説明

スクリーン紗

【課題】染色後、高モジュラス特性による繰り返し印刷に対する良好な寸法安定性及び印刷精度と、優れたハレーション防止性とを同時に実現できるスクリーン紗を提供する。
【解決手段】モノフィラメントの芯成分がポリエチレンナフタレート、鞘成分が、固有粘度が0.45〜0.60dL/gで、ニ官能性カルボン酸成分に対して下記式で表されるスルホン酸ホスホニウム塩を0.5〜2.5mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートであり、芯成分/鞘成分の直径比率が2/1〜8/1である。


[式中、Aは芳香族基、XおよびXは同一または異なるエステル形成官能基、nは正の整数、R、R、R、Rは水素原子、アルキル基、アリール基およびヒドロキシアルキル基より選ばれた同一または異なる基であって、R、R、R、Rの合計の分子量が60以上であるものを示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色性、寸法安定性、及び印刷精度に優れた、ポリエステルモノフィラメントからなるスクリーン紗に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーン印刷分野においては、高度な精密さ、即ち高強度・高弾性率が要求されており、ステンレススクリーン紗が広く使用されている。しかし、ステンレスモノフィラメントは高強度・高弾性率であり、吸湿や温度変化に対する寸法変化が極めて少ないものの、微小な歪でも降伏を起こし易く、印刷を繰り返す間に永久変形が起こり、使用不可となる。この問題を解決すべく、合成モノフィラメントからなるスクリーン紗が種々提案されており、例えば、熱可塑性ポリマーであるポリエチレンテレフタレートからなるモノフィラメントを用いたスクリーン紗が特許文献1〜3等に提案されている。しかし、これらに提案されているモノフィラメントは強度及び弾性率が低いため、高張力下での製織が困難かつ紗の成形工程にかけるテンションにより伸びてしまいハイメッシュのスクリーン紗を得ることは困難である。一方、高強度・高弾性率を目的として、ポリエチレンナフタレートからなるスクリーン紗が特許文献2等に提案されている。ポリエチレンナフタレートは、ポリエチレンテレフタレートと比較して、モノフィラメントの強度・弾性率は大きく向上する為、より高張力下におけるハイメッシュな製織が可能となるが、配向性が高い為毛羽やフィブリルが発生しやすく、製織時の糸切れが多発するという欠点がある。
【0003】
また、スクリーン紗は製織後表面に乳剤を塗布し、それを感光及び硬化させることによりパターンを写し取るという工程を経て印刷用に供される。この乳剤を感光及び硬化させる際に照射光のハレーションが発生すると印刷精度が低下する為、製織後染色してハレーションの発生を抑制している。しかしながら、配向性が高いポリエチレンナフタレートは染色性が悪い為、高精度プリント印刷に求められる乳剤感光及び硬化工程におけるハレーション防止効果を十分に付与することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−104795号公報
【特許文献2】特開昭62−215013号公報
【特許文献3】特開平2−127513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、染色後、高モジュラス特性による繰り返し印刷に対する良好な寸法安定性及び印刷精度と、優れたハレーション防止性とを同時に実現できるスクリーン紗を提供することにある。また、これに染色を施したスクリーン紗を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが検討した結果、上記目的は、芯鞘型複合横断面を有するモノフィラメントからなるスクリーン紗であって、該モノフィラメントの芯成分がポリエチレンナフタレート、鞘成分が、固有粘度が0.45〜0.60dL/gであり、ニ官能性カルボン酸成分に対して下記式で表されるスルホン酸ホスホニウム塩を0.5〜2.5mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートからなり、芯成分/鞘成分の直径比率が2/1〜8/1であることを特徴とするスクリーン紗により達成できることを見出した。
【0007】
【化1】

