説明

ステント留置用カテーテル

【課題】押し込み性、トルク伝達性、追従性に加え、引き込み性が良好なステント留置用カテーテルを提供する。
【解決手段】隣り合う金属線11aが密着し、螺旋状に巻回された第1層11と、隣り合う金属線12aが密着し、第1層11とは異なる方向に螺旋状に巻回され、内周面が第1層11の外周面に密着した第2層12と、筒状に形成され、内周面が第2層12の外表面に密着した第3層13とを含む筒状体10が設けられている。その筒状体10の周囲に筒状体10の軸方向に沿って筒状体10と相対移動可能なシース3が設けられ、筒状体10よりも先端側にステント配置領域2が設けられている。このシース3の先端が筒状体10の先端よりも先端側に位置しているときは、シース3はステント配置領域2を覆い、筒状体10の先端よりも基端側へ移動したときはステント配置領域2が露出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、気管、食道、尿道などの体内導管内に発生した狭窄部または閉塞部に、ステントを留置して管腔を確保するためのステント留置用カテーテルに関する。さらに詳しくは、湾曲や屈曲などの曲がった体内導管でも、外部からカテーテルの先端を制御して体内導管内の所望の場所にステントを運び、留置することができるステント留置用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管などの体内導管に狭窄部などが生じた場合、その治療法として、カテーテル治療という方法が用いられる場合がある。この方法は、たとえば図4に示されるように、自己拡張型のステント60をカテーテル50の先端に保持して、体内導管61の狭窄部に運び、その狭窄部内でステント60を拡張させて留置するものである(たとえば特許文献1参照)。図4において、カテーテル50のコア51の先端側に自己拡張型のステント60が挿入され、その外周部は外側スリーブ52で被覆された状態で体内導管61内にカテーテル50が挿入され、体内導管61が狭窄している位置に運ばれた状態で、図4に示されるように、ハンドル53を操作して外側スリーブ52を引き下げることにより、ステント60が自己拡張し、体内導管61の狭窄部を押し広げて体内導管61内にステント60が留置される。なお、図4で、54はカテーテル50の進行を案内する先端、55は案内ワイヤ、56は案内ワイヤ55を操作するハンドルである。
【0003】
このようなカテーテル50によりステント60を留置する方法では、カテーテル50に設けたステント60の位置を体内導管61の狭窄部の位置に正確に合せる必要がある。しかも、体内導管61には、細く複雑なパターンで曲がった部分や分岐した部分もあり、その複雑な体内導管61内を迅速、かつ、確実性をもって挿入する必要がある。そのため、この種のカテーテル50には、操作側の基端での押し込む力が、確実にカテーテル50の先端に伝わる押し込み性、カテーテル50の基端側で加えられる回転力が先端に確実に伝達されるトルク伝達性、曲がった曲管内を先行する先端54および案内ワイヤ55により、円滑、かつ、確実に進み得る追従性、および屈曲した体内導管61内でも、カテーテル50が折れ曲らない耐キンク性などが要求される。
【0004】
このような押し込み性、トルク伝達性、追従性、および耐キンク性などの操作性に優れたカテーテルとして、図5に示されるような構造のカテーテルが提案されている(特許文献2参照)。このカテーテル70は、第1領域71と第2領域72とを有し、基材チューブ73の周囲に樹脂製の第1の線状体74と第2の線状体75とが螺旋状に巻回され、その一部を融合一体化して形成されている。この第1の線状体74と第2の線状体75は、互いに反対方向に巻回され、さらに、第1の線状体74は、第1領域71では密に巻かれ、第2領域72では疎に巻かれ、第2の線状体75は、第1領域71では疎に、第2領域72で密に巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−79023号公報
【特許文献2】特開2001−87389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、ステントを留置させるカテーテルとして、特許文献1に示されるようなものがある。このようなカテーテルでは、ステントを所望の位置へ配設できるような機能を要求される。この要求を満たそうとする場合、特許文献2のようなカテーテルでは第1の線状体と第2の線状体が部分的に一体化されていると、剛性が高く、押し込み性は良いが、一方の線状体が疎に配設されているため、トルク伝達性が均一にならない。また、第1の線状体と第2の線状体が部分的に一体化されているため、湾曲し難く、追随性が悪い。特に、カテーテルを引き込む操作をしたときには、第1の線状体および第2の線状体の位置を拘束する力が弱いため、第1の線状体および第2の線状体が軸方向に伸び、基端の操作量と先端の操作量が一致しないという問題がある。
