説明

ステッピングモータ装置、用紙搬送装置、および、画像形成装置

【課題】複数のステッピングモータの回転軸が連結物で連結されて、その回転方向が規制されている場合においても、それぞれのモータを個別にホールドできるステッピングモータ装置を提供する。
【解決手段】ステッピングモータ装置は、一対のステッピングモータと、一対のステッピングモータを連結して同一方向に回転させるベルト33とを含む。一対のステッピングモータの一方のモータ軸27cは、ベルト33によって回転されるとき、時計方向にのみに回転するよう、ワンウエイクラッチ35によって連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステッピングモータ装置、用紙搬送装置、および、画像形成装置に関し、特に、複数のステッピングモータの回転方向が制約されているステッピングモータ装置、それを用いた用紙搬送装置、および、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機のような画像形成装置において、原稿や印刷用紙等の用紙を搬送する用紙搬送装置の駆動にステッピングモータを用いている。図7はステッピングモータの概略構成を示す図である。図7を参照して、ステッピングモータ50は、相互に対向した4つのステータ(電磁石)51と、ステータ51の内部に設けられ、ステータ51に発生する磁界に応じて回転するロータ(永久磁石)52とを含む。ロータ52の中心はモータ軸53に接続されている。ステッピングモータ50は、パルス状の電圧を連続して印加し、ステータ51とロータ52の位置関係を切り替えることによりモータ軸53を回転させる。ステッピングモータは、モータの構造上、ステータ51とロータ52の位置関係がずれた状態でパルス状の電圧をいきなり印可すると、意図した位置にロータ52が移動できず、起動時に脱調という現象が発生する。
【0003】
このような脱調現象を引き起こさせないために、ステータ51とロータ52の位置関係合わせるように一定時間直流励磁(ホールド)を行い、位置関係を合わせる制御が従来行なわれている。このような制御は、たとえば、特開2001−292597号公報(特許文献1)や、特開2002−366002号公報(特許文献2)や、特開2002−366001号公報(特許文献3)に開示されている。
【特許文献1】特開2001−292597号公報(要約)
【特許文献2】特開2002−366002号公報(要約)
【特許文献3】特開2002−366001号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の、ステッピングモータの起動時の脱調を防ぐ方法は上記のように行なわれていた。従来の例では、1つの駆動列に対して、駆動源として1個のモータで構成されており、任意の回転方向に一定時間直流励磁(以下、「ホールド」という)を行うので問題ないが、2個以上のモータ軸が各々独立した駆動列にて構成された装置において、ユーザの操作性を向上させるため、ベルト等の連結物にてこれらが連結されている場合には、同方向に一定時間直流励磁ホールドをさせようとしても、連結物が干渉となり、意図した動作ができないという問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、複数のステッピングモータのモータ軸が連結物で連結されて、その回転方向が規制されている場合においても、それぞれのモータを個別にホールド処理できるステッピングモータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るステッピングモータ装置は、一対のステッピングモータと、一対のステッピングモータを連結して同一方向に回転させる連結手段とを含む。一対のステッピングモータの一方は、連結手段によって回転されるとき、一方向にのみに回転するよう連結手段に連結されている。
【0007】
好ましくは、一対のステッピングモータを脱調防止のために、ステッピングモータを構成するステータとロータとの位置関係を合わせるためのホールドを行うホールド手段をさらに含む。
【0008】
さらに好ましくは、ホールド手段は、連結手段を作動させて、一方向にのみ一対のステッピングモータを回転させて一方のステッピングモータのホールドを行い、その後、連結手段を用いて他方のステッピングモータを回転させ、他方のステッピングモータのホールドを行なう。
【0009】
ホールド手段は他方のステッピングモータのホールドを行なうまで、一方のステッピングモータのホールド状態を維持するのが好ましい。
