説明

スタフィロコッカスUMPキナーゼの単離または精製の方法

単離または精製の工程中、比酵素活性を初期の安定化された活性に比較して50%以上損失せずに、摂氏−20〜4度で少なくとも1週間保存可能なように、安定化種の添加により安定化されることが特徴の、単離または精製されたスタフィロコッカスUMPキナーゼ。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はヌクレオシドモノホスフェートキナーゼ、およびとりわけそれらの精製、安定化およびキナーゼ阻害剤を同定するための薬物スクリーニングにおける使用に関する。
ヌクレオシドモノホスフェートキナーゼは核酸、各種の重要なヌクレオチド中間体の生合成、およびエネルギー代謝において必要とされる。このキナーゼファミリーの一メンバーであるウリジン5′‐モノホスフェート(UMP)キナーゼ(PyrH)は、アデノシン5′‐トリホスフェート(ATP)のγ‐ホスフェートのUMPへの移動を触媒して、アデノシン5′‐ジホスフェート(ADP)およびウリジン5′‐ジホスフェート(UDP)を産生し、この機能は細胞生存に必須である。細菌における特有の側面は、それらが別個のUMPおよびシチジン5′‐モノホスフェート(CMP)キナーゼを有することであるが、哺乳動物および多くの高等真核生物は両方の機能を果たす単一の酵素を有する。これらの酵素は配列相同性をほとんど共有せず、細菌のPyrH酵素は特有の構造および酵素学的特徴を有する。該酵素は遍在し、すべての主要な病原細菌に見出される。この酵素の特質およびその広い分布は、それを抗菌剤による介入のための理想的な標的とする。
【0002】
WO‐99/55729、WO‐2001/12678および対応する米国特許第6403337号は、スタフィロコッカス・アウレウス(S.アウレウス)由来のpyrH遺伝子配列を開示する。
【0003】
本発明者らはS.アウレウスUMPキナーゼ(PyrH)をクローニング、および精製し、アミノ酸配列は以後Seq ID No.2と記載する。この遺伝子の公開されたアミノ酸配列と比較した場合、それは第1アミノ酸としてのメチオニンを欠如する。本発明者らは理論に束縛されることを望まないが、たとえば薬物スクリーニングアッセイに使用される場合、このことは該酵素の特性に少しも影響を与えないと考えられる。
【0004】
本発明者らは、S.アウレウスUMPキナーゼの精製中に、可溶性で安定または活性な酵素を提供するために、精製手順にヌクレオシドまたはヌクレオチドを添加することが必要であることを見出した。とりわけ、本発明者らはウリジン5′‐トリホスフェート(UTP)の添加が、高濃度で可溶性の安定な蛋白質を生じることを見出した。また、本発明者らは、グアノシン5′‐トリホスフェート(GTP)および他のヌクレオチド、たとえばATPが酵素を安定化、および/または活性化するために重要であり、そして活性のアロステリック様調節因子として作用することを見出した。
【0005】
これらの発見は先行技術では予想されていない。米国特許出願2002/0119506は、3種のバチルス属、すなわち、B.サチリス(subtilis)(グラム陰性)、M.ツベルクローシス(tuberculosis)(抗酸性)およびH.インフルエンザ(influenzae)(グラム陰性)由来のUMPキナーゼのクローニングおよび単離を開示する。該出願はB.サチリス酵素のGTP活性化およびUTP不活性化を報告する。3種すべてに対するGTP活性化の程度は、M.ツベルクローシスでは2倍、H.インフルエンザでは3倍、そしてB.サチリスでは10〜20倍変動する。しかし、そのような影響は種特異的であると考えられる、すなわち、他の酵素が著しい活性化を示すという予想はない。とりわけ、グラム陽性スタフィロコッカスUMPキナーゼの性質に関しては何ら示されていない。
【0006】
したがって、本発明の第1の側面において、本発明者らは、単離または精製の工程中に、該酵素が比酵素活性を初期の安定化された活性に比較して50%を越えて損失せずに摂氏−20〜4度で少なくとも1週間保存可能なように、安定化種の添加により安定化されることが特徴の、単離または精製されたスタフィロコッカスUMPキナーゼを提供する。
