説明

スクータ型自動二輪車

【課題】簡単な構造により、車幅の増大を抑制できると共に、変速機ケース内への砂塵や泥水等の浸入を抑制できるスクータ型自動二輪車を提供する。
【解決手段】スクータ型自動二輪車は、エンジンユニット10と共に車体フレームに対し揺動可能なエアクリーナ50を備える。エアクリーナ50の内方には、変速機用の吸気室71とエンジン用の吸気室72とが形成されている。エアクリーナ50には、吸気室71に連通する吸気口74と、吸気室72に連通する吸気口76とが形成されている。変速機ケース29は、吸気室71の空気をベルト室に向かって導くダクト部60を備えている。吸気口74および吸気口76の側方には、砂塵や泥水等の浸入を抑制するラビリンス構造が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクータ型自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、Vベルト式無段変速機を内蔵したエンジンユニットを備えたスクータ型自動二輪車が知られている。Vベルト式無段変速機には、ベルトとプーリとの摩擦によって発熱し、高温になりやすいという性質がある。そこで従来から、Vベルト式無段変速機を空気で冷却することが行われている。
【0003】
特許文献1に開示されたスクータ型自動二輪車では、クランクケースの左方に変速機ケースが配置され、この変速機ケースの内部にVベルト式無段変速機が収容されている。上記スクータ型自動二輪車は、エンジン用エアクリーナとVベルト冷却用エアクリーナとを備えている。それら両エアクリーナは一体化され、変速機ケースの上方に配置されている。
【0004】
スクータ型自動二輪車のエンジンユニットは、いわゆるユニットスイング式のエンジンユニットであり、車体フレームに対して揺動する。特許文献1に開示されたスクータ型自動二輪車では、エンジン用エアクリーナとVベルト冷却用エアクリーナとは一体化されているので、両エアクリーナは一体となって車体フレームに対して揺動する。そのため、Vベルト冷却用エアクリーナを車体フレームに対して揺動不能に固定する場合に比べて、構造を簡単化することができる。
【0005】
しかし、Vベルト冷却用エアクリーナの吸気口の位置が低いので、路面から巻き上げられる砂塵や泥水等がVベルト冷却用エアクリーナに浸入しやすい。そこで、上記スクータ型自動二輪車では、エンジン用エアクリーナおよびVベルト冷却用エアクリーナの全体の側方を車体カバーで覆っている。上記スクータ型自動二輪車では、両エアクリーナの吸気口を車体カバーの内部に配置することにより、両エアクリーナに対する砂塵や泥水等の浸入を抑制している。ところが、車体カバーが両エアクリーナの側方および変速機ケースの大部分の側方を覆っているため、自動二輪車の車幅が大きくなってしまう。
【0006】
特許文献2には、変速機ケースが車体カバーに覆われず、側方に露出しているスクータ型自動二輪車が開示されている。このスクータ型自動二輪車では、変速機ケースに、上方に延びるダクトが接続されている。ダクトの上端部には吸気口が形成され、ダクトの上部の側方は車体カバーに覆われている。そのため、吸気口は高い位置に配置され、しかも車体カバーの内部に配置されている。したがって、路面から巻き上げられる砂塵や泥水等は、吸気口に吸い込まれにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−318887号公報
【特許文献2】特開2007−314165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に開示されたスクータ型自動二輪車では、側面視において車体カバーが変速機ケースの上方に配置され、ダクトは変速機ケースから車体カバーの内部にまで延びている。ダクトはこのように長いため、そのままでは不安定である。ダクトを安定して支持するためには、ダクトの上部を車体フレームに固定しなければならない。ところが、ダクトの上部は車体フレームに対して揺動不能であるのに対し、下端部は変速機ケースに接続されているため、車体フレームに対して揺動する。その揺動を吸収するために、ダクトには変形容易な蛇腹部を設けなければならない。したがって、特許文献2に開示されたスクータ型自動二輪車では、Vベルト式無段変速機に空気を導くための構造が複雑になってしまうという課題があった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ユニットスイング式のエンジンユニットを備えたスクータ型自動二輪車において、簡単な構造により、車幅の増大を抑制すると共に、変速機ケース内への砂塵や泥水等の浸入を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るスクータ型自動二輪車は、車体フレームと、エンジンユニットと、車体カバーと、エアクリーナとを備える。前記エンジンユニットは、クランク軸を収容したエンジンケースと、前記エンジンケースの側方に配置され、上壁を有し且つ内部にベルト室が形成された変速機ケースと、前記ベルト室に配置されたVベルト式無段変速機とを有している。前記エンジンユニットは、前記車体フレームに揺動可能に支持されている。前記車体カバーは、前記車体フレームの側方を覆い、側面視において前記変速機ケースの上方に位置する。前記エアクリーナは、前記エンジンユニットの上方に配置され、前記エンジンユニットと共に前記車体フレームに対し揺動可能である。前記変速機ケースは、その下流端部が前記ベルト室に連通し、その上流端部が側面視において前記エアクリーナと重なるように、少なくとも前記上流端部が前記エアクリーナによって覆われたダクト部を備えている。前記エアクリーナには、前記エアクリーナの内方を前記ダクト部の上流端部が収容される変速機用吸気室と前記変速機用吸気室よりも後方に位置するエンジン用吸気室とに区画する縦壁と、前記変速機ケースの上壁に対向し且つ前記変速機用吸気室につながる下方に開いた変速機用吸気口と、前記変速機ケースの上壁に対向し且つ前記エンジン用吸気室につながる下方に開いたエンジン用吸気口と、前記エンジン用吸気室と連通し且つ前記エンジンに供給される空気を排出する排出口とが形成されている。前記エンジンケース、前記変速機ケース、および前記エアクリーナのうちの少なくとも一つにより、前記変速機用吸気口および/または前記エンジン用吸気口の側方に、蛇行通路を区画するラビリンス構造が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構造により、車幅の増大を抑制できると共に、変速機ケース内への砂塵や泥水等の浸入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】スクータ型自動二輪車の側面図である。
