説明

スタータブラケットおよびスタータモータ

【課題】金型離型時の各ステーの変形を抑制し、車両に対する取付自由度を低下させることなく各ステーの補強をすることができるスタータブラケット、およびこのスタータブラケットを備えたスタータモータを提供する。
【解決手段】モータ本体を収容するハウジング部の一端側に取り付けられるブラケット本体と、このブラケット本体に立設された第1ステー60および第2ステー70(複数のステー)と、を有し、金型を用いて形成されるスタータブラケット4において、第1ステー60の第1内径側面62および第2ステー70の第2内径側面72には、第1ステー60および第2ステー70の少なくとも一部を形成する可動型の抜け方向に沿って延在するように、第1リブ64および第2リブ74が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スタータブラケットおよびスタータモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のエンジン始動用に用いられるスタータモータが知られている。このスタータモータは、回転力を発生するモータ本体(アーマチュア)を有している。モータ本体の回転軸は、エンジンの減速ギヤやワンウェイクラッチ等を介して、クランクシャフトに直結されている。そして、モータ本体に外部電源から電力が供給されると、回転軸の回転力がクランクシャフトに伝達され、エンジンが始動する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、特許文献1のスタータモータの両端には、フロントブラケットとリヤブラケットとが取り付けられている。そして、リヤブラケットには、軸方向に延びる一対の取付ステーが形成されている。スタータモータは、これら各取付ステーにより車体の所定位置に固定される。各取付ステーは、軽量化および強度確保等の観点から、アルミダイキャストによってリヤブラケットと一体的に形成される場合が多い。
【0004】
アルミダイキャストで各取付ステーを形成する場合、金型からの取り出しを容易にするために、取付ステー上に金型のパーティングラインが設けられる。このため、一方のスライドコアの抜き方向が取付ステーの延設方向と垂直な方向になる。
【0005】
ここで、アルミダイキャストにより各取付ステーを成型した直後に金型を離型すると、金型の離型方向に各取付ステーが変形するおそれがある。特に、各取付ステーの延設方向と垂直な方向に金型を移動させて離型する場合には、各取付ステーが変形する傾向は大きくなる。したがって、特許文献1では、一対の取付ステーを壁部で連設して補強することにより、離型時における各取付ステーの変形を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−304946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、スタータモータのリヤブラケットには、回転軸の軸受部や、モータ部に電源を供給するターミナルボルトを挿通するための孔部等が形成されている。これら軸受け部や孔部を回避しつつ、上述の各取付ステーを連設する壁部を形成する必要がある。したがって、各取付ステーを連設する壁部を設けることにより、各取付ステーおよび壁部の形成場所が制限されるおそれがある。また、各取付ステーの形成場所が制限されることで、車両に対するスタータモータの取付位置が制限されるおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、金型離型時の各ステーの変形を抑制し、車両に対する取付自由度を低下させることなく各ステーの補強をすることができるスタータブラケット、およびこのスタータブラケットを備えたスタータモータの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係わるスタータブラケットは、モータ本体を収容するハウジング部の一端側に取り付けられるブラケット本体と、このブラケット本体に立設された複数のステーと、を有し、金型を用いて形成されるスタータブラケットにおいて、前記各ステーにおける前記モータ本体の径方向内側の面には、前記各ステーの少なくとも一部を形成する前記金型の抜け方向に沿って延在するように、段差部が形成されていることを特徴とする。
