説明

スクロール制御装置、スクロール制御方法およびプログラム

【課題】 スクロール中のみならず、スクロール停止時点のユーザ操作も不要にする。
【解決手段】 ユーザによって行われるスクロール開始操作を検出するスクロール開始操作検出手段(11)と、前記スクロール開始操作からスクロールの方向を検出するスクロール方向検出手段(12)と、前記スクロール開始操作に応答して前記スクロール方向に任意のドキュメントをスクロールするスクロール実行手段(14)と、前記ドキュメントの内容からスクロールの停止を示す所定の情報を検出する情報検出手段(10、13)と、前記情報検出手段によって前記所定の情報が検出されたときにその所定の情報の位置でスクロールを停止するように指示するスクロール停止指示手段(14)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置を備えた各種電子機器に適用するスクロール制御装置、スクロール制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の表示装置は、解像度(縦横のドット数)が決まっており、等倍表示を行う場合に、解像度を超える大きさのドキュメントを表示することができない。このため、多くの電子機器では、縮小表示機能をサポートしたり、あるいは、画面の表示枠からはみ出る大きさのドキュメントを画面の任意方向に移動して表示する仕組み、いわゆる「スクロール」という基本機能をサポートしている。
【0003】
スクロール機能を発動するためのユーザイベントは、典型的には画面の右端や下端に配置されたスクロールバーと呼ばれるコントロールに対する操作イベントである。マウス等のポインティングデバイスを用いて右端上下方向のスクロールバーを操作することによって、表示中のドキュメントを画面の上や下方向に移動(スクロール)させることができ、あるいは、下端左右方向のスクロールバーを操作することによって、表示中のドキュメントを画面の左や右方向に移動(スクロール)させることができる。
【0004】
しかしながら、このようなイベントにあっては、スクロール中、常にポインティングデバイスを操作し続けていなければならず、面倒を否めないという欠点がある。そこで、下記の特許文献1には、スクロールの「開始」と「停止」をユーザ操作に応答して行う一方、その間のスクロール動作をユーザ操作によらずに自動的に行うようにした技術(以下、従来技術という)が記載されている。
【0005】
これによれば、ユーザはスクロールの「開始」と「停止」の二つの時点でのみ所要の操作(マウス操作等)を行えばよいので、上記の欠点を解消できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−104649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来技術にあっては、スクロール中、常にポインティングデバイスを操作し続けている必要がなく、面倒を軽減できるという利点が得られるものの、スクロールの「開始」と「停止」の二つの時点で所要の操作(マウス操作等)を行う必要があり、とりわけ、停止時点における操作が不可欠であるという点において、依然として面倒を否めないという問題点を有している。
【0008】
そこで、本発明の目的は、スクロール中のみならず、スクロール停止時点のユーザ操作も不要にできるスクロール制御装置、スクロール制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、ユーザによって行われるスクロール開始操作を検出するスクロール開始操作検出手段と、前記スクロール開始操作からスクロールの方向を検出するスクロール方向検出手段と、前記スクロール開始操作に応答して前記スクロール方向に任意のドキュメントをスクロールするスクロール実行手段と、前記ドキュメントの内容からスクロールの停止を示す所定の情報を検出する情報検出手段と、前記情報検出手段によって前記所定の情報が検出されたときにその所定の情報の位置でスクロールを停止するように指示するスクロール停止指示手段とを備えたことを特徴とするスクロール制御装置である。
請求項2記載の発明は、前記スクロール開始操作検出手段は、ユーザによって行われる複数のスクロール開始操作を区別して検出し、前記情報検出手段は、前記複数のスクロール開始操作の各々に対応した前記所定の情報を前記ドキュメントの内容から検出することを特徴とする請求項1に記載のスクロール制御装置である。
