体例としては、例えば、(イ)ベンゾトリアゾール系化合物、(ロ)クロロベンゾトリアゾール誘導体、(ハ)ベンゾフェノン系化合物、(ニ)ベンゾエート系化合物、(ホ)ヒドラジン系化合物、および(ヘ)トリアジン系化合物を例示することができる。これらの化合物は300〜380nmに極大吸収を持つ為、300〜380nmの光を効率よく吸収することができる。
【0029】
上記(イ)のベンゾトリアゾール系化合物としては、
2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-ドデシル-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3',5'-ビス-(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルベンジルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、
2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレン-ビス-[N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2-N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が例示できる。
【0030】
上記(ロ)のクロロベンゾトリアゾール誘導体としては、
2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどが例示できる。
【0031】
上記(ハ)のベンゾフェノン系化合物としては、
2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、
2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェノル)メタン、2,2'-ジヒドロキシ-4-ベンゾフェノン、2,3,4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-N,N-ジエチル-4'-カルボキシベンゾフェノンが例示できる。
【0032】
上記(ニ)のベンゾエート化合物としては、
フェニルサリチル酸エステル、4-t-ブチルサリチル酸エステル、4-t-オクチルフェニルサリチル酸エステルが、
上記(ホ)のヒドラジン系化合物としては、
N,N'-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、イソフタル酸ビス-2-フェノキシプロピオニルヒドラジド、1,1,1',1'-テトラメチル-4,4'-(メチレン-ジ-p-フェニレン)ジセミカルバジド、アルキルヒドラジン誘導体などが、
上記(ヘ)のトリアジン系化合物としてはヒドロキシフェニルトリアジンを例示できる。 本発明には吸収波長領域が200〜400nmである一般的な紫外線吸収剤で有れば使用することができ、ここに例示した限りではない。
【0033】
本発明では、上記(イ)〜(ヘ)として分類された同一の化合物群から選択された二種以上の化合物、および(または)上記(イ)〜(ヘ)として分類された異なる化合物群から選択された二種以上の化合物を、併用することが出来る。
【0034】
紫外線吸収剤の付与量は、スクリーン印刷用メッシュを構成する合成繊維の重量に対し、0.0001〜5重量%、特に0.001〜3重量%が好ましい。付与量が0.0001重量%未満である場合は、効果が不十分であり、一方5重量%超過の場合にはコスト面で不利である。
【0035】
染 料
本発明において染料としての限定はなく、アゾ系、アントラキノン系等の染料を挙げることができ、代表的な商品名を下記に示すが黒色に染色できる染料であればこれに限定されるものではない。
【0036】
CIBASET Black EL-B(Ciba SC), CIBASET Yellow 2GC(Ciba SC), CIBASET Red 2GNN(Ciba SC), CIBASET Blue F3R(Ciba SC), TERASIL Black BFA(Ciba SC), TERASIL Black MAW(Ciba SC), TERASIL Black SRL(Ciba SC), TERATOP Black RLA-02(Ciba SC), TERASIL Yellow 4G(Ciba SC), TERASIL Red R(Ciba SC), TERASIL Blue BGE-01(Ciba SC), Dianix Black S-R(Dystar), Dianix Black SE-G(Dystar), Dianix Black E-G(Dystar), Dianix Black K-B(Dystar), Dianix Black AM-B(Dystar), Dianix Black S-LF01(Dystar), Dianix Black HF-B(Dystar), Dianix Black AD-R(Dystar), Dianix Black KIT-FS(Dystar), Dianix Yellow S-6G(Dystar), Dianix Red S-2B(Dystar), Dianix Blue S-2G(Dystar), Dianix Orenge Plus(Dystar), Mikeron Polyester Black GNSF(Dystar), Mikeron Polyester Black RBSF(Dystar), Mikeron Polyester Black GE(Dystar), Mikeron Polyester Black GWB(Dystar), Mikeron Polyester Black