説明

スチレン熱可塑性エラストマー及びポリフェニレンエーテルを含む気密層を備えた空気圧物品

本発明は、インフレーションガスに対して気密であるエラストマー層を備えたインフレート可能な物品において、気密エラストマー層は、ポリイソブチレンブロックを含む少なくとも1つのスチレン熱可塑性エラストマーを有する、インフレート可能物品において、気密エラストマー層は、ポリフェニレンエーテル(PPE)を更に含むことを特徴とするインフレート可能物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「インフレート可能」な物品、即ち、定義上、空気又は同等のインフレーションガスでインフレートされた場合に使用可能な形態を取る物品に関する。
【0002】
本発明は、特に、これらインフレート可能物品、特にタイヤのためのインフレート可能物品が気密であるようにする気密層に関する。
【背景技術】
【0003】
チューブレスタイプの従来型タイヤにおいて、半径方向内面は、タイヤをインフレートさせてこれを圧力下に保つことができる気密層(又はより一般的に言えばインフレーションガスに対して気密である層)を有する。その気密特性により、比較的低い圧力低下レベルを保証することができ、それにより通常、数週間又は数ヶ月間の十分な期間にわたり通常の動作条件においてタイヤをインフレート状態に保つことができる。この層の別の役割は、カーカス補強材、より一般的に言えば、タイヤの残部をタイヤ内部の空間に源を発する空気の拡散に起因した酸化の恐れから保護することにある。
【0004】
気密インナーライナ又は内部ゴムのこの役割は、今日、優れた気密特性があるとしてずっと昔から認識されているブチルゴム(イソブチレンとイソプレンのコポリマー)を主成分とする組成物によって果たされている。
【0005】
しかしながら、ブチルゴム又はエラストマーを主成分とする組成物の周知の欠点は、これら組成物が広い温度スペクトルにわたって高いヒステリシスロスを呈することであり、このような欠点は、タイヤの転がり抵抗を損なっている。
【0006】
これらの気密インテーライナのヒステリシスを減少させること、最終的には、自動車の燃料消費量を減少させることが、現在の技術が直面する一般的な課題である。
【0007】
法人である本出願人名義の国際公開第2008/145277号パンフレットは、インフレーションガスに対して気密である層を備えたインフレート可能な物品を開示しており、インナーライナは、ポリスチレン及びポリイソブチレンブロックを含む少なくとも1つの共重合熱可塑性エラストマーと、ポリブテン油とを含むエラストマー組成物で構成されている。
【0008】
ブチルゴムと比較して、熱可塑性エラストマーは、その熱可塑性という性質に起因して、溶融(液体)状態のままでの加工が可能であり、その結果、単純化された処理の可能性を提供できるという顕著利点を有する。
【0009】
欧州特許出願公開第1987962(A1)号明細書は、熱可塑性エラストマー層及び熱可塑性エラストマー層とジエンエラストマーの層、例えば通常タイヤに用いられている天然ゴムを主成分とするカーカスプライの圧延物との密着又は付着を補強するようになった不飽和スチレンブロックコポリマーを含む接着層から成る積層物の気密層としての使用を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2008/145277号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第1987962(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、幾つかの転動応力下においては、TPSエラストマーを主成分とするこのような気密層の温度安定性は、特に高温且つ応力下においては不適切であることが分かる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨は、インフレーションガスに対して気密であるエラストマー層を備えたインフレート可能な物品において、気密エラストマー層は、ポリイソブチレンブロックを含む少なくとも1つのスチレン熱可塑性エラストマーを有する、インフレート可能物品において、気密エラストマー層は、ポリフェニレンエーテル(“PPE”)を更に含むことを特徴とするインフレート可能物品にある。
【0013】
法人である本出願人は、ポリフェニレンエーテルの存在により、気密エラストマー組成物の温度安定性、特に高温圧力下におけるそのクリープ強度を実質的に向上させることができるということを発見した。
【0014】
本発明の要旨のうちの1つによるインフレート可能物品の気密層は又、気密度が実質的に向上するという利点を提供する。
【0015】
本発明は、特に、ゴムで作られたインフレート可能な物品、例えばタイヤ又はインナーチューブ、特にタイヤ用のインナーチューブに関する。
【0016】
本発明は、特に、次のタイプ、即ち、乗用車、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)、二輪車(特にモーターサイクル)、航空機、例えば、バン、大型車両―即ち、坑内車両、バス、重量物運搬車両(ローリ、牽引車、トレーラ)又はオフロード車、例えば農業車両又は土木車両―又は他の輸送車両又は取扱い車両から選択された産業車両への装着が意図されたタイヤに関する。
【0017】
本発明及びその利点は、以下の説明及び具体的構成例に照らして、更にこれら例に関する単一の図から容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のタイヤの概略半径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
I.発明の詳細な説明
【0020】
本明細書において、別段の規定がなければ、表示された全ての百分率(%)は、重量%である。
【0021】
さらに、「a〜b」という表現によって示される数値の範囲は、aよりも大きく且つbよりも小さい数値の範囲を表し(即ち、端の値a及びbは含まれない)、これに対して、「aからbまで」という表現によって示される数値の範囲は、aからbまでの数値の範囲を意味している(即ち、極値a及びbを含む)。
【0022】
I‐1.気密エラストマー層
本発明のインフレート可能物品の気密エラストマー層は、上述した割合でポリイソブチレンブロックを含む少なくとも1つのスチレン熱可塑性エラストマー及びポリフェニレンエーテルを含むという本質的な特徴を有する。
