説明

ストップランプの点灯制御装置、ストップランプの点灯制御方法

【課題】意匠上の制約を生じさせず、かつ、後方車両の運転者からの視認性が阻害されずに、ハイマウントストップランプと可動式リアスポイラーのスポイラランプの切り替えを行うストップランプの点灯制御装置、ストップランプの点灯制御方法を提供すること。
【解決手段】ハイマウントストップランプ2と、該ハイマウントストップランプ2よりも後方に設けられた可動式の車載装置3に設置されたスポイラランプ5を切り替えて点灯するストップランプの点灯制御装置1において、車載装置3の収納過程で車両の制動が解除された場合、点灯させるストップランプをスポイラランプ5からハイマウントストップランプ2に切り替える切り替え制御手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両のブレーキ操作を車両後方の運転者に知らせるストップランプの点灯制御装置及びストップランプの点灯制御方法に関し、特に、可動式の車載装置にストップランプが配設された場合のストップランプの点灯制御装置及びストップランプの点灯制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後部に可動式のリアスポイラーを設け、車両の走行速度等に応じて上下に稼働して空力特性を向上させる可動式リアスポイラーを車両に搭載する場合がある。図1(a)は、可動式リアスポイラーが搭載された車両の後方視の概略を、図1(b)は側面視の概略をそれぞれ示す。
【0003】
図1(a)に示すように、車幅方向の略中央にハイマウントストップランプ2が搭載され、トランク上方に可動式リアスポイラー3が搭載されている。車両が停止している場合、可動式リアスポイラー3は収納位置P1に収納されており、車両の走行速度が所定以上になると作動位置P3まで繰り出される。
【0004】
ところで、ハイマウントストップランプ2は、後方の車両の運転者から好適に視認できる視認エリアが確保されているが、可動式リアスポイラー3が作動位置P3まで繰り出されると、ハイマウントストップランプ2の視認エリアが阻害されてしまう。このため、可動式リアスポイラー3にはスポイラランプ5が搭載されており、可動式リアスポイラー3が視認エリアを阻害する場合、スポイラランプ5を点灯することで後方車両の運転者からストップランプが視認されるように制御している。
【0005】
しかしながら、ハイマウントストップランプ2とスポイラランプ5が同時に点灯すると、後方車両の運転者が戸惑うため、ハイマウントストップランプ2とスポイラランプ5とが同時には点灯しないように、ハイマウントストップランプ2が消灯されてからスポイラランプ5を点灯させ、又は、スポイラランプ5が消灯されてからハイマウントストップランプ2を点灯させるような切り替え制御が要請されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
すなわち、車両の走行速度が所定の速度まで上昇すると可動式リアスポイラー3が収納位置P1から繰り出され始め、切り替え位置P2まで到達した場合にハイマウントストップランプ2が点灯していると(自車両が制動されていると)、ハイマウントストップランプ2を消灯しスポイラランプ5を点灯させる。
【0007】
また、逆に、所定の速度以上で走行している車両が減速すると、可動式リアスポイラー3が作動位置P3から収納位置P1まで収納され始めるので、切り替え位置P2まで到達した場合にスポイラランプ5が点灯していると(自車両が制動されていると)、スポイラランプ5を消灯しハイマウントストップランプ2を点灯させる。
【特許文献1】特開平10−244875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような切り替え位置P2は、可動式リアスポイラー3を駆動するモータ内に設けられたホールIC(磁気センサ)等により固定部と可動式リアスポイラー3との相対的な位置として検出されるものであるため、切り替え位置P2の検出に誤差が生じることが多い。切り替え位置P2がずれると、切り替わる瞬間の後方車両の運転者の視線移動が大きくなり、運転者がハイマウントストップランプ2又はスポイラランプ5を見失うことになるため好ましくない。
【0009】
