説明

ステントデリバリーカテーテルおよびプッシャチューブの製造方法

【課題】アウターシャフトとインナーシャフトの隙間を適切に設計できる上に、インナーシャフトを柔軟にでき、その結果、ステント留置性能の高めたステントデリバリーカテーテルを提供する。
【解決手段】インナーシャフトは、ガイドワイヤ誘導チューブ12と、そのガイドワイヤ誘導チューブ12を挿入するプッシャチューブ11とを含んでいるが、樹脂製のプッシャチューブ11のみが、スリットを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントデリバリーカテーテルおよびプッシャチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管または他の生体内管腔が狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するための医療用具である。具体的には、ステントは、狭窄部位または閉塞部位(病変部位)を拡張し、拡張された管腔サイズを維持するために、病変部位に留置される。
【0003】
ステントは、例えば、2種類のタイプ(型)が挙げられる。1つは、バルーンカテーテルにおけるバルーンによって拡張されるバルーン拡張型であり、もう1つは、拡張しようとするステントを外部から抑える部材が除去されることで、自ら拡張していく自己拡張型である。
【0004】
そして、自己拡張型のステントを搬送する自己拡張型ステントデリバリーカテーテルは、遠位端および近位端を有した円筒構造であり、自己拡張型ステントを内腔に保持するアウターシャフトと、アウターシャフト内腔に挿入されるインナーシャフトとを含む。
【0005】
詳説すると、アウターシャフトとインナーシャフトとは、それぞれ独立しており、アウターシャフトの内腔に、インナーシャフトが挿入されることで、両シャフトは同軸上に配置される。そして、アウターシャフトが、インナーシャフトに対して、スライドすることで、アウターシャフトにおける内腔の先端付近に縮径状態で取り付けられている自己拡張型ステントが、インナーシャフトの一部に接触し、アウターシャフトの内腔から押し出され、経皮的に患者の体管腔内の治療部位に留置される(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/13396
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のようなステントデリバリーカテーテルの課題として、安全で正確なステントの留置が挙げられる。ステントをアウターシャフトの内腔から押し出すインナーシャフトの剛性が大きいと、ステントを正確に留置することができる。しかし、インナーシャフトの外径が小さいと、アウターシャフトとインナーシャフト間の隙間が大きくなり、インナーシャフトの剛性に関わらずアウターシャフト内でインナーシャフトが撓んでしまい、正確なステント留置が難しくなる。
【0008】
例えば特許文献1の記載によると、インナーシャフトが軸方向の剛性を有するよう、インナーシャフトの一部に、金属チューブを用いている。さらに金属チューブに螺旋状のスリットを連続的に施すことで、柔軟性を担保している。しかし、螺旋状スリット等、微細加工を必要とする金属チューブでは、金属チューブの厚みは薄くならざるを得ず、アウターシャフトとインナーシャフトとの隙間が大きくなってしまい、ステント留置性能を損ねてしまう恐れがある。
【0009】
本発明が解決しようとするところは、アウターシャフトとインナーシャフトの隙間を適切に設計できる上に、インナーシャフトを柔軟にでき、その結果、ステント留置性能の高めたステントデリバリーカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ステントデリバリーカテーテルは、アウターシャフトと、アウターシャフト内部に挿入されるインナーシャフトとを含む。そして、ステントデリバリーカテーテルでは、インナーシャフトは、ガイドワイヤ誘導チューブと、ガイドワイヤ誘導チューブを挿入するプッシャチューブとを含み、樹脂製のプッシャチューブのみが、スリットを含む。
【0011】
また、プッシャチューブの伸び方向において、複数のスリットが並んで形成される場合、スリットの入れ込み方向が、複数種類有ると好ましい。
【0012】
また、スリットの入れ込み方向の1つを第1入れ込み方向とし、その方向に入れ込まれるスリットを第1スリット、第1入れ込み方向に対する別方向を第2入れ込み方向とし、その方向に入れ込まれるスリットを第2スリットとすると、並列する複数のスリットの群の少なくとも一部では、第1スリットと第2スリットとが、交互に並ぶと好ましい。
【0013】
また、並列する第1スリットと第2スリットとの間に、第1入れ込み方向および第2入れ込み方向とは異なる第5入れ込み方向に、入れられるスリットである第5スリットが、形成されると好ましい。
【0014】
また、順に並列する第1スリット、第5スリット、および第2スリットにおいて、これらスリットの入れ込み方向を、プッシャチューブの伸び方向における1つの交差断面に投影させてみると、第1入れ込み方向、第5入れ込み方向、および第2入れ込み方向は、放射状に把握されると好ましい。
【0015】
また、プッシャチューブの伸び方向において、複数の第5スリットが並んで形成される場合、スリットの第5入れ込み方向の1つを第3入れ込み方向とし、その方向に入れ込まれる第5スリットを第3スリット、第3入れ込み方向に対する別方向を第4入れ込み方向とし、その方向に入れ込まれる第5スリットを第4スリットとすると、並列する複数の第5スリットの群の少なくとも一部では、第3スリットと第4スリットとが、交互に並ぶと好ましい。
【0016】
また、順に並列する第1スリット、第3スリット、第2スリット、および第4スリットにおいて、これら上記スリットの入れ込み方向を、プッシャチューブの伸び方向における1つの交差断面に投影させてみると、第1入れ込み方向、第3入れ込み方向、第2入れ込み方向、および第4入れ込み方向は、放射状に把握されると好ましい。
