説明

ステントデリバリーシステム及びその製造方法

【課題】
バルーンカテーテルの部品点数の増加や変更を伴わず、且つステントへの熱影響を与えることが無く、ステントが装着されたバルーンカテーテルを狭窄部まで挿入する際にステントの脱落や移動が生じないステントデリバリーシステム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 医療用ステントを患部へデリバリーするためのステントデリバリーシステムであって、バルーンが折畳まれた状態において前記ステントストラットによって少なくとも1つの、該バルーンの二次的な突出部が挟み込まれていることを特徴とするステントデリバリーシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的に、医療用、例えば血管、食道、気管、尿道、胆管等に形成された狭窄部の拡張治療に使用されるステントの導入及び配置用のステントデリバリーシステムに関するものであり、特に、心臓冠動脈の狭窄部におけるステントの導入及び配置用のステントデリバリーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステントは予め決定された寸法へ拡張されるときの機構により以下の2種類に大別される。1つは形状記憶合金等から構成されたステントであり、機械的なステントの拡張なしで拡張可能な自己拡張型ステント(self−expandable stent)である。もう1つは機械的なステントの拡張を必要とするステントであり、一般的には、脈管、特に動脈及び静脈等を拡張するために使用される公知のバルーンカテーテルにより拡張されるバルーン拡張型ステント(balloon−expandable stent)である。
【0003】
バルーン拡張型ステントは、ステントそのものに拡張機能はなく、ステントを所望の狭窄部へ留置するためには、バルーンカテーテルのバルーン部に装着されたステントを所望の狭窄部まで配置した後、バルーンを拡張し、バルーンの拡張力によりステントを塑性変形させることで狭窄部の内面に密着させる方法が一般的に実施されている。
バルーン拡張型ステントを上記の方法で留置する場合、ステントがバルーン部に装着されたバルーンカテーテルを狭窄部まで挿入する必要があり、挿入時にステントがバルーン上で移動しバルーンカテーテルから脱落する危険性がある。また、バルーンカテーテルに一般的に使用されているバルーンは円筒形状に拡張する直管部の前後に円錐台状のテーパー部が形成された形状であり、前記直管部の外面にバルーン拡張型ステントが装着される。挿入時にステントがバルーン上で移動しバルーンカテーテルから脱落しないまでも、直管部の前後にステントが移動するような場合、ステントの一方の端部がバルーンのテーパー部の外面に位置することとなる。この部分のバルーンはテーパー形状にしか拡張しないためステントの拡張不足を生じ、狭窄部の再狭窄(Restenosis)を生じる可能性が極めて高くなる。
【0004】
以上の観点から、バルーン拡張型ステントの留置用に用いられるバルーンカテーテルに該ステントの脱落或いは移動を防止する先行技術が開示されている。
【0005】
特許第3408663号公報では、ステントをカプセル化する手段を有する血管内支持装置が開示されている。本先行技術ではバルーンが折畳まれた状態のステントの周りで広がるようにバルーンの加熱と加圧、及び冷却によりカプセル化が実現される。
【0006】
しかし、こうしたバルーンの加熱と加圧、及び冷却のプロセスによりバルーンに熱的および物理的なダメージが発生し、耐圧強度の低下の発生が懸念されるばかりか、工程の煩雑化が懸念される。また、近年では薬剤をコーティングしたステント(DES)が用いられることが増えており、加熱と加圧、および冷却による薬剤へのダメージが発生し、効用の低下の発生が懸念される。
【0007】
特表2001−505116号公報では、バルーンからステントが動かないようにする為のステント保持手段を有するステント送給システムとして、バルーン外面に適合性材料の層を形成する技術、及び該適合性材料の層を有するバルーン外面にステントを埋め込み配置する技術が開示されている。