[式中、Aは芳香族基、XおよびXは同一または異なるエステル形成官能基、nは正の整数、R、R、R、Rは水素原子、アルキル基、アリール基およびヒドロキシアルキル基より選ばれた同一または異なる基であって、R、R、R、Rの合計の分子量が60以上であるものを示す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明のスクリーン紗は、芯鞘型複合横断面モノフィラメントは芯成分にポリエチレンナフタレートを用いていることにより、高モジュラス特性を有し、繰り返し印刷に対する寸法安定性及び印刷精度を有している。また、鞘成分には、スルホン酸ホスホニウム塩を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いることにより、100℃以下の常圧染色が可能となり、染色加工時の収縮を軽減し上記高モジュラス特性を保ったまま、染色によるハレーション効果を得ることができる。更に、鞘成分にベンゾオキサジン系の紫外線吸収剤を含有させることで、染色加工単独より大きなハレーション防止効果を得ることができる。このため、本発明のスクリーン紗、特にハイメッシュスクリーン紗において、精密なスクリーン印刷を長期間安定して行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のスクリーン紗は、芯鞘型複合横断面を有するモノフィラメントからなるスクリーン紗である。
本発明においては、該モノフィラメントが、芯成分がポリエチレンナフタレート、鞘成分が後述する要件を満たすスルホン酸ホスホニウム塩を共重合したポリチレンテレフタレートからなり、かつ後述する芯成分/鞘成分の直径比率を有していることが肝要である。以下、各要件について説明する。
【0010】
本発明においては、芯成分がポリエチレンナフタレートからなるため、高モジュラス特性を有し、繰り返し印刷に対する寸法安定性及び印刷精度に優れたスクリーン紗を得ることができる。
【0011】
一方、鞘成分は、固有粘度が0.45〜0.60dL/g、好ましくは0.50〜0.60dL/gであり、かつ、ニ官能性カルボン酸成分に対して下記式で表されるスルホン酸ホスホニウム塩を0.5〜2.5mol%、好ましくは1.0〜2.0mol%共重合したポリエチレンテレフタレートである必要がある。本発明者らは、鞘成分に、上記固有粘度を有し、かつ上記共重合量のスルホン酸ホスホニウム塩を共重合したポリチレンテレフタレートを用いることにより、スクリーン紗を100℃以下で常圧染色をすることが可能となり、染色加工でモノフィラメントが収縮してモジュラス特性が低下するのを抑制することができる。このため、高モジュラスであり、寸歩安定性及び印刷精度に優れたスクリーン紗が得られる。また、本発明のスクリーン紗は染色性に優れ、染色が施されたスクリーン紗は、紫外線反射率を低く抑え、かつ紫外線透過率を向上させることができるため、ハレーション防止効果も同時に、かつ容易に得ることが可能となる。更に、固有粘度を0.60dL/g以下とすることにより、製織時の筬による糸磨耗を軽減できるといったメリットも有している。
【0012】
【化2】

