説明

ステム加速等温核酸増幅技術

本発明は、核酸増幅の分野にある。特に、試験試料の迅速かつ特異的な増幅を向上させるステムプライマーを利用する方法について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、その完全な内容が本明細書に参照により組み込まれる、2009年6月15日出願の英国特許出願第GB0910302.9号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、核酸増幅の分野に関する。特に、試験試料の迅速かつ特異的な増幅および検出を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
核酸増幅技術(NAAT)は、研究および診断の多くの領域において非常に有益で、強力なツールである。NAAT技法によって、高い感度および特異性で試料中の核酸を検出および定量すること、ならびに試料中の核酸を定量分析することが可能である。
【0004】
核酸増幅は、特定のNAATを実施した後の増幅産物の存在によって示される、試料中の特定の鋳型核酸の存在を決定するために使用することができる。逆に、増幅産物が存在しないことは、試料中に鋳型核酸が存在しないことを示す。このような技法は、診断用途において、例えば、病原体が試料中に存在するかどうかを決定するために、非常に重要である。
【0005】
先行技術は、核酸を増幅するための様々な熱サイクリング技法および等温技法を記載している。熱サイクリング技法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、温度サイクリングを使用してDNA合成の反復サイクルを行わせ、鋳型DNAの元の量と比例した大量の新規DNAの合成をもたらす。増幅反応を行わせるのに熱サイクリングに頼らない等温技法もいくつか開発されている。鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを利用する等温技法は、RNA合成工程を含まない増幅反応のために開発された。同様に、RNA合成工程を含む増幅反応のために、逆転写酵素、RNアーゼHおよび/またはDNA依存性RNAポリメラーゼを使用しうる等温技法が開発された(例えば、Nucleic Acid Isothermal Amplification Technologies-A Review. Nucleosides, Nucleotides and Nucleic Acids, Volume 27,Issue 3 March 2008,pages 224-243を参照されたい)。
【0006】
使用した増幅技術によって生成したポリ核酸は、総称してアンプリコンと呼ばれる。生成したアンプリコンの性質は、実施したNAATによって大きく異なる。例えば、PCRなどのNAATは、大きさおよび配列が実質的に同一なアンプリコンを生成することができる。他のNAATは、非常に様々な大きさのアンプリコンを生成し、このアンプリコンは様々な数の反復配列から構成され、したがって様々な長さのコンカテマーの集合体である。このようなコンカテマー由来の反復配列は、実施されているアッセイの対象であるポリ核酸の配列を反映する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
NAATが、多くの分野、例えば、診断用途において極めて重要であるので、速度、感度および特異性の向上したNAATを提供することが当技術分野では引き続き必要である。本発明は、この目標を達成するために、簡単で、対費用効果の高い方法を提供する。さらに、本発明は、本発明の方法によって実現される速度の増加が、特定のNAATのためのプライマー設計を不十分なものにする配列に依存した問題によって引き起こされる増幅速度の減少を相殺することができるという利点を有する。このような速度増加によってさらに、増幅速度を高めるための費用の高い代替手段を回避することができるので、特定のNAATに基づいたアッセイの費用を低減することができる。
【0008】
(好ましい具体例の詳細な記載)
本発明は、ポリ核酸の改善された増幅方法を提供する。したがって、一実施形態では、本発明は、ポリ核酸を合成する方法であって、
a)少なくとも第1および第2の相互(reciprocal)プライマー結合領域を含む標的鋳型を提供する工程、
b)第1および第2のセグメントを含む第1のプライマーを提供する工程であって、第1のセグメントが鋳型上の第1の相互プライマー結合領域と実質的に相補的であり、第2のセグメントがループを形成することができるように、第2のセグメントが、第1のプライマーの別の領域または第1のプライマーの第1のセグメントから生成したアンプリコン中の領域に実質的に相補的な配列を含む、工程、
c)第1のセグメントを含み第2のセグメントを含んでもよい第2のプライマーを提供する工程であって、第1のセグメントが鋳型上の第2のプライマー結合領域に実質的に相補的であり、第2の領域がループを形成することができるように、含まれてもよい第2のセグメントが第2のプライマー中の別の領域または第2のプライマーの第1のセグメントから生成したアンプリコン中の領域に実質的に相補的な配列を含む、工程、
d)第1および第2の相互プライマー結合領域の間の領域に結合することができる少なくとも1個のプライマーを提供する工程、
e)ポリ核酸の合成を実施するために必要な試薬および条件を提供する工程、
f)ポリ核酸の合成を実施する工程
を含む方法を提供する。
【0009】
本発明の基礎となっている原理は、1個または複数の「ステムプライマー(stem primer)」、すなわち、フォワードおよびリバース相互プライマー結合領域の間の領域に結合するプライマーを提供することにより、ある種のNAATの速度および感度を著しく高めるということが驚くべきことに見出されたことである。
【0010】
「フォワード相互プライマー結合部位」および「リバース相互プライマー結合部位」とは、フォワードおよびリバース相互プライマーが結合する鋳型DNAおよび/またはアンプリコン上の領域を意味する。本明細書で使用した「相互プライマー」または「複数の相互プライマー」という用語は、増幅中に指数関数的に増幅する元の鋳型ポリヌクレオチドの領域を区切るように作用する2個以上のプライマーのことである(図1aおよび1b)。いくつかの実施形態では、さらなるプライマーがフォワード相互プライマーおよび/またはリバース相互プライマーの5’領域に結合してもよい。このようなさらなるプライマーを使用する場合、フォワード相互プライマー結合部位および/またはリバース相互プライマー結合部位は、これらのさらなるプライマーの結合領域ならびに相互プライマー自体の結合領域を包含してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、この方法は、フォワードおよび/またはリバース相互プライマー結合領域の5’にある領域に結合する1個または複数のさらなるプライマーを使用してもよい。このような方法は、例えば、「置換プライマー」または「外部プライマー(outer primer)」の使用を開示しているWO0028082において開示された。
【0011】
WO0028082は、ループ形成プライマー(loop forming primer)(LFP)の使用について記載しており、LFPは第1および第2のセグメントを含むものと理解されており、第1のセグメントは、鋳型上のプライマー結合領域に実質的に相補的であり、第2のセグメントは、第2のセグメントがループを形成することができるように第1のプライマーの第1のセグメントから生成したアンプリコン中の領域に実質的に相補的な配列を含んでおり、WO0028082は、NAATはLFPに加えて2個の「外部プライマー」を使用すると述べている。これらのプライマーの特徴は、「第1の外部プライマー」が鋳型中の「F2」部位の3’に結合し(すなわち、第1の外部プライマーは「F3」部位に結合する、図14b)、「第2の外部プライマー」が第2のLFPの結合領域「R2c」部位の3’に結合する(すなわち第2の外部プライマーは「R3c」部位に結合する、図14b)ことである。したがって、これらのプライマーは、LFPのプライマー結合部位の5’に存在するアンプリコンのステム領域(stem region)には結合しない。
【0012】
フォワード相互プライマー結合領域とリバース相互プライマー結合領域の間の領域は、アンプリコンの一部を形成することは保証されているが、それ自体は通常プライマー結合部位を提供しない領域である。この領域は、本明細書では、アンプリコンの「ステム領域」と呼ばれる。ステム領域に結合するプライマーは、本明細書では「ステムプライマー」と呼ばれる(図1c、図2a〜2e)。ステムプライマーは、ステム領域に結合するプライマーと定義することができる。ステムプライマーはさらに、フォワード鎖上のフォワード相互プライマー結合領域の3’領域およびリバース鎖上のリバース相互プライマー結合部位の3’に結合するプライマーと定義してもよい。相互プライマー結合部位およびステムプライマーの結合部位は、有意に重複していないものと理解される。相互プライマー結合部位およびステムプライマーの結合部位は、全く重複していないことが好ましい。
【0013】
重複したプライマー結合領域に関して「有意に」とは、プライマー結合部位が10ヌクレオチド未満、9ヌクレオチド未満、8ヌクレオチド未満、7ヌクレオチド未満、6ヌクレオチド未満、5ヌクレオチド未満、4ヌクレオチド未満、3ヌクレオチド未満、2ヌクレオチド未満または1ヌクレオチド未満重複していることを意味する。プライマー結合領域が全く重複していないことが好ましい。ステムプライマーはさらにまた、フォワード鎖上のフォワード相互プライマー結合領域の3’領域およびリバース鎖上のリバース相互プライマー結合部位の3’に結合するプライマーと定義することができるが、このプライマー結合領域は、特定のNAATによって使用されたプライマー、特にLFPの直接的な結果として生成したいかなる分子内二次構造とも実質的に重複しない(図1d)。
【0014】
驚くべきことに、ステムプライマーを使用すると増幅速度が著しく増加することが見出された。これによって、例えば、診断試験が短期間に試験結果を出すことができ、診断試験の利用者にとって一般に価値あるものとなり、明らかに有利である。迅速な増幅の他の利点は、偽陽性結果の可能性が減少し、したがって試験の特異性を高めることができることである。本発明者らの経験上、鎖置換ポリメラーゼを使用するNAATは、増幅に必要な時間が長くなればなるほど、ますます非特異的増幅が起こりやすくなった。したがって、より迅速な増幅はまた、より正確な結果をもたらすことができる。
【0015】
ステムプライマーは、より迅速な増幅を提供するだけでなく、少なくとも2つのさらなる重要な利点をもたらす。第1に、NAAT、例えば、以下により詳細に論じるループ媒介等温増幅(Loop−mediated Isothermal Amplification)(LAMP)、鋳型リプライミング増幅(Template Re−priming Amplification)(TRA)、自己伸長増幅(Self Extending Amplification)(SEA)およびSMart増幅方法(SMAP)の増幅速度を増加させるためにステムプライマーを使用することにより、より迅速な増幅を実現するための費用の高い代替物、例えば、より多くのポリメラーゼまたはより多くのdNTPの使用が避けられる。例えば、2009年の価格では、LAMP反応においてBst DNAポリメラーゼの量を倍にするとアッセイの費用は60%増加し、dNTPを倍にするとアッセイの費用は20%増加するが、プライマーは一般的にあまり高価ではないので、2種類のステムプライマーを追加してもアッセイの費用の増加はわずか4%である。
【0016】
第2に、ステムプライマーは、所定の標的鋳型のプライマー選択においてすぐれた適応性を提供する。例えば、核酸配列の変動が大きい病原体の特定のファミリーを検出するために、該病原体ファミリーゲノムの最も少ない配列変動を示す領域にプライマーを設計する。しかし、これには、1個または複数のプライマーを非最適部位に配置する必要性があり得る。これは、以下に論じるLAMPなどのNAATで特に問題となる可能性があり、ある特定の方法において最大6個の異なるプライマーの位置が受け入れられる必要がある。ステムプライマーは、NAATで使用した他のプライマーとは非常に異なる位置に配置することができるので、通常では使用が困難であろう特定の標的鋳型中のステムプライマーの結合部位を使用することができる。
【0017】
実際に、通常、ステムプライマーを使用することによって、LAMP(またはSMAP)法で使用される他のプライマーを省くことが可能である。例えば、特定の標的鋳型では、いわゆる「置換プライマー」(すなわち、図14b、cおよびeにおける位置R3およびF3を占めるプライマー)の1つに最適な結合部位を見出すことは困難であり、結果として試験の性能に悪影響が及ぶことが分かる。しかし、標的鋳型上に利用可能な適切なステムプライマー結合部位があれば、ステムプライマーを添加することによって、置換プライマーの欠如による性能不足を補うように作用することができる(図19)。この原理は、LAMPまたはSMAPで使用した特定の他のプライマーにも同様に適用することができる。
【0018】
本発明の方法は、NAATがコンカテマーの形成を引き起こすならば、いかなるNAATでも実施することができる。本明細書で使用した「コンカテマー」という用語は、1本鎖において交互に連結した、実質的に類似のヌクレオチド配列を有するポリ核酸を意味する。これらの整列した配列は、互いの単純な反復、逆方向反復またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0019】
コンカテマーの生成に適したNAATは、当技術分野では周知で、一般的に「等温」増幅技法を含む。これは、既知の熱サイクリング技法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応とは対照的に、ポリ核酸の増幅にインキュベーション温度の変化を必要としないことを意味する。
【0020】
