説明

ステープル繊維ストランドから紡績糸を製造するための装置

【課題】 繊維バンドまたは紡績糸が破断した場合、糸の端部を操業方向の反対方向に戻すための圧縮空気源に連結された注入チャネルの簡単で費用効果的な作成のために好都合な条件を作る。
【解決手段】 この課題は、糸引出しチャネルの入口開口を含む別個のスピンドル先端がスピンドル状要素に配置され、このスピンドル先端が注入チャネルを含むことにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステープル繊維ストランドから紡績糸を製造するための装置に関し、それはステープル繊維ストランドを供給するための供給チャネルを含み、また入口開口を含む糸引出しチャネルを含み、この糸引出しチャネルはスピンドル状静止要素中に配置されており、また糸引出しチャネルの入口開口周りに渦流を発生するための流体装置を含み、またスピンドル状要素を取巻くリングの形の空気排出ダクトを含み、かつ圧縮空気源にドッキングされることができる注入チャネルを含み、この注入チャネルは口状部により糸引出しチャネルに連結され、かつその入口開口の方に向けられている。
【背景技術】
【0002】
この形式の装置はヨーロッパ公開特許出願787843から既知である。この装置の場合、ステープル繊維ストランドはドラフト装置で繊維バンドにドラフトされ、この繊維バンドに紡績撚りがエアジェット集合体で付与される。この目的のため繊維バンドはまずエアジェット集合体の供給チャネルを通して渦室中に供給され、この渦室に糸引出しチャネル周りに渦流を発生するための流体装置が配置される。最初に繊維バンド中に保持された繊維の前方端がこの結果糸引出しチャネル中に供給され、一方後方自由繊維端は広げられ、渦流によりつかまれ、そして糸引出しチャネルの入口開口に既に位置した既に結合した前方端周りに巻かれ、それが大きな範囲に真の撚りを持つ糸を作る。この形式の装置は特に300m/分を越える高速度を可能とする。
【0003】
既知の装置の場合において、何らかの理由のため繊維バンドまたは紡績糸が破断すると、そのとき継ぎ合わせ工程で、既に紡績された糸の端部がエアジェット集合体を通してドラフト装置中に操業輸送方向の反対方向に戻される。この目的のため、注入チャネルがスピンドル状要素中に設けられ、この注入チャネルは口状部により糸引出しチャネルに連結され、糸引出しチャネルの入口開口の方に向けられる。この注入チャネルが圧縮空気源に連結されているとき、ドラフト装置に向けて流れる吸引流が糸引出しチャネル内に発生し、この吸引流の助けにより既に紡績された糸端がドラフト装置に戻るように輸送されることができる。上述の刊行物の図10にのみ示される注入チャネルは先細りに設計されており、スピンドル状要素を通して糸引出しチャネルに対して斜めに配列されている。上述の刊行物には注入チャネルが実際の装置としてどのように作られるかを開示していない。
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は上述の形式の装置においてかかる注入チャネルが簡単で費用効果的な方法で作られることができるように好都合な条件を作ることである。
【0005】
この目的は本発明により糸引出しチャネルの入口開口を含む別個のスピンドル先端がスピンドル状要素に配置され、このスピンドル先端が注入チャネルを含むことにより達成された。
【0006】
別個のスピンドル先端がスピンドル状静止要素部分に配置されるため、既に複雑なスピンドル状要素に斜めの圧縮空気中ぐり穴を付与する必要がもはやない。むしろ、新しい数個割りスピンドル状要素に配置された別個のスピンドル先端は注入チャネルが簡単な方法で作られることができ、かつ圧縮空気源に連結されることができるような方法で設計されることができる。
【0007】
スピンドル状要素のスピンドル先端はどのような希望の方法でも取り付けられることができ、例えばそれは接着されることができ、本発明の更なる実施態様ではスピンドル先端はスピンドル状要素にそれが容易に置き換えられることができ、かつそこに例えばO−リングにより取り付けられるような方法で挿入されることが提供される。注入チャネルは注入チャネルに本質的に垂直に配置されたスピンドル先端の周辺表面で口状部から離れる方に面するその端部で注入チャネルが始まるような方法でスピンドル先端に付与されることができる。これは注入チャネルが糸引出し表面に対して斜めに延びるときでさえ、作用表面に対して垂直な細い中ぐり穴の付与を可能とする。
【0008】
本発明は更に、注入チャネルがスピンドル状要素のスピンドル先端の外側の、口状部から離れる方に面するその端部で、連結チャネルにより延長されるように設計されることができ、この連結チャネルは圧縮空気源に連結されることができる。かかる設計の場合、スピンドル状要素内に中ぐりされる連結チャネルは糸引出しチャネルに平行に延びるように配置されることができる。そのとき連結チャネルはスピンドル先端のための凹所の前方表面に達することができる。
【0009】
本発明は更に、記述した装置のためのスピンドル先端に関し、それは第一部分と、口状部を介して注入チャネルに連結される糸引出しチャネルの入口開口とを含み、この注入チャネルが入口開口の方に向いていることを特徴とする。上述の装置に加えて、スピンドル先端自体も特許保護の一部である。
【0010】
スピンドル先端は入口開口から離れる方に面するその端部領域に円筒状案内表面を含むことができ、この円筒状案内表面はスピンドル状要素の対応して形成された中空円筒状凹所中に挿入されることができる。上述の円筒状案内表面は前方表面で終わることができる。
【0011】
