スタティックミキサー
【課題】管路の中心軸に垂直な断面内の低粘性の混相流体の混合を良好に、かつ効率よく行うことができ、給気量が多い場合には積層した波状板を管路に挿入した従来のスタティックミキサーと同程度の優れた混合性能を有し、給気量が少ないときには液体中にマイクロバブルを効率的に発生させることが可能なスタティックミキサーを提供する。
【解決手段】スタティックミキサーは、円筒状の管路11内に設けられた旋回流発生用翼体12および管路11内にこの旋回流発生用翼体12と同軸に、かつこの旋回流発生用翼体12の下流側に設けられた渦崩壊用ノズル13を有する。旋回流発生用翼体12は、管路11の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなる。
【解決手段】スタティックミキサーは、円筒状の管路11内に設けられた旋回流発生用翼体12および管路11内にこの旋回流発生用翼体12と同軸に、かつこの旋回流発生用翼体12の下流側に設けられた渦崩壊用ノズル13を有する。旋回流発生用翼体12は、管路11の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はスタティックミキサーに関し、例えば、低粘性の混相流体を混合するのに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
スタティックミキサーは駆動部のない静止型流体混合器であり、通常は管路内に固定して使用するため、プロセスの省力化・省スペース化・省エネルギー化を実現する機器として重要な位置を占めている。流体混合としては、液−液混合、気−液混合、混合するものが溶解性か非溶解性か、あるいは高粘性か低粘性かなど、様々な場合がある。
【0003】
最も一般的なスタティックミキサーは、曲面板(エレメント)を管路に挿入することによって構成される。代表的な曲面板としては、らせん要素(spiral element)(特許文献1参照。)、ねじれた翼形混合エレメント(twisted wing-shaped mixing element)(特許文献2参照。)、ねじれ羽根状撹拌体(特許文献3参照。)、波状板(特許文献4、5参照。)がある。
【0004】
特に、特許文献4に提案されたスタティックミキサーは、積層した波状板から多数の剥離渦を生成することで気泡を微粒化するもので、気−液混合に関して効率が高いことが知られている。このスタティックミキサーの圧力損失は、1エレメント当たり液体の運動エネルギーの10倍程度(抵抗係数が10)、混入気体量は液流量の10%程度である。より詳細には、このスタティックミキサーは波状板を積層した構造体であり、波状板の山を通過した気泡が、その背面の剥離渦によりせん断破壊されることで微粒化される。微粒化された気泡は谷に集積し、管路下流方向に輸送される。波状板の形状として特に重要な要素としては、剥離が起こる程度に山の曲率が大きいこと、および、剥離渦の中心軸が管路の軸に対して45度程度傾斜していることが挙げられる。この結果、集積した気泡は管路の下流方向に移流して管路断面内で混合され、剥離渦内に滞留せず気泡の合体が低減される。また、波状板には表と裏が存在することから、剥離渦が管路内に多数発生するため、気泡が微粒化される箇所が多くなる。
【0005】
また、管内壁に、渦を発生させる突起を有するスタティックミキサーも提案されている(特許文献6、7参照。)。このスタティックミキサーは剥離渦で気泡を微粒化し、しかも管路内部を閉塞しないため圧力損失が小さい。
【0006】
一方、マイクロバブルは、発生時において気泡径が一般に10〜数10μmである微細気泡であり、水中で普通に発生する直径数mm程度の気泡と比べると極めて小さい。マイクロバブルは、このように極端に小さいため、微細なゴミを吸着して水面に浮上させる性質を持ち、水産物の洗浄や水質浄化などの多方面に応用されている。このマイクロバブルを発生させる機器(ノズル)としては、旋回流型マイクロバブル発生装置(特許文献8参照。)およびベンチュリー型マイクロバブル発生器(特許文献9参照。)が挙げられる。これらの機器はいずれも、低圧状態の気泡を高圧部に移流させることで、気泡を圧壊させることによりマイクロバブルを生成する。
【0007】
特許文献8の旋回流型マイクロバブル発生装置は、円柱状の本体の前方を半球状に成形し、その外周面の長手方向に複数の翼(ベーン)をそれらの後方が湾曲するように設けた旋回流発生用翼体の翼により強い旋回流を発生させ、渦崩壊用ノズルにより旋回流中心の集中渦をスパイラル状に崩壊させることで、旋回流中心に存在する気柱を破砕し微粒化する。この旋回流型マイクロバブル発生装置による微粒化は、渦崩壊用ノズル前面のせん断流による気泡の伸長破壊、および、渦崩壊用ノズル内部の低圧部の気泡が外部に放出されることによる圧壊によって引き起こされる。マイクロバブルを発生させるためには、この圧壊が必要であり、渦崩壊用ノズル内部が低圧となるためには渦崩壊用ノズルのテーパー部が重要な役割を果たす。一方で、この低圧部の存在はノズルの抵抗を増大させる(抵抗係数が400程度)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5307867号明細書
【特許文献2】米国特許第5425581号明細書
【特許文献3】特開2009−279506号公報
【特許文献4】米国特許第5380088号明細書
【特許文献5】特開2010−94999号公報
【特許文献6】米国特許第4929088号明細書
【特許文献7】米国特許第6595682号明細書
【特許文献8】特許第6595682号明細書
【特許文献9】米国特許第4931225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、特許文献4のスタティックミキサーは、低抵抗で気−液混合の効率も高いが、気泡を圧壊させる機構がないため、マイクロバブルを生成することができない。また、特許文献8の旋回流型マイクロバブル発生装置は、旋回流発生用翼体の下流に気柱が一つしか発生しないため、給気量が少なく、管路断面内の混合効果が小さく、また抵抗が大きくなる。また、旋回流発生用翼体の円柱状の中心部に後流が発生するため、渦崩壊用ノズル中心部の圧力が低下する。このため、給気量が多くなると渦崩壊用ノズルの下流側の端面でコアンダ効果(Coanda effect)が発現せず、結果的に大きな気泡が離脱し、効率的な微粒化が起こらない。また、特許文献9のベンチュリー型マイクロバブル発生器は、給気量が多い場合には、大きな気泡がマイクロバブル発生ノズルから離脱するという問題点がある。さらに、特許文献1のスタティックミキサーでは、断面内の混合が促進されないという欠点がある。
【0010】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、管路の中心軸に垂直な断面内の気体または液体と液体との混合を良好に、かつ効率よく行うことができ、給気量が多い場合には積層した波状板を管路に挿入した従来のスタティックミキサーと同程度の優れた混合性能を有し、給気量が少ないときには液体中にマイクロバブルを効率的に発生させることが可能なスタティックミキサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は、
円筒状の管路内に設けられた旋回流発生用翼体および上記管路内にこの旋回流発生用翼体と同軸に、かつこの旋回流発生用翼体の下流側に設けられた渦崩壊用ノズル部を有し、
上記旋回流発生用翼体が、上記管路の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなることを特徴とするスタティックミキサーである。
【0012】
この発明において、旋回流発生用翼体の中心部は、典型的には、板状の複数の翼の交差部からなる。この交差部は、必要に応じて、管路内の流路をあまり閉塞しない程度の直径を有する円柱状に構成してもよい。この場合、板状の複数の翼は、この円柱部から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられる。このように板状の複数の翼の交差部を円柱状に構成することは、例えば、気−液混合を行う場合において給気量が少ないとき(例えば、液流量の1%以下のとき)には、気柱の圧力を低下させるので、マイクロバブルの発生に有効である。旋回流発生用翼体の翼の枚数は最低限2枚以上あれば足りるが、好適には3枚または4枚以上、一般的には例えば8枚以下に選ばれる。また、これらの複数の翼は、好適には、管路の中心軸の方向に投影したときに隙間が現れないように構成される。旋回流発生用翼体の中心軸に平行な方向と複数の翼の終端部とがなす角度θf は好適には65度以下であり、一般的には40度以上である。旋回流発生用翼体は、管路と別体に構成して管路内に挿入固定してもよいし、管路と一体に構成してもよい。複数の翼の上流側(管路内を流れる液体が当たる側)の端部は、液体に対する抵抗を減少するために、好適には流線形、例えば半円柱状に形成される。管路内に流される液体には、典型的には予め気体が注入される。言い換えると、典型的には管路の上流から気液混相流が供給される。必要に応じて、旋回流発生用翼体において液体に気体を注入するようにしてもよい。この場合、例えば、旋回流発生用翼体の翼の、管路の内壁に面する面から始まり、この翼の内部を通って旋回流発生用翼体の中心部に到達する通路を設け、さらにこの中心部内にこの中心部の後端に到達する通路を設け、上記の翼に対向する部分の管路の内壁に通気孔を設け、外部よりこの通気孔を通して取り入れた気体を上記の通路を通して中心部の後端から噴出することにより液体に注入するようにしてもよい。
【0013】
円筒状の管路は、管(パイプ)を用いて形成してもよいし、ブロックに形成された断面形状が円形の貫通孔であってもよい。
【0014】
渦崩壊(Vortex breakdown) とは渦の構造が急激に変化する現象であり、スパイラル型(デルタ翼の場合などに発生する型)、バブル型(円管内流れの場合などに発生する型)の二つの顕著な型を有する。渦崩壊用ノズル部は、典型的には縮流部および渦崩壊部を有し、縮流部は渦崩壊部に向かって断面積が徐々に減少しており(あるいは、縮流部は渦崩壊部に向かってすぼまっており)、渦崩壊部との境界部において渦崩壊部と同一の断面形状を有する。渦崩壊部の形状は、必要に応じて選ばれるが、具体的には、円筒形状や、出口に向かって断面積が徐々に増加する形状や、円筒状の第1の部分と下流側に向かって広がった形状の第2の部分とを有し、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面とがなす角度をθ0 としたとき、90度≦θ0 <180度である形状などである。渦崩壊部が円筒状の第1の部分と出口に向かって広がった形状の第2の部分とを有する場合、第1の部分の内周面と第2の部分の端面とは滑らかに繋がっていることが望ましい。こうすることで、コアンダ効果により、渦崩壊用ノズル部の噴き出し面である第2の部分の端面に旋回流を付着させることができる。第1の部分の直径をDe 、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面との間のエッジ部の曲率半径をδe としたとき、好適にはδe ≧De /2である。
【0015】
また、この発明は、
第1の管路と、
上記第1の管路内に上記第1の管路を閉塞するように設けられた閉塞部材と、
上記閉塞部材の複数箇所に上記閉塞部材を貫通して設けられた円筒状の第2の管路と、
上記第2の管路内に設けられた旋回流発生用翼体および上記第2の管路内にこの旋回流発生用翼体と同軸に、かつこの旋回流発生用翼体の下流側に設けられた渦崩壊用ノズル部を有し、
上記旋回流発生用翼体が、上記第2の管路の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなることを特徴とするスタティックミキサーである。
【0016】
このスタティックミキサーは、上記のスタティックミキサーを第1の管路内に設けられた閉塞部材の複数箇所にこの閉塞部材を貫通するように設けたものに相当し、第2の管路が上記の管路に相当する。このスタティックミキサーは、好適には、複数の第2の管路内の渦崩壊用ノズル部から発生される旋回流のサーキュレーション(旋回流速×2π×半径で定義される)の総和が0となるように構成される。このスタティックミキサーにより気−液混合を行う場合、閉塞部材の複数箇所に設けられた複数の旋回流発生用翼体のそれぞれに気体が均一に供給されるようにする観点より、好適には、閉塞部材の上流側(前方)の部分の第1の管路内に、例えば特許文献8の旋回流型マイクロバブル発生装置が設けられる。このスタティックミキサーの上記以外のことは、上記のスタティックミキサーに関連して説明したことが成立する。
【0017】
スタティックミキサーの管路あるいは第1の管路内に流す液体は、基本的にはどのようなものであってもよく、必要に応じて選ばれるが、具体的には、例えば、水、セルロースなどの増粘剤を入れた水、各種の環境水(湖沼水、河川水、汚染水など)、建設汚泥などの各種の汚泥、各種の有機溶剤(アルコール、アセトン、トルエンなど)、石油、ガソリンなどの液体燃料などである。このスタティックミキサーにより気−液混合を行う場合、液体に混合する気体は、基本的にはどのようなものであってもよく、必要に応じて選ばれるが、具体的には、例えば、空気、酸素、オゾン、二酸化炭素、水素、アルゴンなどである。このスタティックミキサーにより液−液混合を行う場合、混合する液体は、基本的にはどのようなものであってもよく、必要に応じて選ばれる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、旋回流発生用翼体が、管路あるいは第2の管路の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなるため、管路あるいは第2の管路の中央部が閉塞される度合いが小さく、管路あるいは第2の管路に流される液体が旋回流発生用翼体を通った後に後流が発生するのを抑制することができることにより、圧損が小さい。また、給気量を増加させても気体が流路を閉塞するように滞留するのを防止することができるので、気泡の微粒化が容易に起きる。さらに、給気量が多い場合においても、コアンダ効果により、大きな気泡が渦崩壊用ノズル部の前面から離脱するのを防止することができる。また、このスタティックミキサーは、抵抗係数(抵抗係数をf、圧力損失をΔP、液体の密度をρ、流速をUとしたとき、ΔP=f×ρU2 /2で定義される)を例えば10程度とすることができるため、給気量が液流量の5〜10%でも気体の微粒化が可能である。また、給気量が少ないときには、マイクロバブルを効率的に発生させることが可能である。また、スタティックミキサーのパラメータの設計により、生成させる気泡の径を広い範囲で制御することができる。さらに、渦崩壊用ノズル部の前面に沿う流れが生成されるため、管路あるいは第2の管路の中心軸に垂直な断面内の混合が促進される。
【0019】
以上により、管路あるいは第2の管路の中心軸に垂直な断面内の気体または液体と液体との混合を良好に、かつ効率よく行うことができ、給気量が多い場合には積層した波状板を管路に挿入した従来のスタティックミキサーと同程度の優れた混合性能を有し、給気量が少ないときには液体中にマイクロバブルを効率的に発生させることが可能なスタティックミキサーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーを示す縦断面図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの旋回流発生用翼体を示す斜視図および正面図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの旋回流発生用翼体の翼の形状を示す展開図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの渦崩壊用ノズルを示す縦断面図およびこの渦崩壊用ノズルの出口のエッジの拡大図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの旋回流発生用翼体の設計方法を説明するための略線図である。
【図6】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの旋回流発生用翼体の設計方法を説明するための略線図である。
【図7】板状の複数の翼からなる旋回流発生用翼体の直径に対する中心部の直径の比と正規化した気泡径、スワール数および抵抗係数との関係を示す略線図である。
【図8】板状の複数の翼からなる旋回流発生用翼体の直径に対する翼の厚さの比と正規化した気泡径、スワール数および抵抗係数との関係を示す略線図である。
【図9】正規化した抵抗係数と正規化した気泡径との関係を示す略線図である。
【図10】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの渦崩壊用ノズルの出口のエッジの曲率半径の大小の影響を説明するための断面図および図面代用写真である。