切り替え位置P2に基づく点灯と消灯との切り替え制御を回避するように、ハイマウントストップランプ2の視認エリアを可動式リアスポイラー3が阻害しないように設計することも考えられる。しかしながら、これでは、ハイマウントストップランプ2や可動式リアスポイラー3の配置に制約が生じるため車両の意匠上不都合が多い。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑み、意匠上の制約を生じさせず、かつ、後方車両の運転者からの視認性が阻害されずに、ハイマウントストップランプと可動式リアスポイラーのスポイラランプの切り替えを行うストップランプの点灯制御装置、ストップランプの点灯制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するため、ハイマウントストップランプと、該ハイマウントストップランプよりも後方に設けられた可動式の車載装置に設置されたスポイラランプを切り替えて点灯するストップランプの点灯制御装置において、車載装置の収納過程で車両の制動が解除された場合、点灯させるストップランプをスポイラランプからハイマウントストップランプに切り替える切り替え制御手段を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、意匠上の制約を生じさせず、かつ、後方車両の運転者からの視認性が阻害されずに、ハイマウントストップランプと可動式リアスポイラーのスポイラランプの切り替えを行うことができる。
【0013】
また、本発明の一形態において、切り替え制御手段は、車載装置の繰り出し過程で車両の制動が解除された場合、点灯させるストップランプをハイマウントストップランプからスポイラランプに切り替える、ことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、車両の加速時においても、ブレーキ操作のタイミングに合わせてハイマウントストップランプとスポイラランプとを切り替えるので、後方車両の運転者からの視認性を阻害することが防止できる。
【0015】
また、本発明の一形態において、車載装置の位置に基づき予め定めたストップランプの切り替えエリアに該車載装置がある間に制動が解除されない場合、該切り替えエリアの所定の位置に車載装置を待機させる車載装置制御手段を有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、視認性を阻害しないエリアをストップランプの切り替えエリアと定め、該車載装置が切り替えエリアにある間に制動が解除されない場合には、切り替えエリアに車載装置を待機できるので、後方車両の運転者からの視認性を阻害せずに、ハイマウントストップランプとスポイラランプとを切り替えることができる。
【0017】
また、本発明の一形態において、切り替え制御手段は、車載装置の位置に基づき予め定めたストップランプの切り替えエリアに該車載装置がある間に制動が解除された場合、点灯させるストップランプをスポイラランプからハイマウントストップランプに切り替えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、視認性を阻害しないエリアにおいて制動が解除された場合、スポイラランプからハイマウントストップランプに切り替えることができるので、車両の減速時に後方車両の運転者がストップランプを見失うことを防止できる。
【0019】
また、本発明の一形態において、ハイマウントストップランプと、該ハイマウントストップランプよりも後方に設けられた可動式の車載装置に設置されたスポイラランプを切り替えて点灯するストップランプの点灯制御装置において、自車両が制動されている間、ハイマウントストップランプとスポイラランプの切り替えを禁止する切り替え制御手段を有する、ことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、自車両が制動されている間、ハイマウントストップランプとスポイラランプの切り替えを禁止するので、運転者がストップランプを見失うことがない。
【0021】
また、本発明は、ハイマウントストップランプと、該ハイマウントストップランプよりも後方に設けられた可動式の車載装置に設置されたスポイラランプを切り替えて点灯するストップランプの点灯制御方法において、車載装置の収納過程で車両の制動が解除された場合、点灯させるストップランプをスポイラランプからハイマウントストップランプに切り替える第1の切り替え制御手順(例えば、ステップS15)を有する、ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の一形態において、車載装置の繰り出し過程で車両の制動が解除された場合、点灯させるストップランプをハイマウントストップランプからスポイラランプからに切り替える第2の切り替え制御手順(例えば、ステップS4)を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
意匠上の制約を生じさせず、かつ、後方車両の運転者からの視認性が阻害されずに、ハイマウントストップランプと可動式リアスポイラーのスポイラランプの切り替えを行うストップランプの点灯制御装置、ストップランプの点灯制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。本実施の形態のストップランプの点灯制御装置は、加速時には可動式リアスポイラー3が視認エリアにさしかかる前に、減速時には可動式リアスポイラー3が視認エリアから脱した後に、自車両の制動の解除(ブレーキ操作の中断)を検出してハイマウントストップランプ2とスポイラランプ5の点灯を切り替える。なお、スポイラランプ5は可動式リアススポイラー3に搭載されている必要はなく、ハイマウントストップランプ2の視認エリアを阻害して稼働する、例えば、可動式のリアサンシェード等の車載装置に搭載されているストップランプであればよい。