【0010】
この発明の他の局面においては、用紙搬送装置は上記のステッピングモータ装置を用いている。
【0011】
この発明のさらに他の局面においては、画像形成装置は、上記の用紙搬送装置を有する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、一対のステッピングモータの一方は、連結手段によって回転されるとき、一方向にのみに回転するよう連結手段に連結されている。したがって、一方のステッピングモータのロータを一定時間直流励磁するホールドを行なったのち、他方のステッピングモータのロータを逆方向に回転させてホールドを行なっても、一方のステッピングモータのホールド位置は変化しない。
【0013】
その結果、複数のステッピングモータのロータが連結物で連結されている場合においても、それぞれのモータを個別にホールドできるステッピングモータ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1はこの発明の一実施の形態にかかるステッピングモータ装置をデジタル複合機の用紙搬送装置に適応した場合のデジタル複合機の構成を示すブロック図である。ここでは、原稿送り装置14を用紙搬送装置としている。
【0015】
図1を参照して、デジタル複合機10は、デジタル複合機10全体を制御する制御部11と、画像データ等の書き込みや読出しを行うためのDRAM12と、デジタル複合機10の有する情報を表示する表示画面を含み、デジタル複合機10におけるユーザとのインターフェースとなる操作部13と、原稿を搬送し、その搬送された原稿を読取り位置でスキャナで読取る画像読取り部15を含む原稿送り装置14と、画像読取り部15で読取られた原稿等から画像を形成し、用紙に出力する画像形成部16と、画像データ等を格納するハードディスク(HD)17と、公衆回線20に接続されるFAX通信部18と、ネットワーク21と接続するためのネットワークIF(インターフェース)部19とを備える。
【0016】
原稿送り装置14は、原稿を搬送するための複数のステッピングモータ26〜28と、ステッピングモータ26〜28をホールドするホールド装置(ホールド手段)30とからなるステッピングモータ装置31を含む。
【0017】
デジタル複合機10は、画像読取り部15により読取られた原稿の画像データを用いて、DRAM12を介して画像形成部16において画像を形成することにより、複写機として作動する。また、デジタル複合機10は、ネットワークIF部19を通じて、ネットワーク21に接続されたパソコン22から送信された画像データを用いて、DRAM12を介して画像形成部16において画像を形成することにより、プリンターとして作動する。さらに、デジタル複合機10は、FAX通信部18を通じて、公衆回線20から送信された画像データを用いて、DRAM12を介して画像形成部16において画像を形成することにより、また、画像読取り部15により読取られた原稿の画像データを、FAX通信部18を通じて公衆回線20に画像データを送信することにより、ファクシミリ装置として作動する。すなわち、デジタル複合機10は、画像処理に関し、複写(コピー)機能、プリンター機能、FAX機能等、複数の機能を有する。さらに、各機能に対しても、さらに詳細に設定可能な機能を有する。
【0018】
なお、図1において、太線の矢印は画像データの流れを示しており、細線の矢印は制御信号または制御データの流れを示している。
【0019】
制御部11は、画像読取り部15から与えられる原稿の画像データをDRAM12に圧縮符号化して書き込み、DRAM12に書き込んだデータを読出し、伸張復号化して画像形成部16により出力する。
【0020】
図2は、原稿送り装置14の詳細を示す図である。図2中の実線の矢印は、原稿の一方面を読取るときの搬送方向を示し、点線の矢印は他方面を読取るときの搬送方向を示している。図1〜図2を参照して、原稿送り装置14は、搬送する原稿をセットする原稿トレイ25と、原稿トレイ25にセットされた原稿を1枚ずつ給紙して、所定の箇所まで原稿を搬送する給紙ローラ26aと、給紙ローラ26aにより所定の箇所まで搬送された原稿を搬送する搬送ローラ27aと、搬送ローラ27aにより搬送された原稿の画像を読取り位置15aにて読取る画像読取り部15と、画像読取り部15の読取り位置15aにて読取られた原稿を反転のために保持する反転ローラ28aと、反転ローラ28aを介して反転された原稿を読取った後で原稿を排出する排出ローラ29aと、排出ローラ29aにより排出された原稿を載置する排出トレイ32とを備える。反転ローラ28aおよび排出ローラ29aにはそれぞれアイドルロール28b,29bが当接し、各ローラ間に挟まれて原稿が搬送される。給紙ローラ26aおよび搬送ローラ27aはそれぞれ給紙モータ26および搬送モータ27によって駆動される。反転ローラ28aと排出ローラ29aとは同じ反転モータ28によって駆動される。反転モータ28は排出ローラ29aのモータ軸に取り付けられて排出ローラ29aを回転させ、反転ローラ28aと排出ローラ29aとは相互に逆方向に回転するように構成されている。