本発明のスタータブラケットによれば、各ステーに形成されている段差部が金型の抜け方向に沿って延在されているので、ステー側の段差部と、これに対応する金型の段差部とが係合され、他の金型を離型する際、各ステーを保持することができる。すなわち、例えば他の金型を、各ステーの段差部の延設方向と垂直な方向に移動させて離型する際、各ステーの変形を抑制することができる。
また、特許文献1のように各ステーを連接する壁部を設けていないため、スタータブラケットの軽量化および材料費の削減ができる。また、壁部を設けていないので、各ステーを形成する際に相互の位置関係を考慮する必要がない。これにより、各ステーの形成場所の自由度を損なうことなく、各ステーを所望の位置に形成することができる。さらに、段差部により各ステーの断面係数が上昇するので、特許文献1のように各ステーを連接する壁部を設けた場合と比較して、大きな強度低下もない。したがって、車両に対する取付自由度を低下させることなく各ステーの補強ができる。
【0010】
また、本発明の請求項2に係わるスタータブラケットは、前記段差部が前記各ステーの前記面から突出するリブであることが望ましい。
本発明によれば、リブと、このリブを形成する金型の凹部とが係合するので、リブの延設方向に対して垂直方向に他の金型を離型する際、リブで各ステーを保持することができる。さらに、段差部をリブとすることで各ステーの断面係数が上昇する。したがって、金型離型時の各ステーの変形を抑制し、車両に対する取付自由度を低下させることなく各ステーの補強をすることができる。
【0011】
また、本発明の請求項3に係わるスタータブラケットは、前記ステーが、第1ステー、および第2ステーの2つのステーで構成され、これら第1ステー、および第2ステーには、互いに対向する側の面に前記段差部が形成されていることが望ましい。
本発明のスタータブラケットによれば、第1ステーおよび第2ステーには、互いに対向する側の面に段差部が形成されている。これら段差部により、各ステーの断面係数が上昇するので、各ステーを補強することができる。
また、特許文献1のように各ステーを連接する壁部を設けていないため、スタータブラケットの軽量化および材料費の削減ができる。また、壁部を設けていないので、各ステーの相互の位置関係を考慮する必要がない。これにより、各ステーの形成場所の自由度を損なうことなく、各ステーを所望の位置に形成することができる。さらに、段差部により各ステーの断面係数が上昇するので、特許文献1のように各ステーを連接する壁部を設けた場合と比較して、大きな強度低下もない。したがって、金型を離型する際、各ステーの変形を抑制し、車両に対する取付自由度を低下させることなく各ステーの補強をすることができる。
【0012】
また、本発明の請求項4に係わるスタータモータは、請求項3に記載のスタータブラケットと、前記モータ本体と、前記ハウジング部と、前記スタータブラケットから突出され、外部電源と電気的に接続されるターミナルボルトとを備え、前記第1ステーと前記第2ステーとの間に、前記ターミナルボルトを配置したことを特徴とする。
本発明のスタータモータによれば、第1ステーと第2ステーとの間にターミナルボルトを配置することで、ターミナルボルト周りが第1ステーおよび第2ステーにより保護される。したがって、ターミナルボルトが他部材と接触するのを抑制できる。とりわけ、車両へ他の部品を組み付ける際に、工具等がターミナルボルトに当たるのを防止することができる。
【0013】
また、本発明の請求項5に係わるスタータモータは、前記ターミナルボルトには、外部電源から電力を供給する給電ケーブルが接続され、前記第1ステーと前記第2ステーとの間には、前記給電ケーブルが配置されていることが望ましい。
特許文献1発明では、各ステーを連接する壁部を迂回しつつ給電ケーブルを配索する必要があるため、給電ケーブルが長くなる傾向がある。しかし、本発明のスタータモータによれば、第1ステーと第2ステーとの間に、給電ケーブルを自由に配索できるので、外部電源と最短で接続することができる。したがって、給電ケーブルの配索自由度が向上するとともに、低コストな給電ケーブルを形成することができる。
【0014】
また、本発明の請求項6に係わるスタータモータは、前記スタータブラケットの径方向中央には、外面側に平坦部が形成されている一方、内面側の前記平坦部に対応する位置に、前記モータ本体の回転軸を回転自在に軸支するための軸受け部が設けられていることが望ましい。