【0023】
I‐1‐A.ポリイソブチレンブロックを含むスチレン熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマー(略して“TPE”は、熱可塑性ポリマーとエラストマーの中間の構造を有する。これら熱可塑性エラストマーは、軟質エラストマーブロック、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(エチレン/ブチレン)又はポリイソブチレンにより互いに結合された硬質熱可塑性ブロックで構成されている。これら熱可塑性エラストマーは、軟質セグメントにより互いに結合された2つの硬質セグメントを有するトリブロックエラストマーである場合が多い。硬質セグメント及び軟質セグメントは、直鎖構造であっても良く星型構造であっても良く分枝鎖構造であっても良い。これらのセグメント又はブロックの各々は、典型的には少なくとも5を超え、一般的には10を超える基本単位(構成単位)を有する(例えば、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマーについてスチレン構成単位とイソプレン構成単位)。
【0024】
本発明の要旨の熱可塑性エラストマーは、これがスチレン熱可塑性エラストマー(“TPS”)から選択されるという特徴を有する。スチレンモノマーは、本明細書においては、非置換又は置換スチレンを主成分とする任意のモノマーを意味するものと理解されるべきであり、置換スチレンの中で、例えばメチルスチレン(例えば、o‐メチルスチレン、m‐メチルスチレンまたはp‐メチルスチレン、α‐メチルスチレン、α,2‐ジメチルスチレン、α,4‐ジメチルスチレンまたはジフェニルエチレン)、ブチルスチレン(例えば、パラ‐t‐ブチルスチレン)、クロロスチレン(例えば、o‐クロロスチレン、m‐クロロスチレン、p‐クロロスチレン、2,4‐ジクロロスチレン、2,6‐ジクロロスチレン又は2,4,6‐トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(例えば、o‐ブロモスチレン、m‐ブロモスチレン、p‐ブロモスチレン、2,4‐ジブロモスチレン、2,6‐ジブロモスチレン又は2,4,6‐トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(例えば、o‐フルオロスチレン、m‐フルオロスチレン、p‐フルオロスチレン、2,4‐ジフルオロスチレン、2,6‐ジフルオロスチレン又は2,4,6‐トリフルオロスチレン)又はパラ‐ヒドロキシスチレンを挙げることができる。
【0025】
本発明のスチレン熱可塑性エラストマーは、ポリイソブチレンを主成分とするエラストマーブロック(略して“TPSI”)を含む。ポリイソブチレンを主成分とするエラストマーブロックは、イソブチレンホモポリマーだけでなくイソブチレンとイソプレンのコポリマー、更にこれらホモポリマー及びコポリマーのハロゲン化誘導体、特に一般に臭素化又は塩素化誘導体を意味するものと理解される。
【0026】
好ましくは、スチレン熱可塑性エラストマーは、ポリスチレン及びポリイソブチレンブロックを含むコポリマーである。このような定義は、少なくとも1つのポリスチレンブロック(即ち、1つ又は2つ以上のポリスチレンブロック)及び少なくとも1つのポリイソブチレンブロック(即ち、1つ又は2つ以上のポリイソブチレンブロック)を含み、このようなブロックと他のブロック(例えば、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンブロック)及び/又は他のモノマー構成単位(例えば、不飽和構成単位、例えばジエン構成単位)が関連している場合があり、又は関連していない場合のある任意の熱可塑性コポリマーを含むものと理解されるべきである。
【0027】
好ましくは、このようなブロックコポリマーは、スチレン/イソブチレンジブロックコポリマー(略して“SIB”)である。
【0028】
更により好ましくは、このようなブロックコポリマーは、スチレン/イソブチレン/スチレントリブロックコポリマー(略して“SIBS”)である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、スチレン熱可塑性エラストマー中のスチレン(非置換又は置換)の重量を基準とした含有量は、5〜50%である。指示した最小値を下回ると、エラストマーの熱可塑性が実質的に減少し、これに対し、推奨最大値を上回ると、気密層の弾性が悪影響を受ける場合がある。これらの理由で、スチレン含有量は、より好ましくは、10〜40%、特に15〜35%である。
【0030】
TPSIエラストマーのガラス転移温度(ASTM・D3418に準拠して測定されたTg)が−20℃未満、より好ましくは−40℃未満であることが好ましい。これら最小値よりも大きいTg値は、極めて低い温度での使用の際、気密層の性能を低下させる場合あり、このような使用に関し、TPSIエラストマーのTgは、より好ましくは、−50℃未満である。
【0031】
TPSIエラストマーの数平均分子量(Mnによって示される)は、好ましくは、30,000g/モル〜500,000g/モル、より好ましくは40,000g/モル〜400,000g/モルである。示される最小値を下回ると、TPEIの鎖相互間の凝集が、特にTPEIの希釈(エキステンダー油の存在において)の可能性があるので、悪影響を受ける恐れがあり、さらに、使用温度の増大は、機械的性質、特に耐破断性に悪影響を与える恐れがあり、その結果、「高温条件下」における性能の低下が生じる。さらに、分子量Mnが高すぎる場合、これは、気密層の柔軟性を損なう場合がある。50,000g/モルから300,000g/モルまでの範囲にある値が、特にタイヤ組成物中へのポリイソブチレンブロックを含む熱可塑性エラストマー、即ち、TPEIの使用に特に好適であることが判明した。
【0032】
