説明

スチリルアミン誘導体、およびスチリルアミン誘導体の合成方法

【課題】キャリア輸送性及びアモルファス性に優れたスチリルアミン誘導体を用いた有機エレクトロニクスを実現するために、化学的な安定性に優れた構造のスチリルアミン誘導体及びこの誘導体の合成方法を提供する。
【解決手段】特定の中間体により、3種の合成方法が例示される下記一般式(1)で表されるスチリルアミン誘導体。


式中、R1〜R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子等を、A1〜A3、B1、B2はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基等を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスチリルアミン誘導体およびその合成方法に関し、特には高い電荷輸送性を有し、かつ化学的安定性に優れたスチリルアミン誘導体、およびこのようなスチリルアミン誘導体の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機電界発光(Elelectroluminescence:EL)素子、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機メモリ等、キャリア(電荷)輸送能力を有する有機材料を用いた有機エレクトロニクスが脚光を浴び、産学界にて精力的に研究が行われている。
【0003】
特に有機電界発光素子は、次世代のディスプレイ技術として注目を集めており、材料開発も活発に行われている。この分野で研究されている有機化合物には、フタロシアニン誘導体、アルミキノリノール錯体、芳香族アミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、スチルベン誘導体、メロシアニン誘導体、クマリン誘導体等、数多く存在する。中でも、スチリルアミン系材料はキャリア輸送性が高いだけでなく、製膜特性にも優れ、薄膜デバイス材料として有望な材料と考えられている。このため、下記特許文献1および下記特許文献2等においては、特に有機電界発光素子用のスチリルアミン誘導体が提案されており、ここで提案された構造のスチリルアミン誘導体を用いることにより、有機電界発光素子の発光効率および発光寿命の向上が図れるとしている。
【0004】
【特許文献1】WO02/20459号公報
【特許文献2】特開平11−40359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、本発明者らは、上記特許文献1に記載された構造の下記化合物1、および上記特許文献2に記載された構造の下記化合物2の合成を検討したが、シリカゲル剤を用いたカラムクロマトフィーで精製を行うと、変質し、純度を向上させることが困難であった。
【化13】

【0006】
これらの化合物1,2が変質するメカニズムは掴めていないが、酸性条件下でアニリンが酸化重合され、アニリンブラックが生成する反応と類似した化学反応が起こっているものと考えられる。つまり、シリカゲル剤のカラム中では、シリカゲル剤に含まれるシラノール基のプロトンが、酸触媒として働き、変質を促進しているものと考えられるのである。
【0007】
また発明者らは、このような酸性条件下での上記化合物の変質を裏付ける現象を経験している。つまり、上記化合物1について、市販の安定化剤が含まれていない重クロロホルム溶媒を用いてNMR測定用溶液を調製すると、蛍光性を有する薄黄色の透明な溶液が得られるが、時間経過によってこの溶液がこげ茶色に変色し、さらに1日も経つと真っ黒に変色してしまうのである。この場合、安定化剤が無い状態での重クロロホルムは、容易に分解して酸を生じるため、この重クロロホルムが酸の供給源となる。図1〜4には、化合物1の重クロロホルム溶液(NMR測定用)について、調整直後(15分後)と2日保存後(2days)に、それぞれ吸収蛍光測定を行った結果を示す。これらの図には、化合物1の重クロロホルム溶液が、2日間の保存によって、吸収スペクトルの最大波長600nmにまで達するようになり、蛍光スペクトルも長波長化することが示されている。この結果は、時間経過によって化合物1のπ電子の非局在化エネルギーが大きくなっている、つまり分子が大きくなっていることを示唆している。そしてこれは、アニリンブラックが生成する重合過程と非常に似ているのである。
【0008】
以上のように、耐酸性に乏しく、精製困難なスチリルアミン誘導体ではあるが、上述したようにキャリア輸送性、特にホール輸送性が高いだけでなく、アモルファス性に優れている。したがって、薄膜にしても結晶化が抑制されるため、有機電界発光素子のような薄膜デバイスに適した材料であると言える。
【0009】
そこで本発明は、キャリア輸送性およびアモルファス性に優れたスチリルアミン誘導体を用いた有機エレクトロニクスを実現するために、化学的な安定性に優れた構造のスチリルアミン誘導体を提供すること、さらにこのスチリルアミン誘導体の合成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような目的を達成するために本発明者らが鋭意検討した結果、スチリルアミン誘導体における二重結合とアミノ基の間に、2位と6位で結合させたナフタレンから誘導したアリーレンを配置させることにより、キャリア輸送性を維持しながら、化学的安定性に優れ、精製が容易な新規スチリルアミン誘導体およびその製造法を見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明のスチリルアミン誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【化14】

【0012】
この一般式(1)中において、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、飽和もしくは不飽和の炭化水素アミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基を表す。また、A1〜A3、B1、B2はそれぞれ独立に、水素原子、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基を表す。これらの水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の、R1〜R6、A1〜A3、B1,B2は、隣接する基が互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。
【0013】
上記一般式(1)で表されるスチリルアミン誘導体では、スチリルアミン誘導体における二重結合とアミノ基の間に、2位と6位で結合させたナフタレンから誘導したアリーレンを配置したことにより、二重結合も含めたπ電子の非局在化エネルギーを増加させる。これにより一般式(1)で表されるスチリルアミン誘導体の分子全体を安定化させる。
【0014】
そして特に、一般式(1)のA1〜A3で表される少なくとも一つの基をアリール基で置換した構造や、R1〜R6の少なくとも一組の隣り合う置換基同士で結合することでナフタレン部分を含む構造が3つ以上の環からなる縮合環を構成することにより、二重結合も含めた共役長がさらに大きくなり、さらなる分子の安定化が図られる。
【0015】
例えば、一般式(1)のA1〜A3で表される少なくとも一つの基をアリール基で置換した構造としては、A1〜A3の少なくとも1つを下記一般式(2)で表されるアリール基とすることができる。
【0016】
【化15】