【0017】
また、第1入れ込み方向と第2入れ込み方向とが正逆方向の関係にあると好ましい。
【0018】
また、第1入れ込み方向と、第5の入れ込み方向と、第2入れ込み方向とが、交差断面において、120°の間隔で放射配置の関係にあると好ましい。
【0019】
また、第1入れ込み方向と、第3入れ込み方向と、第2入れ込み方向と、第4入れ込み方向とが、交差断面において、90°の間隔で放射配置の関係にあると好ましい。
【0020】
また、インナーシャフトは、ガイドワイヤ誘導チューブにつながるプッシャワイヤーを含むと好ましい。
【0021】
また、ガイドワイヤ誘導チューブと、プッシャチューブとが一体成形されていると好ましい。
【0022】
また、アウターシャフトの少なくとも一部が、金属と樹脂との複合チューブで形成されていると好ましい。
【0023】
また、ステントデリバリーカテーテルは、オーバー・ザ・ワイヤー型、または、ラッピド・エクスチェンジ型であると好ましい。
【0024】
また、ステントは、自己拡張型ステント、または、自己拡張型ステントグラフトであると好ましい。
【0025】
なお、ステントデリバリーカテーテルに含まれるプッシャチューブの製造方法は、プッシャチューブの本体となる樹脂チューブを用意する用意工程と、樹脂チューブにスリットを入れ込む入れ込み工程と、樹脂チューブに対して熱を加える加熱工程と、を含む。
【0026】
また、入れ込み工程では、少なくとも2方向から、スリットを入れ込むと好ましい。
【0027】
また、加熱工程は、樹脂チューブに張力をかけた状態で行われると好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のステントデリバリーカテーテルによれば、アウターシャフトとインナーシャフトの隙間を適切に設計できる上に、インナーシャフトを柔軟にでき、その結果、ステント留置性能を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図2】は、ステントデリバリーカテーテルに含まれるアウターシャフトの説明図である。
【図3】は、ステントデリバリーカテーテルに含まれるインナーシャフトの説明図である。
【図4】は、ステントの斜視図である。
【図5】は、アウターシャフトに装着されたステント等を示す断面図である(図1のA−A’線矢視断面図である)。
【図6】は、アウターシャフト内のプッシャチューブ等を示す断面図である(図1のB−B’線矢視断面図である)。
【図7】は、アウターシャフト内のプッシャチューブ等を示す断面図である(図1のC−C’線矢視断面図である)。
【図8】は、アウターシャフト内のプッシャチューブ等を示す断面図である(図1のD−D’線矢視断面図である)。
【図9】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図10】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図11】は、アウターシャフト内のプッシャチューブ等を示す断面図である(図10のE−E’線矢視断面図である)。
【図12】は、アウターシャフト内のプッシャチューブ等を示す断面図である(図10のF−F’線矢視断面図である)。
【図13】は、アウターシャフト内のプッシャチューブ等を示す断面図である(図10のG−G’線矢視断面図である)。
【図14】は、アウターシャフト内のプッシャチューブ等を示す断面図である(図10のH−H’線矢視断面図である)。
【図15】は、スリットの入れ込み方向を示す説明図である。
【図16】は、スリットの入れ込み方向を示す説明図である。
【図17】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図18】は、アウターシャフト内のプッシャチューブ等を示す断面図である(図18のJ−J’線矢視断面図である)。
【図19】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図20】は、ステントデリバリーカテーテルに含まれるインナーシャフトの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。逆に、便宜上、断面図でなくてもハッチングを使用することもある。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されていることもある。
【0031】
また、ステントデリバリーカテーテルの両側において、ステントを収容する側を遠位側と称し、この遠位側に対する反対側を近位側と称する(なお、遠位側の端を遠位端、近位側の端を近位端とも称する)。また、ステントを装着したデリバリーカテーテルを、ステントデリバリーカテーテルと称する場合もあるし、デリバリーカテーテル自体をステントデリバリーカテーテルと称する場合もある。
【0032】
図1は、自己拡張型のステント39を装着したステントデリバリーカテーテル49を示す。図2は、図1の自己拡張型のステントデリバリーカテーテル49に含まれるアウターシャフト29を示す。図3は、図1の自己拡張型ステントデリバリーカテーテル49に含まれるインナーシャフト19を示す(なお、インナーシャフト19は、アウターシャフト29のルーメン29Lに収容される)。図4は、自己拡張型ステント39の一例を示し、図5は、アウターシャフト29に装着されたステント39を示す断面図である(なお、図5は、図1のA−A’線矢視断面図である)。
【0033】
図4に示される自己拡張型ステント39は、環状の略波形構成要素31を一方向に沿って連続的に配置させることで形成される。略波形構成要素31は伸長するストラット32をつなげることで形成される。そして、このステント39は、アウターシャフト29のルーメン29Lの先端に収容される。なお、自己拡張型ステントに樹脂製チューブを被覆させた場合、そのステント39はステントグラフトと称される。
【0034】