【0021】
これらのモータ26〜28は全てパルス駆動で正転/逆転を制御するステッピングモータである。原稿が実線で示す方向に搬送されるときは、給紙ローラ26a、搬送ローラ27a、および、反転ローラ28aはそれぞれ実線で示す方向に回転され、原稿が点線で示す方向に搬送されるときには、反転ローラ28aは点線で示す方向に回転される。
【0022】
図3は図2で示した原稿送り装置14において、原稿詰まりが発生した状態を示す図である。搬送ローラ27aと反転ローラ28aとに噛みこんだ状態を図中点線で示し、搬送ローラ27aと排出ローラ29aとに噛みこんだ状態を図中一点鎖線で示す。それぞれのモータでの駆動列は搬送モータ27による搬送駆動と、反転モータ28による反転・排出駆動である。搬送駆動と反転・排出駆動はそれぞれ独立したモータ27,28で構成されているため基本的に個別に回転させる必要がある。しかしながら、このような原稿が噛み込んでジャムした状態においては、図3に示すように、搬送ローラ27aが時計方向に回転すると、反転ローラ28aは反時計方向に回転し、排出ローラ29aは時計方向に回転する仕組みを設けることにより、噛みこんだ原稿を容易に取出すことができるようにしている。
【0023】
図4はこの仕組みを説明するための図である。図4を参照して、この実施の形態においては、搬送ローラ27aを回転させる搬送モータ27の駆動部27bと反転モータのモータ軸29cとはベルト33で連結されている。したがって、ベルト33は連結手段として作動する。ベルト33がそれぞれのローラに所定の巻付け角で巻付くようにアイドルローラ34を設けている。このようにすれば、搬送ローラ27aと反転モータ28によって駆動される排出ローラ29aとは同一方向に回転し、反転ローラ28aとは逆方向に回転するため、ベルト33を図示のない作動部を作動させていずれかの方向に回転させることによって噛み込んだ原稿を容易に排除可能になる。
【0024】
次に、搬送モータ27と反転モータ28との起動時において、ホールド装置30が行なうホールドについて説明する。ここでは、搬送モータ27と反転モータ28との駆動力の関係は次の通りとする。
【0025】
反転・排出駆動力(反転モータ28による)<搬送駆動力(搬送モータ27による)
この場合、まず、搬送モータ27のロータ(図7の52)を調整してホールドを行なう。その後、反転モータ28のホールドを行おうとしても、ベルト33によって搬送モータ27と連結されているため、ロータを所望の位置へ移動できない。そこで、この実施の形態においては、図4に示すように搬送モータ27の駆動部27bと搬送モータ27の駆動軸27cとは図4において搬送モータ27の駆動軸27cが時計方向にのみ回転可能なワンウエイクラッチ35を介して接続している。このような構成とすることによって、図5に示すように、搬送モータ27と反転モータ28とは時計方向には同時に回転可能であるが、反時計方向には搬送モータ27は回転することなく(図中×で示す)、反転モータ28のみが回転可能になり、ホールドが可能になる。
【0026】
次に反転モータ28と搬送モータ27とのホールドについて説明する。図6はホールドのタイミングチャートである。ここで、REMはREMOTE信号の略であり、立上りでホールド処理をオンし、立下りで処理を終了する。CLOCKはロータを回転させるパルス信号であり、_CW/CCWは時計方向か反時計方向かを示す信号であり、下向きが時計方向を示す。モータ軸挙動はロータの回転移動を示す。
【0027】
図6を参照して、この例では、まず、搬送モータ27についてロータを少しずつ時計方向に回転させ、所定の位置に位置決めする。ここでは、3パルスで所定の位置に位置決めしている。その状態を保持したまま、次に、反転モータ28について同様の処理を行う。ここでは、搬送モータ27と反転モータ28とはベルト33で連結されているが、搬送モータ27の駆動軸はワンウエイクラッチ35を介してベルト33に接続されているため、搬送モータ27についてロータのホールドを行なった後に、逆方向にベルト33を回転させて反転モータ28のロータについてホールドを行っても、搬送モータ27のロータについては移動しない。その結果、原稿詰まりに対して容易に対処可能でありながら、確実に一定時間直流励磁するホールドが可能になり、ステッピングモータの起動時の脱調を防止できるステッピングモータ装置を提供できる。