【0017】
そして好ましくは、一般式(1)におけるA2を、一般式(2)のアリール基とした下記一般式(3)のE体、またはそのZ体のスチリルアミン誘導体とすることで、効果的に共役長を大きくして分子の安定化を図ることができる。特に、一般式(3)のように、E体とすることで、最も効果的に共役長を大きくすることができる。
【0018】
【化16】

【0019】
尚、上記一般式(2)および一般式(3)中におけるR’1〜R’6は、上記一般式(1)におけるR1〜R6と同様に定義される。また、一般式(2)および一般式(3)中におけるC1,C2は、上記一般式(1)におけるB1,B2と同様に定義される。
【0020】
そして、一般式(3)におけるさらに具体化した構成としては、下記一般式(4)で表されるE体、またはそのZ体のスチリルアミン誘導体が示される。
【0021】
【化17】

【0022】
この一般式(4)中において、R”1〜R”20はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、飽和もしくは不飽和の炭化水素アミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基を表す。これらのR”1〜R”20は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の隣接する基が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。
【0023】
また、本発明は一般式(1)〜(4)を用いて説明したスチリルアミン誘導体の合成方法でもあり、中間体によって第1〜第3の合成方法が例示される。
【0024】
第1の合成方法は、下記一般式(5)で表される中間体を経由する方法である。
【0025】
【化18】

【0026】
この場合、一般式(5)の中間体と共に、下記一般式(6)で表されるエチレン誘導体を用い、いずれか一方をボロン酸あるいはボロン酸エステル化合物に誘導し、パラジウム触媒存在下でカップリングさせる。
【0027】
【化19】

【0028】
尚、一般式(5)および一般式(6)中におけるR1〜R6,A1〜A3,B1,B2は、一般式(1)で定義したものと同じ意味を表す。
【0029】
一般式(5)の中間体を経由する第1の合成方法の変形例としては、一般式(5)の中間体および下記一般式(7)の中間体のうちの少なくとも一般式(5)の中間体と、下記一般式(8)または一般式(9)で表されるエチレン誘導体の一方とを用い、これらのうちのいずれか1つをボロン酸あるいはボロン酸エステル化合物に誘導し、パラジウム触媒存在下でカップリングさせても良い。
【0030】
【化20】

【0031】
尚、一般式(7)中におけるR’1〜R’6,C1,C2は、一般式(3)で定義したものと同じ意味を表す。そして、一般式(8)および一般式(9)中におけるA1〜A3は、一般式(1)で定義したものと同じ意味を表す。
【0032】
以上、第1の合成方法の変形例では、一般式(5)の中間体および下記一般式(7)の中間体の両方を用いた場合に、特に上記一般式(3)で表されるスチリルアミン誘導体が得られる。尚、この合成方法には、一般式(5)の中間体と一般式(7)の中間体とが同一構造である場合も含まれる。
【0033】
また、第2の合成方法は、下記一般式(10)で表される中間体を経由する。この場合、この中間体を低原子化チタン存在下でカップリングさせる。これにより、二重結合をはさんで対象形のスチリルアミン誘導体が得られる。
【0034】
【化21】

【0035】
尚、一般式(10)中におけるR1〜R6,B1,B2は、一般式(1)で定義したものと同じ意味を表す。
【0036】
さらに、第3の合成方法は、下記一般式(11)または一般式(12)で表される中間体を経由する。この場合、選択された中間体と、前記一般式(1)中のA2およびA3を有するカルボニル化合物とを、塩基存在下でカップリングさせる。
【0037】
【化22】

