説明

スタッカクレーン

【課題】ケージとガイドローラとの間に緩衝器を介入することなく、マスト間隔が変化することに起因してケージに加わる応力を低減させる。
【解決手段】多段配置された収納棚に沿って設けられた軌道上を走行するとともに、荷物を収容するケージを立設される一組のマスト間において昇降させることで各収納棚との間で荷物を搬送するスタッカクレーンであって、上記ケージは、上記荷物が載置されるメインフレームと、該メインフレームの両端部の各々に対して設けられ、上記駆動装置に昇降ワイヤを介して吊られ、かつ、上記マストに対して当接された状態で昇降される一対のサイドフレーム431と、 上記メインフレームに対し、接続する一対のサイドフレームのうち、いずれか一方のサイドフレーム431と上記メインフレームとの接続部との間のみに設置される緩衝手段49,413とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカクレーンに関するものであり、メインフレームとメインフレームの両端側に設置されるサイドフレームとを有するケージを一組のマスト間において上下動するスタッカクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、上下方向並びに横方向に並列する複数の収納棚にて荷物を保管する自動倉庫では、スタッカクレーンを用いて荷物の搬送が行われている。このスタッカクレーンは、荷物の収納棚に沿って設けられた軌道上を走行するとともに、昇降ワイヤを介して吊上げられたケージを駆動装置で昇降させることで任意の収納棚との間にて荷物の受け渡しを行うことができる。
【0003】
ところで、上記ケージは、立設される一組のマスト間において当該マストにガイドされて昇降される。なお、昇降ワイヤは、マストの頂部に設置されるシーブに回し掛けられ、当該シーブを介してケージと接続されている。
このようなスタッカクレーンでは、ケージの重量や駆動装置の駆動力に起因する力が昇降ワイヤを介してマスト伝達されることによって、マストの中央部が内側(ケージ側)に撓む場合がある。このようにマストの中央部が内側に撓むと、マスト間隔が上下方向において変位することとなり、中央部のマスト間隔が上下のマスト間隔よりも狭くなる。
従来のスタッカクレーンでは、ケージを強固に設計し、マスト間隔が狭くなった部位を、ケージよって押し広げながらケージを昇降させることによってマストの撓みに対応していた。
【0004】
ところが、ケージによってマスト間隔を押し広げる場合には、ケージに強い力が加わるため、円滑なケージの昇降が出来なかったり、ケージが損傷する虞がある。すなわち、マスト間隔が変化する場合には、マスト間隔の変化に起因してケージに応力が加わる。
そこで、特許文献1には、マストを摺動面とするガイドローラが、緩衝器を介してケージに固定されたスタッカクレーンが記載されている。このようなスタッカクレーンによれば、緩衝器によって、上記応力が低減されるため、ケージな円滑な昇降を実現できるとともにケージの損傷を防止することができる。
【特許文献1】特開2000−142917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガイドローラは、ケージ本体に対して小さな部材であるため、特許文献1に記載された技術では、緩衝器が小型で複雑な構成となる等の不具合がある。このため、他の構成にてマスト間隔の変化に起因してケージに加わる応力の低減を図る技術が望まれている。
また、マストとケージのサイドフレームに挟まれた微小な空間にしか、バネ付きのガイドローラを組み込むことができないので、大きな応力がかかる場合に、上記理由によってバネ定数の大きなバネを適用することが難しかった。
さらに、クリーンルームに適用する場合には、その周囲を物理的に可能な限り、カバーする必要がある。しかし、ガイドローラ以外に余分なバネ等の部品を取り付けると、ケージとマスト間隔が広がり、カバーがより複雑な構造となったり、かつ、隙間を塞ぎ難くなり、かつ、マストとケージに挟まれた空間であるために、カバー等の取り付け取り外し等のメンテナンス作業がしにくくなる等の欠点があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ケージとガイドローラとの間に緩衝器を介入することなく、マスト間隔が変化することに起因してケージに加わる応力を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、多段配置された収納棚に沿って設けられた軌道上を走行するとともに、荷物を収容するケージを、立設される一組のマスト間において昇降させることで各収納棚との間で荷物を搬送するスタッカクレーンであって、上記ケージが、上記荷物が載置されるメインフレームと、該メインフレームの両端部の各々に対して設けられ、上記駆動装置に昇降ワイヤを介して吊られ、かつ、上記マストに対して当接された状態で昇降される一対のサイドフレームと、 上記メインフレームに対し、接続する一対のサイドフレームのうち、いずれか一方のサイドフレームと上記メインフレームとの接続部との間のみに設置される緩衝手段とを備える。