特開平9−276414号公報では、バルーンからステントが動かないようにする為のステント保持手段を有するステント送給システムとして、バルーン外面に摩擦係数の大きい層を形成する技術、及びバルーン内部に存在する内管に径の細い部分(サドル或いはシート)を設け、該シート部上のバルーン外面にステントを配置する技術が開示されている。
【0008】
いずれもステント保持手段としては有効であるものの、バルーンカテーテルへの設計要求が増え、デリバリーカテーテルとしての性能低下が予想され、また製造工程中に新たなプロセスを必要とし工程の煩雑化は否めない。
【0009】
特表2002−539888号公報は、拡張可能かつ移植可能な医療器具が取り付けられた医療用バルーンであって、医療用バルーンの表面は複数の突出部を有し、該突出部の少なくとも1部は、前記拡張可能かつ移植可能な医療器具を把持するように、前記拡張可能かつ移植可能な医療器具の下方に少なくとも部分的に設けられている医療用バルーンを開示する。
【0010】
特表2002−539889号公報は、中央部に少なくとも1つの位置マーキングを有する医療用バルーンを開示する。
【0011】
しかしこれらの先行技術では、金型ヒートセット法によって突出部をバルーンに組み込むところ、マーキング部位でのバルーンの不均一な拡張や耐圧強度の低下が懸念されるばかりか、工程の煩雑化が懸念される。
特表2004−527285号公報は、バルーンのある領域に一連のリッジを確定する、ステント配置装置を開示する。
【0012】
しかし本先行技術では、バルーンを型内で加熱して該リッジを形成するところ、リッジ部位でのバルーンの不均一な拡張や耐圧強度の低下が懸念されるばかりか、工程の煩雑化が懸念される。
【0013】
さらに、以上の先行技術には、バルーン上の二次的な突出部は開示も示唆もされていない。
【特許文献1】特許第3408663号公報
【特許文献2】特表2001−505116号公報
【特許文献3】特開平9−276414号公報
【特許文献3】特表2002−539888号公報
【特許文献4】特表2002−539889号公報
【特許文献5】特表2004−527285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、以上の問題に鑑み本発明が解決しようとする課題は、バルーンカテーテルの部品点数の増加や変更を伴わず、且つステントへの熱影響を与えることが無く、ステントが装着されたバルーンカテーテルを狭窄部まで挿入する際にステントの脱落や移動が生じないステントデリバリーシステム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かくして、本発明は、
(1)
医療用バルーンであって、該バルーンが折畳まれた場合に、表面上に二次的な突出部を備えるバルーン;
(2)
該バルーンが折畳まれた場合に、該表面上に少なくとも1つのウイングを有し、該二次的な突出部が、該ウイングの表面上に形成されることを、さらに備える、(1)記載のバルーン;
(3)
医療用ステントを患部へデリバリーするためのステントデリバリーシステムであって、
前記ステントデリバリーシステムはステントとステントデリバリーカテーテルとを備え、
前記ステントはステントストラットを有し、圧縮された第1直径から、患部に移植可能な第2直径まで拡張可能であり、
前記ステントデリバリーカテーテルが、(1)または(2)記載のバルーンと、該バルーンと流体連通可能に接続されるインフレーションルーメンとを有し、
ここで、前記バルーンが折畳まれた状態において前記ステントストラットによって少なくとも1つの、該バルーンの二次的な突出部が挟み込まれていることを特徴とするステントデリバリーシステム;
(4)
前記ステントが第1直径にあるときに、前記ステントは内径Diを有するように前記バルーンに圧接されており、かつ前記バルーンが折畳まれた状態において前記バルーンの二次的な突出部は、該バルーンが、前記内径Diよりも大きな外径Doを有するような高さを有し、(Do−Di)/2が、該ステントが第1直径にあるときのストラット間の周方向間隙長以上かつ、ストラット径方向厚さ以下であることをさらに備える(1)に記載のステントデリバリーシステム;
(5)
前記バルーンの遠位端および近位端の少なくとも一方に形成された少なくとも一つの保持部を有することをさらに備える(1)または(2)に記載のステントデリバリーシステム;