【0038】
尚、一般式(11)および一般式(12)中におけるR1〜R6は、一般式(1)で定義したものと同じ意味を表す。また、一般式(11)および一般式(12)中のA1は水素原子、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基を表す。さらに一般式(11)中のX−はハロゲン化イオンを表し、一般式(12)中のT1,T2はそれぞれ独立に飽和炭化水素基を表す。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように本発明は、電荷輸送性およびアモルファス性を有するスチリルアミン誘導体において、二重結合とアミノ基の間に、2位と6位で結合させたナフタレンから誘導したアリーレンを配置させた構成とすることにより、化学的安定性の向上を図ることが可能になる。この結果、例えばこのスチリルアミン誘導体を薄膜層に用いた有機エレクトロニクスの耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0040】
また、本発明の合成方法によれば、上述したように優れた化学的安定性を有するスチリルアミン誘導体を得ることが可能である。またこの結果、酸性条件下におけるスチリルアミン誘導体の変質が防止されて精製が容易になり、純度の高いスチリルアミン誘導体を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の実施の形態を、スチリルアミン誘導体、このスチリルアミン誘導体の合成方法の順に説明する。
【0042】
<スチリルアミン誘導体>
本発明のスチリルアミン誘導体を表す一般式(1)〜(4)中におけるR1〜R6、R’1〜R’6,A1〜A3,B1,B2,C1,C2,R”1〜R”20は、上述したとおりに、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、飽和もしくは不飽和の炭化水素アミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基等を表している。
【0043】
以上のうち、ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等がある。
【0044】
飽和もしくは不飽和の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ステアリル基、トリチル基、ベンジル基、スチリル基、フェネチル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基等がある。
【0045】
また、飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基の具体例としては、メトキシキ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、パーフルオロエトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基、トリチルオキシ基、ベンジルオキシ基、スチリルオキシ基、フェネチルオキシ基、シンナミルオキシ基、ベンズヒドリルオキシ基等がある。
【0046】
置換もしくは未置換のアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アセナフチレニル基、アセナフテニル基、フェナントリル基、フェナレニル基、アンスリル基、ナフタセニル基、フルオレニル基、クリセニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ビフェニル基、ナフチルフェニル基、ターフェニル基、ビフェニルナフチル基、スピロビフルオレニル基、テトラフェニルフェニル基、テトラキシリルフェニル基等がある。
【0047】
置換もしくは未置換のアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アセナフチニルオキシ基、アセナフテニルオキシ基、フェナントリルオキシ基、フェナレニルオキシ基、アンスリルオキシ基、ナフタセニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、クリセニルオキシ基、ピレニルオキシ基、トリフェニレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基、フルオランテニルオキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフチルフェニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、ビフェニルナフチルオキシ基、スピロビフルオレニルオキシ基、テトラフェニルフェニルオキシ基、テトラキシリルフェニルオキシ基等がある。
【0048】
置換もしくは未置換の複素環基の具体例としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリル基、ビフェニルキノリン基、フェナントリジル基、アクリジニル基、カルバゾリル基、フェナントラジニル基、ベンゾフラニル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、トリアジニル基、ベンゾチアゾリル基、ビピリジル基等がある。
【0049】
不飽和の炭化水素アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等がある。
【0050】
置換もしくは未置換のアリールアミノ基の具体例としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビス(ビフェニル)アミノ基、ビス(ナフチルフェニル)アミノ基、ビス(ベンジルフェニル)アミノ基等がある。
【0051】
以上のようなスチリルアミン誘導体は、例えば有機エレクトロニクスの製造プロセスにおいて蒸着成膜材料として用いることを考慮すると、全体の分子量が1000以下に抑えられるように、上述したR1〜R6、R’1〜R’6、A1〜A3、B1,B2,C1,C2、R”1〜R”20を設定することが好ましい。
【0052】
またこれをふまえて、上述した一般式(1)においては、R1〜R6が炭素を有する基である場合、これらのR1〜R6を構成する各基の炭素数は、炭化水素基および炭化水素オキシ基:炭素数1〜20,アリール基およびアリールオキシ基:炭素数6〜25、複素環基:炭素数2〜25、炭化水素アミノ基:炭素数1〜8、アリールアミノ基:炭素数6〜35であることが好ましい。また一般式(1)中のA1〜A3,B1,B2が炭素を有する基である場合、その炭素数は、飽和もしくは不飽和の炭化水素基:炭素数1〜20、置換もしくは未置換のアリール基:炭素数6〜45、置換もしくは未置換の複素環基:炭素数2〜30であることが好ましい。
【0053】
尚、一般式(2)〜(4)におけるR’1〜R’6,C1,C2、R”1〜R”20が炭素を有する基である場合、これらの各基の炭素数は、以上の一般式(1)で規定されたA1〜A3が炭素を有する基である場合の炭素数の範囲内に設定されることとする。
【0054】
以下、スチリルアミン誘導体の具体的な構造を例示するが、本発明のスチリルアミン誘導体は以下の構造に限定されることはない。尚、構造式中、Meはメチル基を示し、n−Prはノルマルプロピル基を示す。
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【0055】
そして特に、一般式(1)〜(4)を用いて説明したスチリルアミン誘導体が、有機電界発光素子の青色発光層に用いられる場合においては、上述した一般式(1)におけるR1〜R6が炭素を有する基であれば、これらのR1〜R6を構成する各基の炭素数は、炭化水素基および炭化水素オキシ基:炭素数1〜6、アリール基およびアリールオキシ基:炭素数6〜12、複素環基:炭素数2〜10、炭化水素アミノ基:炭素数1〜8、アリールアミノ基:炭素数6〜35であることが好ましい。またA1〜A3が炭素を有する基である場合には、炭化水素基:炭素数1〜20、アリール基:炭素数6〜45、複素環基:炭素数2〜30であることが好ましい。さらに、B1、B2が炭素を有する基である場合には、アリール基:炭素数6〜15、複素環基:炭素数2〜15であることが好ましい。
【0056】
したがって、上記一般式(1)〜(4)および上記構造式(A1)〜(A53)、構造式(B1)〜(B10)、構造式(C1)〜(C20)で示したスチリルアミン誘導体のうち、上述したような範囲に含まれるスチリルアミン誘導体が、有機電界発光素子の青色発光層の構成材料として好適に用いられることになる。
【0057】
以上のようなスチリルアミン誘導体は、化学的安定性、キャリア輸送性、アモルファス性に優れているため、有機エレクトロニクスを構成する有機薄膜材料として好適に用いることができる。具体的には、スチリルアミン誘導体は、下記の各有機エレクトロニクスにおいて、それぞれ次のように用いられる。
【0058】
1)有機電界発光素子
陽極と陰極との間に、有機発光層を狭持してなる有機電界発光素子において、有機発光層と陽極との間に挿入されるホール輸送層およびホール注入層、さらにはこの有機発光層に、本発明のスチリルアミン誘導体からなる薄膜層が用いられる。特に、この有機電界発光素子が青色発光素子である場合には、上述したように実効共役長を制限したスチリルアミン誘導体を有機発光層として用いることで、色純度に優れた青色発光が得られる。さらに上記A33を例としたシアノ基を有するスチリルアミン誘導体、およびA39〜A44を例とした複素環を含むスチリルアミン誘導体では、電子輸送性も向上させることが可能である。このため、有機発光層と陰極との間に挿入される電子輸送層での使用も可能である。
【0059】
2)有機トランジスタ
ソース電極およびドレイン電極に接する半導体層として有機薄膜を用いてなる有機トランジスタにおいて、この半導体層を構成する有機薄膜として本発明のスチリルアミン誘導体が用いられる。この場合、さらに他物質との混合でも使用可能であり、例えば選択的に不純物を導入することでソース・ドレイン拡散層を構成しても良い。
【0060】
3)有機メモリ
有機薄膜を金属に代表される導電性材料で狭持してなり、電圧印加により有機薄膜に対しての電荷の蓄積や放出が可能な有機メモリにおいて、この有機薄膜として本発明のスチリルアミン誘導体が用いられる。この場合、さらに他物質との混合でも使用可能である。
【0061】
4)有機太陽電池
色素増感型の有機太陽電池において、光増感剤として本発明のスチリルアミン誘導体を用いることが可能である。吸収波長の異なる本発明材料あるいは他物質との混合により、紫外、可視、赤外領域の広範囲の光を電流に変換することが可能である。
【0062】
5)有機撮像素子
有機撮像素子において、光変換層、ホール輸送層、ホール注入層に本発明のスチリルアミン誘導体が用いられる。また、有機電界発光素子と同様に、本発明のスチリルアミン誘導体のうち、シアノ基を有するスチリルアミン誘導体および複素環を含むスチリルアミン誘導体については、電子輸送層としても用いられる。
【0063】
<第1の合成方法(その1)>
上述したスチリルアミン誘導体の第1の合成方法(その1)として、上記構造式A3のスチリルアミン誘導体の合成ルートを、下記合成式(1)に示す。下記合成式(1)には、ハロゲン化物とボロン酸あるいはボロン酸エステルとをパラジウム触媒でカップリングさせる鈴木カップリング反応によってA3のスチリルアミン誘導体を合成する例を示した。
【0064】
【化31】

