説明

スチレン系熱収縮性フィルム

【課題】フィルムの厚みを薄くしても取り扱い性に優れ、装着トラブル等の少ないスチレン系熱収縮性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】スチレンーブタジエンブロック共重合体を含む表面層(A)及び裏面層(C)と、スチレンーブタジエンブロック共重合体70〜90重量%とスチレン単独重合体10〜30重量%とからなる中間層(B)が、(A)/(B)/(C)の順に積層されたことを特徴とするスチレン系熱収縮性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトル等の容器に用いる収縮ラベルとして好適な熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルム、特に、スチレン系収縮性フィルムはラベル装着時の仕上がりが綺麗であることやミシン目カット性に優れラベルが剥がしやすいことなどからペットボトル用の熱収縮性ラベルとして、広く使用されている。
【0003】
近年、ペットボトル飲料業界では廃棄物の減量を目的として、ペットボトルの軽量化やラベルの薄膜化が進められている。しかしながら、スチレン系収縮性フィルムはポリエステル系収縮性フィルムに比べて、柔らかく剛性が低いことから、膜厚を薄くすると取り扱い性が悪くなり、ペットボトルへのラベル装着がスムーズに行われず、トラブルとなるなど問題を抱えていた。
【0004】
このような状況の中、薄膜化と他の特性のバランスを目的とした発明が提案されているが、未だ充分とはいえない。
【特許文献1】特開2004−26917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、フィルムの厚みを薄くしても取り扱い性に優れ、装着トラブル等の少ないスチレン系熱収縮性フィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スチレンーブタジエンブロック共重合体を含む表面層(A)及び裏面層(C)と、スチレンーブタジエンブロック共重合体70〜90重量%とスチレン単独重合体10〜30重量%とからなる中間層(B)が、(A)/(B)/(C)の順に積層されたスチレン系熱収縮性フィルムを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記表面層(A)及び裏面層(C)を構成するスチレンーブタジエンブロック共重合体が、スチレン75〜90重量%及びブタジエン10〜25重量%からなる共重合体であるスチレン系熱収縮性フィルムを提供する。
【0008】
また、本発明は、前記中間層(B)を構成するスチレンーブタジエンブロック共重合体が、スチレン70〜85重量%及びブタジエン15〜30重量%からなる共重合体であるスチレン系熱収縮性フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスチレン系熱収縮性フィルムは、フィルム剛性が高いことから、薄膜化しても取り扱い性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のスチレン系熱収縮性フィルムは、スチレンーブタジエンブロック共重合体を含む表面層(A)及び裏面層(C)とし、スチレンーブタジエンブロック共重合体70〜90重量%とスチレン単独重合体10〜30重量%とからなる中間層(B)とを、(A)/(B)/(C)の順に積層している。
【0011】
以下、詳細に説明する。
【0012】
本発明で用いられるスチレンーブタジエンブロック共重合体は、スチレンブロックとブタジエンブロックを有している。またその他に、スチレンとブタジエンのランダムブロックやテーパードブロックを有していてもかまわない。
【0013】
本発明で用いられるスチレンーブタジエンブロック共重合体のスチレンとブタジエンの重量比は、表面層(A)、裏面層(C)と中間層(B)とでは異なる。
【0014】
表面層(A)又は裏面層(C)を構成するスチレンーブタジエンブロック共重合体のスチレンとブタジエンの重量比は、スチレン75〜90重量%、ブタジエン10〜25重量%が好ましく、さらにスチレン80〜85重量%、ブタジエン15〜20重量%が好ましい。スチレンの含有量が90重量%を超えるとフィルム伸度の低下、更には印刷時においてフィルムが白化しやすくなり好ましくない。またスチレンの含有量が75重量%より少ないと求めるフィルム剛性が得られない、製造上フィルム厚みの精度が出し難くなり好ましくない