請求項3記載の発明は、前記所定の情報は、前記ドキュメントの内容に含まれるいくつかの情報であって、且つ、各々の情報に重み値が設定されており、前記スクロール停止指示手段は、前記情報検出手段によって検出された前記所定の情報の重み値を合計してその合計値が所定の閾値を超えたときにスクロールを停止するように指示することを特徴とする請求項1に記載のスクロール制御装置である。
請求項4記載の発明は、ユーザによって行われるスクロール開始操作を検出するスクロール開始操作検出工程と、前記スクロール開始操作からスクロールの方向を検出するスクロール方向検出工程と、前記スクロール開始操作に応答して前記スクロール方向に任意のドキュメントをスクロールするスクロール実行工程と、前記ドキュメントの内容からスクロールの停止を示す所定の情報を検出する情報検出工程と、前記情報検出工程によって前記所定の情報が検出されたときにその所定の情報の位置でスクロールを停止するように指示するスクロール停止指示工程とを含むことを特徴とするスクロール制御方法である。
請求項5記載の発明は、スクロール制御装置のコンピュータを、ユーザによって行われるスクロール開始操作を検出するスクロール開始操作検出手段、前記スクロール開始操作からスクロールの方向を検出するスクロール方向検出手段、前記スクロール開始操作に応答して前記スクロール方向に任意のドキュメントをスクロールするスクロール実行手段、前記ドキュメントの内容からスクロールの停止を示す所定の情報を検出する情報検出手段、前記情報検出手段によって前記所定の情報が検出されたときにその所定の情報の位置でスクロールを停止するように指示するスクロール停止指示手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スクロール中のみならず、スクロール停止時点のユーザ操作も不要にできるスクロール制御装置、スクロール制御方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態を適用する電子機器の要部構成図である。
【図2】制御部5の制御機能を模式化して示す図である。
【図3】実施形態のスクロール動作の概念図である。
【図4】実施形態のスクロール動作の制御フロー図である。
【図5】実施形態のスクロール動作の改良制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態を適用する電子機器の要部構成図である。この図において、電子機器1は、任意のドキュメント2を取り込む入力部3と、ユーザによって操作される操作部4と、この電子機器1の全体動作を統括制御する制御部5と、ドキュメント2を可視化して表示できる表示部6とを含む。ちなみに、電子機器1の用途は特に限定しない。少なくとも図示の各部(入力部3、操作部4、制御部5および表示部6)を含むものであればよい。
【0013】
ドキュメント2は、可視表示を意図して適宜に制作された所定形式のファイルであり、このファイルには文字や図形、写真または絵画などの情報が単独で、もしくは混在して含まれる。ファイル形式は様々であるが、大別してテキストファイルとバイナリファイルとに分けることができる。テキストファイルは文字情報と制御情報からなる最もシンプルなファイル形式である。このテキストファイルは、表示装置を備えたほとんどの電子機器でサポートされている。テキストファイルを発展させた形式にHTML(HyperText Markup Language)がある。HTMLは文書情報に加えて文書の論理構造や見栄えなどを指定する制御情報を含み、さらに、文書の中に画像や音声、動画、他の文書へのリンク情報(ハイパーリンク)を埋め込むこともできる。HTMLはWebドキュメントとも呼ばれており、専用のツール(Webブラウザ)を搭載した電子機器上で再生表示することができる。一方、バイナリ形式のドキュメントは、ワードプロセッサなどの文章作成ソフトで作られたファイルであって、テキストファイルやHTMLよりも高度な文章構造を持ち、より見栄えのよい文章を作ることができるが、その構造はソフトごとに異なるため、対応したソフトを搭載した電子機器上でしか再生表示することができない。
【0014】
このように、ドキュメント2の形式は様々であり、その表示制御の仕方も形式ごとに異なるが、以下では、説明の簡単化のために、最もシンプルなテキストファイルを例にして説明することにする。
【0015】
さて、本実施形態の課題は、「表示装置を備えた各種電子機器に適用するスクロール制御装置、スクロール制御方法およびプログラム」に関するものであって、特に、「スクロール中のみならず、スクロール停止時点のユーザ操作も不要にできるスクロール制御装置、スクロール制御方法およびプログラムを提供」することにあり、表示部6の表示サイズを超えた大きさのドキュメント2を表示部6に表示する際に行われるスクロール動作を改良することによって、ユーザの操作性向上を図ることにある。