【0008】
このような構成を有する本発明によれば、ケージを構成するメインフレームとサイドフレームとの間に緩衝手段が設置されている。このため、マストに当接されたサイドフレームがマストの歪みによって変位した場合であっても、緩衝手段によって、当該変位によって生じた応力の少なくとも一部が吸収される。
【0009】
また、本発明においては、上記緩衝手段が、上記メインフレームあるいは上記サイドフレームのいずれか一方に形成される長穴と、上記メインフレームあるいは上記サイドフレームの他方から突出形成されるとともに上記長穴の延在方向に移動可能なように上記長穴に嵌合される摺動ピンとを備えるという構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明においては、上記サイドフレームを上記メインフレームから遠ざける方向に上記摺動ピンを付勢する付勢手段を備えるという構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明においては、上記付勢手段が、バネ部あるいはゴム部であるという構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マストに当接されたサイドフレームがマストの歪みによって変位した場合であっても、緩衝手段によって、当該変位によって生じた応力の少なくとも一部が吸収される。このため、当該変位によって生じた応力の少なくとも一部がケージのメインフレームに伝達されることを低減させることができる。
したがって、本発明によれば、ケージとガイドローラとの間に緩衝器を介入することなく、マスト間隔が変化することに起因してケージに加わる応力を低減させることが可能となる。
また、ケージのメインフレームとケージのサイドフレームとの接続部という広い空間に、バネ等の付勢できる緩衝手段を組み込むことができるので、大きな応力がかかる場合に、バネ定数の大きなバネを適用することが容易になる。
さらに、クリーンルームに適用する場合には発塵する虞があるが、バネ等の緩衝手段の周囲にはマスト等の他の構造部材がないため、構造の簡素なカバーを取り付けることができる。それゆえ、そのカバー等の取り付け及び取り外しが容易になり、メンテナンス作業がしやすくなる。さらに荷物の移載精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るスタッカクレーンの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
図1は、本実施形態のスタッカクレーンCを備える自動倉庫Sの平面図である。また、図2は、自動倉庫Sの側面図である。
これらの図に示すように、自動倉庫Sは、スタッカクレーンCと、該スタッカクレーンCの軌道であるレールRを挟んで対向配置されるラックT1,T2とを備えており、ラックT1,T2にスタッカクレーンCによって荷物を搬送して保管するものである。また、自動倉庫Sは、荷物を入庫するための入庫用コンベヤ(不図示)と荷物を出庫するための出庫用コンベヤ(不図示)とを備えており、スタッカクレーンCによって、入庫用コンベヤ及び出庫用コンベヤとの間にて荷物の受け渡しを行うことが可能とされている。
なお、本実施形態において、荷物はガラス基板を複数収納したカセットXであり、ラックT1,T2及びスタッカクレーンCは、例えばクリーン度10000レベルのクリーンルームCL1内に設置されている。
【0015】
ラックT1,T2は、水平方向に及び上下方向に複数配列された収納棚Tによって構成されており、各収納棚TにカセットXを保管可能とされている。すなわち、ラックT1,T2は、多段配置された収納棚Tによって構成されている。また、ラックT1,T2は、互いに対向する側がカセットXの出入口として構成されている。
なお、以下の説明において、収納棚Tの水平方向の配列方向をX方向とし、X方向と直交する水平方向をY方向、X−Y面と直交する垂直方向をZ方向として説明する場合がある。
【0016】
レールRは、X方向に延在して、すなわちラックT1,T2に沿って敷設されており、クリーンルームCL1の床に所定間隔で平行に敷設されるレールR1,R2と、クリーンルームCL1の天井に敷設されるレールR3とによって構成されている。