【0015】
表面層(A)又は裏面層(C)を構成するスチレンーブタジエンブロック共重合体のMFR(温度200℃、荷重49.03N)は、2.0〜9.0g/10分、好ましくは3.0〜8.0g/10分である。
【0016】
また表面層(A)又は裏面層(C)は、適宜アンチブロッキング剤や帯電防止剤を添加することができる。
【0017】
中間層(B)を構成するスチレンーブタジエンブロック共重合体のスチレンとブタジエンの重量比は、スチレン70〜85重量%、ブタジエン15〜30重量%が好ましく、さらにスチレン75〜80重量%、ブタジエン20〜25重量%が好ましい。スチレンの含有量が85重量%を超えるとフィルム伸度が低下し好ましくない。またスチレンの含有量が70重量%より少ないと求めるフィルム剛性が得られず好ましくない。
【0018】
中間層を構成するスチレンーブタジエンブロック共重合体のMFR(温度200℃、荷重49.03N)は、3.0〜9.5g/10分、好ましくは4.0〜9.0g/10分である。
【0019】
本発明の中間層(B)は、さらにスチレン単独重合体を含んでいる。
【0020】
本発明で用いられるスチレン単独重合体のMFR(温度200℃、荷重49.03N)は、5.0〜11.0g/10分、好ましくは6.0〜10.0g/10分である。スチレンーブタジエンブロック共重合体とのMFRの差が、0〜3.0であることが好ましい。MFRの差がこの範囲であると、スチレン単独重合体がスチレンーブタジエンブロック共重合体中に均一に分散し、透明性の低下が少なく好ましい。
【0021】
中間層(B)を構成するスチレンーブタジエンブロック共重合体とスチレン単独重合体の重量比は、スチレンーブタジエンブロック共重合体70〜90重量%、スチレン単独重合体10〜30重量%であることが好ましい。スチレン単独重合体の含有量が10重量%より少ないとフィルムの剛性を高める効果が少なく好ましくない。また、スチレン単独重合体の含有量が30重量%を超えるとフィルムの透明性や熱収縮性が低下し好ましくない。
【0022】
本発明におけるスチレン系熱収縮性フィルムの総厚みは30〜50μmであることが好ましく、さらに35〜45μmであることが好ましい。また、表面層(A)、中間層(B)及び裏面層(C)の各層の厚み比率は、1/1/1〜1/15/1であるのが好ましく、さらに1/5/1〜1/10/1であるのが好ましい。
【0023】
スチレン系熱収縮性フィルムの厚みの具体例としては、スチレン系熱収縮性フィルムの総厚みが30〜50μmとすると、表面層(A)の厚みは、1.5〜15μm、好ましくは2〜7μmである。中間層(B)の厚みは、10〜40μm、好ましくは20〜38μmである。裏面層(C)の厚みは、1.5〜15μm、好ましくは2〜7μmである。
【0024】
3層構成のスチレン系熱収縮性フィルムは、上記の表面層(A)、裏面層(C)及び中間層(B)を構成する樹脂を多層共押出成形して製造する。具体的には、スチレンーブタジエンブロック共重合体とアンチブロッキング剤からなる樹脂組成物を表面層(A)用樹脂及び裏面層(C)用樹脂、スチレンーブタジエンブロック共重合体とスチレン単独重合体とからなる樹脂組成物を中間層(B)用樹脂とし、(A)/(B)/(C)の順で多層共押出成形し、その後テンター延伸することにより製造される。
【0025】
上記した表面層(A)用樹脂、中間層(B)用樹脂及び裏面層(C)用樹脂をそれぞれこの順でバレル温度130〜220℃のスクリュー式押出機に供給し、ダイス温度170〜220℃で多層Tダイからフィルム状に押出し、これを20〜60℃の冷却ロ−ルに通しながら一旦冷却固化させる。次いで、設定温度70〜110℃の加熱ロールでシートを加熱し、延伸倍率1.1〜1.8倍で縦延伸した後、テンター内にて予熱温度110〜120℃、延伸温度80〜100℃で3〜8倍に横延伸し、同テンター内にて固定温度80〜110℃で熱処理し、巻き取り機にて巻き取ることによりスチレン系熱収縮性フィルムは製造される。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明を、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