本発明によれば、平坦部を利用してスタータブラケットを外側から容易に押さえることができる。このため、例えばスタータブラケットに軸受け部を取り付けるにあたって、この軸受け部を圧入する際、軸受け部をスタータブラケットの内側から容易に押し込むことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスタータブラケットによれば、各ステーに形成されている段差部が金型の抜け方向に沿って延在されているので、ステー側の段差部と、これに対応する金型の段差部とが係合され、他の金型を離型する際、各ステーを保持することができる。すなわち、例えば他の金型を、各ステーの段差部の延設方向と垂直な方向に移動させて離型する際、各ステーの変形を抑制することができる。
また、特許文献1のように各ステーを連接する壁部を設けていないため、スタータブラケットの軽量化および材料費の削減ができる。また、壁部を設けていないので、各ステーを形成する際に相互の位置関係を考慮する必要がない。これにより、各ステーの形成場所の自由度を損なうことなく、各ステーを所望の位置に形成することができる。さらに、段差部により各ステーの断面係数が上昇するので、特許文献1のように各ステーを連接する壁部を設けた場合と比較して、大きな強度低下もない。したがって、車両に対する取付自由度を低下させることなく各ステーの補強ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スタータモータの部分断面図である。
【図2】スタータモータの背面図である。
【図3】リヤブラケットの斜視図である。
【図4】リヤブラケットを径方向外側から見たときの金型の説明図である。
【図5】リヤブラケットを軸方向外側から見たときの金型の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本実施形態のスタータモータおよびリヤブラケット(請求項の「スタータブラケット」に相当)につき、図面を参照して説明する。
図1は、スタータモータ1の部分断面図、図2は、スタータモータ1の背面図である。
本実施形態のスタータモータ1は、不図示のエンジンの始動に用いられる。スタータモータ1は、略円筒状のハウジング部3と、ハウジング部3内に配置されるアーマチュア5と、ハウジング部3の一端側(図1における左側)に固定されるフロントブラケット2と、ハウジング部3の他端側(図1における右側)に固定されるリヤブラケット4と、を備えている。
【0018】
ハウジング部3は、例えば鉄等により形成されたものであって、筒部21aを有する略円筒状のヨーク21を備えている。ヨーク21の一端側の周縁には、フロントブラケット2の嵌合部2aに嵌合可能な嵌合部3aが形成されている。一方、ヨーク21の他端側の周縁には、リヤブラケット4に内嵌可能な嵌合部3bが形成されている。
また、ヨーク21の内周側には、界磁用の瓦状に形成されたマグネット22が周方向に沿って複数固着されている。マグネット22には、例えば、フェライト磁石などを用いることができる。
【0019】
アーマチュア5は、回転軸10にアーマチュアコア11と、コンミテータ12とが外嵌固定されたものである。
コンミテータ12は、略円板状に形成されたいわゆるディスク型コンミテータであって、回転軸10のアーマチュアコア11よりも他端側(図1における右側)に外嵌固定されている。コンミテータ12のリヤブラケット4側の面には、複数のセグメント14が回転軸10を中心に放射状に配設されている。各々セグメント14間には、これらセグメント14間の絶縁を確保するためのスリット(不図示)が形成されている。また、各セグメント14には、巻線13の一端が接続されている。
【0020】
フロントブラケット2は、例えばアルミダイキャスト等により略円板状に形成されたものであって、径方向中央に回転軸10を挿通可能な貫通孔15が設けられている。この貫通孔15を介し、回転軸10の一端がフロントブラケット2から突出している。貫通孔15のハウジング部3側には、回転軸10の一端部を回転自在に支持する軸受16が圧入固定されている。
【0021】
(リヤブラケット)
リヤブラケット4は、例えばアルミダイキャスト等により有底筒状に形成されたものであって、外周面に刻設されている雌ネジ部23にボルト19が螺入されることにより、ハウジング部3に固定されるようになっている。