図2に示されるアウターシャフト29は、自身のルーメン29Lの遠位側にて、自己拡張するステント39を縮径した状態で保持する。また、このアウターシャフト29は、ステント39を留置する場合に生じる力に耐えうる強度を有しなくてはならない。そのために、アウターシャフト29は、血管追従時に折れない柔軟性と耐キンク性とを有する材料で形成される。例えば、アウターシャフト29(例えば、遠位側の一部を構成するチューブ;遠位チューブ)は、物性例として、引張強度が20N以上、キンク時曲げ半径15mm以下を有すると好ましい。
【0035】
このような物性を担保するために、アウターシャフト29は、内層21、補強層22、および外層23を含む多層チューブ(金属と樹脂とを含む多層チューブ)であると好ましい。
【0036】
内層21は、低摩擦材料で形成されると好ましい。なぜなら、内層21が低摩擦材料であると、アウターシャフト29のルーメン29Lに収容されるステント39が、体内に留置される場合、アウターシャフト29が、低摩擦でなるべく荷重を生じさせずに、インナーシャフト19に対してスライドするためである。なお、低摩擦材料としては、例えば、フッ素系樹脂または高密度ポリエチレンが挙げられる。
【0037】
補強層22は、柔軟性または耐キンク性を有するように、金属性の素線または樹脂の素線で形成されると好ましい。これら素線の一例としては、例えば、ステンレス鋼性素線またはナイチノール製素線が挙げられる。また、補強層22はブレード構造またはコイル構造になっている。
【0038】
なお、アウターシャフト29が多層チューブの場合、この多層チューブを作製する工程で、補強層22を内層21に固定するために、ブレード構造またはコイル構造の補強層22の遠位端および近位端に、例えばPt:Ir合製のリング状の編組マーカ(不図示)が配置される。
【0039】
外層23は、アウターシャフト29の製造時に、溶着または接着可能な材料で形成されると好ましい。このような材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ナイロン、または、ポリエチレンが挙げられる。
【0040】
なお、アウターシャフト29の近位端にはハブ27が連結されており、このハブ27を介して、Y型コネクタ等は接続される。その結果、Y型コネクタを介して、造影剤等が、ステントデリバリーカテーテル49の遠位端まで放出される。
【0041】
図3に示されるインナーシャフト19は、ステント39を遠位側に保持したアウターシャフト29のスライドによって、ステント39を相対的に押し出す役割を有する。そのため、インナーシャフト19は、撓まずにステント39を正確に押し出し、かつ、押し出す軸方向に対して撓まない強度を有する。
【0042】
インナーシャフト19は、ガイドワイヤ(不図示)を通すためのガイドワイヤ誘導チューブ12、血管損傷を防止する先端チップ13、ステント39を押し出すステント圧迫部材14、プッシャチューブ11、およびインナー操作部17を含む。
【0043】
ガイドワイヤ誘導チューブ12は、ガイドワイヤ(不図示)を通過させられるサイズのルーメン19Lを有するチューブである。ガイドワイヤ誘導チューブ12の材料は、ポリイミド、ポリアミド系エラストマー、ナイロン、ポリエチレン、またはポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。また、ガイドワイヤ誘導チューブ12は、単層チューブでも多層チューブでも構わない。
【0044】
先端チップ13は、ガイドワイヤ誘導チューブ12の遠位側の端(遠位端)に配置される。なお、先端チップ13は、血管損傷を防止するために、エッジを含まない形状である。また、先端チップ13とステント圧迫部材14との間に、アウターシャフト29における縮径されたステント39が配置される(図1参照)。
【0045】
ステント圧迫部材14は、例えば金属チューブであり、ガイドワイヤ誘導チューブ12において、先端チップ13から一定距離乖離する付近に配置される{なお、ステント圧迫部材14と、ガイドワイヤ誘導チューブ12との接続(固定)は、接着、圧着、または溶着等、特に限定されない}。そして、このステント圧迫部材14は、アウターシャフト29の近位側へのスライドに応じて移動するステント39の手元端(近位端)に接し、作用点として押し出す役割を有する。なお、ステント圧迫部材として使用される金属は、例えば、ステンレス鋼、またはPtとIrとの合金が挙げられる。
【0046】
プッシャチューブ11は、例えば、円筒状の樹脂チューブで、ステント圧迫部材14を境に、近位側に配置され、ガイドワイヤ誘導チューブ12の表面(外側)を覆う。詳説すると、ステント圧迫部材14の近位端とプッシャチューブ11の遠位端とが接するように配置される(なお、プッシャチューブ11とガイドワイヤ誘導チューブ12との連結の仕方は、例えば、接着、溶着、または圧着が挙げられる)。プッシャチューブ11の形成材料としては、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、またはポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。
【0047】
なお、このプッシャチューブ11には、プッシャチューブ11の半径方向(プッシャチューブ11の伸び方向に対する直交方向ともいえる)に、スリットSTが入れ込まれ、複数のスリットSTは、プッシャチューブ11の伸び方向に並ぶ。このスリットSTに関しては、後に詳説する。
【0048】
インナー操作部17は、ガイドワイヤ誘導チューブ12を覆いつつ、プッシャチューブ11の近位端に連結される操作部であり、例えば、金属製中空管が挙げられる。なお、インナー操作部17は、ステント39留置の場合に、術者の手でステントデリバリーカテーテルを支えやすい大きさをしていると望ましい。
【0049】
ここで、図1、図3、および図6〜図8に示されるプッシャチューブ11に関して、詳説する(なお、図6は図1のB−B’線矢視断面図であり、図7は図1のC−C’線矢視断面図であり、図8は図1のD−D’線矢視断面図である)。
