説明

スティック付きピザの製造方法

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
この発明は、スティックを有するピザを効率よく製造することができるスティック付きピザの製造方法に関するものである。
(従来の技術)
周知のように、ピザは、上面にソースを塗布するとともに、ピーマン、オニオンなどの副資材を載せ、さらにチーズを載せてオーブンなどで加熱して調理しており、一般にこれを手で掴んで食している。
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、ソースやチーズは加熱により流れやすくなり、手を汚しやすいという問題点があった。
このため、ピザを食べ歩きできる商品として販売したいという要望があったが、従来のピザはこの要請に応えることができなかった。
このような要望に沿うため、本願出願人は、ピザにスティックを挿入することを考えたが、焼成した後のピザにスティックを挿入しても、スティックとピザとの付着力が弱く、スティックが抜けやすいという問題点があり、また作業が面倒であるという問題点がある。
この発明は、上記問題点を解決することを基本的な目的とし、スティックが抜けにくいように確実に挿入されているピザを効率よく製造できるスティック付きピザの製造方法を提供するものである。
(課題を解決するための手段)
上記目的を解決するため、本願発明のうち第1の発明のスティック付きピザの製造方法は、第1醗酵を終えたシート状のピザ生地上に、スティックを所定間隔で配置し、このピザ生地上に、さらにピザ生地を重ね合せて積層ピザ生地とし、この積層ピザを第2醗酵させた後、焼成し、次いで、スティック付きの状態で分割して切断することを特徴とするものである。
また、第2の発明は、第1醗酵を終えたシート状のピザ生地を重ね合せて積層ピザ生地とし、この積層ピザ生地を第2醗酵させた後、焼成するに際し、焼成の前または後に、層間へスティックを挿入するとともに、前記積層ピザ生地を切断することを特徴とするものである。
前記ピザ生地は小麦粉、食塩などを用いた、常法により得られるピザ用の生地であり、所望により、乳化剤や生地改良剤(モルト、ビタンミンCなど)が混合されたものである。
この配合を例示すると、小麦粉を100重量%とした場合に、食塩0.5〜3重量%、砂糖1〜10重量%、油脂0.5〜10重量%、膨脹剤0〜1重量%、イースト1〜5重量%、水37〜63重量%となる。但し、これはあくまで例示であり、本願発明がこの配合のピザ生地に限定されるものではない。
このピザ生地を用いた第1醗酵では、ピザクラストとして要求される醗酵状態に達っしない状態で醗酵を行ない、後述する第2醗酵と合せて所望の醗酵状態が得られるようにする。
この第1醗酵を終えたピザ生地上には、所望の形状を有するスティックを配置する。
その形状は特に限定されないが、スティック付きピザが得られた際に、スティックがピザ内で回転しないように、偏平なものが望ましい。また、スティックの先端は、台形のように先端側を小幅とすることにより、層間に挿入する際にピザ生地を傷めにくいという効果がある。
また、スティック間の間隔は後述するピザの切断幅などにより適宜定める。
このピザ生地上に、さらにピザ生地を重ね合せて積層ピザ生地を得る。この重ね合せは別シートのピザ生地を重ねる他に、ピザ生地を二つ折にして行うことも可能である。
上記重ね合せに際しては、重ね合せ面のうち少なくともスティックの配置面に液分を付着させておくのが望ましい。この液分の付着は、ピザ生地でも、スティック表面でもよく、また、両方に付着させることも可能である。上記液分としては、水分やソースなどを用いる。
なお、ピザ生地を重ね合わせた後には、所望により、積層ピザ生地をローラ等で押圧してピザ生地を互いに付着させ、さらにスティックの付着力を増大させることも可能である。
この積層ピザ生地は、その後に第2醗酵を行い、前記した第1醗酵と合せてピザクラストとして要求される醗酵を状態を得るようにする。
この第2醗酵を終えたピザ生地を、所望程度に焼成する。この焼成は、焼成品の後の取扱いによりその程度が異なるように行なう。すなわち、焼成品を最終のピザとして食する場合には、十分に焼成するものとする。また、焼成品をその後、流通させたり、保存する場合には、食する際に再加熱することを考慮して焼成しておく。例えば、オーブンによる加熱やマイクロ波により再加熱を行なう。
この積層ピザ生地を、それぞれ少なくとも1本のスティックを有する状態で分割切断する。
切断は、切断片に少くとも1本のスティックが存在するように行なうものとし、切断形状も任意である。
さらに、この切断は、ピザ生地が焼成により十分に暖かい状態で行うのが望ましい。暖かい状態で切断することにより、切断断面が付着し、1個1個のまとまり感が得られる。これに対しピザ生地が冷えた状態で切断すると、チーズなどの付着がない切断断面が明瞭に現われ、外観形状が良好ではないという欠点がある。
また、スティックを、第2醗酵後の焼成の後に、積層したピザ生地の層間に挿入する場合には、ピザ生地が十分に暖かい間に行うのが望ましい。これは、暖かい間に挿入することによりスティックとピザ生地とが粘着して、良好な付着力が得られるからである。また、スティックの挿入はピザ生地の切断前に行なうことが可能であることはもちろんであるが、ピザ生地を切断した後に行なうことも可能である。
(作用)
すなわち、この発明のうち第1の発明によれば、第1醗酵の後に、配置されるスティックは、ピザ生地で挟まれた状態となり、第2醗酵によるピザ生地の膨脹により、上下のピザ生地により強く挟持される。
なお、重ね合せ面のうち少なくともスティックの配置面に液分を付着させておけば、スティックとピザ生地内面とが粘着して、スティックの抜けがより有効に防止される。
この際に、重ね合せ面の内面全面に液分を付着させるよりは、上述したように選択的に付着させるのが望ましい(液分が多くなると、ねとつき感がでて食感が劣るためである。)。
この積層ピザ生地を焼成することにより、スティックとピザ生地との付着力はさらに増大する。
この焼成品を、スティック付きの状態で分割切断することによりスティック付きのピザが簡単に得られる。
また、スティックを第2醗酵の後、焼成の前または後に層間に挿入すれば、比較的挿入が容易であるとともに、スティックの抜けも有効に防止される。
(実施例1)
以下に、この発明の一実施例を添附図面に基づき説明する。
第1に、以下の配合物を混捏する。