【0007】
安定化は、好都合には蛋白質を分解、改変または凝集から保護することによりもたらされる。該酵素は、好都合にはUTPもしくはGTP、またはそれらの機能的類似体のような安定化種の使用により安定化される。
【0008】
UTPのような安定化種の濃度は、好都合には少なくとも100マイクロモルであり、該キナーゼは200%等価濃度までの濃度で存在する。
さらに高濃度のUTPを使用してもよいが、実用的な目的には5ミリモルを超える必要性はないであろう。理論に限定されることを望まないが、本発明者らは、たとえば基質(UMPおよびATP)結合部位とは異なる結合部位を占有することによってUTPがUMPキナーゼを安定化すると考える。UTPまたはGTPの“機能的類似体”という語により、本発明者らは同じ結合部位を認識し、結合する種を意味する。そのような種には、限定的でない例として、ヌクレオチド類似体、たとえば2′‐フルオロ‐ウリジン5′‐トリホスフェート、グアノシン5′[ガンマ‐チオ]‐トリホスフェート、および2′/3′‐O‐(N‐メチル‐アントラニロイル)‐グアノシン‐5′‐トリホスフェートを挙げることができる。
【0009】
該酵素はいずれか都合のよいスタフィロコッカス、たとえば、S.アエロゲネス(aerogenes)、S.アウリクラリス(auricularis)、S.アルレッタ(arlettae)、S.カピチス(capitis)、S.カピチス亜種ウレオリチクス、S.カプラ(caprae)、S.カルノスス(carnosus)亜種カルノスス、S.クロモゲネス(chromogenes)、S.コーニイ(cohnii)亜種コーニイ、S.コーニイ亜種ウレアリチクム(urealyticum)、S.コンジメンチ(condimenti)、S.デルフィニ(delphini)、S.エピデルミジス(epidermidis)、S.エクオルム(equorum)、S.フェリス(felis)、S.フレウレッチ(fleuretti)、S.ガリナルム(gallinarum)、S.ヘモリチクス(haemolyticus)、S.ホミニス(hominis)亜種ホミニス、S.ホミニス亜種ノボビオセプチクス(novobiosepticus)、S.ヒイクス(hyicus)、S.インテルメジウス(intermedius)、S.クロオシイ(kloosii)、S.レンツス(lentus)、S.ルグデュネンシス(lugdunensis)、S.ルトラ(lutrae)、S.ムスカ(muscae)、S.オビス(ovis)、S.パステウリ(pasteuri)、S.ピスシフェルメンタンス(piscifermentans)、S.プルベレリ(pulvereri)、S.サッカロリチクス(saccharolyticus)、S.サプロフィチクス(saprophyticus)、S.シュレイフェリ(shleiferi)、S.シュレイフェリ亜種コアグランス(coagulans)、S.シウリ(sciuri)亜種カルナチクス(carnaticus)、S.シウリ亜種ロデンチウム(rodentium)、S.シウリ亜種シウリ、S.シムランス(simulans)、S.スクシヌス(succinus)、S.ビツルス(vitulus)、S.ワルネリ(warneri)、S.キシロスス(xylosus)の中の任意の1種のUMPキナーゼであり、そしてとりわけS.アウレウス(aureus)由来のものである。
【0010】
本発明者らは“安定化”という語により、比活性がある期間にわたり過度に低下せずに、たとえば薬物スクリーニングアッセイにおける使用に適切な状態のままであるような形態で、UMPキナーゼ酵素が提供されることを意味する。とりわけ、それは比酵素活性を初期の安定化された活性に比較して50%を越えて損失せずに、摂氏−20〜4度で少なくとも1週間保存可能である。
【0011】
本発明者らは、S.アウレウス由来の安定化されたUMPキナーゼ酵素が分子量約156000のヘキサマーであることを認めている。したがって、本発明の別の側面において、本発明者らはキナーゼのヘキサマーであることが特徴の、安定化されたUMPキナーゼを提供する。