尚、合成式(1)において末端のメチル基は省略した。
【0065】
この合成式(1)においては、一般式(5)の一例となる中間体1を、ボロン酸エステル化合物(中間体2)に誘導する。そして、この中間体2と、別ルートで合成した一般式(6)のエチレン誘導体の一例となる中間体3とを、パラジウム触媒存在下でカップリングさせることにより、A3のスチリルアミン誘導体が得られる。
【0066】
<第1の合成方法(その2)>
上述したスチリルアミン誘導体の第1の合成方法(その2)として、上記構造式A1のスチリルアミン誘導体の合成ルートを、下記合成式(2)に示す。
【0067】
【化32】

【0068】
この合成式(2)においては、一般式(5)の一例となる中間体4を、ボロン酸エステル化合物(中間体5)に誘導する。そして、この中間体5と、一般式(8)の一例となるエチレン誘導体(Br2H2)とを、パラジウム触媒存在下でカップリングさせる過程を経る。これにより、一般式(6)のエチレン誘導体の一例となる中間体6を合成し、さらにこの中間体6をパラジウム触媒存在下で、A1〜A3の何れかを有する誘導体とカップリングさせることにより、A1のスチリルアミン誘導体が得られる。
【0069】
<第2の合成方法>
上述したスチリルアミン誘導体の第2の合成方法として、上記C17のスチリルアミン誘導体の合成ルートを下記合成式(3)に示す。下記合成式(3)には、カルボニル化合物を低原子価チタンによってカップリングさせるMcMurry反応によってC17の化合物を合成する例を示した。McMurry反応を用いることにより、二重結合部分を中心に対称性が高い化合物については、合成ステップ数を少なくすることが可能である。
【0070】
【化33】

【0071】
この合成式(3)においては、一般式(10)の一例となる中間体7を合成し、この中間体7を低原子チタンの存在下でカップリングさせることによりC17のスチリルアミン誘導体が得られる。
【0072】
<第3の合成方法>
上述したスチリルアミン誘導体の第3の合成方法として、上記A2のスチリルアミン誘導体の合成ルートを下記合成例(4)に示す。下記合成式(4)には、カルボニル化合物とホスホニウム塩あるいは亜リン酸エステルとを塩基存在下にてカップリングさせるWittig反応またはHorner-Emmmons反応によってA2の化合物を合成する例を示した。
【0073】
【化34】