【0016】
この課題達成のために、まず、操作部4は、ユーザによって行われるスクロールの開始操作とスクロールの方向とを検出できる仕組みを有する。この仕組みを実現するための第一の方法は、マウス等のポインティングデバイスとスクロールバーとの組み合わせによるものである。周知のように、ポインティングデバイスによってスクロールバーを操作することにより、表示部6に表示中のドキュメント2を画面の上下や左右に移動(スクロール)させることができるからであり、その操作から、スクロールの開始とスクロールの方向とを検出できるからである。
【0017】
第二の方法は、表示部6の上に配設されたタッチパネルと、そのタッチパネル上で行われる様々なタッチ操作(指先やペン先などのタッチ操作;以下、指先で代表する)との組み合わせによるものである。当該タッチ操作としては、たとえば、「タッチ」、「ロングタッチ」、「タップ」、「ダブルタップ」、「ドラッグ」、「フリック」などが知られている。タッチはタッチパネルに指先を触れる操作、ロングタッチは長いタッチである。タップは一瞬触れる操作であり、マウスのクリック操作に相当する。ダブルタップはタップを二度繰り返す操作であり、マウスのダブルクリック操作に相当する。ドラッグはタッチパネルに指先を触れたまま任意方向に動かす操作、フリックはドラッグ後に指先を“はらう”動作を行う操作である。これ以外にも二本の指先の間隔を狭めたり広げたりする操作(ピンチ)もあるが、要するに、これらの様々なタッチ操作の一つを「スクロールの開始操作」に割り当てればよい。たとえば、「フリック」を割り当てた場合、タッチパネル上でドラッグ後に指先を“はらう”動作を行ったときにスクロールの開始指示であると判断し、且つ、その“はらう”方向からスクロールの方向を検出できる。
【0018】
制御部5は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)5a、ROM(Read Only Member)5bおよびRAM(Random
Access Memory)5cならびに所要の周辺回路からなるマイクロコンピュータで構成されており、ROM5bに格納されている制御プログラムをRAM5cに展開し、その制御プログラムをCPU5aで実行することによって、この電子機器1の全体動作(スクロール処理に関わる動作など)を統括制御するものである。なお、ここでは、マイクロコンピュータを用いた制御部5、つまり、制御プログラム等のソフトウェアリソースと、CPU5aやROM5bおよびRAM5cならびに所要の周辺回路等のハードウェアリソースとの有機的な結合によって電子機器1の全体動作を統括制御する、いわゆるプログラム制御型の制御部5としているが、これに限定されない。たとえば、その制御の一部またはすべてをハードロジックで実現する態様であってもかまわない。
【0019】
図2は、制御部5の制御機能を模式化して示す図であり、図示の制御機能は、制御部5の制御機能のうち、ドキュメント2の表示制御とスクロール制御に関する部分の機能を抜き出したものである。この図において、制御部5は、ドキュメント構造解析部10、スクロール開始操作検出部11、スクロール方向検出部12、スクロール停止位置検出部13、スクロール動作制御部14、表示位置決定部15、および、表示制御部16などを備える。
【0020】
ドキュメント構造解析部10は、入力部3で取り込まれたドキュメント2の文章構造を解析する。ここで、先に説明したとおり、図示のドキュメント2は最もシンプルな構造を有するテキストファイルである。テキストファイルは表示可能なテキスト情報(テキスト文字)といくつかの制御情報(制御文字)とを含み、これらの情報はいずれも所定の文字コード(ASCIIコード)で表されている。ASCIIコードは、そのコードの組み合わせにより、A〜Zのアルファベットや0〜9の数値および各種記号などの1バイト文字はもちろんのこと、漢字や平仮名、カタカナなどの2バイト文字も表現(表示や印刷)することができ、さらに、非表示(非印刷)文字として、テキスト開始や終了、タブ、改行などの様々な制御文字も規定されている。ドキュメント構造解析部10は、ドキュメント2の内容を解析し、表示文字と制御文字とを区別する。なお、ここでは、ドキュメント2をシンプルな構造のテキストファイルとしているが、これに限定されない。テキストファイルの発展型であるHTMLであってもよく、あるいは、各種の専用ソフトで作られたバイナリ形式のファイルであってもよい。これらのHTMLやバイナリファイルにおいても、テキストファイルの制御文字に相当する制御情報が含まれているので、ドキュメント構造解析部10は、それらの制御情報(テキストファイルの制御情報よりも複雑であるが)を解析できる仕組みになっていればよい。