更に、円筒状案内表面とスピンドル先端の前方表面との間の介在領域に面取り等が設けられることが提供されることができ、この面取りで口状部から離れる方に面する注入チャネルの端部が始まる。
【0012】
静止スピンドル状要素中に挿入された別個のスピンドル先端はまた、それが注入チャネルを含まないときも実行でき、そのとき、スピンドル先端は紡績手段として考えられることができ、それにより紡績糸の特性が変えられることができる。例えば、スピンドル先端は供給チャネルにより接近してまたは更に離れるように案内されることができ、それによって糸がより大きなまたはより少ない毛羽立ちで紡績されることをもたらす。
【0013】
図面の簡略説明
本発明のこれらの及び更なる目的、特徴及び利点は添付図面に関してなされるそれらの以下の詳細な説明からより容易に明らかとなるであろう。図面において:
図1は静止スピンドル状要素の領域のエアジェット集合体の軸方向断面の拡大図であり、
図2はスピンドル状要素のスピンドル先端のさらに拡大した軸方向断面である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示された装置はステープル繊維ストランド2から紡績糸1を製造する役目をする。この装置は本質的要素部品としてドラフト装置3及びエアジェット集合体4を含む。
【0015】
ステープル繊維ストランド2は送出方向Aでドラフト装置3に供給され、引出し方向Bで紡績糸1として引出され、巻取り装置(図示せず)に供給される。
【0016】
部分的にのみ示されたドラフト装置3は好ましくは三シリンダードラフト装置として設計され、全体で三つのローラー対を含み、ローラー対のそれぞれは駆動底ローラーとそれに対して柔軟に押圧される加圧ローラーを含む。送出ローラー対5,6のみが示されている。この種のドラフト装置3においては、ステープル繊維ストランド2は既知の方法で希望の繊度にドラフトされる。ドラフト装置3の直ぐ下流に、細い繊維バンド7が存在し、それはドラフトされているがまだ撚りを含まない。
【0017】
繊維バンド7は供給チャネル8を介してエアジェット集合体4に供給される。その下流にいわゆる渦室9があり、そこで繊維バンド7は紡績撚りを与えられ、従って紡績糸1が形成され、糸引出しチャネル10を通して引き出される。渦室9内に接線的に配置されている空気圧ジェットを通して圧縮空気を吹き込むことにより流体装置は渦室9内に渦流を発生する。ジェット開口から出る圧縮空気は空気排出ダクト12を通して案内され、そこではこのダクト12は引出しチャネル10を含むスピンドル形状の静止要素13周りにリング形状の断面を含む。
【0018】
渦室9の領域内に、繊維案内表面14の縁の形の撚り防止具が配置され、この案内表面14は糸引出しチャネル10に対してその入口開口15の領域内でわずかに偏心的に配置されている。
【0019】
この装置において、紡績される繊維は一方では繊維バンド7内に保持され、従って本質的に撚りなしで供給チャネル8から糸引出しチャネル10中に供給される。他方で繊維は供給チャネル8と糸引出しチャネル10との間の領域内で渦流の影響にさらされ、この渦流がそれらに、または少なくともそれらの端部領域に糸引出しチャネル10の入口開口15から離れるように半径方向の駆動を起こさせる。述べた方法により製造された糸1は本質的な撚りを持たない本質的に糸縦方向に延びる繊維または繊維領域の芯、及び繊維または繊維領域がこの芯の周りに巻かれた外部領域を持つ。
【0020】
この形式の装置は600m/分の範囲にある特に高い紡績速度を可能とする。
【0021】
何らかの理由のため、まだ非常に不安定な撚りなしの繊維バンド7または紡績糸1が破断すると、続いて継ぎ合わせ工程が行われ、そこでは紡績糸1の端部が引き出し方向Bに対して反対方向のドラフト装置3に向けて戻される。この目的のための補助装置は注入チャネル16の形で設けられ、それは圧縮空気源17に連結されることができ、この注入チャネル16の口状部18は糸引出しチャネル10に連結され、その入口開口15に向けられる。このようにして糸引出しチャネル10内に吸引流が達成され、それはドラフト装置3に向けて流れ、この吸引流が紡績糸1の端部を送出ローラー対5,6に供給する。
【0022】
ほんの小さな直径を持ちかつ糸引出しチャネル10に斜めに配置される注入チャネル16をスピンドル状要素13に適用する際に伴う困難性のため、本発明によればスピンドル状要素13に対して配置されかつ糸引出しチャネル10の入口開口15並びに注入チャネル16を含むスピンドル先端19が設けられる。この点で更に図2の大きく拡大された図を参照されたい。ここでは口状部18が入口開口15の方を向いている注入チャネル16を持つ別個に示されたスピンドル先端19を見ることができる。
【0023】
スピンドル先端19はそれが容易に置き換えられることができかつそこにO−リング20により取り付けられるような方法でスピンドル状要素13中に挿入される。
【0024】
注入チャネル16はスピンドル先端19の周辺表面22の口状部18から離れる方に面するその端部21で始まる。この周辺表面22は本質的に注入チャネル16に対して垂直に配置されている。これは中ぐり穴が糸引出しチャネル10に対して斜めに延びるときでさえ、注入チャネル16がスピンドル状要素13内に中ぐり穴により容易に付与されることを可能とする。注入チャネル16は口状部18から離れる方に面するその端部21でスピンドル状要素13のスピンドル先端19の外側に連結チャネル23により延長されており、この連結チャネル23は必要により圧縮空気源17に連結されることができる。この方法で注入チャネル16と連結チャネル23との間に分割継ぎ目が発生するため、二つのチャネルは同じ角度で傾斜される必要がない。連結チャネル23は従って糸引出しチャネル10に平行に延びることができ、これは従来技術の場合よりも極めて容易に作られることができる。連結チャネル23はこれによりスピンドル先端19のための凹所25の前方表面24に達することができる。