尚、合成式(4)において末端のメチル基は省略した。
【0074】
この合成式(4)においては、一般式(5)の一例となる中間体8を経由して、一般式(11)の一例となる中間体9を合成する。そして、この中間体9をカルボニル化合物と結合させてA2のスチリルアミン誘導体が得られる。(Wittig反応)
【0075】
また、この合成例2では、合成式(4)におけるカッコ内に示すように、中間体8を経由して一般式(12)の一例となる中間体10を合成する。そして、この中間体10をカルボニル化合物と結合させてA2のスチリルアミン誘導体が得られる。(Horner-Emmmons反応)
【0076】
尚、上述した合成方法はあくまでも一例であり、本発明のスチリルアミン誘導体の合成方法は、上述した3例に限定されることはない。尚、本発明のスチリルアミン誘導体の合成過程においては、光および熱により二重結合部分の異性化が起こりやすいため、可能な限り後半の反応に二重結合部位の生成反応を用いた合成ルートの方が望ましい。
【実施例】
【0077】
次に、本発明の具体的な実施例1,2、およびこれらの実施例に対する比較例、さらには各実施例および比較例で合成したスチリルアミン誘導体の評価結果を説明する。
【0078】
<実施例1>:上記C1のスチリルアミン誘導体を以下の合成式(5)に示すようにして合成した。
【化35】

【0079】
先ず、300mlナス型フラスコに、攪拌子、6-ブロモ-2-ナフトール75.9g(0.34mol)、アニリン144ml(1.58mol)、p-トルエンスルホン酸一水和物13.3g(0.07mol)、キシレン114mlを入れ、反応容器中をアルゴン雰囲気にし、スターラーにて攪拌しながら120℃にて15時間反応させた。その間、Dean-Stark装置を用いながら水を除去した。反応液を放冷後、酢酸ナトリウム17.1g(0.21mol)とエタノール460mlを添加し、一旦還流した後に冷却し、析出結晶をろ別した。エタノール250mlで洗浄し、中間体11の白色結晶88g(Crude)を得た。
【0080】
次に、300mlナス型フラスコ中に中間体11を70.0g(0.23mol)、ヨードベンゼン116.3g(0.57mol)、炭酸カリウム143g(1.03mol)、銅粉9.4g(0.15mol)、18-Crown-6を8.7g(0.032mol)、およびo-ジクロロベンゼン235mlを入れ、窒素雰囲気下にて6時間還流した。反応液をセライトろ過し、クロマトグラフィーにて精製を行い、中間体12[一般式(5)対応]の白色結晶56gを得た。収率65%であった。
【0081】
次いで、500mlの3つ口フラスコに中間体12を55.9g(0.15mol)、脱水THF450mlを入れ、反応容器中をアルゴン雰囲気下とした。その後、反応容器を塩化カルシウムとドライアイスにて-50〜-45℃に冷却し、1.58mol/lのBuLiを115ml(0.18mol)添加した。同温にて1時間攪拌した後に、DMF21mlを脱水THF90mlにて希釈した溶液を5分間かけて滴下した。滴下終了後、3.5時間攪拌し、希塩酸60mlとトルエン600mlを加えて分液を行った。有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた油状物にヘキサンを加えて結晶化させ、ろ過した後に再結晶を行い、中間体13[一般式(10)対応]の黄色結晶36.0gを得た。収率74.2%であった。
【0082】
その後、1リットルの3つ口フラスコに中間体13を16.0g(0.05mol)、脱水ジオキサン495ml、亜鉛粉末9.8g(0.15mol)を入れ、反応容器を氷浴中で冷却しながら、4塩化チタン11.0ml(0.10mol)を滴下し、アルゴン雰囲気下で15時間還流した。反応液に10%炭酸カリウム水溶液とトルエンを添加し、分液を行った。有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。粗精製物をカラムクロマトグラフィーで2回精製し、C1に示すスチリルアミン誘導体の黄色結晶4.3gを得た。収率28%であった。
【0083】
<実施例2>:上記C2のスチリルアミン誘導体を以下の合成式(6)に示すようにして合成した。
【化36】

尚、合成式(6)において末端のメチル基は省略した。
【0084】
先ず、300mlナス型フラスコ中に、攪拌子、6-ブロモ-2-ナフトール125g(0.56mol)、p-トルイジン224g(2.11mol)、p-トルエンスルホン酸一水和物13.3g(0.11mol)、キシレン200mlを入れ、反応容器中をアルゴン雰囲気にし、スターラーにて攪拌しながら120℃にて15時間反応させた。その間、Dean-Stark装置を用いながら、水を除去した。反応液を放冷後、酢酸ナトリウム28.2g(0.34mol)とエタノール760mlを添加し、一旦還流した後に冷却し、析出結晶をろ別した。エタノールで洗浄し、中間体14の白色結晶154.4gを得た。収率88%であった。
【0085】
次に、3リットルの反応容器中に、中間体14を140g(0.45mol)、炭酸カリウム269g(1.96mol)、銅粉18g(0.28mol)、18-Crown-6を16.7g(0.063mol)、およびデカリン2lを入れ、窒素雰囲気下にて6時間還流した。反応液にTHF2lを加え、セライトろ過し、クロマトグラフィーにて精製を行い、中間体15[一般式(5)対応]の白色結晶109gを得た。収率60%であった。
【0086】
次いで、1リットルの3つ口フラスコに中間体15を78.0g(0.19mol)、脱水THF660mlを入れ、反応容器中をアルゴン雰囲気下とした。その後、反応容器を塩化カルシウムとドライアイスにて-50〜-45℃に冷却し、1.58mol/lのBuLiを149ml(0.24mol)添加した。同温にて1時間攪拌した後に、DMF27mlを脱水THF120mlにて希釈した溶液を5分間かけて滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、水80mlとトルエン800mlを加えて分液を行った。有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた油状物をクロマトグラフィーにて精製し、中間体16[一般式(10)対応]の結晶49gを得た。収率73%であった。
【0087】
その後、2リットルの3つ口フラスコに、中間体16:48g(0.14mol)、脱水ジオキサン:900ml、および亜鉛粉末:28.0g(0.43mol)を入れ、反応容器を氷浴中で冷却しながら、4塩化チタン:24ml(0.22mol)を滴下し、アルゴン雰囲気下で15時間還流した。反応液に10%炭酸カリウム水溶液とトルエンを添加し、分液を行った。有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。粗精製物をカラムクロマトグラフィーで2回精製し、C2に示すスチリルアミン誘導体の黄色結晶8.2gを得た。収率9%であった。
【0088】
<比較例>:発明が解決しようとする課題で示した化合物1を、以下の合成式(7)に示すようにして合成した。
【化37】