【0021】
スクロール開始操作検出部11は、操作部4に対して行われたユーザ操作を常時またはごく短い時間ごとにモニタし、その操作が「スクロールの開始」を指示する所定の操作であるか否かを検出する。この所定の操作については特に限定しないが、たとえば、先に説明した第一の方法や第二の方法などを採用してもよい。以下、説明の便宜上、この所定の操作(スクロールの開始を指示する操作)を第二の方法における「フリック」の操作とし、このフリック操作が行われたときに、ユーザによってスクロールの開始が指示されたことを検出するものとする。
【0022】
スクロール方向検出部12もスクロール開始操作検出部11と同様に、操作部4に対して行われたユーザ操作を常時またはごく短い時間ごとにモニタし、所定の操作が行われたときに、その操作に従ってスクロールの方向を検出する。この所定の操作についても、説明の便宜上、「フリック」の操作とし、このフリックの方向(指先を“はらう”方向)からスクロールの方向を検出するものとする。
【0023】
スクロール停止位置検出部13は、表示部6の上でスクロール状態にあるドキュメント2のスクロール停止位置を検出するためのものであり、そのスクロール停止位置の検出原理は、要するに、ドキュメント2の内容をスクロール方向に遡及して「所定の情報」を探し出し、所定の情報が見つかったときに、その所定の情報の位置をスクロール停止位置とするというものである。「所定の情報」は様々である。たとえば、テキストファイルの表示文字のうちの特定の文字または文字列であってもよい。実用性を無視して例を挙げれば、「ここでスクロールを停止する」などという表示文字列を所定の情報としてもよい。この場合、スクロール停止位置検出部13は、ドキュメント2の内容をスクロール方向に遡及して、「ここでスクロールを停止する」という表示文字列を見つけたときに、その文字列の位置をスクロール停止位置とする。
【0024】
もちろん、このような例示は、画面上に無用な文字列(“ここでスクロールを停止する”)が表示されるので、見た目に難があり、実用的に好ましいとはいえない。実用上は非表示文字である制御文字または制御文字列を「所定の情報」として使用することが望ましい。たとえば、水平タグコードは水平方向の文字下げを指定する非表示の制御文字であるから、このタグコードと改行コードとを組み合わせたものを「所定の情報」として使用してもよい。つまり、ドキュメント2の任意位置に水平タグコードと改行コードの組み合わせを埋め込んでおいてもよい。この場合、スクロール停止位置検出部13は、ドキュメント2の内容をスクロール方向に遡及して、水平タグコードと改行コードの組み合わせを見つけたときに、その水平タグコードと改行コードの組み合わせの位置をスクロール停止位置とする。
【0025】
「所定の情報」はこれ以外であってもよい。たとえば、テキストファイルの発展型であるHTMLファイルでは、文字列の書式(フォントサイズやフォントカラー、太文字、下線付など)を適宜に指定できるため、それらの書式を「所定の情報」として指定してもよい。たとえば、ある大きさのフォントサイズの文字列を「所定の情報」として指定すれば、スクロール停止位置検出部13は、ドキュメント2の内容をスクロール方向に遡及して、「ある大きさのフォントサイズの文字列」を見つけたときに、その「ある大きさのフォントサイズの文字列」の位置をスクロール停止位置とする。あるいは、ある色の文字列を「所定の情報」として指定すれば、スクロール停止位置検出部13は、ドキュメント2の内容をスクロール方向に遡及して、「ある色の文字列」を見つけたときに、その「ある色の文字列」の位置をスクロール停止位置とする。または、HTMLファイルに埋め込まれた写真や画像または他のドキュメントへのリンク情報を「所定の情報」としてもよい。スクロール停止位置検出部13は、ドキュメント2の内容をスクロール方向に遡及して、「写真や画像または他のドキュメントへのリンク情報」を見つけたときに、その「写真や画像または他のドキュメントへのリンク情報」の位置をスクロール停止位置とする。
【0026】
また、ワードプロセッサ等の専用ソフトで作られたバイナリファイルの場合は、さらに特殊な情報を「所定の情報」として使用することができる。たとえば、改ページ情報や各ページのヘッダ・フッタ情報、レイヤ情報などを「所定の情報」として使用することができる。
【0027】
いずれにせよ、スクロール停止位置検出部13は、表示部6の上でスクロール状態にあるドキュメント2のスクロール停止位置を検出する機能を有していればよく、その具体的態様はもっぱらドキュメント2の種類、つまり、シンプルな構造のテキストファイルであるのか、あるいは発展型のHTMLであるのか、または、より複雑な構造を有するバイナリファイルであるのかに依存する。実際に使用するドキュメント2の種類に応じた適切なものを「所定の情報」として使用すればよく、その具体的態様は設計上の選択的事項に過ぎない。