【図2】エンジンユニットおよびエアクリーナの側面図である。
【図3】エンジンユニットおよびエアクリーナの斜視図である。
【図4】エンジンユニットの断面図である。
【図5A】エアクリーナおよび変速機ケースの鉛直面断面図である。
【図5B】図5Aのダクトおよびその近傍部分の拡大図である。
【図6A】図5AのVI−VI線断面図である。
【図6B】図6Aのダクトおよびその近傍部分の拡大図である。
【図7】図5AのVII−VII線断面図である。
【図8】図5AのVIII−VIII線断面図である。
【図9】図5AのIX−IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右は、それぞれ自動二輪車1の乗員から見た前、後、左、右を意味するものとする。図面に付した符号F、Re、L、Rは、それぞれ前、後、左、右を表す。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るスクータ型の自動二輪車1は、車体フレーム2と、ピボット軸3により車体フレーム2に揺動可能に支持されたエンジンユニット10と、車体フレーム2の側方を覆う車体カバー4と、エンジンユニット10と共に車体フレーム2に対して揺動可能なエアクリーナ50とを備えている。
【0015】
まず、自動二輪車1の全体構成について簡単に説明する。車体フレーム2は、ヘッドパイプ2Aを有している。ヘッドパイプ2Aには、フロントフォーク5が支持されている。フロントフォーク5の上部には、ハンドル6が取り付けられている。フロントフォーク5の下端部には、前輪7が支持されている。車体フレーム2は、左右一対のサイドフレーム2Bを有している。サイドフレーム2Bは、側面視において、後方斜め上向きに延びている。エンジンユニット10の後部とサイドフレーム2Bの後部とには、クッションユニット8が架け渡されている。エンジンユニット10の後端部には、後輪9が支持されている。エンジンユニット10は変速機ケース29を備えており、変速機ケース29の側部にはキック軸15が取り付けられている。
【0016】
図2および図3に示すように、自動二輪車1は、センタースタンド80を備えている。センタースタンド80は、エンジンユニット10に回転可能に取り付けられた軸部81と、左右一対の脚部82とを有している。センタースタンド80は、軸部81を中心として回転可能である。センタースタンド80が立てられると、後輪9が地面から浮き上がり、自動二輪車1はセンタースタンド80によって支持される。脚部82が後方に延びるようにセンタースタンド80を回転させると、後輪9が地面に接触し、自動二輪車1は走行可能な状態となる。
【0017】
また、図2および図3に示すように(図1では図示省略)、車体フレーム2のセンタースタンド80よりも前方の部分には、ブラケット88を介してサイドスタンド83が取り付けられている。なお、本明細書においては、特に断らない限り、直接的に取り付けられている場合だけでなく間接的に取り付けられている場合も、単に「取り付けられている」と表現することとする。例えば、ブラケット88を介して車体フレーム2に間接的に取り付けられた上記サイドスタンド83は、車体フレーム2に取り付けられたものである。
【0018】
サイドスタンド83は、車体フレーム2に回転可能に取り付けられた軸部84と、脚部85とを有している。サイドスタンド83は、軸部84を中心として回転可能である。サイドスタンド83が立てられると、自動二輪車1は左方に傾いた姿勢でサイドスタンド83に支持される。自動二輪車1の走行時には、サイドスタンド83は脚部85が後方に延びるように回転させられる。
【0019】
側面視において、センタースタンド80の一部は変速機ケース29の下方に配置されている。側面視において、センタースタンド80はエアクリーナ50の下方に配置されている。サイドスタンド83は、センタースタンド80よりも前方に配置されている。側面視において、サイドスタンド83は、変速機ケース29よりも前方に配置されている。サイドスタンド83は、センタースタンド80よりも若干高い位置に配置されている。サイドスタンド83は、変速機ケース29の下端部と略同一の高さに配置されている。
【0020】
次に、エンジンユニット10の構成について説明する。図4に示すように、エンジンユニット10は、クランク軸12を収容するクランクケース14と、Vベルト式無段変速機(以下、CVTという)20と、CVT20を収容する変速機ケース29とを備えている。クランクケース14の前部には、シリンダ11が固定されている。クランク軸12の駆動力は、CVT20を介して後輪9に伝達されるようになっている。
【0021】
クランクケース14の具体的構成は何ら限定されないが、ここでは、クランクケース14は複数の部材から構成されている。ただし、クランクケース14は単一の部材から構成されていてもよい。なお、ここでは、クランク軸12を収容するケース、CVT20を収容するケースを便宜上、それぞれクランクケース14、変速機ケース29と称することとする。ケース14,29は、必ずしも互いに独立した部材である必要はなく、一つの部材が両ケース14,29の一部または全部を構成していてもよい。例えば、クランクケース14を構成している部材の一部が変速機ケース29の一部を構成していてもよい。
【0022】
詳細は後述するが、エンジンユニット10は、クランクケース14および変速機ケース29の他に、クランクケース14の外部に取り付けられたゴム製のフラップ95(図6A参照)等を備えている。ここでは、エンジンユニット10の外形を形成している部材であって且つ変速機ケース29以外の部材を、エンジンケース19と称することとする。クランクケース14およびフラップ95は、それぞれエンジンケース19の一要素である。
【0023】