【0025】
図1及び2に見ることができるように、スピンドル先端19は第一部分26と糸引出しチャネル10の入口開口15とを含む。注入チャネル16はこの第一部分26中にその口状部18により達する。第一部分26は従って糸引出しチャネル10に属し、それに対して共軸的に延びる。
【0026】
スピンドル先端19は入口開口15から離れる方に面するその端部領域27の外側に円筒状案内表面28を持ち、それはスピンドル状要素13の対応的に形成された中空円筒状凹所25内に挿入されることができる。円筒状案内表面28は前方表面29で終わる。
【0027】
円筒状案内表面28と前方表面29との間の介在領域30に面取り31等が設けられ、そこで口状部18から離れる方に面する注入チャネルの端部21が始まる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】静止スピンドル状要素の領域のエアジェット集合体の軸方向断面の拡大図である。
【図2】スピンドル状要素のスピンドル先端のさらに拡大した軸方向断面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステープル繊維ストランドから紡績糸を製造するための装置であって、それがステープル繊維ストランドを供給するための供給チャネルを含み、また入口開口を含む糸引出しチャネルを含み、この糸引出しチャネルがスピンドル状静止要素内に配置されており、また糸引出しチャネルの入口開口周りに渦流を発生するための流体装置を含み、またスピンドル状要素を取巻くリングの形の空気排出ダクトを含み、かつ圧縮空気源にドッキングされることができる注入チャネルを含み、この注入チャネルが口状部により糸引出しチャネルに連結されかつその入口開口の方に向けられているものにおいて、糸引出しチャネル(10)の入口開口(15)を含む別個のスピンドル先端(19)がスピンドル状要素(13)に配置され、このスピンドル先端(19)が注入チャネル(16)を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
スピンドル先端(19)がそれが容易に置き換えられるような方法でスピンドル状要素(13)中に設置されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
スピンドル先端(19)がO−リング(20)によりスピンドル状要素部分(13)内に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
注入チャネル(16)がスピンドル先端(19)の周辺表面(22)の、口状部(18)から離れる方に面するその端部(21)で始まり、この表面(22)が注入チャネル(16)に対して本質的に垂直に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
注入チャネル(16)がスピンドル状要素(13)のスピンドル先端(19)の外側の、口状部(18)から離れる方に面するその端部(21)で、連結チャネル(23)により延長され、この連結チャネル(23)が圧縮空気源(17)と連結されることができることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
連結チャネル(23)が糸引出しチャネル(10)に対して平行に延びることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項7】
連結チャネル(23)がスピンドル先端(19)のための凹所(25)の前方表面(24)に達することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の装置のためのスピンドル先端であって、そのスピンドル先端が第一部分(26)と、注入チャネル(16)に口状部(18)を介して連結される糸引出しチャネル(10)の入口開口(15)とを含み、前記注入チャネル(16)がこの入口開口(15)の方を向いていることを特徴とするスピンドル先端。
【請求項9】
前記スピンドル先端が入口開口(15)から離れる方に面するその端部領域(27)に円筒状案内表面(28)を含み、この案内表面(28)がスピンドル状要素(13)の対応して形成された中空円筒状凹所(25)中に挿入されることができることを特徴とする請求項8に記載のスピンドル先端。
【請求項10】
円筒状案内表面(28)が前方表面(29)で終わることを特徴とする請求項9に記載のスピンドル先端。
【請求項11】
円筒状案内表面(28)と前方表面(29)との間の介在領域(30)に面取り(31)等が設けられていること、この面取り(31)で注入チャネル(16)の口状部(18)から離れる方に面する端部(21)が始まることを特徴とする請求項9または10に記載のスピンドル先端。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−513836(P2009−513836A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519792(P2006−519792)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006874
【国際公開番号】WO2005/007948
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】