説明

スタッドボルト

【課題】トルク試験が容易に行え、更に不良品の発生を極力防止できるスタッドボルトを提供する。
【解決手段】ボルト本体11に雄ねじが形成され、底部に放電用突起12を備えたコンデンサースタッド溶接に用いるスタッドボルト10において、ボルト本体11の先部に軸心を合わせて、非円形の直状凹部13を設けた。この直状凹部13は断面多角形の穴からなって、トルクレンチの先部に設けられているアダプターが嵌入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト本体に雄ねじが形成され、底部に放電用突起が形成されたスタッドボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の構造材の表面に保温材を被せる場合等においては、スタッドボルトが植設されているが、このスタッドボルトの溶接にあってはコンデンサーの放電を利用するコンデンサースタッド溶接法が使用されている。このコンデンサースタッド溶接法は作業性は極めて良いが、溶接不良が他の溶接法に比較して多く、このため施工後に抜取りでトルク試験が行われている。
このトルク試験にあっては、スタッドボルトの雄ねじ部分にダブルナットを螺合させるか、あるいはスタッドボルトに適当長さのスペーサを入れて上部からナットを螺合させ、螺合させたナットにトルクレンチを掛けてその試験を行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、雄ねじの部分に螺合させたナットに大きな荷重がかかるので、雄ねじに変形が生じ、トルク試験にかけても異常の発見できなかったスタッドボルトは良品であってもそのまま使用できず、結果として本来良品である製品もトルク試験を行ったために不良品となる場合があった。
更には、トルク試験を行うために特別にスペーサや螺合するナットを使用する必要があり、極めて手間であるという問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、トルク試験が容易に行え、更に不良品の発生を極力防止できるスタッドボルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的に沿う請求項1記載のスタッドボルトは、ボルト本体に雄ねじが形成され、底部に放電用突起を備えたスタッドボルトにおいて、前記ボルト本体の先部に軸心を合わせて、その太さが該ボルト本体より小さい非円形の柱状凸部を設けている。
また、請求項2記載のスタッドボルトは、請求項1記載のスタッドボルトにおいて、前記柱状凸部の断面形状は、多角形となっている。ここで、多角形としては特に正六角形とするのが好ましい。
請求項3記載のスタッドボルトは、ボルト本体に雄ねじが形成され、底部に放電用突起を備えたスタッドボルトにおいて、前記ボルト本体の先部に軸心を合わせて、非円形の直状凹部を設けている。
そして、請求項4記載のスタッドボルトは請求項3記載のスタッドボルトにおいて、前記直状凹部は、断面が多角形の穴からなっている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1、2記載のスタッドボルトにおいては、ボルト本体に雄ねじが形成され、底部に放電用突起を備えたスタッドボルトにおいて、ボルト本体の先部に軸心を合わせて、その太さがボルト本体より小さい非円形の柱状凸部を設けているので、ボルト本体に設けられている雄ねじを使用することなくトルク試験を行うことができ、これによって、トルク試験に合格した場合には、そのままスタッドボルトが溶接された対象物を製品として使用できる。
また、請求項3、4記載のスタッドボルトはボルト本体に雄ねじが形成され、底部に放電用突起を備えたスタッドボルトにおいて、ボルト本体の先部に軸心を合わせて、非円形の直状凹部を設けているので、ボルト本体に設けられている雄ねじに疵を付けることなく、トルク試験を行うことができる。
そして、スタッドボルト自体は先部に突出物がないので、従来のスタッドボルトと同様な間隔でスタッドボルトを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスタッドボルトの一部切欠き正面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】(A)〜(D)は変形例に係るスタッドボルトの平面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るスタッドボルトの正面図である。
【図5】同平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の第1の実施の形態に係るスタッドボルトの一部切欠き正面図、図2は同平面図、図3(A)〜(D)は変形例に係るスタッドボルトの平面図、図4は本発明の第2の実施の形態に係るスタッドボルトの正面図、図5は同平面図である。
【0008】
図1、図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るスタッドボルト10は、鉄、ステンレス等金属材料からなって、周囲に雄ねじが形成されたボルト本体11の下部が、少し拡径してその底部には放電用突起12が設けられている。ボルト本体11の先部には、非円形の直状凹部の一例である六角穴13がスタッドボルト10の軸心に合わせて設けられている。この六角穴13の大きさd1は、ボルト本体11の直径D1の1/2〜3/4程度となって、その深さh1は六角穴13の大きさd1と同程度となっている。
【0009】
従って、このスタッドボルト10を使用する場合には、コンデンサー放電用のスタッド治具(通常、ガンと呼ばれる)にこのスタッドボルト10を装着した後、対象物に放電用突起12を押し当てて所定電圧で放電を行い、スタッドボルト10を対象物に溶接固定する。次に、図示しない周知構造のトルクレンチの先部に設けられている断面六角形のアダプターを六角穴13に装着した後、トルクレンチを作動させて所定のトルクをスタッドボルト10にかけて、その破断状況を観察する。
【0010】
溶接が十分に行われている場合には、スタッドボルト10は対象物から外れないので、トルクレンチをスタッドボルト10から外す。この場合、トルク試験にあっては、従来のようにボルト本体11の雄ねじに荷重を掛けていないので、そのまま製品として使用できる。
【0011】
前記実施の形態においては、直状凹部として六角穴13を適用したが、例えば、図3(A)に示すように断面正方形の穴14、図3(B)に示すように断面長方形の穴15、図3(C)に示すように断面八角形の穴16、図3(D)に示すように断面楕円形の穴17を有するスタッドボルトであっても本発明は適用される。なお、これらの穴14〜17の大きさ(最大径)及び深さはスタッドボルトの直径の1/2〜3/4の範囲で適宜選択することができる。
【0012】
続いて、図4、図5に示す本発明の第2の実施の形態に係るスタッドボルト20について説明するが、底部に放電用突起21が設けられたボルト本体22の上部に、非円形の柱状凸部の一例である六角柱23が設けられている。この六角柱23は、ボルト本体22に軸心を合わせて形成され、その高さ及び対角幅はボルト本体の直径の1/2〜3/4程度となっている。これによって、この部分に周知構造のトルクレンチのアダプターを装着することができ、トルク試験を行うことができる。
トルク試験を行った後は、ボルト本体22の雄ねじ部分はそのまま残るので、スタッドボルト20自体に疵が付くことがなく、従って、製品としてそのまま使用できる。
【0013】
前記第2の実施の形態においては、非円形の柱状凸部に断面六角形の柱を適用したが、その他の多角形、楕円形であっても本発明は適用される。
また、前記それぞれの実施の形態においては、具体的に寸法を用いて説明したが、本発明の要旨を変更しない範囲での寸法変更は可能である。
【符号の説明】
【0014】
10:スタッドボルト、11 ボルト本体、12:放電用突起,13:六角穴(非円形の直状凹部)、14〜17:穴 、20:スタッドボルト、21:放電用突起、22:ボルト本体、23:六角柱(非円形の柱状凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト本体に雄ねじが形成され、底部に放電用突起を備えたコンデンサースタッド溶接に用いるスタッドボルトにおいて、
前記ボルト本体の先部に軸心を合わせて、非円形の直状凹部を設けたことを特徴とするスタッドボルト。
【請求項2】
前記直状凹部は、断面が多角形の穴からなり、前記穴の深さは前記ボルト本体の直径の1/2〜3/4の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のスタッドボルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−183588(P2012−183588A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−113655(P2012−113655)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2009−49508(P2009−49508)の分割
【原出願日】平成9年9月24日(1997.9.24)
【出願人】(597143719)