【0089】
先ず、1リットルの3つ口フラスコ中に、2-(4-ブロモフェニル)-1,3ジオキソラン:9.160g(0.040mol)、N-フェニル-2-ナフチルアミン:8.770g(0.04mol)、酢酸パラジウム(II):0.180g(0.8mmol)、ナトリウムt-ブトキサイド:4.610g(0.048mol)、およびキシレン:700mlを入れ、攪拌子で攪拌しながらトリt-ブチルフォスフィン0.1mol/lキシレン溶液を32ml(3.2mmol)をゆっくりと滴下し、容器内を窒素雰囲気にして110℃にて7.5時間反応させた。その後、分液処理、カラムクロマトグラフィーによる精製を3回行い、中間体17を10.23g得た。収率70%であった。
【0090】
次に、1リットルの3つ口フラスコ中に、中間体17:10.23g、アセトン:600ml、水:140ml、およびp-トルエンスルホン酸ピリジニウム塩:0.754g(0.003mol)を入れ、室温で30分、50℃で3時間、攪拌子で攪拌した。その後、分液処理、カラムクロマトグラフィーによる精製を2回行い、中間体18を約8.07g得た。収率92%であった。
【0091】
その後、500mlの3つ口フラスコ中に、亜鉛0.91g:(0.014mol)、およびTHF:77mlを入れ、反応容器を氷浴中で冷却しながら、4塩化チタン0.78ml(0.007mol)、ピリジン3.8mlを滴下し、攪拌子にて攪拌した。次にTHF33mlに中間体2を1.03g(0.003mol)溶解し、30分間かけて滴下した。その後、反応溶液中を窒素雰囲気とし、室温で20分間、60℃で5h反応させ、10%炭酸カリウム水溶液を加え、分液処理、カラムクロマトグラフィーによる精製を5回行い、化合物1を0.346g(0.56mmol)得た。収率19%であった。
【0092】
<評価結果−1>
実施例1,2および比較例3の合成で示した、各中間体、スチリルアミン誘導体、および化合物のNMRスペクトルを図2〜10に示す。
【0093】
これらのNMRスペクトルから、各合成過程において、上記合成式(5)〜合成式(7)に示した各中間体、スチリルアミン誘導体、および化合物1が合成されていることが確認された。
【0094】
<評価結果−2>
実施例1,2で合成したスチリルアミン誘導体および比較例で合成した化合物1を、アルドリッチ社製重クロロホルム溶剤(製品番号22578-9)に溶解し、最も長波長側の吸収ピークがおおよそ0.1の吸光度になるよう調製し、15分、30分、180分経過後の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。各合成物の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを、図11,図12,図13に示す。なお、吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの測定にはそれぞれ日立U3300型分光光度計、日立F4500型分光蛍光光度計を使用した。
【0095】
吸収スペクトルに関して最も長波長側のピークに着目し、比較例の化合物1について15分後と180分後のスペクトルをそれぞれ比較すると、396nmにおいて24%の強度に低下してしまうが、実施例1のスチリルアミン誘導体C1は408nmにおいて53%の強度を維持し、実施例2のスチリルアミン誘導体C2は417nmにおいて43%の強度を維持した結果が得られた。
【0096】
一方、蛍光スペクトルに関しては、吸収スペクトルの最長波長ピークで励起して得られる蛍光スペクトルのピークに注目した。比較例の化合物1について15分後と180分後のスペクトルをそれぞれ比較すると、444nmにおいて1%の蛍光強度に低下した。前記結果に対し、実施例1のスチリルアミン誘導体C1の蛍光スペクトルは461nmにおいて28%の蛍光強度を維持し、実施例2のスチリルアミン誘導体C2の蛍光スペクトルは474nmにおいて21%の蛍光強度を維持した結果が得られた。
【0097】
以上のように本発明の新規スチリルアミン誘導体は安定剤を含まない重クロロホルム中でも変質が抑えられる化合物であることが確認された。
【0098】
<評価結果−3>
実施例1,2で合成したスチリルアミン誘導体C1,C2、および比較例で合成した化合物1を、それぞれトルエン溶液に溶解し、薄層クロマトグラフィー(TLC)の二重展開を行った。TLCプレートには、MERCK社製25TLCアルミニウムシート(吸着剤:シリカゲル60F254)を使用し、展開溶媒にはトルエン:シクロヘキサン=1:3の混合溶媒を用いた。
【0099】
実施例1,2で合成したスチリルアミン誘導体C1,C2については2回目の展開でC1およびC2以外のスポットは見られず、変質が無いことが確認できた。これに対して、比較例の化合物1は2回目の展開においてもテーリングが見られ、変質していることが確認された。
【0100】
以上のように本発明のスチリルアミン誘導体はシリカゲルTLC展開時の変質を改善できた。化合物精製用のクロマトグラフィーの充填剤とTLCの吸着剤は類似シリカゲルを用いており、上記結果は化合物精製時の変質状態を反映している。従って、本発明のスチリルアミン誘導体は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでの精製も容易であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】化合物1の吸収スペクトルと蛍光スペクトルの経時変化を示す図である。
【図2】実施例1で合成した中間体11のNMRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で合成した中間体13のNMRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例1で合成したC1のスチリルアミン誘導体のNMRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例2で合成した中間体14のNMRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例2で合成した中間体15のNMRスペクトルを示す図である。
【図7】実施例2で合成した中間体16のNMRスペクトルを示す図である。
【図8】実施例2で合成したC2のスチリルアミン誘導体のNMRスペクトルを示す図である。
【図9】比較例で合成した中間体18のNMRスペクトルを示す図である。
【図10】比較例で合成した化合物1のNMRスペクトルを示す図である。
【図11】実施例1で合成したC1のスチリルアミン誘導体の吸収スペクトルと蛍光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例2で合成したC2のスチリルアミン誘導体の吸収スペクトルと蛍光スペクトルを示す図である。
【図13】比較例で合成した化合物1の吸収スペクトルと蛍光スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるスチリルアミン誘導体。
【化1】

