説明

スケール除去装置の電極構造

【課題】スケール成分を除去するスケール除去装置の電極構造において、その電極板に接続される配線端子の配置構成に伴う局部的な電流密度の集中を回避して、電解処理の効率化と電極構造におけるメンテンナンス性の向上を図る。
【解決手段】本発明のスケール除去装置の電極構造は、熱交換設備11に循環供給される冷却水11cを電解処理する電解槽12を備えたスケール除去装置10の電極構造であって、電解槽12内に互いに所定の電極間隔を有しその極性を交互に切り替えて並列配置される複数の電極板13a〜13dと、電極板の周縁114から垂直方向に延出させた配線端子14a〜14dと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内などへのスケール付着が問題となる熱交換設備において、その冷却水中に含まれるスケール成分を析出除去するためのスケール除去装置の電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クーリングタワーなどの熱交換器などに冷却水を循環させる冷却水循環装置は、熱交換器によって温められた冷却水を冷却塔から散布して冷却し、再び熱交換器に循環させるものである。このような冷却水循環装置においては、その配管の内壁に不溶性のカルシウム塩などがスケールとして付着して、配管の詰まりや冷却効率の低下が生じる。このため、冷却水に殺菌剤やスケール防止剤等の薬剤を添加することが一般的である。
また、水の蒸発によるスケールの付着を防止するために冷却水の硬度を常時モニタして、規定値以上の硬度になるとクーリングタワー内の冷却水を入れ換えるといったことも行われている。
【0003】
しかし、近年では環境汚染防止という観点から薬剤の使用が自粛されるようになり、電解処理を利用したスケール付着防止方法が開発されている。例えば、特許文献1(再公表特許WO2006/027825号公報)には、冷却水循環経路に設けられた冷却水を貯留する電解槽と、前記電解槽内に設置された一対の電極と、前記一対の電極板間に電圧を印加する電圧源と、前記一対の電極板間に電圧を印加することにより前記電解槽内に貯留された前記冷却水の電解処理を行う電解装置とを備えた冷却水循環装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2010−69366号公報)には、電解槽を備えたスケール除去装置において、複数の電極板間に定電流を供給して電解処理する際に、電源部の電源電圧の変化に基づいて電極板により形成される接続回路構成を切り換えて制御することにって、電極構造などにおける耐用性とメンテナンス性を高めるようにした技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表特許WO2006/027825号公報
【特許文献2】特開2010−69366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スケール除去装置における従来の電極構造では、スケール除去装置の大規模化や処理量の増大に伴って電極板を流れる電流量が大きくなるため、電極板に接続する配線端子を太くする必要がある。これによって、これらの配線端子に対向する隣接した電極板の特定箇所に電流が集中して、均一で安定したスケールの析出が妨げられ、処理効率が悪化したり電極板にかかるメンテナンスが増加したりするという課題があった。
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、冷却水中のスケール成分を電解析出させてスケールを除去するスケール除去装置の電極構造において、電極板に接続される配線端子の配置構成に伴う電流密度の集中を回避するとともに、
複数の電極板を収納した電解槽を極めてコンパクト化した電極構造及び電解槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のスケール除去装置の電極構造は、
熱交換設備に循環供給される冷却水を電解処理する電解槽を備えたスケール除去装置の電極構造であって、
前記電解槽内に互いに所定の電極間隔を有しその極性を交互に切り替えて並列配置される複数の電極板と、
前記電極板の周縁から垂直方向に延出させた配線端子と、
有することを特徴とする。
(2)本発明のスケール除去装置の電極構造は、前記(1)において、
前記電極板の周縁より外方に突出して形成した突出部を、各電極板の周縁の水平方向にずらして設け、
前記配線端子の基部を該突出部に接続して、
該突出部から該配線端子を垂直方向に延出させることを特徴とする。