いくつかの等温増幅技法、例えば、核酸配列をベースにした増幅(NASBA;US5409818)および転写媒介増幅(TMA;US5399491)は、増幅方法の一部として転写に依存しており、一方で、他のものは、例えば、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA;WO2004027025)およびレコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA;WO03072805)はそれぞれ、ヘリカーゼまたはレコンビナーゼの作用に依存しており、さらに他に、例えば、鎖置換増幅(SDA;US5455166)、ループ媒介等温増幅(LAMP;WO0028082、WO0134790、WO0224902)、キメラ置換反応(RDC;WO9794126)、Rolling Circle増幅(RCA;Lizardi,P.M.et al.Nature Genetics,(1998)19.225-231)、核酸の等温キメラ増幅(ICAN;WO0216639)、SMart増幅法(SMAP;WO2005063977)、線形等温多量体化増幅(LIMA;Isothermal amplification and multimerization of DNA by Bst DNA polymerase,Hafner G.J.,Yang I.C.,Wolter L.C.,Stafford M.R.,Giffard P.M,BioTechniques,2001,vol.30,no4,pp.852-867)、US6743605(本明細書では「鋳型リプライミング増幅」または「TRA」と称する)およびWO9601327(本明細書では、「自己伸長増幅」またはSEAと称する)で記載された方法もまた、特定のDNAポリメラーゼの鎖置換活性に依存している。
【0021】
これらのNAATの特徴は、プライマーまたはプライマーのセットの作用を介してポリ核酸をコピーすること、および相互プライマーまたはプライマーのセットによって前記コピーを再コピーすることの両方を提供することである。これによって、元のポリ核酸のコピーを指数関数的速度で生成することが可能である。
【0022】
NAATに関して、一般的に、この方法によって検出される核酸の物理的断片を、この元の核酸から形成された最初のコピーと、この元の核酸から形成されたコピーの最初のコピーと、コピーのこのコピーのさらなるコピーと区別することは有用である。明瞭にするために、以下の定義を本明細書に付記する:それ自体分析されている試料由来の核酸は、「標的鋳型」(図3a)と称する;NAATを実施することによるこの標的鋳型の最初のプライマー依存性コピーは、「主要アンプリコン」(図3a)と称する;NAATを実施することによる主要アンプリコンの最初のコピーは、「第1世代アンプリコン」(図3b)と称する;第1世代アンプリコンのさらなるコピー(およびこれらのコピーのコピー)は総称して、「次世代アンプリコン」(図3c)と称する。主要アンプリコン、第1世代アンプリコンおよび次世代アンプリコンは全て、一般的にアンプリコンのサブセットである。2本鎖アンプリコンでは前述のサブセットの組み合わせまたは標的鋳型自体との組み合わせから構成されることが可能である。さらに、次世代アンプリコンは、第1世代アンプリコンと同一とすることができる。さらにまた、次世代アンプリコンから第1世代アンプリコンと同一のポリ核酸分子を生成することが可能である。
【0023】
本発明の対象は、特に次世代アンプリコンに関しており、得られたコピーのさらなる再コピーを実現する方法で増大させることができるさらなる機構を提供する。
【0024】
前述したアンプリコンのサブセットは通常、異なる特徴を有する。標的鋳型が、特定のNAATで使用したプライマーによって区別された核酸の領域を超えて第1のプライミング部位からコピーされ得るので、主要アンプリコンの長さは非常に様々であり得る。一般的に、NAATの重要な特徴は、第1世代アンプリコンを生成するために、問題のNAATによって使用された別の相互プライマーがこの主要アンプリコンを利用できるようにする方法を提供することである。主要アンプリコンのプライマー依存性プライミングから得られた第1世代アンプリコンは、使用したプライマーによって区別される別個の長さとなる。また、NAATの重要な特徴は、次世代アンプリコンを生成するために、相互プライマーによってさらにプライミングするために第1世代アンプリコンを利用できるようにする方法を提供することである。また、問題のNAATの重要な特徴は、次世代アンプリコンをさらに再コピーするための方法を提供することである。いくつかのNAATのために、次世代アンプリコンは第1世代アンプリコンとは実質的に異なっていてもよく、特に、次世代アンプリコンは、第1世代アンプリコンのコンカテマーであってもよい。
【0025】
直鎖標的鋳型から直接、コンカテマーの形態でアンプリコンを生成する方法には、LAMP、TRA、SEAおよびSMAP(後者はLAMPおよびSEAのハイブリッドである)が含まれる。それぞれの場合において、コンカテマーは、第1世代アンプリコンを含む方法から生じる(図3b)。したがって、ポリ核酸の合成は、LAMP、TRA、SEAおよびSMAPからなる群から選択されるNAATを使用して実施することが好ましい。したがって、それぞれの場合では、本発明は、直鎖の標的鋳型から直接コンカテマーを生成する能力を備えた1個または複数のプライマーを提供するNAATに関連する。
【0026】
RCAもまた、コンカテマーを生成する。しかし、この場合、共有結合によって閉環したDNA分子を形成するために、プローブの標的鋳型特異的ライゲーションが必要である。このようなアンプリコンはそれ自体、任意の相互プライマーに頼らず、または第1および第2のセグメントを含む任意のプライマーを必要とせず、自然にコンカテマーになり、第1のセグメントは、鋳型上の第1の相互プライマー結合領域に実質的に相補的であり、第2のセグメントがループを形成することができるように、第2のセグメントは、第1のプライマーの別の領域または第1のプライマーの第1のセグメントから生成したアンプリコンの領域に実質的に相補的な配列を含んでいる。したがって、RCA自体は、本発明の対象ではない。
【0027】
したがって、LAMP、TRA、SMAPおよびSEAの一般的な特徴は、第1世代アンプリコン依存性プライミングの特徴であり、すなわち、第1世代アンプリコンは、分子内事象または分子間事象のいずれかによって、プライマー自体として作用し、大きさが第1世代アンプリコンよりも大きく、天然ではコンカテマーである次世代アンプリコン(この用語は、本明細書では第1世代アンプリコンのさらなるコピー((およびこれらのコピーのコピー)を意味するために使用される;図3c)をもたらす。実際に、これらのNAATの特徴は、非常に長いアンプリコンが、短いアンプリコンから生成し、したがって、ステムプライマーの結合部位の数が増幅工程の最中に指数関数的に増加し、したがって、増幅を加速するステムプライマーの能力が増加することである。これらのNAATにおいてコンカテマーを生成するプライマーの作用機構を正しく認識することは、ステムプライマーがどうのように効果を発揮するか理解するために役立つ。さらに、当業者は、コンカテマーの生成をもたらす機構に気づき、本発明の方法において使用できる他の適切なNAATを容易に同定することができるだろう。
【0028】
LAMPがコンカテマー構造を形成する方法の詳細を図4に示す。TRA法は同一の機構によってコンカテマーアンプリコンを形成することが予測される。図4bおよび4cは、実際に、コンカテマーが形成できる機構は少なくとも2つあり、1つは分子内機構を介し(図4b)、もう1つは分子間機構を介すること(図4c)を示している。実際に、本明細書で示したように、いずれの機構も第1世代および次世代アンプリコンの構造に関して同一の結果をもたらす(図4b(iv)および図4c(iv)を比較すること)。図4に概略を示した方法は、フォワード相互プライマー結合領域のみを参照しているが、リバース相互プライマー結合領域にも同様に適用されることを理解されたい。さらに、この方法は、次世代アンプリコンによって反復されると理解され、したがって、さらに長いコンカテマーを形成することができる。
【0029】
SEAによるコンカテマー生成は、LAMPおよびTRAによるコンカテマー生成と本質的に同一であるが、LAMPおよびTRAのように、逆方向反復を形成するためにポリヌクレオチド上においてプライマーを伸長することを必要とせず、必要な逆方向反復がプライマー自体に直接備わっている。図5a〜cは、LAMP/TRAに関してSEAの対応する機構を示す。
【0030】
多くのNAATは、本明細書で「単純プライマー」と称するものを使用する(図6a)。本明細書で使用した「単純プライマー」とは、ポリ核酸上のプライマー結合部位に実質的に相補的なプライマーを意味し、このプライマーは、かなりの数の追加のヌクレオチド、すなわち、プライマー結合部位に実質的に相補的なプライマー領域の3’または5’のヌクレオチドを含有しない。この文脈において「かなりの(substantive)」という用語は、単純プライマーが約20個未満、約15個未満、約10個未満、または約5個未満の追加のヌクレオチドを含有することを意味する。
【0031】
LAMPおよびTRA(および参照としてSMAP)において使用されるプライマーは、アンプリコン中に1本鎖ループを生成するので、本明細書では、「ループ形成プライマー」(LFP)と称する。本明細書で使用されるLFPとは、第1および第2のセグメントを含むプライマーのことであり、第1のセグメントは、鋳型上のプライマー結合領域に実質的に相補的であり、第2のセグメントは、第2のセグメントがループを形成することができるように、第1のプライマーの第1のセグメントから生成したアンプリコン中の領域に実質的に相補的な配列を含む。LFPの一般的構造を図6bに示す。LFPによる標的鋳型のプライミングから生じた第1(および次)世代アンプリコンは、反転した反復配列のワトソン−クリック塩基対から形成された2本鎖ポリヌクレオチドが隣接した1本鎖ポリヌクレオチドのループを含有する。ポリヌクレオチドの1本鎖ループは、問題のNAATによって使用されたさらなるプライマーが結合するために利用することはできるが、特にステムプライマーが結合するために利用することはできないと考えられる。
【0032】
SEA(およびSEAおよびLAMPのハイブリッドである参照としてのSMAP)で使用したプライマーを図6cに示す。これらのプライマーは5’末端に任意の逆方向反復を含有することを確認することができる。結果として、前記プライマーによる標的鋳型のプライミングから生じた第1世代アンプリコンは、第1世代アンプリコンが潜在的に自己プライムする(または類似のアンプリコンをプライムオフ(prime−off)する)原因となる緊密なヘアピンループを形成する。このようなプライマーは、本明細書では「ヘアピンプライマー」と称する。本明細書で使用した「ヘアピンプライマー」という用語は、第1および第2のセグメントを含むプライマーのことであり、第1のセグメントは、鋳型上のプライマー結合領域に実質的に相補的であり、第2のセグメントは、第1のプライマーの別の領域に実質的に相補的な配列を含む。ヘアピンプライマーは通常、問題のNAATによって使用されたさらなるポリヌクレオチドが結合するために利用可能な第1世代または次世代アンプリコン中にポリヌクレオチドの1本鎖ループを提供しない。しかし、本発明者らは、プライマーの第2のセグメント中の逆方向反復がリンカー領域によって分離されているヘアピンプライマーを提供することができることを認識した。リンカーの長さは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチドまたは少なくとも30、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチドまたは少なくとも60ヌクレオチドであってもよい。このようなプライマーは、1本鎖ループを形成することができ、増幅中に追加のプライマーの結合を可能にする(図6dおよびまた、図8cも参照)。逆方向反復の間にこのようなリンカー配列を含有するヘアピンプライマーは、本明細書では、「ループ提供プライマー(loop-providing primer)」(LPP)と称する。このようなプライマーは、先行技術では記載されておらず、本発明の好ましい態様である。
【0033】
LAMP、SMAPおよびSEAでは、第1世代アンプリコンの分子内プライミングを可能にする第1世代アンプリコン中の逆方向反復を生成するプライマーを使用することは明白である。結果として、第1世代アンプリコンは、それ自体の区分をコピーし、そのようにしてコンカテマーを生じる。TRAについて記載された機構では、前述の機構は明らかにならない。それにも関わらず、TRAはコンカテマーを生じ、LAMPと同一の機構によってコンカテマーを生じるようである(実施例1および関連する図7を参照されたい)。前述の分子内プライミングは、コンカテマーを生成するためにこれらの方法で使用されるプライマーに利用できる唯一の機構ではないが、正確な機構に関係なく、ステムプライマーの有益な効果の合理性は明らかである。
【0034】
第1世代アンプリコンの分子内(図8a)または分子間(図8b)自己プライミングのためにLAMP、TRAおよびSMAPで使用したLFPで論じたように、得られた次世代アンプリコンは、標的鋳型からアンプリコンを生成するために使用した元のプライマーに結合できる1本鎖領域を利用可能にする。形成した1本鎖ループの相互鎖は、以下で言及する「ループプライマー」に結合することができることに注意されたい。SEAおよびSMAPで記載したようなヘアピンプライマーは、アンプリコン中にこのような1本鎖ループを生成しない。しかし、以前に論じたように、本発明者らは、逆方向反復の間にリンカー領域を含有するSEAプライマーの変種(図6dで示したLPP)を使用することによって、ヘアピンプライマーが、図8cで例示したように、1本鎖ループを生成し得ることをはっきりと理解している。
【0035】
LFPおよびLPPがアンプリコンの安定な1本鎖領域を生成する能力は、アンプリコンを迅速にさらに増大させるのに必要不可欠で、これらのプライマーを使用する技術の重要な態様である。これは、コンカテマーアンプリコンが問題のNAATによって使用されたプライマーの新たなプライミング部位を多く含有できることを意味する。LAMPおよびTRA(およびしたがってSMAP)において、アンプリコン中に逆方向反復を生成するLFPはまた、それ自体結合することができ、したがって、アンプリコンの再コピーをさらに開始し、したがって、さらに増幅を増大させるアンプリコンの1本鎖領域を提供する。LAMPおよびSMAPにおいて、LFPに加えて、増幅のさらなる増大を助けるためにアンプリコンのこれらの1本鎖領域にも結合するさらなる追加のプライマーを使用することができる(ループプライマーとして知られる)。本発明の一面は、ステムプライマーが、LFPおよび/またはLPPによって生成した前記安定な1本鎖ループには結合しないが、異なる機構を介して増幅を加速させることである。
【0036】