【0017】
スタッカクレーンCは、レールR1,R2に下方から支持されるとともに、レールR1,R2上において回転可能とされた4つ車輪1を備えている。各車輪1に対してモータ2が接続されており、モータ2の駆動によって車輪1が回転されスタッカクレーンCがレールR1,R2を走行する。なお、車輪1のうちレールR2上を回転する車輪1aには、レールR2の両側面に当接されるガイドローラ1bが設置されており、該ガイドローラ1bによって車輪1aがレールR2上をガイドされる。
また、スタッカクレーンCは、昇降されるケージ40を備えており、ケージ40上に設置された移載装置100(例えば、フォークリフト装置)によって、ケージ40と収納棚Tとの間、ケージ40と入庫用コンベヤとの間及びケージ40と出庫用コンベヤとの間にてカセットXの受け渡しを行う。
【0018】
続いて、図3〜図8を参照して、スタッカクレーンCの詳細について説明する。
図3は、スタッカクレーンCの斜視図である。また、図4はスタッカクレーンCの正面図である。なお、図3及び図4においては、図面の視認性を向上させるために、スタッカクレーンCが備える車輪1、モータ2、ガイドローラ1b及び移載装置100の図示を省略している。
これらの図に示すように、スタッカクレーンCは、下部フレーム10と、マスト20と、上部フレーム30と、ケージ40と、駆動装置50と、制御装置60とを備えている。
【0019】
下部フレーム10は、上記車輪1が回転自在に設置される車輪取り付け部11を有する土台とされるものであり、X方向に延在するとともに平行に配置される2つのメインフレーム12と、2つのメインフレームの端部同士を接続する2つのサイドフレーム13とを備えている。
【0020】
マスト20は、下部フレーム10上に立設されるものであり、下部フレーム10の一方のサイドフレーム13aに立設されるマスト20aと、下部フレームの他方のサイドフレーム13bに立設されるマスト20bとによって構成されている。すなわち、下部フレーム10上には、一対のマスト20a,20bがZ方向に延在して設置されている。なお、マスト20aとマスト20bとは、X方向に配列されている。すなわち、マスト20aとマスト20bとは、Y方向において同一位置に立設されている。
このマスト20は、角柱形状を有しており、各側面がX方向あるいはY方向と平行となるように立設されている。
【0021】
上部フレーム30は、マスト20aの上端部とマスト20bの上端部とを接続するものであり、X方向に延在して配置されている。
この上部フレーム30の略中央部には、上記レールR3を狭持することによって、スタッカクレーンCのY方向の傾動を抑止するためのガイドローラ(不図示)が設置されている。
【0022】
図5は、ケージ40の斜視図である。この図に示すように、ケージ40は、X方向に延在する2つのメインフレーム41を有している。メインフレーム41同士は、補強部材42によって接続されている。メインフレーム41の両端部の各々に対してはサイドフレーム43が接続されている。
図6は、サイドフレーム43単体の斜視図である。この図に示すように、サイドフレーム43は、後述する接続部48を頂点とする略三角形に形状設定されている。そして図5に示すように、その底辺部43aにて2つのメインフレーム41を接続している。また、サイドフレーム43は、底辺部43a及び頂部43bからマスト20方向に突出するガイド部44を備えている。ガイド部44は、支持部45によってサイドフレーム43に固定されている。
ガイド部44には、マスト20を狭持するガイドローラ46、及び、マスト20のY方向と平行な側面に当接される小型のガイドローラ47が設置されている。ガイドローラ46は、マスト20のX方向と平行な側面に当接されている。ガイドローラ46,47は、マスト20の側面を摺動面としている。つまり、サイドフレーム43は、これらのガイドローラ46,47を介してマスト20に当接された状態で昇降される。そして、これらのガイドローラ46,47にガイドされることによってサイドフレーム43、さらにはケージ40がマスト20に沿って、上下方向(Z方向)に移動可能とされている。
サイドフレーム43の頂部43bから突出するガイド部44aには、後述する駆動装置50が備える昇降ワイヤ51が接続される接続部48が設置されている。
【0023】
そして、本実施形態のスタッカクレーンCにおいては、図6に示すように、サイドフレーム43の底辺部43aの両端からは、Y方向に突出にするピン部49(摺動ピン)が形成されている。
【0024】