【0050】
図1に示すように、インナーシャフト19は、ガイドワイヤ誘導チューブ12と、そのガイドワイヤ誘導チューブ12を挿入するプッシャチューブ11とを含んでいるが、樹脂製のプッシャチューブ11のみが、スリットSTを含む。
【0051】
このようにスリットSTの刻まれたプッシャチューブ11が、ガイドワイヤ誘導チューブ12を覆っていると、プッシャチューブ11がガイドワイヤ誘導チューブ12の強度(ステント39の押し出す軸方向に対して撓まない強度)を補強しつつも、スリットSTに起因して、インナーシャフト19の柔軟性が低下しない。
【0052】
その上、スリットSTを含むプッシャチューブ11は、金属性ではなく、樹脂製である。通常、スリットを有する金属製のプッシャチューブであると、スリット等の加工のためには、比較的肉厚が薄くならざるを得ず、プッシャチューブ11の表面とアウターシャフト29におけるルーメン29Lの内壁との間隔を過度に乖離し、ステントデリバリーカテーテル49のステント39の留置精度が低下しやすい。
【0053】
しかしながら、スリットを有する樹脂製のプッシャチューブ11であると、プッシャチューブ11の表面とアウターシャフト29におけるルーメン29Lの内壁との間隔を適切に設計できるので、ステントデリバリーカテーテル49のステント39の留置精度が高くなる。
【0054】
また、スリットを有する金属製のプッシャチューブは、歪みやすく塑性変形しやすいため、ステントデリバリーカテーテルが血管内に引っかかった場合、極めて危険であるが、スリットを有する樹脂製のプッシャチューブ11を含むステントデリバリーカテーテル49では、そのような危険な事態が起きにくい。
【0055】
すなわち、以上のようなステントデリバリーカテーテル49によれば、アウターシャフト29とインナーシャフト19との隙間を適切に設計できる上に、インナーシャフト19を柔軟にでき、その結果、ステント39の留置性能を高められる。
【0056】
なお、スリットSTは、プッシャチューブ11の伸び方向において、複数並んで形成される。さらには、スリットSTは、プッシャチューブ11の伸び方向に対して交差する方向で、そのプッシャチューブ11に入れ込まれ(例えば、プッシャチューブ11の半径方向に沿って、スリットSTが入れ込まれ)、このスリットSTの入れ込み方向は、複数種類有る。そのため、インナーシャフト19の柔軟性が多様な方向に担保される。
【0057】
例えば、図6に示すように、プッシャチューブ11の伸び方向に対する交差断面(例えば、直交断面)における入れ込み方向の1つを第1入れ込み方向D1とする。このような第1入れ込み方向D1に入れ込まれたスリットST(第1スリットST1)は、図1に示すように、プッシャチューブ11の伸び方向において、複数並ぶ。
【0058】
また、図7に示すように、第1入れ込み方向D1に対して別方向である逆方向に入れ込まれたスリットSTも、図1に示すように、プッシャチューブ11の伸び方向において、複数並ぶ(なお、第1入れ込み方向D1に対して逆方向の入れ込み方向は、第2入れ込み方向D2と称され、この第2入れ込み方向D2で入れ込まれたスリットSTは、第2スリットST2と称される)。
【0059】
そして、第1スリットST1と第2スリットST2とは、同一の交差断面には存在せず、プッシャチューブ11の伸び方向において、ずれて形成される(要は、図1および図8に示すように、第1スリットST1と第2スリットST2との間には、スリットSTの無い部分が生じる)。例えば、プッシャチューブ11において、並列する複数のスリットSTの群の少なくとも一部では、第1スリットST1と第2スリットST2とが、交互に並ぶ(なお、全てのスリットST同士の間隔は一定であっても不規則であってもよい)。
【0060】
そして、このようなプッシャチューブ11を有するインナーシャフト19と、そのインナーシャフト19を同軸的に配置させたアウターシャフト29とを含むステントデリバリーカテーテル49は、図9に示すように、自己拡張型ステント39を留置する。詳説すると、インナーシャフト19が不動のまま、アウターシャフト29のみが近位側にスライドさせられることで、相対的にインナーシャフト19がステント39を押し出し、アウターシャフト29に保持されていたステント39が解放されることで、自己拡張し、目的の病変血管に留置される(すなわち、アウターシャフト29がスライドさせられるだけで、ステント39が放出されるため、このステントデリバリーカテーテル49は、不慣れな医療従事者でも、単純で容易に操作しやすい)。
【0061】
なお、スリットSTを有するプッシャチューブ11がインナーシャフト19に含まれることで、アウターシャフト29とインナーシャフト19との隙間が適切に設定され、インナーシャフト19が撓むこと無く、正確にステント39を留置させられる。さらに、プッシャチューブ11は、インナーシャフト19に、軸方向の剛性を担保させる。一方で、プッシャチューブ11の有するスリットSTは、ステントデリバリーカテーテル49に対して半径方向の柔軟性を担保させる。その結果、ステントデリバリーカテーテル49は、安全で、正確にステント39を留置させられる。
【0062】
なお、スリットSTの入れ込み長は、図6および図7に示すように、プッシャチューブ11の表面からプッシャチューブ11の中心軸に至るまでの長さであってもよいし、それ以下であってもよい。また、スリットSTでプッシャチューブ11を切断しない範囲で、スリットSTの入れ込み長は、プッシャチューブ11の表面からプッシャチューブ11の中心軸に至るまでの長さよりも長くてもよい(好ましくは、入れ込み長は、プッシャチューブ11の円周長さの半分を切断面にする、プッシャチューブ11の表面からプッシャチューブ11の中心軸に至るまでの長さがよい)。
【0063】
また、プッシャチューブ11の半径方向に沿うスリットSTを有するインナーシャフト19は、例えば、プッシャチューブの伸び方向に沿って螺旋状のスリットが形成されたインナーシャフトに比べて、患者の血管内でインナーシャフトが引っ張られる状況が生じた場合、歪みを起こしにくく、塑性変形しにくい構造である。