LAMP、TRAおよびSEA(および参照としてSMAP)について、次世代アンプリコンをコピーする工程は、自己プライミング(分子内または分子間のいずれで実施されるかには関係なく)、アンプリコンの1本鎖領域からのさらなるプライマーの結合および伸長、またはフォワードもしくはリバース相互プライマー結合領域のいずれかに結合する他のプライマーの作用のいずれを介するにせよ、次世代アンプリコンのステム領域を一時的に1本鎖にすることが示される。LAMP、TRAおよびSEA(およびSMAP)の示唆された機構によって、前記1本鎖ステム領域が、さらなるアンプリコン自己プライミングおよび再コピーの作用を介して、またはフォワードもしくはリバース相互プライマー結合領域のいずれかに向けられたプライマーのための曝露された結合部位に結合するプライマーの作用を介して、2本鎖ポリヌクレオチドに迅速に変換されることが予測される。ステム領域は、一時的に1本鎖であり、安定な1本鎖ではないことしかこれまで予測されなかった。したがって、ステム領域が増幅に有用なプライマー結合部位を提供することは予測されなかった。しかし、今回、驚くべきことに、ステム領域に向けられたプライマーが実際に、増幅速度を非常に増加させることが示された。ステムプライマーがアンプリコンに結合できる機構を図9および10に例示する。
【0037】
ステムプライマーの作用は、アンプリコン再コピーから生じた一時的に曝露された1本鎖ポリヌクレオチド上であると予測されるが、他の機構も、ステムプライマーを使用して見られる増幅速度の増加の原因となり得ることが考えられる。例えば、コンカテマー構造において、1本のポリヌクレオチドが複製スリップ(slippage)におけるように「ループアウト(loop out)」し得ることが考えられ、このことは、コンカテマーポリヌクレオチド構造が、その性質そのものによって、反復配列の間に2次構造を形成することができることから、特に可能性がある。例えば、生成した1本鎖ポリヌクレオチドループは、ステムプライマーの結合部位を提供し得る。他の機構も、ステムプライマーの効果を説明できる可能性があるが、これは本発明の一般的態様であることが予測されるコンカテマーポリヌクレオチド配列に作用するステムプライマーの原理である。
【0038】
以前に論じたように、適切な相互プライマーは、第1および第2のセグメントを含むことができ、第1のセグメントは鋳型上の相互プライマー結合領域に実質的に相補的である。本発明のこの態様は、本明細書では、第1のプライマーを参照にしてさらに詳細に説明するが、同様の原理が第2のプライマーにも必要に応じて変更を加えて適用されることを理解されたい。
【0039】
「実質的に相補的」という用語は、第1のセグメントが、NAAT中に通常使用される条件下で鋳型および/またはアンプリコン上の相互プライマー結合領域に結合するために十分な相補性を有することを意味する。これには、相互プライマーの第1のセグメントが、鋳型上の相互プライマー結合領域に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99%または100%の相補性を有することが必要である。相互プライマーの第1のセグメントの長さは、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチドまたはさらに少なくとも70ヌクレオチドであってもよい。
【0040】
相互プライマーがさらに第2のセグメントを含有する場合、第2のセグメントは、第2の領域がループを形成することができるように、第1のプライマー中の別の領域または第1のプライマーの第1のセグメントから生成したアンプリコン中の領域に実質的に相補的な配列を含んでいる。「第1のプライマーの第1のセグメントから生成したアンプリコン」とは、第1のプライマーがポリメラーゼによって伸長するとき生成する鋳型の第1のコピーを意味する。前記アンプリコンは、5’末端に第1のプライマーの配列を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2のセグメントは、プライマーが結合する標的鋳型および/またはアンプリコン上の領域と実質的に同一である。このようなプライマーは、以前にLFPと称した。「実質的に同一」とは、第2のセグメントが標的鋳型および/またはアンプリコン上の領域と少なくとも70%、80%、90%、95%、99%または100%同一であることを意味する。第2の領域の一部のみが標的鋳型上の領域と実質的な同一性を示すことも想定される。相互プライマーの第2のセグメントの全体または一部のみが標的鋳型上の領域と実質的な同一性を示すかどうかにかかわらず、標的鋳型および/またはアンプリコン上の領域と実質的に同一な第2のセグメントの領域の長さは、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチドまたはさらに少なくとも70ヌクレオチドである。本発明のこの態様において、相互プライマーの第1のセグメントが第1のアンプリコンを形成するために一旦伸長したならば、第2のセグメントは同じ鎖内の相補的領域に結合し、それによってループを形成することができる。
【0042】
第2のセグメントはまた、第2のセグメント中の別の領域に実質的に相補的な領域を含んでもよい。このようなプライマーは、以前にヘアピンプライマーまたはループ提供プライマーと称した。「実質的に相補的」とは、第2のセグメント中の2つの領域が互いに少なくとも70%、80%、90%、95%、99%または100%の相補性を有することを意味する。好ましくは、相補的な領域の長さは、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチドまたは少なくとも70ヌクレオチドである。プライマーがヘアピンプライマーである場合、第2のセグメント中の相補的な2つの領域は、2つの領域が互いに結合するのを容易にするために、短い(すなわち、10ヌクレオチド未満の)リンカー領域によって分離されていることが好ましい。リンカー領域の長さによって、当業者は長さが少なくとも10ヌクレオチドのリンカー領域を有するLPPとリンカー領域の長さが10ヌクレオチド未満であるヘアピンプライマーとを区別することが可能である。プライマーの第1および第2のセグメントは、リンカー領域を介して連結していてもよい。いくつかの実施形態では、一旦コピーされたら、さらなるプライマーがリンカー領域の相補部分に結合するのを可能にするために、このリンカー領域は前記プライマーの第1のセグメントと実質的に同一である(図6d)。「実質的に同一」とは、第1のセグメントがプライマーの第1および第2のセグメントを連結するリンカー領域と少なくとも70%、80%、90%、95%、99%または100%同一であることを意味する。
【0043】
本発明の方法は、同じ種類のフォワードおよびリバース相互プライマー、例えば、LFPまたはヘアピンプライマーを使用して実施することができる。「同じ種類のプライマー」というとき、これらのプライマーが全て単純プライマー、LFP、LPPまたはヘアピンプライマーであることを意味する。したがって、「異なる種類のプライマー」という用語は、少なくとも1個のプライマーが他のプライマー(複数可)と同じ種類ではない、2個以上のプライマーの組み合わせに関する。例えば、一方法で4個の相互プライマーを使用し、そのうち3個がLFPで、1個がLPPの場合、プライマーは異なる種類であると見なされるだろう。したがって、同じ種類ではないフォワードおよびリバース相互プライマーを使用することも想定される。例えば、LFPであるフォワード相互プライマーを、LPPまたはヘアピンプライマーであるリバース相互プライマーと組み合わせて使用してもよい。プライマーの組み合わせがコンカテマーの形成を引き起こすならば、LFPまたはヘアピンプライマーを、単純プライマーと組み合わせることも可能である。増幅のために使用したNAATが複数の(すなわち、2個以上の)フォワードおよび/またはリバース相互プライマーを使用する場合、同じ相互プライマー結合部位に対して同じまたは異なる種類のプライマーを組み合わせることも可能である。本発明の一態様では、2個以上のフォワードおよび/またはリバース相互プライマーは全てLFPである。プライマーの適切な組み合わせは、当業者には明らかであろう。例えば、全て単純プライマーであるフォワードおよびリバース相互プライマーの組み合わせは、コンカテマーの形成をもたらすための機構を提供しない可能性があり、したがって、このような組み合わせは、本発明で使用するためには適していないことは当業者には明らかであろう。
【0044】
一般的に、相互プライマーまたはプライマーのセットが、標的鋳型の異なる鎖に作用することを理解されたい。さらに、相互プライマー(または相互プライマーの各セットの1つ)は、コピーされた、および再コピーされた元のポリヌクレオチドの領域を区切るように作用するだろう。したがって、指数関数的増幅には、少なくとも2個のプライマー結合領域、フォワード相互プライマー結合領域とリバース相互プライマー結合領域の間の活性を合わせることが必要である(図1a)。フォワードおよびリバースプライマー結合領域はそれぞれ、プライマーのための1個の結合部位を含んでよく、それによって相互部位は反対のセンス鎖上にあり、すなわち、1個のプライマー結合部位は「フォワード鎖」上にあり、1個は「リバース鎖」にある(図1aに見られる通り)。フォワードおよびリバース相互プライマー領域はまた、2個以上のプライマーそれぞれのための結合部位を含んでいてもよく、2個を上回るプライマーは特定のNAATによって使用される。この場合、フォワードおよび/またはリバース相互プライマー結合領域中の2個以上のプライマー結合部位は全て、標的鋳型および/またはアンプリコンの同じ鎖または標的鋳型および/またはアンプリコン(またはそれらのコピー)の異なる鎖上に存在することが可能である(図1b)。
【0045】
本発明のステムプライマーは、ステムプライマー(複数可)の結合部位(複数可)がフォワードまたはリバース相互結合部位とあまり重複していないならば、フォワードおよびリバース相互プライマー結合領域の間のどこに位置していてもよい。LFPを使用し、LFPがフォワードプライマーの場合、フォワード相互プライマー結合領域はF2部位(すなわち、フォワード相互プライマー結合領域)だけでなく、F1部位(すなわち、LFPの第2のセグメントに実質的に同一なフォワード鎖の領域)を包含し、LFPがリバースプライマーの場合、リバース相互プライマー結合領域はR2c部位(すなわち、リバース相互プライマー結合領域)だけでなく、R1c部位(すなわち、LFPの第2のセグメントに実質的に同一なリバース鎖上の領域)を包含することを理解されたい(図1eおよび図14)。このように、ステムプライマーは2個のLFPを使用したR1(c)およびF1(c)部位の間のどこにでも位置していてもよく(LAMPおよびTRAにおけるように)、1個のLFPが特定のNAATで使用される場合、ステムプライマーはR1(c)またはF1(c)部位のいずれかと非LFPによって占められた別の相互プライマー結合領域のとの間に結合していてもよい。
【0046】
図2aに示したように、フォワードまたはリバースポリヌクレオチド鎖のいずれかに結合する1個のステムプライマーのみを使用することが可能である。あるいは、アンプリコンの相互鎖(図2b)または同じ鎖(図2d)のいずれかに結合できる2個以上のステムプライマーを使用することができる。本発明の方法は、ステムプライマーの結合部位がフォワードまたはリバース相互プライマー結合領域とあまり重複しないか、または全く重複しないならば、任意の空間的組み合わせで使用でき、リバース鎖またはフォワード鎖のいずれかに結合できる1個、2個、3個、4個またはそれ以上のステムプライマーで実施することができる(図2e)。ステムプライマーはさらに、ステム領域内の任意の部分に結合することができる。したがって、ステムプライマー(複数可)は、フォワードまたはリバース相互プライマー結合領域にごく接近した結合部位を有することができる(図2c)。「ごく接近した」とは、ステムプライマーの結合領域および相互プライマー結合領域が10bp、50bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bpまたは1000bp未満しか離れていないことを意味する。
【0047】
本発明のステムプライマーの長さは、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチド、少なくとも70ヌクレオチド、少なくとも80ヌクレオチドまたは少なくとも90ヌクレオチドであってもよい。
【0048】
ステムプライマーは、単純プライマーであってもよい。しかし、LFP、ヘアピンプライマー、LPP、キメラプライマーまたは他の誘導体であるステムプライマーを使用することも想定される。複数のステムプライマーを使用するとき、ステムプライマーは、同じ種類であってもよく、または異なる種類のプライマーの組み合わせであってもよい。「同じ種類のプライマー」と称するとき、プライマーは全て、単純プライマー、LFP、LPPまたはヘアピンプライマーであることを意味する。したがって、「異なる種類のプライマー」という用語は、少なくとも1個のプライマーが他のプライマー(複数可)と同じ種類ではない、2個以上のプライマーの組み合わせに関する。例えば、使用したステムプライマーは全て、単純プライマーであってもよく、または単純プライマー、LFPおよび/またはヘアピンプライマーの組み合わせであってもよい。実際に、図20に例示したように、ステムプライマーは、本発明で使用したものに対して様々なプライマー変形形態を使用するLAMP、TRA、SMAPまたはSEAの派生物において有用に使用することができるものと予想される。
【0049】
TRAおよびSMAPに関連した文献、ならびに他のいくつかの情報源において概略されているように、「単純プライマー」、LFP、ヘアピンプライマー、RNA含有プライマー、ニッカーゼ部位含有プライマーおよび各NAAT法に概略された派生法を生成するための新規の組み合わせで使用できた他の新規プライマーは、多種多様に組み合わせることが可能である。前記組み合わせによって、より長いコンカテマーを生成するために自己コピーすることができるコンカテマーアンプリコンを生成する方法がもたらされる場合、ステムプライマーが利用できるものと予測される。
【0050】
例えば、LAMPで使用した置換プライマー(標的鋳型および主要アンプリコン上で作動するが、第1世代アンプリコンまたは次世代アンプリコンでは作動しないように設計されている)の主要な欠点は、関連したLFPが標的鋳型に結合し、標的鋳型上で伸長する前に置換プライマーがその部位に結合し、その部位から伸長し、置換プライマーから生成した主要アンプリコンが指数関数的増幅に必須のLFPの結合を遮断し、妨害し、したがって増幅を阻害することであることに本発明者らは注目してきた。本発明者らは、もし置換プライマーとして「単純プライマー」構造を使用する代わりに、LFPを置換プライマーとして使用するならば、この影響が、ある程度まで軽減し得ることを示した(実施例5、図15aおよびb)。これは、LFPがある程度、プライマー部位の再プライミングを可能にするためと考えられているが(TRA技術に関連した特許に記載されているように)、主に、LFPは第1世代および次世代アンプリコンならびに標的鋳型および主要アンプリコンに作用することができ、一方、「単純」置換プライマーは主として標的鋳型および主要アンプリコンのみに作用すると予測されるためである。したがって、実施例5で記載したこのような方法は、ステムプライマーの使用と全く矛盾しない。同様に、ICANおよびRDCで記載されたようなキメラプライマーは、置換プライマー部位の再プライミングを可能にし、したがって、LFP結合部位を遮断する可能性を低下させるために、置換プライマーとして(単純プライマーの代わりに)使用することができた。