リヤブラケット4の底部4aの内側には、径方向略中央にボス部25がハウジング部側に向かって突設されている。このボス部25には、アーマチュア5の回転軸10の他端を回転自在に支持するための軸受26が圧入されている。一方、リヤブラケット4の底部4aの外側(図1における右側)には、ボス部25に対応する部位に、平坦部27が形成されている。軸受26をリヤブラケット4のボス部25に圧入する際は、この平坦部27を作業台等の平面に当接させた状態で行う。
【0022】
リヤブラケット4の底部4aの内側には、ブラシホルダ30が固定されている。ブラシホルダ30は、不図示の外部電源からの電力を、コンミテータ12を介して巻線13に供給するためのものであって、陽極ブラシと陰極ブラシ(いずれも不図示)とを備えている。陽極ブラシから引き出されたピグテール(不図示)は、給電板35に接続されている。給電板35は、リヤブラケット4に設けられているターミナルボルト36に接続されている。また、陰極ブラシから引き出されたピグテールは、アース端子(不図示)に接続されており、アース端子を介して接地される。
【0023】
リヤブラケット4の底部4aには、外側(図1における右側)に向かってターミナルボルト36が突出されている。ターミナルボルト36は、不図示の外部電源と給電板35とを電気的に接続するためのものであって、ボルト本体51と、ボルト本体51の基端に設けられ、ブラシホルダ30内に配置される頭部41とからなる。ターミナルボルト36は、後述する第1ステー60および第2ステー70の内径側、すなわち第1ステー60と第2ステー70との間に配置される。
【0024】
また、ターミナルボルト36は、ブラシホルダ30、およびリヤブラケット4のそれぞれに形成された端子挿入孔42,43を介して、リヤブラケット4の底部4aの内側から外側へと突出している。ボルト本体51の先端側(図1における右側)には、雄ネジ部52が刻設されており、ここにナット47が螺入されるようになっている。
【0025】
また、リヤブラケット4の底部4aには、外側に向かって突設された突出部32を有している。突出部32の内周面には雌ネジが刻設されており、陰極ブラシと接続されたアース端子がボルト(不図示)により締結固定される。
また、リヤブラケット4の外側では、ターミナルボルト36に、樹脂ブッシュ45と、ストッパワッシャ46とを通した後でナット47を締め込んである。このように、ターミナルボルト36とナット47とにより、ブラシホルダ30とリヤブラケット4を挟み込んでいる。また、樹脂ブッシュ45には、ナット47を囲むように絶縁性の位置決め部材48が一体成形されている。
【0026】
位置決め部材48は、軸方向から見て略正八角形状をしており、一辺が切り欠かれた切り欠き部48aを有している。
図2に示すように、外部電源から電力を供給する給電ケーブル49がターミナルボルト36に接続される。具体的には、給電ケーブル49の端部に設けられた端子49aをターミナルボルト36に挿通した後、ターミナルボルト36にナット47を締め込むことにより接続される。端子49aは、切り欠き部48aに配置される。したがって、切り欠き部48aの位置により、給電ケーブル49の引き出し方向が決定される。
【0027】
(第1ステーおよび第2ステー)
図3は、リヤブラケット4の斜視図である。
図1から図3に示すように、リヤブラケット4には、第1ステー60および第2ステー70が形成されている。第1ステー60および第2ステー70は、アルミダイキャスト等によりリヤブラケット4と一体的に形成される。第1ステー60および第2ステー70は、リヤブラケット4の底部4aから、スタータモータ1の外側(図1の右側)に向かって立設されている。なお、アルミダイキャストにより製造する際の抜き勾配は、約1度程度に設定される。
【0028】
第1ステー60は、リヤブラケット4の外径側におけるターミナルボルト36側(図3における上側)に形成されている。第1ステー60の径方向内側の面(以下「第1内径側面62」という。)は、若干(本実施形態では5度程度)外径側に傾斜するように形成されている。なお、この傾斜角度はスタータモータ1が取り付けられる車両側に対応して様々な角度に変更することが可能である。また、第1ステー60の径方向外側の面は、抜き勾配と同じ1度程度内径側に傾斜するように形成されている。
【0029】