(6)
前記保持部がバルーンにより形成されていることをさらに備える(3)に記載のステントデリバリーシステム;
(7)
(3)記載のステントデリバリーシステムの製造方法であって、
(a)バルーン形成用パリソンを用意するステップと、
(b)該パリソンに第1圧力を印加して放射状に膨張させ、該第1圧力を解除し医療用バルーンを用意するステップと、
(c)インフレーションルーメンを有するデリバリーカテーテル用のチューブを、該医療用バルーンに、該医療用バルーンと該インフレーションルーメンとが流体連痛可能に接続して、ステントデリバリーカテーテルを得るステップと、
(d)ステントストラットを有し、患部に移植可能な第2直径にあるステントを用意するステップと、
(e)該ステントの内腔に該医療用バルーンを配置し、該医療用バルーンに第2圧力を印加するステップと、
(f)前記ステントストラットによって少なくとも1つの、該バルーンの二次的な突出部が挟み込まれるように、該ステントを圧縮された該第1直径までクリンピングするステップと、
を備える、製造方法;
(8)
該(f)ステップにおける該クリンピングするときに、該バルーンに印加された第2圧力を解除することをさらに備える、(7)記載の製造方法;
(9)
該(f)ステップにおける該クリンピングするときに、該バルーンに印加された第2圧力を保持することをさらに備える、(7)記載の製造方法;
(10)
前記ステントが第1直径にあるときに、前記ステントは内径Diを有するように前記バルーンに圧接されており、かつ前記バルーンが折畳まれた状態において前記バルーンの二次的な突出部は、該バルーンが、前記内径Diよりも大きな外径Doを有するような高さを有し、(Do−Di)/2が、該ステントが第1直径にあるときのストラット間の周方向間隙長以上かつ、ストラット径方向厚さ以下であることを、さらに備える、(7)〜(9)いずれか記載の製造方法;および
(11)
前記バルーンに第2圧力を供給するのを開始するときの、ストラット間の周方向間隙長が0.30mm〜0.12mmであることをさらに備える(7)〜(10)いずれかに記載の製造方法;
を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明(1)によれば、該バルーンが折畳まれた場合に、表面上に二次的な突出部を備えることで、該バルーンがステントデリバリーシステムに配置された場合、該バルーンが折畳まれた状態において、バルーン上に装着されるステントのステントストラットによって該突起部により前記ステントが前記バルーンに固定されることが容易である。
本発明(2)によれば、さらに、該表面上に少なくとも1つのウイングを有し、該二次的な突出部が、該ウイングの表面上に形成されることで、一般的なウイングを形成して折畳むバルーンにおいても、該突起部により前記ステントが前記バルーンに容易に固定される。
本発明(3)によれば、前記バルーンが折畳まれた状態において前記ステントストラットによって少なくとも1つの、該バルーンの二次的な突出部が挟み込まれていることで、バルーンカテーテルの部品点数の増加や変更を伴わず、且つステントへの熱影響を与えずに、ステントが装着されたバルーンカテーテルを狭窄部まで挿入する際にステントの脱落や移動が生じないステントデリバリーシステムを提供される。
本発明(4)によれば、さらに、前記ステントが第1直径にあるときに、前記ステントは内径Diを有するように前記バルーンに圧接されており、かつ前記バルーンが折畳まれた状態において前記バルーンの二次的な突出部は、該バルーンが、前記内径Diよりも大きな外径Doを有するような高さを有し、(Do−Di)/2が、該ステントが第1直径にあるときのストラット間の周方向間隙長以上かつ、ストラット径方向厚さ以下であることで、ステントプロファイルを小さくし、より強固にステントを固定することが可能となる。
本発明(5)によれば、さらに、前記バルーンの遠位端および近位端の少なくとも一方に形成された少なくとも一つの保持部を有することで、より強固にステントを固定することが可能となる。
本発明(6)によれば、さらに、前記保持部がバルーンにより形成されていることで、バルーンカテーテルの部品点数の増加や変更を伴わず、より強固にステントを固定することが可能となる。