【0012】
安定化された酵素は好都合には、1以上のバッファー、ヌクレオチド、グリセロール、および還元剤から構成される保存溶液として提供される。該溶液は都合のよいバッファー、好ましくはHEPES、PIPESまたはTris−HCl、および中性またはアルカリ性pH、好ましくはpH8.0〜8.5を含有してよい。さらに、該溶液は、少なくとも50%の酵素対ヌクレオチド比に相当する、0.5〜2ミリモルの濃度でヌクレオチド、好ましくはUTPを含有する。また、該溶液はグリセロール(10%〜50%vol/vol)、100〜250ミリモルの塩化ナトリウムまたは類似の塩および100マイクロモル〜5ミリモルの濃度の還元剤、たとえばジチオスレイトールを含有する。
【0013】
上記の特性を理解した上で、本発明者らはUMPキナーゼ酵素の阻害剤を同定し、そして特徴を明らかにするアッセイを考案している。そのようなアッセイは、UMPキナーゼ酵素の活性化された形態を使用する。
【0014】
したがって、本発明の別の側面において、本発明者らは対応する非‐活性化キナーゼの比活性に比較した場合、少なくとも2倍以上の比活性をもつキナーゼを提供するために、活性化種の添加により活性化されることが特徴の、単離または精製されたスタフィロコッカスUMPキナーゼを提供する。
【0015】
活性化種は、好都合にはGTPまたはATPであるか、またはいずれかの種の機能的類似体である。ヌクレオシドトリホスフェート(複数のヌクレオシドトリホスフェート)は好都合には、100〜1000マイクロモルで存在し、そしてキナーゼは50%以下の等価濃度で存在する。
【0016】
該酵素はいずれか都合のよいスタフィロコッカス、たとえば、S.アエロゲネス(aerogenes)、S.アウリクラリス(auricularis)、S.アルレッタ(arlettae)、S.カピチス(capitis)、S.カピチス亜種ウレオリチクス、S.カプラ(caprae)、S.カルノスス(carnosus)亜種カルノスス、S.クロモゲネス(chromogenes)、S.コーニイ(cohnii)亜種コーニイ、S.コーニイ亜種ウレアリチクム(urealyticum)、S.コンジメンチ(condimenti)、S.デルフィニ(delphini)、S.エピデルミジス(epidermidis)、S.エクオルム(equorum)、S.フェリス(felis)、S.フレウレッチ(fleuretti)、S.ガリナルム(gallinarum)、S.ヘモリチクス(haemolyticus)、S.ホミニス(hominis)亜種ホミニス、S.ホミニス亜種ノボビオセプチクス(novobiosepticus)、S.ヒイクス(hyicus)、S.インテルメジウス(intermedius)、S.クロオシイ(kloosii)、S.レンツス(lentus)、S.ルグデュネンシス(lugdunensis)、S.ルトラ(lutrae)、S.ムスカ(muscae)、S.オビス(ovis)、S.パステウリ(pasteuri)、S.ピスシフェルメンタンス(piscifermentans)、S.プルベレリ(pulvereri)、S.サッカロリチクス(saccharolyticus)、S.サプロフィチクス(saprophyticus)、S.シュレイフェリ(shleiferi)、S.シュレイフェリ亜種コアグランス(coagulans)、S.シウリ(sciuri)亜種カルナチクス(carnaticus)、S.シウリ亜種ロデンチウム(rodentium)、S.シウリ亜種シウリ、S.シムランス(simulans)、S.スクシヌス(succinus)、S.ビツルス(vitulus)、S.ワルネリ(warneri)、S.キシロスス(xylosus)の中の任意の1種のUMPキナーゼであり、そしてとりわけS.アウレウス(aureus)由来のものである。
【0017】