(3)本発明の電解槽は、前記(1)又は(2)のスケール除去装置の電極構造を、
配線端子の延出方向が反対方向となるように組み合わせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスケール除去装置の電極構造は、
電解槽内に互いに所定の電極間隔を有しその極性を交互に切り替えて並列配置される複数の電極板と、電極板の周縁から垂直方向に延出させた配線端子と、を有するので、
電極間距離を近接させて配設させることができ、
このように電極板を近接させて配設することによって、複数の電極板を収納した電解槽を極めてコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例の電極構造を組み込んだスケール除去装置の概略図である。
【図2】(a)は実施例1に係る電極構造を示す斜視図であり、(b)はその上面図である。
【図3】(a)は実施例2に係る電極構造を示す斜視図であり、(b)はその上面図である。
【図4】実施例3に係る電極構造を示す斜視図である。
【図5】実施例4に係る電極構造を示す斜視図である。
【図6】(a)は、実施例1の電極構造における着脱可能蓋を取り付けた場合を示す斜視図であり、(b)は実施例2の電極構造における着脱可能蓋を取り付けた場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係るスケール除去装置の電極構造は、熱交換設備に循環供給される冷却水を電解処理する電解槽を備えたスケール除去装置の電極構造であって、前記電解槽内に互いに所定の電極間隔を有しその極性を交互に切り替えて並列配置される複数の電極板と、前記電極板の周縁から垂直方向に延出させた配線端子と、を有する。
【0011】
配線端子を電極板の周縁から垂直方向に延出させたことによって、冷却水中のスケール成分を電解析出してスケールを除去するスケール除去装置の電極構造において、電極間距離を近接させて配設させることができ、このように電極板を近接させて配設することによって、複数の電極板を収納した電解槽を極めてコンパクト化することができる。
【0012】
冷却水を処理するスケール除去装置は、例えばエアコンやボイラー、冷凍機、冷却加熱器、クーリングタワーなどの熱交換設備に付設され、循環供給される冷却水中に含まれるカルシウムイオンなどのスケール成分を電解処理により析出させて、冷却水中のスケール成分を除去するための装置である。
【0013】
電解槽は、例えば、熱交換設備から冷却水が供給される供給口と、電解処理された冷却水の排出口とを備え、熱交換設備に供給される冷却水を電解処理する容器体である。このような電解槽には、複数枚の電極板が互いに並行配置されているとともに、必要に応じて隔膜板を電極板間に配置して電解セル状に形成させている。
【0014】
電極板は、略矩形板状に形成された金属薄肉導電体であって、その電極材質に関して特に制限はないが、例えば、チタンや銅などの基材表面にプラチナめっき層を形成したものや、プラチナとイリジュームの複合めっき層を設けたものなどを適用することもできる。
プラチナの表面をイリジューム等の貴金属で被うことにより、その触媒作用により電気化学反応を促進させると共に陽極酸化による電極の溶出を少なくし電極の消耗を抑えることができる。
また、カーボン等の冷却水への電極板の成分の溶出が起こらないものが使用できる。
【0015】
本実施形態のスケール除去装置の電極構造は、この電極板に接続される前記配線端子を、電極板の周縁から垂直方向に延出させる。
また、電極板の周縁より外方に突出して形成した突出部を、各電極板の周縁の水平方向にずらして設け、配線端子の基部を突出部に接続して、突出部から配線端子を垂直方向に延出させることもできる。
また、スケール除去装置において、本実施形態の電極構造を、その配線端子の延出方向が反対方向となるように組み合わせて電解槽とすることもできる。
これによって、冷却水中のスケール成分を電解析出してスケールを除去するスケール除去装置において、電極間距離を近接させて配設させることができ、このように電極板を近接させて配設することによって、複数の電極板を収納した電解槽を極めてコンパクト化することができる。
また、電極板に供給する電流量を増加させることができ、配線端子との結合強度を必要レベルに維持するとともに、電解処理の効率性やメンテナンス性を確保することができる。
【0016】
配線端子は、前記冷却水中に浸漬される略矩形板状に形成された電極板の周縁に、溶接または機械的に圧着して固定される金属リード線などを含む電極板との接合構成部材であり、電源部からの電圧が金属リード線などを介して印加されるようになっている。