スチレンーブタジエンブロック共重合体(スチレン84重量%、ブタジエン16重量%、MFR;5.6g/10分)を表面層(A)及び裏面層(C)用樹脂とし、スチレンーブタジエンブロック共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%、MFR;6.2g/10分)85重量%とスチレン単独重合体(MFR;8.0g/10分)15重量%をブレンドした樹脂組成物を中間層(B)用樹脂として、それぞれ150〜200℃に調整した押出機に投入し、3層(A/B/C)構成となるよう、200℃のTダイスからシート状に押出し、表面温度が40℃の引き取りロールにより冷却固化させ引き取った後、設定温度90℃の加熱ロールで加熱した後、延伸倍率1.5倍に縦延伸し、予熱ゾーン115℃、延伸ゾーン95℃のテンター内にて5.5倍に横延伸した後、同テンター内にて90℃で熱処理した後、巻き取り機にて巻き取り総厚み40μmのスチレン系熱収縮性フィルムを得た。
得られたフィルムから採取した試料を用いて、圧縮強度の測定、透明性(ヘイズ)の測定及び熱収縮率の測定を行った。結果は表2に示した。
【0028】
(実施例2)
中間層(B)用樹脂として、スチレンーブタジエンブロック共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%、MFR;6.2g/10分)80重量%とスチレン単独重合体(MFR;8.0g/10分)20重量%をブレンドした樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして総厚み40μmのスチレン系熱収縮性フィルムを得た。
得られたフィルムから採取した試料を用いて、圧縮強度の測定、透明性(ヘイズ)の測定及び熱収縮率の測定を行った。結果は表2に示した。
【0029】
(実施例3)
中間層(B)用樹脂として、スチレンーブタジエンブロック共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%、MFR;6.2g/10分)75重量%とスチレン単独重合体(MFR;8.0g/10分)25重量%をブレンドした樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして総厚み40μmのスチレン系熱収縮性フィルムを得た。
得られたフィルムから採取した試料を用いて、圧縮強度の測定、透明性(ヘイズ)の測定及び熱収縮率の測定を行った。結果は表2に示した。
【0030】
(実施例4)
スチレンーブタジエンブロック共重合体(スチレン80重量%、ブタジエン20重量%、MFR;8.0g/10分)を表面層(A)及び裏面層(C)用樹脂とし、スチレンーブタジエンブロック共重合体(スチレン75重量%、ブタジエン25重量%、MFR;7.4g/10分)80重量%とスチレン単独重合体(MFR;7.5g/10分)20重量%をブレンドした樹脂組成物を中間層(B)用樹脂として、それぞれ150〜200℃に調整した押出機に投入し、3層(A/B/C)構成となるよう、200℃のTダイスからシート状に押出し、表面温度が40℃の引き取りロールにより冷却固化させ引き取った後、設定温度90℃の加熱ロールで加熱した後、延伸倍率1.5倍に縦延伸し、予熱ゾーン115℃、延伸ゾーン95℃のテンター内にて5.5倍に横延伸した後、同テンター内にて90℃で熱処理した後、巻き取り機にて巻き取り総厚み40μmのスチレン系熱収縮性フィルムを得た。
得られたフィルムから採取した試料を用いて、圧縮強度の測定、透明性(ヘイズ)の測定及び熱収縮率の測定を行った。結果は表2に示した。
【0031】
(比較例1)
中間層(B)用樹脂として、スチレンーブタジエンブロック共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%、MFR;6.2g/10分)95重量%とスチレン単独重合体(MFR;8.0g/10分)5重量%をブレンドした樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして総厚み40μmのスチレン系熱収縮性フィルムを得た。
得られたフィルムから採取した試料を用いて、圧縮強度の測定、透明性(ヘイズ)の測定及び熱収縮率の測定を行った。結果は表2に示した。
【0032】
(比較例2)
中間層(B)用樹脂として、スチレンーブタジエンブロック共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%、MFR;6.2g/10分)65重量%とスチレン単独重合体(MFR;8.0g/10分)35重量%をブレンドした樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして総厚み40μmのスチレン系熱収縮性フィルムを得た。