RCS(Dystar), Mikeron Polyester Black PBSF(Dystar), Mikeron Polyester Black GCS(Dystar), Mikeron Polyester Yellow 5G(Dystar), Mikeron Polyester Red BSF(Dystar), Mikeron Polyester Blue 3RT(Dystar), Kayalon Polyester Black TN200(日本化薬), Kayalon Polyester Black BRN-SF200(日本化薬), Kayalon Polyester Black EX-SF200(日本化薬), Kayalon Polyester Black EX-SF300(日本化薬), Kayalon Polyester Black ECX300(日本化薬), Kayalon Polyester Yellow 4G-E(日本化薬), Kayalon Polyester Red BR-S(日本化薬), Kayalon Polyester Blue 2R-SF(日本化薬)
【0037】
染料の添加量は、スクリーン印刷用メッシュを構成する合成繊維の重量に対し、0.1〜30重量%、特に1〜20重量%が好ましい。付与量が0.1重量%未満である場合は、効果が不十分であり、一方30重量%超過の場合にはコスト面で不利である。
【0038】
本発明では、上記に記述した染料をはじめとして、あらゆる染料を単独で、または二種以上の染料を併用することが出来る。
【0039】
上記の紫外線吸収剤及び染料を付与させた本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、このメッシュを16枚重ねた状態において、紫外線吸収剤および染料を付与させていない未加工のスクリーン印刷用メッシュに比べて、波長375nmの紫外線の反射率が30%以下、好ましくは20%以下、波長420nmの光線の反射率が20%以下、好ましくは10%以下、波長700nmの紫外線の反射率が40%以下、好ましくは30%以下であることが望ましい。
【0040】
従って、紫外線吸収剤或いは染料の種類および(または)付与量は、前記の反射率が上記範囲内になるように選択または選定することが好ましい。
【0041】
紫外線吸収剤の付与
紫外線吸収剤の付与は、染色時に同時に行うのがコスト面、品質面で最も好ましい。紫外線吸収剤の水分散液を染料分散液に必要量添加した上で染色加工処理を行うことによりスクリーン紗に吸尽させる方法である。添加量は前述の性能との関係で適宜決定する。
【0042】
染色と同時処理がコスト面で有利であるが、染色と別々に処理しても性能面では問題ない。また紫外線吸収剤の分散液をスクリーン紗に付着させ熱処理する方法も可能である。
【0043】
紫外線吸収剤の付与前に、合成繊維を180℃以上の乾熱で熱処理しておくと、その後の工程で収縮することが無くなり、元の形状、密度を保った状態で最終の印刷まで使用できる。
【0044】
紫外線吸収剤の付着処理は紫外線吸収剤を溶解ないし分散させた溶解液または分散液中にスクリーン印刷用メッシュを浸漬することによって行うことが好ましい。紫外線吸収剤の付着処理は、1回または2回以上行うことが出来る。紫外線吸収剤の溶解液または分散液を調製する際の液(溶媒)としては、水が好適であるが、水系有機溶媒を併用することが出来る。
【0045】
加熱処理は、紫外線吸収剤の溶解液または分散液中(即ち、浴中)で行うこともでき、上記液外(即ち、浴外)で行うこともできるが、本発明では、前者の液中(浴中)で行うことが好ましい。その際の好ましい処理条件としては、合成繊維や紫外線吸収剤の種類によって異なるが、処理温度100〜160℃、特に110〜140℃で、処理時間5〜720分、特に20〜120分、の条件を挙げることができる。
【0046】
処理後の脱液処理、水洗処理その組み合わせは任意である。好ましい脱液処理としては、遠心脱水、絞り脱水(例えば加圧された2本のロール間でスクリーン紗を絞るマングル脱水)、気流脱水(例えば、吸引あるいは加圧気流の吹き出しによる脱水、真空脱水)、毛管力による吸水性を利用する毛管式脱水等を例示することができる。乾燥についても、熱風乾燥など通常の乾燥法で可能である。
【0047】
染料の付与
合成繊維の染色は染料による染色加工が耐久性、均一性等の点で好ましく公知公用の技術が適用できる。以下ポリエステルスクリーン紗を例に説明する。
【0048】
染料の付与前に、合成繊維を180℃以上の乾熱で熱処理しておくと、その後の工程で収縮することが無くなり、元の形状、密度を保った状態で最終の印刷まで使用できる。
【0049】
ポリエステルスクリーン紗の染色は公知公用の染色技術が適用でき、染料は特に制限が無く公知のアゾ系、アントラキノン系分散染料等が使用できる。また染料の種類と量は、黒色に染色でき且つ、375nm、420nm、700nmの各反射率を目標値以下に抑制可能な配合であれば特に制限はない。
【0050】
印刷用途のメッシュでは、目曲がり発生、シワ発生は好ましくない為拡布状で染色できるビーム機、ジッカー機等で染色する事が望ましい。
【0051】
加熱処理は、水に染料を分散させた分散液にスクリーン紗を浸漬し、密閉された装置内で高温高圧にて処理する事により、染料が繊維の分子の内部に浸透、注入される。一般には染色濃度、堅牢性より110〜140℃で処理するのが好ましい。
【0052】
一方染料分散液を付着させ乾燥した上で乾熱、または湿熱で処理し染着させるいわゆるサーモゾール法と呼ばれる方法も用いることができる。
【0053】
紫外線吸収剤の付着処理は、1回または2回以上行うことが出来る。紫外線吸収剤の溶解液または分散液を調製する際の液(溶媒)としては、水が好適であるが、水系有機溶媒を併用することが出来る。