【0028】
なお、ここでは、3回の短時間励磁を行う例について説明したが、これに限らず、1回の励磁でもよいし、3回以外でもよい。
【0029】
また、パルスを入力する時の回転方向は、一定方向でなく、反転モータでは、反時計方向、時計方向、反時計方向の順に、搬送モータについては、時計方向、反時計方向、時計方向の順としてもよい。
【0030】
なお、上記実施の形態においては、用紙搬送装置として、原稿送り装置に設けられた相互に連結された逆方向に回転するステッピングモータについて説明したが、これに限らず、この発明は、回転方向にかかわらず、給紙装置に設けられた複数のステッピングモータに適用してもよい。
【0031】
上記実施の形態においては、搬送ローラの駆動部と反転モータの駆動軸とを一体して回転させるためにベルトを用いた例について説明したが、これに限らず、任意のもので連結してもよい。
【0032】
また、連結部材で連結された2つのモータの一方のみを回転させ、他方を回転させない構成とするために、ワンウエイクラッチを用いた例について説明したが、これに限らず、一方向のみの回転を許容する任意の構成を採用してもよい。
【0033】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の一実施形態に係るステッピングモータ装置を有する原稿送り装置を備えるデジタル複合機の構成を示すブロック図である。
【図2】原稿送り装置の要部を示す図である。
【図3】原稿送り装置において原稿が噛み込んだ状態を示す図である。
【図4】搬送モータと反転モータとを連結した状態を示す図である。
【図5】搬送モータと反転モータとを連結した状態を示す図である。
【図6】ホールド処理を示すタイミングチャートである。
【図7】ステッピングモータの要部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 デジタル複合機、11 制御部、12 DRAM、13 操作部、14 原稿送り装置、15 画像読み取り部、16 画像形成部、17 ハードディスク、18 FAX通信部、19 ネットワークIF部、25 原稿トレイ、26 給紙モータ、27 搬送モータ、28 反転モータ、33 ベルト、35 ワンウエラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のステッピングモータと、
前記一対のステッピングモータを連結して同一方向に回転させる連結手段と、
前記一対のステッピングモータの一方は、前記連結手段によって回転されるとき、一方向にのみに回転するよう、前記連結手段に連結されている、ステッピングモータ装置。
【請求項2】
前記一対のステッピングモータを脱調防止のために、ステッピングモータを構成するステータとロータとの位置関係を合わせるためのホールドを行うホールド手段をさらに含む、請求項1に記載のステッピングモータ装置。
【請求項3】
前記ホールド手段は、前記連結手段を作動させて、一方向にのみ前記一対のステッピングモータを回転させて一方のステッピングモータのホールドを行い、
その後、前記連結手段を用いて他方のステッピングモータを回転させ、他方のステッピングモータのホールドを行なう、請求項2に記載のステッピングモータ装置。
【請求項4】
前記ホールド手段は、他方のステッピングモータのホールドを行なうまで、一方のステッピングモータのホールドを維持する、請求項2または3に記載のステッピングモータ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のステッピングモータ装置を用いた用紙搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の用紙搬送装置を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−11595(P2010−11595A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166239(P2008−166239)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】