TPSIの数平均分子量(Mn)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって既知の方法で求められる。サンプルを、あらかじめ濃度約1g/lのテトラヒドロフラン中に溶解させ、次に、その溶液を、注入前に多孔度が0.45μmのフィルタで濾過する。使用する装置は、“Waters Alliance ”クロマトグラフィーラインである。溶出溶媒は、テトラヒドロフランであり、その流量は、0.7ml/分であり、系の温度は、35°Cであり、分析時間は、90分である。商標名“Styragel”(“HMW7”、“HMW6E”及び2つの“HT6E”)を有する4つで1組の直列に配置された“Waters”カラムが用いられる。ポリマーサンプル溶液の注入量は、100μlである。検出器は、“Waters 2410 ”示差屈折計であり、クロマトグラフィーデータを利用するその関連ソフトウェアは、“Waters Millennium ”システムである。算出平均モル質量は、ポリスチレン規格で得られる較正曲線に準拠する。
【0033】
TPSIの多分散性指数PI (思い起こされるべきこととして、PI=Mw/Mn、Mwは、重量平均分子量である)は、好ましくは3よりも低く、より好ましくはPIは、2よりも低い。
【0034】
別のオプションとしてのエラストマーが気密層中に用いられる場合、スチレン熱可塑性エラストマーは、重量で主要なをなすエラストマーを構成し、この場合、スチレン熱可塑性エラストマーの含有量は、好ましくは、気密層中に存在する組み合わせ状態のエラストマーの好ましくは50重量%を超え、より好ましくは70質量%を超える。重量で見て少ない成分であるこのような追加のエラストマーは、例えば、ジエンエラストマー、例えば天然ゴム又は合成ポリイソプレン、ブチルゴム又はスチレン熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーであって良い。
【0035】
ポリイソブチレンブロックを含むスチレン熱可塑性エラストマーは、好ましくは、気密エラストマー層の唯一の成分としての熱可塑性エラストマーである。
【0036】
TPSIエラストマーは、例えばビーズ又は顆粒の形で利用可能な出発材料から始まって、押出又は成形によって従来どおり処理されるのが良い。
【0037】
TPSIエラストマーは、例えば、SIBS及びIBSに関して、カネカ(Kaneka)社により“Sibster ”の名称(例えば“Sibster 102T”、“Sibster 103T”又は“Sibster 073T”)で市販されている。これらTPSIエラストマーは、これらの合成法と共に、例えば欧州特許第731,112号明細書、米国特許第4,946,899号明細書、同第5,260,383号明細書に記載されている。これらTPSIエラストマーは、まず最初に生物医学的応用に開発され、次に、医療機器、自動車又は家庭用電化製品の部品、電気ワイヤの外装材、気密又は弾性部品として様々な状態でTPSIエラストマーに特有の種々の用途において記載されている(例えば、これについては例えば、欧州特許第1,431,343号明細書、同第1,561,783号明細書、同第1,566,405号明細書及び国際公開第2005/103146号パンフレットを参照されたい)。
【0038】
I‐1‐B.ポリフェニレンエーテル(PPE)
気密組成物は、上述TPSIエラストマーとの組み合わせで、少なくとも1つのポリフェニレンエーテル(略して“PPE”として示される)を有するという他の本質的な特徴を有する。
【0039】
PPEは、当業者には周知であり、このようなPPEは、周囲温度(23℃)では固体であり、スチレンポリマーと相溶性があり、特に、TPSエラストマーのTgを増大させるために用いられる(これについては、例えば、タッカー(Tucker)、バーロウ(Barlow)及びポール(Paul),「サーマル・メカニカル・アンド・モルフォロジカル・アナライシス・オブ・ポリ(2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンオキシド)/スチレン‐ブタジエン・ブレンド(Thermal, Mechanical and Morphological Analyses of Poly(2,6-dimethyl-1,4-phenylene oxide)/Styrene-Butadiene-Styrene Blends)」,マクロモレキュルス(macromolecules),1988年,21,1678‐1685を参照されたい)。
【0040】
好ましくは、ここで用いられるPPEは、150℃を超え、より好ましくは180℃を超えるガラス転移温度(以下、Tgと言う)を有する。その数平均分子量(Mn)に関し、これは、好ましくは、5,000〜100,000g/molである。
【0041】
数平均分子量(Mn)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって既知の方法で求められる。サンプルを、あらかじめ濃度約1g/lのテトラヒドロフラン中に溶解させ、次に、その溶液を、注入前に多孔度が0.45μmのフィルタで濾過する。使用する装置は、“Waters Alliance ”クロマトグラフィーラインである。溶出溶媒は、テトラヒドロフランであり、その流量は、0.7ml/分であり、系の温度は、35°Cであり、分析時間は、90分である。商標名“Styragel”(“HMW7”、“HMW6E”及び2つの“HT6E”)を有する4つで1組の直列に配置された“Waters”カラムが用いられる。ポリマーサンプル溶液の注入量は、100μlである。検出器は、“Waters 2410 ”示差屈折計であり、クロマトグラフィーデータを利用するその関連ソフトウェアは、“Waters Millennium ”システムである。算出平均モル質量は、ポリスチレン規格で得られる較正曲線に準拠する。
【0042】