【図11】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの渦崩壊用ノズルの出口のエッジの曲率半径の大小の影響を説明するための断面図および図面代用写真である。
【図12】この発明の第2の実施の形態によるスタティックミキサーを示す縦断面図および正面図である。
【図13】実施例1のスタティックミキサーを示す斜視図である。
【図14】図13に示すスタティックミキサーの平面図、正面図および断面図である。
【図15】図13に示すスタティックミキサーを用いて行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【図16】図13に示すスタティックミキサーを用いて行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【図17】実施例2のスタティックミキサーを示す斜視図である。
【図18】図17に示すスタティックミキサーの正面図および断面図である。
【図19】この発明の第2の実施の形態によるスタティックミキサーの製造方法を説明するための略線図である。
【図20】この発明の第3の実施の形態による旋回流型マイクロバブル発生装置付きスタティックミキサーを示す縦断面図である。
【図21】実施例3の実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図22】実施例3の実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図23】実施例4の実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図24】実施例4の実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図25】この発明の第4の実施の形態においてスタティックミキサーの気泡微細化性能の検証に用いた実験装置を示す略線図である。
【図26】この発明の第4の実施の形態において用いられるスタティックミキサーの幾何学的形状を示す略線図である。
【図27】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図28】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図29】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図30】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図31】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図32】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図33】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図34】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図35】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図36】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図37】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図38】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための縦断面図である。
【図39】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための縦断面図である。
【図40】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための略線図である。
【図41】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための略線図である。
【図42】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための略線図である。
【図43】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための略線図である。
【図44】従来の加圧式マイクロバブル発生装置の一例を示す略線図である。
【図45】この発明の第6の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という。)について図面を参照しながら説明する。
〈第1の実施の形態〉
[スタティックミキサー]
図1に、第1の実施の形態によるスタティックミキサーを示す。図1に示すように、このスタティックミキサーにおいては、円筒状の管路11の内部に、旋回流発生用翼体12および渦崩壊用ノズル13が互いに同軸に固定して設けられている。管路11の上流側の一端11aから液体が流入し、下流側の他端11bから液体が出てゆく。渦崩壊用ノズル13は旋回流発生用翼体12の下流側に設けられている。旋回流発生用翼体12と渦崩壊用ノズル13とは、典型的には所定の間隔をおいて互いに離れて設けられるが、必要に応じて両者を接触させてもよい。
【0022】
旋回流発生用翼体12は、管路11の中心軸、したがってこの旋回流発生用翼体12の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなる。これらの翼は、旋回流発生用翼体12の円周方向に等間隔に設けられている。これらの翼の枚数は、2枚以上、好適には3枚または4枚以上であり、一般的には8枚以下である。旋回流発生用翼体12の中心軸と翼の後端部とのなす角度θF は65度以下、好適には60度以下、より好適には57度以下、また、好適には40度以上であり、例えば56度である。スタティックミキサーを低抵抗にするためには、好適には、θF を渦崩壊が発生する範囲で小さくし、流路面積が大きくなるように翼の厚さを小さくする。下流側から上流側への液体の逆流を防止するために、好適には、これらの翼は、管路11の中心軸の方向に投影した時にそれらの間に隙間が生じないように構成されている。
【0023】
図2AおよびBに、一例として翼12aの枚数が4枚の旋回流発生用翼体12を示す。ここで、図2Aは旋回流発生用翼体12の斜視図、図2Bは旋回流発生用翼体12を中心軸方向から見た正面図である。この例では、旋回流発生用翼体12の上流側の端部では、4枚の薄い板状の翼12aが全体として十字形状をなすように互いに90度離れて設けられており、上流側から下流側に向かってこれらの翼12aが同様に湾曲し、旋回流発生用翼体12の下流側の端部では、同様に4枚の薄い板状の翼12aが全体として十字形状をなすように互いに90度離れてかつ上流側の端部に比べて90度ずれて設けられている。旋回流発生用翼体12の中心部は、これらの4枚の薄い板状の翼12aの交差部12bからなる。各翼12aの前部は、液体に対する抵抗の低減を図るために、好適には流線形状を有し、例えば半円柱状に形成される。
【0024】
図3は、4枚の薄い板状の翼12aからなる旋回流発生用翼体12の外周面の周方向の展開図であり、4枚の翼12aの形状および大きさの一例が示されている。この例では、旋回流発生用翼体12の中心軸方向の長さ(翼長)は14.5mmである。旋回流発生用翼体12の中心軸と翼12aの後端部とのなす角度θF は56度である。
【0025】
例えば、給気量が少なく(例えば、液流量の1%程度以下)、圧損が問題にならないような場合には、板状の翼12aの交差部12bをこの交差部12bよりも大きな直径を有する円柱部で置き換えてもよく、こうすることでより微細な気泡を発生させることができる。
【0026】
図4Aに渦崩壊用ノズル13を示す。図4Aに示すように、渦崩壊用ノズル13は、テーパー状に成形した縮流部13aと管状の渦崩壊部13bとが連接されたものである。縮流部13aは、渦崩壊部13bに向かって断面積が徐々に減少しており、渦崩壊部13bとの境界部において渦崩壊部13bと同一の断面形状を有する。渦崩壊部13bは、円筒状の第1の部分b1と下流側に向かって広がったテーパー形状の第2の部分b2とからなる。第1の部分b1の内周面と第2の部分b2の端面とがなす角度θ0 は90度≦θ0 ≦180度、好適には100度≦θ0 ≦150度、より好適には110度≦θ0 ≦120度であるが、これに限定されるものではない。この場合、渦崩壊部13bを通過した気柱は、テーパー形状の第2の部分b2の端面において、コアンダ効果により気泡となって張り付く。こうして第2の部分b2の端面に張り付いた気泡は、縮流部13aから続く旋回流により剪断または破砕され、マイクロバブルが発生する。このように第2の部分b2の端面に張り付くことにより、気泡が剪断を受ける時間が長くなり、気泡の微粒化が促進される。
【0027】
図4Bは渦崩壊用ノズル13の出口のエッジ13cの拡大図である。板状の翼12aからなる旋回流発生用翼体12を用いた場合においても、給気量を増やすと、旋回流中心部に気柱が発生する。この気柱が存在する場合にもコアンダ効果を発現させるためには、好適には、渦崩壊用ノズル13の出口のエッジ13cを滑らかにする。言い換えると、エッジ13cの曲率半径をρe とすると、ρe を大きくする。好適には、これに加えて、θ0 を大きくする。こうすることで、給気量が多い場合にも、スパイラル型の渦崩壊が発生し、気泡が剪断破壊される。ここで、ρe が大きく、θ0 が小さい場合には、スワール数(旋回流速/軸方向流速)が1程度であってもコアンダ効果が発現する。気柱が渦崩壊用ノズル13の前面に張り付くためには、旋回流による遠心力が主流方向の遠心力より大きくなる必要がある。このため、
ρe 〜(ue /ve )2 re =Γe -2re
以上とする必要がある。ただし、ve は渦崩壊用ノズル13の出口における旋回流の周方向速度である。すなわち、
ρe ≧Γe -2re
とする。
【0028】
渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内周面と第2の部分b2の端面とがなす角度θ0 は、渦崩壊用ノズル13の出口からのマイクロバブルの噴き出し方向を決定する。
【0029】
このスタティックミキサーを低抵抗とするためには、θf を小さくし、具体的には65度以下、例えば56度とし、渦崩壊部13bの内径De を大きくする。ただし、θf およびDe はコアンダ効果による渦崩壊発生条件(渦崩壊部13bの第1の部分b1におけるスワール数が臨界値1程度以上であること)を満たす必要がある。結果的に、θf を小さくすると、De は大きくなる。また、板状の翼12aからなる旋回流発生用翼体12は後流の断面積が小さいため、抗力も小さくなり、結果的にスタティックミキサーの低抵抗化に寄与する。
【0030】
[スタティックミキサーの動作]
このスタティックミキサーの動作について説明する。
図1に示すように、管路11の一端11aから、予め気体が混合された液体が供給される。この液体は、まず旋回流発生用翼体12に到達し、この旋回流発生用翼体12の翼12aと翼12aとの間の空間を流れ、翼12aが下流側に向かって湾曲していることにより旋回流発生用翼体12の円周方向に向きを変えられることにより旋回流となって、旋回流発生用翼体12と渦崩壊用ノズル13との間の渦流部を進む。この際、旋回流発生用翼体12に到達した液体は、この旋回流発生用翼体12の中心部が複数の翼12aの交差部からなり、中心部の径が小さいことにより、ほとんど閉塞されないため、旋回流発生用翼体12の出口に後流がほとんど発生しない。旋回流発生用翼体12を出た液体が、渦流部を通って渦崩壊用ノズル13に入ると、旋回流は縮流され、循環に比べて流れが卓越することで渦崩壊が起きる。この渦崩壊により大きな気泡が細かく潰され、マイクロバブルとなって渦崩壊用ノズル13の出口から放出される。こうして、マイクロバブルが入った液体が管路11の他端11bから出てゆく。ここで、渦崩壊用ノズル13の最小断面、すなわち渦崩壊部13bの断面における旋回流の回転周波数fe は、縮流部13aにおいて循環が保存されるとすると、渦流部における旋回流の回転周波数をf、管路11の内径をD、渦崩壊部13bの内径をDe としたとき、fe =(D/De )2 fとなる。
【0031】
[旋回流発生用翼体12の設計]
旋回流発生用翼体12によって発生する旋回流は、翼12aによって生成される角運動量フラックスから見積もることができる。ただし、二次流の影響を無視し、翼12aから吐き出される液体の流速は管路11の断面内の半径方向に変化しないと仮定する。
【0032】
図5Aは、上流側の先端を半球状に形成した円柱部12cを中心に有し、この円柱部12cから放射状に複数の板状の翼12を設けた旋回流発生用翼体12を示す。円柱部12cの半径はRI 、翼12aの半径はR、厚さは0とする(ケースA)。図5Bは、旋回流発生用翼体12が、複数の板状の翼12aからなり、中心部がこれらの翼12aの交差部12bからなるものである。翼12aの半径はR、厚さはdである(ケースB)。
【0033】
いま、図6に示すように、スタティックミキサーの中心軸をz軸方向にとる。旋回流発生用翼体12の中心軸の上流側の端面をz=0とする。スタティックミキサーの中心軸から半径方向にr軸をとる。
【0034】
旋回流発生用翼体12が生成する角運動量フラックスは、
【数1】
で与えられ、この値が大きいほど強い旋回流を発生させることができる。ここで、Aは旋回流発生用翼体12の下流側の端部の断面積、vz 、vθ(θは添字)はそれぞれ軸方向流速および周方向流速である。上式から、流体の回転半径rが大きいところの流速が角運動量フラックスに大きく寄与することが分かる。
【0035】
角運動量フラックスの保存則から、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1でほぼ剛体回転する旋回流の角速度ωe を次式のように求めることができる。
【数2】
ここで、Qは流量、re は渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径、θf は旋回流発生用翼体12の翼12bの下流側の終端部とz軸とがなす角度、nは旋回流発生用翼体12の翼12aの枚数である。
【0036】
また、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1のスワール数(旋回流速/平均流速)は次式で与えられる。
【数3】
【0037】
気泡の微粒化を効率的に行うことができる条件は、Se >1.5〜2である。
さらに、渦崩壊部13bで生成される気泡径は、Hinze スケールDc 程度であり、
【数4】
となる。ここで、ρは液体の密度、σは表面張力係数、εはエネルギー散逸率である。
【0038】
一方で、旋回流発生用翼体12の抗力はvz の二乗に比例する。したがって、低抵抗の旋回流発生用翼体12は、半径Rに比べて翼12aの厚さdおよび円柱部12cの半径RI を無視することができる程度に小さくすればよい。このとき、
【数5】
である。
【0039】
要約すると、旋回流発生用翼体12でマイクロバブルを発生させるには、上式でSe >1.5〜2、Dc <50μmとなるように設計すればよい。すなわち、旋回流発生用翼体12の中心部に円柱部がなく、翼12aの厚さが無限小でも、上記の条件を満たすように設計すれば、マイクロバブルの生成が可能である。また、翼12aの厚さがO(d/R<<1)のとき、旋回流発生用翼体12の後流領域が小さくなり、気泡の滞留が起こりにくいため、後流領域における気泡の合体を低減することができる。
【0040】
図7および図8に、それぞれケースAおよびケースBの場合の旋回流発生用翼体12の値で正規化した気泡径、スワール数および抵抗係数の値を示す。また、図9に、正規化した抵抗係数と正規化した生成気泡径との関係を示す。図9より、旋回流発生用翼体12の中心部に円柱部を設ける方が、翼12aの厚さを大きくするよりも、気泡生成のエネルギー効率が高いことが分かる。
【0041】
ここで、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内周面と第2の部分b2の端面とのエッジ13cの曲率半径ρe による影響について説明する。板状の翼12aにより構成された旋回流発生用翼体12を用いた場合は、旋回流が弱くなるため、曲率半径ρe を大きくする必要がある。
【0042】
図10Aに、エッジ13cの曲率半径ρe をDe /4(De は渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径)とした場合を示す。これは、給気量/液流量が1%以下である場合に好適である。図5Bに、管路11の内径Dを7.5mm、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径De を6.5mmとした場合に、渦崩壊用ノズル13の先端から水中にマイクロバブル水を放出した場合の写真を示す。この渦崩壊用ノズル13の抵抗係数は約7である。図10Bに示すように、この場合、コアンダ効果による渦崩壊は起きていない。