【0007】
本発明は、押し込み性、トルク伝達性、追従性に加え、引き込み性が良好なステント留置用カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のステント留置用カテーテルは、隣り合う金属線が密着し、螺旋状に巻回された第1層、隣り合う金属線が密着し、前記第1層とは異なる方向に螺旋状に巻回され、内周面が前記第1層の外周面に密着した第2層、および筒状に形成され、内周面が前記第2層の外表面に密着した第3層を含む筒状体と、前記筒状体よりも先端側に設けられたステント配置領域と、先端側へ移動したときに前記ステント配置領域を覆い、基端側へ移動したときに前記ステント配置領域が露出するように、前記筒状体の軸方向に沿って前記筒状体と相対移動可能なシースとを有することを特徴とする。
【0009】
ここに先端側とは、カテーテルを体内導管内に挿入する場合の先頭部分側を意味し、基端側とは、先端側とは反対の端部側を意味する。また、筒状体とは、筒状に形成されているものの全体を意味し、たとえば第1層の内側にチューブが設けられたり、第3層の外側にさらに樹脂などの外層が設けられたりする場合には、これらも筒状体に含む意味である。
【0010】
前記第3層の外表面に外層が設けられてもよい。このような外層は、たとえば樹脂層で形成され得るが、材料には限定されない。
【0011】
前記筒状体は、その一部が前記ステント配置領域よりも先端側に延出する延出部を有し、該延出部に先端部材が設けられていてもよい。
【0012】
前記第3層は、隣り合う金属線が密着し、前記第1層と同じ方向に螺旋状に巻回される構造にすることが好ましい。
【0013】
前記筒状体の基端側に連結され、湾曲操作部を有するハブと、一端部が前記筒状体の先端側または前記先端部材に連結され、他端部が前記筒状体の基端側の外部に延出されて前記湾曲操作部に連結される操作ワイヤとがさらに設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、筒状体が、金属線が密巻きで、かつ、お互いに巻回方向が逆方向になるように螺旋状に巻回された第1層および第2層を少なくとも有するように形成され、さらに、第3層が第2層の外表面に密着して設けられているので、カテーテルの押し込み性、トルク伝達性、追従性に加えて、引き込み性が非常に良好になる。
【0015】
前記第3層の外表面に樹脂などの外層が設けられることにより、体内導管内面との引っ掛かりが生じにくく、押し込み性や追従性がさらに良好になる。また隣り合う金属線の間から体内導管内の液体が筒状体の内部へ入り込むことを防ぐことができる。
【0016】
また、ステント配置領域より先端側に先端部材が設けられることにより、たとえば先端部材を先端が細くなる断面形状がテーパ状の外形形状にすることにより、体内導管の細い部分でも前進させやすく、押し込み性や追従性がより良好となる。
【0017】
さらに、前記第3層が前記第1層と同じ方向に螺旋状に巻回された層とすることにより、第2層の螺旋方向と逆方向のトルクが働く場合でも、第3層の螺旋が締まる方向の力で第2層が緩むことはなく、しかも3層とも螺旋構造であるため、自由に曲げることができ、追従性が非常に良くなる。
【0018】
湾曲操作部に連結される操作ワイヤが設けられることにより、筒状体の先端を操作ワイヤにより自由に操作しながらカテーテルを前進させることができるため、非常に操作しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のステント留置用カテーテルの一実施形態を示す、一部断面、一部破断の説明図である。
【図2】図1のシースをずらしてステントを露出させることにより拡張したときの様子を示す断面説明図である。
【図3】図1の筒状体の他の構成例を示す断面説明図である。
【図4】従来のカテーテルによりステントを留置する状態を示す断面説明図である。
【図5】従来のステント留置用カテーテルの構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、添付図面を参照しながら、本発明のステント留置用カテーテルを詳細に説明する。図1に本発明のステント留置用カテーテル(以下、単にカテーテルという)1の一実施形態の構成例が、部分的に断面説明図、第3層13を露出させた破断説明図、第2層12を露出させた破断説明図、および第1層11を露出させた破断説明図をそれぞれ連続させて表した図で示されている。