第2ステー70は、リヤブラケット4の外径側における、ターミナルボルト36の端子挿入孔43と突出部32との略中央に形成されている。第2ステー70は、リヤブラケット4の底部4aに対して略垂直に立設されている。第2ステー70の径方向内側の面(以下「第2内径側面72」という。)は、抜き勾配と同じ1度程度外径側に傾斜するように形成されている。また、第2ステー70の径方向外側の面は、抜き勾配と同じ1度程度内径側に傾斜するように形成されている。
【0030】
第1ステー60および第2ステー70とリヤブラケット4の底部4aとの接続部には、丸面取部60b,70bが形成されている。丸面取部60b,70bは、各ステーの基端側とリヤブラケット4の底部4aとで形成される隅部を円弧状とすることにより形成される。
また、第1ステー60および第2ステー70の先端側には、円弧部60a,70aが形成されている。円弧部60a,70aの曲率半径の中心には、スタータモータ1を取り付けるための取付ボルト(不図示)が挿通するボルト孔61が形成されている。
なお、第1ステー60および第2ステー70の形成位置や形状等はこれに限られることはなく、スタータモータ1が取り付けられる車両側に対応して、様々な位置に変更することが可能である。
【0031】
(第1リブおよび第2リブ)
第1ステー60には、第1内径側面62の略中央において、軸方向に沿って延在するように第1リブ64(段差部)が形成されている。第1リブ64は、軸方向から見て略矩形状をしており、第1内径側面62から内径側に突出して形成されている。第1リブ64の軸方向の長さは、第1ステー60の軸方向の長さよりも若干短くなるように形成されている。また、第2ステー70の第2内径側面72には、第2リブ74(段差部)が形成されている。第2リブ74については、第1リブ64と同様の構成を有しているため、詳細な説明を省略する。
【0032】
本実施形態では、第1リブ64の高さは、第2リブ74の高さよりも若干高くなるように形成されている。第2リブ74の高さよりも第1リブ64の高さを高く形成したことによる作用については後述する。
なお、第1リブ64および第2リブ74の軸方向における長さや径方向の高さ、径方向の幅、形状等は、第1ステー60および第2ステー70に要求される強度等に応じて適宜設定される設計事項である。
【0033】
(第1リブおよび第2リブの作用)
次に、図4および図5を用いて、第1リブ64および第2リブ74の作用について説明する。
図4は、リヤブラケット4を径方向外側から見たときの金型の説明図である。
図5は、リヤブラケット4を軸方向外側から見たときの金型の説明図である。
図4および図5に示すように、上述したリヤブラケット4を成型するアルミダイキャスト用金型80は、固定型81、可動型82およびスライド型83の3個の各金型で構成されている。
固定型81は、リヤブラケット4の開口側に配置されている。固定型81は、軸方向から見てリヤブラケット4全体を覆うような大きさで形成されており、主にリヤブラケット4の底部4aの内周面を形成している。
【0034】
可動型82は、リヤブラケット4の軸方向の外側において、端子挿入孔43側(図5の上方)に配置されている。可動型82は、軸方向から見て略T字形状に形成されている。可動型82は、主にリヤブラケット4の底部4aのうち端子挿入孔43および突出部32を含んだ部分、第1ステー60のうち第1リブ64を含んだ部分、および第2ステー70のうち第2リブ74を含んだ部分を形成している。
【0035】
スライド型83は、リヤブラケット4の軸方向の外側において、突出部32の外径側(図5の下方)に配置されている。スライド型83は、軸方向から見て略U字形状に形成されている。スライド型83は、主にリヤブラケット4の底部4aのうち端子挿入孔43および突出部32を含まない部分、第1ステー60のうち第1リブ64を含まない部分(図5において第1リブの下方)、および第2ステー70のうち第2リブ74を含まない部分(図5において第2リブの下方)を形成している。
【0036】
上述のように構成された各金型を用いて、アルミダイキャストによりリヤブラケット4を成型する。具体的には、溶融されたアルミに圧力を加え、上述した各金型の中に流し込む。そして、圧入れしたアルミを硬化させた後に、可動型82およびスライド型83を移動させて各金型を離型させ、リヤブラケット4を取り出している。