【0043】
図11Aに、エッジ13cの曲率半径ρe をDe とした場合を示す。これは、給気量/液流量が5〜10%程度以下である場合に好適である。図11Bに、管路11の内径Dを7.5mm、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径De を6.5mmとした場合に、渦崩壊用ノズル13の先端から水中にマイクロバブル水を放出した場合の写真を示す。この渦崩壊用ノズル13の抵抗係数は約7である。図10Bに示すように、この場合、給気量は450cc/min程度、流量は5L/min程度で、給気量10%程度と多いにもかかわらず、コアンダ効果による渦崩壊を起こさせることができることが分かる。
【0044】
[スタティックミキサーの製造方法]
第1の製造方法では、旋回流発生用翼体12および渦崩壊用ノズル13をそれぞれ単体として製作し、これらの旋回流発生用翼体12および渦崩壊用ノズル13を管路11内に挿入することによりスタティックミキサーを製造する。
【0045】
第2の製造方法では、旋回流発生用翼体12は単体として製作するとともに、渦崩壊用ノズル13は管路11と一体に製作し、旋回流発生用翼体12を渦崩壊用ノズル13と反対側から管路11内に挿入することによりスタティックミキサーを製造する。
【0046】
この第1の実施の形態によるスタティックミキサーによれば、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、板状の複数の翼12aからなる旋回流発生用翼体12を用いるので、後流の発生および発達を低減することができることから、スタティックミキサーの抵抗を小さくすることができ、また、気泡の残留を抑えることができることにより微粒化することができる気体量を増やすことができる。また、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内周面と第2の部分b2の端面とのエッジ13cの曲率半径ρe をDe /2以上と大きくすることにより、給気量が液流量の5〜10%であってもコアンダ効果による渦崩壊を発生させることができ、気体を微粒化することができる。さらに、このスタティックミキサーでは、給気量が例えば1%以下であれば、マイクロバブルを発生させることができ、給気量が5〜10%でも気体を微粒化することができる。また、このスタティックミキサーにより気体を微粒化した後に、合泡により気泡径が大きくなってしまう場合には、このスタティックミキサーの後段にもう一つのスタティックミキサーを配置し、この後段のスタティックミキサーにより再度微粒化すればよい。また、このスタティックミキサーでは、渦崩壊用ノズル13の下流側の端面に付着した旋回流が生成されるため、各種の流体においても管路11の中心軸に垂直な断面内の混合が促進され、例えば、互いに密度差を有し混合しない流体の乳化に有効である。
【0047】
〈第2の実施の形態〉
[スタティックミキサー]
図12AおよびBに、第2の実施の形態によるスタティックミキサーを示す。ここで、図12Aは縦断面図、図12Bは正面図である。図12AおよびBに示すように、このスタティックミキサーにおいては、円筒状の管路21の内部にこの管路21を閉塞する閉塞部材22が設けられている。この閉塞部材22に、管路21よりも径が小さい複数の管路23がこの閉塞部材22を貫通して所定の配置で設けられている。各管路23の内部に、旋回流発生用翼体12および渦崩壊用ノズル13が互いに同軸に固定して設けられている。渦崩壊用ノズル13は旋回流発生用翼体12の下流側に設けられている。旋回流発生用翼体12と渦崩壊用ノズル13とは、典型的には所定の間隔をおいて互いに離れて設けられるが、両者を接触させてもよい。この場合、管路21の一端21aから液体が流入し、各管路23を通って、管路21の他端21bから液体が出てくる。このスタティックミキサーは、管路21内に第1の実施の形態によるスタティックミキサーを複数配置したものに相当する。
【0048】
閉塞部材22に設けられる管路23の数および配置は必要に応じて選ばれる。これらの管路23のそれぞれの旋回流発生用翼体12は、好適には、各管路23で発生する旋回流が、流下に伴って互いに打ち消し合うように互いに旋回方向が異なるように構成される。より厳密には、各管路23で発生する旋回流のサーキュレーションの総和が0となるように構成される。こうすることで、旋回流がスタティックミキサーの下流に移流し、微粒化した気泡が旋回流の中心に集まり合体するのを防止することができる。
【0049】
また、このスタティックミキサーにより従来のスタティックミキサーと同等の微細気泡を発生させたい場合は、好適には、閉塞部材22に複数の管路23を最密に配置する。この場合、好適には、例えば、θf は50〜56度程度、De は管路23の内径Dの0.8〜0.9倍とする。ここで、このスタティックミキサーでは、気泡が圧壊するため、微細気泡に混じってマイクロバブルが発生する。
【0050】
また、各管路23の渦崩壊用ノズル13の前面に沿う流れの管路23の管壁への衝突、および、互いに近接する管路23からの流れの衝突があると、管路23の吐出口の圧力が増加し、それによってタンク内で微細気泡を発生させる場合に比べて抵抗が大きくなるが、この圧力を低減するために、θ0 を小さくすることで管軸方向の流速が大きくなるようにする。
【0051】
[スタティックミキサーの動作]
このスタティックミキサーの動作について説明する。
図12に示すように、管路21の一端21aから、予め気体が混合された液体が供給される。この液体は、閉塞部材22を貫通して設けられた管路23の入口から入って旋回流発生用翼体12に到達し、この旋回流発生用翼体12の翼12aと翼12aとの間の空間を流れ、翼12aが下流側に向かって湾曲していることにより旋回流発生用翼体12の円周方向に向きを変えられることにより旋回流となって渦流部を進む。この際、旋回流発生用翼体12に到達した液体は、この旋回流発生用翼体12の中心部が複数の翼12aの交差部からなり、中心部の径が小さいことにより、ほとんど閉塞されないため、旋回流発生用翼体12の出口に後流がほとんど発生しない。旋回流発生用翼体12を出た液体が、渦流部を通って渦崩壊用ノズル13に入ると、旋回流は縮流され、循環に比べて流れが卓越することで渦崩壊が起きる。この渦崩壊により大きな気泡が細かく潰され、マイクロバブルとなって渦崩壊用ノズル13の出口から放出される。こうして、管路21の他端21bからマイクロバブルが入った液体が出てゆく。ここで、渦崩壊用ノズル13の最小断面、すなわち渦崩壊部13bの断面における旋回流の回転周波数fe は、縮流部13bにおいて循環が保存されるとすると、渦流部における旋回流の回転周波数をf、管路23の内径をD、渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径をDe としたとき、fe =(D/De )2 fとなる。
【0052】
このスタティックミキサーの実施例について説明する。
[実施例1]
図13は実施例1のスタティックミキサーの斜視図である。図14Aはこのスタティックミキサーの平面図、図14Bは正面図、図14Cは断面図(図14BのA−A線に沿っての断面図)である。図14A、BおよびCに各部の寸法を示す。
【0053】
このスタティックミキサーでは、閉塞部材22を貫通して19本の管路23が最密配置で設けられているが、完全な円筒状の管路23は中央部の7本のみであり、他の12本の管路23は円筒状の管路23の一部が切除された形状を有する。
【0054】
図15は、この実施例1によるスタティックミキサーを内径22.3mmの水平な透明な円筒状の管路21内に挿入し、ポンプ吸込み口から給気し、管路21の入口から水を流量Qw =32L/min、空気を流量Qa =1L/min、圧力P=48kPa、給気量3%で流したときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。
【0055】
また、図16は、この実施例1によるスタティックミキサーを内径22.3mmの水平な透明な円筒状の管路21内に挿入し、ポンプ吸込み口から給気し、管路21の入口から水を流量Qw =32L/min、空気を流量Qa =2L/min、圧力P=48kPa、給気量6%で流したときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。
【0056】
図15および図16より、気泡が管路21内の上部を移動するため、主として水の上部にマイクロバブルが発生していることが分かる。
【0057】
[実施例2]
図17は実施例2のスタティックミキサーの斜視図である。図18Aはこのスタティックミキサーの正面図、図18Bは断面図(図18AのA−A線に沿っての断面図)である。図18Aおよび図18Bに各部の寸法を示す。
【0058】
このスタティックミキサーでは、閉塞部材22を貫通して4本の円筒状の管路23が最密配置で設けられている。
【0059】
[スタティックミキサーの製造方法]
図19に示すように、円柱状の閉塞部材22に軸対称の円柱状の孔22aを形成する。この孔22aの下流部には渦崩壊用ノズル13が一体的に形成されている。旋回流発生用翼体12は別途、単体で製作する。そして、この旋回流発生用翼体12を、閉塞部材22に形成された各孔22aに、渦崩壊用ノズル13と反対側から挿入することによりスタティックミキサーを製造する。
【0060】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような利点を得ることができる。すなわち、複数の管路23内の旋回流発生用翼体12により発生される旋回流のサーキュレーションの総和が0となるように設計することにより、スタティックミキサーの下流における気泡の合体を抑えることができる。
【0061】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態においては、第2の実施の形態によるスタティックミキサーの上流側に旋回流型マイクロバブル発生装置が設けられる。
【0062】
すなわち、図20に示すように、水平な管路21内に設けられたスタティックミキサー31の上流側に、互いに同軸に結合された旋回流発生用翼体32および渦崩壊用ノズル33からなる旋回流型マイクロバブル発生装置が設けられている。この旋回流型マイクロバブル発生装置の詳細は特許文献8に記載されている。
【0063】
水平な管路21では、気泡の浮力により気泡が管路21内の液体の上部に集積するように移動する。この気液混相流をスタティックミキサー31に通過させると、閉塞部材22に設けられた複数の管路23のうちの上部に位置する管路23内をボイド率の大きな流体が通過するため、微粒化の効率が低下する。これに対し、この第3の実施の形態においては、スタティックミキサー31の上流側に設けられた旋回流型マイクロバブル発生装置により気泡を管路21の全断面に分散させることができるので、各管路23内に気体を均一に供給することができる。すなわち、図20に示すように、旋回流型マイクロバブル発生装置に入る気泡34はこの旋回流型マイクロバブル発生装置により微粒化されるが、この微粒化された気泡34は管路21の全断面に分布し、スタティックミキサー31に供給され、このスタティックミキサー31からマイクロバブル35が発生する。ここで、この旋回流型マイクロバブル発生装置の抵抗係数は、好適には、スタティックミキサー31の抵抗係数に比べて十分小さくなるように、具体的には例えば1/10程度になるように設計する。
【0064】
管路21が鉛直方向に配置される場合において、各管路23内を気泡34が均一に通過しないときには、上記と同様に、スタティックミキサー31の上流側に旋回流型マイクロバブル発生装置、もしくは、特許文献1のスタティックミキサーを設けることにより、各管路23内を気泡34が均一に通過するようになる。
【0065】
[実施例3]
スタティックミキサー31として実施例1のスタティックミキサーを用いた。旋回流型マイクロバブル発生装置として抵抗係数が1〜2程度のものを用いた。この程度の抵抗係数はスタティックミキサー31の抵抗係数に比べて無視することができる。
【0066】
図21は、Qw =33L/min、Qa =2L/min、P=42kPa、給気量6%のときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。また、図22は、Qw =46L/min、Qa =2L/min、P=86kPa、給気量4%のときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。図21および図22より、スタティックミキサーから微細気泡が効率的に発生していることが分かる。
【0067】
[実施例4]
スタティックミキサー31として実施例2のスタティックミキサーを用いた。旋回流型マイクロバブル発生装置として抵抗係数が1〜2程度のものを用いた。
【0068】
図23は、Qw =36.4L/min、Qa =1L/min、P=17.1kPa、給気量3%のときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。また、図24は、Qw =36.4L/min、Qa =2L/min、P=17.1kPa、給気量6%のときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。図23および図24より、スタティックミキサーから微細気泡が効率的に発生していることが分かる。
【0069】
以上のように、第3の実施の形態によれば、スタティックミキサー31の上流側に旋回流型マイクロバブル発生装置を設けていることにより、スタティックミキサー31から微細気泡を効率的に発生させることができる。
【0070】
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態においては、スタティックミキサーの気泡微粒化性能を検証する。
【0071】
すなわち、スタティックミキサーの気泡微粒化性能を調べるために、図25Aに示すように、内径19mmの管路41内に、Kenicsタイプの従来のスタティックミキサー(K−STと略称、1エレメントの抵抗係数が1.25)42を12個直列接続配置した全長500mmの実験装置A(全抵抗係数f=14)と、図25Bに示すように、内径19mmの管路41内に、第4の実施の形態によるスタティックミキサー43(θF =65度、口径(=渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径)6.5mm、抵抗係数14のものと、θF =60度、口径7.0mm、抵抗係数9のものとの二種類を用いた)を1個、K−ST42を4個、直列接続配置した実験装置B(全抵抗係数f=19および13)とを製作して気泡微粒化性能を比較する実験を行った。実験装置Bでは、スタティックミキサー43に気泡が均一に流入するように上流に4個のK−ST42を配置した。
【0072】
図26Aに、実験装置Bで用いたスタティックミキサー43の幾何学的形状を示す。このスタティックミキサー43は、実施例2のものと同様に、閉塞部材22に四つのスタティックミキサーが最密配置で設けられたものであるが、流水断面積を大きくするために、旋回流発生用翼体12の翼12aの形状は、図26Bに示すように1枚の平板を捩じった形状とした。また、サーキュレーションが0となるように、各旋回流の旋回方向が互いに逆になるようにした。
【0073】
図27は実験装置Aにおいて、Qw =38L/min、Qa =1L/min、P=40kPa、f=14の条件で実験を行った結果を示す写真である。また、図28は実験装置Bにおいて、Qw =38L/min、Qa =1L/min、P=44kPa、f=19の条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0074】
図29は実験装置Bにおいて、θF =65度、口径6.5mm、f=14のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =0.2L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。また、図30は実験装置Bにおいて、θF =60度、口径7.0mm、f=9のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =0.2L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。図31は実験装置Bにおいて、θF =65度、口径6.5mm、f=14のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =0.5L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。また、図32は実験装置Bにおいて、θF =60度、口径7.0mm、f=9のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =0.5L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0075】