【0017】
なお、スケール除去装置にはリレーボックス部を設けることができる。これによって、冷却水を電解処理して熱交換設備に循環供給する電解槽内に設置された複数の電極板と、これらの電極板間に電圧を印加する電源部とにより形成される接続回路構成を適宜切り換えることができる。このようにして、電極板間に定電流を供給する定電流制御における電源部の電源電圧の変化に基づいてリレーボックス部をコンピュータなどの電解制御部を介して制御することができる。
すなわち、冷却水中のスケール成分を電解析出してスケール成分を除去する定電流制御において、電極の電源部に過大な電圧変化負荷によるストレスを生じさせることがなく、耐用性とメンテナンス性に優れた冷却水のスケール除去装置を提供できる。
また、被処理水を電解装置に通水して電解処理することにより、スケール成分を電極表面に析出させて水中から除去する際の制御操作性や耐用性に優れているとともに、スケールの析出除去を安定して行うことが可能となる。
【0018】
回路構成を切り変えるためのリレーボックス部は、例えば、サイリスタなどの半導体素子を用いて小電力の入力で大きな出力電圧をオンオフするソリッドステートリレーや、複数の継電器を組み合わせてパッケージにしたプログラムリレーなどを内蔵した継電装置であって、電解槽中の各電極板と、これら各電極板に電力を供給するための電源部とにそれぞれ接続されている。
これによって、操作ボタンやパソコン等を介して継電器の機能や組み合わせを変更して内部リレーを駆動制御することで、電源部と各電極板間に設定される接続回路構成を所定のパターン(例えば、電極板の直列回路構成、並列回路構成)に切り換える機能を有している。
【0019】
電源部は、リレーボックス部により選択設定された電極板間に電圧を印加するための装置である。例えば、スイッチング前の直流電圧が60Vとして、0N時間が50%、OFF時間が50%としたとき、その後、矩形波に対して整流(積分処理)を行うことで出力は30Vとなり、同じようにON時間10%、OFF時間90%の場合、出力電圧を6Vにする機能を有している。
このように半導体のON、OFFの時間比率を変えることで出力電圧の制御を行うことができる。
【0020】
電解制御部は、例えば、CPUを備えた制御基盤などであり、電源部の電源電圧の変化を検知するためのセンサがそのインターフェースボードなどを介して接続されており、電極板間に定電流を供給する定電流制御における電源部の電源電圧の変化に基づいて、リレーボックス部を制御する。これによって、電圧が負荷される複数の電極板による回路構成を選択して、定電流制御における電源部の負荷を軽減する機能を有している。
【0021】
なお、電極板に配線端子を介して電力を供給するに際して、電解析出などの電気化学反応を一定にするための定電流制御を確実かつ安定的に行うことができる。すなわち、この種のスケール除去装置の電源部では出力電圧を可変するために交流を一度直流に整流し、FETやIGBTなど半導体を用いて一定周期でスイッチング(オンオフ処理)を行って、半導体のON、OFFの時間比率を変えることで矩形波を発生させる出力電圧の制御を行なうが、冷却水のイオン濃度が高い状態では電圧を低く、逆にイオン濃度が低い状態では電圧を高くするようにして定電流制御を行うように電源内部での自動制御における制御性を良好に維持することができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
<実施例1>
図1は、実施例1の電極構造を組み込んだスケール除去装置の概略図である。
図1に示すように、冷却水のスケール除去装置10は、空調装置や冷蔵装置等に備えられ熱交換設備11などに循環される冷却水11cを電解処理するためのものであり、冷却水11cを電解処理して熱交換設備11に循環供給するための電解槽12と、電解槽12内に設置された4枚の電極板13と、電極板13に接続してその接続回路構成を切り換えるためのリレーボックス部15aと、リレーボックス部15aにより設定された電極板13に電圧を印加するための電源部15bと、電極板13間に規定の定電流を供給する定電流制御において電源部15bの電源電圧の変化に基づいてリレーボックス部15aの動作を制御するための電解制御部16と、を有する。
【0023】
図2(a)は、実施例1の電極構造を示す斜視図である。
図2(a)に示すように、実施例1の電極構造110は、電極板13(13a〜13d)の周縁114に、リレーボックス部15aに接続される配線端子14(14a〜14d)がそれぞれ垂直方向(上方)に延出するように取り付けられている。