【0028】
スクロール動作制御部14は、スクロール開始操作検出部11、スクロール方向検出部12およびスクロール停止位置検出部13の各検出結果に基づいて、ドキュメント2のスクロール動作に関する制御値(スクロール速度やスクロール方向、スクロール停止位置などの制御値)を演算出力する。この制御値のうちのスクロール速度は一定値であってもよいが、冒頭で説明した従来技術(特許文献1)のような減速特性を持つものとしてもよい。つまり、スクロール開始から停止にかけてスクロール速度が線形的に低下する特性を持つものとしてもよい。あるいは、スクロール開始操作検出部11で検出されたスクロール開始操作(ここではフリック)の早さに応じた適応的なスクロール速度としてもよい。つまり、早いフリックの場合は早めのスクロール、遅いフリックの場合は遅めのスクロールなどとしてもよい。さらに、フリック速度に対応したスクロール速度と前記の減速特性とを組み合わせてもよい。
【0029】
表示位置決定部15は、表示部6におけるドキュメント2の表示位置を決定する。その表示位置の基準は特に限定されないが、たとえば、表示部6の画面上における原点座標位置(左上隅)としてもよい。表示位置決定部15は、この表示位置の決定動作をいくつかの時点で逐次的に行う。第一の時点は、ドキュメント2を初期表示するときであり、ドキュメント2の初期表示位置は、ドキュメント2の先頭(文頭)または直近の最終表示位置である。第二の時点は、スクロール以外の表示位置更新が行われたときである。たとえば、ページアップやページダウンなどの操作が行われたときであり、この場合の表示位置は、一定行数ずれた位置または改ページコードが現れる位置などである。第三の時点は、スクロール動作中のときである。この場合、スクロールの開始から停止にかけて一定速度または減速を伴いつつスムーズに表示位置を更新する。
【0030】
表示制御部16は、入力部3で取り込まれたドキュメント2の表示内容を表示部6に出力するとともに、表示位置決定部15から出力された表示位置に従い、表示部6におけるドキュメント2の表示位置を更新制御する。
【0031】
図3は、実施形態のスクロール動作の概念図である。この図において、ドキュメント2は、表示部6の表示サイズよりも大きい、たとえば、縦長になっている。なお、ここでは、説明の簡単化のために、表示部6へのドキュメント2の表示制御を等倍、すなわち、表示部6の解像度(ドット数;たとえば、横Xドット×縦Yドット)と1対1で行うものとする。表示部6はこのようなドキュメント2を表示部6に一度に表示することができないので、スクロール操作は不可欠である。いま、表示部6のタッチパネル上で所定のスクロール開始操作(フリック)が行われたものとする。白抜き矢印17はそのフリック操作を示しており、矢印17の方向がスクロールの指定方向である。この場合、ドキュメント2は図面の下から上への方向にスクロールする。
【0032】
ここで、ドキュメント2の任意位置に描かれたハッチング付横長図形18は、スクロールの停止位置を示す「所定の情報」を示している。
【0033】
本実施形態では、ドキュメント2の内容をスクロール方向に遡及して「所定の情報」を探し出し、所定の情報が見つかったときに、その所定の情報の位置をスクロール停止位置とし、画面の原点位置に合わせてスクロールを自動停止する。たとえば、図3の例では、スクロール中のドキュメント2の「所定の情報」(ハッチング付横長図形18)が表示部6の原点座標(画面の左上隅)に位置したときに、スクロールが自動停止する。
【0034】
したがって、本実施形態によれば、スクロールの「停止」をユーザ操作によらずに自動的に行うことができるから、ユーザは、もっぱらスクロールの開始と方向だけを指定すればよく、冒頭で説明した従来技術に比べて操作性の向上を図ることができるという特有の効果が得られる。
【0035】
図4は、実施形態のスクロール動作の制御フロー図である。この制御フローは、制御部5のCPU5aで実行される制御プログラム(ROM5bにあらかじめ格納されている)の要部を簡略化して示している。この制御フローでは、まず、ドキュメント2を読み込み(ステップS1)、その内容を解析する(ステップS2)。次いで、ドキュメント2の表示位置を決定し(ステップS3)、ドキュメント2を表示部6に表示するとともに、ページアップ・ダウン等のスクロール以外の表示位置更新に関わるユーザ操作が行われたか否かを判定し(ステップS4)、操作が行われた場合には再び表示位置決定(ステップS3)を行う一方、操作が行われなかった場合には、スクロール開始操作検出部11でスクロール開始の操作が検出されたか否かを判定する(ステップS5)。