図33は実験装置Aにおいて、Qw =37L/min、Qa =0.5L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0076】
図34は実験装置Bにおいて、θF =65度、口径6.5mm、f=14のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =1.0L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。また、図35は実験装置Bにおいて、θF =60度、口径7.0mm、f=9のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =1.0L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0077】
図36は実験装置Aにおいて、Qw =37L/min、Qa =1.0L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0078】
以上の結果を総合すると、従来のK−STと同程度の抵抗を持つ低抵抗のスタティックミキサーの設計が可能であり、このスタティックミキサーは気泡の微粒化を効率的に行うことができる。具体的には、同抵抗を有するK−STで生成される気泡に比べて、気泡の直径は数分の1であり、気泡数では10〜100倍となることが分かる。
【0079】
次に、管路41内における気泡の合体について調べた結果について説明する。
図37は、Qw =38L/min、Qa =1L/min、P=44kPa、f=19の条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0080】
スタティックミキサー43で気泡を微粒化しても、管路41内では気泡の接触による合体が頻繁に発生するため、結果的に気泡径は大きくなる。
一方で、K−ST42の場合には、配置された箇所で、合体した気泡も絶えず微粒化されるため、特に給気量が多い場合に有利となる。
したがって、このスタティックミキサー43は、管路41内において気泡の合体が抑制できるように界面活性剤などを混入した液体中への気泡の分散、もしくは、前記実験のようにタンク内への気泡の分散などで使用する場合に効果的である。
【0081】
〈第5の実施の形態〉
第5の実施の形態においては、スタティックミキサーへの気体供給方法について説明する。
【0082】
マイクロバブルを生成する際にスタティックミキサーの上流に気体を供給することは、気体の加圧溶解の促進および再気泡化による細粒化において大きな利点を有する。例えば、微粒化することができる気体の量は吐き出し部の圧力がN気圧のときN倍程度となり、また再気泡化によるマイクロバブルの径は10μm程度と小さい。また、スタティックミキサーには一般に気体を供給する機能が付加されていない。
【0083】
ポンプを利用して液体を吐き出させる場合には、吸い込み部から気体を自給することができる。ただし、ポンプの動翼を気体が通過することによるインペラー(羽根車)の損傷やエアーロックが起こる危険性がある。
【0084】
水道の蛇口にスタティックミキサーを取り付けると、上流の圧力は大気圧よりも大きくなるため、気体を自給させることができない。給気するにはコンプレッサーなどを使用する必要がある。
【0085】
スタティックミキサーの上流にベンチュリー管などを設けて低圧部を作り吸気させることは、ベンチュリー管などの圧損により吸気部の圧力が低下していることを意味し、スタティックミキサーの上流部における加圧効果などを期待することができない。
【0086】
送液中は、管内圧力が大気圧よりも高いため、管路外部から気体を自給することはできない。したがって、給気用のタンクを用意し、送液停止時にタンクに気体を供給し、送液時にはタンクと管路との差圧を利用して気体を自給する。
【0087】
スタティックミキサーにより、加圧溶解および10μm程度の気泡が生成されることにより、効率的にマイクロバブルを生成することができる。
【0088】
水道の蛇口にスタティックミキサーを取り付けることにより、比較的高濃度のマイクロバブル水を生成することができる。
ポンプを通過させることができない特殊の気体を供給することができる。
【0089】
図38はスタティックミキサーを水平配置する場合、図39はスタティックミキサーを鉛直配置する場合を示す。
図38および図39に示すように、管路21のスタティックミキサー31の上流部に縮流部51を設け、その上流部の管路21の外壁にタンク52を設ける。管路21の外壁には管路21とタンク52とを連通させるための排出口53が設けられている。タンク52と管路21内の縮流部11との間に給気管54が設けられており、この給気管54を通してタンク52内の気体を管路21内に供給することができるようになっている。給気管54の途中には、気体流量調節用弁55が取り付けられている。タンク52にはまた、空気以外の気体を供給する場合に用いられる逆止弁56および給気管57が取り付けられている。
【0090】
この第5の実施の形態の原理について説明すると次の通りである。
管路21への送液を停止すると、重力によりタンク52内の液体が管路21の出口に向かって排出される。排出口53は、液体の表面張力に比べて重力が支配的となる程度の大きさ(内径が3mm以上)とする。液体の排出が起こり難い場合や空気以外の気体を供給する場合は、逆止弁56によりタンク52内に気体を供給する。
【0091】
管路21への送液を開始すると、管路21は液体で満たされ、タンク52内の気体は加圧される。また、縮流部51の圧力はタンク52の排出口53よりも低下するため、タンク52の上部の給気管54の孔と縮流部51の孔との間には圧力差が生じ、給気管54を通してタンク52内の気体が縮流部51に供給される。供給する気体の量は気体流量調節用弁55で制御する。
【0092】
気体を流すための差圧は、気体の密度が液体の密度に比べて極めて小さいため、非常に小さくて良く、結果的に縮流部51の圧損はスタティックミキサー31の圧損に比べて無視することができる程度に小さくすることができる。
【0093】
タンク52の排出口53の形状は対称性を持たないものがよい。何故なら、排出口53の対称性がない方が、タンク52内に循環流が発生し浸入した水が抜けて空気が入り込みやすいためである。具体的には、図40A、BおよびCならびに図41AおよびBに示す五つの形状のうちの図40BおよびCならびに図41Bに示す形状が望ましい。
【0094】
図42に、水道蛇口58にスタティックミキサー31を取り付けてマイクロバブル水を供給する場合を示す。特に食器の洗浄などに用いる場合には、長時間の給水を必要としないため、気体用のタンク52の容積は数10cc程度あれば十分である。
【0095】
図43は、特に、水平配置された管路21にスタティックミキサー31が取り付けられている場合において、特殊な気体を用いる場合に好適な例を示す。図43に示すように、給気管54はタンク52の上面に接続されている。また、逆止弁56もタンク52の上面に取り付けられている。タンク52内に液面が位置している。
【0096】
この例では、気体供給時には送液を停止し、気体供給が終了した時点で送液を開始し、マイクロバブル35を発生する。このサイクルを繰り返すことで、断続的にマイクロバブル35を生成する。特に、ポンプを通過させることができない特殊な気体をマイクロバブル化する場合に用いて好適なものである。
【0097】
〈第6の実施の形態〉
第6の実施の形態においては、スタティックミキサーへの気体供給方法について説明する。
【0098】
管路内で気体を微粒化するには、管路に沿って合体する気泡を絶えず撹拌し微粒化する機構が必要である。特に、気体流量が液体流量の数十%と大きい場合には、管路内部に亘って挿入されるKenicsタイプのスタティックミキサーは効果的である。一般に気体溶解のエネルギー効率は供給する気体量が多くなるにしたがって高くなる。一方で、気体量が多いときはマイクロバブルの生成は難しい。この第6の実施の形態では、従来のスタティックミキサーと第2の実施の形態によるスタティックミキサーとを組み合わせることで、高濃度のマイクロバブルを生成する方法を提供する。
【0099】
既に述べたように、従来のスタティックミキサーでは、マイクロバブルを生成することができない。一方で、第2の実施の形態によるスタティックミキサーは、気体量が多い場合はマイクロバブルを生成することは困難である。
【0100】
この第6の実施の形態においては、まず、従来のスタティックミキサーに液流量の数十%の気体を供給し、液体の溶存気体濃度を大きくする。次に、気体を排出する装置を下流側に設け、管路を通過する気体量を数%以下にする。また、通過した気体を管路断面内に分散させるスタティックミキサーを設置する。最後に、第2の実施の形態によるスタティックミキサーを通して、再気泡化および微粒化によりマイクロバブルを生成する。
【0101】
従来のスタティックミキサーと第2の実施の形態によるスタティックミキサーとを組み合わせることにより、効率的に高濃度マイクロバブルを生成することができる。
高濃度マイクロバブル発生手段として使用されている気体溶解タンクの代わりに、スタティックミキサーと気体放出装置とを使用することで装置全体の大きさが小さくなる。
【0102】
図44は従来の加圧式マイクロバブル発生装置の一例を示す。
図44に示すように、この加圧式マイクロバブル発生装置においては、管路61に気体溶解タンク62が取り付けられている。この気体溶解タンク62の上面には弁63および排出管64が取り付けられている。気体溶解タンク62はポンプ揚程により加圧下にあり、この気体溶解タンク62内の気泡65を溶解させるためのものである。ここで生成された過飽和液体が例えば細孔部66を通過し、衝撃を与えられることで再気泡化し、マイクロバブルが生成される。
【0103】
この第6の実施の形態によるスタティックミキサーへの気体供給方法について説明する。
図45に示すように、水平配置された管路21の途中に気体供給タンク71が設けられ、この気体供給タンク71の上面に弁72が取り付けられ、この弁72に排出管73が接続されている。管路21の下流側に第2の実施の形態によるスタティックミキサー31が取り付けられている。気体供給タンク71とこのスタティックミキサー31との間に従来のスタティックミキサー、例えば特許文献3に開示されたものやKenicsタイプのスタティックミキサー74が4個、直列接続配置されている。また、管路21の気体供給タンク71の上流側には、例えば特許文献3に開示されたものやKenicsタイプのスタティックミキサー74が6〜12個、直列接続配置されている。
【0104】
上流側のスタティックミキサー74では液体L中への気体溶解が促進される。この液体L中の気体流量は例えば数十%である。気体供給タンク71では、管路21を流れる液体Lから、内部に溶解していた気体が放出され、弁72を通って排出管73から外部に排出される。気体供給タンク71の下流に配置された従来のスタティックミキサー74では気泡34が分散され、その後、スタティックミキサー31においてマイクロバブル35が生成される。液体L中の気体流量は例えば数%以下である。
【0105】
気体放出部は上流から移流してきた気泡34をトラップしやすいように管路21内に段差を設ける。また、気体放出孔には弁72を設置し、孔を気体が主に通過するように弁72の開閉を調節することができる。気体を排出するための弁72の抵抗は液体が通過するときの約(ρa /ρw )1/2 程度である。ただし、ρa 、ρw はそれぞれ空気および水の密度である。
【0106】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、形状、構造、配置などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、形状、構造、配置などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0107】
11…管路、12…旋回流発生用翼体、12a…翼、12b…交差部、13…渦崩壊用ノズル、13a…縮流部、13b…渦崩壊部、b1…第1の部分、b2…第2の部分、21…管路、22…閉塞部材、23…管路
【技術分野】
【0001】
この発明はスタティックミキサーに関し、例えば、低粘性の混相流体を混合するのに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
スタティックミキサーは駆動部のない静止型流体混合器であり、通常は管路内に固定して使用するため、プロセスの省力化・省スペース化・省エネルギー化を実現する機器として重要な位置を占めている。流体混合としては、液−液混合、気−液混合、混合するものが溶解性か非溶解性か、あるいは高粘性か低粘性かなど、様々な場合がある。
【0003】
最も一般的なスタティックミキサーは、曲面板(エレメント)を管路に挿入することによって構成される。代表的な曲面板としては、らせん要素(spiral element)(特許文献1参照。)、ねじれた翼形混合エレメント(twisted wing-shaped mixing element)(特許文献2参照。)、ねじれ羽根状撹拌体(特許文献3参照。)、波状板(特許文献4、5参照。)がある。
【0004】
特に、特許文献4に提案されたスタティックミキサーは、積層した波状板から多数の剥離渦を生成することで気泡を微粒化するもので、気−液混合に関して効率が高いことが知られている。このスタティックミキサーの圧力損失は、1エレメント当たり液体の運動エネルギーの10倍程度(抵抗係数が10)、混入気体量は液流量の10%程度である。より詳細には、このスタティックミキサーは波状板を積層した構造体であり、波状板の山を通過した気泡が、その背面の剥離渦によりせん断破壊されることで微粒化される。微粒化された気泡は谷に集積し、管路下流方向に輸送される。波状板の形状として特に重要な要素としては、剥離が起こる程度に山の曲率が大きいこと、および、剥離渦の中心軸が管路の軸に対して45度程度傾斜していることが挙げられる。この結果、集積した気泡は管路の下流方向に移流して管路断面内で混合され、剥離渦内に滞留せず気泡の合体が低減される。また、波状板には表と裏が存在することから、剥離渦が管路内に多数発生するため、気泡が微粒化される箇所が多くなる。
【0005】
また、管内壁に、渦を発生させる突起を有するスタティックミキサーも提案されている(特許文献6、7参照。)。このスタティックミキサーは剥離渦で気泡を微粒化し、しかも管路内部を閉塞しないため圧力損失が小さい。
【0006】
一方、マイクロバブルは、発生時において気泡径が一般に10〜数10μmである微細気泡であり、水中で普通に発生する直径数mm程度の気泡と比べると極めて小さい。マイクロバブルは、このように極端に小さいため、微細なゴミを吸着して水面に浮上させる性質を持ち、水産物の洗浄や水質浄化などの多方面に応用されている。このマイクロバブルを発生させる機器(ノズル)としては、旋回流型マイクロバブル発生装置(特許文献8参照。)およびベンチュリー型マイクロバブル発生器(特許文献9参照。)が挙げられる。これらの機器はいずれも、低圧状態の気泡を高圧部に移流させることで、気泡を圧壊させることによりマイクロバブルを生成する。
【0007】
特許文献8の旋回流型マイクロバブル発生装置は、円柱状の本体の前方を半球状に成形し、その外周面の長手方向に複数の翼(ベーン)をそれらの後方が湾曲するように設けた旋回流発生用翼体の翼により強い旋回流を発生させ、渦崩壊用ノズルにより旋回流中心の集中渦をスパイラル状に崩壊させることで、旋回流中心に存在する気柱を破砕し微粒化する。この旋回流型マイクロバブル発生装置による微粒化は、渦崩壊用ノズル前面のせん断流による気泡の伸長破壊、および、渦崩壊用ノズル内部の低圧部の気泡が外部に放出されることによる圧壊によって引き起こされる。マイクロバブルを発生させるためには、この圧壊が必要であり、渦崩壊用ノズル内部が低圧となるためには渦崩壊用ノズルのテーパー部が重要な役割を果たす。一方で、この低圧部の存在はノズルの抵抗を増大させる(抵抗係数が400程度)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5307867号明細書
【特許文献2】米国特許第5425581号明細書
【特許文献3】特開2009−279506号公報
【特許文献4】米国特許第5380088号明細書
【特許文献5】特開2010−94999号公報
【特許文献6】米国特許第4929088号明細書
【特許文献7】米国特許第6595682号明細書
【特許文献8】特許第6595682号明細書