活性化酵素は好都合には希釈標準溶液として提供される。該希釈標準溶液は1以上のバッファー、塩、ヌクレオチド、および界面活性剤を含んでいてよい。希釈標準溶液は、いずれか都合のよいpH(pH6〜pH9)、好ましくはpH7〜pH8で、いずれか都合のよいバッファーMES、PIPES、MOPS、HEPES、トリシン、Tris−HClまたはグリシン、好ましくはHEPESまたはPIPESバッファーを含んでいてよい。該溶液は1以上の塩、たとえばNaCl、NHCl、KCl、および/またはMgCl(それらに限定されない)を含んでいてよい。また希釈標準溶液は、界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤、たとえばBrij35、TritonX−100またはTween20を臨界ミセル濃度に近いか、またはそれ以下の濃度で含んでいてよい。さらに、ヌクレオチド、好ましくはGTPおよび/またはATPが添加され、好都合には100〜1000マイクロモルの濃度で存在し、そしてキナーゼは50%以下の等価濃度で存在する。
【0018】
本発明の別の側面において、本発明者らは本発明の活性化されたスタフィロコッカスUMPキナーゼを使用する薬物発見アッセイを提供する。
活性化されたUMPキナーゼは、好都合には、たとえば安定化種の置換により、本発明の安定化されたUMPキナーゼから製造することができる。限定的でない例としては、該酵素は5μM〜5mM GTPもしくは5μM〜5mM ATP、またはこれらのヌクレオチドの任意の組み合わせを含有する希釈標準溶液に希釈される。これはたとえばPyrH酵素より4000倍〜4,000,000倍のモル過剰を提供する。少なくとも80,000倍過剰のGTPの使用が好ましい。摂氏−80〜−30度における安定化は、保存溶液成分を改変することにより達成することができる。
【0019】
アッセイは好都合には、ピルベートキナーゼ/ラクテートデヒドロゲナーゼ(PK/LDH)カップリング反応を含有する。これにより、ピルベートキナーゼはUMPキナーゼ反応の生成物、ADPおよびUDPを、ホスホエノールピルベートと一緒に、ATP、UTPおよびピルベートに変換する。第2のカップリング酵素、ラクテートデヒドロゲナーゼはピルベートをラクテートに、そしてNADHをNADに変換する。NADに変換下際のNADH濃度の低下は、吸光度または蛍光のいずれかによる分光光度測定によりモニターすることができる。1モルのUMP消費の結果、2モルのNADが産生される。
【0020】
アッセイは任意の都合のよいpH(pH6〜pH9)で行われ、好ましくはpH7〜8で行われる。
アッセイは任意の都合のよいバッファー、たとえばMES、PIPES、MOPS、HEPES、トリシン、Tris−HClまたはグリシン中で行われ、好ましくはHEPESまたはPIPESバッファー中で行われる。界面活性剤(Brij‐35、TritonX−100またはTween20)が添加され、反応容器またはピペットチップに蛋白質が張り付くのを妨げる。0.01%v/vの濃度のBrij‐35が好ましい界面活性剤である。
【0021】
アッセイは任意の都合のよい温度(摂氏15〜30度)で行われ、そして好ましくは摂氏20〜30度の温度、とりわけ室温(摂氏18〜25度、たとえば約摂氏22度)で行われる。
アッセイは0.1〜300nMのような任意の都合のよいUMPキナーゼ濃度、たとえば約1.3nMで行われる。
アッセイで使用されるUMPキナーゼは、好都合には50uM〜10mM GTP、好ましくは5mM GTPの濃度でGTPにより安定化される。
【0022】
本発明はここで以下の実施例、配列リストおよび図面を参照することによって説明されるが、それらに限定されない。
【0023】
実施例
S.アウレウスUMPキナーゼ(pyrH)のクローニング
S.アウレウスpyrHは菌株601055からクローニングされた。プライマーINF5174(5′)およびINF5183(3′)を使用してS.アウレウス601055の細胞溶解物由来のS.アウレウスpyrHPCR生成物を得た。
【0024】
【化1】

【0025】