ここで、各電極板13a〜13dの配線端子14の取り付けは、矩形状のそれぞれ異なった四隅の位置にされている。例えば、図2の4枚の最上層の電極板13aへの配線端子14aの取り付けは、電極板13a周縁の左側手前角であり、その下層の電極板13bへの配線端子14bの取り付けは、電極板13b周縁の右側手前角であり、その下層の電極板13cへの配線端子14cの取り付けは、電極板13c周縁の左側奥角であり、最下層の電極板13dへの配線端子14dの取り付けは、電極板13c周縁の右側奥角である。
このように、上下に積層した電極板13a〜13dの、異なった各四隅から配線端子14a〜14dを立設させていることによって、配線端子を電極板収納電解槽に取り付ける場合の位置の分散化が図れ、電流の短絡が防止できるというメリットがある。
また、最下層の電極板13d以外には、配線端子14b〜14dが、電極板と接触しないで延出する通り道を確保するための切り欠き113a〜113cが設けられている。
なお、図2(b)の上面図を用いて説明すると、これらの切り欠き113aの端部Eと配線端子14bとの最短距離Wは、配線端子が延出する電極板と隣接する他の電極板との距離よりも大きくなるように設定している。そうでないと、電解槽中において電流は最短距離を流れて、電極間での電解処理を実行できるからである。ただし、図2では、電極構造の説明のため、電極間の距離を拡大して示している。
【0024】
熱交換設備11は、所定量の冷却水を保留するための冷却水タンク11aを有する。また、適切量の冷却水を熱交換設備11に供給するために循環ポンプ21や、スケール除去装置10に冷却水を循環供給するためのスケール除去装置用循環ポンプ11bが設けられている。
なお、スケール除去装置10の電解槽12を通過し冷却水タンク11aに戻る水路や、電解槽12に供給する供給水路や、電解槽12の底部に貯留した冷却水を排出する排出流路には、それぞれ流量制御弁17、18などの制御系が設けられており、循環ポンプ11bや流量制御弁17、18が、電解制御部16を介してそれぞれ駆動制御されるようになっている。
【0025】
このように、クーリングタワーなどの熱交換設備11に冷却水を循環させる冷却水循環流路が接続されて、全体としてループ状に構成されている。クーリングタワーは、空気との接触によって水を冷却する公知の構成のものである。往路側の流水管には、図示しない循環ポンプを装備して、クーリングタワーによって冷やされた冷却水を圧送できるようになっている。
また、循環流路を流れる冷却水は、経時的な蒸発やメンテナンス等によって失われていくため、クーリングタワーには、冷却水を外部から補給するための補給管などが設けられている。
【0026】
スケール除去装置10には、冷却水を電解処理するための電解槽12の内部に、電極板13a〜13dが設けられている。これらの電極板13a〜13dは、電源部15bにリレーボックス部15aを介して接続されている。
電極板13a〜13dとしては、電解装置に通常に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、チタンや銅にプラチナをめっきしたものや、カーボン電極などを好ましく使用することができる。
直流を発生する電源部15bには、コントローラとして機能する電解制御部16が接続されて、電極板13a〜13dへそれぞれ印加する電圧の制御を行うとともに、電極板間の電流・電圧の監視等を行うこともできるようになっている。
【0027】
電解槽12には、冷却水タンク11aから循環水を供給するための給水管12aと、冷却水タンク11aに戻すための流出管12bとが接続されており、電解処理を行うための冷却水循環流路が構成される。給水管12a側には除去装置用循環ポンプ11bが設けられていて、冷却水タンク11a内の冷却水を電解槽12に圧送されるようになっている。
電解槽12から流れ出る冷却水は、流出管12bを介して冷却水タンク11aに戻るようになっている。また、電解槽12の底部には排出管12cが設けられ、流量制御弁18を介して、電解槽の内部に滞留したスケール成分を含む冷却水を、冷却循環水路外へ排水する処理がなされるようになっている。
また、図6(a)に示すように、電解槽12は、その上方を着脱可能な蓋12dとし、配線端子14a〜14dの一端を蓋12dに設けた貫通孔12eから電解槽12の外部に取り出す構成とすることもできる。この場合は、貫通孔12eの部分で配線端子14a〜14dを電解槽12に固定することができ、電極板13a〜13dを電解槽12内に確実に固定することができる。
【0028】
給水管12a側の冷却水循環流路における所定箇所には、フローメータ19や温度計センサ20が取付けられている。
