説明

ステント及びステント運搬システムの包装

薬剤被覆又は処理ステントの包装システム及びこれらの関連の運搬システムが開示される。パッケージは、ステント又は運搬システムに触れるのが阻止されているスカベンジャーパックを用いて酸素、水分及び光に対するステントの暴露レベルを最小限に抑える。包装システムは、スキャベンジャーパック保持する凹部を備えたトレーを有し、トレーは又、コイル状運搬システムを保持するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤被覆又は処理ステント用の包装システム及び酸素、水分及び光へのステントの暴露レベルを最小限に抑えると同時に酸素及び水分スキャベンジャーパックがステント又は運搬システムに触れるのを阻止するステント包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アテローマ性動脈硬化症を含む心臓血管疾患は、米国における死亡の主因である。冠性(又は冠状動脈性)心疾患を治療する多くの方法及び器具が開発されたが、これらの中には、アテローマ性動脈硬化症及び他の形態の冠状動脈狭窄に起因した合併症を治療するよう特別に設計されたものがある。
【0003】
アテローマ性動脈硬化症及び他の形態の冠動脈狭窄を治療する一方法は、以下「血管形成術」又は「PTCA」と呼ぶ経皮経管的冠動脈形成術である。血管形成術の目的は、半径方向拡張により冠動脈の患部の管腔を拡張することにある。これは一般に、動脈の患部の狭くなった管腔内でバルーンをインフレートすることにより達成される。動脈それ自体の壁も又、バルーンをインフレートさせると引き伸ばされる場合がある。単純な血管形成術では、カテーテルによりバルーンを動脈中へ通し、血管が閉塞している場所でバルーンをインフレートさせる。この手技の実施後、バルーンを取り出す。単純な血管形成術だけでは、動脈は、再び閉じ又は再狭窄する場合がある。この狭窄は、再狭窄と呼ばれている。
【0004】
再狭窄の恐れを減少させるため、血管形成術中、ステントも挿入するのがよい。ステントは金属又は場合によってはプラスチック材料で作られる場合の多い管であり、かかるステントを体内血管又は通路内に挿入して血管の管腔を開存状態に保つと共に狭窄又は外部からの圧迫に起因する閉鎖を阻止する。ステントを用いると、再狭窄の恐れを減少させることができる。しかしながら、ステント挿入は、望ましくない反応、例えば炎症、感染、血栓症又は通路を閉鎖する細胞成長という増殖を引き起こす場合がある。
【0005】
再狭窄は、ステントを植え込んだときに血管壁が損傷するために生じる。次に、この領域は、膨らんだ状態になり、新しい細胞が瘢痕組織を形成する。動脈壁は、或る場合には、ステントのメッシュ内へめり込むほど厚くなる場合がある。かかる場合、血管形成術を別途行なうのがよく、新たなステントを既存のものの内部に配置するのがよい。再狭窄が続く場合、最終的な別法は、バイパス手術である。
【0006】
変形例として、血管形成術中処理済ステントを挿入してもよい。かかる処理済ステントは、血管形成術の繰り返しを不要にし、何人かの患者には心臓バイパス術と関連した外傷、危険性及び長い回復期間を与えない。処理済ステントは、再狭窄を阻止するのを助ける治療薬を含む。被膜は、数回分の治療薬を放出するよう生体工学的に設計され、治療薬は、ステントに被着された被膜に塗布され又はそうではない場合がある。意図された作動薬は、血管の治癒を損なわないで新たな細胞が生じるのを止めるよう働く。作用薬は又、炎症を抑え、抗生物質の性質を有する場合がある。
【0007】
しかしながら、処理済ステントは治療薬を有するので、処理済ステントは、薬剤投与と関連した問題がある。例えば、薬剤を効果的に投与するためには、薬剤の有効用量の統合性を維持することが必要である。或る特定の薬剤では、効能が得られるよう調節された条件、例えば空気循環の調節又はそれが行なわれないこと、光及び酸素への暴露の調節が必要である。
【0008】
被覆ステント用の先行技術の包装システムは典型的には、ステントが真空包装される箔パウチ内の熱成形トレーインサート又はTyvek(登録商標)蓋を備えた熱成形トレーを有していた。ステントのためのかかる従来型包装材は、周囲条件、例えば空気の循環又は光及び酸素への暴露の調節を行なわない。かかる適当な調整が行なわなければ、薬剤及び(又は)薬剤被膜の効能は低減する場合がある。さらに、これらパッケージは、本発明のものよりも重くなりがちであり、これらパッケージは、より多くの材料を利用すると共に包装するためのオペレータの取扱い時間を長く必要とし、しかも製造するのに大きな労働力を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かくして、本発明の目的は、処理済ステントの周囲条件を最適化するパッケージを提供することにある。また、本発明の目的は、酸素及び水分吸収剤を密閉容器内に設けることを可能にするが、吸収剤がステント又は運搬システムに触れるのを阻止してステント又は運搬システムに残滓が残らないようにする処理済ステント及びこれら関連の運搬システム用のパッケージを提供することにある。パッケージは又、従来型の方法、例えば酸化エチレン(EtO)及びガンマ線による滅菌に適したものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、薬剤被覆ステント用のパッケージであって、コイル状ステント運搬システムを受け入れるようになったトレーと、トレー及びコイル状ステント運搬システムを受け入れるようになったパウチとを有し、トレーは、酸素又は水分スキャベンジャーパックを保持するようになった少なくとも1つの凹部を有することを特徴とするパッケージが提供される。