得られたフィルムから採取した試料を用いて、圧縮強度の測定、透明性(ヘイズ)の測定及び熱収縮率の測定を行った。結果は表2に示した。
【0033】
(比較例3)
スチレンーブタジエンブロック共重合体(スチレン70重量%、ブタジエン30重量%、MFR;10.8g/10分)を表面層(A)及び裏面層(C)用樹脂とし、スチレンーブタジエンブロック共重合体(スチレン65重量%、ブタジエン35重量%、MFR;9.5g/10分)80重量%とスチレン単独重合体(MFR;4.0g/10分)20重量%をブレンドした樹脂組成物を中間層(B)用樹脂として、それぞれ150〜200℃に調整した押出機に投入し、3層(A/B/C)構成となるよう、200℃のTダイスからシート状に押出し、表面温度が40℃の引き取りロールにより冷却固化させ引き取った後、設定温度90℃の加熱ロールで加熱した後、延伸倍率1.5倍に縦延伸し、予熱ゾーン115℃、延伸ゾーン95℃のテンター内にて5.5倍に横延伸した後、同テンター内にて90℃で熱処理した後、巻き取り機にて巻き取り総厚み40μmのスチレン系熱収縮性フィルムを得た。
得られたフィルムから採取した試料を用いて、圧縮強度の測定、透明性(ヘイズ)の測定及び熱収縮率の測定を行った。結果は表2に示した。
【0034】
各測定は、以下の方法で測定した。
(1)圧縮強度測定
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたスチレン系熱収縮性フィルムについて、JIS P 8126に準拠した方法で圧縮強度を測定した。具体的には以下の方法を用いた。
得られた熱収縮性多層フィルムを長さ152.4mm、幅12.7mmの短冊状にカットし、予め作製した支持具に円筒状にセットした後、支持具をリングクラッシュテスタ(東洋精機製作所社製、型式D)の架台に乗せ、測定を行った。測定は縦方向(フィルムの流れ方向)の圧縮強度のみで行い、n=5としその平均値を値とした。圧縮強度は5N以上を良好とした。
【0035】
(2)透明性測定
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたスチレン系熱収縮性フィルムの任意の場所から縦50mm×横50mm(フィルムの流れ方向を縦、幅方向を横としてサンプルを切り出した)の大きさに測定用サンプルを切り出し、日本電色工業株式会社製NDH2000にセットし、ASTM D−1003に準拠し、ヘイズを測定した。ヘイズは6%以下を良好とした。
【0036】
(3)熱収縮率測定
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたスチレン系熱収縮性フィルムの任意の場所から縦100mm×横100mm(フィルムの流れ方向を縦、幅方向を横としてサンプルを切り出した)の大きさに測定用サンプルを切り出し、80℃の温水浴に10秒間浸漬した後、サンプルの寸法を測定した。処理前の寸法から処理後の寸法を引いた値を熱収縮率とした。横方向(フィルムの幅方向、主収縮方向)のみを測定した。熱収縮率は30%以上を良好とした。
【0037】

【0038】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンーブタジエンブロック共重合体を含む表面層(A)及び裏面層(C)と、スチレンーブタジエンブロック共重合体70〜90重量%とスチレン単独重合体10〜30重量%とからなる中間層(B)が、(A)/(B)/(C)の順に積層されたことを特徴とするスチレン系熱収縮性フィルム。
【請求項2】
前記表面層(A)及び裏面層(C)を構成するスチレンーブタジエンブロック共重合体が、スチレン75〜90重量%及びブタジエン10〜25重量%からなる共重合体であることを特徴とする請求項1記載のスチレン系熱収縮性フィルム。
【請求項3】
前記中間層(B)を構成するスチレンーブタジエンブロック共重合体が、スチレン70〜85重量%及びブタジエン15〜30重量%からなる共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載のスチレン系熱収縮性フィルム。

【公開番号】特開2009−214365(P2009−214365A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59063(P2008−59063)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】