【0036】
そして、ステップS5でスクロール開始の操作が検出されなかった場合には、再び表示位置更新の判定処理(ステップS4)に戻り、スクロール開始の操作が検出された場合には、次に、スクロール方向検出部12の検出結果(スクロール方向)を取り込み(ステップS6)、そのスクロール方向にスクロールを実行する(ステップS7)。
【0037】
次に、スクロールを継続しながら、ドキュメント2の内容をスクロール方向に遡及して「所定の情報」を探し出し(ステップS8)、所定の情報が見つからなければスクロール中のドキュメント2が最後(文末)に達したか否かを判定して(ステップS9)、文末に達していなければスクロールを継続し、文末に達すればスクロールを停止(ステップS10)して制御フローを終了するが、ドキュメント2のスクロール方向に「所定の情報」が見つかった場合にも、その「所定の情報」の位置を表示部6の原点座標にセットして直ちにスクロールを停止(ステップS10)して制御フローを終了する。
【0038】
このように、この制御フローによれば、スクロール中のドキュメント2に「所定の情報」が見つかった場合に、直ちにスクロールを停止(ステップS10)することができるので、ユーザはいちいちスクロール停止の操作を行う必要がなく、操作性の向上を図ることができる。
【0039】
なお、以上の実施形態では、スクロールの停止条件を一つの情報(所定の情報)で規定しているが、これに限定されない。複数の情報を選択的に使用できるように改良してもよい。
【0040】
これは、実施形態の操作部4は多様なユーザ操作を識別して検出することができるからである。具体的には、前記の第一の方法で示したような縦・横のスクロールバーに対する操作、または、前記の第二の方法で示したような「タッチ」、「ロングタッチ」、「タップ」、「ダブルタップ」、「ドラッグ」、「フリック」などの操作を個別に検出できるからであり、これらの操作ごとに、異なる情報(所定の情報)を割り付けることによって、複数の情報を選択的に使用できるようになるからである。
【0041】
なお、前記の第一の方法と第二の方法は、前者がマウス等のポインティングデバイスを用いるのに対して後者がタッチパネルを用いており、両者は異なるユーザインターフェースを利用している。もちろん、スクロールバーをタッチパネルで操作することも可能であるが、これは特定のコントロール(ここではスクロールバー)を対象にした操作であるのに対して、「タッチ」や「タップ」などの第二の方法は、対象を固定しない自由なタッチパネル操作である点で相違する。したがって、ここでは、第二の方法を使用して複数の情報を選択的に使用できるようにする態様を説明する。但し、この説明は一例であって、前記の第一の方法を積極的に排除する意図はない。つまり、必要であれば第一の方法と第二の方法とを併用してもかまわない。
【0042】
図5は、実施形態のスクロール動作の改良制御フロー図である。なお、この制御フローは、図4の制御フローの一部を改良したものであり、具体的には図4の制御フローのステップS5とステップS6の間に新たなステップS11を入れるとともに、ステップS7とステップS8の間に新たなステップS12を入れ、さらに、図4の制御フローのステップS8を新たなステップS13で置き換えたものである。
【0043】
ここで、新たなステップS11は、スクロール開始操作の種別を記憶するというものであり、スクロール開始操作の種別とは、前記の第二の方法における「タッチ」、「ロングタッチ」、「タップ」、「ダブルタップ」、「ドラッグ」、「フリック」などのことである。これらの操作はいずれもスクロール開始操作検出部11で区別して検出することができる。新たなステップS11では、スクロール開始操作検出部11で検出された「タッチ」、「ロングタッチ」、「タップ」、「ダブルタップ」、「ドラッグ」、「フリック」などの種別を表す情報をRAM5cに一時的に記憶する。
【0044】
次に、新たなステップS12は、スクロール開始操作の種別を読み込むというものであり、読み込み先はRAM5cの一時記憶領域である。すなわち、この新たなステップS12では、先のステップS11で一次記憶した「タッチ」、「ロングタッチ」、「タップ」、「ダブルタップ」、「ドラッグ」、「フリック」などの種別を表す情報をRAM5cの一時記憶領域から読み出す。
【0045】