【0021】
本発明のカテーテル1の一実施形態は、図1に示されるように、隣り合う金属線11aが密着し、螺旋状に巻回された第1層11と、隣り合う金属線12aが密着し、第1層11とは異なる方向に螺旋状に巻回され、内周面が第1層11の外周面に密着した第2層12と、筒状に形成され、内周面が第2層12の外表面に密着した第3層13とを含む筒状体10が設けられている。その筒状体10の周囲に筒状体10の軸方向に沿って筒状体10と相対移動可能なシース3が設けられ、筒状体10よりも先端側にステント配置領域2が設けられている。図1に示される例では、そのステント配置領域2にステント21が配置されている。従って、シース3の先端が筒状体10の先端よりも先端側へ移動したときは、シース3はステント配置領域2を覆い、ステント21がシース3内部に保持され、シース3の先端が筒状体10の先端から基端側へ移動したときはステント配置領域2が露出して、ステント21が体内導管内で拡張するようになっている。
【0022】
筒状体10は、図1に示される例では、第1層11、第2層12、第3層13および第1層11の内側に設けられるチューブ14とで構成されているが、少なくとも第1層11〜第3層13を有していれば、チューブ14は無くても良いし、逆に、後述するように、第3層13の外表面に樹脂被膜などの外層15(図3参照)が設けられてもよい。筒状体10の太さは、体内導管の太さに応じて決められ、特に限定されない。筒状体10の長さも用途により決められ、特に限定されない。
【0023】
第1層11は、たとえばSUS304などのステンレス、タングステンなどからなる金属線11aが用いられ、たとえば反時計回りの方向に螺旋状に密巻きにされたコイル状の形状になっている。金属線11aが密巻きにされていることにより、剛性を有し、さらに、押圧力に対しても縮むことなく、押し込み性が極めて良好で、しかもコイル状であるため、屈曲した体内導管であっても、第1層11のどの位置でも自由に曲がり、追従性良く体内導管内を進行させることができる。
【0024】
第2層12は、第1層11と同様の金属線12aが用いられ、螺旋状に密巻きにしたコイル状に形成されるが、螺旋の巻回方向が第1層11とは逆向きの時計方向に巻回されている。ここで、第2層12の螺旋の巻回方向は、時計方向に限定するものではなく、第1層11の螺旋の巻回方向とは逆方向に巻回することを意図しており、第1層11が時計方向に巻回されていれば、第2層12は反時計方向に巻回される。この第2層12の金属線12aを、第1層11の金属線11aの巻回方向と逆方向に巻回するのは、カテーテル1に回転トルクが働いた場合でも、螺旋状に巻回した第1層11の金属線11aが緩んでトルク伝達力が落ちないようにするためである。すなわち、前述の反時計方向に巻回された第1層11の金属線11aに、反時計方向のトルク伝達力が働いた場合、金属線11aは反時計方向に密に巻回されているため、これ以上密巻きが締まることは無く、そのままトルクを伝達することができるが、時計方向のトルクが加わった場合には、密巻きにされた金属線11aを緩める方向のトルクになるため、密巻きにされた金属線11aの巻回を緩める力としてトルクの一部が吸収される。しかし、第2層12の金属線12aが時計方向に巻回されていることにより、時計方向のトルクは、第2層12のコイルには締まる方向の力が加わることになるため、第2層12の金属線12aは緩むことなく、より一層第1層11を締め付ける。その結果、時計方向のトルクが加わる場合でも、確実にトルクを伝達することができる。なお、第2層12に反時計方向のトルクが加わると、第2層12の時計方向に巻回された金属線12aの巻回が緩むという問題があるため、つぎの第3層13が設けられている。
【0025】
第3層13は、図1に示される例では、第1層11の金属線11aと同様の金属線13aが隣り合う金属線13aと密着し、第1層11の金属線11aと同じ方向の反時計方向に密に巻回された螺旋状構造で、第2層12に密着して設けられている。この第3層13は、前述のように、反時計方向のトルクが働いて、第2層12のコイルが緩むことを防止するため設けられている。そのため、このようなコイル状に巻回された構造で無くても、普通のメッシュまたは板状のものでも第2層12に密着して設けられていれば良い。トルクの伝達力は、いずれの方向のトルクでも、第1層11および第2層12で充分に伝達することができるからである。
【0026】