図7は、メインフレーム41のサイドフレーム431側の端部近傍を拡大した拡大斜視図である。また、図8は、メインフレーム41のサイドフレーム431側の端部近傍を拡大した正面図である。これらの図に示すように、メインフレーム41のサイドフレーム431側の端部近傍には、X−Z平面内において回動自在に軸支可能な軸受411が設置されており、サイドフレーム431に形成されたピン部49が軸受411によって軸支されている。すなわち、サイドフレーム431がX−Z平面内において回動自在に軸支されている。また、軸受411と長穴413の接続部の周囲には、クリーン度などの必要に応じて図示しないカバー部が取り付けられる。
【0025】
また、メインフレーム41のサイドフレーム431側の端部近傍には、X方向に延在する長穴413が形成されており、当該長穴413には、軸受411がX方向に移動可能に嵌合されている。つまり、長穴413には、ピン部49が、軸受411を介して、長穴413の延在方向に移動可能に嵌合されている。なお、軸受411は、樹脂411aによって周囲がモールドされており、これによって、長穴413内を円滑に移動可能となっている。
【0026】
すなわち、本実施形態のスタッカクレーンCにおいては、メインフレーム41とサイドフレーム431との間に、サイドフレーム431から突出するピン部49と、メインフレーム41に形成された長穴413とが設置されている。
【0027】
また、長穴413の近傍には、軸受411を貫通して延在されたピン部49と一端414aが接続されるバネ部414(付勢手段)が設置されている。そして、バネ部414の端部414bは、メインフレーム41の固定板415に固定されている。このバネ部414は、サイドフレーム431のピン部49をマスト20a方向(サイドフレーム431をメインフレーム41から遠ざける方向)に付勢するような付勢力を持つように設置されている。
【0028】
なお、ピン部49、軸受411、長穴413、バネ部414及び固定板415は、図7において示されていないメインフレーム41とサイドフレーム431との接続部位にも設けられている。
【0029】
そして、サイドフレーム431がマスト20aから離間する方向(−X方向)に移動した場合やメインフレーム41がマスト20aに近づく方向(+X方向)に移動した場合において、バネ部414に付勢力以上の力が加わった場合には、軸受411が長穴413内を相対的にマスト20aから離間する方向(−X方向)に移動する。
【0030】
図5に戻り、メインフレーム41のサイドフレーム432側の端部近傍には、X−Z平面内において回動自在に軸支可能な軸受412が設置されている。
軸受412は、軸受411のようなバネ部414や長穴413を持たない。したがって、軸受411の近傍であるサイドフレーム431にある付勢手段(1系統と呼ぶ)により、軸受412の近傍であるサイドフレーム432は、その近傍のマスト20b側に向かって付勢され、サイドフレーム432側のガイドローラ47aは常にマスト20bに当接されている状態となる。ゆえに、マスト20b側基準で、荷物のX軸方向の移載位置が一定になる利点がある。すなわち、荷物Xの収納棚Tへの移載精度が向上する。
ここで、仮に、上述のような付勢手段(バネ部414)と緩衝手段(長穴413等)が、サイドフレーム431とサイドフレーム432との各々(すなわち2系統)に存在していたとすると、サイドフレーム431側の付勢手段の軸受411とサイドフレーム431側の長穴413との当接部での摺動抵抗、及びサイドフレーム432側の付勢手段の軸受とサイドフレーム432側の長穴413との当接部での摺動抵抗のいずれかが大きいかによって、サイドフレーム431側とサイドフレーム432側とで構成される直列2系統の付勢手段と緩衝手段によって挟まれたメインフレーム41は、そのX軸方向位置がばらつく可能性がある。さらに、1系統であれ2系統であれ、外的条件が同じならばガイドローラ47aがマスト20から受ける反力は同じであるから、直列2系統のバネ定数は同じであり、直列2系統になった分、メインフレーム41の可動範囲が2倍となり、ゆえに荷物のX軸方向の移載位置が不安定になりやすくなる。
本実施形態のスタッカクレーンCでは、上記不安定要素を取り除くべく、付勢手段と緩衝手段とを、片側であるサイドフレーム431側のみに取り付けている。
【0031】
図3及び図4に戻り、駆動装置50は、昇降ワイヤ51と、ドラム52と、モータ53と、減速器54とを備えている。
昇降ワイヤ51は、ケージ40のサイドフレーム43が備えるガイド部44の接続部48に一端が接続されるとともに、ドラム52に他端が巻回されている。また、昇降ワイヤ51としては、マスト20a側に位置するサイドフレーム431のガイド部44aに接続される昇降ワイヤ51aと、マスト20b側に位置するサイドフレーム432のガイド部44aに接続される昇降ワイヤ51bとが存在するが、いずれの昇降ワイヤ51a,51bも他端がドラム52に巻回されている。