CVT20は、駆動側のプーリである第1プーリ21と、従動側のプーリである第2プーリ22とを備えている。第1プーリ21と第2プーリ22とには、Vベルト23が巻き掛けられている。なお、図4では、第1プーリ21の前側部分と後側部分とでは、変速比が異なる状態(言い換えると、ベルト溝の幅が異なる状態)を表している。第2プーリ22についても同様である。
【0024】
第1プーリ21は、プーリ部材21aおよびプーリ部材21bを有している。プーリ部材21aおよびプーリ部材21bはクランク軸12の左端部に取り付けられており、第1プーリ21はクランク軸12と共に回転する。プーリ部材21aは、プーリ部材21bよりも左方、すなわち外方に位置している。プーリ部材21aは軸方向に移動不能であり、プーリ部材21bは軸方向に移動可能である。プーリ部材21aとプーリ部材21bとにより、Vベルト23を支持するV型のベルト溝が形成されている。プーリ部材21aの左側部分には、羽根26が形成されている。羽根26は、空気を吸い込むファンを形成している。
【0025】
第2プーリ22は、プーリ部材22aおよびプーリ部材22bを有している。プーリ部材22aおよびプーリ部材22bはメイン軸24に取り付けられており、第2プーリ22はメイン軸24と共に回転する。プーリ部材22aは、プーリ部材22bよりも左方、すなわち外方に位置している。プーリ部材22aは軸方向に移動可能であり、プーリ部材22bは軸方向に移動不能である。プーリ部材22aとプーリ部材22bとにより、Vベルト23を支持するV型のベルト溝が形成されている。メイン軸24は、図示しないギア機構を介して後輪軸25に連結されている。
【0026】
変速機ケース29は、クランクケース14の左方に配置されている。変速機ケース29は、クランクケース14に固定されたケース本体30と、ケース本体30に固定されたカバー40と、後述するダクト部60とを備えている。ケース本体30は、CVT20を収容している。すなわち、ケース本体30は、第1プーリ21、第2プーリ22、およびVベルト23を収容している。ケース本体30における第1プーリ21の左方には、開口31が形成されている。開口31は、羽根26の左方に位置している。カバー40は、ケース本体30の前側部分に取り付けられており、開口31を覆っている。
【0027】
図2に示すように、エアクリーナ50はエンジンユニット10の上方に配置されている。エアクリーナ50は、エンジンユニット10に固定されているが、車体フレーム2には固定されていない。エアクリーナ50は、エンジンユニット10と共に、車体フレーム2に対して揺動可能である。
【0028】
次に、変速機ケース29およびエアクリーナ50の詳細な構成を説明する。図5Aは、変速機ケース29およびエアクリーナ50の内部の構成を示す鉛直面断面図である。図6Aは図5AのVI−VI線断面図、図7は図5AのVII−VII線断面図、図8は図5AのVIII−VIII線断面図、図9は図5AのIX−IX線断面図(IX−IX線については図5Bも参照)である。
【0029】
図6Aに示すように、エアクリーナ50は、変速機ケース29の上方に位置する第1ケース51と、エンジンケース19の上方に位置する第2ケース52とを備えている。第2ケース52は、第1ケース51の右方に配置されている。第2ケース52は、ボルト59等を用いて、第1ケース51に対して右方から着脱自在に組み立てられている。ただし、第1ケース51および第2ケース52の結合位置および結合形態は、特に限定される訳ではない。例えば、第1ケース51および第2ケース52の結合位置は、本実施形態の結合位置よりも右方であってもよい。第1ケース51と第2ケース52との合面は、何ら限定されない。上記合面は、左右方向と直交する鉛直面であってもよく、その他の面であってもよい。
【0030】
図5Aに示すように、第1ケース51の内方には、上壁53aから下方に延びる縦壁53が設けられている。第1ケース51の内方は、縦壁53により、変速機用吸気室の一例である吸気室71と、エンジン用吸気室の一例である吸気室72とに仕切られている。吸気室72は、吸気室71の後方に形成されている。縦壁53は、第1ケース51の前後の中央位置よりも前方に設けられている。
【0031】
図6Aに示すように、第1ケース51とカバー40とは、ダクト部60を介して接続されている。ダクト部60は変速機ケース29の一部を構成している。第1ケース51は、前部が下方に開いた蓋形状に形成されており、ダクト部60の上部を覆っている。図5Aから明らかなように、側面視において、ダクト部60の上部は第1ケース51と重なる位置に配置されている。言い換えると、側面視において、ダクト部60の上部はエアクリーナ50と重なっており、また、吸気室71と重なっている。図6Aに示すように、カバー40の内方且つケース本体30の外方には、吸気室73が区画されている。吸気室71と吸気室73とは、ダクト部60を介して連通している。
【0032】
本実施形態では、ダクト部60の上端が上流端部、下端が下流端部となっている。ここで上流端部とは、ダクト部60を流れる空気の流れ方向に関して、最も上流側に位置する端部のことである。下流端部とは、ダクト部60を流れる空気の流れ方向に関して、最も下流側に位置する端部のことである。本実施形態では、ダクト部60は、ほぼ真っ直ぐな円筒状に形成されている。ただし、例えばダクト部60を湾曲した筒状に形成することとし、ダクト部60の上端部と下端部との間に上流端部または下流端部を配置することも可能である。また、例えば、ダクト部60の側面に開口が形成され、その開口が上流端部または下流端部となっていてもよい。
【0033】
ダクト部60の上部は、上方に向かって広がっており、ファンネル(funnel)状に形成されている。ダクト部60の上端よりも下方には、径方向の外方に突出する鍔63Aおよび63Bが形成されている。鍔63Aはリング状に形成されている。鍔63Bは前方に延びている(図5A参照)。なお、ここでは上下に離間する2つの鍔63Aおよび63Bが設けられているが、鍔の個数は特に限定される訳ではない。
【0034】
図5Bに示すように、自動二輪車1の走行時にダクト部60の前部に前方から空気が供給されるように、第1ケース51の下部51sは、変速機ケース29から上方に離間している。言い換えると、ダクト部60の前方において、エアクリーナ50と変速機ケース29とは上下に離間している。
【0035】