【0025】
図2は、ストップランプの点灯制御装置1のブロック図を示す。なお、ストップランプの点灯制御装置1は、ハイマウントストップランプ2及びスポイラランプ5の双方を制御する。
【0026】
ストップランプの点灯制御装置1は、リアスポイラーECU(Electronic Control Unit )6により制御される。リアスポイラーECU6は、CPU、ROM、RAM及び入出力ポートをバスで結んだマイクロコンピュータであり、CPUがROMに格納されたプログラムを実行し、スポイラランプ5及びハイマウントストップランプ2を制御することで後述する点灯制御を実現する。
【0027】
CPUがプログラムを実行することでリアスポイラーECU6は、切り替え制御手段及び車載装置制御手段を実現する。切り替え制御手段はスポイラランプ5とハイマウントストップランプ2を切り替えて点灯させ、車載装置制御手段は可動式リアスポイラー3等の車載装置の駆動位置を制御する。
【0028】
速度センサ7は、自車両の各車輪に設けられた回転センサであり所定時間毎に検出されるパルスをカウントして車両の速度を検出し、リアスポイラーECU6に出力する。ブレーキランプSW8は、自車両の運転者によるブレーキペダルの操作を検出してリアスポイラーECU6に出力する。
【0029】
リアスポイラーECU6は、速度センサ7により検出された自車両の走行速度に基づき可動式リアスポイラー3を駆動する。例えば、走行速度がA〔km/h〕を超えたら可動式リアスポイラー3を繰り出しを開始し、走行速度がB〔km/h〕を以下となったら可動式リアスポイラー3の収納を開始する。A>Bであるため、自車両の速高速度がB→Aの間は可動式リアスポイラー3が繰り出されず、A→Bの間は可動式リアスポイラー3が収納されない。このように繰り出しと収納の速度に差を設けることで可動式リアスポイラー3を安定して駆動できる。可動式リアスポイラー3の駆動位置は、ホールIC等の変位センサにより検出されリアスポイラーECU6にフィードバックされている。
【0030】
なお、図2では自車両の走行速度のみに基づき可動式リアスポイラー3の繰り出し・収納を制御したが、エンジン回転数、エンジントルク及び温度により決定されるエンジン出力に基づき可動式リアスポイラー3を繰り出し・収納してもよい。
【0031】
図3は、可動式リアスポイラー3が搭載された車両後部の斜視図を示す。車両後部の略中央部分又はトランクボックス9のカバーにも受けられた凹部に可動式リアスポイラー3が収納保持されている。可動式リアスポイラー3の車両後方縁部には車幅方向に付加的なスポイラランプ5が配設されるが、可動式リアスポイラー3が収納位置にある場合、車両後方の運転者から視認されない。
【0032】
可動式リアスポイラー3は、収納位置P1から車体又はトランクボックス9と略平行に、リアスポイラーECU6により制御されるアクチュエータにより上下方向に駆動される。なお、駆動の方向はどのようなものであってもよく、例えば、可動式リアスポイラー3の端部3aを揺動可能に固定して、端部3aを中心に駆動されるものであってもよい。可動式リアスポイラー3は、アクチュエータにより収納位置から作動位置まで駆動され、また、その逆に駆動可能である。
【0033】
車両のリアガラスの上方又は下方にはハイマウントストップランプ2が、自車両後方の運転者から視認可能なように車幅方向に配設されている。アクチュエータにより可動式リアスポイラー3が繰り出されると、自車両後方の運転者からハイマウントストップランプ2を視認することが困難となる。
【0034】
そこで、リアスポイラーECU6は、リアスポイラー3の駆動位置及びブレーキランプSW8の入力に基づき、ハイマウントストップランプ2の視認が可動式リアスポイラー3により阻害されても、スポイラランプ5が視認されるように、ハイマウントストップランプ2及びスポイラランプ5の点灯と消灯を制御する。
【実施例1】
【0035】
リアスポイラーECU6がハイマウントストップランプ2とスポイラランプ5の点灯及び消灯を制御する制御手順を図4のフローチャート図及び図5の車両後方の側面視の概略に基づき説明する。図4のフローチャート図に基づく制御は、可動式リアスポイラー3が上昇する場合の制御であり、例えば車両が走行を開始するとスタートする。
【0036】