【特許文献9】米国特許第4931225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、特許文献4のスタティックミキサーは、低抵抗で気−液混合の効率も高いが、気泡を圧壊させる機構がないため、マイクロバブルを生成することができない。また、特許文献8の旋回流型マイクロバブル発生装置は、旋回流発生用翼体の下流に気柱が一つしか発生しないため、給気量が少なく、管路断面内の混合効果が小さく、また抵抗が大きくなる。また、旋回流発生用翼体の円柱状の中心部に後流が発生するため、渦崩壊用ノズル中心部の圧力が低下する。このため、給気量が多くなると渦崩壊用ノズルの下流側の端面でコアンダ効果(Coanda effect)が発現せず、結果的に大きな気泡が離脱し、効率的な微粒化が起こらない。また、特許文献9のベンチュリー型マイクロバブル発生器は、給気量が多い場合には、大きな気泡がマイクロバブル発生ノズルから離脱するという問題点がある。さらに、特許文献1のスタティックミキサーでは、断面内の混合が促進されないという欠点がある。
【0010】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、管路の中心軸に垂直な断面内の気体または液体と液体との混合を良好に、かつ効率よく行うことができ、給気量が多い場合には積層した波状板を管路に挿入した従来のスタティックミキサーと同程度の優れた混合性能を有し、給気量が少ないときには液体中にマイクロバブルを効率的に発生させることが可能なスタティックミキサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は、
円筒状の管路内に設けられた旋回流発生用翼体および上記管路内にこの旋回流発生用翼体と同軸に、かつこの旋回流発生用翼体の下流側に設けられた渦崩壊用ノズル部を有し、
上記旋回流発生用翼体が、上記管路の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなることを特徴とするスタティックミキサーである。
【0012】
この発明において、旋回流発生用翼体の中心部は、典型的には、板状の複数の翼の交差部からなる。この交差部は、必要に応じて、管路内の流路をあまり閉塞しない程度の直径を有する円柱状に構成してもよい。この場合、板状の複数の翼は、この円柱部から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられる。このように板状の複数の翼の交差部を円柱状に構成することは、例えば、気−液混合を行う場合において給気量が少ないとき(例えば、液流量の1%以下のとき)には、気柱の圧力を低下させるので、マイクロバブルの発生に有効である。旋回流発生用翼体の翼の枚数は最低限2枚以上あれば足りるが、好適には3枚または4枚以上、一般的には例えば8枚以下に選ばれる。また、これらの複数の翼は、好適には、管路の中心軸の方向に投影したときに隙間が現れないように構成される。旋回流発生用翼体の中心軸に平行な方向と複数の翼の終端部とがなす角度θf は好適には65度以下であり、一般的には40度以上である。旋回流発生用翼体は、管路と別体に構成して管路内に挿入固定してもよいし、管路と一体に構成してもよい。複数の翼の上流側(管路内を流れる液体が当たる側)の端部は、液体に対する抵抗を減少するために、好適には流線形、例えば半円柱状に形成される。管路内に流される液体には、典型的には予め気体が注入される。言い換えると、典型的には管路の上流から気液混相流が供給される。必要に応じて、旋回流発生用翼体において液体に気体を注入するようにしてもよい。この場合、例えば、旋回流発生用翼体の翼の、管路の内壁に面する面から始まり、この翼の内部を通って旋回流発生用翼体の中心部に到達する通路を設け、さらにこの中心部内にこの中心部の後端に到達する通路を設け、上記の翼に対向する部分の管路の内壁に通気孔を設け、外部よりこの通気孔を通して取り入れた気体を上記の通路を通して中心部の後端から噴出することにより液体に注入するようにしてもよい。
【0013】
円筒状の管路は、管(パイプ)を用いて形成してもよいし、ブロックに形成された断面形状が円形の貫通孔であってもよい。
【0014】
渦崩壊(Vortex breakdown) とは渦の構造が急激に変化する現象であり、スパイラル型(デルタ翼の場合などに発生する型)、バブル型(円管内流れの場合などに発生する型)の二つの顕著な型を有する。渦崩壊用ノズル部は、典型的には縮流部および渦崩壊部を有し、縮流部は渦崩壊部に向かって断面積が徐々に減少しており(あるいは、縮流部は渦崩壊部に向かってすぼまっており)、渦崩壊部との境界部において渦崩壊部と同一の断面形状を有する。渦崩壊部の形状は、必要に応じて選ばれるが、具体的には、円筒形状や、出口に向かって断面積が徐々に増加する形状や、円筒状の第1の部分と下流側に向かって広がった形状の第2の部分とを有し、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面とがなす角度をθ0 としたとき、90度≦θ0 <180度である形状などである。渦崩壊部が円筒状の第1の部分と出口に向かって広がった形状の第2の部分とを有する場合、第1の部分の内周面と第2の部分の端面とは滑らかに繋がっていることが望ましい。こうすることで、コアンダ効果により、渦崩壊用ノズル部の噴き出し面である第2の部分の端面に旋回流を付着させることができる。第1の部分の直径をDe 、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面との間のエッジ部の曲率半径をδe としたとき、好適にはδe ≧De /2である。
【0015】
また、この発明は、
第1の管路と、
上記第1の管路内に上記第1の管路を閉塞するように設けられた閉塞部材と、
上記閉塞部材の複数箇所に上記閉塞部材を貫通して設けられた円筒状の第2の管路と、
上記第2の管路内に設けられた旋回流発生用翼体および上記第2の管路内にこの旋回流発生用翼体と同軸に、かつこの旋回流発生用翼体の下流側に設けられた渦崩壊用ノズル部を有し、
上記旋回流発生用翼体が、上記第2の管路の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなることを特徴とするスタティックミキサーである。
【0016】
このスタティックミキサーは、上記のスタティックミキサーを第1の管路内に設けられた閉塞部材の複数箇所にこの閉塞部材を貫通するように設けたものに相当し、第2の管路が上記の管路に相当する。このスタティックミキサーは、好適には、複数の第2の管路内の渦崩壊用ノズル部から発生される旋回流のサーキュレーション(旋回流速×2π×半径で定義される)の総和が0となるように構成される。このスタティックミキサーにより気−液混合を行う場合、閉塞部材の複数箇所に設けられた複数の旋回流発生用翼体のそれぞれに気体が均一に供給されるようにする観点より、好適には、閉塞部材の上流側(前方)の部分の第1の管路内に、例えば特許文献8の旋回流型マイクロバブル発生装置が設けられる。このスタティックミキサーの上記以外のことは、上記のスタティックミキサーに関連して説明したことが成立する。
【0017】
スタティックミキサーの管路あるいは第1の管路内に流す液体は、基本的にはどのようなものであってもよく、必要に応じて選ばれるが、具体的には、例えば、水、セルロースなどの増粘剤を入れた水、各種の環境水(湖沼水、河川水、汚染水など)、建設汚泥などの各種の汚泥、各種の有機溶剤(アルコール、アセトン、トルエンなど)、石油、ガソリンなどの液体燃料などである。このスタティックミキサーにより気−液混合を行う場合、液体に混合する気体は、基本的にはどのようなものであってもよく、必要に応じて選ばれるが、具体的には、例えば、空気、酸素、オゾン、二酸化炭素、水素、アルゴンなどである。このスタティックミキサーにより液−液混合を行う場合、混合する液体は、基本的にはどのようなものであってもよく、必要に応じて選ばれる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、旋回流発生用翼体が、管路あるいは第2の管路の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなるため、管路あるいは第2の管路の中央部が閉塞される度合いが小さく、管路あるいは第2の管路に流される液体が旋回流発生用翼体を通った後に後流が発生するのを抑制することができることにより、圧損が小さい。また、給気量を増加させても気体が流路を閉塞するように滞留するのを防止することができるので、気泡の微粒化が容易に起きる。さらに、給気量が多い場合においても、コアンダ効果により、大きな気泡が渦崩壊用ノズル部の前面から離脱するのを防止することができる。また、このスタティックミキサーは、抵抗係数(抵抗係数をf、圧力損失をΔP、液体の密度をρ、流速をUとしたとき、ΔP=f×ρU2 /2で定義される)を例えば10程度とすることができるため、給気量が液流量の5〜10%でも気体の微粒化が可能である。また、給気量が少ないときには、マイクロバブルを効率的に発生させることが可能である。また、スタティックミキサーのパラメータの設計により、生成させる気泡の径を広い範囲で制御することができる。さらに、渦崩壊用ノズル部の前面に沿う流れが生成されるため、管路あるいは第2の管路の中心軸に垂直な断面内の混合が促進される。
【0019】
以上により、管路あるいは第2の管路の中心軸に垂直な断面内の気体または液体と液体との混合を良好に、かつ効率よく行うことができ、給気量が多い場合には積層した波状板を管路に挿入した従来のスタティックミキサーと同程度の優れた混合性能を有し、給気量が少ないときには液体中にマイクロバブルを効率的に発生させることが可能なスタティックミキサーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーを示す縦断面図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの旋回流発生用翼体を示す斜視図および正面図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの旋回流発生用翼体の翼の形状を示す展開図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの渦崩壊用ノズルを示す縦断面図およびこの渦崩壊用ノズルの出口のエッジの拡大図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの旋回流発生用翼体の設計方法を説明するための略線図である。
【図6】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの旋回流発生用翼体の設計方法を説明するための略線図である。
【図7】板状の複数の翼からなる旋回流発生用翼体の直径に対する中心部の直径の比と正規化した気泡径、スワール数および抵抗係数との関係を示す略線図である。
【図8】板状の複数の翼からなる旋回流発生用翼体の直径に対する翼の厚さの比と正規化した気泡径、スワール数および抵抗係数との関係を示す略線図である。
【図9】正規化した抵抗係数と正規化した気泡径との関係を示す略線図である。
【図10】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの渦崩壊用ノズルの出口のエッジの曲率半径の大小の影響を説明するための断面図および図面代用写真である。
【図11】この発明の第1の実施の形態によるスタティックミキサーの渦崩壊用ノズルの出口のエッジの曲率半径の大小の影響を説明するための断面図および図面代用写真である。
【図12】この発明の第2の実施の形態によるスタティックミキサーを示す縦断面図および正面図である。
【図13】実施例1のスタティックミキサーを示す斜視図である。
【図14】図13に示すスタティックミキサーの平面図、正面図および断面図である。
【図15】図13に示すスタティックミキサーを用いて行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【図16】図13に示すスタティックミキサーを用いて行った実験の結果を示す図面代用写真である。
【図17】実施例2のスタティックミキサーを示す斜視図である。
【図18】図17に示すスタティックミキサーの正面図および断面図である。
【図19】この発明の第2の実施の形態によるスタティックミキサーの製造方法を説明するための略線図である。
【図20】この発明の第3の実施の形態による旋回流型マイクロバブル発生装置付きスタティックミキサーを示す縦断面図である。
【図21】実施例3の実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図22】実施例3の実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図23】実施例4の実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図24】実施例4の実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図25】この発明の第4の実施の形態においてスタティックミキサーの気泡微細化性能の検証に用いた実験装置を示す略線図である。
【図26】この発明の第4の実施の形態において用いられるスタティックミキサーの幾何学的形状を示す略線図である。
【図27】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図28】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図29】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図30】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図31】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図32】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図33】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図34】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図35】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図36】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図37】この発明の第4の実施の形態において行った実験の結果を説明するための図面代用写真である。
【図38】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための縦断面図である。
【図39】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための縦断面図である。
【図40】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための略線図である。
【図41】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための略線図である。
【図42】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための略線図である。
【図43】この発明の第5の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための略線図である。
【図44】従来の加圧式マイクロバブル発生装置の一例を示す略線図である。
【図45】この発明の第6の実施の形態によるスタティックミキサーの給気方法を説明するための略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という。)について図面を参照しながら説明する。
〈第1の実施の形態〉
[スタティックミキサー]
図1に、第1の実施の形態によるスタティックミキサーを示す。図1に示すように、このスタティックミキサーにおいては、円筒状の管路11の内部に、旋回流発生用翼体12および渦崩壊用ノズル13が互いに同軸に固定して設けられている。管路11の上流側の一端11aから液体が流入し、下流側の他端11bから液体が出てゆく。渦崩壊用ノズル13は旋回流発生用翼体12の下流側に設けられている。旋回流発生用翼体12と渦崩壊用ノズル13とは、典型的には所定の間隔をおいて互いに離れて設けられるが、必要に応じて両者を接触させてもよい。
【0022】