図6Aに示すように、第1ケース51の下部には、下方に開いた吸気口74が形成されている。吸気口74は、変速機用吸気室である吸気室71につながる吸気口、すなわち変速機用吸気口の一例である。吸気口74は、ダクト部60の外周面と第1ケース51の内面とによって区画されている。ここでは、吸気口74はダクト部60の全周囲に形成されている。すなわち、吸気口74は、ダクト部60の前方、左方、後方、および右方にわたって形成されている。ただし、吸気口74はダクト部60の周囲の一部のみに形成されていてもよい。吸気口74は変速機ケース29の上壁29aに対向している。詳しくは、吸気口74は、ケース本体30およびカバー40の少なくとも一方の上壁29aに対向している。吸気口74にはフィルタ35Aが設けられている。フィルタ35Aはダクト部60の周囲を囲んでいる。フィルタ35Aは、空気を通過させる一方、砂塵や泥水等の通過は抑制する。フィルタ35Aは、例えばスポンジ等の多孔体によって構成される。なお、フィルタ35Aは必ずしも必要ではなく、適宜省略することが可能である。
【0036】
ケース本体30の内部には、CVT20が収容されたベルト室75が形成されている。吸気室73とベルト室75とは、開口31を通じてつながっている。カバー40の内部には、開口31を覆うフィルタ36が設けられている。フィルタ36もフィルタ35Aと同様、例えばスポンジ等の多孔体によって構成される。フィルタ36は、ベルト室75への砂塵や泥水等の浸入を抑制する。なお、フィルタ36は必ずしも必要ではなく、適宜省略することが可能である。
【0037】
図5Aに示すように、第1ケース51の内部には、縦壁53からいったん後方に延び、下方に屈曲した縦壁54が形成されている。吸気室72は縦壁54により、吸気室72aと吸気室72bとに区画されている。縦壁54にはダクト61が取り付けられており、このダクト61は縦壁54を貫通している。吸気室72aと吸気室72bとは、ダクト61を介してつながっている。縦壁53よりも後方且つ縦壁54よりも前方には、下方に開いた吸気口76が形成されている。吸気口76は、エンジン用吸気室の一例である吸気室72につながる吸気口であり、エンジン用吸気口の一例である。吸気口76は、変速機ケース29の上壁29aに対向している。詳しくは、吸気口76は、ケース本体30およびカバー40の少なくとも一方の上壁29aに対向している。
【0038】
図7および図8に示すように、第1ケース51と第2ケース52との間には、仕切板55が設けられている。仕切板55には開口56が形成されている。第2ケース52の内部に形成された吸気室77は、開口56を通じて吸気室72bとつながっている。仕切板55の開口56には、フィルタ37が取り付けられている。フィルタ37は、吸気室72bから吸気室77に向かって流れる空気を浄化する。前述した通り、第2ケース52は第1ケース51に対して、右方から着脱自在である。第2ケース52を右方に取り外すと、仕切板55は外部に露出する。第2ケース52を取り外すことによって、フィルタ37を容易に交換することができる。
【0039】
図8に示すように、第2ケース52の前壁57には、ダクト62が取り付けられている。ダクト62の後端部は吸気室77内で開口している。ダクト62の前部は前壁57から前方に突出している。ダクト62の前端部には、排出口62aが形成されている。排出口62aには、エンジン13の吸気管(図示せず)が接続される。吸気室72(すなわち吸気室72aおよび72b)、吸気室77、ダクト62、および上記吸気管により、エンジン13に空気を供給する吸気通路が形成されている。
【0040】
図6Aに示すように、クランクケース14の上方には、ゴム製のフラップ95が配置されている。フラップ95は、薄肉の板状部材からなっており、少なくとも一部はエアクリーナ50の第2ケース52とクランクケース14との間に配置されている。第2ケース52の前壁57の下部には、下方に延びるリブ57a(図9参照)が形成されている。図9に示すように、フラップ95は、リブ57aの前面に取り付けられた縦板95A(図4も参照)と、縦板95Aの下端部から略後方へ延びる平面視略L字形の横板95Bとを有している。第2ケース52のリブ57aには、左右に並ぶ3つの突起96が形成され、縦板95Aはそれらの突起96に差し込まれて固定されている。図9に示すように、横板95Bの後縁部95cはクランクケース14の形状に沿っており、後縁部95cの点P1から点P2までの部分(すなわち、点P1の右方且つ点P2の左方の部分)は、クランクケース14と接触している。フラップ95により、第2ケース52とクランクケース14との間の空間に対して、少なくとも点P1から点P2までの部分から泥水等が浸入することは防止されている。
【0041】
ところで、自動二輪車1の走行中、路面から砂塵または泥水等が跳ね上げられる場合がある。また、雨天の際に、自動二輪車1に雨水が降りかかる場合がある。本実施形態では、吸気口74および吸気口76に対する砂塵や泥水等の浸入を抑制するために、吸気口74および吸気口76の周囲の少なくとも一部に、以下に説明するようなラビリンス構造が設けられている。次に、それらのラビリンス構造の詳細について説明する。なお、ラビリンス構造とは、蛇行した通路を形成する構造のことである。ラビリンス構造によれば、通路が蛇行していることにより、空気の流通が可能である一方、砂塵や泥水等の浸入を効果的に抑えることができる。
【0042】
まず、図6Bを参照しながら、ダクト部60の左方に形成されたラビリンス構造R1について説明する。図6Bに示すように、吸気口74に対向するカバー40の上壁40aには、上方に突出する突出壁40bが設けられている。突出壁40bは、第1ケース51の下端部51aの右方に配置されており、側方から見ると、第1ケース51の下端部51aと突出壁40bとは重なっている。突出壁40bは、第1ケース51によって覆われている。吸気口74の下方には、いったん右方向に向かってから上向きに曲がり、さらに上向きから下向きに曲がった蛇行通路101が形成されている。この蛇行通路101を形成している第1ケース51の下端部51a、カバー40の上壁40a、および突出壁40bにより、ラビリンス構造R1が形成されている。
【0043】
本実施形態では更に、第1ケース51の下端部51aと突出壁40bとの間に、多孔体からなるシール部材として、スポンジ35Bが設けられている。すなわち、蛇行通路101の一部に、スポンジ35Bが配置されている。ただし、スポンジ35Bは必ずしも必要ではなく、適宜省略することが可能である。