【0054】
処理後の脱液処理、水洗処理その組み合わせは任意である。手法としては、前述の、紫外線吸収剤付与の際と同様である。
【0055】
<スクリーン印刷用原板>
本発明によるスクリーン印刷用原板は、前記の発明によるスクリーン印刷用メッシュと、感光材層とからなること、を特徴とするものである。
【0056】
感光材層
本発明では、従来からスクリーン印刷用原板に用いられてきた感光材を用いることができる。
感光材層の厚さは、特に限定はしないが、0.1〜1000μm、特に1〜200μm、が好ましい。
【0057】
本発明によるスクリーン印刷用原板は、好ましくは、前記のスクリーン印刷用メッシュに感光材層を形成し、これを感光させ、次いでこれを現像することによって得ることが出来る。この際の、感光材層の形成方法、この感光材層の感光方法、および現像処理の処理方法等は、従来からスクリーン印刷用原板に用いられてきたものと本質的に異ならない。 従って、本発明によるスクリーン印刷用原板は、前記の本発明によるスクリーン印刷用メッシュに、(1)紫外線硬化性樹脂を含有する水溶性樹脂を塗布、乾燥して、感光材層を形成し、(2)これに別途用意した原板用マスクを重ね合わせた後、(3)紫外線を照射して、この原板マスクの紫外線透過部における感光材層を硬化させることからなる感光処理に付し、(4)その後、紫外線硬化部分以外の未感光部分(即ち、未硬化部分)の感光材を水あるいはアルカリ水溶液にて除去することからなる現像処理を実施することによって、製造することができる。
【0058】
上記の本発明によるスクリーン印刷用メッシュおよびスクリーン印刷用原板は、感光時の紫外線の乱反射が有効に防止されたものであって、また、必要充分な光透過性も維持しているため、スキージ面の硬化も従来の繊維と同レベルにあり優れており、解像性を維持したまま十分な耐刷性を得るために長時間露光することが可能となる。
【0059】
〔発明の効果〕
本発明による紫外線吸収剤と染料を付与した合成繊維からなるスクリーン印刷用メッシュは、従来の黒色スクリーンとは異なり、紫外領域の光も吸収し、且つ黒色という色相だけでなく、重要な波長の反射率を規定することにより有効な性能を発揮できる。即ち、200〜760nm、特に光源の発光波長である375nm付近と420nm付近、および可視光の長波長領域の700nm付近において光の反射を抑制するため、感光時の光の乱反射を防止できる。また、染料を使用していることから、必要充分な光透過性も維持しているため、スキージ面の硬化も従来の繊維と同レベルにあり優れている。
紫外線吸収剤と染料は、合成繊維内部に強固に吸尽されているため、耐久性もある。
【0060】
合成繊維はモノフィラメントであるので、低コスト、高強度、および加工性も良好である。さらに紫外線吸収剤と染料付与前に180℃以上の乾熱で熱処理しておくと、その後の工程で収縮することが無くなり、元の形状、密度を保った状態で最終印刷まで可能である。
【0061】
よって、このスクリーン印刷用メッシュと感光材層とからなる本発明によるスクリーン印刷用原板により現像した場合、硬化した感光材のエッジ部分がシャープで元の画像フィルムを高精度に再現でき、解像性が極めて優れたものとなる。
【実施例】
【0062】
(合成繊維)
200℃30秒熱風加熱した#300ポリエステル紗を使用した。
【0063】
(薬剤)
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、Mikeron Polyester Black PBSF(Dystar)、DIANIX ORANGE PLUS (Dystar)を使用した。
【0064】
(処方)
表1に記した20処方で処理した。
【0065】
(処理方法)
紫外線吸収剤の付与は、染色時に同時に行った。即ち、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、Mikeron Polyester Black PBSF(Dystar)、DIANIX ORANGE PLUS (Dystar)を同時に添加し、その液中にスクリーン印刷用メッシュを浸漬し、130℃で2時間加熱処理を行った。
処理後の脱液処理は、加圧された2本のロール間でスクリーン紗を絞るマングル脱水により行い、180℃で30秒間熱風乾燥した。
【0066】
(反射率測定方法)
各スクリーン紗の375nm、420nm、700nmの反射率は、スクリーン印刷用メッシュを16枚重ねた状態において測定した。値は未処理スクリーン紗(比較例1)の反射率に対する相対値で標記した。
さらに、入射光と反射光の角度が30度になるような条件でも反射率を測定した。これは乱反射の指標となる。これも上記と同様に、375nm、420nm、700nmの波長を、スクリーン印刷用メッシュを16枚重ねた状態において測定し、値は未処理スクリーン紗(比較例1)の反射率を100%とし、それに対する相対値で標記した。
【0067】
(反射率測定結果)
Mikeron Polyester Black PBSF(Dystar)を添加したスクリーン紗は、全波長において、比較例1に比べて反射率が低下する傾向にあった。30度反射率も低下する傾向にあったが、375nmにおいては顕著な低下ではなく、紫外線領域の乱反射が存在するものと推測された。
これに紫外線吸収剤である2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンを加えると、反射率はさらに低下する傾向にあった。特に紫外領域の375nmにおける30度反射率は、半分以下に抑制されており、乱反射も抑えられているものと推測された(比較例2〜4に対し、実施例1〜3。)。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0068】