[式中、Aは芳香族基、XおよびXは同一または異なるエステル形成官能基、nは正の整数、R、R、R、Rは水素原子、アルキル基、アリール基およびヒドロキシアルキル基より選ばれた同一または異なる基であって、R、R、R、Rの合計の分子量が60以上であるものを示す。]
【0013】
したがって、固有粘度が0.60dL/gを越える場合、または、スルホン酸ホスホニウム塩の共重合量が0.5mol%未満の場合は、上記効果が十分得られない。一方、固有粘度が0.45dL/g未満の場合、または、スルホン酸ホスホニウム塩の共重合量が2.5mol%を越える場合は紡糸性が低下し、上記モノフィラメントを得るのが難しくなる。
【0014】
更に本発明においては、芯成分/鞘成分の直径比率が2/1〜8/1、好ましくは3/1〜8/1、より好ましくは5/1〜8/1とする必要がある。該直径比率において8/1より芯成分が多くなる場合には、紡糸における鞘部分の吐出量が非常に少なくなり、安定した吐出が難しくなり、繊維断面形成性が低下し、安定した製糸ができなくなる。一方、該直径比率において、2/1より芯成分が少なくなる場合は、スクリーン紗のモジュラス特性が低くなり、具体的には後述する10%伸長時応力が経方向緯方向共に200N/5cm以上という物性値を達成するのが困難となり、繰り返し印刷による寸法変化の抑制や、高い印刷精度の維持が難しくなる。また、上記の直径比率とすることで、望ましい染色性が得られ、目的とするハレーション防止性を達成できる。
【0015】
本発明は、前述した要件を同時に満足させることにより、以上に説明した効果が相まって、寸法安定性や印刷精度が良好であり、更にハレーション防止性にも優れたスクリーン紗を得ることができることを見出したものである。
【0016】
本発明に用いるモノフィラメントには、有機系紫外線吸収剤が含有されていることが好ましい。上記の含有する有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤が有効である。ベンゾオキサジン系の紫外線吸収剤としては、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−または2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6または1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも特に、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)の効果が顕著である。
【0017】
本発明では、これらの紫外線吸収剤を単独で用いても二種以上併用してもよい。鞘成分を形成するポリエチレンテレフタレート中の紫外線吸収剤含有量については、0.1〜1.0重量%の範囲内であることが好ましい。有機系紫外線吸収剤の含有量が0.1重量%では、剤の効果が十分に現れないという問題があり、逆に1.0重量%を超えると、製糸性が不良となるので好ましくない。
【0018】
本発明に用いるモノフィラメントの芯成分及び鞘成分の横断面形状は、上記の要件を満足できれば、円形、三角、四角、マルチローバル断面のいずれの形状であってもよく、芯成分は単芯、多芯のいずれでもよいが、製糸性の観点から芯成分と鞘成分が同心円形の単芯の芯鞘型複合断面となっているものが好ましい。
【0019】
また、上記モノフィラメントの繊度は、高強度、高モジュラスを実現しながら、ハイメッシュのスクリーン紗を得る観点から、好ましくは5〜30dtexであり、より好ましくは5〜20dtexである。
【0020】
本発明に用いるモノフィラメントは、公知の方法により製造することができるが、例えば、公知の芯鞘型複合紡糸口から、ポリエチレンナフタレートを芯成分、共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘成分として、前記芯成分/鞘成分の複合比で溶融吐出し、500〜1200m/分の速度で巻き取り、さらに巻き取った未延伸モノフィラメントを、予熱温度を80〜100℃、熱セット温度を160〜200℃として延伸することによって得ることができる。
【0021】
本発明のスクリーン紗は以上に説明したモノフィラメントからなるスクリーン紗であり、その経・緯密度としては、それぞれ150〜500メッシュ、好ましくは250〜400メッシュとすることができるが、特に250以上のハイメッシュスクリーン紗として、その効果を十分に発揮する。
本発明のスクリーン紗は、公知の方法で製織することができ、例えば、スルザー型織機を用いて製織するこができる。
【0022】
本発明のスクリーン紗は、染色を施すことによって、優れたハレーション効果を発揮する。染色後のスクリーン紗は、写真製版法(JIS Z8722)で280〜420nmにピークを有する紫外線領域の光に対する反射率(以下、紫外線反射率と称することがある)が、5%以下であることが望ましい。反射率が5%を超えると高精度印刷プリント分野において十分なハレーション防止効果が得られ難くなる。上記の紫外線反射率を達成する上では、スクリーン紗に紫外線の乱反射を防ぐ染色を施すことが有利であり、その色については黄色が望ましく、更にはL*a*b*表色系におけるカラーb*値が55〜75の範囲であることが望ましい。
【0023】
また、本発明のスクリーン紗については、写真製版法(JIS Z8722)で280〜420nmにピークを有する紫外線領域の光に対する透過率(以下、紫外線透過率と称することがある)が30%以上とすることが望ましい。透過率が30%を下回ると紫外線量が不足し乳剤が十分に硬化し難くなる。
【0024】
本発明のスクリーン紗の染色に用いる染料としては、アゾ系、アントラキノン系の黄色分散染料を挙げることができ、中でも特にアゾ系染料が望ましい。かかるアゾ系染料としては具体的には、Dianix Yellow AC-E、Dianix Yellow S-6G、Dianix Orange Plus、Mikeron Polyester Yellow 5G、Mikeron Polyester Yellow 5G(以上、ダイスタージャパン株式会社)、CIBASET Yellow 2GC、TERASIL Yellow 4G(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社)、Kayalon Polyester Yellow 4G-E(日本化薬株式会社)を挙げることができる。
【0025】
本発明のスクリーン紗においては、染色後においても10%伸長時応力が経方向緯方向共に200N/5cm以上であることが望ましい。これにより、繰り返し印刷による寸法安定性に優れ、高い印刷精度を実現することが可能となる。
【0026】
以上の紫外線反射率、紫外線吸収率、及び、10%伸長時応力は、前述したように、特定の共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘成分に配し、かつ、固有粘度や芯鞘成分の直径比率を満足させることにより容易に達成させることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例に記載の各物性は以下の方法で測定した。