【0044】
次に、ダクト部60の右方に形成されたラビリンス構造R2について説明する。図6Bに示すように、エアクリーナ50の第2ケース52には、下壁52aから下方に延びる縦壁52bと、縦壁52bの下部から左方に延びる横壁52cと、横壁52cから下方に延びるリブ52dとが設けられている。フラップ95の左端部は、横壁52cおよびリブ52dと対向している。フラップ95の左端部には、上向きに突出する凸部95aが形成されている。ただし、上向きに突出する凸部95aの代わりに、あるいは上向きに突出する凸部95aと共に、下向きに突出する凸部が形成されていてもよい。また、凸部95aは必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。フラップ95の左端部(ここでは凸部95a)は、第2ケース52の横壁52cの下方且つリブ52dの右方に位置している。横壁52c、リブ52d、およびフラップ95により、いったん左方向に向かってから下向きに曲がり、さらに下向きから上向きに曲がった蛇行通路102が形成されている。この蛇行通路102を形成している横壁52c、リブ52d、およびフラップ95により、ダクト部60の右方にラビリンス構造R2が形成されている。ただし、ラビリンス構造R2を形成する部材は特に限定されず、フラップ95以外の部材を用いることも可能である。
【0045】
上述のようなラビリンス構造R1またはR2は、ダクト部60の周囲の任意の位置に形成することができる。ラビリンス構造R1またはR2は、ダクト部60の前方に形成されていてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、吸気口74の左方のラビリンス構造R1および右方のラビリンス構造R2だけでなく、吸気口76の右方にも、ラビリンス構造R3が形成されている。次に、吸気口76の右方に形成されたラビリンス構造R3について説明する。
【0047】
図7に示すように、クランクケース14の上壁14bには、上方に突出するリブ14cが形成されている。ここではリブ14cは、第2ケース52のリブ52dの右方に配置されている。ただし、リブ14cは、第2ケース52のリブ52dの左方に配置されていてもよい。また、第2ケース52のリブ52dの左方および右方の両方にリブ14cが設けられていてもよい。リブ14cとリブ52dとは、側方から見て重なった位置に配置されている。これらのリブ14cおよびリブ52dにより、いったん左方向に向かってから上向きに曲がり、左向きに進んだ後、さらに下向きに曲がってから左向きに曲がる蛇行通路103が形成されている。この蛇行通路103を形成しているクランクケース14のリブ14cおよび第2ケース52のリブ52dにより、吸気口76の右方にラビリンス構造R3が形成されている。
【0048】
図9は、第2ケース52のリブ52dと、フラップ95と、クランクケース14のリブ14cとの前後方向の位置関係を表している。リブ52dの前部の右方にはフラップ95が設けられており、前述のラビリンス構造R2が形成されている。リブ52dの後部の右方にはリブ14cが設けられており、前述のラビリンス構造R3が形成されている。ラビリンス構造R2とラビリンス構造R3との間には、リブ52dの右方にフラップ95およびリブ14cの両方が配置されたラビリンス構造R4(図6Bの仮想線で図示されたリブ14c参照)が形成されている。
【0049】
図5Bに示すように、フラップ95は、側面視において、ダクト部60の前端部の近傍から吸気口76の前端部の近傍にまで後方に延びている。図5Aに示すように、クランクケース14のリブ14cは、側面視において、吸気口76の前端部の真下の位置から、変速機ケース29の中間部の近傍にまで後方に延びている。図5Bに示すように、ラビリンス構造R2は、側面視において、概ね吸気口74の下方に形成されている。ラビリンス構造R4は、側面視において、概ね吸気口74の後部および吸気口76の前部の下方に形成されている。ラビリンス構造R3は、側面視において、概ね吸気口76の下方と、エアクリーナ50の吸気口76よりも後方部分の下方とに形成されている。
【0050】
エアクリーナ50は、外部の空気をエンジン13に導く役割を果たすと共に、外部の空気をCVT20に導く役割を果たす。エアクリーナ50は、外部の空気をエンジン13に導く吸気通路の一部を形成すると共に、外部の空気をCVT20に導く空気通路の一部も形成している。次に、エアクリーナ50等における空気の流れについて説明する。
【0051】
まず、エアクリーナ50からエンジン13に至る空気の流れを説明する。エアクリーナ50の外部の空気は、ラビリンス構造R3およびR4を通じて、吸気口76に吸い込まれる。前述の通り、ラビリンス構造R3およびR4では、砂塵や泥水等の通過は抑制される。そのため、たとえ空気が砂塵や泥水等と共に流れ込んできたとしても、その砂塵や泥水等は、ラビリンス構造R3およびR4において空気と分離される。したがって、吸気口76には専ら空気のみが吸い込まれる。吸気口76から吸気室72aに吸い込まれた空気は、ダクト61を通過し、吸気室72b内に流入する。吸気室72b内の空気は、フィルタ37を通過することによって浄化され、吸気室77に流入する。吸気室77内の空気は、ダクト62を通じて吸気管(図示せず)に導かれ、エンジン13に供給される。
【0052】
次に、CVT20の冷却用空気の流れを説明する。クランク軸12の回転に伴って第1プーリ21が回転すると、羽根26(図6A参照)が回転する。すると、ベルト室75の内部に空気を導く吸引力が発生する。エアクリーナ50の外部の空気は、ラビリンス構造R1、R2、およびR3を通じて、吸気口74に吸い込まれる。ラビリンス構造R1、R2、およびR3では砂塵や泥水等の通過は抑制されるので、空気が砂塵や泥水等と共に流れ込んできたとしても、その砂塵や泥水等は空気から分離される。したがって、吸気口74には、砂塵や泥水等が分離された空気が吸い込まれることになる。
【0053】
上記空気は、吸気口74を通じて吸気室71に流入する。この際、空気はフィルタ35Aによって浄化される。吸気室71内の空気は、ダクト部60を通じて吸気室73に流入する。吸気室73内の空気は、フィルタ36を通過することによって更に浄化され、ベルト室75に導かれる。ベルト室75内の空気は、第1プーリ21、第2プーリ22、およびVベルト23の周囲を流れることにより、これら第1プーリ21、第2プーリ22、およびVベルト23を冷却する。図5Aに示すように、ケース本体30の後部には排気口78が形成されている。CVT20を冷却した空気は、排気口78から排出される。