本発明(7)によれば、上記ステントデリバリーシステムの製法が提供される。
本発明(8)によれば、さらに、該(f)ステップにおける該クリンピングするときに、該バルーンに印加された第2圧力を解除することで、工程の煩雑化を避ける事が可能となる。
本発明(9)によれば、さらに、該(f)ステップにおける該クリンピングするときに、該バルーンに印加された第2圧力を保持することで、安定して二次的な突起部を形成することが可能となる。
本発明(10)によれば、さらに、前記ステントが第1直径にあるときに、前記ステントは内径Diを有するように前記バルーンに圧接されており、かつ前記バルーンが折畳まれた状態において前記バルーンの二次的な突出部は、該バルーンが、前記内径Diよりも大きな外径Doを有するような高さを有し、(Do−Di)/2が、該ステントが第1直径にあるときのストラット間の周方向間隙長以上かつ、ストラット径方向厚さ以下であることで、ステントプロファイルを小さくし、より強固にステントをシステムに固定することが可能となる。
本発明(11)によれば、さらに、前記バルーンに第2圧力を供給するのを開始するときの、ストラット間の周方向間隙長が0.30mm〜0.12mmであることで、安全且つ確実に二次的な突起部を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明に係るステントデリバリーシステムの最良の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明のステントデリバリーシステムおよび医療用バルーンを説明する。
【0019】
ここで図1および図2<それぞれ提案時図3,4のことです、以下同じ>を参照すると、本発明の好ましいステントデリバリーシステムは、バルーン1が、ステントデリバリーカテーテル先端部に接続され、該バルーン上にステント10が装着されている。ここで、該バルーン1は、流体連通可能にインフレーションルーメン6に接続されている。本例では、ステントデリバリーカテーテルは、アウターチューブ2と、インナーチューブ3と、X線不透過マーカー4と、ガイドワイヤールーメン5とから構成される。本例では、バルーン1は、医療用バルーン、好ましくは生体内の狭窄部治療用のバルーンであり、直管部1Aと、ディスタル側テーパー部1Bと、プロキシマル側テーパー部1Cと、突起部1Dとを備える。本例のステントは、ステントストラット11と、保持部12とを備える。
【0020】
図1および図2の例では、同軸二重管状にアウターチューブ2とインナーチューブ3が配設されているが、前記インナーチューブの内部にガイドワイヤルーメン5及び前記アウターチューブ2の内面と前記インナーチューブ3の外面によって確定されるインフレーションルーメン6を有するコアキシャル(co−axial)型の構造でもよく、ガイドワイヤルーメン5とインフレーションルーメン6が平行に配設されたデュアルルーメンチューブによるバイアキシャル(bi−axial)型の構造でもよい。また、上記に例示した以外の構造であっても、本発明の効果を何ら制限するものではない。
【0021】
本発明に係るステントデリバリーカテーテルは、該カテーテルの先端側のみにガイドワイヤルーメン5を有する高速交換型カテーテル、或いは該カテーテルの全長に亘ってガイドワイヤルーメン5を有するオーバー・ザ・ワイヤ型カテーテルのいずれの構造も取り得ることが可能である。
ここで図2を参照すると、本発明の医療用バルーンは、折畳まれた場合に、表面上に二次的な突出部1Dを備えるバルーンである。該バルーンが折畳まれた場合に、該表面上に少なくとも1つのウイング1Eを有し、該二次的な突出部1Dが、該ウイングの表面上に形成されることが好ましい。本明細書にいう「二次的な突出部」とは、バルーン上に形成される、例えばウイングなどの一次的な突出部の上に形成される突出部を意味する。
再び図1を参照すると、一般的なバルーンカテーテルを使用する観点から、本例におけるバルーン1は円筒形状の直管部1Aと前記直管部の先端側に円錐台形状のテーパー部1Bを、前記直管部の後端側に円錐台形状のテーパー部1Cを有する形状である。前記テーパー部1B及び1Cにおけるテーパー角度は制限されず、任意の角度を選択可能である。