PCR生成物は、Qiagen精製キットを使用して精製し、TOPO Invitrogenクローニングベクターに連結した。連結生成物は、製造業者が推奨する方法に従ってTOPO細胞に形質転換された。形質転換体は推奨方法に従って選択され、プラスミドはQiagen miniprepキットを使用して回収された。適切なサイズのDNAインサートの存在は、BamH1およびNde1制限酵素による消化により確認された。S.アウレウスPyrHを含有する、適切なサイズのインサートを持つクローンが選択され、Qiagen Maxiprepキットを使用してDNAが調製された。インサートの存在はBamH1/Nde1消化により再確認された。インサートは配列決定され、その同一性を確認された。
【0026】
S.アウレウスPyrHインサートは大腸菌pT73.3にクローニングされ、BL21(DE3)に形質転換された。これらの細胞はテトラサイクリン(10μg/ml)を含有するLB培地中、30℃で培養され、発現は最終濃度1mMになるようにIPTGを添加することにより誘導された。誘導された細胞は、SDS‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定された見かけの分子量26,000(そのペプチドに対して予想されるサイズと一致する)を持つ蛋白質を発現した。細胞ペーストは遠心分離により集め、使用するまで−20℃で保存した。
【0027】
S.アウレウスUMPキナーゼ(PyrH)の精製
凍結した細胞ペーストは50mlの溶解バッファー[50mM Tris−HCl、pH8.5、2mM EDTA、2mM DTT、2mM UTP、1mM PMSF、1プロテアーゼ阻害剤カクテル錠(Roche Molecular Biochemical)]に懸濁した。18,000psiで操作されたFrench pressに細胞を2回通過させることにより細胞を破壊し、粗抽出物は20,000rpm(45Tiローター、Beckman)、30分間、4℃で遠心分離した。上清は、バッファーA(50mM Tris−HCl、pH8.5、2mM EDTA、2mM DTT、2mM UTP)で予め平衡化した20ml Q−セファロースHP(HR16/10)カラム(Pharmacia)に流速1.5ml/分で載せた。その後カラムをバッファーAで洗浄し、蛋白質をバッファーA中、0〜1MのNaCl直線勾配溶出により溶出した。PyrHを含有する画分をプールし、固体(NHSO(0.4g/ml)を添加してすべての蛋白質を沈殿させ、氷上で1時間混合した。試料は11,000rpm(JA12ローター、Beckman)、30分間、4℃で遠心分離し、ペレットは5mlのバッファーAに溶解した。5mlの試料は、バッファーB(50mM Tris−HCl、pH8.5、2mM EDTA、2mM DTT、2mM UTP、150mM NaCl)で予め平衡化した320ml Sephacryl S−300(HR26/60)(Pharmacia)に流速0.5ml/分で載せた。PyrHを含有する画分をプールし、1L 貯蔵バッファー(50mM Tris−HCl、pH8.5、0.1mM EDTA、1mM UTP、150mM NaCl、2mM DTT、20% グリセロール)に対して透析した。蛋白質は、SDS‐PAGE分析および分析用LC−MSにより性状を解析した。決定された該蛋白質の質量は、DNA配列から予測されたポリペプチドのN−末端メチオニンが存在しないことを示唆した
【0028】
【化2】

【0029】
蛋白質は−80℃で保存した。
スタフィロコッカス・アウレウスUMPキナーゼ(PyrH)のアッセイ
UMPキナーゼはATPのガンマホスフェートのUMPへの移動を触媒し、結果として2種の生成物、ADPおよびUDPが形成される。この活性は、ピルベートキナーゼ/ラクテートデヒドロゲナーゼ(PK/LDH)カップリング反応を使用してモニターすることができる。ピルベートキナーゼはUMPキナーゼ反応の生成物、ADPおよびUDPを、ホスホエノールピルベートと一緒に、ATP、UTPおよびピルベートに変換する。第2のカップリング酵素、ラクテートデヒドロゲナーゼはピルベートをラクテートに、そしてNADHをNADに変換する。NADに変換した際のNADH濃度の低下は、吸光度または蛍光のいずれかによる分光光度測定によりモニターすることができる。1モルのUMP消費の結果、2モルのNADが生成されることに注意すべきである。