旋回流発生用翼体12は、管路11の中心軸、したがってこの旋回流発生用翼体12の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなる。これらの翼は、旋回流発生用翼体12の円周方向に等間隔に設けられている。これらの翼の枚数は、2枚以上、好適には3枚または4枚以上であり、一般的には8枚以下である。旋回流発生用翼体12の中心軸と翼の後端部とのなす角度θF は65度以下、好適には60度以下、より好適には57度以下、また、好適には40度以上であり、例えば56度である。スタティックミキサーを低抵抗にするためには、好適には、θF を渦崩壊が発生する範囲で小さくし、流路面積が大きくなるように翼の厚さを小さくする。下流側から上流側への液体の逆流を防止するために、好適には、これらの翼は、管路11の中心軸の方向に投影した時にそれらの間に隙間が生じないように構成されている。
【0023】
図2AおよびBに、一例として翼12aの枚数が4枚の旋回流発生用翼体12を示す。ここで、図2Aは旋回流発生用翼体12の斜視図、図2Bは旋回流発生用翼体12を中心軸方向から見た正面図である。この例では、旋回流発生用翼体12の上流側の端部では、4枚の薄い板状の翼12aが全体として十字形状をなすように互いに90度離れて設けられており、上流側から下流側に向かってこれらの翼12aが同様に湾曲し、旋回流発生用翼体12の下流側の端部では、同様に4枚の薄い板状の翼12aが全体として十字形状をなすように互いに90度離れてかつ上流側の端部に比べて90度ずれて設けられている。旋回流発生用翼体12の中心部は、これらの4枚の薄い板状の翼12aの交差部12bからなる。各翼12aの前部は、液体に対する抵抗の低減を図るために、好適には流線形状を有し、例えば半円柱状に形成される。
【0024】
図3は、4枚の薄い板状の翼12aからなる旋回流発生用翼体12の外周面の周方向の展開図であり、4枚の翼12aの形状および大きさの一例が示されている。この例では、旋回流発生用翼体12の中心軸方向の長さ(翼長)は14.5mmである。旋回流発生用翼体12の中心軸と翼12aの後端部とのなす角度θF は56度である。
【0025】
例えば、給気量が少なく(例えば、液流量の1%程度以下)、圧損が問題にならないような場合には、板状の翼12aの交差部12bをこの交差部12bよりも大きな直径を有する円柱部で置き換えてもよく、こうすることでより微細な気泡を発生させることができる。
【0026】
図4Aに渦崩壊用ノズル13を示す。図4Aに示すように、渦崩壊用ノズル13は、テーパー状に成形した縮流部13aと管状の渦崩壊部13bとが連接されたものである。縮流部13aは、渦崩壊部13bに向かって断面積が徐々に減少しており、渦崩壊部13bとの境界部において渦崩壊部13bと同一の断面形状を有する。渦崩壊部13bは、円筒状の第1の部分b1と下流側に向かって広がったテーパー形状の第2の部分b2とからなる。第1の部分b1の内周面と第2の部分b2の端面とがなす角度θ0 は90度≦θ0 ≦180度、好適には100度≦θ0 ≦150度、より好適には110度≦θ0 ≦120度であるが、これに限定されるものではない。この場合、渦崩壊部13bを通過した気柱は、テーパー形状の第2の部分b2の端面において、コアンダ効果により気泡となって張り付く。こうして第2の部分b2の端面に張り付いた気泡は、縮流部13aから続く旋回流により剪断または破砕され、マイクロバブルが発生する。このように第2の部分b2の端面に張り付くことにより、気泡が剪断を受ける時間が長くなり、気泡の微粒化が促進される。
【0027】
図4Bは渦崩壊用ノズル13の出口のエッジ13cの拡大図である。板状の翼12aからなる旋回流発生用翼体12を用いた場合においても、給気量を増やすと、旋回流中心部に気柱が発生する。この気柱が存在する場合にもコアンダ効果を発現させるためには、好適には、渦崩壊用ノズル13の出口のエッジ13cを滑らかにする。言い換えると、エッジ13cの曲率半径をρe とすると、ρe を大きくする。好適には、これに加えて、θ0 を大きくする。こうすることで、給気量が多い場合にも、スパイラル型の渦崩壊が発生し、気泡が剪断破壊される。ここで、ρe が大きく、θ0 が小さい場合には、スワール数(旋回流速/軸方向流速)が1程度であってもコアンダ効果が発現する。気柱が渦崩壊用ノズル13の前面に張り付くためには、旋回流による遠心力が主流方向の遠心力より大きくなる必要がある。このため、
ρe 〜(ue /ve )2 re =Γe -2re
以上とする必要がある。ただし、ve は渦崩壊用ノズル13の出口における旋回流の周方向速度である。すなわち、
ρe ≧Γe -2re
とする。
【0028】
渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内周面と第2の部分b2の端面とがなす角度θ0 は、渦崩壊用ノズル13の出口からのマイクロバブルの噴き出し方向を決定する。
【0029】
このスタティックミキサーを低抵抗とするためには、θf を小さくし、具体的には65度以下、例えば56度とし、渦崩壊部13bの内径De を大きくする。ただし、θf およびDe はコアンダ効果による渦崩壊発生条件(渦崩壊部13bの第1の部分b1におけるスワール数が臨界値1程度以上であること)を満たす必要がある。結果的に、θf を小さくすると、De は大きくなる。また、板状の翼12aからなる旋回流発生用翼体12は後流の断面積が小さいため、抗力も小さくなり、結果的にスタティックミキサーの低抵抗化に寄与する。
【0030】
[スタティックミキサーの動作]
このスタティックミキサーの動作について説明する。
図1に示すように、管路11の一端11aから、予め気体が混合された液体が供給される。この液体は、まず旋回流発生用翼体12に到達し、この旋回流発生用翼体12の翼12aと翼12aとの間の空間を流れ、翼12aが下流側に向かって湾曲していることにより旋回流発生用翼体12の円周方向に向きを変えられることにより旋回流となって、旋回流発生用翼体12と渦崩壊用ノズル13との間の渦流部を進む。この際、旋回流発生用翼体12に到達した液体は、この旋回流発生用翼体12の中心部が複数の翼12aの交差部からなり、中心部の径が小さいことにより、ほとんど閉塞されないため、旋回流発生用翼体12の出口に後流がほとんど発生しない。旋回流発生用翼体12を出た液体が、渦流部を通って渦崩壊用ノズル13に入ると、旋回流は縮流され、循環に比べて流れが卓越することで渦崩壊が起きる。この渦崩壊により大きな気泡が細かく潰され、マイクロバブルとなって渦崩壊用ノズル13の出口から放出される。こうして、マイクロバブルが入った液体が管路11の他端11bから出てゆく。ここで、渦崩壊用ノズル13の最小断面、すなわち渦崩壊部13bの断面における旋回流の回転周波数fe は、縮流部13aにおいて循環が保存されるとすると、渦流部における旋回流の回転周波数をf、管路11の内径をD、渦崩壊部13bの内径をDe としたとき、fe =(D/De )2 fとなる。
【0031】
[旋回流発生用翼体12の設計]
旋回流発生用翼体12によって発生する旋回流は、翼12aによって生成される角運動量フラックスから見積もることができる。ただし、二次流の影響を無視し、翼12aから吐き出される液体の流速は管路11の断面内の半径方向に変化しないと仮定する。
【0032】
図5Aは、上流側の先端を半球状に形成した円柱部12cを中心に有し、この円柱部12cから放射状に複数の板状の翼12を設けた旋回流発生用翼体12を示す。円柱部12cの半径はRI 、翼12aの半径はR、厚さは0とする(ケースA)。図5Bは、旋回流発生用翼体12が、複数の板状の翼12aからなり、中心部がこれらの翼12aの交差部12bからなるものである。翼12aの半径はR、厚さはdである(ケースB)。
【0033】
いま、図6に示すように、スタティックミキサーの中心軸をz軸方向にとる。旋回流発生用翼体12の中心軸の上流側の端面をz=0とする。スタティックミキサーの中心軸から半径方向にr軸をとる。
【0034】
旋回流発生用翼体12が生成する角運動量フラックスは、
【数1】
で与えられ、この値が大きいほど強い旋回流を発生させることができる。ここで、Aは旋回流発生用翼体12の下流側の端部の断面積、vz 、vθ(θは添字)はそれぞれ軸方向流速および周方向流速である。上式から、流体の回転半径rが大きいところの流速が角運動量フラックスに大きく寄与することが分かる。
【0035】
角運動量フラックスの保存則から、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1でほぼ剛体回転する旋回流の角速度ωe を次式のように求めることができる。
【数2】
ここで、Qは流量、re は渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径、θf は旋回流発生用翼体12の翼12bの下流側の終端部とz軸とがなす角度、nは旋回流発生用翼体12の翼12aの枚数である。
【0036】
また、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1のスワール数(旋回流速/平均流速)は次式で与えられる。
【数3】
【0037】
気泡の微粒化を効率的に行うことができる条件は、Se >1.5〜2である。
さらに、渦崩壊部13bで生成される気泡径は、Hinze スケールDc 程度であり、
【数4】
となる。ここで、ρは液体の密度、σは表面張力係数、εはエネルギー散逸率である。
【0038】
一方で、旋回流発生用翼体12の抗力はvz の二乗に比例する。したがって、低抵抗の旋回流発生用翼体12は、半径Rに比べて翼12aの厚さdおよび円柱部12cの半径RI を無視することができる程度に小さくすればよい。このとき、
【数5】
である。
【0039】
要約すると、旋回流発生用翼体12でマイクロバブルを発生させるには、上式でSe >1.5〜2、Dc <50μmとなるように設計すればよい。すなわち、旋回流発生用翼体12の中心部に円柱部がなく、翼12aの厚さが無限小でも、上記の条件を満たすように設計すれば、マイクロバブルの生成が可能である。また、翼12aの厚さがO(d/R<<1)のとき、旋回流発生用翼体12の後流領域が小さくなり、気泡の滞留が起こりにくいため、後流領域における気泡の合体を低減することができる。
【0040】
図7および図8に、それぞれケースAおよびケースBの場合の旋回流発生用翼体12の値で正規化した気泡径、スワール数および抵抗係数の値を示す。また、図9に、正規化した抵抗係数と正規化した生成気泡径との関係を示す。図9より、旋回流発生用翼体12の中心部に円柱部を設ける方が、翼12aの厚さを大きくするよりも、気泡生成のエネルギー効率が高いことが分かる。
【0041】
ここで、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内周面と第2の部分b2の端面とのエッジ13cの曲率半径ρe による影響について説明する。板状の翼12aにより構成された旋回流発生用翼体12を用いた場合は、旋回流が弱くなるため、曲率半径ρe を大きくする必要がある。
【0042】
図10Aに、エッジ13cの曲率半径ρe をDe /4(De は渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径)とした場合を示す。これは、給気量/液流量が1%以下である場合に好適である。図5Bに、管路11の内径Dを7.5mm、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径De を6.5mmとした場合に、渦崩壊用ノズル13の先端から水中にマイクロバブル水を放出した場合の写真を示す。この渦崩壊用ノズル13の抵抗係数は約7である。図10Bに示すように、この場合、コアンダ効果による渦崩壊は起きていない。
【0043】
図11Aに、エッジ13cの曲率半径ρe をDe とした場合を示す。これは、給気量/液流量が5〜10%程度以下である場合に好適である。図11Bに、管路11の内径Dを7.5mm、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径De を6.5mmとした場合に、渦崩壊用ノズル13の先端から水中にマイクロバブル水を放出した場合の写真を示す。この渦崩壊用ノズル13の抵抗係数は約7である。図10Bに示すように、この場合、給気量は450cc/min程度、流量は5L/min程度で、給気量10%程度と多いにもかかわらず、コアンダ効果による渦崩壊を起こさせることができることが分かる。
【0044】
[スタティックミキサーの製造方法]
第1の製造方法では、旋回流発生用翼体12および渦崩壊用ノズル13をそれぞれ単体として製作し、これらの旋回流発生用翼体12および渦崩壊用ノズル13を管路11内に挿入することによりスタティックミキサーを製造する。
【0045】
第2の製造方法では、旋回流発生用翼体12は単体として製作するとともに、渦崩壊用ノズル13は管路11と一体に製作し、旋回流発生用翼体12を渦崩壊用ノズル13と反対側から管路11内に挿入することによりスタティックミキサーを製造する。
【0046】
この第1の実施の形態によるスタティックミキサーによれば、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、板状の複数の翼12aからなる旋回流発生用翼体12を用いるので、後流の発生および発達を低減することができることから、スタティックミキサーの抵抗を小さくすることができ、また、気泡の残留を抑えることができることにより微粒化することができる気体量を増やすことができる。また、渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内周面と第2の部分b2の端面とのエッジ13cの曲率半径ρe をDe /2以上と大きくすることにより、給気量が液流量の5〜10%であってもコアンダ効果による渦崩壊を発生させることができ、気体を微粒化することができる。さらに、このスタティックミキサーでは、給気量が例えば1%以下であれば、マイクロバブルを発生させることができ、給気量が5〜10%でも気体を微粒化することができる。また、このスタティックミキサーにより気体を微粒化した後に、合泡により気泡径が大きくなってしまう場合には、このスタティックミキサーの後段にもう一つのスタティックミキサーを配置し、この後段のスタティックミキサーにより再度微粒化すればよい。また、このスタティックミキサーでは、渦崩壊用ノズル13の下流側の端面に付着した旋回流が生成されるため、各種の流体においても管路11の中心軸に垂直な断面内の混合が促進され、例えば、互いに密度差を有し混合しない流体の乳化に有効である。
【0047】
〈第2の実施の形態〉
[スタティックミキサー]
図12AおよびBに、第2の実施の形態によるスタティックミキサーを示す。ここで、図12Aは縦断面図、図12Bは正面図である。図12AおよびBに示すように、このスタティックミキサーにおいては、円筒状の管路21の内部にこの管路21を閉塞する閉塞部材22が設けられている。この閉塞部材22に、管路21よりも径が小さい複数の管路23がこの閉塞部材22を貫通して所定の配置で設けられている。各管路23の内部に、旋回流発生用翼体12および渦崩壊用ノズル13が互いに同軸に固定して設けられている。渦崩壊用ノズル13は旋回流発生用翼体12の下流側に設けられている。旋回流発生用翼体12と渦崩壊用ノズル13とは、典型的には所定の間隔をおいて互いに離れて設けられるが、両者を接触させてもよい。この場合、管路21の一端21aから液体が流入し、各管路23を通って、管路21の他端21bから液体が出てくる。このスタティックミキサーは、管路21内に第1の実施の形態によるスタティックミキサーを複数配置したものに相当する。
【0048】
閉塞部材22に設けられる管路23の数および配置は必要に応じて選ばれる。これらの管路23のそれぞれの旋回流発生用翼体12は、好適には、各管路23で発生する旋回流が、流下に伴って互いに打ち消し合うように互いに旋回方向が異なるように構成される。より厳密には、各管路23で発生する旋回流のサーキュレーションの総和が0となるように構成される。こうすることで、旋回流がスタティックミキサーの下流に移流し、微粒化した気泡が旋回流の中心に集まり合体するのを防止することができる。
【0049】
また、このスタティックミキサーにより従来のスタティックミキサーと同等の微細気泡を発生させたい場合は、好適には、閉塞部材22に複数の管路23を最密に配置する。この場合、好適には、例えば、θf は50〜56度程度、De は管路23の内径Dの0.8〜0.9倍とする。ここで、このスタティックミキサーでは、気泡が圧壊するため、微細気泡に混じってマイクロバブルが発生する。
【0050】
また、各管路23の渦崩壊用ノズル13の前面に沿う流れの管路23の管壁への衝突、および、互いに近接する管路23からの流れの衝突があると、管路23の吐出口の圧力が増加し、それによってタンク内で微細気泡を発生させる場合に比べて抵抗が大きくなるが、この圧力を低減するために、θ0 を小さくすることで管軸方向の流速が大きくなるようにする。
【0051】
[スタティックミキサーの動作]
このスタティックミキサーの動作について説明する。