再び図2を参照すると、バルーン1は上記二次的な突出部1Dを形成可能であれば、特に形状、材質および構造等限定されない。前記バルーン1が折畳まれた状態において前記ステントストラット11によって少なくとも前記バルーン1の一部が挟み込まれることで形成される突起部1Dにより前記ステントが前記バルーンに固定されることが容易である観点からは、2枚以上のウイング(羽)形状に折り畳み可能であり、図2のようにバルーン1の内部を減圧しながらインナーチューブ3に沿ってウイング1Eを巻きつけることで細長く折畳むことが可能であるものが好ましい。
図1の例では、折畳まれたバルーン1の外面、好ましくは直管部1Aの外面に収縮状態のステント10を配設することで、バルーンカテーテルを用いてステント10を体内へ挿入可能となる。この時、図2のようにバルーン1の外面、好ましくはステント10が配設されている直管部1Aの外面の一次的な突起部、この例ではウイング1Eの一部が、ステント10のステントストラット11に挟まれ二次的な突起部1Dを形成している。この突起部1Dは、多い方が好ましいが、任意の突起数を選択可能である。なお、ステントについては後述する。
本発明の医療用バルーンは、生体内の狭窄部治療用のバルーンが好ましい。バルーン1は折り畳み可能であれば、特に形状、材質および構造等限定されないが、図1の例におけるバルーン1は円筒形状の直管部1Aと前記直管部の先端側に円錐台形状のテーパー部1Bを、前記直管部の後端側に円錐台形状のテーパー部1Cを有する形状である前記テーパー部1B及び1Cにおけるテーパー角度は制限されず、任意の角度を選択可能である。
本発明におけるステントは、前記ステントはステントストラットを有し、圧縮された第1直径から、患部に移植可能な第2直径まで拡張可能であることが必要である。
図1および2を参照すると、本例におけるステント10はバルーン拡張型ステントであって、ステントストラット11で構成され、バルーン1の外面に収縮状態で配設される時にステントストラット11間が均一に狭くなる。特に、ステントストラット11間が、ステントストラット11の厚さより狭くなるものが好ましいが、ステント10の材質や製造方法は制限されず、任意に選択可能である。
さらに、バルーン1の遠位端と近位端に保持部12を有することで、ステント10とカテーテル表面との間に滑らかな移行部を与えることにより、ステント送出を助けることがより好ましい。バルーンカテーテルの部品点数の増加や工程の煩雑化を避ける観点から、保持部12はバルーン1によって形成されるのがより好ましい。
このような保持部としては、ステントより大きい外径を持ち、柔軟でステント端部と隙間無く接触して、屈曲してもステント端部が露出しない構造のものが好ましい。具体例としては、ステント端部でバルーンが膨らみ、ステント端部を覆う構造のものが挙げられる。
再び図2を参照すると、本発明における医療用バルーン1は、前記バルーンが折畳まれた状態において前記バルーンの二次的な突出部は、該バルーンが、前記内径Diよりも大きな外径Doを有するような高さを有し、(Do−Di)/2が、ステントストラットの間隔以上であることが好ましい。これはステントストラット間隔が十分に狭くなることでより強固にステントがバルーンに固定されるためである。
前記バルーンが折畳まれた状態において前記ステントストラットによって少なくとも前記バルーンの一部が挟み込まれることで形成される突起により前記ステントが前記バルーンに固定されることが容易である観点からは、2枚以上のウイング(羽)1E形状に折り畳み可能であることが好ましい。
次に、本発明の、ステントデリバリーシステムの製造方法について説明する。
【0022】
バルーン形成用パリソンを用意して、パリソンに第1圧力を印加して放射状に膨張させ、該第1圧力を解除し医療用バルーンを用意する。このような、医療用バルーンを製造するプロセスは、公知であり、例えば特表2002−520099号に開示されている。
【0023】
一方、インフレーションルーメンを有するデリバリーカテーテル用のチューブを、該医療用バルーンに、該医療用バルーンと該インフレーションルーメンとが流体連痛可能に接続してステントデリバリーカテーテルを得る。本プロセスも公知であり、例えば特表平6−507105に開示されている。
【0024】