また、図5において図1と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図5では、収納位置P1から繰り出され、スポイラランプ5が後方車両の運転者から視認可能となる位置(スポイラランプ5が車体より上方になる位置、以下、切り替えエリア下限位置という)P1’と切り替え位置P2との間を切り替えエリアとした。運転者から視認可能となる位置P1’は、収納位置P1と同じ位置であってもよい。
【0037】
リアスポイラーECU6は、車速センサ7が検出する車速が可動式リアスポイラー3の繰り出しを開始する車速Aになったか否かを判定する(S1)。
【0038】
自車両の車速がAを超えると(S1のYes)、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3を繰り出して収納位置P1から上昇させる(S2)。上昇時又は上昇する以前から運転者がブレーキペダルを操作するとハイマウントストップランプ2が点灯する。本実施例では、可動式リアスポイラー3が切り替えエリアに達した状態で、ハイマウントストップランプ2が点灯したものとする。切り替えエリアでハイマウントストップランプ2が点灯しない場合、切り替え位置P2を通過して可動式リアスポイラー3を作動位置P3まで繰り出せばよく、切り替え位置P2を通過した後にブレーキペダルが操作された場合はスポイラランプ5を点灯させる。
【0039】
切り替えエリアでハイマウントストップランプ2が点灯した場合、リアスポイラーECU6は、制動が解除されたか否かを判定する(S3)。そして、制動が解除された場合(S3のYes)であって、再度、運転者がブレーキ操作した場合には、スポイラランプ5を点灯させる(S4)。
【0040】
また、制動が解除されない場合(S3のNo)、この間も可動式リアスポイラー3は作動位置P3へ向けて繰り出されているので、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達したか否かを判定する(S5)。可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達しない場合(S5のNo)、リアスポイラーECU6は制動が解除されたか否かの判定を繰り返す(S3)。
【0041】
可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達した場合(S5のYes)、リアスポイラーECU6は、ハイマウントストップランプ2を消灯させ、スポイラランプ5を点灯させる(S4)。すなわち、運転者がブレーキ操作を中断しないので、切り替え位置P2において強制的に点灯するランプをハイマウントストップランプ2からスポイラランプ5に切り替える。
【0042】
図4の制御によれば、切り替えエリアを稼働中にブレーキペダルの操作が中断した場合に、以降に点灯させるストップランプをハイマウントストップランプ2からスポイラランプ5に切り替えるため、ハイマウントストップランプ2の点灯時に瞬間的に点灯するストップランプがスポイラランプ5に切り替わる確率を低減できる。すなわち、車両後方の運転者がスポイラランプ5を見失う可能性が低下する。
【0043】
次に、リアスポイラーECU6が可動式リアスポイラー3を収納する場合の制御について、図6のフローチャート図に基づき説明する。図6のフローチャート図に基づく制御は、例えば可動式リアスポイラー3が作動位置P3にある状態からスタートする。
【0044】
まず、リアスポイラーECU6は、車速センサ7が検出する車速が可動式リアスポイラー3の収納を開始する車速Bになったか否かを判定する(S11)。
【0045】
自車両の車速がBより小さくなった場合(S11のYes)、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3の収納を開始する(S12)。エンジンブレーキや空気抵抗により自然に減速する場合を除き、可動式リアスポイラー3の下降時は運転者がブレーキペダルを操作していることとなるため、視認エリアにおいてスポイラランプ5が点灯する。視認エリアでスポイラランプ5が点灯しない場合、切り替え位置P2を通過して可動式リアスポイラー3を収納位置P1まで収納すればよく、切り替え位置P2を通過した後にブレーキペダルが操作された場合はハイマウントストップランプ2を点灯させる。
【0046】
視認エリアでスポイラランプ5が点灯している場合、リアスポイラーECU6は、可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達したか否かを判定する(S13)。リアスポイラーECU6は切り替え位置P2に到達するまで判定を繰り返す(S13のNo)。
【0047】
可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達した場合(S13のYes)、ついで、リアスポイラーECU6は制動が解除されたか否かを判定する(S14)。制動が解除された場合(S14のYes)であって、再度、運転者がブレーキ操作した場合には、ハイマウントストップランプ2を点灯させる(S15)。