【0064】
なお、プッシャチューブ11に入れ込まれるスリットSTは、第1スリットST1および第2スリットST2に限定されるものではない。例えば、図10〜14に示されるようなプッシャチューブ11を含むステントデリバリーカテーテル49であっても構わない。なお、図10は、ステントデリバリーカテーテル49を示し、図11は図10のE−E’線矢視断面図であり、図12は図10のF−F’線矢視断面図であり、図13は図10のG−G’線矢視断面図であり、図14は図10のH−H’線矢視断面図であり、E地点からH地点は、プッシャチューブの伸び方向において並んでいる。
【0065】
これらの図によると、並列する第1スリットST1と第2スリットST2との間に、図11に示される第1入れ込み方向D1および図13に示される第2入れ込み方向D2とは異なる別方向[第5入れ込み方向]に、入れられるスリット[第5スリット]STが形成される(なお、時計の文字盤を利用して、第1入れ込み方向D1を0時方向、第2入れ込み方向D2を6時方向と称することもある)。
【0066】
別方向とは、例えば、図12に示すように、第1入れ込み方向D1に対し、遠位側を向いて時計回りで45°傾いた方向(第3入れ込み方向D3)が挙げられる。また、図14に示すように、第2入れ込み方向D2に対し、遠位側を向いて時計回りで45°傾いた方向(第4入れ込み方向D4)が、別方向の一例として挙げられる。
【0067】
すなわち、別方向の第3入れ込み方向D3と第4入れ込み方向D4とは、互いに別方向で、正逆方向の関係にあり、別表現すると、第3入れ込み方向D3は3時方向、第4入れ込み方向D4は9時方向に向いているといえる。
【0068】
そして、並列する複数の別方向のスリットSTの群の少なくとも一部では、第3入れ込み方向D3に入れ込まれたスリットST(第3スリットST3)と第4入れ込み方向D4に入れ込まれた第4スリットST4とが、交互に並ぶ。
【0069】
その上、順に並列する第1スリットST1、第3スリットST3、第2スリットST2、および第4スリットST4において、これらスリットSTの入れ込み方向を、図15に示すように、プッシャチューブ11の伸び方向における1つの交差断面CSに投影させてみると、第1入れ込み方向D1、第3入れ込み方向D3、第2入れ込み方向D2、および第4入れ込み方向D4は、放射状に把握される。
【0070】
詳説すると、第1入れ込み方向D1と、第3入れ込み方向D3と、第2入れ込み方向D2と、第4入れ込み方向D4とが、交差断面CSにおいて、90°の間隔で放射配置の関係になる。
【0071】
このようなプッシャチューブ11であると、プッシャチューブ11の周囲に多方向からのスリットSTが入れ込まれることになり、インナーシャフト19の柔軟性が一層、多様な方向に担保される(なお、全てのスリットST同士の間隔は一定であっても不規則であってもよい)。
【0072】
なお、交差断面CSにおける入れ込み方向の放射配置の関係は、図15に示されるような4方向の入れ込み方向の均等配置の関係に限定されず、例えば、図16に示されるように、3方向の入れ込み方向の均等配置の関係であってもよい。
【0073】
例えば、スリットの入れ込み方向の1つを入れ込み方向Da[第1入れ込み方向]とし、その方向に入れ込まれるスリットをスリットSTa[第1スリット]、入れ込み方向Daに対する別方向を入れ込み方向Db[第2入れ込み方向]とし、その方向に入れ込まれるスリットをスリットSTb[第2スリット]とし、並列するスリットSTaとスリットSTbとの間に、入れ込み方向Daおよび入れ込み方向Dbとは異なる入れ込み方向Dc[第5入れ込み方向]に入れられるスリットをスリットSTc[第5スリット]とする。
【0074】
そして、順に並列するスリットSTa、スリットSTc、およびスリットSTbにおいて、これらスリットの入れ込み方向を、プッシャチューブ11の伸び方向における1つの交差断面CSに投影させてみると、図16に示すように、入れ込み方向Da、入れ込み方向Dc、および入れ込み方向Dbが、放射状に把握されてもよい。
【0075】
このようになっていると、入れ込み方向Daと、入れ込み方向Dcと、入れ込み方向Dbとが、交差断面CSにおいて、120°の間隔で放射配置の関係になる(なお、全てのスリットST同士の間隔は一定であっても不規則であってもよい)。そして、このようなプッシャチューブ11であっても、プッシャチューブ11の周囲に多方向からのスリットSTが入れ込まれることになり、インナーシャフト19の柔軟性が一層、多様な方向に担保される。
【0076】
なお、プッシャチューブ11へのスリットSTの入れ込み方(すなわち、スリットSTを含むプッシャチューブ11の製造方法)は、以下の通りである。
【0077】
スリットSTは、剃刀を用いて形成する。詳説すると、剃刀を用いて、樹脂製チューブ(プッシャチューブ11の基になるチューブ)に切り込みを入れ込む。切り込みの間隔(すなわちスリットSTの間隔)は、一定でも、不規則でも構わない。
【0078】
切り込みの方向は、樹脂チューブの半径方向である。そして、樹脂チューブの横断面を時計の文字盤に例えると、例えば、0時,6時の方向(2方向)、0,3,6,9時の方向(4方向)、0時,4時,8時の方向(3方向)に、プッシャチューブ11を遠位側から近位側に向かって、順番に切り込んでいくと好ましい。
【0079】
なお、樹脂チューブに対して切れ込みを形成していく過程では、その樹脂チューブは、遠位端および近位端に、錘等を取り付け、張力を生じさせた状態で、熱処理されていると好ましい。
【0080】
また、ガイドワイヤ誘導チューブ19と、プッシャチューブ11とが一体成形されていてもよい。なお、このようなガイドワイヤ誘導チューブ19とプッシャチューブ11とを含む一体型のチューブの場合、スリットST形成のために部分的に肉厚になった樹脂チューブが用いられ、切れ込みを形成していく過程では、その樹脂チューブは、遠位端および近位端に、錘等を取り付け、張力を生じさせた状態で、熱処理されていると好ましい。