特に、本発明の要旨の気密組成物中に用いることができるPPEポリマーの非限定的な例として、ポリ(2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジメチル‐コ‐2,3,6‐トリメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6‐トリメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジエチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐メチル‐6‐エチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐メチル‐6‐プロピル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ‐(2,6‐ジプロピル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐エチル‐6‐プロピル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジラウリル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジフェニル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐メトキシ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(1,6‐ジエトキシ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐メトキシ‐6‐エトキシ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐エチル‐6‐ステアリルオキシ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジクロロ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐メチル‐6‐フェニル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐エトキシ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐クロロ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジブロモ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(3‐ブロモ‐2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、これらそれぞれのコポリマー及びこれらホモポリマー又はコポリマーの配合物から成る群から選択されたPPEポリマーが挙げられる。
【0043】
特定の且つ好ましい実施形態によれば、用いられるPPEは、ポリ(2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)である。このような市販のPPEは、例えば、アサヒ・カセイ(Asahi Kasei)社から入手できる製品“Xyron S202”又はサビック(Sabic)社から入手できる“Noryl SA120”である。
【0044】
好ましくは、気密層中において、ポリマーPPEの量は、PPEの重量で表された含有量がポリイソブチレンブロックそれ自体を含むスチレン熱可塑性エラストマー中に存在するスチレンの重量で表された含有量の0.05〜5倍、より好ましくは0.1〜2倍であるように調節される。推奨される最小値を下回ると、PPEの存在の目に見えるほどの効果がなく、5倍を超えると、気密層の剛性の過度に大きな増大が観察される。
【0045】
これら全ての理由で、PPEの重量で表された含有量は、更により好ましくは、イソブチレンブロックを含むスチレン熱可塑性エラストマー中のスチレンの重量で表された含有量の0.2〜1.5倍である。
【0046】
I‐1‐C.エキステンダー油(増量油)
先のエラストマーは、これら自体、これらが用いられるインフレート可能物品に関して気密機能及び隣接のゴム層への付着性を満たすのに十分である。
【0047】
しかしながら、本発明の好ましい一実施態様によれば、上述のエラストマー組成物は、可塑剤として、エキステンダー(増量)油(又は可塑化油)を含み、その役割は、特に弾性率の低下及び粘着性の増大によって気密層の処理、特にインフレート可能物品中へのその混入を容易にするにある。
【0048】
好ましくは極性が弱くしかもエラストマー,特に熱可塑性エラストマーを増量させ又は可塑化することのできる任意のエキステンダー油を用いることができる。周囲温度(23°C)では、幾分なりとも粘性であるこれらの油は、本来固定である特に樹脂又はゴムとは対照的に、液体(即ち、繰り返し述べると、最終的に容器の形をとる能力を有する物質)である。
【0049】
好ましくは、エキステンダー油は、ポリオレフィン油(即ち、オレフィン、モノオレフィン又はジオレフィンの重合から得られるもの)、パラフィン系オイル、(低又は高粘度の)ナフテン油、芳香油、鉱油及びこれらの油の混合物からなる群より選ばれる。
【0050】
油の添加が、一般に認められているように、実際に、用いられる油の種類と量によって異なる場合のある気密性の或る程度の低下を代償にして行われていることが見受けられるが、気密性の低下を主として、特に板状充填剤の添加によって軽減することができる。
【0051】
好ましくは、ポリブテン油、特にポリイソブチレン(PIB)油が用いられ、これは、試験した他の油と比較して、特にパラフィンタイプの従来の油と比較して性質の最善の妥協点が見いだされることを実証した。
【0052】
ポリイソブチレン油の例としては、特にユニバール(Univar)社から品名“Dynapak Poly”(例えば“Dynapak Poly 190”)で、イネオス・オリゴマー(Ineos Oligomer)社から品名“Indopol H1200 ”で、ビーエーエスエフ(BASF)社から品名“Glissopal”(例えば“Glissopal 1000”)及び“Oppanol”(例えば、“Oppanol B12 ”)として市販され、パラフィン系オイルは、例えば、エクソン(Exxon)社から品名“Telura 618”として又はレプソル(Repsol)社から品名“Extensol 51”として市販されている。
【0053】
エキステンダー油の数平均分子量(Mn)は、好ましくは200g/モル〜35p000g/モル、より好ましくは300g/モル〜25,000g/モルである。分子量Mnが低すぎる場合、これは、組成物の外部への油の移動の恐れがあり、これに対して、分子量Mnが高すぎる場合、その結果として、この組成物が過度に剛性になる場合がある。350g/モル〜4000g/モル、特に400g/モル〜3000g/モルのMn値は、意図された用途に対して、特にタイヤへの使用に対して優れた妥協点なることが判明した。
【0054】