この混捏では、上記配合物を一度にミキサーに入れて混合するほか、ミキサーで混合中に、油脂、食塩を中途添加することも可能である。
なお、この混捏では、低速3分、中速3分で混合し、その捏上温は28℃とした。
次いで、得られたピザ生地は、28℃で、5〜60分間の第1醗酵を行う。この第1醗酵済みのピザ生地は分割し、またはそのままの状態で、冷凍または氷温で保管する。
次いで、放冷などにより解凍した後に、シーティングにより整形する。
または冷凍工程を経ずに、第1醗酵を終えたピザ生地をシーティングにより整形する。
具体的には、上記シーティングでは、ピザ生地を、厚さ1.5mm、幅21cmのシート状ピザ生地1に整形する。
このシート状のピザ生地1上に、扁平なスティック2を所定間隔で配置する。なお、スティック2は、シート状ピザ生地1の幅の1/2に達しないように配置されている。このシート状ピザ生地1の表面にソース3を塗布し、1/2幅で折返し、積層ピザ生地4を得る。
次いで、積層ピザ生地4の表面に多数の穴(図示しない)を設け、さらにその表面にソースを塗って、チーズその他の副資材4a(ピーマン、オニオン、サラミなど)を載せ、その上面に油を散布する(表面乾燥防止のため)。
この積層ピザ生地4は、必要に応じ(天板の長さなどに合せ)、適当な長さに切断して、天板(図示しない)上に配置する。次いで、醗酵室5内に置き、湿度80%、温度38℃で10〜30分のホイロをとり、第2醗酵を行った。
醗酵後の積層ピザ生地4は、釜6内で、210〜270℃の温度で5〜10分の焼成を行った。
この焼成は、得られた積層ピザ7の再加熱の必要性などにより、その温度や時間を調整する。すなわち、オーブンなどにより再度焼成する場合には、焼成の程度は低くてもよい。しかし、マイクロ波で加熱する場合には、ねとつき感がないように、十分に焼成しておく(水分を飛ばす)。
上記の焼成により得られた積層ピザ7は、釜6から取り出して、それぞれにスティック2を有する状態で分割切断する。
得られたスティック付きピザ8は、十分に焼成を行ったものでは、そのまま食することもできるが、その他の場合には、スティック付きピザ8を十分に放冷し、箱詰めなどして冷凍保存する。保存または流通させた後、使用する際には、前記冷凍ピザ(図示しない)を解凍し、オーブンや電子レンジで加熱して食する。この加熱は、前記焼成の状態にもよるが、一般的には、オーブンによる場合は、180〜220℃で4〜6分間加熱する。また、電子レンジによる場合には例えば1000Wで20〜50秒の加熱を行う。
得られたスティック付きのピザは、スティックが強固にピザに付着しており、抜けにくく、また、ピザも美味であった。
(実施例2)
以下に、他の実施例を説明する。
前記実施例1と同様にして、第1醗酵を終えたシート状のピザ生地を得て、それぞれのピザ生地を重ね合せて積層ピザ生地を得る。
この積層ピザ生地は、前記実施例と同様にその表面にソースの塗布、チーズその他の副資材の載置を行い、その後に第2醗酵を行う。この積層ピザ生地の層間にスティックを所定間隔で挿入し、実施例1と同様に焼成を行う。