[一般式(1)式中において、
R1〜R6はそれぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換のアリールオキシ基、
置換もしくは未置換の複素環基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素アミノ基、
置換もしくは未置換のアリールアミノ基を表し、
水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の隣接する基が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。
A1〜A3、B1、B2はそれぞれ独立に、
水素原子、
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換の複素環基を表し、
隣接する基が互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。]
【請求項2】
請求項1記載のスチリルアミン誘導体において、
前記一般式(1)中のA1〜A3の少なくとも1つが下記一般式(2)で表される
ことを特徴とするスチリルアミン誘導体。
【化2】

[一般式(2)中において、
R’1〜R’6はそれぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換のアリールオキシ基、
置換もしくは未置換の複素環基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素アミノ基、
置換もしくは未置換のアリールアミノ基を表し、
水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の隣接する基が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。
C1〜C2はそれぞれ独立に、
水素原子、
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換の複素環基を表し、
隣接する基が互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。]
【請求項3】
請求項2記載のスチリルアミン誘導体において、
前記一般式(1)中のA2を前記一般式(2)とした下記一般式(3)で表されるE体、またはそのZ体のスチリルアミン誘導体。
【化3】

【請求項4】
請求項3記載のスチリルアミン誘導体において、
下記一般式(4)で表されるE体、またはそのZ体のスチリルアミン誘導体。
【化4】

[一般式(4)式中において、
R”1〜R”20はそれぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換のアリールオキシ基、
置換もしくは未置換の複素環基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素アミノ基、
置換もしくは未置換のアリールアミノ基を表し、
水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の隣接する基が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していてもよい。
【請求項5】
請求項4記載のスチリルアミン誘導体において、
下記構造式(1)で表されるE体、またはそのZ体のスチリルアミン誘導体。
【化5】

【請求項6】
請求項4記載のスチリルアミン誘導体において、
下記構造式(2)で表されるE体、またはそのZ体のスチリルアミン誘導体。
【化6】

【請求項7】
請求項4記載のスチリルアミン誘導体において、
下記構造式(3)で表されるE体、またはそのZ体のスチリルアミン誘導体。
【化7】

【請求項8】
請求項1記載のスチリルアミン誘導体を表す一般式(1)中において、
R1〜R6はそれぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基
飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20の炭化水素基、
飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20の炭化水素オキシ基、
置換もしくは未置換の炭素数6〜25のアリール基、
置換もしくは未置換の炭素数6〜25のアリールオキシ基、
置換もしくは未置換の炭素数2〜25の複素環基、
飽和もしくは不飽和の炭素数1〜8の炭化水素アミノ基、
置換もしくは未置換の炭素数6〜35のアリールアミノ基を表し、
水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の隣接する基が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良く、
A1〜A3、B1、B2はそれぞれ独立に、
水素原子、
飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20の炭化水素基、
置換もしくは未置換の炭素数6〜45のアリール基、
置換もしくは未置換の炭素数2〜30の複素環基を表し、
隣接する基が互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い
ことを特徴とするスチリルアミン誘導体。
【請求項9】
請求項1記載のスチリルアミン誘導体を表す一般式(1)中において、
R1〜R6はそれぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基
飽和もしくは不飽和の炭素数1〜6の炭化水素基、
飽和もしくは不飽和の炭素数1〜6の炭化水素オキシ基、
置換もしくは未置換の炭素数6〜12のアリール基、
置換もしくは未置換の炭素数6〜12のアリールオキシ基、
置換もしくは未置換の炭素数2〜10の複素環基、
飽和もしくは不飽和の炭素数1〜8の炭化水素アミノ基、
置換もしくは未置換の炭素数6〜35のアリールアミノ基を表し、
水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の隣接する基が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良く、
A1〜A3はそれぞれ独立に、
水素原子、
飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20の炭化水素基、
置換もしくは未置換の炭素数6〜45のアリール基、
置換もしくは未置換の炭素数2〜30の複素環基を表し、
隣接する基が互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良く、
B1,B2はそれぞれ独立に、
置換もしくは未置換の炭素数6〜15のアリール基、
置換もしくは未置換の炭素数2〜15の複素環基を表し、
隣接する基が互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い
ことを特徴とするスチリルアミン誘導体。
【請求項10】
有機エレクトロニクスを構成する有機薄膜材料として用いられること
を特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のスチリルアミン誘導体。
【請求項11】
前記有機エレクトロニクスが、有機電界発光素子、有機トランジスタ、有機メモリ素子、有機太陽電池、または有機撮像素子である
ことを特徴とする請求項10記載のスチリルアミン誘導体。
【請求項12】
下記一般式(1)で表されるスチリルアミン誘導体の合成方法であって、
下記一般式(5)で表される中間体を経由することを特徴としたスチリルアミン誘導体の合成方法。
【化8】