【0030】
アッセイを実行するために、反応物が最終濃度50mM HEPES pH7.5、50mM KCl、2mM MgCl、6.6ユニット/mL PK/LDH、0.4mM ATP、0.2mM NADH、1.29μM S.アウレウスUMPキナーゼ、0.5mM GTPおよび0.001% Brij‐35を含有するように、1.67Xアッセイバッファー保存溶液が調製された。この混合物への添加前に、50mM HEPES pH8.5、100mM KCl、5mM GTP、0.01% Brij‐35中に12.9nMのS.アウレウスUMPキナーゼ溶液を含有する10X 酵素希釈標準溶液を調製し、室温で15分間インキュベーションした。アッセイプレートは、適切な容量の1.67Xアッセイバッファー保存溶液を反応容器に分注し、化合物DMSO保存溶液を添加し、そして試薬を平衡化させるため、少なくとも15分間室温でインキュベーションすることにより調製した後、3.33XのUMP保存溶液により反応を開始した。たとえば、100μLの反応容積では、DMSO中の50X化合物2μLを1.67Xバッファー/酵素混合物60μLに添加し、回転振とうまたはピペッティングのいずれかにより混合した。適切なインキュベーション時間後、反応は40μLの0.67mM UMP(最終濃度は0.2mMであった)の添加により開始した。使用した対照は、2% DMSO(阻害なし)および10mM EDTA(100% 阻害)であった。アッセイ混合物は、UMP添加後、約20秒間の回転振とうにより混合した。ブランク読み取りが実行され、反応の進行はエンドポイントまたは継続読み取り法のいずれかにより、ある期間にわたりNADH吸光度または蛍光の低下を追跡することによりモニターした。多数の化合物の試験を容易にするために、いくつかの場合、反応は30分後に10mM EDTAの添加により停止し、最終分光光度測定は数時間後まで行った。
【0031】
アッセイは好ましい反応速度パラメータの制約の範囲内で、最大比活性を得るために最適化された。検討したアッセイパラメータは、酵素操作、基質濃度、塩要求性および効果、pHおよびバッファー選択、温度、ある期間にわたる反応安定性、ある期間にわたる反応直線性、DMSOに対するアッセイの反応、カップラー酵素濃度および活性、ならびにアッセイのロバスト性であった。
【0032】
S.アウレウスUMPキナーゼは、7.0〜8.0の至適pHを有することが見出された。0.5未満のpH変化はアッセイ速度に著しい影響を与えないはずであるため、アッセイのために選択されたpHは7.5であった。バッファーの影響は小さいが重要であり、TrisおよびMOPSでは最低の酵素活性、HEPESおよびPIPESでは最高の活性が得られた。
【0033】
S.アウレウスUMPキナーゼの比活性は、15〜30℃の温度変化にわたりモニターした。一般に温度上昇に伴って、活性の直線的上昇が認められ、30℃で40%の全体的な活性上昇がみられた。
【0034】
いくつかの塩がアッセイで試験され、それらがUMPキナーゼ活性を促進または低下させるかどうかを調べた。約100mMまでのNaClもしくはNHClのいずれか、または320mMまでのKClの濃度に反応した活性の変化はほとんどみられなかった。しかし、硫酸アンモニウムは酵素活性を著しく阻害することが認められた。酵素活性に必要とされる以上の濃度におけるMgCl濃度増大は、アッセイにほとんど影響を与えなかった。
【0035】
NADH蛍光(励起/発光波長 340nm/465nm)は約200μMまで直線状であることが認められた。Tecan Ultraを使用して、340nmの吸光度モードにおける約500μMまでの直線状範囲の増大を得ることができた。アッセイにおいてモニターされるシグナル変化の直線性を確実にするために、200μMのNADHアッセイ濃度が選択された。カップリング酵素PK/LDHの濃度は、それらの過剰を確実にする濃度が選択された。アッセイは、150μM UMP、400μM ATPおよび0.000036mg/mL PyrHを含有する反応混合物中、1.3ユニット/mL以上の濃度で、PK/LDHの飽和状態下であることが認められた。