次に、ステントストラットを有し、患部に移植可能な第2直径にあるステントを用意し、該ステントの内腔に該医療用バルーンを配置し、該医療用バルーンに第2圧力を印加してバルーンを拡張する。次に前記ステントストラットによって少なくとも1つの、該バルーンの二次的な突出部を形成しつつ挟み込まれるように、該ステントを圧縮された該第1直径まで拡張したバルーンと共にクリンピングすることで、該バルーンの折畳まれた表面上に二次的な突出部が形成される。
図3を参照すると、バルーン1の内部を、減圧しながらウイング1Eを形成してインナーチューブ3に沿ってウイング1Eを巻きつけることで細長く折畳むことが可能であることが示されている。図1のように折畳まれたバルーン1の外面、好ましくは直管部1Aの外面に収縮状態のステント10を配設することで、バルーンカテーテルを用いてステントを体内へ挿入可能となる。この時、図2のようにバルーン1の外面、好ましくはステント10が配設されている直管部1Aの外面の一部が、ステント10のステントストラット11に挟まれ突起部1Dを形成している。この突起部1Dは、多い方が好ましいが、任意の突起数を選択可能である。
【0025】
ステントストラット11間にバルーン1の突起部1Dを形成する好ましい方法は、ステントをクリンピングするときに、該バルーンに印加された第2圧力を解除することをさらに備えるものがある。具体的には、デリバリーカテーテルの折畳まれたバルーン1の外面の直管部1Aにステント配置するステップと、ステントを一定外径以上に拡張しない様に、シース等の拡張抑制冶具をバルーン1全体に被せるように配置して、バルーン1を円周方向に拡張するためにバルーン1に第二圧力を供給するステップと、バルーン1への第二圧力の供給を止めて拡張抑制冶具を取り除くステップと、ステント10を円周方向に縮径(クリンピング)するステップを有する方法である。このような方法は、第二圧力を供給するステップとクリンピングするステップを分離することで工程の煩雑化を避ける事が可能な点が有利である。
もうひとつのバルーン1の突起1Dを形成する好ましい方法は、ステントをクリンピングするときに、該バルーンに印加された第2圧力を保持することものがある。具体的には、バルーンカテーテルの折畳まれたバルーン1にステント10を配置するステップと、ステント10に円周方向の縮径(クリンピング)を開始するステップと、バルーン1を円周方向に拡張するためにバルーン1に第二圧力を供給するステップと、ステント10を目的の外径にまでクリンピングする間はバルーン1への第二圧力を保持するステップとを有する方法である。このような方法は、バルーンへ第二圧力が保持されているため、安定して二次的な突起部を形成可能な点が有利である。
いずれの方法も、バルーン1に第二圧力を供給する時に、ステントストラット11間が0.30mm〜0.12mmであることがより好ましい。なぜなら、ステントストラット11間が0.30mmより大きい場合は、バルーン1の突起部1Dが大きくなりすぎて、バルーン1へのダメージが生じ易く、0.12mmより小さい場合は、バルーン1の突起部1Dが小さくなりすぎて、ステント10の脱落や移動を防ぐ効果が弱くなるためである。
【実施例】
【0026】
以下に本発明に係る具体的な実施例及び比較例について詳説するが、本発明は以下の例に限定されるものではないことは自明である。尚、以下に示されるステント保持力はASTM:F2394−04に準拠して測定した。
【0027】
(実施例1)
バルーンカテーテル(φ3.0mm×21mm)のバルーンの直管部に、ステント(φ1.8mm×18mm)を配置し、内径φ1.85mmのシースを被せて、インフレーションルーメンよりバルーンに10atmの圧力を加えて、バルーンを30秒拡張した後、バルーン内の圧力を開放し、シースを取り除いた。ステントストラット間は0.22〜0.15mmで、その後ステントを縮径(クリンピング)した。ステント保持力を測定した結果、3.64Nであった。バルーンを拡張したところ限界バルーン圧力でも割れなかった。
【0028】
(実施例2)