なお、マスト20aの頂部及びマスト20bの頂部には、昇降ワイヤ51を案内するためのシーブ55が設置されている。マスト20aの頂部に設置されたシーブ55aは、X−Z平面内にて回転自在とされており、昇降ワイヤ51aをサイドフレーム431から突出するガイド部44aに案内するとともに、昇降ワイヤ51bをマスト20bの頂部に設置されたシーブ55bに案内するものである。マスト20bの頂部に設置されたシーブ55bは、X−Z平面内にて回転自在とされており、昇降ワイヤ51bをサイドフレーム432から突出するガイド部44aに案内するものである。
【0032】
ドラム52は、下部フレーム10のサイドフレーム13a上に、Y方向を向く回転軸を中心として回転可能に設置されている。
モータ53は、減速器54を介してドラム52と接続されており、減速器54を介してドラム52を回転する。なお、モータ53及び減速器54は、ドラム52の両端に各々設置されている。
【0033】
制御装置60は、スタッカクレーンC全体の動作を制御するものであり、下部フレーム10のサイドフレーム13b上に設置されている。なお、制御装置60は、ケーブル61によって、自動倉庫S全体の制御を行う外部の制御装置と電気的に接続されている。
【0034】
このようなスタッカクレーンCにおいては、モータ53を制御してドラム52の回転量を調整することによって昇降ワイヤ51の巻回量を変化させ、これによって昇降ワイヤ51に接続されたケージ40のサイドフレーム43の高さが調整される。すなわち、駆動装置50の駆動によって、ケージ40の高さが制御される。
【0035】
ここで、昇降ワイヤ51を介して伝達されるケージ40の重量や駆動装置50の駆動力に起因する力にて、マスト20の中央部がケージ40に向けて撓むことによって、マスト間隔が上下方向において変化している場合には、ケージ40がマスト20に沿って昇降する過程において、ケージ40に横応力(応力)が加わることとなる。
これに対し、本実施形態のスタッカクレーンCでは、軸受411の長穴413における移動、すなわちピン部49の長穴413における移動によって、上記横応力を吸収することができる。つまり、本実施形態においては、ピン部49及び長穴413が本発明の緩衝手段として機能している。
したがって、マスト20の中央部がケージ40側に撓んでいる場合であっても、サイドフレーム43及びメインフレーム41に強い横応力が加わることがなく、該横応力に耐えるためにサイドフレーム43及びメインフレーム41を厚く形成する必要がない。
【0036】
このように本実施形態のスタッカクレーンCによれば、マスト20に当接されたサイドフレーム431がマスト20の歪みによって変位した場合であっても、サイドフレーム431とメインフレーム41との間に設置されるピン部49及び長穴413によって、当該変位によって生じた横応力の少なくとも一部が吸収される。このため、当該変位によって生じた横応力の少なくとも一部がケージ40のメインフレーム41に伝達されることを低減させることができる。
したがって、本実施形態のスタッカクレーンCによれば、ケージ40とガイドローラ46,47との間に緩衝器を介入することなく、マスト20a,20b間隔が変化することに起因してケージ40に加わる横応力を低減させることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態のスタッカクレーンCによれば、サイドフレーム431のピン部49をマスト20a方向(サイドフレーム431をメインフレーム41から遠ざける方向)に付勢するような付勢力を持つバネ部414を備える。このため、マスト間隔が正常な部位では、バネ部414の付勢力によってピン部49が所定の位置に戻されるため、ケージ40の形状を正常な状態に保つことができる。
【0038】
以上、図面を参照しながら本発明に係るスタッカクレーンの好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、ピン部49がサイドフレーム43に固定され、軸受411,412がメインフレーム41に設置される構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、逆にサイドフレームに軸受が設置され、ピン部がメインフレームに固定されるという構成を採用することもできる。
【0040】
また、上記実施形態においては、ピン部49及び長穴413によって本発明の緩衝手段が構成されている例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ゴム部やバネ部等の他の機構を用いて緩衝手段を構成することも可能である。