(解像度評価法)
上記で得られたスクリーン印刷用メッシュに、下記方法により製版評価を行った。すなわち、処理したスクリーン紗(300メッシュ、線径34μm)を通常通りに紗張りを行い、SBQ系直間法フィルムにより、膜厚15μmとしたものを、3Kwのメタルハライドランプに20秒ごとに露光時間を変化させて露光し、スプレー水にて現像を行った。現像後の版をルーペにて観察を行い、露光時間と解像性の評価を行った。解像性は現像後の細線の幅を測定することにより行った。目標細線幅は40μmである。その結果は表2に示される通りである。
【0069】
(結 果)
未処理のスクリーンは、露光時間が20秒でも細線幅が50μmと目標より太くなっており、精度の高い印刷は困難である。また、一般の黒染色、橙染色スクリーンは未処理よりは露光時間が長くとれるものの、通常の露光時間60秒で目標の40μmの細線を描こうとすると、比較例5のみが可能である。しかしながら、比較例5で使用する染料量が大量であるのでコストに影響を及ぼし、適正ではない。
これに紫外線吸収剤を添加した実施例結果を見ると、実施例1、2、3において通常の露光時間60秒で目標の40μmの細線が描け、この製造条件の場合コスト的にも問題ない。
【表5】

【0070】
(スキージ面の評価)
比較例1のスクリーンを用いたスクリーン原板、実施例3のスクリーンを用いたスクリーン原板、および同密度である300メッシュのステンレス紗を用いたスクリーン原板を用いた。通常通りに紗張りを行い、SBQ系直間法フィルムにより、膜厚15μmとしたものを、3Kwのメタルハライドランプで60秒露光した。そしてスキージ面(スクリーン版裏面)の電子顕微鏡写真を撮影し、目視で感光材の硬化の程度を観察した。
【0071】
(評価結果)
実施例3のスクリーンを用いたスクリーン原板は、比較例1のそれと同様にスキージ面(スクリーン版裏面)が硬化しており、必要充分な光透過性があることが確認できた。ステンレス紗を用いたスクリーン原板ではスキージ面の硬化性が悪かった。本発明品は、繊維特有の性能が、紫外線吸収剤および染料付与後も維持できていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】比較例1のスクリーンを用いたスクリーン原板の、スキージ面を示す電子顕微鏡写真。
【図2】実施例3のスクリーンを用いたスクリーン原板の、スキージ面を示す電子顕微鏡写真。
【図3】ステンレス紗を用いたスクリーン原板の、スキージ面を示す電子顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収剤と染料を付与させた黒色の合成繊維からなることを特徴とする、スクリーン印刷用メッシュ。
【請求項2】
合成繊維が、ポリエステル、ポリアリレートから選択された少なくとも1種である、請求項1に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項3】
合成繊維が、モノフィラメントである、請求項1または2に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項4】
紫外線吸収剤の吸収波長領域が300〜380nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項5】
紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、クロロベンゾトリアゾール系誘導体、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、ヒドラジン系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項6】
紫外線吸収剤と染料を合成繊維に付与する際100℃以上の温度で処理することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項7】
前記のスクリーン印刷用メッシュを16枚重ねた状態において、波長375nmの反射率が、紫外線吸収剤と染料を付与させていない未加工のスクリーン印刷用メッシュに比べて、30%以下、好ましくは20%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項8】
前記のスクリーン印刷用メッシュを16枚重ねた状態において、波長420nmの反射率が、紫外線吸収剤と染料を付与させていない未加工のスクリーン印刷用メッシュに比べて、20%以下、好ましくは10%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項9】
前記のスクリーン印刷用メッシュを16枚重ねた状態において、波長700nmの反射率が、紫外線吸収剤と染料を付与させていない未加工のスクリーン印刷用メッシュに比べて、40%以下、好ましくは30%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュと、感光材層からなることを特徴とする、スクリーン印刷用原板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−240011(P2006−240011A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57764(P2005−57764)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(390030373)株式会社ムラカミ (10)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】