【0081】
また、スリットSTを生じさせるような金型を用いた射出成形で、ガイドワイヤ誘導チューブ19とプッシャチューブ11とを含む一体成形型のチューブが形成されてもよい。
【0082】
[実施の形態2]
実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1で用いた部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付記し、その部材の種々説明を省略する。
【0083】
実施の形態1では、図1に示すように、インナーシャフト19は、ガイドワイヤ誘導チューブ12を被覆するプッシャチューブ11を含んでいたが、さらに別部材が含まれていてもよい。例えば、図17および図18(図17のJ−J’線矢視断面図)に示すように、プッシャワイヤー16がインナーシャフト19に含まれていてもよい。
【0084】
詳説すると、プッシャワイヤー16は、プッシャチューブ11とガイドワイヤ誘導チューブ12との隙間に収まっており、ステント圧迫部材14の近位端付近とプッシャワイヤー16の遠位端付近とが揃った状態で、ガイドワイヤ誘導チューブ12の表面に重なるように配置される(すなわち、ステント圧迫部材14の近位端とプッシャチューブ11の遠位端とが接する)。そして、プッシャチューブ11は、ステント圧迫部材14を境に近位側のガイドワイヤ誘導チューブ12と、プッシュワイヤー16とを覆う。
【0085】
なお、プッシャワイヤー16は、例えば金属で形成され、ステンレス鋼またはニッケルチタンが挙げられる。
【0086】
このようなインナーシャフト19を含むステントデリバリーカテーテル49であっても、実施の形態1で説明したプッシャチューブ11が、ガイドワイヤ誘導チューブ12を覆っていると、プッシャチューブ11がガイドワイヤ誘導チューブ12の強度を補強しつつも、スリットSTに起因して、インナーシャフト19の柔軟性が低下しない。その結果、実施の形態1で説明した作用効果が奏ずる。
【0087】
[実施の形態3]
実施の形態3について説明する。なお、実施の形態1・2で用いた部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付記し、その部材の種々説明を省略する。
【0088】
実施の形態1・2では、図1および図17に示すように、インナーシャフト19の全長に、ガイドワイヤルーメン19Lを含ませたオーバー・ザ・ワイヤー型のステントデリバリーカテーテル49を例にしていたが、これに限定されるわけではない。
【0089】
例えば、図19に示すように、シャフトチューブ全長における一部分に、ガイドワイヤルーメンを形成した高速交換型(ラッピド・エクスチェンジ型)のステントデリバリーカテーテル49であっても構わない。
【0090】
このような高速交換型のステントデリバリーカテーテル49では、アウターシャフト29は、遠位側に配置される遠位チューブ24、遠位チューブ24につなげられる中間チューブ25、2孔型の中間チューブ25につなげられる近位チューブ26を含む(なお、遠位チューブ24と中間チューブ25とのつなぎ目付近は、両チューブ24・25が混ざり合うようになり、この部分を遷移部分MXと称する)。
【0091】
インナーシャフト19は、ガイドワイヤ誘導チューブ12を、アウターシャフト29にて2孔部分を有する中間チューブ25の1孔に挿入させる一方、もう1つの孔にプッシャワイヤー16を挿入させる。
【0092】
このようなインナーシャフト19を含むステントデリバリーカテーテル49であっても、実施の形態1で説明したプッシャチューブ11が、ガイドワイヤ誘導チューブ12を覆っていると、プッシャチューブ11がガイドワイヤ誘導チューブ12の強度を補強しつつも、スリットSTに起因して、インナーシャフト19の柔軟性が低下しない。その結果、実施の形態1で説明した作用効果が奏ずる。
【0093】
また、ガイドワイヤ誘導チューブ19と、プッシャチューブ11とが一体成形されていてもよい。このような場合、例えば、金型を使用することで、図20に示すように、プッシャチューブとガイドワイヤ誘導チューブとが一体的に射出成形されていてもよい。(なお、このような一体成形型のチューブ10には、プッシュワイヤー16が挿入できる穴16Lが空いており、その孔16Lにプッシュワイヤ16が挿入された後、接着される。
【実施例】
【0094】
以下に、ステントデリバリーカテーテル49の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0095】
(実施例1)
自己拡張型のステント39は、以下のようにして作製される。すなわち、φ(外径)2.2mmのニッケルチタン合金のパイプがレーザーカットされ、φ8.0mmまで拡張させられて熱処理を施されることで、拡張径8mm、軸方向の長さ(全長)45mmのステント39として、作製される。
【0096】
アウターシャフト29(外径2.08mm、内径1.78mm)は、以下のようにして作製される。まず、厚み40μmのPTFE被覆線(芯材はφ1.78mm軟銅線、日星電気社製)、幅100μm・厚み25μmのSUS304製素線、厚み50μm・外径2.05mmのPt:Ir製リングマーカー(造影マーカー、Pt:Ir=9:1/アクセレント社)、外径2.23mm・内径2.05mmのナイロン12製外層チューブ(ダイアミド/ダイセルデクサー社)、および、熱収縮チューブ(RNF-100-3/32、架橋ポリエチレン製/タイコエレクトロニクス社)が用意される。
【0097】
そして、PTFE被覆線に、素線16本が等間隔に配置させられ、4mm間隔でブレードされる。リングマーカーは、ブレーディングした被覆線の外側に同軸状に配置され、さらに固定される。
【0098】