【0037】
可動型82は、離型時に軸方向に沿ってリヤブラケット4の外側(図4の右側)に移動する。ここで、第1ステー60および第2ステー70には、軸方向に沿って第1リブ64および第2リブ74が形成されている。したがって、第1リブ64および第2リブ74は、第1リブ64および第2リブ74を形成する可動型82の溝部と係合しながら移動する。
【0038】
ところで、前述のとおり、第1ステー60の第1内径側面62は、外径側に5度程度傾斜して形成されている。これに対して、第2ステー70の第2内径側面72は、外径側に1度程度傾斜して形成されている。すなわち、第1ステー60の傾斜角度は第2ステー70の傾斜角度よりも大きいため、第1リブ64の先端側は第2リブ74の先端側よりも外径側に配置される。
このため、第1リブ64および第2リブ74のリブ高さを同等に設定すると、可動型82を所定移動したとき、傾斜角度の大きい第1リブ64が先に可動型82の溝部から離型することになる。
しかし、本実施形態の第1リブ64の高さは、第2リブ74の高さよりも高く形成されている。したがって、可動型82を移動する際に、第1リブ64と、可動型82の溝部とが係合している状態は、第1リブ64および第2リブ74のリブ高さを同等に設定した場合と比較して長い間維持される。
【0039】
スライド型83は、可動型82の移動方向に対して垂直方向(図4の下方)に移動する。このとき、第1ステー60および第2ステー70には、スライド型83と第1ステー60および第2ステー70との間の摩擦力により、スライド型83の移動方向(図4の下方)に第1ステー60および第2ステー70を引っ張る力が作用する。
【0040】
ここで、第1リブ64および第2リブ74と可動型82とが係合した状態でスライド型83を移動しても、第1ステー60および第2ステー70は、第1リブ64および第2リブ74により保持される。このため、第1ステー60および第2ステー70は、スライド型83に引っ張られて変形することがない。
したがって、金型の離型作業は、可動型82およびスライド型83を同時に移動して離型するか、もしくはスライド型83を移動して離型した後に可動型82を移動して離型することにより行われる。
【0041】
(効果)
本発明のリヤブラケット4によれば、第1ステー60の第1内径側面62および第2ステー70の第2内径側面72には、可動型82の抜け方向に沿って延在するように第1リブ64および第2リブ74が形成されているので、第1リブ64および第2リブ74を形成する可動型82の溝部と、第1リブ64および第2リブ74とが係合できる。したがって、スライド型83を離型する時に、第1ステー60および第2ステー70を保持することができる。これにより、第1リブ64および第2リブ74の延設方向と垂直な方向にスライド型83を移動させて離型する際、第1ステー60および第2ステー70の変形を抑制することができる。
また、特許文献1のように各ステーを連接する壁部を設けていないため、リヤブラケット4の軽量化および材料費の削減ができる。また、壁部を設けていないので、第1ステー60および第2ステー70を形成する際に、相互の位置関係を考慮する必要がない。これにより、第1ステー60および第2ステー70の形成場所の自由度を損なうことなく、第1ステー60および第2ステー70を所望の位置に形成することができる。さらに、第1リブ64および第2リブ74により、第1ステー60および第2ステー70の断面係数が上昇するので、特許文献1のように各ステーを連接する壁部を設けた場合と比較して、大きな強度低下もない。したがって、車両に対する取付自由度を低下させることなく第1ステー60および第2ステー70の補強ができる。
【0042】
また、本実施形態のスタータモータ1によれば、第1ステー60と第2ステー70との間にターミナルボルト36を配置することで、ターミナルボルト36周りが第1ステー60および第2ステー70により保護される。したがって、ターミナルボルト36が他部材と接触するのを抑制できる。とりわけ、車両へ他の部品を組み付ける際に、工具等がターミナルボルト36に当たるのを防止することができる。
【0043】
また、特許文献1発明では、各ステーを連接する壁部を迂回しつつ給電ケーブルを配索する必要がある、給電ケーブルが長くなる傾向がある。しかし、本実施形態のスタータモータ1によれば、第1ステー60と第2ステー70との間に壁部が形成されていないので、給電ケーブル49を自由に配索でき、外部電源と最短で接続することができる。したがって、給電ケーブル49の配索自由度が向上するとともに、低コストな給電ケーブル49を形成することができる。