【0011】
トレーは、コイル状ステント運搬システムのコイルを収納できるチャネルを備えるのがよい。
【0012】
パッケージは、トレーに係合可能であり、スキャベンジャーパックをパウチの内部環境と通じた状態でトレーの凹部内に保持するようになった蓋を更に有するのがよい。
【0013】
トレーは、1対のスキャベンジャーパックを保持するようになった1対の凹部を更に有するのがよい。特に、トレーは、酸素及び(又は)水分スキャベンジャーパックを保持するようになった1対の凹部を有し、蓋は、蓋とトレーベースを互いに嵌めると、トレーベースの凹部の上に位置する2つの孔を有するのがよい。
【0014】
蓋とトレーは、互いにスナップ嵌めされる。蓋は、パッケージを組み立てると、トレーベースの上に位置する蓋のフェースから延びる複数の突起を備えるのがよく、トレーベースは、パッケージを組み立てると、蓋の突起が嵌まり込む複数の空所を備える。
次に、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示すように、処理済ステント運搬システム用の包装システムは、パウチ又は袋(1)、トレーベース(2)及びトレー蓋(3)の形態をしている。パウチ(1)は、貼合せ箔(5)の2つの層を互いにシールしたもので形成されている。適当な箔は、商品名35781−Gでパーフェクシール・リミテッドから入手できる箔である。トレーベース及び蓋は、従来方法でGPETコポリマーから熱成形により作られる。トレーベース及び蓋の適当な厚さは、約0.64±0.04mmである。
【0016】
トレーベース(2)は、3つのアーム(7)を備えた全体として半円形の本体部分(6)を有し、アーム(7)は、トレーベース(2)の円周方向外縁部(8)から外方に延びている。これらアーム(7)は、一連のチャネル又は溝(9)を備え、これらチャネル又は溝は、半円形本体部分(6)の周囲に平行にアーム(7)に沿って延び、まるで完全な円であるかのようにトレーベース(2)と同心である。かくして、チャネル(9)は、トレーベース(2)の平面内で湾曲している。チャネル(9)は、コイル状ステント運搬システムのコイルを受け入れるようになっており、これらの経路に沿う一定間隔のところにタブ(10)を備え、これらタブは、運搬システムをチャネル(9)内に保持するのに役立つ。
【0017】
トレーベース(2)の本体部分(6)は、水分及び(又は)酸素アブソーバ又はスキャベンジャーパックを受け入れるようになった2つの凹部(11)を更に備えている。適当な酸素及び水分アブソーバパックは、ミツビシ・ガス・ケミカル・カンパニー・インコーポレイテッド(Pharmakeep KD-20(登録商標))及びシルゲル・リミテッド(4gMolecular Sieve サッシェ)等から市販されている。
【0018】
包装システムは、全体として半円形の形態をしており、トレーベース(2)とスナップ嵌め関係をなすトレー蓋(12)を更に有する。蓋(12)は、2つの孔(13)を有し、これら孔は、蓋(12)をトレーベース(2)に装着すると、アブソーバパックを保持する凹部(11)の上に位置する。かくして、ステント及び運搬システムを蓋(12)が定位置にある状態でトレーベース(2)上に包装してパウチ(1)内に配置すると、アブソーバパックは、蓋(12)の孔(13)を介して内部パウチ環境と接触する。かくして、アブソーバパックは、パウチ内の酸素及び水分を掃去するよう理想的に配置されるが、ステント又は運搬システムには触れることができない。
【0019】
トレー蓋(12)は、蓋(12)の表面上に3つの突起(14)を備え、これら突起は、蓋とベースを互いに組み立てると、トレーベース(2)に当接する。これら突起(14)は、トレーベース(2)に設けられた3つの空所(15)と嵌合可能であり、突起(14)と空所(15)は協働して、蓋及びトレーベースのスナップ嵌め機構を提供するようになっている。
【0020】
アブソーバパックを運搬システムに直接させないようにして得られる利点は、ごく僅かな量の内容物残滓が各パックの外面に付着存在し、この残滓がステントに被着されている薬剤又は他の被膜と都合悪く相互作用する恐れが無いようにすることにある。
【実施例1】
【0021】
ステントを包装する方法は、運搬システムに取り付けられ、コイル状ディスペンサ内に装填された薬剤被覆ステントをトレーベース上に配置して運搬システムのコイルがトレーベースのチャネル又は溝内に位置するようにする段階を有する。次に、スキャベンジャーパックを凹部内に配置し、トレー蓋を定位置にスナップ嵌めする。次に、トレーに取り付けられた運搬システムを図1に示すようにパウチ内に配置する。1回の作業で、パウチの開口端部を窒素でフラッシングして真空密封し、したがってパウチの2つの縁部が互いにシールされるようにする。
【0022】
パッケージをフラッシングするのに用いられる不活性ガスは、好ましくは窒素である。窒素によるフラッシングは、10〜30psiの圧力で1〜10秒間行なわれる。真空ドローダウン時間は適切には、1秒であり、最高10秒までである。パッケージの縁部を封止装置の上ジョーと下ジョーとの間にクランプすることによりパッケージを封止するのがよい。封止のための時間は、上ジョーの封止温度が110〜200℃、下ジョー封止温度が60〜100℃で1〜10秒であるのがよく、封止のための圧力は、30〜100psiであるのがよい。