エキステンダー油の数平均分子量(Mn)は、SECによって求められ、サンプルを、あらかじめ濃度約1g/lのテトラヒドロフラン中に溶解させ、次に、その溶液を、注入前に多孔度が0.45μmのフィルタで濾過する。使用する装置は、“Waters Alliance ”クロマトグラフィーラインである。溶出溶媒は、テトラヒドロフランであり、その流量は、1ml/分であり、系の温度は、35°Cであり、分析時間は、30分である。品名“Styragel HT6E ”を有する2つで1組の“Waters”カラムが用いられる。ポリマーサンプル溶液の注入量は、100μlである。検出器は、“Waters 2410 ”示差屈折計であり、クロマトグラフィーデータを利用するその関連ソフトウェアは、“Waters Millennium ”システムである。算出平均モル質量は、ポリスチレン規格で得られる較正曲線に準拠する。
【0055】
当業者は、以下の説明及び実施態様を考慮して、エラストマー気密層の、特に、使用することが意図されるインフレート可能物品の特定の使用条件に従ってエキステンダー油の量を調整することができるであろう。
【0056】
エキステンダー油含有量が、5phrを超え、好ましくは5phr〜100phr(全エラストマー、即ち、エラストマー組成物又は層中に存在するブロックTPEIエラストマーにブチルゴムを加えたもの、例えばSIBS100部に対する重量部)であることが好ましい。
【0057】
示された最小値を下回ると、エキステンダー油の存在は、認識できない。推奨最大値を上回ると、組成物の凝集力不足及び検討対象の用途に応じて有害であり得る気密性の低下という恐れに見舞われる。
【0058】
これらの理由のために、特に空気入りタイヤの気密組成物の使用については、エキステンダー油含有量は、好ましくは10phrを超え、特に10phr〜130phr、更により好ましくは20phrを超え、特に20phr〜100phrである。
【0059】
I‐1‐D.板状充填剤
板状充填剤の使用により、有利には、透過性係数を低下させる(及び気密度を増大させる)ことができ、その場合、その弾性率を過度に増大させることはなく、それによりインフレート可能物品中への気密層の組み込みやすさを保持することができる。
【0060】
「板状」充填剤は、当業者には周知である。これら板状充填剤は、特に、ブチルゴムを主成分とする従来の気密層の透過性を減少させるためにタイヤに用いられている。これら板状充填剤は、一般に10〜15phrを超えない比較的低い含有量でこれらブチルを主成分とする層に用いられる(これについては、例えば米国特許出願公開第2004/0194863号明細書及び国際公開第2006/047509号パンフレットを参照されたい)。
【0061】
このような板状充填剤は、一般に、幾分かの顕著なアンイソメトリー(anisometry)を備えた状態で積み重ねられるプレート、ウェーハ、シート又はフレークの形態をしている。これらの形状比(F=L/E)は、一般に、3を超え、通常5を超え又は10を超え、Lは、長さ(又は最も長い寸法)を表し、Eは、これら板状充填剤の平均厚さを表し、これら手段は、平均された数値である。数十又は数百という高い形状比は、珍しくない。これら平均長さは、好ましくは、1μmを超え(このことは、これら板状充填剤は、この場合、マイクロメトリック(micrometric)板状充填剤と呼ばれることを意味している)、代表的には数μm(例えば、5μm)〜数百μm(例えば500又は800μm)である。
【0062】
好ましくは、本発明に従って用いられる板状充填剤は、黒鉛、板状シリケート(珪酸塩)及びこのような充填剤の混合物で構成された群から選択される。板状シリケートのうち、特に、クレー、タルク、マイカ、カオリンが挙げられ、これら板状シリケートは、場合によっては、例えば表面処理剤で改質され又は改質されず、このような改質板状シリケートの例としては、特に、酸化チタンで覆われたマイカ及び表面活性剤により改質されたクレー(「有機クレー(又はオルガノクレー)」)が挙げられる。
【0063】
好ましくは、表面エネルギーの小さい、即ち、比較的無極性の板状充填剤が用いられ、このような板状充填剤は、例えば、黒鉛、タルク、マイカ及びこのような充填剤の混合物から成る群から選択され、このような充填物は、改質される場合もあればそうでない場合もあり、板状充填剤は、より好ましくは、黒鉛、タルク及びこのような充填剤の混合物から成る群から選択される。黒鉛カテゴリーの中で、天然黒鉛及び合成黒鉛を用いることができる。
【0064】
マイカの例として、シーエムエムピー(CMMP)により市販されているマイカ(例えば、Mica-MU(登録商標)、Mica-Soft(登録商標)、Briomica(登録商標))、YAMAGUCHI によって市販されているマイカ(A51S、A41S、SYA−21R、A21S、SYA−41R)、バーミキュライト(特に、CMMPにより市販されているShawatec(登録商標)バーミキュライト又はダブリュ・アール・グレース(W.R. Grace)により市販されているMicrolite(登録商標)バーミキュライト)、改質又は処理済みマイカ(例えば、メルク(Merck)により市販されているIriodin(登録商標)シリーズ)が挙げられる。黒鉛の例として、ティムカル(Timcal)により市販されている黒鉛(Timrex(登録商標)シリーズ)が挙げられる。タルクの例として、ルゼナック(Luzenac)により市販されているタルクが挙げられる。
【0065】
上述の板状充填剤は、種々の含有量、エラストマー組成物の体積を基準として特に2〜30体積%、好ましくは3〜20体積%で使用されるのが良い。
【0066】
熱可塑性エラストマー組成物中への板状充填剤の導入は、種々の公知のプロセスに従って、例えば、溶液混合、密閉式混合機でのバルク混合又は押し出し混合によって実施されるのが良い。
【0067】
I‐1‐E.種々の添加剤
上述の気密層又は組成物は、当業者に知られている気密層中に通常存在する種々の添加剤を更に含むのが良い。例えば補強充填剤、例えばカーボンブラック又はシリカ、上述の板状充填剤以外の非補強又は不活性充填剤、有利には組成物を着色するために使用することができる着色剤、上述のエキステンダー油以外の可塑剤、粘着性樹脂、保護剤、例えば老化防止剤又はオゾン劣化防止剤、UV安定剤、種々の加工助剤若しくは他の安定剤又はインフレート可能物品の構造体の残部に対する付着性を促進することのできる促進剤が挙げられる。
【0068】