【0054】
前述の通り、吸気口74および吸気口76に対する砂塵や泥水等の浸入は、上記ラビリンス構造R1、R2、R3、およびR4等によって抑制される。自動二輪車1が水たまりを通過する際には、前輪7によって水が跳ね上げられ、その水は水しぶきとなって後方斜め上向きに飛散しやすい。飛散した水は、サイドスタンド83およびセンタースタンド80に当たって更に拡散され、吸気口74および吸気口76の近傍に至るおそれがある。ラビリンス構造R1は、飛散した水が吸気口74に左方から流入することを効果的に抑制する。ラビリンス構造R2、R3、およびR4は、飛散した水が吸気口74および吸気口76に右方から流入することを効果的に抑制する。しかし、本実施形態に係る自動二輪車1は、吸気口74および吸気口76に対する泥水等の浸入を更に抑制するために、以下に説明する水返し用のリブ91およびリブ92を備えている。
【0055】
図3に示すように、変速機ケース29のケース本体30の前壁30bには、前方に突出するリブ91が形成されている。リブ91は、吸気口74の前方斜め下の位置に配置されている(図2参照)。リブ91は、サイドスタンド83によって拡散された水しぶきが吸気口74に浸入することを効果的に抑制するように、サイドスタンド83と吸気口74との間に配置されている。リブ91は水平方向に延びている。ただし、リブ91の形状および寸法等は、特に限定される訳ではない。リブ91は、変速機ケース29の前壁30bからクランクケース14の前壁14aにわたって延長されていてもよい。
【0056】
また、変速機ケース29のケース本体30の側壁30aには、左方に突出するリブ92が形成されている。図2に示すように、リブ92は、側面視において吸気口76の後方斜め下の位置に配置されている。ただし、リブ92は、側面視において、吸気口76の下方の位置にまで延長されていてもよい。リブ92は、側面視において、吸気口76の下方に配置されていてもよい。リブ92は、センタースタンド80によって拡散された水しぶきが吸気口76に浸入することを効果的に抑制するように、側面視において、吸気口76よりも低く且つセンタースタンド80よりも高い位置に配置されている。リブ92は略水平方向に延びている。ただし、リブ92の形状および寸法等は、特に限定される訳ではない。
【0057】
図1に示すように、自動二輪車1によれば、側面視において車体カバー4は変速機ケース29の上方に位置している。側面視において、車体カバー4の下縁4aは変速機ケース29から上方に離間している。車体カバー4は変速機ケース29の側方を覆っていないので、車体カバー4を側方に大型化する必要はない。したがって、自動二輪車1によれば、車幅の小型化を図ることができる。
【0058】
しかし、単に、側面視において車体カバー4を変速機ケースの29の上方に配置しただけでは、エンジン13に空気を導く吸気通路と、CVT20に冷却用の空気を導く空気通路との全体の構成が複雑になるおそれがある。ところが本実施形態によれば、図5Aおよび図6Aに示すように、空気をCVT20に導く空気通路は、第1ケース51の一部(すなわち、吸気室71を形成している部分)、ダクト部60、およびカバー40によって形成されている。このように、エアクリーナ50は、空気をエンジン13に導く吸気通路だけでなく、空気をCVT20に導く空気通路の一部も形成している。また、エアクリーナ50は車体フレーム2に固定されておらず、エンジンユニット10と一体となって車体フレーム2に対して揺動する。このように、エアクリーナ50はエンジン13およびCVT20の両方に空気を導き、車体フレーム2に対して揺動可能であることから、揺動を吸収するための特殊な構造(例えば、前述の特許文献2に開示された蛇腹部等)は不要であり、エアクリーナ50を簡単な構造で構成することができる。
【0059】
ところで、上記構成によると、図1に示すように、エアクリーナ50の側方および変速機ケース29の側方は、車体カバー4によって覆われていない。また、エアクリーナ50の吸気口74および吸気口76の位置は、比較的低い(図2参照)。そのため、何らの工夫も施さなければ、エアクリーナ50に対して砂塵や泥水等が浸入しやすくなるおそれがある。しかし、本実施形態によれば、吸気口74および吸気口76は、変速機ケース29の上壁29aに対向している(図5A参照)。また、吸気口74および吸気口76の側方には、ラビリンス構造R1、R2、R3、およびR4が設けられている。そのため、路面や後輪9から跳ね上げられる砂塵または泥水等は、吸気口74および吸気口76に吸い込まれにくい。
【0060】
したがって、自動二輪車1によれば、簡単な構造により、車幅の増大を抑制できると共に、エアクリーナ50内に砂塵や泥水等が浸入することを抑制することができる。自動二輪車1はユニットスイング式のエンジンユニット10を備えたスクータ型自動二輪車であるが、変速機ケース29に向かって空気を導くダクト部60をユニットスイングの範囲で完結しながら、砂塵や泥水等の浸入を抑制することができる。
【0061】
図6Aに示すように、車両後方から見て後輪9とダクト部60との間には、ラビリンス構造R2が形成されている。エアクリーナ50とエンジンケース19との間の空間97、すなわちエアクリーナ50の第2ケース52とフラップ95との間の空間97は、ラビリンス構造R2が形成する蛇行通路102(図6B参照)を通じて吸気口74に連通している。この空間97には、後輪9から跳ね上げられた砂塵や泥水等が浸入するおそれがあるが、当該空間97から吸気口74に対する砂塵や泥水等の浸入は、ラビリンス構造R2によって十分に抑制される。
【0062】
図2に示すように、変速機ケース29のケース本体30の側壁30aには、側方に突出するリブ92が設けられている。リブ92は、吸気口74および吸気口76よりも低い位置に配置されている。そのため、路面から吸気口74および吸気口76に向かって巻き上げられる泥水等を、リブ92によって阻止することができる。したがって、泥水等が吸気口74および吸気口76に浸入することを、更に抑制することができる。
【0063】