【0044】
さらに、本実施形態によれば、各ステーを連接する壁部を有していないので、平坦部27を利用して、リヤブラケット4を外側から押えることができる。このため、リヤブラケット4の内側から軸受26を圧入して取り付ける際、平面にリヤブラケット4の底部4aの平坦部27を当接させることができる。したがって、軸受26を圧入する際、軸受26を安定して押圧することができる。これにより、リヤブラケット4の内側から軸受26を容易に圧入することができる。
【0045】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
本実施形態では、第1ステー60および第2ステー70の2個のステーが形成されている場合について説明した。しかし、ステーの個数は2個に限られることはなく、ステーの個数が2個以上であってもよい。
【0046】
本実施形態では、段差部として第1リブ64および第2リブ74が形成された場合について説明した。しかし、段差部はリブに限られることはなく、例えば凹部であってもよい。ただし、この場合の可動型には、凹部を形成するための凸部を設けなければならない。したがって、金型の製造のし易さという点で本実施形態に優位性がある。
【符号の説明】
【0047】
1 スタータモータ
3 ハウジング部
4 リヤブラケット(スタータブラケット)
10 回転軸
26 軸受(軸受け部)
27 平坦部
36 ターミナルボルト
49 給電ケーブル
60 第1ステー(ステー)
62 第1内径側面(径方向内側の面)
64 第1リブ(段差部)
70 第2ステー(ステー)
72 第2内径側面(径方向内側の面)
74 第2リブ(段差部)
81 可動型(金型)
82 固定型(金型)
83 スライド型(金型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体を収容するハウジング部の一端側に取り付けられるブラケット本体と、
このブラケット本体に立設された複数のステーと、を有し、
金型を用いて形成されるスタータブラケットにおいて、
前記各ステーにおける前記モータ本体の径方向内側の面には、前記各ステーの少なくとも一部を形成する前記金型の抜け方向に沿って延在するように、段差部が形成されていることを特徴とするスタータブラケット。
【請求項2】
前記段差部は、前記各ステーの前記面から突出するリブであることを特徴とする請求項1に記載のスタータブラケット。
【請求項3】
前記ステーは、第1ステー、および第2ステーの2つのステーで構成され、これら第1ステー、および第2ステーには、互いに対向する側の面に前記段差部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスタータブラケット。
【請求項4】
請求項3に記載のスタータブラケットと、
前記モータ本体と、
前記ハウジング部と、
前記スタータブラケットから突出され、外部電源と電気的に接続されるターミナルボルトとを備え、
前記第1ステーと前記第2ステーとの間に、前記ターミナルボルトを配置したことを特徴とするスタータモータ。
【請求項5】
前記ターミナルボルトには、外部電源から電力を供給する給電ケーブルが接続され、
前記第1ステーと前記第2ステーとの間には、前記給電ケーブルが配置されていることを特徴とする請求項4に記載のスタータモータ。
【請求項6】
前記スタータブラケットの径方向中央には、外面側に平坦部が形成されている一方、内面側の前記平坦部に対応する位置に、前記モータ本体の回転軸を回転自在に軸支するための軸受け部が設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のスタータモータ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−65475(P2012−65475A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208409(P2010−208409)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】