【0051】
さらに、ステムプライマーはフォワードおよびリバース相互結合領域で生じるプロセスを連結することによって、LFPを使用する方法の増幅速度を増加させるように作用するため、およびLAMP法には使用されるLFPのフォワードおよびリバース相互結合部位を分離するヌクレオチドの数に上限があることが文献で教示されているため(Notomi et al. Loop-mediated isothermal amplification of DNA, Nucleic Acids Research,(2000)Vol 28., No.12, e63)、ステムプライマーを使用すると明らかに、フォワードおよびリバース相互結合部位が今までに実施できたものよりもさらに離れて配列中に位置することが可能となる(特に、いくつかのステムプライマーを使用する場合)。配列の2つの領域がポリヌクレオチド上に一緒に存在するが、この2つの領域の間の距離が離れ過ぎていて各それぞれの領域が本明細書で記載したNAATにおいてフォワードおよびリバース相互結合領域として効果的に使用できないことを実証するのが望ましいとき、このことは非常に有益であり得る。
【0052】
ステムプライマーを使用することによって、ステムプライマーがない場合よりもフォワードおよびリバース相互結合領域がはるかに離れていることが可能で、いまだ効果的な増幅が可能なので、ポリヌクレオチド上に2つの異なる部位の存在を確立することができる。したがって、本発明は、フォワードおよびリバース相互プライマー結合領域が、ポリ核酸の合成がステムプライマー(複数可)の存在下においてのみ生じ得るように離れて位置する、ポリ核酸の増幅方法を提供する。この距離は、使用したNAAT、試薬および増幅条件が、ステムプライマー(複数可)が1つの反応に添加され、他の反応には添加されないこと以外は同一である、2つの別々のNAATを並行して実施することによって、実験的に定義することができる。ポリ核酸の合成がステムプライマー(複数可)の存在下においてのみ生じる場合、相互プライマー結合部位は、ポリ核酸の合成がステムプライマー(複数可)の存在下においてのみ生じ得るような距離に位置するものと考えられる。
【0053】
例えば、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(MRSA)中に存在するmecA遺伝子は、MRSAに関連したSCCMec可動遺伝要素の挿入部位に関連した保存されたorfX配列からかなり離れて位置することができる(WO02/099034参照)。mecA遺伝子およびorfX配列がLAMPなどの方法を使用するには配列中で離れ過ぎていても、ステムプライマーを使用すると、mecA遺伝子およびorfX配列が増幅のために相互結合部位として作用できるようにすることによって、MRSAを検出するために役立つことができる。したがって、一態様では、本発明は、試料中のMRSAを検出するための方法を提供する。
【0054】
ステムプライマーは、天然に生じる核酸のみを含有していてもよい。しかし、改変塩基を含有するプライマーを利用することも想定される。このような改変塩基の例には、限定はしないが、N4−メチルシトシン、イノシン、リボヌクレオチド、蛍光塩基、光分解塩基またはユニバーサル塩基が含まれる。ステムプライマーおよび/または標識されたステムプライマーが結合するアンプリコンを検出可能にする部分で標識された核酸を使用することも想定される。例えば、核酸は、蛍光的に標識することができる。別法では、ステムプライマーは捕捉部分(例えば、ビオチン)で標識することができる。
【0055】
重要なことに、ステムプライマーは、フォワードおよびリバース相互プライマー結合部位に結合するプライマーによって媒介されるアンプリコンの指数関数的増幅には直接関与しないが、増幅速度だけを増加させる。これは、ステムプライマーが特定のNAATによって使用される他のプライマーの増幅産物に働くと考えられるからである。したがって、ステムプライマーは、フォワードおよびリバース相互プライマーによって媒介される反応の増幅速度を増加させることによって働く。このことは図1cに示されており、ステムプライマーは標的鋳型をプライムし、標的鋳型から伸長し、標的鋳型の部分コピーはフォワード相互プライマー結合領域またはリバース相互プライマー領域のいずれかのみを含有し、両方は含有しないことを認めることができる。したがって、ステムプライマーから生成した主要アンプリコンは、相互コピーが可能ではなく、したがって、標的鋳型の指数関数的増幅には関与しないだろう(このことは図21に詳細に示されている)。同様の論理が、特定のNAATによって使用された他のプライマーによって生成した主要アンプリコン、および同様に第1世代アンプリコンをコピーするステムプライマーに適用される。
【0056】
ステムプライマーは、次世代アンプリコン(すなわち、第1世代アンプリコンのさらなるコピー(およびこれらのコピーのコピー))が天然においてコンカテマーであるならば、標的鋳型の増幅速度を著しく増加させることのみが予測される。ステムプライマーがコンカテマー上で働くという必要性は、指数関数的増幅に関与する特定のポリ核酸のため、フォワードおよびリバース相互プライマー結合領域として作用することができる領域を含有しなければならないという必要性の次にくる。ステムプライマーを介してコンカテマー構造をコピーするとフォワードおよびリバース相互プライマー結合部位の両方を有するポリヌクレオチドコピーを生成することができるが、一方、非コンカテマー構造をコピーしても生成しないことは、図21で明らかに認めることができる。したがって、ステムプライマーの使用がコンカテマーの形成を引き起こす増幅方法に有益であると本発明者らは予測する。
【0057】
ステムプライマー(複数可)はNAATで使用した他のプライマーと連結した様式で作用し、この相互作用は増幅速度の観察された大きな増加を得るために必要不可欠であることが見出された。ステムプライマーを使用して認められた増幅速度の増加は、1個のステムプライマーによって生成したアンプリコンが、アンプリコンを再コピーするために特定のNAATによって使用されている他のプライマー全ての鋳型として作用しない、追加的であるが異なる増幅方法に関与するステムプライマーでは説明できない。本発明者らは、観察された増幅速度の増加は、一方法によって生成したアンプリコンが別の方法によって生成したアンプリコンの鋳型として作用できない2種以上の異なる増幅方法ではなく、単一の、連結した増幅方法から生じるに違いないことを実験的および理論的に実証した。増幅技術TRAのための増幅速度の非常に大幅な増加の種類の例を、異なる増幅速度論を有する様々なプライマーセットについての実施例2において示す。各場合において、ステムプライマーは増幅速度を著しく増加させ、そうすることで、試験を実施する時間枠内で試験の感度を増加させる(図11)。したがって、ステムプライマーは、標的鋳型の特定の種類および量を検出するために必要な時間を、ステムプライマー(複数可)を添加していない対照反応と比較して少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも20分、少なくとも30分または少なくとも60分減少させることができる。
【0058】
例えば、LFPと併用して単純プライマーを使用し、各プライマーが、相互的にフォワードまたはリバース相互プライマー結合領域のいずれかに結合すると理解されているTRAが明示された(US6743605)。この組み合わせは、本明細書では非対称TRA(Asymmetric TRA)またはATRAと称する。このように、ステムプライマーをTRAに添加すると、1つのアッセイで組み合わせた3つの別々の増幅方法、1つはTRAで、次の2つが異なるATRA増幅である方法があることを主張することができた(図12a)。したがって、ステムプライマーはTRA自体の増幅速度は増加させず、2つの付加的なATRA増幅を同アッセイに単に追加するだけであると示唆したくなるだろう。しかし、そのような場合は、観察された増幅全体の速度は、TRA系の増幅速度および両ATRA系の増幅速度の合計であろう。しかし、本発明者らは、ステムプライマーの使用によって実質的に独立した増幅系の合計から予測されるよりもはるかに大きな増幅速度の増加が生じることを示した。実施例3では、増幅速度を、ステムプライマーおよびLFPの様々な組み合わせで測定する。1個のステムプライマーおよび1個のLFPを使用して示されるのは、ATRAと同等である。ステムプライマーおよびLFPの2つの可能な組み合わせ(すなわち、ATRAの2つの表現型)を使用する場合の増幅速度は、極めて遅い速度論を与えることを確認することができる(図12b(iおよびii))。2個のLFPを一緒に使用するとき(すなわち、TRA系)の速度論は2個のATRA系よりも速い(図12b(iii))。ステムプライマーおよびLFPを組み合わせると、増幅速度はTRAまたはATRAによって既に示されたいずれの速度よりも実質的に速い(図12b(iv))。ATRAの速度論がいかに遅いかが示され(および増幅の指数関数性を想起する)ならば、図12b(iv)で示した増幅速度の増加が組み合わせた2つのATRAおよびTRA系の反応速度の単純な合計であると推測することは合理的ではない。このことは、ステムプライマーが指数関数的増幅に関与する他のプライマーと連結した様式で作用しているという事実を強調し、さらに、フォワードおよびリバース相互プライマー結合領域を保持するアンプリコンのコピーを生成するコンカテマー上でのステムプライマーの作用によって合理的に説明することができる。
【0059】
前記の実験例はまた、モデル化することができる。実施例4では、3種類の別々の増幅方法が数学的に定義された増幅速度でモデル化されている。このモデルは、BART曲線として表される(以下参照)。使用したパラメータは、等温NAATの様々な表現型の速度について本発明者らが得た結果の範囲を反映している。例えば、非常に遅い2つの増幅方法をより速い増幅方法と一緒にすると、ステムプライマーがLAMP、LAMP+ループプライマーまたはTRAのいずれかに添加されたとき認められる著しく速い増幅の種類が観察されないことを確認することができる(図13aにおけるモデルの結果を実施例2、3、5、6および7それぞれの図11、12b、15、16および17で示された実験結果と比較)。さらに、図13bは、迅速な増幅方法と2種類の中程度に迅速な増幅方法とを一緒にした結果を示しており、このような条件下でも、ステムプライマーを使用して認められた全体の増幅速度の実質的な速度増加の種類はこのモデルでは認められないことを実証している。実際に、図13cで明らかなように、3種類の迅速な増幅方法を一緒にした場合でも、全体の増幅速度は、個々の方法のいずれかよりもごくわずかに速いのみで、このことは、増幅の指数関数性を反映している(実施例2、3、4、5、6および7それぞれの図11、12b、15、16および17と比較)。
【0060】
ステムプライマーがもたらすことができる増幅速度の増加は、いくつかの等温NAATで実証されたか、またはいくつかの等温NAATで働くことが実証された。ステムプライマーを特定のNAATで使用した他のプライマーに対して展開することができる例を図14a〜gに示す。実施例5、6および7は、図14で示したNAAT表現型のいくつかについての実験データを示している。それぞれの場合において、増幅速度の著しい増加を認めることができる(図15〜17)。
【0061】
NAATを形成するコンカテマーにおけるステムプライマーのさらなる有用性は、蛍光、化学発光、電気化学レポーター系または「リアルタイム」で増幅の範囲を追跡する手段としての他のレポーター系において使用するためのプローブとなり得ることであろう。ステムプライマーは、アンプリコン中においてある種のプローブに影響を及ぼし得る逆方向反復を生成する必要がないので、LFPまたはヘアピンプライマーなどを上回るプローブ含有プライマーとして利点を有することができよう。
【0062】
本発明で使用した標的鋳型は、対象とするポリ核酸の増幅を可能にする適切な相互プライマー結合領域を含む、任意のポリ核酸であってもよい。当業者であれば、フォワード相互プライマー結合領域およびリバース相互プライマー結合領域がセンス鎖およびアンチセンス鎖それぞれにおいて増幅されるべき配列の5’に位置するように、フォワードおよびリバース相互プライマー結合部位を標的鋳型上に配置する必要があることを理解するだろう。
【0063】
標的鋳型は、1本鎖または2本鎖であってもよい。標的鋳型が1本鎖ポリ核酸の場合、当業者は、標的鋳型が最初に1個の相互プライマー結合領域のみを含むことを理解するだろう。しかし、第1のプライマーが結合すると、第2の相互プライマー結合領域を含有する相補鎖の合成が生じる。
【0064】
標的鋳型は、RNA分子から得てもよく、この場合、本発明の方法を実施する前にRNAをDNAに転写する必要がある。RNAを転写するために適切な試薬は当技術分野では周知で、限定はしないが逆転写酵素が含まれる。
【0065】
フォワードおよびリバース相互プライマー結合領域に加えて、標的鋳型は、本発明の1個または複数のステムプライマーの結合を可能にするために十分な長さを有することが必要なステム領域を含むことが必要である。したがって、ステム領域の長さは、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチドまたは少なくとも500ヌクレオチドであることが好ましい。
【0066】
当業者であれば、増幅に必要なプライマーに加えて、NAATはポリ核酸を合成するためにさらなる試薬を必要とすることに気づくであろう。必要な試薬は、当業者には明らかであろうが、一般的に、適切な緩衝液、dNTP、ポリメラーゼなどが含まれる。
【0067】
当業者が認識するように、問題のNAATを実施するために必要な全成分を添加した後、ポリ核酸を合成するために適切な条件を提供することが必要である。これは、例えば、適切なインキュベーション温度を提供することによって実現することができる。等温条件下で増幅が起こることが好ましい。これは、増幅中に温度を一定に維持することを意味する。「一定に」とは、温度変化が±10℃以下であることを意味する。しかし、増幅工程の間、10℃を超える1回の温度変化、10℃を超える2回の温度変化、10℃を超える3回の温度変化、10℃を超える4回の温度変化、または10℃を超える5回の温度変化を包含する方法も本発明の範囲内である。
【0068】
本発明によるポリ核酸の増幅は、当業者に既知の方法によって検出することができる。適切な方法には、限定はしないが、蛍光挿入色素、蛍光プライマーまたはプローブ、濁度の測定、電気化学的プローブ、生物発光シグナルおよび化学発光プローブの使用が含まれる。
【0069】