次に、YAGレーザーにて、SUS素線の端部が切断され、その端部の鋭利な部分は、電解研磨にて溶解される。そして、850mmの外層チューブが、950mmのブレードした被覆線の外側に配置され、熱収縮チューブによって、ブレードした被覆線を被覆する。すると、外層チューブのみが、10mmリングマーカーの外側に配置される。
【0099】
次に、PTFE被覆線の芯材は、除去され、有効長830mmになるように、被覆線は切断される。これによりアウターシャフト29が完成する(なお、アウターシャフト29の近位端には、ハブ27がウレタン接着されている)。
【0100】
インナーシャフト19は、以下のようにして作製される。まず、ガイドワイヤ誘導チューブ12(外径0.73mm、内径0.53mm、長さ260mm、ポリイミド、マイクロルーメン社製)、プッシャワイヤー16(φ0.50mm、長さ1000mm、ヨコヲ社製)、樹脂チューブ(外径1.60mm、内径1.28mm、長さ700mm、ポリアミドエラストマー、アルケマ社製)、ステント圧迫部材14(外径1.61mm、内径1.25mm、長さ2mm、SUS304製)、熱収縮チューブ(ペンニットーAWG-20)、芯材(φ0.52mm、パリレンコーティング/プレシジョンワイヤ社製)、および、2液混合ウレタン接着材が用意される。
【0101】
そして、樹脂チューブの遠位側20mmから近位端にかけて、5mm間隔で、剃刀を使って切れ込みが入れられる。詳説すると、樹脂チューブの横断面(全長方向に対する直交等の断面)において、時計の0,3,6,9時の方向に沿うような切り込みを入れるために、90度ずつ樹脂チューブを回転させながら、5mm間隔で4つの方向に切れ込みが入れられる。切れ込みを入れられた樹脂チューブは、100℃のオーブンで1時間熱処理を行われる。なお、樹脂チューブは、3グラムの錘によって張力を掛けられた状態で加熱されており、これによって、切れ込みは隙間を生じさせ、スリットになる。この結果、プッシャチューブ11が完成する。
【0102】
プッシャワイヤー16は、ガイドワイヤ誘導チューブ12の遠位端から70mmの箇所に、自身の遠位端を接して、ガイドワイヤ誘導チューブ12と並行した状態で配置される。接した状態のガイドワイヤ誘導チューブ12とプッシャワイヤー16とは、プッシャチューブ11内へ挿入される。プッシャワイヤー16の遠位端とプッシャチューブ11の遠位端は、位置を揃えて配置される。そして、プッシャチューブ11の遠位端内に、ウレタン接着剤が1滴流し込まれ、1時間放置した後に、プッシャチューブの遠位端から10mmの範囲が熱溶着される。
【0103】
次に、ステント圧迫部材14は、プッシャワイヤー16の遠位端およびプッシャチューブ11の遠位端を覆うように配置され、ウレタン接着剤で接着される。これにより、インナーシャフト19は完成する{なお、インナーシャフト19の近位端に、インナー操作部17(外径1.61mm、内径0.51mm、長さ300mm、SUS304製)は、ウレタン接着剤で接着される}。
【0104】
そして、インナーシャフト19は、アウターシャフト29の近位端へ、インナーシャフト19の遠位端より挿入され、同軸状に配置される。これにより、図17に示される自己拡張型ステント39を装着するステントデリバリーカテーテル49は、完成する(なお、ステント39は、デリバリーカテーテル内に縮径させた状態でマウントされる)。
【0105】
(比較例1)
この比較例1のステントデリバリーカテーテルは、インナーシャフトが有するプッシャチューブにおいて、スリットが含まれない点だけ、実施例1のステントデリバリーカテーテル49と異なり、その他については、実施例1のステントデリバリーカテーテル49と同様である。
【0106】
(評価1)
実施例1および比較例1に関して、以下の評価1を実施した。詳説すると、ガイドワイヤは、十分、含水させられ、かつ、実施例1および比較例1のデリバリーカテーテルは、アウターシャフトおよびインナーシャフトのルーメン内に、十分、水を含ませておく。ガイドワイヤは、実施例1および比較例1のガイドワイヤ誘導管内に配置させられる。そして、37℃温水水槽内において、デリバリーカテーテルは温水中に浸されながら、PTFEチューブ(外径8mm・内径6mm)製の下肢血管モデル内に屈曲した状態で配置される。その後、インナー操作部が手で固定され、アウターシャフトのハブが近位側にスライドされることで、ステントが放出する。サンプル数は各1本である。
【0107】
(評価結果)
比較例1は、アウターシャフトが上手くスライドできず、デリバリーカテーテル全体が撓んでしまい、目的の位置にステントを留置できなかった。実施例1は、目的の位置にステントを留置することができた。
【符号の説明】
【0108】
11 プッシャチューブ
ST スリット
ST1 第1スリット
D1 第1入れ込み方向
ST2 第2スリット
D2 第2入れ込み方向
ST3 第3スリット[第5スリット]
D3 第3入れ込み方向[第5入れ込み方向]
ST4 第4スリット[第5スリット]
D4 第4入れ込み方向[第5入れ込み方向]
STa スリット[第1スリット]
Da スリットの入れ込み方向[第1入れ込み方向]
STb スリット[第2スリット]
Db スリットの入れ込み方向[第2入れ込み方向]
STc スリット[第5スリット]
Dc スリットの入れ込み方向[第5入れ込み方向]
12 ガイドワイヤ誘導チューブ
13 先端チップ
14 ステント圧迫部材
16 プッシャワイヤー
17 インナー操作部
19 インナーシャフト
19L インナーシャフトのルーメン
21 内層
22 補強層
23 外層
24 遠位チューブ
25 中間チューブ
26 近位チューブ
27 ハブ
29 アウターシャフト
29L アウターシャフトのルーメン
39 ステント
49 ステントデリバリーカテーテル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターシャフトと、上記アウターシャフト内部に挿入されるインナーシャフトとを含むステントデリバリーカテーテルにあって、
上記インナーシャフトは、ガイドワイヤ誘導チューブと、上記ガイドワイヤ誘導チューブを挿入するプッシャチューブとを含み、