次に、ステップS8に置き換えられたステップS13では、その種別に対応した「所定の情報」を検出したか否かを判定する。種別とは、先のステップS11で一次記憶した「タッチ」、「ロングタッチ」、「タップ」、「ダブルタップ」、「ドラッグ」、「フリック」などの種別を表す情報のことであり、また、その種別に対応した「所定の情報」とは、それらの種別ごとに割り付けられた異なる情報(所定の情報)のことである。
【0046】
種別に対応した「所定の情報」の一例は、以下のとおりである。
(1)「タッチ」→所定の情報A
(2)「ロングタッチ」→所定の情報B
(3)「タップ」→所定の情報C
(4)「ダブルタップ」→所定の情報D
(5)「ドラッグ」→所定の情報E
(6)「フリック」→所定の情報F
【0047】
ここで、所定の情報A〜Fは、ドキュメント2の形式に応じた適当な情報を意味する。たとえば、テキストファイルやHTMLまたはバイナリファイルの任意の表示文字(または表示文字列)または制御コード等の非表示文字(または非表示文字列)、あるいは、HTMLやバイナリファイルの文字列の書式(フォントサイズやフォントカラー、太文字、下線付など)、もしくは、HTMLのリンク情報、バイナリファイルの改ページ情報や各ページのヘッダ・フッタ情報、レイヤ情報などである。
【0048】
このように、図示の改良制御フローでは、スクロール開始操作の種別が「タッチ」であればドキュメント2の“所定の情報A”の位置でスクロールを停止でき、スクロール開始操作の種別が「ロングタッチ」であればドキュメント2の“所定の情報B”の位置でスクロールを停止できる。また、スクロール開始操作の種別が「タップ」であればドキュメント2の“所定の情報C”の位置でスクロールを停止でき、スクロール開始操作の種別が「ダブルタップ」であればドキュメント2の“所定の情報D”の位置でスクロールを停止できる。また、スクロール開始操作の種別が「ドラッグ」であればドキュメント2の“所定の情報E”の位置でスクロールを停止でき、スクロール開始操作の種別が「フリック」であればドキュメント2の“所定の情報F”の位置でスクロールを停止できる。
【0049】
したがって、図示の改良制御フローによれば、スクロール開始操作の種別に応じた様々な位置でスクロールを停止させることができるから、前記の実施形態のように単一の「所定の情報」を検出してスクロールを停止するものに比べ、汎用性を高めてより使い勝手のよいスクロール動作を行うことができるという特有の効果が得られる。
【0050】
なお、所定の情報A〜Fの実例については、上記の例示に限定されないことはもちろんであり、他の任意の情報を指定してもよいことは当然である。このような情報は、多くの場合、ドキュメント2のレイアウトから見つけ出すことができる。レイアウトはドキュメント2の制作意図(編集方針)に従って整然と行われているのが一般的だからであり、とりわけ内容が濃くボリュームのあるドキュメント2の場合には、その文章内容が読みやすいように構造化(適切な段落分け等)されているからである。読み手は、構造単位ごとに読み進めていけばよく、スクロールさせる場合も同様にドキュメント2の構造単位(つまり、一つの情報のまとまり)ごとに行えばよいからである。一般的に、このような「一つの情報のまとまり」は目立つように明示されていることが多いので、そのような明示情報(それが何であるかは一概に言えないが)を特定し、所定の情報A〜Fとして適宜に指定すればよい。
【0051】
また、ドキュメント2の構造単位(つまり、一つの情報のまとまり)ごとに完結したスクロールを正しく行うためには、「一つの情報のまとまり」を間違いなく判定する必要がある。一般的に、段落等の一つの情報のまとまりは目立つ文字や記号などで明示されるが、それらの目立つ文字や記号は必ずしも「一つの情報のまとまり」を明示しているとは限らない。たとえば、単なる編集上のデザインに過ぎないこともある。このような場合、前記実施形態のように任意の「特定の情報」を検出したときにスクロールを停止するという単純な仕組みでは、「一つの情報のまとまり」を誤判定する可能性があり、正しくない位置にスクロールを停止してしまう恐れがある。
【0052】
これに対処するためには、「一つの情報のまとまり」の明示情報として用いられる可能性がある複数の情報を対象にして総合的に判断することが好ましい。たとえば、段落は「一つの情報のまとまり」の典型例であるが、この段落の項目名などは大きなフォントで、しかも太文字の角ゴシック等の目立つフォントが用いられ、さらに、目立つ色が指定されることが多い。したがって、これらの条件、すなわち、「大きなフォント」、「目立つフォント」且つ「目立つ色」が満たされたときに、「一つの情報のまとまり」であると判断し、スクロールを停止するようにしてもよい。このようにすれば、正しくない位置にスクロールを停止してしまうという不都合を回避できる。
【0053】