バルーンカテーテル(φ3.0mm×21mm)のバルーンの直管部に、ステント(φ1.8mm×18mm)を配置し、ステントの縮径(クリンピング)を開始し、ステントの外径が1.7mm(ステントストラット間が0.18mm〜0.14mm)になった時点で、インフレーションルーメンよりバルーンに10atmの圧力を加えて、バルーンを拡張した後、そのままステントの縮径(クリンピング)を継続して、ステント外径が1.2mmになった時点で、バルーン内の圧力を開放して、さらにステントを縮径(クリンピング)した。ステント保持力を測定した結果、5.61Nであった。バルーンを拡張したところ限界バルーン圧力でも割れなかった。
【0029】
(実施例3)
バルーンカテーテル(φ3.0mm×21mm)のバルーンの直管部に、ステント(φ1.8mm×18mm)を配置し、ステントの縮径(クリンピング)を開始し、ステントの外径が1.2mm(ステントストラット間が0.08mm〜0.06mm)になった時点で、インフレーションルーメンよりバルーンに10atmの圧力を加えて、バルーンを拡張した後、そのままステントの縮径(クリンピング)を継続して、ステント外径が1.1mmになった時点で、バルーン内の圧力を開放して、さらにステントを縮径(クリンピング)した。ステント保持力を測定した結果、1.25Nであった。バルーンを拡張したところ限界バルーン圧力でも割れなかった。
【0030】
(比較例1)
バルーンカテーテル(φ3.0mm×21mm)のバルーンの直管部に、ステント(φ1.8mm×18mm)を配置し、ステントを縮径(クリンピング)した。ステント保持力を測定した結果、0.95Nであった。バルーンを拡張したところ限界バルーン圧力でも割れなかった。
【0031】
(比較例2)
バルーンカテーテル(φ3.0mm×21mm)のバルーンの直管部に、ステント(φ1.8mm×18mm)を配置し、インフレーションルーメンよりバルーンに10atmの圧力を加えて、バルーンを30秒拡張した後、バルーン内の圧力を開放した。ステントストラット間は0.43〜0.33mmで、その後ステントを縮径(クリンピング)した。ステント保持力を測定した結果、5.64Nであった。しかし、バルーンを拡張したところ、バルーン表面にピンホールが生じていた。
【0032】
(比較例3)
バルーンカテーテル(φ3.0mm×21mm)のバルーンの直管部に、ステント(φ1.8mm×18mm)を配置し、ステントの縮径(クリンピング)を開始し、ステントの外径が1.2mm(ステントストラット間が0.08mm〜0.06mm)になった時点で、インフレーションルーメンよりバルーンに10atmの圧力を加えて、バルーンを拡張した後、そのままステントの縮径(クリンピング)を継続して、ステント外径が1.1mmになった時点で、バルーン内の圧力を開放して、さらにステントを縮径(クリンピング)した。ステント保持力を測定した結果、1.25Nであった。バルーンを拡張したところ限界バルーン圧力でも割れなかった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】バルーンを折り畳み、ステントを配設した場合の概略図である。
【図2】ステントストラットに挟まれてバルーンが突起を形成している図3の8−8線に沿った断面図である。
【図3】インナーチューブに沿って折畳まれて巻きつけられたバルーンである。
【図4】インナーチューブに沿って折畳まれて巻きつけられたバルーンの図1の7−7線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 バルーン
1A 直管部
1B ディスタル側テーパー部
1C プロキシマル側テーパー部
1D 突起部
1E ウイング
2 アウターチューブ
3 インナーチューブ
4 X線不透過マーカー
5 ガイドワイヤールーメン
6 インフレーションルーメン
10 ステント
11 ステントストラット
12 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用バルーンであって、該バルーンが折畳まれた場合に、表面上に二次的な突出部を備えるバルーン。
【請求項2】
該バルーンが折畳まれた場合に、該表面上に少なくとも1つのウイングを有し、該二次的な突出部が、該ウイングの表面上に形成されることを、さらに備える、請求項1記載のバルーン。
【請求項3】
医療用ステントを患部へデリバリーするためのステントデリバリーシステムであって、