ポリ核酸の増幅は、リアルタイム法、すなわち、ポリ核酸が増幅されるとき検出できる方法を使用して検出してもよい。このような検出系の例には、限定はしないが、蛍光(例えば、増幅中に添加される蛍光プローブ)、生物発光シグナルおよび電気化学的プローブが含まれる。一態様では、ステムプライマー自体を検出可能な部分、例えば、蛍光標識、化学発光標識または電気化学的標識で標識して、ステムプライマー(複数可)が結合するアンプリコンの検出を可能にする。したがって、NAATを形成するコンカテマーにおけるステムプライマーのさらなる有用性は、「リアルタイム」で増幅の範囲を追跡する手段としての蛍光、化学発光または電気化学的レポーター系において使用するためのプローブとなり得ることであろう。他の適切なレポーター系は、当業者には明らかであろう。ステムプライマーは、アンプリコン中においてある種のプローブに影響を及ぼし得る逆方向反復を生成する必要がないので、LFPまたはヘアピンプライマーなどを上回るプローブ含有プライマーとして利点を有することができよう。あるいは、増幅産物は、終点測定、すなわち、ポリ核酸の増幅が完了した後で行う測定を使用して検出してもよい。
【0070】
ポリ核酸の増幅はまた、NAAT検出で使用した他の検出方法によって検出することができる。適切な例には、限定はしないが、遺伝子アレイ、ラテラルフローストリップ(Lateral flow strip)、電気泳動、質量分析および音波検出が含まれる。
【0071】
一実施形態では、リアルタイムでの生物発光アッセイ(Bioluminescent Assay in Real−Time)(BART)レポーター系を使用してポリ核酸の合成を検出する。この系は、本明細書に参照により組み込んだWO2004/062338およびWO2006/010948に詳細に説明されている。BARTは、試料からの1種のシグナル、生物発光シグナルを生じる等温NAAT用に設計されたレポーター系の一例である。BARTは、無機ピロリン酸のホタルルシフェラーゼ依存検出を利用しており、無機ピロリン酸は「標的」配列がNAATを使用して増幅されるとき大量に生成される。このように、分子診断は、均一測定法(homogeneous phase assay)において、密封した試験管から放射される光を測定することによって簡単にBARTによって実現することができる。BARTは、いくつかの異なるNAATで証明されており、50〜63℃の間で操作する。光出力が増幅の瞬間速度の測定値を表すので、BARTレポーターは、NAATの増幅速度を追跡するために特に効果的な手段である(一方、例えば、蛍光出力はシグナルの蓄積を示し、したがって、増幅速度を得るために測定値を微分しなければならない)。例として、図22は、特定の標的DNA分子の希釈系列を検出するために、BARTはLAMPと併用して使用されることを示している。試料中の標的DNAの量が減少するにつれて、最大光増加時間に達するための誘導期(最大増幅に達するための誘導期に比例する)が増加することに注意されたい。別の表現でいうと、BARTにおいて陽性試料に関連した特徴的な光ピークに達するための時間は、試料中の標的ポリ核酸の量と逆比例して増加する。実施例ではBARTレポーター系を使用しているが、本発明はBARTの使用に限定するものではなく、増幅のリアルタイム測定において、または終点測定として使用されるかどうかに関わらず、蛍光、濁度、他の分光技術または電気化学的測定法などの方法にも等しく適用できることを強調する。
【0072】
好ましくは、本発明の方法は密閉容器中で実施される。試料が汚染される可能性を減少させるか、またはさらには防止することもできるので、これは非常に有用である。さらに、研究室が汚染される可能性を減少させるか、またはさらには防止することもできる。鋳型ポリ核酸またはアンプリコンの1コピーであっても研究室に流出したならば、試験すべき他の試料を汚染し、偽陽性の結果を招く可能性があるので、これは特に重要である。したがって、汚染を防ぐ能力は、本発明の方法を診断用途で使用する場合、特に重要である。
【0073】
本発明による方法のさらなる応用は、生物の遺伝子コード中に特定のポリ核酸配列が存在するかどうかを決定することである。例えば、植物の特定の非遺伝子改変品種または遺伝子改変植物に関連したDNAの検出のため、動物の系統品種に関連したDNAの検出のため、または遺伝子試験もしくは法医学などの医学的もしくは獣医学的診断用途のため、鋳型核酸の元となる核酸が遺伝的に改変されているかどうかを決定するために使用することができるだろう。本発明の方法はまた、一塩基多型(SNP)の検出のために適している。
【0074】
本発明による方法は、診断用途において使用することができる。特に、この方法は、患者および他の試料中の生物の同定および定量を可能にする。この生物は、任意の微生物、例えば、ウイルス、細菌、マイコプラズマおよび真菌であってもよい。微生物は、病原性であることができるが、非病原性微生物であってもよい。微生物はまた、遺伝子改変生物(GMO)であってもよい。さらに、本発明の方法は、疾患の状態を検出するため、治療による有害反応の予測のため、また疾患状態感受性の予測のため、遺伝子改変穀物および動物を同定するために使用することができる。
【0075】
「患者試料」とは、患者から採取した任意の試料を意味し、血液、便、拭き取り検体、痰、気管支肺胞洗浄液、組織試料、尿または脊髄液を含むことができる。他の適切な患者試料およびその抽出方法は当業者には周知である。試料を採取した「患者」または「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物であってもよい。試料が患者試料と特に言わなければ、この用語には、他の供給源から採取した試料も含まれる。例には、表面からの拭き取り検体、水試料(例えば、下水、海水、湖水、飲用水)、食品試料、化粧品、医薬品、発酵製品、細胞および微生物培養物および微生物の検出が所望される他の試料が含まれる。
【0076】
他の態様では、本発明の方法で使用するためのキットを提供する。好ましくは、このようなキットには、標的ポリ核酸が供給された陽性対照の一部を形成しないという条件で、試験すべき標的ポリ核酸を除く、本発明の方法を実施するために必要な成分全てが含まれる。
【0077】
本発明による方法で使用するためのキットには、以前に記載したように、ポリ核酸ポリメラーゼ、この核酸ポリメラーゼの基質および標的ポリ核酸の等温増幅に適したプライマーが含まれることが好ましい。より好ましくは、このキットはさらに、緩衝試薬、例えば、マグネシウムイオン源、またはベタインなどのNAATの性能を向上させるための当技術分野で知られている添加物、またはトレハロースなどのキット試薬の有効期間を向上させることが知られている添加物またはアジ化ナトリウムなどの試薬の保存を助けることが知られている添加物を含む。あるいは、本発明の方法で使用するためのキットは、これらの成分および/または追加の成分のいくつかのみを含んでもよい。試料およびキットから除外された任意の他の成分は、その後使用中にキットに添加してもよい。
【0078】
BARTをポリ核酸の検出のために使用するとき、熱安定性ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよび無機ピロリン酸(PPi)をATPに変換する酵素、例えば、ATPスルフリラーゼおよびPPiをATPに変換する酵素に必要な任意の他の基質または補因子、例えば、アデノシン5’ホスホ硫酸をキットに含めてもよい。したがって、一実施形態では、BARTで使用するためのキットは、核酸ポリメラーゼ、b)少なくとも1種のステムプライマー、c)試験試料の等温増幅に適した少なくとも2種の相互プライマー、d)熱安定性ルシフェラーゼ、e)ルシフェリン、f)ATPスルフリラーゼおよびg)アデノシン5’ホスホ硫酸を含む。
【0079】
好ましくは、キットの成分の少なくとも1つは凍結乾燥されているか、またはキット中で保存するために適した別の形態である。より好ましくは、キットの全成分は凍結乾燥されているか、または保存に適した1つまたは複数の形態である。このような他の形態には、安定化要素が添加された成分、および/またはキットの成分を含有する冷蔵した、または凍結したマスターミックスが含まれる。
【0080】
全般
数字の値xに関して「約」という用語は任意で、例えば、x±10%を意味する。
【0081】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」並びに「構成される(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、専らXから構成されるか、または追加的なもの、例えば、X+Yを含んでいてもよい。
【0082】
BARTとは、試料中に存在する鋳型ポリ核酸の量を測定する方法を意味し、増幅反応から生じた無機リン酸の存在を検出し、試料中の鋳型ポリ核酸の量を示す。
【0083】
本発明の様々な態様および実施形態をここで実施例によってより詳細に説明する。詳細の改変は、本発明の範囲を逸脱することなく行ってもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】2個のプライマーのみ(図1a)または数個のプライマー(図1b)のいずれかを使用した指数関数的増幅に一般的に必要なポリヌクレオチド上の2つの領域を示す。これらの領域に関して、本発明の対象であるポリヌクレオチドのステム領域を図1cに明示する。図1dは、これらの方法によって形成された予測された第1世代アンプリコンにおける、本明細書でLAMPおよびTRAと称したNAATのステム領域を明白に示しており、これは、ステム領域が分子内ループの形成に関与したアンプリコンの領域の間に存在することを示している。実際に、LAMPおよびTRAは異なった第1世代を表すが(関連する特許出願において)、その構造は実際には同一であることに注意されたい。図1eは、標的鋳型上の本明細書でLAMPおよびTRAと称するNAATのステム領域を明白に示している。
【0085】
【図2】1個、2個またはそれ以上のステムプライマーをステム領域中に配置することができる様々な手段を示す。
【0086】
【図3】主要アンプリコン(図3a)、第1世代アンプリコン(図3b)および次世代アンプリコン(図3c)の生成を含む本明細書で言及した様々な種類のアンプリコンの生成を示す。
【0087】
【図4】LFPがコンカテマー構造を形成することができる方法を示す。最初の場合では、5’末端に逆方向反復を有する主要アンプリコンが形成され(図4a)、したがって、図4a(ii)をよく見ると、主要アンプリコンの5’末端から、F1領域、さらにこのアンプリコンに沿って、同じ鎖内にこの領域の相補体、F1c領域(この図および以下の図における小文字のcは、プライマー結合領域の相補体を示す)があることが分かる。主要アンプリコンを1本鎖にし、別のプライマーによるコピーに利用されるようにするための特定のNAATによってもたらされる機構は図4aでは明らかではないが、得られた第1世代アンプリコンを示す図4a(iii)につながる2つの黒い矢印によって表されている。 LFPによって形成された第1世代アンプリコン自体は、さらなるアンプリコンを生成するためのプライマーとして作用することができる。それが行われると、第1世代アンプリコンはコンカテマー構造を形成することができる。コンカテマーが形成し得るおおまかな機構は2つあり、1つは図4bで示したように分子内事象を介し、もう1つは図4cに示したように分子間事象を介する。いずれの場合においても、この方法によってコンカテマー内にアンプリコンの1本鎖領域が生成されることに注意し、図4b(ii)および(iii)および4c(ii)および(iii)の領域F2を参照されたい。これらはさらにLFPを結合することができる。その後の工程については図8を参照されたい。
【0088】
【図5】図5は、コンカテマー形成に必要な逆方向反復が既にヘアピンプライマーに備わっており、LFPのように鎖伸長を形成する必要がないこと以外は、図4と同一の方法を示す。
【0089】
【図6】本明細書で言及した様々なプライマーの性質を示す。図6aでは、プライマーの実質的に大部分または全てがポリヌクレオチド鋳型とのワトソン−クリック塩基対に関与している「単純プライマー」を示す。図6bでは、LFPは、単純プライマーの3’末端の結合部位の3’領域と実質的に同一な追加の5’領域を有し、前記単純プライマーとはどのように異なるかを示している。この結果、このプライマーが伸長すると、プライマーの5’領域と伸長産物の間に逆方向反復が生成される(図4a(ii)も参照されたい)。図6cでは、SEAで使用したヘアピンプライマーを示す。これらのプライマーの5’領域は逆方向反復を含有するため、5’領域がヘアピン構造に折り畳まれることが予測される。このヘアピンは、非常に少ない1本鎖ヌクレオチドを含有する緊密なヘアピンであることが予測され、したがって、この1本鎖領域は別のプライマーと結合するために利用できるとは考えられない。しかし、図6dのように実質的なループを形成するためにヘアピンを拡張すると、このループに対するプライマーの結合は起こり得るだろう。
【0090】
【図7】2種類の異なる増幅技術の結果を並べて示した、臭化エチジウムで染色したアガロースゲルを示しており、1つがLAMPでもう1つがTRAである。LAMPでは、増幅に置換プライマーおよびLFPが使用され(しかしループプライマーは使用されない)、TRAでは増幅にLAMPと同じLFPが使用されるが、他のプライマーは存在しない。 LAMPおよびTRAのいずれもコンカテマーアンプリコンをもたらすことは容易に認めることができる。さらに、アンプリコンの大きさは見かけ上同一である。これは、TRAおよびLAMPが共通のコンカテマー化機構を使用していることを示している。
【0091】
【図8】既に生成したループにさらにLFPを結合する効果を図8に示す。図8aは、第1世代アンプリコンの(または次世代アンプリコンのための)分子内自己プライミングから形成されたループへのLFP結合を示す。図8bは、分子間で形成されたループにおける同様の結合を示す。いずれの場合においても、新たに結合したLFPの伸長は、反対の鎖が1本鎖になる原因となる(図8a(ii)および図8b(ii))。図9は、ステムプライマーがどのようにこれらの領域に結合できるかを示している。図8cは、ヘアピンプライマーの改変(図8c(i))がプライマーの3’末端と同じ配列を含有する本質的に1本鎖であるループを形成するように行われているならば(図8c(ii)に見られるように)、得られた次世代アンプリコンはさらなるヘアピンプライマーを結合するための1本鎖ループを形成するだろうことを強調している(図8c(iii))。
【0092】