(1)固有粘度
O−クロロフェノールを溶媒として温度35℃で常法により測定した。
(2)10%伸長時応力
JIS−L1017に準じて、テンシロン(オリエンティック社製)により、サンプル幅5cm、サンプル長20cm、伸張速度20cm/分として応力および伸度を測定し、サンプルが10%伸張したときの応力を10%伸長時応力とした。
(3)紫外線透過率及び紫外線反射率
JIS Z8722(色の測定方法―反射及び透過物体色)に準じて測定した。また、紫外線透過率及び紫外線反射率は、波長280〜420nm間で20nmごとに測定したの計測値の平均とした。
(4)b*値
マクベス分光光度計CE−3100(グレタグマクベス社製)を用いL*a*b*表色系を測定した。
【0028】
[実施例1]
固有粘度が0.62のポリエチレンナフタレートを芯成分、固有粘度が0.55で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を2.0mol%共重合し、及び3,1−ベンゾオキサジン−4−オンを0.5重量%添加したポリエチレンテレフタレートを鞘成分とし、芯成分/鞘成分の直径比率=7/1にて円形同心複合フィラメントになるよう800m/分の速度で巻き取った。巻き取った未延伸モノフィラメントを予熱温度90℃、熱セット温度180℃で延伸し、繊度13dtexの芯鞘複合モノフィラメントを得た。
【0029】
得られた芯鞘複合モノフィラメントをスルザー型織機に掛け、経・緯密度300メッシュ(300本/2.54cm)、回転数250rpmでメッシュ織物を製織した後、アゾ系の分散染料Dianix Yellow AC-E(ダイスタージャパン製)で、100℃の常圧で黄色染色を施し、ハイメッシュスクリーン紗を得た。結果を表1に示す。
【0030】
[実施例2]
芯成分/鞘成分の直径比率を7/1から、3/1に変更した以外は実施例1と同様にしてハイメッシュスクリーン紗を得た。結果を表1に示す。
【0031】
[実施例3]
鞘成分のポリエチレンテレフタレートへの3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩の共重合量を2.0mol%から1.0mol%に変更した以外は実施例1と同様にしてハイメッシュスクリーン紗を得た。結果を表1に示す。
【0032】
[実施例4]
鞘成分のポリエチレンテレフタレートへの3,1−ベンゾオキサジン−4−オンの添加量を0.5重量%から1.0重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてハイメッシュスクリーン紗を得た。結果を表1に示す。
【0033】
[実施例5]
鞘成分のポリエチレンテレフタレートに3,1−ベンゾオキサジン−4−オンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてハイメッシュスクリーン紗を得た。結果を表1に示す。
【0034】
[比較例1]
鞘成分のポリエチレンテレフタレートに3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を共重合せず、3,1−ベンゾオキサジン−4−オンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてハイメッシュスクリーン紗を得た。結果を表1に示す。
【0035】
[比較例2]
鞘成分のポリエチレンテレフタレートに3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を共重合しなかった以外は、実施例1と同様にしてハイメッシュスクリーン紗を得た。結果を表1に示す。
【0036】
[比較例3]
芯成分を固有粘度が0.63のポリエチレンテレフタレートとし、熱セット温度を130℃とした以外は、実施例1と同様にしてハイメッシュスクリーン紗を得た。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例4]
芯鞘成分共に固有粘度が0.630のポリエチレンテレフタレートとし、熱セット温度を130℃とした以外は、実施例1と同様にしてハイメッシュスクリーン紗を得た。結果を表1に示す。
【0038】
[比較例5]
芯成分/鞘成分の直径比率を7/1から、1/1に変更した以外は実施例1と同様にしてハイメッシュスクリーン紗を得た。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、染色後、高モジュラス特性による繰り返し印刷に対する良好な寸法安定性及び印刷精度と、優れたハレーション防止性とを同時に達成することができるスクリーン紗を容易に得ることができる。このため、該スクリーン紗、特にハイメッシュスクリーン紗においては、精密なスクリーン印刷を長期間安定して行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘型複合横断面を有するモノフィラメントからなるスクリーン紗であって、該モノフィラメントの芯成分がポリエチレンナフタレート、鞘成分が、固有粘度が0.45〜0.60dL/gであり、ニ官能性カルボン酸成分に対して下記式で表されるスルホン酸ホスホニウム塩を0.5〜2.5mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートからなり、芯成分/鞘成分の直径比率が2/1〜8/1であることを特徴とするスクリーン紗。
【化1】

[式中、Aは芳香族基、XおよびXは同一または異なるエステル形成官能基、nは正の整数、R、R、R、Rは水素原子、アルキル基、アリール基およびヒドロキシアルキル基より選ばれた同一または異なる基であって、R、R、R、Rの合計の分子量が60以上であるものを示す。]
【請求項2】
鞘成分の共重合ポリエチレンテレフタレートが、ベンゾオキサジン系の紫外線吸収剤を0.1〜1.0重量%含有する請求項1記載のスクリーン紗。
【請求項3】
染色が施された請求項1または2に記載のスクリーン紗。
【請求項4】
波長280〜420nmにピークを有する波長の光に対する反射率が5%以下、透過率が30%以上である請求項3に記載のスクリーン紗。
【請求項5】
10%応力が経緯方向共に200N/5cm以上である請求項3または4項に記載のスクリーン紗。
【請求項6】
L*a*b*表色系におけるカラーb*値が55〜75である請求項3〜5のいずれか1項に記載のスクリーン紗。
【請求項7】
アゾ系の黄色分散染料により染色が施されている請求項3〜6のいずれか1項に記載のスクリーン紗。

【公開番号】特開2011−16279(P2011−16279A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161820(P2009−161820)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】