上述のエラストマー(TPEI、TPSI、TPNSI、ブチルゴム)に加えて、気密組成物は、常にブロックエラストマーに対して僅かな重量フラクションに従って、エラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーを更に含む場合がある。
【0069】
I‐2.タイヤ中への気密層の使用
上述のTPEIエラストマーを主成分とする組成物は、気密層として、任意のタイプのインフレート可能物品中に使用できる。このようなインフレート可能物品の例として、ゲーム又はスポーツに用いられる空気注入式ボート、バルーン又はボールを挙げることができる。
【0070】
上述の組成物は、インフレート可能物品、ゴムで作られた完成品又は半完成品、最適には自動車、例えば二輪車、乗用車又は産業車両用のタイヤに気密層(又は任意他のインフレーションガス、例えば、窒素に対して気密である層)として用いるのに特に好適である。
【0071】
このような気密層は、好ましくは、インフレート可能物品の内壁上に配置されるが、内部構造体中に完全に組み込まれてもよい。
【0072】
気密層の厚さは、好ましくは0.05mmを超え、より好ましくは0.1mm〜10mm(特に0.1mm〜1.0mmの間に)である。
【0073】
容易に理解されるように、特定の用途分野並びに使用時における寸法及び圧力に応じて、本発明の実施形態は、様々であって良く、気密層は、幾つかの好ましい厚さ範囲を有する。
【0074】
例えば、乗用車型タイヤの場合、少なくとも0.05mm、好ましくは0.1〜2mmの厚さを有するのが良い。別の例によれば、大型車両又は農業車両用のタイヤの場合、好ましい厚さは、1mm〜3mmであるのが良い。別の例によれば、土木工学分野の車両又は航空機用のタイヤの場合、好ましい厚さは、2mm〜10mmであるのが良い。
【0075】
国際公開第2008/145277(A1)号パンフレットに開示されている気密層と比較して、本発明の気密層は、以下の実施例の具体化で実証されるように少なくとも等しいガスに対する気密度を保持しながら隣接のジエン層への付着力の著しい向上を達成するという利点を有する。
【0076】
II.本発明の具体化の実施例
上述の気密層は、有利には、全ての形式の車両、特に乗用車又は産業車両、例えば大型車両用のタイヤに使用できる。
【0077】
一例を挙げると、単一の添付の図面は、本発明のタイヤの半径方向断面を極めて概略的に示している(特定の縮尺に合わせて記載されている訳ではない)。
【0078】
このタイヤ1は、クラウン補強材又はベルト6によって補強されたクラウン2、2つのサイドウォール3及び2つのビード4を有し、これらビード4の各々は、ビード細線5で補強されている。クラウン2の上にこの概略図には図示されていないトレッドが載っている。カーカス補強材7が各ビード4内の2本のビード細線5周りに巻かれ、この補強材7の上折り返し部又は巻き上げ部8は、例えば、タイヤ1の外側寄りに配置され、タイヤは、この場合、そのホイールリムに装着されている。カーカス補強材7は、それ自体知られるように、「ラジアル」ケーブル、例えば、テキスタイル(繊維)ケーブル又は金属ケーブルによって補強された少なくとも1枚のプライで構成され、即ち、これらケーブルは、事実上互いに平行に配置されると共に周方向平面(2つのビード4から見て中間距離のところに位置すると共にクラウン補強材6の中間を通るタイヤの回転軸線に垂直な平面)と80°〜90°の角度をなすよう一方のビードから他方のビードまで延びている。
【0079】
タイヤ1の内壁は、タイヤ1の内部キャビティ11の側から見て例えば厚さが約0.9mmに等しい厚さを備えた気密層10を有している。
【0080】
この内側層は、タイヤの内部壁全体を覆い、タイヤが装着位置にあるとき、一方のサイドウォールから他方のサイドウォール、少なくともリムフランジの高さ位置まで延びている。この内側層は、カーカス補強材をタイヤの内部空間11に源を発する空気の拡散から保護するようになったタイヤの半径方向内面を構成する。この内側層は、タイヤのインフレーション及び圧力下におけるタイヤの保守を可能にし、即ち、その気密特性は、圧力低下レベル比較的僅かな状態にすると共に通常の使用状態ではタイヤを十分な期間にわたって、通常は数週間又は数カ月にわたってインフレート状態に保つことができなければならない。
【0081】
ブチルゴムを主成分とする組成物を用いた従来型タイヤとは対照的に、本発明のタイヤは、この実施例では、気密層10、SIBSエラストマー(スチレン含有量が約15%、Tgが約−60℃、Mnが約90,000g/molの“Sibstar 102T”)及び例えばPIB油(例えば、Mnが2,100g/molの油“Indopol H1200”)で増量されたブチルゴム(エクソン・モービル(Exxon Mobile)社により市販されている“Butyl 365”)を含むエラストマー組成物及び更に板状充填剤(ヤマグチ(Yamaguchi)社から入手できる“SYA41R”)を用いている。
【0082】
特に欧州特許出願公開第2072219(A1)号明細書に記載されている装置を用いて気密層の層(スキム)を作ることができる。この装置は、押し出しツール、例えばツインスクリュー式押し出し機、ダイ、液体冷却浴及び可動レベル支持体を有する。
【0083】
上述した気密層10を備えたタイヤは、好ましくは、加硫(又は硬化)前又は後に製作される。
【0084】
第1の場合、(即ち、タイヤを硬化させる前)、気密層は、従来通り、層10の生成のための所望のスポットに単に被着される。次に、タイヤの加硫が従来通り実施される。
【0085】
当業者にとって有利な製造の変形形態では、例えば、第1段階の際、気密層を適当な厚さの層(スキム)の形態で成型ドラム上に平らに載せ、その後、このような層(スキム)を当業者に周知の製造方法に従ってタイヤの構造の残部で被覆する。
【0086】
第2の場合(即ち、タイヤを硬化させた後)、気密層を適当な手段、例えば接着、吹き付け又は適当な厚さのフィルムの押し出し及びブロー成形によって硬化済みタイヤの内部に被着される。
【0087】
II‐1.試験
気密エラストマー組成物の性質は、以下に示すように特徴付けられる。
【0088】
熱軟化温度を求めるための試験
以下の試験が組成物の軟化温度を特徴付けるために用いられる。
機器:ティーエー・インストルメンツ(TA Instruments)社により市販されている動的機械式分析装置(DMA Q800)
サンプル:円筒形のサンプル:これは、中空パンチを用いて作られ、厚さ2mmの場合に直径が平均13mmで測定される。