【図9】分子内(図9a(i))または分子間(図9a(ii))いずれかの次世代アンプリコン形成のために、アンプリコンステムの領域は1本鎖としてステムプライマーと結合するために曝露され、利用することができる。これは、LFPによって形成される相互ループの場合でもあり(すなわち、また生成する図8aで示したループの相互鎖)、このループは、LFPと同じセンスであるのでLFPには結合できないが、使用したいわゆる「ループプライマー」の1つは結合することができる(図9b(i))。ループプライマーの伸長はまた、アンプリコンステム1本鎖の領域を形成し、したがってステムプライマーが結合するために利用することができる(図9b(ii))。
【0093】
【図10】SEAについて、アンプリコンの自己伸長を介した次世代アンプリコンの再コピーがまた、ステムプライマーによる結合のために利用可能なアンプリコンステムの領域をどのように形成するのかを示す。
【0094】
【図11】リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)系における3種類の異なるプライマーのセットについて、TRAおよびその後のBARTでのステムプライマー使用による速度増加を示す。LFPおよびステムプライマーの位置を図11(i)に示す。図11(ii)〜図11(iv)は、LFPの遅い、中程度および速いセットに応じて、ステムプライマーが存在しない場合の速度(左のパネル)とステムプライマーが存在する場合の速度(右のパネル)のBARTによる比較を示す。各図において、より早いピークはより高いコピー数(10)を表し、遅いピークは、認められる場合、標的の10コピーを表す。鋳型を含まない対照は、薄い灰色で示す。
【0095】
【図12】リステリア・モノサイトゲネス系におけるTRAでのステムプライマーの使用(図12a(i))をどのように3種類の独立した増幅方法に分解することができるかを強調しており、そのうちの1つはTRAで、他の2つはATRAである(図12a(ii))。両ATRA、TRAおよびプライマーの全組み合わせの速度のBART比較を図12b(i)〜(iv)に対応して示す。各図において、より早いピークはより高いコピー数(10)を表し、遅いピークは、認められる場合、標的の10コピーを表す。鋳型を含まない対照は、薄い灰色で示す。
【0096】
【図13】3種類の異なる増幅反応を組み合わせたBARTの速度論モデルを示す。図13aでは、迅速なNAATを2種類の非常に遅いNAATと組み合わせると、増幅の全体速度(すなわち、3種類の増幅反応の速度の合計)が3種類のNAATの最も迅速な時期と同一のBARTピークをもたらすことを認めることができる。図13bでは、迅速なNAATを2種類のやや迅速なNAATと組み合わせること以外は13aの通りで、この場合、増幅の全体速度は、ごくわずかに影響を受けるのみで、BARTピークはほんの数分早くなる。図13cはいわゆる遅いNAATが今度は最も迅速なNAATと同じ速さであること以外は13aおよびbの通りであり、組み合わせた増幅の全体速度はまたごくわずかな影響を受けるのみで、BARTピークはほんの数分早くなる。図13は、いくつかの異なる指数関数的方法を同時に行う場合、ステムプライマーを使用して認められるように、著しく早いBARTピークは認められないことを示している。これによって、別個のより遅い、または類似の速度の方法を追加するよりも、特定のNAATで使用すると、ステムプライマーは増幅の本質的な速度を根本的かつ顕著に増加させるように作用することが強調される。
【0097】
【図14】図14の(a)から(g)のそれぞれについて、各図の部分(i)は、2本鎖鋳型について、様々なNAATによって使用されたプライマーのプライマー結合部位の位置を示している。フォワード相互結合領域と関係のあるプライマーは、Fで示され、リバース相互結合領域と関連のあるプライマーはRで示される。各図の部分(ii)は、特定のNAATによって使用される様々なプライマーがそれぞれの鎖のどこに結合するかを示し、ステムプライマーと結合することが可能な位置も示されるが、ステムプライマーの正確な位置および使用したステムプライマーの数は、図2に詳述したように大きく異なり得る。 図14aは、TRAにおいて作用するステムプライマーを示している。図14bは、LAMPにおいて作用するステムプライマーを示している。図14cはループプライマーも使用するLAMPの改善された表現型において作用するステムプライマーを示している。図14dは、SEAにおいて作用するステムプライマーを示している。図14eは、SMAPにおいて作用するステムプライマーを示している。図14fは、ATRAにおいて作用するステムプライマーを示し、図14gはネステッドLFPを備えたTRAの変形形態で作用するステムプライマーを示している。
【0098】
【図15】サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)系におけるTRAでのステムプライマーの存在下および非存在下におけるネスティングLFPの影響を示す。 図15aは、ステムによって加速されたTRA(図15a(i))とステムによって加速されたLAMP(図15a(ii))およびステムによって加速されたネステッドTRA(図15a(iii))の比較を示す。各図において、より早いピークはより高いコピー数(10)を表し、遅いピークは、認められる場合、標的の10コピーを表す。鋳型を含まない対照は、薄い灰色で示す。 図15b(i〜iv)は、ステムプライマー非存在下および存在下それぞれに応じた内部LFP、外部LFP、内部および外部LFPの両方を有するTRAのBART速度の比較を示す。各図において、より早いピークはより高いコピー数(10)を表し、遅いピークは、認められる場合、標的の10コピーを表す。鋳型を含まない対照は、薄い灰色で示す。
【0099】
【図16】リステリア・モノサイトゲネス系において、LAMP、次いで、BARTでのステムプライマーを用いる速度増加を示す。全プライマーの位置を図16(iii)に示し、ステムプライマー非存在下および存在下でのBARTによる速度の比較を図16(i)および図16(ii)に対応して示す。各図において、より早いピークはより高いコピー数(10)を表し、遅いピークは、認められる場合、標的の10コピーを表す。鋳型を含まない対照は、薄い灰色で示す。
【0100】
【図17】リステリア・モノサイトゲネス系においてTRA、次いでBARTでの、ステムプライマーを用いる速度増加を示しており、ステムプライマーは前述の実施例と比較してステムの異なる領域に位置している。全プライマーの位置を図17(iii)に示し、ステムプライマー非存在下および存在下での速度のBARTによる比較を図17(i)および図17(ii)に対応して示す。各図において、より早いピークはより高いコピー数(10)を表し、遅いピークは、標的の10コピーを表す。鋳型を含まない対照は、薄い灰色で示す。
【0101】
【図18】例えば、LAMPにおけるループプライマーと比較してステムプライマーを配置するのは自由度が大きいことを示す。ループプライマーは、厳密にいうとF1とF2部位またはR1とR2部位のいずれかの間に限定される。ループが十分な長さでないか、またはループプライマーがプライマー二量体によって非特異的増幅を引き起こす傾向があるために、配列に1個または両方のループプライマーを効率よく配置することができないならば、代わりのループプライマー設計を選択する余地はほとんど残されていない。ステムプライマーは、ステムのどこにでも配置することができ、どちらの方向にすることもでき、いかなる非特異的なプライマーの二量体化も回避する一方で、可能な設計を選択する余地が広く、最も効率よく最適化することができる。
【0102】
【図19】適切なプライマー結合部位が四角で囲った領域で示されている、仮定のポリヌクレオチド配列を(i)に示す。しかし、灰色の領域は、おそらく生物のゲノムのこの部分の配列の保存性が良好なため、白色の領域よりも実質的に好ましい結合部位である(例えば、異なる株間で配列変動が著しい病原体の診断試験を設計するとき関係がある)。図19(ii)において、およびループプライマーを使用したLAMPに関しては、LAMPのこの表現型で使用されるプライマーに様々な領域が割り当てられている。プライマーのうち4つは、最適ではない結合部位に配置されなければならず、最適な1つの結合部位は全く使用されないことに注意されたい。これは明らかに理想的ではない。別の方法では、図19(iii)に示したように、最適な部位全てが使用されるようにプライマーが配置されることであろう。しかし、この表現型では、R2およびR1部位が非常に密接で、ループRプライマーのための部位が全て失われることを意味しており、本発明者らはまた、R1およびR2部位が非常に密接な場合(または相互F1およびF2部位)、おそらく形成されたループ内の立体的妨害のために、最適ではない増幅が生じる可能性があることを確認し、本発明者らはさらに、一般的にループプライマーが置換プライマーよりも増幅速度を増加させることを観察した。したがって、図19(iii)におけるプライマーの割り当ては特に理想的ではないと予測することができる。しかし、図19(iv)では、ステムプライマーの使用を採用することによって、最適な結合部位全てを使用することができ、ループおよび置換プライマー部位全てを利用することができる。したがって、ステムプライマーはプライマー設計のための柔軟性を増加させた。
【0103】
【図20】置換(displacer)プライマー、ループプライマーおよびステムプライマーのいずれについても示したように、「単純プライマー」以外の様々な種類のプライマーを使用することが可能である。多くの可能な組み合わせのうち3つを図20(i)から(iii)に示すが、フォワード相互プライマー結合領域およびステム領域のみを示している。(i)では、LFP、ヘアピンプライマーおよび単純プライマーの組み合わせを使用しており、(ii)では、ループプライマーはRNAの領域またはニッカーゼの切断部位のいずれかを含有する改変された単純プライマーによって表され、(iii)では、LFP、ヘアピンプライマーおよび切断可能な単純プライマーのさらに可能な組み合わせを示している。多くの他の可能な組み合わせがあることは十分に明らかである。
【0104】
【図21】ステムプライマーがコンカテマーに作用する場合、ステムプライマーの作用によって指数関数的に増幅可能なアンプリコンが生成されるのみであることを示す。図21の左には、ステムプライマーの第1世代アンプリコンに対する作用を示しており、得られたアンプリコンがリバース相互プライマー結合領域のみを含有し、指数関数的増幅に必要なフォワード相互プライマー結合領域を含有しないことが分かる。図21の右には、対照的に、ステムプライマーがコンカテマーによって伸長できるとき、ステムプライマー2についてはあてはまるが、ステムプライマー1にはあてはまらないように、得られたアンプリコンはフォワードおよびリバース相互プライマー結合領域の両方を有し、したがって、指数関数的増幅のための基質であることが分かる。
【0105】
【図22】BART−NAATの一例を示しており、この技法の定量性を強調している。BART技術は、生物発光出力が瞬間の増幅速度を反映しているので、NAATにおける増幅速度を追跡するために有効な手段となっている。
【0106】
【図23】(i)にMRSAと関係があるSCCmecカセットの一部を示す。SCCmec移動性遺伝子要素を、MecA遺伝子を介して抗生物質メチシリンに対する耐性を担うスタフィロコッカス・アウレウスのOrfX遺伝子の保存された領域に組み込む。したがって、MecA遺伝子およびOrfX遺伝子は同じDNA鎖上にあるが、配列におけるMecA遺伝子とOrfX遺伝子の距離はSCCmecの異なるバージョン(したがって、MRSAの異なる株)の間では大きく変動し得る。したがって、MRSAの診断アッセイにおいて、特定のNAATの相互プライマー結合領域としてMecAおよびOrfX遺伝子を使用することは、技術的に挑戦的であることが分かる。例えば、MecAおよびOrfX遺伝子が500塩基対より遠く離れている場合、MecAおよびOrfX遺伝子がフォワードおよびリバース相互プライマー結合部位のための部位として使用されるならば、LAMPは任意の産物を増幅することはできないようである(ii)。しかし、ステムプライマーはLAMPなどのNAATが標的を増幅する能力を劇的に向上させ、MecAおよびOrfXをフォワードおよびリバース相互プライマー結合部位として使用するアンプリコンの「ステム」がいくつかのステムプライマーによって標的化可能となり、ステムプライマーがフォワードおよびリバース相互プライマーと連結して働くことが示されたので、したがってステムプライマーはLAMPなどの適切なNAATを使用してMRSAの直接的検出を可能にすることができる(iii)。MecA遺伝子とOrfXの間の領域に変更をもたらすために様々なステムプライマーを使用することができる。 前述のようなステムプライマーの使用は、MRSAの存在を示すためにOrfXおよびMecA以外のSCCmecの領域のみに頼る既存の技法よりも有益である。これは、スタフィロコッカス・アウレウスの一部が、MecA遺伝子を有さず、したがって、実際にはMRSAではないSCCmec挿入を含有するからである。本発明の方法は、同じDNA鎖上にOrfXおよびMecAの両方を必要とするので、SCCmecは含有するがMecA遺伝子を含有しない株から偽陽性が生じる可能性はない。
【実施例】
【0107】
実施例1
得られたアンプリコンがいずれもコンカテマーで、見かけ上同一であることを示すLAMPとTRAの比較
サルモネラ・エンテリティディス侵入性A遺伝子の2kb断片は(コピー数は反応によって10から10の間で変化した)、特注の画像処理ハードウェアシステムであるLucy(Lumora)によって、LAMP−BARTおよびTRA−BARTにおいてBst DNAポリメラーゼ(NEB)0.32U/μlおよびホタルルシフェラーゼ11.2μg/μlを使用すること以外は実施例2と同一の条件下で60℃で増幅した。反応混合物は、R−LFP(6)およびF−LFP(6)プライマーそれぞれ0.8μMおよび置換プライマーRD(2)およびFD(2)0.2μMを含有した。各反応の全量は20μlであった。反応は100分行った。
【0108】
LFPプライマーセット6(R−LFPは標的配列上のR2cに結合し、F−LFPはF2に結合する)
R−LFP(6) 5’−aac ctt gta gag cat att cgt ggt ttt ccg cca ttg gcg aat tta tg
F−LFP(6) 5’−tct ctt ggc gcc cac aat gtt ttt aag cga acg tgt ttc cg
置換プライマーセット2(RDは標的配列上のR3cに結合し、FDはF3に結合する)
RD(2) 5’−cat tac tgc tcg taa ttc
FD(2) 5’−ata tct gaa gtt ttg cag c
【0109】
ゲル上のパターンは、置換プライマー、RDおよびFDの有無には左右されず、LFPによってのみ特徴付けられる(図7)。LAMPおよびTRAの両方の増幅は、全く同じパターンのラダーを生じ、類似の機構によって生じることを強く示している。置換プライマーは、LAMP増幅の開始段階では重要な役割を担うことができるが、その後のアンプリコン増大段階ではいかなる効果も示さない。