このように、電解槽12に供給される冷却水の流量や温度データが電解制御部16に取り込まれ、電解槽12における電解電圧や電解電流などの電解データとともに、スケール除去装置10通電状態を判定して、この判定結果に応じて電極板の接続構成を所定のパターンに設定したり、電解電圧などの電解条件を変更したりすることを可能にしている。
【0029】
次に、以上のように構成された冷却水のスケール除去装置10に適用される冷却水のスケール除去方法について説明する。
直流電源を各電極板13a〜13dに供給するための電源部15bは、例えば、その定電流仕様の電解直流電源として最大60V/定電流10Aのものを用いる。現在一般的に市販されているこの種の電源は、出力電圧を可変するために入力の交流を一度直流に整流し、FETやIGBTなど半導体を用いて一定周期でスイッチング(ON/OFF処理)を行い矩形波を発生させる。例えば、スイッチング前の直流電圧を60Vとして、0N時間が50%、OFF時間が50%としたとき、その後、矩形波を整流(積分処理)を行うことで、出力を約30Vとすることができる。
【0030】
同じように、ON時間10%、OFF時間90%とすれば、その出力電圧は6Vに設定される。このように、半導体のON、OFFの時間比率を変えることで出力電圧の制御をうことができる。こうした電源を用いて定電流制御を行うと、循環水のイオン濃度が高くなると電流が流れやすい状態となり、電圧を低くするように電源内部で自動制御が行なわれる。例えば、10Aで制御する様に設定されていると、ON時間10%、OFF時間90%になった場合、半導体がONする時に流れる電流は100A以上になる。ONした瞬間には更にこの何倍かの電流が流れる。
このように電源出力60V最大で10Aの電源でも負荷抵抗が小さくなると、大きな電流が電極に流れるようになり、電極板の消耗につながることになる。
なお、60Vは電源でのスイッチング素子の制御電圧の最大値であり、各電極へ流れる電流は10Aをリミットとしている。
【0031】
なお、スケール除去装置10は、電解制御部16を介してリレーボックス部15aを駆動させて、各電極板13a〜13dの配列状態を、直列、並列などに切り換えることができる。これによって、冷却水循環流路を流れる冷却水の導電率は同じでも、2枚の電極板13aと電極板13d間に電圧を印加する直列接続から、4枚の電極板13a〜13dにそれぞれ電圧を印加する並列接続に切り換えることで、電源からみた電気抵抗を約9倍もしくは1/9にすることができ、導電率のより大きな変化に対応することができる。
【0032】
こうして、本実施例の電極構造を用いたスケール除去装置では、配線端子を電極板の周縁から垂直方向に延出させたことによって、冷却水中のスケール成分を電解析出してスケールを除去するスケール除去装置の電極構造において、電極間距離を近接させて配設させることができる。このように電極板を近接させて配設することによって、複数の電極板を収納した電解槽を極めてコンパクト化することができる。
【0033】
<実施例2>
図3(a)は、実施例2の電極構造を示す斜視図である。
図3(a)に示すように、実施例2の電極構造210は、電極板13に、電極板13の周縁114より外方に突出して形成した突出部213を設け、配線端子14(14a〜14d)の基部214を突出部213に接続して、突出部213から配線端子14を垂直方向に延出させている点で、実施例1の電極構造と異なる。
実施例2の電極構造は、配線端子14を接続する突出部213を設けたことによって、配線端子14が、電極板と接触しないで延出する通り道を確保するための切り欠きは設ける必要はない。
このように、上下に積層した電極板13の周縁114より外方に突出して形成した突出部213を設け、配線端子14の基部214を突出部213に接続して、突出部213から配線端子14を垂直方向に延出させていることによって、配線端子を電極板収納電解槽に取り付ける場合の位置の分散化が図れ、電流の短絡を防止できるというメリットがある。
なお、図3(b)の上面図を用いて説明すると、これらの電極板13の端部Eと配線端子14との最短距離Wは、配線端子が延出する電極板と他の電極板との距離よりも大きくなるように設定している。そうでないと、電解槽中において電流は最短距離を流れて、電極間での電解処理を実行できなるなるからである。ただし、図3では、電極構造の説明のため、電極間の距離を拡大して示している。
【0034】