次に、封止状態のパウチを従来方法でガンマ線により滅菌する。
【実施例2】
【0023】
酸化エチレンで滅菌されたステントを包装する方法は、上記とは僅かに異なっている。この実施形態では、運搬システムに取り付けられ、コイル状ディスペンサに装填された処理済ステントを、スキャベンジャーパックが定位置にある状態でトレー内に配置し、蓋を定位置に置く。次に、トレーを通気性メンブレンの1つの層及び箔材料の1つの層から形成されたパウチ内に配置する。通気性メンブレンは、滅菌プロセスにおいて酸化エチレンガスの出入り箇所を提供する。次に、装填状態のトレーを収容したパウチの開口端部を封止する。封止温度は、140〜160℃、圧力は90〜100psi、滞留時間は約1〜2秒である。次に、酸化エチレンを用いて従来のやり方でパッケージを滅菌する。滅菌後、パウチを窒素によるフラッシング後、外部が全て箔のパウチ内に真空密封する。
【0024】
原文明細書における“comprises/comprising”(訳文では、「〜を有する/有している」としている場合がある)及び“having/including”(訳文では、「〜を備えている/含んでいる」としている場合がある)という用語は、本発明と関連して本明細書に用いられる場合、明記した特徴、整数、工程又はコンポーネントの存在を特定するために用いられるが、1以上の他の特徴、整数、工程、コンポーネント又はこれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】トレーベースに装填された処理済ステント及び運搬システム、トレー蓋及びアブソーバパックを備えた本発明の包装システムを示す図である。
【図2a】トレーベースの詳細平面図である。
【図2b】トレーベースの正面図である。
【図3a】トレー蓋の詳細平面図である。
【図3b】トレー蓋の正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤被覆ステント用のパッケージであって、コイル状ステント運搬システムを受け入れるようになったトレーと、トレー及びコイル状ステント運搬システムを受け入れるようになったパウチとを有し、トレーは、酸素又は水分スキャベンジャーパックを保持するようになった少なくとも1つの凹部を有することを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
トレーは、コイル状ステント運搬システムのコイルを収納できるチャネルを備えていることを特徴とする請求項1記載のパッケージ。
【請求項3】
トレーに係合可能であり、スキャベンジャーパックをパウチの内部環境と通じた状態でトレーの凹部内に保持するようになった蓋を更に有することを特徴とする請求項1又は2記載のパッケージ。
【請求項4】
1対のスキャベンジャーパックを保持するようになった1対の凹部を有することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項5】
酸素及び(又は)水分スキャベンジャーパックを保持するようになった1対の凹部を有し、蓋は、蓋とトレーベースを互いに嵌めると、トレーベースの凹部の上に位置する2つの孔を有することを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項6】
蓋とトレーは、スナップ嵌め関係をなすことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項7】
蓋は、パッケージを組み立てると、トレーベースの上に位置する蓋のフェースから延びる複数の突起を備え、トレーベースは、パッケージを組み立てると、蓋の突起が嵌まり込む複数の空所を備えていることを特徴とする請求項6記載のパッケージ。
【請求項8】
パウチは、プラスチック被覆箔で作られていることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載のパッケージと、薬剤被覆ステントと、少なくとも1つの酸素及び水分スキャベンジャーパックとから成る部品のキット。
【請求項10】
薬剤被覆又は処理ステント及びステント運搬システムを包装する方法であって、
(a)コイル状ステント運搬システムをこれを受け入れるようになったトレーベース上に配置する段階を有し、
(b)水分及び酸素スキャベンジャーパックをトレーベースに形成された凹部内に配置する段階を有し、
(c)蓋をトレーベースに被せる段階を有し、蓋は、蓋とトレーを互いに組み立てると、トレーベースの凹部の上に位置する孔を有し、
(d)段階(c)の組立て状態のトレー、蓋及び運搬システムをプラスチック被覆箔パウチ内に配置する段階を有し、
(e)パウチを不活性ガスでフラッシングする段階を有し、
(f)真空をパウチに及ぼす段階を有し、
(g)パウチの開口端部を封止する段階を有し、
(h)パッケージを滅菌する段階を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−513938(P2006−513938A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569885(P2004−569885)
【出願日】平成15年3月25日(2003.3.25)
【国際出願番号】PCT/IE2003/000046
【国際公開番号】WO2004/084767
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(504369801)
【Fターム(参考)】