また、この考え方を発展させて、以下のようにしてもよい。すなわち、「一つの情報のまとまり」の明示情報として用いられる可能性がある複数の情報の各々に適切な重み付けをし、検出された情報の重み値を合計して、その合計値が所定の閾値を超えたときに「一つの情報のまとまり」であると判断してもよい。重み値は「一つの情報のまとまり」の明示情報として用いられる可能性の高低に応じて設定すればよい。たとえば、フォント種別であれば、「小さなフォント」よりも「大きなフォント」の方が「一つの情報のまとまり」の明示情報として用いられる可能性が高いので、前者の重み値よりも後者の重み値を大きくすればよい。または、フォント色であれば、暗い色よりも明るく派手な色の方が「一つの情報のまとまり」の明示情報として用いられる可能性が高いので、同様にして前者の重み値よりも後者の重み値を大きくすればよい。このようにすれば、「一つの情報のまとまり」の判断を正確に行うことができ、正しくない位置へのスクロール停止をより確実に回避することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 ドキュメント構造解析部(情報検出手段)
11 スクロール開始操作検出部(スクロール開始操作検出手段)
12 スクロール方向検出部(スクロール方向検出手段)
13 スクロール停止位置検出部(情報検出手段)
14 スクロール動作制御部(スクロール実行手段、スクロール停止指示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって行われるスクロール開始操作を検出するスクロール開始操作検出手段と、
前記スクロール開始操作からスクロールの方向を検出するスクロール方向検出手段と、
前記スクロール開始操作に応答して前記スクロール方向に任意のドキュメントをスクロールするスクロール実行手段と、
前記ドキュメントの内容からスクロールの停止を示す所定の情報を検出する情報検出手段と、
前記情報検出手段によって前記所定の情報が検出されたときにその所定の情報の位置でスクロールを停止するように指示するスクロール停止指示手段と
を備えたことを特徴とするスクロール制御装置。
【請求項2】
前記スクロール開始操作検出手段は、ユーザによって行われる複数のスクロール開始操作を区別して検出し、
前記情報検出手段は、前記複数のスクロール開始操作の各々に対応した前記所定の情報を前記ドキュメントの内容から検出する
ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール制御装置。
【請求項3】
前記所定の情報は、前記ドキュメントの内容に含まれるいくつかの情報であって、且つ、各々の情報に重み値が設定されており、
前記スクロール停止指示手段は、前記情報検出手段によって検出された前記所定の情報の重み値を合計してその合計値が所定の閾値を超えたときにスクロールを停止するように指示する
ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール制御装置。
【請求項4】
ユーザによって行われるスクロール開始操作を検出するスクロール開始操作検出工程と、
前記スクロール開始操作からスクロールの方向を検出するスクロール方向検出工程と、
前記スクロール開始操作に応答して前記スクロール方向に任意のドキュメントをスクロールするスクロール実行工程と、
前記ドキュメントの内容からスクロールの停止を示す所定の情報を検出する情報検出工程と、
前記情報検出工程によって前記所定の情報が検出されたときにその所定の情報の位置でスクロールを停止するように指示するスクロール停止指示工程と
を含むことを特徴とするスクロール制御方法。
【請求項5】
スクロール制御装置のコンピュータを、
ユーザによって行われるスクロール開始操作を検出するスクロール開始操作検出手段、
前記スクロール開始操作からスクロールの方向を検出するスクロール方向検出手段、
前記スクロール開始操作に応答して前記スクロール方向に任意のドキュメントをスクロールするスクロール実行手段、
前記ドキュメントの内容からスクロールの停止を示す所定の情報を検出する情報検出手段、
前記情報検出手段によって前記所定の情報が検出されたときにその所定の情報の位置でスクロールを停止するように指示するスクロール停止指示手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−73719(P2012−73719A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216648(P2010−216648)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】