以上のように、筒状体10が、金属線11a、12aが密巻きで、かつ、お互いに巻回方向が逆方向になるように螺旋状に巻回された第1層11および第2層12を少なくとも有するように形成され、さらに、第3層13が第2層12の外表面に設けられているので、カテーテル1の押し込み性、トルク伝達性、追従性に加えて、引き込み性が非常に良好になる。たとえば目的の位置よりもカテーテル1を押し込みすぎた場合でも、確実に引き戻す(引き込む)ことができ、体内導管の狭窄部位などに非常に正確にステント21を留置させることができる。すなわち、金属線11a、12aを密巻きにしているため、剛性があり、押し込み性が非常に良好になる。一方で、金属線11a、12aを用いているが、螺旋状のコイルになっているため、曲げに対して柔軟性があり、体内導管の曲がりや分岐などに対しても柔軟に対応することができ、追随性も良好になる。また、この金属線11a、12aを密巻きにしたものを少なくとも2層重ね、しかもその巻回方向が逆方向であるため、たとえば第1層11の螺旋の巻回方向と反対側にカテーテル1を回転させながら前進させるとき、第1層11の巻回方向は緩む方向の力になるが、第2層12の巻回方向が締まる方向の力であるため、第1層11の金属線11aも緩むことなくトルクを確実に伝達することができる。一方、第1層11の巻回方向にカテーテル1を回転させながら前進させようとする場合には、第2層12の螺旋は緩む方向に回転させることになるが、第2層12の外表面には第3層13が密着して設けられているため、第2層12の螺旋が緩むことはなく、トルク伝達性は非常に良くなる。さらに、金属線11a、12aが密巻きにされて密着した3層構造になっているため、引張りに対しても螺旋が伸びるということも無く、押し込みすぎた場合に引き戻す引き込み性も非常に良好で、所望の位置に正確にステント21を留置させることができる。
【0027】
これらの第1層11、第2層12および第3層13の金属線11a、12a、13aは、それぞれ全く同じ金属線を用いることもできるが、それぞれの材料を変えたり、線径を変えたりして、別の金属線を用いることもできる。
【0028】
また、第1層11、第2層12および第3層13は、それぞれ密着して形成されているが、相互には溶接などによる融着はされていない。その結果、曲げなどに対しても、自由に対応することができ、良好な追従性を得ることができる。なお、弾力性のある樹脂などが隙間などに設けられても曲げなどに対する追従性を維持しながら、液体の流入を阻止することもでき、後述する外層15を設けることもできる。
【0029】
チューブ14は、必ずしも必須ではないが、図1に示される例では、第1層11を形成するための基材チューブとして設けられている。すなわち、心棒などに第1層11、第2層12および第3層13を巻きつけた後に、心棒を除去しても、それぞれの層が逆方向に巻回された層が密着して形成されているため、螺旋構造が崩れることは無く、内部が中空の筒状体10になる。そのため、このチューブ14が無くても、充分にカテーテル1の進行を正確に行うことができる。しかし、曲げなどに対しても柔軟に対応できる追従性の優れた材料を用いることにより、このようなチューブ14を用いることができる。その中空部に後述する操作ワイヤ5などを通せるようになっており、その外周に第1層11の金属線11aが巻きつけられている。このようなチューブ14の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、フッ素系ポリマーなどを用いることができる。
【0030】
図1に示される例では、筒状体10が第1層11、第2層12、第3層13およびチューブ14により形成されているが、前述のように第3層13の外表面に樹脂被覆層などを設けて外層15を形成することができる。その断面説明図が図3に示されている。この樹脂材料としても、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ETFEなどのフッ素系ポリマー、ナイロンなどを用いることができる。このような外層15が設けられることにより、第3層13の隣り合う金属線の間から体内導管内の液体が筒状体10の内部へ入り込むことを防止することができる。
【0031】
ステント配置領域2は、第1層11〜第3層13の先端よりも先端側の空間で、筒状体10の外周に設けられるシース3の内周で区画される領域を指し、そのステント配置領域2にステント21が設けられている。ステント21は、たとえば自己拡張型のステント21を用いることができ、シース3を筒状体10の基端側に移動させると、ステント21は、シース3の保持から開放され、体内導管内で拡張する。
【0032】