樹脂製の上記プッシャチューブのみが、スリットを含むステントデリバリーカテーテル。
【請求項2】
上記プッシャチューブの伸び方向において、複数の上記スリットが並んで形成される場合、
上記スリットの入れ込み方向が、複数種類有る請求項1に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項3】
上記スリットの入れ込み方向の1つを第1入れ込み方向とし、その方向に入れ込まれるスリットを第1スリット、上記第1入れ込み方向に対する別方向を第2入れ込み方向とし、その方向に入れ込まれるスリットを第2スリットとすると、
並列する複数の上記スリットの群の少なくとも一部では、上記第1スリットと上記第2スリットとが、交互に並ぶ請求項2に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項4】
並列する上記第1スリットと上記第2スリットとの間に、上記第1入れ込み方向および上記第2入れ込み方向とは異なる第5入れ込み方向に、入れられる上記スリットである第5スリットが、形成される請求項3に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項5】
順に並列する上記第1スリット、上記第5スリット、および上記第2スリットにおいて、これら上記スリットの上記入れ込み方向を、上記プッシャチューブの伸び方向における1つの交差断面に投影させてみると、
上記第1入れ込み方向、上記第5入れ込み方向、および上記第2入れ込み方向は、放射状に把握される請求項4に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項6】
上記プッシャチューブの伸び方向において、複数の上記第5スリットが並んで形成される場合、
上記スリットの第5入れ込み方向の1つを第3入れ込み方向とし、その方向に入れ込まれる上記第5スリットを第3スリット、上記第3入れ込み方向に対する別方向を第4入れ込み方向とし、その方向に入れ込まれる上記第5スリットを第4スリットとすると、
並列する複数の上記第5スリットの群の少なくとも一部では、上記第3スリットと上記第4スリットとが、交互に並ぶ請求項5に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項7】
順に並列する上記第1スリット、上記第3スリット、上記第2スリット、および上記第4スリットにおいて、これら上記スリットの上記入れ込み方向を、上記プッシャチューブの伸び方向における1つの交差断面に投影させてみると、
上記第1入れ込み方向、上記第3入れ込み方向、上記第2入れ込み方向、および上記第4入れ込み方向は、放射状に把握される請求項6に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項8】
上記第1入れ込み方向と上記第2入れ込み方向とが正逆方向の関係にある請求項3に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項9】
上記第1入れ込み方向と、上記第5の入れ込み方向と、上記第2入れ込み方向とが、上記交差断面において、120°の間隔で放射配置の関係にある請求項5に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項10】
上記第1入れ込み方向と、上記第3入れ込み方向と、上記第2入れ込み方向と、上記第4入れ込み方向とが、上記交差断面において、90°の間隔で放射配置の関係にある請求項7に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項11】
上記インナーシャフトは、上記ガイドワイヤ誘導チューブにつながるプッシャワイヤーを含む請求項1〜10のいずれか1項に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項12】
ガイドワイヤ誘導チューブと、上記プッシャチューブとが一体成形されている請求項1〜11のいずれか1項に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項13】
上記アウターシャフトの少なくとも一部が、金属と樹脂との複合チューブで形成されている請求項1〜12のいずれか1項に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項14】
オーバー・ザ・ワイヤー型、または、ラッピド・エクスチェンジ型の請求項1〜13のいずれか1項に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項15】
ステントは、自己拡張型ステント、または自己拡張型ステントグラフトである請求項1〜14のいずれか1項に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項16】
ステントデリバリーカテーテルに含まれるプッシャチューブの製造方法において、
上記プッシャチューブの本体となる樹脂チューブを用意する用意工程と、
上記樹脂チューブにスリットを入れ込む入れ込み工程と、
上記樹脂チューブに対して熱を加える加熱工程と、
を含むプッシャチューブの製造方法。
【請求項17】
上記入れ込み工程では、少なくとも2方向から、上記スリットを入れ込む請求項16に記載のプッシャチューブの製造方法。
【請求項18】
上記加熱工程は、上記樹脂チューブに張力をかけた状態で行われる請求項16または17に記載のプッシャチューブの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−239758(P2012−239758A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115074(P2011−115074)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】