応力:サンプルホルダは、圧縮ジョーの形態をしており、この部品は、可動上側板(直径15mm)及び固定下側板(直径15mm)で構成され、サンプルをこれら2枚の板相互間に配置し、可動部品により、正確な1Nの正確な応力をサンプルに加え、セットアップをオーブン内に配置し、このようなオーブンにより、周囲温度から180℃まで3℃/分の温度勾配を生じさせることができ、その間、サンプルの応力を記録する。
解釈:結果は、温度の関数としてのサンプルの歪みを表す曲線の形態で提供され、軟化温度は、材料がその10%の厚さ分の減少を示す軟化温度と見なされる。
【0089】
熱機械クリープ下における破断温度を求める試験
この測定に用いられる原理及び実験条件は、上述のものとは異なっている。これは、熱機械的クリープ強度がこの場合、結果的にフィルムの破断(サンプルの破断温度)を結果的にもたらす試験体のクリープの温度の測定によって評価されるからである。
機器:ティーエー・インストルメンツ社により市販されている動的機械式分析装置(DMA Q800)
サンプル:これは、幅4mm、厚さ0.5mmのフィルムの形態で提供される。
応力:サンプルホルダは、2つのジョーで構成され、これら2つのジョーは、サンプルの端部を把持し、ジョー相互間の距離は、12〜13mmであり、上側ジョーは、可動であり、これに対し、下側ジョーは固定されている。上側ジョーにより、正確な1Nの正確な応力をサンプルに加え、セットアップをオーブン内に配置し、このようなオーブンにより、周囲温度から180℃まで3℃/分の温度勾配を生じさせることができ、その間、サンプルの応力を記録する。
解釈:結果は、温度の関数としての歪みの曲線の形態で提供されており、サンプルが一定の力を受けると、その応力は、その軟化中、かなり変化し、このクリープ現象は、材料の破断を進め、この理由で、破損が生じる温度は、材料の温度安定性の指標として選択される。
【0090】
気密度試験
この分析のため、オーブン(この場合、60℃の温度)内に配置され、相対圧力センサ(0〜6バールの範囲に較正されている)を備えると共にインフレーション弁付きの鞍に連結された剛性壁浸透計を用いた。浸透計は、円盤形態(例えば、この場合、直径65mm)をしていて、最高で1.5mmまでの範囲であるのが良い一様な厚さ(この場合、0.5mm)の標準型試験体を受け入れることができる。圧力計をナショナル・インストロメンツ(National Instruments)データ収集カード(0〜10Vアナログ4チャンネル収集)に連結し、この収集カードは、0.5Hzの周波数(2秒ごとに1ポイント)で連続収集を実施するコンピュータに接続されている。透過性係数(K)を線形回帰線から測定し、この線形回帰線は、システムの標準化後、即ち、圧力が時間の関数として直線的に減少する安定した条件の達成後に、時間の関数として試験された試験体中の圧力の低下勾配αを与える。
【0091】
II‐2.試験
II‐2‐A.最初の試験
SIBSを主成分とする気密エラストマー組成物(Sibstar 102Tは、スチレンの重量で15%を占める)の軟化温度は、ポリ(2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)を追加した場合と追加しない場合で表1に比較されている。
【表1】

表1
1:用いられる板状充填剤の密度ρ=2.85g/cm3
【0092】
この表は、SIBSのスチレン含有量に対して50重量%のXyron(登録商標)S202Aを用いることにより、軟化温度が15%向上し、温度安定性を向上させることができるということを示している。
【0093】
II‐2‐B.2回目の試験
SIBSを主成分とする空気調合物(102T)のクリープ下における破断温度によって評価された温度安定性をXyron(登録商標)S202Aを追加した場合と追加しない場合で表2に比較されている。
【表2】

表2
【0094】
表2は、SIBSのスチレン含有量に対する50重量%のXyron(登録商標)S202A及び次に200重量%のXyron(登録商標)S202Aの調合物への追加により、熱機械クリープ強度が著しく向上し、この向上は、導入量の増大と比例することを明らかに示している。
【0095】
II‐2‐C.気密度試験
SIBSを主成分とする気密組成物に対する気密度試験(試験体の透過性指数Kの測定)の結果が表3に記載されている。
【表3】

表3
【0096】
SIBS(C1)のスチレン含有量に対する50重量%のXyron(登録商標)S202Aの導入により、充填剤を含む調合物の気密度を著しく向上させることができる。
【0097】
注目されるべきこととして、板状充填剤が存在しない場合、ポリ(2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)(C2)も又、組成物基準2に対して気密度を向上させている。
【0098】
ポリ(2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)を含むSIBSを主成分とするエラストマー組成物の気密度性能のこの向上は、全く予期しなかったものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレーションガスに対して気密であるエラストマー層を備えたインフレート可能な物品において、前記気密エラストマー層は、ポリイソブチレンブロックを含む少なくとも1つのスチレン熱可塑性エラストマーを有する、インフレート可能物品において、前記気密エラストマー層は、ポリフェニレンエーテル(“PPE”)を更に含む、インフレート可能物品。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテルは、150℃を超え、好ましくは180℃を超えるガラス転移温度を有する、請求項1記載のインフレート可能物品。