得られた焼成ピザはスティック付きの状態で分割切断し、そのまま食したり、冷凍により保存、流通させ、再加熱により食する。
また、スティックの挿入は、前記焼成の前ではなく、後に行うことも可能である。但し、スティックの付着性を増すために、その挿入は、ピザ生地が焼成により暖かい間に行うのがよい。
なお、上記した実施例では、分割切断後のスティック付きのピザは、方形状となったが、その形状は特に限定されるものではなく、第2図(A)に示されるように三角形状のピザ8aとすることもできる。但し、その形状は、シート状のピザ生地から無駄なく得られる形状が望ましい。
また、チーズなどの副資材は、前記した実施例では、積層ピザ生地の表面に載置したが、ピザ生地の重ね合せの際に第2図(B)、第2図(C)に示されるように、ピザ生地10、10間にこの副資材11を挟み込んだものであってもよい。
(発明の効果)
以上説明したようにこの発明のスティック付きピザの製造方法によれば、第1醗酵を終えたシート状のピザ生地上に、スティックを所定間隔で配置し、このピザ生地上に、さらにピザ生地を重ね合せて積層ピザ生地とし、この積層ピザ生地を第2醗酵させた後、焼成し、次いで、スティック付きの状態で分割切断するので、スティックが強固に付着したピザが効率よく得られるという効果がある。
ピザ生地の重ね合せ前に、重ね合せ面のうち少なくともスティックの配置面に液分を付着させれば、スティックの付着力をより増大させる効果がある。
また、第2の発明によれば、第1醗酵を終えたシート状のピザ生地を重ね合せて積層ピザ生地とし、この積層ピザ生地を第2醗酵させた後、焼成するに際し、焼成の前または後に、層間へスティックを挿入するとともに、前記積層ピザ生地を切断するので、スティックを容易にピザ生地に挿入でき、作業効率が良好であり、挿入したスティックもピザに強固に付着するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例の工程を示す工程図、第2図R>図(A)〜(C)は得られたスティック付きピザの変更例を示す斜視図である。
1……シート状のピザ生地
2……スティック
4……積層ピザ生地
7……積層ピザ
8……スティック付きピザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】第1醗酵を終えたシート状のピザ生地上に、スティックを所定間隔で配置し、このピザ生地上に、さらにピザ生地を重ね合せて積層ピザ生地とし、この積層ピザ生地を第2醗酵させた後、焼成し、次いで、スティック付きの状態で分割切断することを特徴とするスティック付きピザの製造方法
【請求項2】ピザ生地の重ね合せ前に、重ね合せ面のうち少なくともスティックの配置面に液分を付着させることを特徴とする請求項1記載のスティック付きピザの製造方法
【請求項3】第1醗酵を終えたシート状のピザ生地を重ね合せて積層ピザ生地とし、この積層ピザ生地を第2醗酵させた後、焼成するに際し、焼成の前または後に、層間へスティックを挿入するとともに、前記積層ピザ生地を切断することを特徴とするスティック付きピザの製造方法

【第2図】
image rotate


【第1図】
image rotate