【0036】
S.アウレウスUMPキナーゼの比活性は、酵素濃度の変化に反応して変化しなかった。このことは、アッセイ速度がUMPキナーゼ依存的であることを確証した。1.3nM UMPキナーゼ濃度により至適活性が得られることが見出された。UMPおよびATPのKmはそれぞれ、40μM〜550μMの範囲であることが見出された。アッセイでは、200μM UMPおよび400μM ATPが十分な活性を得るために十分であり、阻害剤の同定を可能にするであろうということが見出された。
【0037】
蛋白質は−80℃で数ヶ月保存された場合、安定であることが見出された。使用する場合、酵素は氷上で解凍され、直ちに保存用希釈標準溶液に希釈された。一旦解凍されると、保存溶液は活性を著しく低下せずに、少なくとも7時間氷上で保存可能であった。酵素の安定性および溶解性は、NTP(ATP、GTP、またはUTP)の存在で促進された。GTPは十分な酵素活性に必要であることが見出された。S.アウレウスUMPキナーゼの室温における安定性は、アッセイ濃度の10Xの酵素濃度を含有する希釈標準溶液中、GTPおよびBrij‐35の種々の濃度条件下で検討された。5mM GTPおよび0.01〜0.02%(wt/vol)のBrij‐35濃度により酵素の最大安定性および最高活性が得られることが見出された。選択された希釈標準溶液条件は、50mM HEPES pH8.5、100mM KCl、5mM GTPおよび0.01% Brij‐35であった。アッセイバッファー中のS.アウレウスUMPキナーゼの安定性も検討された。保存用希釈標準溶液のより高いpHは、酵素安定性をさらに増した。保存用希釈標準溶液酵素はアッセイバッファーに添加し、6時間まで室温でインキュベーション後、UMPとの反応を開始した。酵素はアッセイバッファー中で6時間インキュベーション後、>90%活性を保持することが見出された。
【0038】
参考文献
【0039】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】UMPキナーゼにより触媒される反応経路を示す。
【図2】GTPが十分な酵素活性に必要とされることを示す。グラフは種々のGTP濃度を用いた、酵素プレインキュベーションの効果を示す。
【図3】バッファーとpHの特性を示す。グラフは種々のpHにおけるバッファーの比較を示す。
【図4】摂氏15〜30度の酵素活性の温度依存性を示す。
【図5】酵素活性に対する塩の効果を示す。使用された塩はNa、NH、およびSO2−であった。
【図6】MgCl濃度の最適化を示す。
【図7】酵素活性に対するDMSOの効果を示す。
【図8】種々の濃度の酵素活性を示す。
【図9】UMPキナーゼアッセイにおけるカップラー酵素濃度の最適化を示す。
【図10】添加されたGTPおよびBrij‐35による、ある期間にわたる酵素安定性を示す。
【図11】アッセイバッファー中の酵素安定性を示す。
【図12a】種々の濃度のUMPキナーゼ阻害剤EDTAの影響を示す。
【図12b】種々の濃度のUMPキナーゼ阻害剤AMP‐パラニトロフェノールの影響を示す。
【図13a】384ウェルプレートにおけるUMPキナーゼアッセイの経時変化を示す。NADH蛍光は340/465nmの励起/発光波長対を使用して測定した。
【図13b】384ウェルプレートにおけるUMPキナーゼアッセイの経時変化を示す。吸光度は340nmで測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離または精製の工程中、初期の安定化された活性に比較して比酵素活性が50%を越えて損失することなく、摂氏−20〜4度で少なくとも1週間保存可能なように、安定化種の添加により安定化されることを特徴とする、単離または精製されたスタフィロコッカスUMPキナーゼ。
【請求項2】
スタフィロコッカス・アウレウスキナーゼである、請求項1に記載のUMPキナーゼ。
【請求項3】
安定化種がUTPもしくはGTPまたはそれらの機能的類似体から選択される、請求項1または請求項2に記載のUMPキナーゼ。
【請求項4】