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテルは、ポリ(2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジメチル‐コ‐2,3,6‐トリメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6‐トリメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジエチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐メチル‐6‐エチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐メチル‐6‐プロピル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ‐(2,6‐ジプロピル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐エチル‐6‐プロピル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジラウリル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジフェニル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐メトキシ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(1,6‐ジエトキシ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐メトキシ‐6‐エトキシ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐エチル‐6‐ステアリルオキシ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジクロロ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐メチル‐6‐フェニル‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐エトキシ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2‐クロロ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(2,6‐ジブロモ‐1,4‐フェニレンエーテル)、ポリ(3‐ブロモ‐2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)、これらそれぞれのコポリマー及びこれらホモポリマー又はコポリマーの配合物から成る群から選択される、請求項2記載のインフレート可能物品。
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテルは、ポリ(2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンエーテル)である、請求項3記載のインフレート可能物品。
【請求項5】
ポリイソブチレンブロックを含む前記スチレン熱可塑性エラストマーのスチレンモノマーは、スチレン、メチルスチレン、パラ‐(t‐ブチル)スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン及びパラ‐ヒドロキシスチレンから成る群から選択される、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のインフレート可能物品。
【請求項6】
ポリイソブチレンブロックを含む前記スチレン熱可塑性エラストマーは、スチレン/イソブチレンジブロックコポリマー(“SIB”)及びスチレン/イソブチレン/スチレントリブロックコポリマー(“SIBS”)から成る群から選択される、請求項5記載のインフレート可能物品。
【請求項7】
ポリイソブチレンブロックを含む前記スチレン熱可塑性エラストマーは、スチレン/イソブチレン/スチレン(“SIBS”)である、請求項6記載のインフレート可能物品。
【請求項8】
ポリイソブチレンブロックを含む前記スチレン熱可塑性エラストマーは、前記気密層のエラストマー全てに対して重量で主要な含有量を占める、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のインフレート可能物品。
【請求項9】
ポリイソブチレンブロックを含む前記スチレン熱可塑性エラストマーは、前記気密層の唯一のエラストマーである、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のインフレート可能物品。
【請求項10】
ポリフェニレンエーテルの重量で表された含有量は、前記スチレン熱可塑性エラストマー中に存在するスチレンの重量で表された含有量の0.05〜5倍である、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のインフレート可能物品。
【請求項11】
ポリフェニレンエーテルの重量で表された含有量は、前記スチレン熱可塑性エラストマー中に存在するスチレンの重量で表された含有量の0.05〜5倍である、請求項10記載のインフレート可能物品。
【請求項12】
前記気密層は、5〜150phrの含有量でエキステンダー油を更に含む、請求項1〜11のうちいずれか一に記載のインフレート可能物品。
【請求項13】
前記エキステンダー油は、ポリブチレン、好ましくはポリイソブチレンである、請求項12記載のインフレート可能物品。
【請求項14】
前記気密層は、好ましくは、2体積%〜30体積%の含有量で板状充填剤を更に含む、請求項1〜13のうちいずれか一に記載のインフレート可能物品。
【請求項15】
前記物品は、ゴムで作られている、請求項1〜14のうちいずれか一に記載のインフレート可能物品。
【請求項16】
ゴムで作られている前記物品は、タイヤである、請求項15記載のインフレート可能物品。
【請求項17】
前記インフレート可能物品は、インナーチューブである、請求項15記載のインフレート可能物品。
【請求項18】
前記インナーチューブは、タイヤのインナーチューブである、請求項17記載のインフレート可能物品。

【公表番号】特表2013−515801(P2013−515801A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545297(P2012−545297)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070406
【国際公開番号】WO2011/076802
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】