また、図2に示すように、リブ92は、側面視において、吸気口74および吸気口76よりも低く且つセンタースタンド80よりも高い位置に配置されている。そのため、路面から跳ね上げられた水がセンタースタンド80によって拡散されたとしても、その水が吸気口74および吸気口76に向かうことは、リブ92によって阻止される。したがって、吸気口74および吸気口76に水が浸入することを十分に抑制することができる。
【0064】
図5Aおよび図5Bに示すように、自動二輪車1の走行に伴ってダクト部60の前部に前方から空気が供給されるように、ダクト部60の前方において、エアクリーナ50と変速機ケース29とは上下に離間している。ここでは、ダクト部60の前方において、第1ケース51の下部とカバー40の上部とは、上下に離間している。これにより、ダクト部60の前部に空気が当たらないようにダクト部60の前方を塞ぐ構成と比べると、空気を吸気口74に効率的に流入させることができる。
【0065】
図3に示すように、変速機ケース29のケース本体30の前壁30bには、前方に突出するリブ91が設けられている。リブ91は、吸気口74よりも低い位置に配置されている。そのため、吸気口74から水が浸入することを抑制することができる。
【0066】
図2に示すように、リブ91は、サイドスタンド83と吸気口74との間に配置されている。そのため、路面から跳ね上げられた水がサイドスタンド83によって拡散されたとしても、その水が吸気口74に向かうことは、リブ91によって阻止される。したがって、吸気口74から水が浸入することをより効果的に抑制することができる。
【0067】
なお、リブ91の位置はケース本体30の前壁30bに限定されない。リブ91は、クランクケース14の前壁14a(図3参照)等に形成されていてもよい。また、リブ91は、変速機ケース29およびクランクケース14の両方の前壁に形成されていてもよい。
【0068】
図5Bに示すように、ダクト部60の前部には、径方向外向きに突出する鍔63Bが設けられている。そのため、ダクト部60の前方から吸気室71に泥水等が浸入することは抑制される。また、ダクト部60の外周面に付着した泥水等は、外周面を伝って上方に移動しにくくなり、吸気室71に浸入しにくくなる。
【0069】
図6Bに示すように、エアクリーナ50の第1ケース51と、変速機ケース29のカバー40との間の少なくとも一部は、多孔体としてのスポンジ35Bによってシールされている。そのため、第1ケース51とカバー40との間から空気を吸い込むことができる一方、その間から砂塵や泥水等が浸入することを十分に抑制することができる。
【0070】
図2に示すように、側面視において、吸気口74および吸気口76は、センタースタンド80の上方に位置している。しかし、前述の通り、自動二輪車1によれば、砂塵や泥水等は、吸気口74および吸気口76から吸い込まれにくい。したがって、吸気口74および吸気口76とセンタースタンド80とが上記位置関係にあるにも拘わらず、センタースタンド80によって拡散された泥水等は、吸気室71および吸気室72に浸入しにくい。
【0071】
図5Aに示すように、吸気口74にはフィルタ35Aが設けられている。このフィルタ35Aにより、砂塵や泥水等が吸気口74を通じて吸気室71内に浸入することを、より一層抑制することができる。
【0072】
図6Aに示すように、変速機ケース29は、ケース本体30とカバー40とを有している。カバー40は、ダクト部60を介してエアクリーナ50の第1ケース51に接続されると共に、開口31を覆うようにケース本体30の側方に取り付けられている。このようにケース本体30とカバー40とを組み合わせることにより、空気をCVT20に導く空気通路を簡易且つコンパクトに構成することができる。
【0073】
図5Aに示すように、カバー40の水平方向の長さは、吸気室71の水平方向の長さよりも長い。カバー40は、吸気口74および吸気口76の側方を覆う壁41(図3参照)を備えている。カバー40により、吸気口74だけでなく、吸気口76の周囲の一部も覆うことができる。自動二輪車1によれば、カバー40により、砂塵や泥水等が浸入しにくい吸気口74および吸気口76を容易に形成することができる。
【0074】
図8に示すように、第1ケース51と第2ケース52との間には、フィルタ37が設けられている。第2ケース52は第1ケース51に対して、側方から着脱自在である。第2ケース52を第1ケース51から取り外すことにより、フィルタ37を容易に交換することができる。
【0075】
本実施形態では、ダクト部60はカバー40と別体であり、ダクト部60はカバー40に取り付けられていた。しかし、ダクト部60とカバー40とは、一体的に形成されていてもよい。すなわち、一つの部材がダクト部60とカバー40とを形成していてもよい。
【0076】
本実施形態では、エアクリーナ50とカバー40とエンジンケース19とにより、ラビリンス構造R1〜R4が形成されていた。しかし、ダクト部60により、またはダクト部60と他の部材とにより、吸気口74の側方に他のラビリンス構造が形成されていてもよい。吸気口74および/または吸気口76の側方に位置するラビリンス構造は、エンジンケース19、変速機ケース29、およびエアクリーナ50のうちの二つ以上を組み合わせて構成されていてもよく、いずれか一つのみで形成されていてもよい。例えば、エンジンケース19、変速機ケース29、およびエアクリーナ50のいずれか一つに、吸気口74および/または吸気口76の側方に位置し、入口および出口が形成された蛇行する貫通孔が形成されていてもよい。この場合、その貫通孔を区画する部分がラビリンス構造を形成することになる。
【0077】
本実施形態では、ダクト部60の下流端部は、カバー40の上部に取り付けられていた。しかし、カバー40の側部に開口が形成され、ダクト部60の下流端部が上記開口に取り付けられていてもよい。
【0078】
水返し用のリブ91は、変速機ケース29自体に形成されていなくてもよく、リブ91を有する部材を変速機ケース29等に取り付けるようにしてもよい。また、リブ91は、変速機ケース29以外の部分に形成されていてもよい。リブ92についても同様である。リブ92は、変速機ケース29自体に形成されていなくてもよく、リブ92を有する部材を変速機ケース29等に取り付けるようにしてもよい。リブ91は、変速機ケース29以外の部分に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 スクータ型自動二輪車