【0048】
また、制動が解除されない場合(S14のNo)、この間も可動式リアスポイラー3は収納位置P1へ向けて収納されているので、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3が切り替えエリア下限位置P’に到達したか否か判定する(S16)。可動式リアスポイラー3が切り替えエリア下限位置P’に到達しない場合(S16のNo)、リアスポイラーECU6は制動が解除されたか否かの判定を繰り返す(S14)。
【0049】
可動式リアスポイラー3が切り替えエリア下限位置P’に到達した場合(S16のYes)、リアスポイラーECU6は、スポイラランプ5を消灯させ、ハイマウントストップランプ2を点灯させる(S15)。すなわち、運転者がブレーキ操作を中断しないので、切り替えエリア下限位置P’において強制的に点灯するランプをスポイラランプ5からハイマウントストップランプ2に切り替える。
【0050】
図6の制御によれば、切り替えエリアを稼働中にブレーキペダルの操作が中断した場合に、以降に点灯させるストップランプをスポイラランプ5からハイマウントストップランプ2に切り替えるため、スポイラランプ5の点灯時に瞬間的にハイマウントストップランプ2に切り替わる確率を低減できる。
【実施例2】
【0051】
本実施例では、可動式リアスポイラー3を所定の位置に待機させブレーキ操作が中断されるのを待って、ハイマウントストップランプ2とスポイラランプ5の点灯及び消灯を制御する制御手順について説明する。なお、ストップランプの点灯制御装置1のブロック図は図2と、車両後方の側面視の概略は図5とそれぞれ同様である。
【0052】
図7は、リアスポイラーECU6がハイマウントストップランプ2とスポイラランプ5の点灯及び消灯を制御する制御手順のフローチャート図である。なお、図7において図4と同一ステップには同一の符号を付した。
【0053】
リアスポイラーECU6は、車速センサ7が検出する車速が可動式リアスポイラー3の繰り出しを開始する車速Aになったか否かを判定する(S1)。
【0054】
自車両の車速がAを超えると(S1のYes)、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3を繰り出して収納位置P1から上昇させる(S2)。上昇時又は上昇する以前から運転者がブレーキペダルを操作するとハイマウントストップランプ2が点灯する。本実施例では、可動式リアスポイラー3が切り替えエリアに達した状態で、ハイマウントストップランプ2が点灯したものとする。切り替えエリアでハイマウントストップランプ2が点灯しない場合、切り替え位置P2を通過して可動式リアスポイラー3を作動位置P3まで繰り出せばよく、切り替え位置P2を通過した後にブレーキペダルが操作された場合はスポイラランプ5を点灯させる。
【0055】
切り替えエリアでハイマウントストップランプ2が点灯した場合、リアスポイラーECU6は、制動が解除されたか否かを判定する(S3)。そして、制動が解除された場合(S3のYes)であって、再度、運転者がブレーキ操作した場合には、スポイラランプ5を点灯させる(S4)。
【0056】
また、制動が解除されない場合(S3のNo)、この間も可動式リアスポイラー3は作動位置P3へ向けて繰り出されているので、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達したか否かを判定する(S5)。可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達しない場合(S5のNo)、リアスポイラーECU6は制動が解除されたか否かの判定を繰り返す(S3)。
【0057】
可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達した場合(S5のYes)、リアスポイラーECU6は、可動式リアスポイラー3を切り替え位置P2に待機させる(S7)。すなわち、切り替え位置P2よりも可動式リアスポイラー3を上昇させない。
【0058】
そして、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3を切り替え位置P2に待機させた状態で、制動が解除されたか否かの判定を繰り返す(S3)。制動が解除された場合(S3のYes)であって、再度、運転者がブレーキ操作した場合には、スポイラランプ5を点灯させる(S4)。
【0059】
図7の制御手順によれば、切り替えエリアを稼働中にブレーキペダルの操作が中断した場合に、以降に点灯させるランプをハイマウントストップランプ2からスポイラランプ5に切り替えるため、ブレーキ操作のタイミングに合わせて点灯するランプを切り替えることができる。また、切り替えエリアを稼働中にブレーキペダルの操作が中断しない場合、切り替え位置P2で可動式リアスポイラー3を待機させブレーキペダルの操作の中断を待つので、ハイマウントストップランプ2の点灯中に瞬間的に点灯するランプがスポイラランプ5に切り替わることが防止できる。