図12に示すように、管路21の一端21aから、予め気体が混合された液体が供給される。この液体は、閉塞部材22を貫通して設けられた管路23の入口から入って旋回流発生用翼体12に到達し、この旋回流発生用翼体12の翼12aと翼12aとの間の空間を流れ、翼12aが下流側に向かって湾曲していることにより旋回流発生用翼体12の円周方向に向きを変えられることにより旋回流となって渦流部を進む。この際、旋回流発生用翼体12に到達した液体は、この旋回流発生用翼体12の中心部が複数の翼12aの交差部からなり、中心部の径が小さいことにより、ほとんど閉塞されないため、旋回流発生用翼体12の出口に後流がほとんど発生しない。旋回流発生用翼体12を出た液体が、渦流部を通って渦崩壊用ノズル13に入ると、旋回流は縮流され、循環に比べて流れが卓越することで渦崩壊が起きる。この渦崩壊により大きな気泡が細かく潰され、マイクロバブルとなって渦崩壊用ノズル13の出口から放出される。こうして、管路21の他端21bからマイクロバブルが入った液体が出てゆく。ここで、渦崩壊用ノズル13の最小断面、すなわち渦崩壊部13bの断面における旋回流の回転周波数fe は、縮流部13bにおいて循環が保存されるとすると、渦流部における旋回流の回転周波数をf、管路23の内径をD、渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径をDe としたとき、fe =(D/De )2 fとなる。
【0052】
このスタティックミキサーの実施例について説明する。
[実施例1]
図13は実施例1のスタティックミキサーの斜視図である。図14Aはこのスタティックミキサーの平面図、図14Bは正面図、図14Cは断面図(図14BのA−A線に沿っての断面図)である。図14A、BおよびCに各部の寸法を示す。
【0053】
このスタティックミキサーでは、閉塞部材22を貫通して19本の管路23が最密配置で設けられているが、完全な円筒状の管路23は中央部の7本のみであり、他の12本の管路23は円筒状の管路23の一部が切除された形状を有する。
【0054】
図15は、この実施例1によるスタティックミキサーを内径22.3mmの水平な透明な円筒状の管路21内に挿入し、ポンプ吸込み口から給気し、管路21の入口から水を流量Qw =32L/min、空気を流量Qa =1L/min、圧力P=48kPa、給気量3%で流したときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。
【0055】
また、図16は、この実施例1によるスタティックミキサーを内径22.3mmの水平な透明な円筒状の管路21内に挿入し、ポンプ吸込み口から給気し、管路21の入口から水を流量Qw =32L/min、空気を流量Qa =2L/min、圧力P=48kPa、給気量6%で流したときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。
【0056】
図15および図16より、気泡が管路21内の上部を移動するため、主として水の上部にマイクロバブルが発生していることが分かる。
【0057】
[実施例2]
図17は実施例2のスタティックミキサーの斜視図である。図18Aはこのスタティックミキサーの正面図、図18Bは断面図(図18AのA−A線に沿っての断面図)である。図18Aおよび図18Bに各部の寸法を示す。
【0058】
このスタティックミキサーでは、閉塞部材22を貫通して4本の円筒状の管路23が最密配置で設けられている。
【0059】
[スタティックミキサーの製造方法]
図19に示すように、円柱状の閉塞部材22に軸対称の円柱状の孔22aを形成する。この孔22aの下流部には渦崩壊用ノズル13が一体的に形成されている。旋回流発生用翼体12は別途、単体で製作する。そして、この旋回流発生用翼体12を、閉塞部材22に形成された各孔22aに、渦崩壊用ノズル13と反対側から挿入することによりスタティックミキサーを製造する。
【0060】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような利点を得ることができる。すなわち、複数の管路23内の旋回流発生用翼体12により発生される旋回流のサーキュレーションの総和が0となるように設計することにより、スタティックミキサーの下流における気泡の合体を抑えることができる。
【0061】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態においては、第2の実施の形態によるスタティックミキサーの上流側に旋回流型マイクロバブル発生装置が設けられる。
【0062】
すなわち、図20に示すように、水平な管路21内に設けられたスタティックミキサー31の上流側に、互いに同軸に結合された旋回流発生用翼体32および渦崩壊用ノズル33からなる旋回流型マイクロバブル発生装置が設けられている。この旋回流型マイクロバブル発生装置の詳細は特許文献8に記載されている。
【0063】
水平な管路21では、気泡の浮力により気泡が管路21内の液体の上部に集積するように移動する。この気液混相流をスタティックミキサー31に通過させると、閉塞部材22に設けられた複数の管路23のうちの上部に位置する管路23内をボイド率の大きな流体が通過するため、微粒化の効率が低下する。これに対し、この第3の実施の形態においては、スタティックミキサー31の上流側に設けられた旋回流型マイクロバブル発生装置により気泡を管路21の全断面に分散させることができるので、各管路23内に気体を均一に供給することができる。すなわち、図20に示すように、旋回流型マイクロバブル発生装置に入る気泡34はこの旋回流型マイクロバブル発生装置により微粒化されるが、この微粒化された気泡34は管路21の全断面に分布し、スタティックミキサー31に供給され、このスタティックミキサー31からマイクロバブル35が発生する。ここで、この旋回流型マイクロバブル発生装置の抵抗係数は、好適には、スタティックミキサー31の抵抗係数に比べて十分小さくなるように、具体的には例えば1/10程度になるように設計する。
【0064】
管路21が鉛直方向に配置される場合において、各管路23内を気泡34が均一に通過しないときには、上記と同様に、スタティックミキサー31の上流側に旋回流型マイクロバブル発生装置、もしくは、特許文献1のスタティックミキサーを設けることにより、各管路23内を気泡34が均一に通過するようになる。
【0065】
[実施例3]
スタティックミキサー31として実施例1のスタティックミキサーを用いた。旋回流型マイクロバブル発生装置として抵抗係数が1〜2程度のものを用いた。この程度の抵抗係数はスタティックミキサー31の抵抗係数に比べて無視することができる。
【0066】
図21は、Qw =33L/min、Qa =2L/min、P=42kPa、給気量6%のときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。また、図22は、Qw =46L/min、Qa =2L/min、P=86kPa、給気量4%のときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。図21および図22より、スタティックミキサーから微細気泡が効率的に発生していることが分かる。
【0067】
[実施例4]
スタティックミキサー31として実施例2のスタティックミキサーを用いた。旋回流型マイクロバブル発生装置として抵抗係数が1〜2程度のものを用いた。
【0068】
図23は、Qw =36.4L/min、Qa =1L/min、P=17.1kPa、給気量3%のときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。また、図24は、Qw =36.4L/min、Qa =2L/min、P=17.1kPa、給気量6%のときの管路21内の水の様子を外部から撮影した写真である。図23および図24より、スタティックミキサーから微細気泡が効率的に発生していることが分かる。
【0069】
以上のように、第3の実施の形態によれば、スタティックミキサー31の上流側に旋回流型マイクロバブル発生装置を設けていることにより、スタティックミキサー31から微細気泡を効率的に発生させることができる。
【0070】
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態においては、スタティックミキサーの気泡微粒化性能を検証する。
【0071】
すなわち、スタティックミキサーの気泡微粒化性能を調べるために、図25Aに示すように、内径19mmの管路41内に、Kenicsタイプの従来のスタティックミキサー(K−STと略称、1エレメントの抵抗係数が1.25)42を12個直列接続配置した全長500mmの実験装置A(全抵抗係数f=14)と、図25Bに示すように、内径19mmの管路41内に、第4の実施の形態によるスタティックミキサー43(θF =65度、口径(=渦崩壊用ノズル13の渦崩壊部13bの第1の部分b1の内径)6.5mm、抵抗係数14のものと、θF =60度、口径7.0mm、抵抗係数9のものとの二種類を用いた)を1個、K−ST42を4個、直列接続配置した実験装置B(全抵抗係数f=19および13)とを製作して気泡微粒化性能を比較する実験を行った。実験装置Bでは、スタティックミキサー43に気泡が均一に流入するように上流に4個のK−ST42を配置した。
【0072】
図26Aに、実験装置Bで用いたスタティックミキサー43の幾何学的形状を示す。このスタティックミキサー43は、実施例2のものと同様に、閉塞部材22に四つのスタティックミキサーが最密配置で設けられたものであるが、流水断面積を大きくするために、旋回流発生用翼体12の翼12aの形状は、図26Bに示すように1枚の平板を捩じった形状とした。また、サーキュレーションが0となるように、各旋回流の旋回方向が互いに逆になるようにした。
【0073】
図27は実験装置Aにおいて、Qw =38L/min、Qa =1L/min、P=40kPa、f=14の条件で実験を行った結果を示す写真である。また、図28は実験装置Bにおいて、Qw =38L/min、Qa =1L/min、P=44kPa、f=19の条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0074】
図29は実験装置Bにおいて、θF =65度、口径6.5mm、f=14のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =0.2L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。また、図30は実験装置Bにおいて、θF =60度、口径7.0mm、f=9のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =0.2L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。図31は実験装置Bにおいて、θF =65度、口径6.5mm、f=14のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =0.5L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。また、図32は実験装置Bにおいて、θF =60度、口径7.0mm、f=9のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =0.5L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0075】
図33は実験装置Aにおいて、Qw =37L/min、Qa =0.5L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0076】
図34は実験装置Bにおいて、θF =65度、口径6.5mm、f=14のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =1.0L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。また、図35は実験装置Bにおいて、θF =60度、口径7.0mm、f=9のスタティックミキサーを用い、Qw =37L/min、Qa =1.0L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0077】
図36は実験装置Aにおいて、Qw =37L/min、Qa =1.0L/minの条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0078】
以上の結果を総合すると、従来のK−STと同程度の抵抗を持つ低抵抗のスタティックミキサーの設計が可能であり、このスタティックミキサーは気泡の微粒化を効率的に行うことができる。具体的には、同抵抗を有するK−STで生成される気泡に比べて、気泡の直径は数分の1であり、気泡数では10〜100倍となることが分かる。
【0079】
次に、管路41内における気泡の合体について調べた結果について説明する。
図37は、Qw =38L/min、Qa =1L/min、P=44kPa、f=19の条件で実験を行った結果を示す写真である。
【0080】
スタティックミキサー43で気泡を微粒化しても、管路41内では気泡の接触による合体が頻繁に発生するため、結果的に気泡径は大きくなる。
一方で、K−ST42の場合には、配置された箇所で、合体した気泡も絶えず微粒化されるため、特に給気量が多い場合に有利となる。
したがって、このスタティックミキサー43は、管路41内において気泡の合体が抑制できるように界面活性剤などを混入した液体中への気泡の分散、もしくは、前記実験のようにタンク内への気泡の分散などで使用する場合に効果的である。
【0081】
〈第5の実施の形態〉
第5の実施の形態においては、スタティックミキサーへの気体供給方法について説明する。
【0082】
マイクロバブルを生成する際にスタティックミキサーの上流に気体を供給することは、気体の加圧溶解の促進および再気泡化による細粒化において大きな利点を有する。例えば、微粒化することができる気体の量は吐き出し部の圧力がN気圧のときN倍程度となり、また再気泡化によるマイクロバブルの径は10μm程度と小さい。また、スタティックミキサーには一般に気体を供給する機能が付加されていない。
【0083】
ポンプを利用して液体を吐き出させる場合には、吸い込み部から気体を自給することができる。ただし、ポンプの動翼を気体が通過することによるインペラー(羽根車)の損傷やエアーロックが起こる危険性がある。
【0084】
水道の蛇口にスタティックミキサーを取り付けると、上流の圧力は大気圧よりも大きくなるため、気体を自給させることができない。給気するにはコンプレッサーなどを使用する必要がある。
【0085】
スタティックミキサーの上流にベンチュリー管などを設けて低圧部を作り吸気させることは、ベンチュリー管などの圧損により吸気部の圧力が低下していることを意味し、スタティックミキサーの上流部における加圧効果などを期待することができない。
【0086】
送液中は、管内圧力が大気圧よりも高いため、管路外部から気体を自給することはできない。したがって、給気用のタンクを用意し、送液停止時にタンクに気体を供給し、送液時にはタンクと管路との差圧を利用して気体を自給する。
【0087】
スタティックミキサーにより、加圧溶解および10μm程度の気泡が生成されることにより、効率的にマイクロバブルを生成することができる。
【0088】
水道の蛇口にスタティックミキサーを取り付けることにより、比較的高濃度のマイクロバブル水を生成することができる。
ポンプを通過させることができない特殊の気体を供給することができる。
【0089】
図38はスタティックミキサーを水平配置する場合、図39はスタティックミキサーを鉛直配置する場合を示す。
図38および図39に示すように、管路21のスタティックミキサー31の上流部に縮流部51を設け、その上流部の管路21の外壁にタンク52を設ける。管路21の外壁には管路21とタンク52とを連通させるための排出口53が設けられている。タンク52と管路21内の縮流部11との間に給気管54が設けられており、この給気管54を通してタンク52内の気体を管路21内に供給することができるようになっている。給気管54の途中には、気体流量調節用弁55が取り付けられている。タンク52にはまた、空気以外の気体を供給する場合に用いられる逆止弁56および給気管57が取り付けられている。
【0090】
この第5の実施の形態の原理について説明すると次の通りである。
管路21への送液を停止すると、重力によりタンク52内の液体が管路21の出口に向かって排出される。排出口53は、液体の表面張力に比べて重力が支配的となる程度の大きさ(内径が3mm以上)とする。液体の排出が起こり難い場合や空気以外の気体を供給する場合は、逆止弁56によりタンク52内に気体を供給する。
【0091】