2 車体フレーム
4 車体カバー
10 エンジンユニット
13 エンジン
19 エンジンケース
20 Vベルト式無段変速機
29 変速機ケース
30 ケース本体
40 カバー
50 エアクリーナ
51 第1ケース
52 第2ケース
53 縦壁
60 ダクト
62 排出口
71 吸気室(変速機用吸気室)
72 吸気室(エンジン用吸気室)
74 吸気口(変速機用吸気口)
76 吸気口(エンジン用吸気口)
R1,R2,R3,R4 ラビリンス構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
クランク軸を収容したエンジンケースと、前記エンジンケースの側方に配置され、上壁を有し且つ内部にベルト室が形成された変速機ケースと、前記ベルト室に配置されたVベルト式無段変速機と、を有し、前記車体フレームに揺動可能に支持されたエンジンユニットと、
前記車体フレームの側方を覆い、側面視において前記変速機ケースの上方に位置する車体カバーと、
前記エンジンユニットの上方に配置され、前記エンジンユニットと共に前記車体フレームに対し揺動可能なエアクリーナと、を備え、
前記変速機ケースは、その下流端部が前記ベルト室に連通し、その上流端部が側面視において前記エアクリーナと重なるように、少なくとも前記上流端部が前記エアクリーナによって覆われたダクト部を備え、
前記エアクリーナには、前記エアクリーナの内方を前記ダクト部の上流端部が収容される変速機用吸気室と前記変速機用吸気室よりも後方に位置するエンジン用吸気室とに区画する縦壁と、前記変速機ケースの上壁に対向し且つ前記変速機用吸気室につながる下方に開いた変速機用吸気口と、前記変速機ケースの上壁に対向し且つ前記エンジン用吸気室につながる下方に開いたエンジン用吸気口と、前記エンジン用吸気室と連通し且つ前記エンジンに供給される空気を排出する排出口とが形成され、
前記エンジンケース、前記変速機ケース、および前記エアクリーナのうちの少なくとも一つにより、前記変速機用吸気口および/または前記エンジン用吸気口の側方に、蛇行通路を区画するラビリンス構造が形成されている、スクータ型自動二輪車。
【請求項2】
前記エンジンユニットの後部に支持された後輪を備え、
前記ラビリンス構造は、車両後方から見て前記後輪と前記ダクト部との間に形成され、
前記エアクリーナと前記エンジンケースとの間の空間は、前記蛇行通路を通じて前記変速機用吸気口に連通している、請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
【請求項3】
前記変速機ケースの側壁の前記変速機用吸気口よりも低い部分から側方に突出するリブを備えている、請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
【請求項4】
当該スクータ型自動二輪車の走行に伴って前記ダクト部の前部に前方から空気が供給されるように、前記ダクト部の前方において、前記エアクリーナと前記変速機ケースとが上下に離間している、請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
【請求項5】
前記エンジンケースまたは前記変速機ケースの前壁の前記変速機用吸気口よりも低い部分から前方に突出するリブを備えている、請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
【請求項6】
前記ダクト部の前部は、前記エアクリーナの内面から離間しており、
前記ダクト部の前部には、径方向外向きに突出する鍔が設けられている、請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
【請求項7】
前記エアクリーナと前記変速機ケースとの間の少なくとも一部は、多孔体によってシールされている、請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
【請求項8】
前記エンジンユニットに回転自在に支持され、側面視において少なくとも一部が前記エアクリーナの下方に位置するスタンドを備えている、請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
【請求項9】
前記変速機用吸気口に設けられたフィルタを備えている、請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
【請求項10】
前記Vベルト式無段変速機は、側方から空気を吸い込むファンを備え、
前記変速機ケースは、前記ファンの側方に位置する開口が形成され且つ前記Vベルト式無段変速機を収容したケース本体と、前記開口を覆うように前記ケース本体の側方に取り付けられると共に前記エアクリーナの下方に配置されたカバーと、を備え、
前記ダクト部の下端端部は、前記カバーと前記ケース本体との間に位置している、請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
【請求項11】
前記カバーは、前記変速機用吸気口および前記エンジン用吸気口の側方を覆う壁を備えている、請求項10に記載のスクータ型自動二輪車。
【請求項12】
前記エアクリーナは、
前記変速機ケースの上方に配置され、内方が前記縦壁によって前記変速機用吸気室と前記エンジン用吸気室とに仕切られた第1ケースと、
前記エンジンケースの上方且つ前記第1ケースの側方に配置され、前記第1ケースに着脱自在に取り付けられた第2ケースと、を有し、
前記変速機用吸気口および前記エンジン用吸気口は、前記第1ケースの下部に形成され、
前記第2ケースの内部には、前記エンジン用吸気室から前記排出口に至る空気通路が形成され、
前記第1ケースと前記第2ケースとの間に介在し、前記エンジン用吸気室から前記第2ケースの内部に向かって流れる空気を浄化するフィルタを備えている、請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−245890(P2012−245890A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119345(P2011−119345)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)