【0060】
次に、リアスポイラーECU6が可動式リアスポイラー3を収納する場合の制御について、図8のフローチャート図に基づき説明する。なお、図8のフローチャート図において図6と同一のステップには同一の符号を付した。図8のフローチャート図に基づく制御は、例えば可動式リアスポイラー3が作動位置P3にある状態からスタートする。
【0061】
まず、リアスポイラーECU6は、車速センサ7が検出する車速が可動式リアスポイラー3の収納を開始する車速Bになったか否かを判定する(S11)。
【0062】
自車両の車速がBより小さくなる(S11のYes)、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3の収納を開始する(S12)。エンジンブレーキや空気抵抗により自然に減速する場合を除き、可動式リアスポイラー3の下降時は運転者がブレーキペダルを操作していることとなるため、視認エリアにおいてスポイラランプ5が点灯する。視認エリアでスポイラランプ5が点灯しない場合、切り替え位置P2を通過して可動式リアスポイラー3を収納位置P1まで収納すればよく、切り替え位置P2を通過した後にブレーキペダルが操作された場合はハイマウントストップランプ2を点灯させる。
【0063】
視認エリアでスポイラランプ5が点灯している場合、リアスポイラーECU6は、可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達したか否かを判定する(S13)。リアスポイラーECU6は切り替え位置P2に到達するまで判定を繰り返す(S13のNo)。
【0064】
可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達した場合(S13のYes)、ついで、リアスポイラーECU6は制動が解除されたか否かを判定する(S14)。制動が解除された場合(S14のYes)であって、再度、運転者がブレーキ操作した場合には、ハイマウントストップランプ2を点灯させる(S15)。
【0065】
また、制動が解除されない場合(S14のNo)、この間も可動式リアスポイラー3は収納位置P1へ向けて収納されているので、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3が切り替えエリア下限位置P’に到達したか否か判定する(S16)。可動式リアスポイラー3が切り替えエリア下限位置P’に到達しない場合(S16のNo)、リアスポイラーECU6は制動が解除されたか否かの判定を繰り返す(S14)。
【0066】
可動式リアスポイラー3が切り替えエリア下限位置P’に到達した場合(S16のYes)、リアスポイラーECU6は、切り替えエリア下限位置P’に可動式リアスポイラー3を待機させる(S17)。すなわち、切り替えエリア下限位置P’よりも可動式リアスポイラー3を下降させない。
【0067】
そして、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3を待機させた状態で、制動が解除されたか否かの判定を繰り返す(S14)。制動が解除された場合(S14のYes)であって、再度、運転者がブレーキ操作した場合には、ハイマウントストップランプ2を点灯させる(S15)。
【0068】
図8の制御によれば、切り替えエリアを稼働中にブレーキペダルの操作が中断した場合に、以降に点灯させるランプをスポイラランプ5からハイマウントストップランプ2に切り替えるため、ブレーキ操作のタイミングに合わせて点灯するランプを切り替えることができる。また、切り替えエリアを稼働中にブレーキペダルの操作が中断しない場合、切り替えエリア下限位置P’に可動式リアスポイラー3を待機させブレーキペダルの操作の中断を待つので、スポイラランプ5の点灯中に瞬間的に点灯するストップランプがハイマウントストップランプ2に切り替わることが防止できる。
【0069】
ところで、図8のように可動式リアスポイラー3を待機させる場合、待機させる位置は切り替え位置P2であってもよい。図9は、リアスポイラーECU6が可動式リアスポイラー3を収納する場合の制御の制御手順のフローチャート図である。なお、図9のフローチャート図において図8と同一のステップには同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0070】
図9のフローチャート図では、可動式リアスポイラー3が切り替え位置P2に到達した場合(S13のYes)、リアスポイラーECU6は可動式リアスポイラー3を切り替え位置P2に待機させる(S18)。
【0071】
そして、リアスポイラーECU6は制動が解除されたか否かを判定し(S14)、制動が解除された場合(S14のYes)であって、再度、運転者がブレーキ操作した場合には、ハイマウントストップランプ2を点灯させる(S15)。