【0110】
実施例2
異なる効果のLampプライマーとステムプライマーのリステリア・モノサイトゲネスTRAに対する効果
リステリア・モノサイトゲネスインターナリン(internalin)A遺伝子の断片を含有するpLS−プラスミドは、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen)を使用して精製し、特注の画像処理ハードウェアシステムであるLucy(Lumora)によってTRA-BARTを55℃で使用して増幅した。反応混合物は以下を含有した。数種の安定化剤および添加物および多量または少量のプラスミド、10または10を含む1×Thermopol緩衝液(NEB)中の、R−LFP、1、2もしくは3およびF−LFP1、2または3プライマーそれぞれ0.8μM(遅い、中程度または速い)、ステムRプライマー0.8μMおよびステムFプライマー0.8μM(Eurofins MWG)、dNTP(合計)0.8mM(Invitrogen)、Bst DNAポリメラーゼ0.16U/μl(NEB)、ルシフェリン0.1mg/ml(Europa Bioproducts)、アデノシン5’−ホスホスルフェート0.25mM(Biolog)、ホタルルシフェラーゼ5.6μg/μl(UltraGlow、Promega)、ATP-スルフリラーゼ0.375U/ml(NEB)。各反応の全量は20μlであった。試験は100分行った。標的鋳型に対するプライマーの相対的方向を図11(i)に示すが、以下に挙げた配列から分かるように、実際に使用したプライマーは、B2cおよびF2結合領域の配列が大きく異なる。
【0111】
(R−LFPは標的配列上のR2cに結合し、F−LFPはF2に結合する)
遅いLFPセット1
R−LFP(1) 5’−cct tct ttt aca ggc tta gct ggt ttt tca aag aaa caa cca aag aag tgg
F−LFP(1) 5’−gga att tca gta cgg ata aaa tgc cgt ttt att atc aaa cgt tgc tgt gta gc
中程度のLFPセット2
R−LFP(2) 5’−cct tct ttt aca ggc tta gct ggt ttt atg cta agt ttc atg tgg acg
F−LFP(2) 5’−gga att tca gta cgg ata aaa tgc cgt ttt gtt tga gat gtt gtt aca ccg tc
速いLFPセット3
R−LFP(3) 5’−cct tct ttt aca ggc tta gct ggt ttt gga agc tgg gaa ttt att gag tg
F−LFP(3) 5’−gga att tca gta cgg ata aaa tgc cgt ttt gcg cat ata aat cga tgt cat ttg
ステムプライマーセット1
ステムF(1) 5’−tca aac cac cca aca aat g
ステムR(1) 5’−aac cgg cgg aac taa at
【0112】
ステムプライマーの存在下では、いずれのLFPプライマーセットでも、または存在する標的のいずれの量でも、増幅がより速く生じた。遅い、および中程度のLFPプライマーセットでは(それぞれ図11(ii)および(iii))、ステムプライマーがない場合、標的の10コピーのみが92分および73分に対応するピークで検出でき、一方、ステムプライマーが存在する場合、10コピーが39分および41分にピークとして検出でき、同様にアッセイ時間内に55分および62分のピークを有する10が検出できた。速いプライマーセット3の場合(図11(iv))、39分および60分にピークのある低コピー数および高コピー数の両方が検出され、一方、ステムプライマー存在下では、より早い22分および34分のピークが検出された。この実施例は、様々な有効性、長さ、位置、Tm、GCの豊富さ、形成するループの大きさおよび他のパラメータのLFPプライマーのセットにステムプライマーを添加することによって、増幅の本質的な加速を実現できることを示している。
【0113】
実施例3
対称、非対称およびステムによって加速された対称リステリア・モノサイトゲネスTRAの比較
リステリア・モノサイトゲネスインターナリンA(IlnA)遺伝子の断片を含有するpLSプラスミドを55℃で、特注の画像処理ハードウェアシステムであるLucy(Lumora)において、実施例2の条件と同一の条件で、多量または少量、10または10のプラスミドを用い、R−LFP(3)、F−LFP(3)、StemB(1)およびステムF(1)プライマーそれぞれ0.8μMの異なる組み合わせを使用して増幅した。
【0114】
LFPプライマーセット3
(R−LFPは標的配列上のR2cに結合し、F−LFPはF2に結合する)
R−LFP(3) 5’−cct tct ttt aca ggc tta gct ggt ttt gga agc tgg gaa ttt att gag tg
F−LFP(3) 5’−gga att tca gta cgg ata aaa tgc cgt ttt gcg cat ata aat cga tgt cat ttg
ステムプライマーセット1
ステムF(1) 5’−tca aac cac cca aca aat g
ステムR(1) 5’−aac cgg cgg aac taa at
【0115】
両方の非対称増幅は非常に遅く、84分および75分それぞれにピークを有するリステリアInlA標的の高コピー数のみ検出した。LFPの同じセットを含む対称TRAは、10コピーについては38分のピークおよび10コピーについては56分のピークでより速い増幅速度を示した。ステムプライマーをTRAの対称表現型に添加すると、高コピー数は23分にピークを示し、低コピー数は34分にピークを示し、したがって、ステムプライマーがない場合に認められる速度と比較して著しい増加が示された(図12b)。3種類の遅い速度の単純な加算では、数学的なモデル化によっても示されたように、増幅速度のこのような著しい増加を説明するには十分ではないだろう(実施例4)。
【0116】
実施例4
シミュレートしたBART速度曲線は、モデル化した指数関数的方法のための標準的リチャード曲線(Richard's curve)式を使用してマイクロソフトエクセルで作成した(図13)。増幅の速度論は、異なる速度論を有する別の増幅方法のためにモデル化した。異なる、類似したまたは同一の速度論の別個の増幅方法を組み合わせる効果も、図13に示す。図13a、bおよびcの比較から分かることは、別個の異なる増幅方法を組み合わせることの増幅の全体速度に対する全体的効果は、3種類の速い増幅方法を組み合わせても、驚くほど小さいことである(図13c)。これは、ステムプライマーの効果が、付加的な増幅方法を単純に付加するよりも増幅速度を根本的に増加することであることを強調している。
【0117】
実施例5
(A)リステリア・モノサイトゲネスのステムによって加速されたTRAに対する置換プライマーおよび外部ループ形成プライマーの効果の比較
リステリア・モノサイトゲネスInlA遺伝子の断片を含有するpLSプラスミドを55℃で、TRA-BARTで、特注の画像処理ハードウェアシステムであるLucy(Lumora)において、実施例2の条件と同一の条件で、多量または少量、10または10のプラスミドを用いて増幅した。各反応の全量は20μlであった。試験は100分行った。R−LFP(3)、F−LFP(3)、ステムF(1)およびステムR(1)それぞれ0.8μMを含有する反応とOuterR(1)およびOuterF(1)またはOuterR−LFP(7)およびOuterF−LFP(7)をそれぞれ0.8μM添加した反応の比較を行った。
【0118】
LFPプライマーセット3
R−LFP(3) 5’−cct tct ttt aca ggc tta gct ggt ttt gga agc tgg gaa ttt att gag tg
F−LFP(3) 5’−gga att tca gta cgg ata aaa tgc cgt ttt gcg cat ata aat cga tgt cat ttg
ステムプライマーセット1
ステムF(1) 5’−tca aac cac cca aca aat g
ステムR(1) 5’−aac cgg cgg aac taa at
置換プライマーセット1
RD(1) 5’−taa tgc taa gtt tca tgt g
FD(1) 5’−ata atc tac tgt ttg aga tg
OuterLFPプライマーセット7
R−LFP(7) 5’−ctt ctt tgg ttg ttt ctt tgc ctt ttt gct aag ttt cat gtg gac
F−LFP(7) 5’−gta tta aca gct aca cag caa cgt ttt gag atg ttg tta cac cgt c
【0119】
この実施例においてステムによって加速されるTRAは、コピー数10および10の両方が23分および35分のそれぞれにピークがあるInlA遺伝子の迅速な増幅を生じる。異なる2つの外部プライマーセットを添加すると、高コピー数および低コピー数のピーク時間が18分および31分に対応して減少した(図15a)。置換プライマーをLFPに置換すると、増幅反応が迅速に進行する(図15a(iii))。
【0120】
(B)ステムによって加速されるサルモネラ・エンテリティディスネステッドTRA
サルモネラ・エンテリティディス侵入性A(InvA)遺伝子の断片を含有するpLS−プラスミドは、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen)を使用して精製し、TRA-BARTで、55℃で、特注の画像処理ハードウェアシステムであるLucy(Lumora)を使用して増幅した。反応混合物は以下を含有した。数種の安定化剤および添加物および多量または少量のプラスミド、10または10を含む1×Thermopol緩衝液(NEB)中の、以下に示したような内部および/または外部リバースおよびフォワードLFPそれぞれ0.8μM、StemB0.8μMおよびステムFプライマー0.8μM(Eurofins MWG)、dNTP(合計)1.6mM(Invitrogen)、Bst DNAポリメラーゼ0.16U/μl(NEB)、ルシフェリン0.1mg/ml(Europa Bioproducts)、アデノシン5’−ホスホスルフェート0.25mM(Biolog)、ホタルルシフェラーゼ5.6μg/μl(Ultra Glow、Promega)、ATP-スルフリラーゼ0.375U/ml(NEB)。各反応の全量は20μlであった。試験は100分行った。
【0121】
内部LFPプライマーセット4
R−LFP(4) 5’−gga gca atg gcg cgt tat att tgt ttt cgc cat tgg cga att tat g
F−LFP(4) 5’−cac aat gcg agc gct tcc ttt tta agc gaa cgt gtt tcc g
外部LFPプライマーセット5
R−LFP(5) 5’−cga att acg agc agt aat ggt ttt tca tcc tca act tca gca g
F−LFP(5) 5’−caa acg ctg caa aac ttc agt ttt tta aag aag tgc tca gac atg
ステムプライマーセット2
ステムF(2) 5’−cct tgt gga gca tat tcg
ステムB(2) 5’−gac atc ttt ttc tct tgg cg
【0122】
このサルモネラ・エンテリティディスInvA TRA系では、個々に使用したLFPの両セットは非常に遅いので、アッセイの100分以内の標的コピー数が10の高さでも検出することができなかった。ステムプライマーが存在しない場合のネステッドTRAでは、増幅は、68分にピークを有する高標的コピー数のみを検出するのに十分な速さであった。ステムプライマーを添加すると、速度の増加が生じ、ピーク時間34分および61分に対応する高および低標的コピー数の両方が検出可能になった(図15)。この実施例は、様々な標的およびLFPの様々な表現型について、ステムプライマーによる増幅の加速が認められることを示している。
【0123】
実施例6
ステムによって加速されたリステリア・モノサイトゲネスLAMP
リステリア・モノサイトゲネスインターナリンA遺伝子の断片を含有するpLSプラスミドを55℃で、TRA-BARTで、特注の画像処理ハードウェアシステムであるLucy(Lumora)において、実施例2の条件と同一の条件で、多量または少量、10または10のプラスミドを用いて増幅した。各反応の全量は20μlであった。試験は100分行った。完全なLAMPプライマーミックス(各LFP0.8μM、各ループプライマー0.4μM、各置換プライマー0.2μM)を含有する反応とステムRプライマー0.8μMおよびステムFプライマー0.8μMを添加した反応とを比較した。
【0124】
LFPプライマーセット1
R−LFP(1) 5’−cct tct ttt aca ggc tta gct ggt ttt tca aag aaa caa cca aag aag tgg
F−LFP(1) 5’−gga att tca gta cgg ata aaa tgc cgt ttt att atc aaa cgt tgc tgt gta gc
ループプライマー
ループRc5’−cag tca ata aat tcc cag c
ループF 5’−cat cga ttt ata tgc gca at
置換プライマーセット1
RD(1) 5’−taa tgc taa gtt tca tgt g
FD(1) 5’−ata atc tac tgt ttg aga tg
ステムプライマーセット1
ステムF(1) 5’−tca aac cac cca aca aat g
ステムR(1) 5’−aac cgg cgg aac taa at
【0125】
これは、リステリア・モノサイトゲネスInlA標的の高および低コピー数を非常に迅速に検出したLAMP増幅の一例である。ステムプライマーがないと、10コピーは17分にピークがあり、10コピーは26分にピークがあった。ステムプライマーを添加すると反応がさらにいっそう加速され、ピーク時間が10コピーでは13分に、10コピー数では19分に短縮した(図16)。この場合、加速は、今まで開発された最も効率的な等温増幅系のひとつであるLAMPによって実現した。検出時間の短縮は、一般的に使用時点(point−of−use)での適用のため、および特に医学的診断におけるケア時点(point−of−care)での検査にとって、非常に重要である。
【0126】
実施例7
ステムプライマーの異なる方向によって加速したリステリア・モノサイトゲネスTRA