また、実施例2の電極構造においても、図6(b)に示すように、電解槽12は、その上方を着脱可能な蓋12dとし、配線端子14a〜14dの一端を蓋12dに設けた貫通孔12eから電解槽12の外部に取り出す構成とすることができ、貫通孔12eの部分で配線端子14a〜14dを電解槽12に固定することができ、電極板13a〜13dを電解槽12内に確実に固定することができる。
【0035】
<実施例3>
図4は、実施例3の電極構造を示す斜視図である。
図4に示すように、実施例3の電極構造310は、実施例1の電極構造110を、その配線端子の延出方向が反対方向となるように組み合わせたものであり、この組み合わせた電極構造310を電解槽内に内装することもできる。
実施例3の電極構造は、実施例1の電極構造110を組み合わせたことにより、スケール除去処理能力を向上させることができる。
【0036】
<実施例4>
図5は、実施例4の電極構造を示す斜視図である。
図5に示すように、実施例4の電極構造410は、実施例2の電極構造210を、その配線端子の延出方向が反対方向となるように組み合わせたものであり、この組み合わせた電極構造410を電解槽内に内装することもできる。
【0037】
以上説明したように、本発明は、並列配置される複数の電極板の周縁、又は周縁より外方に突出して形成した突出部から配線端子を垂直方向に延出させたことによって、スケール除去装置において、電極間距離を近接させて配設させた電極構造とすることができることを要旨としたものであり、これに該当するものは本発明の権利範囲に属する。
本実施例では、電極板と直角となる一方向又は二方向に配線端子を延出させた電極構造を用いて電解処理を行う例について詳述したが、さらに配線端子を延出させる方向を増やした(例えば四方向)電極構造とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のスケール除去装置の電極構造は、冷却水中のスケール成分を電解析出させてスケールを除去するスケール除去装置において、電極間距離を近接させて配設させることができるので、複数の電極板を収納した電解槽を極めてコンパクト化することができ、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0039】
10・・・冷却水のスケール除去装置
11・・・熱交換設備
11a・・・冷却水タンク
11b・・・除去装置用循環ポンプ
11c・・・冷却水
12・・・電解槽
12a・・・給水管
12b・・・流出管
12c・・・排出管
12d・・・蓋
12e・・・貫通孔
13(13a〜13d)・・・電極板
14(14a〜14d)・・・配線端子
15a・・・リレーボックス部
15b・・・電源部
16・・・電解制御部
17、18・・・流量制御弁
19・・・フローメータ
20・・・温度計センサ
21・・・循環ポンプ
110・・・実施例1の電極構造
113・・・切り欠き
114・・・周縁
210・・・実施例2の電極構造
213・・・突出部
214・・・基部
310・・・実施例3の電極構造
410・・・実施例4の電極構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換設備に循環供給される冷却水を電解処理する電解槽を備えたスケール除去装置の電極構造であって、
前記電解槽内に互いに所定の電極間隔を有しその極性を交互に切り替えて並列配置される複数の電極板と、
前記電極板の周縁から垂直方向に延出させた配線端子と、
有することを特徴とするスケール除去装置の電極構造。
【請求項2】
前記電極板に該電極板の周縁より外方に突出して形成した突出部を設け、
前記配線端子の基部を該突出部に接続して、
該突出部から該配線端子を垂直方向に延出させることを特徴とする請求項1に記載のスケール除去装置の電極構造。
【請求項3】
前記請求項1又は2のスケール除去装置の電極構造を、
配線端子の延出方向が反対方向となるように組み合わせたことを特徴とするスケール除去装置の電解槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111517(P2013−111517A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259166(P2011−259166)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【特許番号】特許第4999030号(P4999030)
【特許公報発行日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【出願人】(505476216)イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】