【0041】
また、上記実施形態においては、本発明の付勢手段が、バネ部414である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、付勢手段がゴム部であるという構成を採用することもできる。
【0042】
また、上記実施形態において、メインフレーム41とサイドフレーム432との接続部位にも、ピン部49、軸受411、長穴413、バネ部414及び固定板415を設置しても良い。この場合には、軸受412は設置されないこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態であるスタッカクレーンを備える自動倉庫の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態であるスタッカクレーンを備える自動倉庫の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態であるスタッカクレーンの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態であるスタッカクレーンの正面図である。
【図5】本発明の一実施形態であるスタッカクレーンが備えるケージの斜視図である。
【図6】ケージが備えるサイドフレーム単体の斜視図である。
【図7】ケージが備えるメインフレームの一方側の端部近傍を拡大した拡大斜視図である。
【図8】ケージが備えるメインフレームの一方側の端部近傍を拡大した拡大正面図である。
【符号の説明】
【0044】
C……スタッカクレーン、R(R1〜R3)……レール(軌道)、T……収納棚、20(20a,20b)……マスト、40……ケージ、41……メインフレーム、411,412……軸受、413……長穴、414……バネ部(付勢手段)、43(431,432)……サイドフレーム、44……ガイド部、45……支持部、46,47……ガイドローラ、47a……ガイドローラ、48……接続部、49……ピン部、50……駆動装置、51(51a,51b)……昇降ワイヤ、52……ドラム、53……モータ、54……減速器、55(55a,55b)……シーブ、60……制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段配置された収納棚に沿って設けられた軌道上を走行するとともに、荷物を収容するケージを、立設される一組のマスト間において昇降させることで各収納棚との間で荷物を搬送するスタッカクレーンであって、
前記ケージは、
前記荷物が載置されるメインフレームと、
該メインフレームの両端部の各々に対して設けられ、前記駆動装置に昇降ワイヤを介して吊られ、かつ、前記マストに対して当接された状態で昇降される一対のサイドフレームと、
前記メインフレームに対し、接続する一対のサイドフレームのうち、いずれか一方のサイドフレームと前記メインフレームとの接続部との間のみに設置される緩衝手段と
を備えることを特徴とするスタッカクレーン。
【請求項2】
前記緩衝手段は、
前記メインフレームあるいは前記サイドフレームのいずれか一方に形成される長穴と、
前記メインフレームあるいは前記サイドフレームの他方から突出形成されるとともに前記長穴の延在方向に移動可能なように前記長穴に嵌合される摺動ピンと
を備えることを特徴とする請求項1記載のスタッカクレーン。
【請求項3】
前記サイドフレームを前記メインフレームから遠ざける方向に前記摺動ピンを付勢する付勢手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載のスタッカクレーン。
【請求項4】
前記付勢手段は、バネ部あるいはゴム部であることを特徴とする請求項3記載のスタッカクレーン。
【請求項5】
前記緩衝手段または前記付勢手段からの発塵を防止するカバーを備えることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のスタッカクレーン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−81301(P2008−81301A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266039(P2006−266039)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【特許番号】特許第3982562号(P3982562)
【特許公報発行日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】