ステント21は、前述のように、自己拡張型のステント21を用いることができるが、これに限定されること無く、バルーンエキスパンドタイプでも使用することができる。自己拡張型のステント21は、たとえばハニカム状の六角形や、四角形などメッシュ状や、円筒状、コイル状などの種々の形状に形成され、挿入時に縮径可能であり、かつ、体内導管内に留置された場合には拡径(復元)する自分自身で拡張することができるものが使用される。そのため、カテーテル1内に配置されているときは、収縮してシース3の内周にしっかりと固定される。このステント21に用いられる材料としては、超弾性金属を用いることができ、具体的には、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、36〜38原子%AlのNi−Al合金などを用いることができる。
【0033】
ステント21は、たとえばメッシュ状の場合に、そのままメッシュ状で使用しても構わないが、その外周を樹脂などで被覆したステントクラフトと呼ばれるステント21を用いることもできる。このような樹脂で被覆された構造であれば、血管などに用いても、血液などの漏れを防止することができる。
【0034】
シース3は、筒状体10の軸方向に沿って筒状体10と相対的に移動が可能で、筒状体10の先端よりも突出するように設けられており、その突出した部分の内側にステント配置領域2が形成されている。このシース3は、筒状体10と共に、体内導管の曲がりなどに沿って曲がりながら進む必要があるため、筒状体10と同様の柔軟性が求められ、また、筒状体10と相対的に摺動させる必要があり、しかも血管などの体内導管内を進行する必要があるため、内外面とも滑らかである必要がある。そのため、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、フッ素系ポリマー、エラストマーなどにより形成される。
【0035】
筒状体10は、その一部、図1に示される例では、チューブ14がステント配置領域2よりも先端側に延出する延出部14aを有し、その延出部14aに先端部材4が設けられ、その中心部には、中空部(貫通孔)が筒状体10と連続して設けられている。この先端部材4は、チューブ14と一体に形成されても良いし、同様の材料で形成して固定しても良いし、また、チューブ14の延出部14aでなくても、たとえば第1層11など、筒状体10のいずれかに延出部を形成して、その延出部に形成しても良い。先端部材4は、延出部14aに取り付けられているため、ステント配置領域2より先端側に位置しており、しかも、図1に示されるように、先端に向かって、徐々に細くなる断面形状がテーパ状に形成されていることが好ましい。このような形状にすることにより、狭窄部にカテーテル1に配置されたステント21を導く場合でも、スムースにカテーテル1を進行させることができる。なお、この先端部材4は、その底部の径がシース3の内径よりも大きくなるように形成されることにより、シース3が先端側に移動する場合のストッパの役目を果たすこともできる。
【0036】
この先端部材4の内壁に、操作ワイヤ5の一端部が取り付けられている。この操作ワイヤ5の他端部は、筒状体10の中空部を経て基端側の外部に延出され、後述するハブ6に設けられた湾曲操作部7に連結されている。この操作ワイヤ5は、先端部材4が設けられない場合には、筒状体10の先端側に取り付けられても良い。この操作ワイヤ5が設けられることにより、湾曲した体内導管内でカテーテル1を進行させる場合に、そのカテーテル1の進行方向を先導することができ、曲がりくねった血管の部分でも、非常に容易に進行させることができる。なお、この操作ワイヤ5としては、ステンレス鋼、ピアノ線、超弾性合金線、Ni−Ti合金線、Cu−Zn合金線、Ni−Al合金線、タングステン線、タングステン合金線、チタン線、チタン合金線などを用いることができる。この操作ワイヤ5の表面に耐摩擦性樹脂を被覆しておくことにより、筒状体10内での滑性が良くなるため好ましい。
【0037】
筒状体10の基端側には、湾曲操作部7を有するハブ6が連結されている。このハブ6は、図示されていないが、筒状体10から液体が外側に漏れないように液密を保持する弁体が設けられ、前述の操作ワイヤ5は、図示しないシール部材を介して液密を保持しながら、この弁体から外部に導出されている。このハブ6には、斜め方向に分岐するサイドポート6aが形成されており、他の操作部材を同様の液密手段を介して筒状体10内部に挿入できるようになっている。このハブ6は、たとえばポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステルなどの合成樹脂や、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属材料などの、硬質または半硬質の材料を用いることができる。