前記ステントデリバリーシステムはステントとステントデリバリーカテーテルとを備え、
前記ステントはステントストラットを有し、圧縮された第1直径から、患部に移植可能な第2直径まで拡張可能であり、
前記ステントデリバリーカテーテルが、請求項1または2記載のバルーンと、該バルーンと流体連通可能に接続されるインフレーションルーメンとを有し、
ここで、前記バルーンが折畳まれた状態において前記ステントストラットによって少なくとも1つの、該バルーンの二次的な突出部が挟み込まれていることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項4】
前記ステントが第1直径にあるときに、前記ステントは内径Diを有するように前記バルーンに圧接されており、かつ前記バルーンが折畳まれた状態において前記バルーンの二次的な突出部は、該バルーンが、前記内径Diよりも大きな外径Doを有するような高さを有し、(Do−Di)/2が、該ステントが第1直径にあるときのストラット間の周方向間隙長以上かつ、ストラット径方向厚さ以下であることをさらに備える請求項1に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項5】
前記バルーンの遠位端および近位端の少なくとも一方に形成された少なくとも一つの保持部を有することをさらに備える請求項1または2に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項6】
前記保持部がバルーンにより形成されていることをさらに備える請求項3に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項7】
請求項3記載のステントデリバリーシステムの製造方法であって、
(a)バルーン形成用パリソンを用意するステップと、
(b)該パリソンに第1圧力を印加して放射状に膨張させ、該第1圧力を解除し医療用バルーンを用意するステップと、
(c)インフレーションルーメンを有するデリバリーカテーテル用のチューブを、該医療用バルーンに、該医療用バルーンと該インフレーションルーメンとが流体連痛可能に接続して、ステントデリバリーカテーテルを得るステップと、
(d)ステントストラットを有し、患部に移植可能な第2直径にあるステントを用意するステップと、
(e)該ステントの内腔に該医療用バルーンを配置し、該医療用バルーンに第2圧力を印加するステップと、
(f)前記ステントストラットによって少なくとも1つの、該バルーンの二次的な突出部が挟み込まれるように、該ステントを圧縮された該第1直径までクリンピングするステップと、
を備える、製造方法。
【請求項8】
該(f)ステップにおける該クリンピングするときに、該バルーンに印加された第2圧力を解除することをさらに備える、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
該(f)ステップにおける該クリンピングするときに、該バルーンに印加された第2圧力を保持することをさらに備える、請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステントが第1直径にあるときに、前記ステントは内径Diを有するように前記バルーンに圧接されており、かつ前記バルーンが折畳まれた状態において前記バルーンの二次的な突出部は、該バルーンが、前記内径Diよりも大きな外径Doを有するような高さを有し、(Do−Di)/2が、該ステントが第1直径にあるときのストラット間の周方向間隙長以上かつ、ストラット径方向厚さ以下であることを、さらに備える、請求項7〜9いずれか記載の製造方法。
【請求項11】
前記バルーンに第2圧力を供給するのを開始するときの、ストラット間の周方向間隙長が0.30mm〜0.12mmであることをさらに備える請求項7〜10いずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−135880(P2007−135880A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333876(P2005−333876)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】