リステリア・モノサイトゲネスインターナリンA遺伝子の断片を含有するpLSプラスミドを、55℃で、特注の画像処理ハードウェアシステムであるLucy(Lumora)において、実施例2の条件と同一の条件で、多量または少量、10または10のプラスミドを用いてTRA−BARTで増幅した。各0.8μMで添加したステムR(3)およびステムF(3)プライマーの存在下および非存在下でのみ、R−LFP(3)およびF−LFP(3)プライマーを用いて実施した反応の比較を行った。
【0127】
LFPプライマーセット3
R−LFP(3) 5’−cct tct ttt aca ggc tta gct ggt ttt gga agc tgg gaa ttt att gag tg
F−LFP(3) 5’−gga att tca gta cgg ata aaa tgc cgt ttt gcg cat ata aat cga tgt cat ttg
ステムプライマーセット3
ステムF(3) 5’−agt tcc gcc ggt ttg
ステムR(3) 5’−aca ttt gtt ggg tgg ttt g
【0128】
この実施例では、アンプリコンのステム上の様々な位置のステムプライマーの加速効果を実施例2で示したものと比較して示した。TRA-BARTは、ステムプライマーがなくても、ピーク時間39分および69分に対応する高および低コピー標的の両方を検出した。ステムプライマーを添加すると反応が著しく加速され、ピーク時間が22分および39分に短縮した。ループプライマーとは異なり、LFPによって形成したループによって位置を厳密に決定し、方向を固定すると、ステムプライマーは内部F1〜B1領域の間のどこにでも位置することができ、任意の方向にすることができる。加速効果は、ステムプライマーの位置または方向とは関係なく認められる(図17)。
【0129】
配列
リステリアIlnA遺伝子断片(配列番号1)
GGCAATTTTTAATGCTAAGTTTCATGTGGACGGCAAAGAAACAACCAAAGAAGTGGAAGCTGGGAATTTATTGACTGAACCAGCTAAGCCTGTAAAAGAAGGTTATACATTTGTTGGGTGGTTTGATGCCCAAACCGGCGGAACTAAATGGAATTTCAGTACGGATAAAATGCCGACAAATGACATCGATTTATATGCGCAATTTAGTATTAACAGCTACACAGCAACGTTTGATAATGACGGTGTAACAACATCTCAAACAGTAGATTATCA
サルモネラInvA遺伝子断片(配列番号2)
TTTGCGAATAACATCCTCAACTTCAGCAGATACCATTACTGCTCGTAATTCGCCGCCATTGGCGAATTTATGACAAATATAACGCGCCATTGCTCCACGAATATGCTCCACAAGGTTAATGACATCTTTTTCTCTTGGCGCCCACAATGCGAGCGCTTCCATAATTAACTTCATATTACGCACGGAAACACGTTCGCTTAACAAACGCTGCAAAACTTCAGATATACGTTGTACCGTGGCATGTCTGAGCACTTCTTTAAGTAAATCAGGAAATTTCGCTTCCAGTTGGTCCAGCATATGTTTTGTTTCCTGAATACC
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図1e】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図2e】

【図3a】

【図3b】

【図3c】

【図4a】

【図4b】

【図4c】

【図5a】

【図5b】

【図5c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ核酸の合成方法であって、
a)少なくとも第1および第2の相互プライマー結合領域を含む標的鋳型を提供する工程、
b)第1および第2のセグメントを含む第1のプライマーを提供する工程であって、第1のセグメントが鋳型上の第1の相互プライマー結合領域と実質的に相補的であり、第2のセグメントがループを形成することができるように、第2のセグメントが、第1のプライマーの別の領域、または第1のプライマーの第1のセグメントから生成したアンプリコン中の領域に実質的に相補的な配列を含む、工程、
c)第1のセグメントを含み、第2のセグメントを含んでもよい第2のプライマーを提供する工程であって、第1のセグメントが鋳型上の第2のプライマー結合領域に実質的に相補的であり、第2の領域がループを形成することができるように、前記含まれてもよい第2のセグメントが、第2のプライマー中の別の領域または第2のプライマーの第1のセグメントから生成したアンプリコン中の領域に実質的に相補的な配列を含む、工程、
d)第1および第2の相互プライマー結合領域の間の領域に結合することができる少なくとも1個のステムプライマーを提供する工程、
e)ポリ核酸の合成を実施するために必要な試薬および条件を提供する工程、
f)ポリ核酸の合成を実施する工程
を含む方法。
【請求項2】
合成が、ループ媒介等温増幅(LAMP)、鋳型リプライミング増幅(TRA)、自己伸長増幅(SEA)およびSMart増幅法(SMAP)からなる群から選択される核酸増幅技法を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フォワードおよび/またはリバース相互プライマー結合領域が2個以上のプライマーの結合部位を含む、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
フォワードおよび/またはリバース相互プライマー結合領域に結合する前記2個以上のプライマーが同じ種類である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フォワードおよび/またはリバース相互プライマー結合領域に結合するプライマーがループ提供プライマー(LPP)である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記2個以上のプライマーがループ形成プライマーである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
フォワードおよび/またはリバース相互プライマー結合領域に結合する前記2個以上のプライマーが異なる種類である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記2個以上の結合部位が全て標的鋳型および/またはアンプリコンの同じ鎖上に位置する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記2個以上の結合部位が標的鋳型および/またはアンプリコンの異なる鎖上に位置する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
フォワードおよびリバース相互プライマー結合部位が、ポリ核酸の合成がステムプライマー(複数可)の存在下においてのみ生じ得るように離れて位置する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
試料中のメチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)を検出するために使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
MRSAがmecA遺伝子およびorfX配列を使用して検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)において、1個のステムプライマーが使用される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)において、2個以上のステムプライマーが使用される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程(d)において使用される前記2個以上のステムプライマーが同じ種類である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(d)において使用される前記2個以上のステムプライマーが異なる種類である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
工程(d)において使用される前記2個以上のステムプライマーがアンプリコンの相互鎖に結合する、請求項14から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
工程(d)において使用される前記2個以上のステムプライマーがアンプリコンの同じ鎖に結合する、請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ステムプライマー(複数可)が単純プライマー(複数可)、ループ形成プライマー(複数可)、ヘアピンプライマー(複数可)またはループ提供プライマー(複数可)である、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ステムプライマー(複数可)が改変塩基を含有する、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記改変塩基が、N4−メチルシトシン、イノシン、リボヌクレオチド、蛍光塩基、光分解塩基またはユニバーサル塩基からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ステムプライマー(複数可)が、検出可能な部分で標識された核酸を含有する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記検出可能な部分が、蛍光標識、化学発光標識または電気化学的標識である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記標識されたステムプライマーが、蛍光、化学発光または電気化学的レポーター系においてプローブとして使用される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ポリ核酸の増幅が、遺伝子アレイ、ラテラルフローストリップ、電気泳動、質量分析および音波検出からなる群から選択される方法によって検出される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ステムプライマー(複数可)が、捕捉部分で標識された核酸を含有する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記捕捉部分がビオチンである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
核酸の合成が、リアルタイム測定または終点測定を使用して検出される、請求項1〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
ポリ核酸の増幅が、蛍光、生物発光、濁度または電気化学的測定からなる群から選択される検出系によって検出される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
核酸の合成がリアルタイムでの生物発光アッセイ(BART)レポーター系を使用して検出される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
密封された容器中で実施される、請求項1〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
生物の遺伝子コード中の特定のポリ核酸配列の存在を決定するための請求項1〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
一塩基多型(SNP)の検出のための請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
診断用途で使用するための請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
試料中の生物の検出または定量において使用するための請求項1〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記生物が微生物である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記微生物が、ウイルス、細菌、マイコプラズマおよび真菌からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記微生物が遺伝子改変生物(GMO)である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
遺伝子改変穀物を同定するため、遺伝子改変動物を同定するため、疾患状態を検出するため、治療による有害反応を予測するため、または疾患状態感受性を予測するための請求項1〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記請求項のいずれかに記載の方法を実施するためのキットであって、少なくとも1個のステムプライマーを含むキット。
【請求項41】
熱安定性ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよび無機ピロリン酸(PPi)をATPに変換する酵素および無機ピロリン酸(PPi)をATPに変換する酵素に必要な任意の他の基質または補因子をさらに含む、請求項39に記載のキット。

【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図14e】
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【図14f】
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【図14g】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2012−529904(P2012−529904A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515553(P2012−515553)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001169
【国際公開番号】WO2010/146349
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507030885)ルモラ・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】LUMORA LIMITED
【Fターム(参考)】