安定化種が少なくとも100マイクロモルの濃度で存在し、そしてキナーゼが200%までの等価濃度で存在する、請求項3に記載のUMPキナーゼ。
【請求項5】
バッファー中で少なくとも200マイクロモルの濃度で可溶性であるように安定化される、単離または精製されたスタフィロコッカスUMPキナーゼ。
【請求項6】
キナーゼのヘキサマーとして特徴付けられる、安定化されたスタフィロコッカスUMPキナーゼ。
【請求項7】
UTPまたはGTPをUMPキナーゼ酵素に添加することを含む、前記酵素を安定化する方法。
【請求項8】
対応する非‐活性化キナーゼの比活性に比較して、少なくとも2倍以上である比活性を有するキナーゼを提供するために、活性化種の添加により活性化されることを特徴とする、単離または精製されたスタフィロコッカスUMPキナーゼ。
【請求項9】
UMPキナーゼが非‐活性化キナーゼの比活性に比較して、少なくとも3倍以上の比活性を有する酵素を提供するために活性化される、請求項8に記載の前記キナーゼ。
【請求項10】
S.アウレウスUMPキナーゼである、請求項8または9に記載のUMPキナーゼ。
【請求項11】
活性化種がGTPもしくはATPまたはそれらの機能的類似体である、請求項8〜10のいずれか1項に記載のUMPキナーゼ。
【請求項12】
活性化種がGTPまたはその機能的類似体である、請求項8または請求項9に記載のUMPキナーゼ。
【請求項13】
GTPまたはATPが100〜2000マイクロモルの濃度で存在し、そしてUMPキナーゼが50%以下の等価濃度で存在する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の前記キナーゼ。
【請求項14】
UMPキナーゼ酵素にGTPまたはATPを添加することを含む、前記酵素を活性化する方法。
【請求項15】
1以上のバッファー、ヌクレオチド、グリセロール、および還元剤と一緒に請求項1〜6のいずれか1項に記載のUMPキナーゼを含む貯蔵溶液であって、構成後、比酵素活性が50%を越えて損失せずに摂氏−20〜4度で少なくとも1週間保存可能な前記溶液。
【請求項16】
1以上のバッファー、塩、ヌクレオチド、および界面活性剤と一緒に請求項8〜13のいずれか1項に記載のUMPキナーゼを含む希釈標準溶液であって、構成後、比酵素活性が50%を越えて損失せずに摂氏4〜25度で12時間保存可能な前記溶液。
【請求項17】
比酵素活性の損失が20%以下である、請求項16に記載の希釈標準溶液。
【請求項18】
ATPのγ‐ホスフェートのUMPへの移動を触媒してADPおよびUDPを産生するための、請求項8〜13または16〜17のいずれか1項に記載の活性化されたUMPキナーゼの使用を含む、薬物発見アッセイ。
【請求項19】
アッセイのADPおよびUDP生成物が直接検出される、請求項18に記載のアッセイ。
【請求項20】
ピルベートキナーゼ/ラクテートデヒドロゲナーゼ(PK/LDH)カップリング反応およびNADHからNADへの変換の測定を含む、請求項19に記載のアッセイ。
【請求項21】
pH7〜8で実施される、請求項20に記載のアッセイ。
【請求項22】
HEPES、PIPESバッファーまたはBrij‐35中で実施される、請求項20に記載のアッセイ。
【請求項23】
摂氏20〜30度で実施される、請求項20に記載のアッセイ。
【請求項24】
UMPキナーゼ濃度0.1〜300nMで実施される、請求項20に記載のアッセイ。
【請求項25】
摂氏−20度で液相である、請求項15に記載の保存溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−500512(P2007−500512A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530519(P2006−530519)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002158
【国際公開番号】WO2004/104192
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】