【0038】
ハブ6には、湾曲操作部7が取り付けられており、湾曲操作部7に操作ワイヤ5の他端部が連結されているため、この湾曲操作部7の操作により、先端部材4の向きを操作することができ、カテーテル1の進行方向を制御することができる。
【0039】
つぎに、このカテーテル1の使用方法について説明をする。予めステント21を収縮させた状態でステント配置領域2に配置し、筒状体10とシース3とを組合せ、血管などの体内導管内に挿入する。そして、カテーテル1の基端側で押し込みや、回転操作などをしながら、カテーテル1を体内導管内で進行させ、体内導管の狭窄部など所望の位置に体内導管に沿って移動させる。この際、体内導管の曲がりなどに応じて前述の操作ワイヤ5の操作により先端部材4の方向を調整しながら行う。なお、先端部材4またはシース3の先端などにX線反射部材などを付着させておくことにより、外部からX線によりカテーテル1の先端の位置を正確に把握することができる。本発明のカテーテル1によれば、押し込み性や引き込み性が非常に良く、基端側の操作量と先端側の進行量とがほぼ一致しているため、簡単に体内導管の狭窄部など、所望の場所にステント21の位置を合せることができる。
【0040】
体内導管の所望の位置にカテーテル1の先端側に設けられたステント21の位置合せができたら、筒状体10の位置はそのまま固定しておいて、シース3のみを基端側に引き下げる。そうすると、図2にステント21が一部露出した状態の先端の拡大断面説明図が示されるように、シース3が引き下げられることにより露出したステント21は拡張してその径が大きくなり、体内導管の内壁と一致するまで広がり、狭窄部分を押し広げる。この状態では、ステント21の径が大きくなっているため、先端部材4もその内部を通過することができ、筒状体10を引き込むことにより、カテーテル1を体内導管から引き抜くことができる。その結果、ステント21を体内導管の所望の位置に留置させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 カテーテル
2 ステント配置領域
3 シース
4 先端部材
5 操作ワイヤ
6 ハブ
6a サイドポート
7 湾曲操作部
10 筒状体
11 第1層
11a 金属線
12 第2層
12a 金属線
13 第3層
13a 金属線
14 チューブ
14a 延出部
15 外層
21 ステント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う金属線が密着し、螺旋状に巻回された第1層、隣り合う金属線が密着し、前記第1層とは異なる方向に螺旋状に巻回され、内周面が前記第1層の外周面に密着した第2層、および筒状に形成され、内周面が前記第2層の外表面に密着した第3層を含む筒状体と、
前記筒状体よりも先端側に設けられたステント配置領域と、
先端側へ移動したときに前記ステント配置領域を覆い、基端側へ移動したときに前記ステント配置領域が露出するように、前記筒状体の軸方向に沿って前記筒状体と相対移動可能なシースと
を有することを特徴とするステント留置用カテーテル。
【請求項2】
前記第3層の外表面に外層が設けられていることを特徴とする請求項1記載のステント留置用カテーテル。
【請求項3】
前記筒状体は、その一部が前記ステント配置領域よりも先端側に延出する延出部を有し、該延出部に先端部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のステント留置用カテーテル。
【請求項4】
前記第3層は、隣り合う金属線が密着し、前記第1層と同じ方向に螺旋状に巻回されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のステント留置用カテーテル。
【請求項5】
前記筒状体の基端側に連結され、湾曲操作部を有するハブと、
一端部が前記筒状体の先端側または前記先端部材に連結され、他端部が前記筒状体の基端側の外部に延出されて前記湾曲操作部に連結される操作ワイヤとがさらに設けられていることを特徴とする請求項3または4記載のステント留置用カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−85698(P2013−85698A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228850(P2011−228850)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】