管路21への送液を開始すると、管路21は液体で満たされ、タンク52内の気体は加圧される。また、縮流部51の圧力はタンク52の排出口53よりも低下するため、タンク52の上部の給気管54の孔と縮流部51の孔との間には圧力差が生じ、給気管54を通してタンク52内の気体が縮流部51に供給される。供給する気体の量は気体流量調節用弁55で制御する。
【0092】
気体を流すための差圧は、気体の密度が液体の密度に比べて極めて小さいため、非常に小さくて良く、結果的に縮流部51の圧損はスタティックミキサー31の圧損に比べて無視することができる程度に小さくすることができる。
【0093】
タンク52の排出口53の形状は対称性を持たないものがよい。何故なら、排出口53の対称性がない方が、タンク52内に循環流が発生し浸入した水が抜けて空気が入り込みやすいためである。具体的には、図40A、BおよびCならびに図41AおよびBに示す五つの形状のうちの図40BおよびCならびに図41Bに示す形状が望ましい。
【0094】
図42に、水道蛇口58にスタティックミキサー31を取り付けてマイクロバブル水を供給する場合を示す。特に食器の洗浄などに用いる場合には、長時間の給水を必要としないため、気体用のタンク52の容積は数10cc程度あれば十分である。
【0095】
図43は、特に、水平配置された管路21にスタティックミキサー31が取り付けられている場合において、特殊な気体を用いる場合に好適な例を示す。図43に示すように、給気管54はタンク52の上面に接続されている。また、逆止弁56もタンク52の上面に取り付けられている。タンク52内に液面が位置している。
【0096】
この例では、気体供給時には送液を停止し、気体供給が終了した時点で送液を開始し、マイクロバブル35を発生する。このサイクルを繰り返すことで、断続的にマイクロバブル35を生成する。特に、ポンプを通過させることができない特殊な気体をマイクロバブル化する場合に用いて好適なものである。
【0097】
〈第6の実施の形態〉
第6の実施の形態においては、スタティックミキサーへの気体供給方法について説明する。
【0098】
管路内で気体を微粒化するには、管路に沿って合体する気泡を絶えず撹拌し微粒化する機構が必要である。特に、気体流量が液体流量の数十%と大きい場合には、管路内部に亘って挿入されるKenicsタイプのスタティックミキサーは効果的である。一般に気体溶解のエネルギー効率は供給する気体量が多くなるにしたがって高くなる。一方で、気体量が多いときはマイクロバブルの生成は難しい。この第6の実施の形態では、従来のスタティックミキサーと第2の実施の形態によるスタティックミキサーとを組み合わせることで、高濃度のマイクロバブルを生成する方法を提供する。
【0099】
既に述べたように、従来のスタティックミキサーでは、マイクロバブルを生成することができない。一方で、第2の実施の形態によるスタティックミキサーは、気体量が多い場合はマイクロバブルを生成することは困難である。
【0100】
この第6の実施の形態においては、まず、従来のスタティックミキサーに液流量の数十%の気体を供給し、液体の溶存気体濃度を大きくする。次に、気体を排出する装置を下流側に設け、管路を通過する気体量を数%以下にする。また、通過した気体を管路断面内に分散させるスタティックミキサーを設置する。最後に、第2の実施の形態によるスタティックミキサーを通して、再気泡化および微粒化によりマイクロバブルを生成する。
【0101】
従来のスタティックミキサーと第2の実施の形態によるスタティックミキサーとを組み合わせることにより、効率的に高濃度マイクロバブルを生成することができる。
高濃度マイクロバブル発生手段として使用されている気体溶解タンクの代わりに、スタティックミキサーと気体放出装置とを使用することで装置全体の大きさが小さくなる。
【0102】
図44は従来の加圧式マイクロバブル発生装置の一例を示す。
図44に示すように、この加圧式マイクロバブル発生装置においては、管路61に気体溶解タンク62が取り付けられている。この気体溶解タンク62の上面には弁63および排出管64が取り付けられている。気体溶解タンク62はポンプ揚程により加圧下にあり、この気体溶解タンク62内の気泡65を溶解させるためのものである。ここで生成された過飽和液体が例えば細孔部66を通過し、衝撃を与えられることで再気泡化し、マイクロバブルが生成される。
【0103】
この第6の実施の形態によるスタティックミキサーへの気体供給方法について説明する。
図45に示すように、水平配置された管路21の途中に気体供給タンク71が設けられ、この気体供給タンク71の上面に弁72が取り付けられ、この弁72に排出管73が接続されている。管路21の下流側に第2の実施の形態によるスタティックミキサー31が取り付けられている。気体供給タンク71とこのスタティックミキサー31との間に従来のスタティックミキサー、例えば特許文献3に開示されたものやKenicsタイプのスタティックミキサー74が4個、直列接続配置されている。また、管路21の気体供給タンク71の上流側には、例えば特許文献3に開示されたものやKenicsタイプのスタティックミキサー74が6〜12個、直列接続配置されている。
【0104】
上流側のスタティックミキサー74では液体L中への気体溶解が促進される。この液体L中の気体流量は例えば数十%である。気体供給タンク71では、管路21を流れる液体Lから、内部に溶解していた気体が放出され、弁72を通って排出管73から外部に排出される。気体供給タンク71の下流に配置された従来のスタティックミキサー74では気泡34が分散され、その後、スタティックミキサー31においてマイクロバブル35が生成される。液体L中の気体流量は例えば数%以下である。
【0105】
気体放出部は上流から移流してきた気泡34をトラップしやすいように管路21内に段差を設ける。また、気体放出孔には弁72を設置し、孔を気体が主に通過するように弁72の開閉を調節することができる。気体を排出するための弁72の抵抗は液体が通過するときの約(ρa /ρw )1/2 程度である。ただし、ρa 、ρw はそれぞれ空気および水の密度である。
【0106】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、形状、構造、配置などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、形状、構造、配置などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0107】
11…管路、12…旋回流発生用翼体、12a…翼、12b…交差部、13…渦崩壊用ノズル、13a…縮流部、13b…渦崩壊部、b1…第1の部分、b2…第2の部分、21…管路、22…閉塞部材、23…管路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の管路内に設けられた旋回流発生用翼体および上記管路内にこの旋回流発生用翼体と同軸に、かつこの旋回流発生用翼体の下流側に設けられた渦崩壊用ノズル部を有し、
上記旋回流発生用翼体が、上記管路の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなることを特徴とするスタティックミキサー。
【請求項2】
上記旋回流発生用翼体の中心部が上記複数の翼の交差部からなることを特徴とする請求項1記載のスタティックミキサー。
【請求項3】
上記旋回流発生用翼体の上記複数の翼の枚数が2枚以上であることを特徴とする請求項2記載のスタティックミキサー。
【請求項4】
上記複数の翼は上記管路の中心軸の方向に投影したときに隙間が現れないように構成されていることを特徴とする請求項3記載のスタティックミキサー。
【請求項5】
上記旋回流発生用翼体の中心軸に平行な方向と上記複数の翼の下流側の終端部とがなす角度θf が65度以下であることを特徴とする請求項4記載のスタティックミキサー。
【請求項6】
上記渦崩壊用ノズル部は縮流部および渦崩壊部を有し、上記縮流部は上記渦崩壊部に向かって断面積が徐々に減少しており、上記渦崩壊部との境界部において上記渦崩壊部と同一の断面形状を有することを特徴とする請求項5記載のスタティックミキサー。
【請求項7】
上記渦崩壊部は、円筒状の第1の部分と下流側に向かって広がった形状の第2の部分とを有し、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面とがなす角度をθ0 としたとき、90度≦θ0 <180度であることを特徴とする請求項6記載のスタティックミキサー。
【請求項8】
上記第1の部分の直径をDe 、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面との間のエッジ部の曲率半径をδe としたとき、δe ≧De /2であることを特徴とする請求項7記載のスタティックミキサー。
【請求項9】
第1の管路と、
上記第1の管路内に上記第1の管路を閉塞するように設けられた閉塞部材と、
上記閉塞部材の複数箇所に上記閉塞部材を貫通して設けられた円筒状の第2の管路と、
上記第2の管路内に設けられた旋回流発生用翼体および上記第2の管路内にこの旋回流発生用翼体と同軸に、かつこの旋回流発生用翼体の下流側に設けられた渦崩壊用ノズル部を有し、
上記旋回流発生用翼体が、上記第2の管路の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなることを特徴とするスタティックミキサー。
【請求項10】
上記旋回流発生用翼体の中心部が上記複数の翼の交差部からなることを特徴とする請求項9記載のスタティックミキサー。
【請求項11】
上記旋回流発生用翼体の上記複数の翼の枚数が2枚以上であることを特徴とする請求項10記載のスタティックミキサー。
【請求項12】
上記複数の翼は上記管路の中心軸の方向に投影したときに隙間が現れないように構成されていることを特徴とする請求項11記載のスタティックミキサー。
【請求項13】
上記旋回流発生用翼体の中心軸に平行な方向と上記複数の翼の下流側の終端部とがなす角度θf が65度以下であることを特徴とする請求項12記載のスタティックミキサー。
【請求項14】
上記渦崩壊用ノズル部は縮流部および渦崩壊部を有し、上記縮流部は上記渦崩壊部に向かって断面積が徐々に減少しており、上記渦崩壊部との境界部において上記渦崩壊部と同一の断面形状を有することを特徴とする請求項13記載のスタティックミキサー。
【請求項15】
上記渦崩壊部は、円筒状の第1の部分と下流側に向かって広がった形状の第2の部分とを有し、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面とがなす角度をθ0 としたとき、90度≦θ0 <180度であることを特徴とする請求項14記載のスタティックミキサー。
【請求項16】
上記第1の部分の直径をDe 、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面との間のエッジ部の曲率半径をδe としたとき、δe ≧De /2であることを特徴とする請求項15記載のスタティックミキサー。
【請求項17】
上記複数の上記第2の管路内の上記渦崩壊用ノズル部から発生される旋回流のサーキュレーションの総和が0であることを特徴とする請求項9記載のスタティックミキサー。
【請求項18】
上記閉塞部材の上流側の部分の上記第1の管路内に旋回流型マイクロバブル発生ノズルが設けられていることを特徴とする請求項9記載のスタティックミキサー。
【請求項1】
円筒状の管路内に設けられた旋回流発生用翼体および上記管路内にこの旋回流発生用翼体と同軸に、かつこの旋回流発生用翼体の下流側に設けられた渦崩壊用ノズル部を有し、
上記旋回流発生用翼体が、上記管路の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなることを特徴とするスタティックミキサー。
【請求項2】
上記旋回流発生用翼体の中心部が上記複数の翼の交差部からなることを特徴とする請求項1記載のスタティックミキサー。
【請求項3】
上記旋回流発生用翼体の上記複数の翼の枚数が2枚以上であることを特徴とする請求項2記載のスタティックミキサー。
【請求項4】
上記複数の翼は上記管路の中心軸の方向に投影したときに隙間が現れないように構成されていることを特徴とする請求項3記載のスタティックミキサー。
【請求項5】
上記旋回流発生用翼体の中心軸に平行な方向と上記複数の翼の下流側の終端部とがなす角度θf が65度以下であることを特徴とする請求項4記載のスタティックミキサー。
【請求項6】
上記渦崩壊用ノズル部は縮流部および渦崩壊部を有し、上記縮流部は上記渦崩壊部に向かって断面積が徐々に減少しており、上記渦崩壊部との境界部において上記渦崩壊部と同一の断面形状を有することを特徴とする請求項5記載のスタティックミキサー。
【請求項7】
上記渦崩壊部は、円筒状の第1の部分と下流側に向かって広がった形状の第2の部分とを有し、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面とがなす角度をθ0 としたとき、90度≦θ0 <180度であることを特徴とする請求項6記載のスタティックミキサー。
【請求項8】
上記第1の部分の直径をDe 、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面との間のエッジ部の曲率半径をδe としたとき、δe ≧De /2であることを特徴とする請求項7記載のスタティックミキサー。
【請求項9】
第1の管路と、
上記第1の管路内に上記第1の管路を閉塞するように設けられた閉塞部材と、
上記閉塞部材の複数箇所に上記閉塞部材を貫通して設けられた円筒状の第2の管路と、
上記第2の管路内に設けられた旋回流発生用翼体および上記第2の管路内にこの旋回流発生用翼体と同軸に、かつこの旋回流発生用翼体の下流側に設けられた渦崩壊用ノズル部を有し、
上記旋回流発生用翼体が、上記第2の管路の中心軸から放射状に、かつ下流側に向かうにつれて湾曲するように設けられた板状の複数の翼からなることを特徴とするスタティックミキサー。
【請求項10】
上記旋回流発生用翼体の中心部が上記複数の翼の交差部からなることを特徴とする請求項9記載のスタティックミキサー。
【請求項11】
上記旋回流発生用翼体の上記複数の翼の枚数が2枚以上であることを特徴とする請求項10記載のスタティックミキサー。
【請求項12】
上記複数の翼は上記管路の中心軸の方向に投影したときに隙間が現れないように構成されていることを特徴とする請求項11記載のスタティックミキサー。
【請求項13】
上記旋回流発生用翼体の中心軸に平行な方向と上記複数の翼の下流側の終端部とがなす角度θf が65度以下であることを特徴とする請求項12記載のスタティックミキサー。
【請求項14】
上記渦崩壊用ノズル部は縮流部および渦崩壊部を有し、上記縮流部は上記渦崩壊部に向かって断面積が徐々に減少しており、上記渦崩壊部との境界部において上記渦崩壊部と同一の断面形状を有することを特徴とする請求項13記載のスタティックミキサー。
【請求項15】
上記渦崩壊部は、円筒状の第1の部分と下流側に向かって広がった形状の第2の部分とを有し、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面とがなす角度をθ0 としたとき、90度≦θ0 <180度であることを特徴とする請求項14記載のスタティックミキサー。
【請求項16】
上記第1の部分の直径をDe 、上記第1の部分の内周面と上記第2の部分の端面との間のエッジ部の曲率半径をδe としたとき、δe ≧De /2であることを特徴とする請求項15記載のスタティックミキサー。
【請求項17】
上記複数の上記第2の管路内の上記渦崩壊用ノズル部から発生される旋回流のサーキュレーションの総和が0であることを特徴とする請求項9記載のスタティックミキサー。
【請求項18】
上記閉塞部材の上流側の部分の上記第1の管路内に旋回流型マイクロバブル発生ノズルが設けられていることを特徴とする請求項9記載のスタティックミキサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図25】
【図26】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図10】
【図11】
【図15】
【図16】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図25】
【図26】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図10】
【図11】
【図15】
【図16】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2013−34953(P2013−34953A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173892(P2011−173892)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]