[一般式(1)および一般式(5)中において、
R1〜R6はそれぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換のアリールオキシ基、
置換もしくは未置換の複素環基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素アミノ基、
置換もしくは未置換のアリールアミノ基を表し、
水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の隣接する基が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。
A1〜A3、B1、B2はそれぞれ独立に、
水素原子、
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換の複素環基を表し、
隣接する基が互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。]
【請求項13】
請求項12記載のスチリルアミン誘導体の合成方法において、
前記一般式(5)の中間体および下記一般式(6)で表されるエチレン誘導体を用い、これらのうちの一方をボロン酸あるいはボロン酸エステル化合物に誘導し、パラジウム触媒存在下でカップリングさせる
ことを特徴とするスチリルアミン誘導体の合成方法。
【化9】

[一般式(6)中において、A1〜A3は、それぞれ請求項12で定義したものと同じ意味を表す。]
【請求項14】
請求項12記載のスチリルアミン誘導体の合成方法において、
前記一般式(5)の中間体および下記一般式(7)の中間体のうちの少なくとも一般式(5)の中間体と、下記一般式(8)または一般式(9)で表されるエチレン誘導体の一方とを用い、これらのうちのいずれか1つをボロン酸あるいはボロン酸エステル化合物に誘導し、パラジウム触媒存在下でカップリングさせる過程を経る
ことを特徴とするスチリルアミン誘導体の合成方法。
【化10】

[一般式(7)中において、
R’1〜R’6はそれぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換のアリールオキシ基、
置換もしくは未置換の複素環基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素アミノ基、
置換もしくは未置換のアリールアミノ基を表し、
水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の隣接する基が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。
C1〜C2はそれぞれ独立に、
水素原子、
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換の複素環基を表し、
隣接する基が互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。
一般式(8)および一般式(9)中、A1〜A3は、それぞれ請求項12で定義したものと同じ意味を表す。]
【請求項15】
下記一般式(1)で表されるスチリルアミン誘導体の合成方法であって、
下記一般式(10)で表される中間体を経由することを特徴としたスチリルアミン誘導体の合成方法。
【化11】

[一般式(1)および一般式(10)中において、
R1〜R6はそれぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換のアリールオキシ基、
置換もしくは未置換の複素環基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素アミノ基、
置換もしくは未置換のアリールアミノ基を表し、
水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の隣接する基が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。
A1〜A3、B1、B2はそれぞれ独立に、
水素原子、
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換の複素環基を表し、
隣接する基が互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。]
【請求項16】
前記請求項15記載のスチリルアミン誘導体の合成方法において、
前記一般式(10)の中間体を低原子化チタン存在下でカップリングさせる
ことを特徴とするスチリルアミン誘導体の合成方法。
【請求項17】
下記一般式(1)で示されるスチリルアミン誘導体の合成方法であって、
下記一般式(11)または一般式(12)で表される中間体を経由することを特徴としたスチリルアミン誘導体の合成方法。
【化12】

[一般式(1)、一般式(11)、および一般式(12)中において、
R1〜R6はそれぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素オキシ基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換のアリールオキシ基、
置換もしくは未置換の複素環基、
飽和もしくは不飽和の炭化水素アミノ基、
置換もしくは未置換のアリールアミノ基を表し、
水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、およびニトロ基以外の隣接する基が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。
A1〜A3、B1、B2はそれぞれ独立に、
水素原子、
飽和もしくは不飽和の炭化水素基、
置換もしくは未置換のアリール基、
置換もしくは未置換の複素環基を表し、
隣接する基が互いに結合して飽和もしくは不飽和の炭素環を形成していても良い。
X−はハロゲン化イオンを表す。
T1,T2はそれぞれ独立に飽和炭化水素基を表す。]
【請求項18】
請求項17記載のスチリルアミン誘導体の合成方法において、
前記一般式(11)の中間体または前記一般式(12)の中間体と、前記一般式(1)中のA2およびA3を有するカルボニル化合物とを、塩基存在下でカップリングさせる
ことを特徴とするスチリルアミン誘導体の合成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−124333(P2006−124333A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315488(P2004−315488)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】