【0072】
図9の制御によれば、切り替え位置P2に可動式リアスポイラー3を待機させブレーキペダルの操作の中断を待つので、スポイラランプ5の点灯中に瞬間的に点灯するランプがハイマウントストップランプ2に切り替わることが防止できる。また、図8のように切り替えエリア下限位置P’に待機させる場合よりも、ハイマウントストップランプ2とスポイラランプ5の位置が近くなるので、後方車両の運転者の視認性がよい。
【0073】
なお、図9ではリアスポイラー3の待機位置を切り替え位置P2としたが、リアスポイラー3の待機位置は切り替えエリアのいずれでもあってもよい。
【0074】
以上のように、本実施の形態のストップランプの点灯制御装置によれば、後方車両の運転者からの視認性が阻害されずに、ハイマウントストップランプと可動式リアスポイラーのスポイラランプの切り替えを行うことができる。また、ハイマウントストップランプ2又はスポイラランプ5の位置を調整したものではないので意匠上の制約を生じさせない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】可動式リアスポイラーが搭載された車両の概略を示す図である。
【図2】ストップランプの点灯制御装置のブロック図である。
【図3】可動式リアスポイラーが搭載された車両後部の斜視図である。
【図4】リアスポイラーECUがハイマウントストップランプとスポイラランプの点灯及び消灯を制御する制御手順のフローチャート図である。
【図5】車両後方の側面視の概略を示す図である。
【図6】リアスポイラーECUが可動式リアスポイラーを収納する場合のストップランプの点灯の制御手順を示すフローチャート図である。
【図7】リアスポイラーECUがハイマウントストップランプとスポイラランプの点灯及び消灯を制御する制御手順のフローチャート図である。
【図8】リアスポイラーECUが可動式リアスポイラーを収納する場合のストップランプの点灯の制御手順を示すフローチャート図である。
【図9】リアスポイラーECUが可動式リアスポイラーを収納する場合のストップランプの点灯の制御手順を示すフローチャート図である
【符号の説明】
【0076】
1 ストップランプの点灯制御装置
2 ハイマウントストップランプ
3 リアスポイラー
5 スポイラランプ
6 リアスポイラーECU
7 速度センサ
8 ブレーキランプSW


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイマウントストップランプと、該ハイマウントストップランプよりも後方に設けられた可動式の車載装置に設置されたスポイラランプを切り替えて点灯するストップランプの点灯制御装置において、
前記車載装置の収納過程で車両の制動が解除された場合、点灯させるストップランプを前記スポイラランプから前記ハイマウントストップランプに切り替える切り替え制御手段を有する、
ことを特徴とするストップランプの点灯制御装置。
【請求項2】
前記切り替え制御手段は、
前記車載装置の繰り出し過程で車両の制動が解除された場合、点灯させるストップランプを前記ハイマウントストップランプから前記スポイラランプに切り替える、
ことを特徴とする請求項1記載のストップランプの点灯制御装置。
【請求項3】
前記車載装置の位置に基づき予め定めたストップランプの切り替えエリアに該車載装置がある間に制動が解除されない場合、該切り替えエリアの所定の位置に前記車載装置を待機させる車載装置制御手段を有する、
ことを特徴とする請求項1記載のストップランプの点灯制御装置。
【請求項4】
前記切り替え制御手段は、前記車載装置の位置に基づき予め定めたストップランプの切り替えエリアに該車載装置がある間に制動が解除された場合、点灯させるストップランプを前記スポイラランプから前記ハイマウントストップランプに切り替える、
ことを特徴とする請求項1記載のストップランプの点灯制御装置。
【請求項5】
ハイマウントストップランプと、該ハイマウントストップランプよりも後方に設けられた可動式の車載装置に設置されたスポイラランプを切り替えて点灯するストップランプの点灯制御装置において、
自車両が制動されている間、前記ハイマウントストップランプと前記スポイラランプの切り替えを禁止する切り替え制御手段を有する、
ことを特徴とするストップランプの点灯制御装置。
【請求項6】
ハイマウントストップランプと、該ハイマウントストップランプよりも後方に設けられた可動式の車載装置に設置されたスポイラランプを切り替えて点灯するストップランプの点灯制御方法において、
前記車載装置の収納過程で車両の制動が解除された場合、点灯させるストップランプを前記スポイラランプから前記ハイマウントストップランプに切り替える第1の切り替え制御手順を有する、
ことを特徴とするストップランプの点灯制御方法。
【請求項7】
前記車載装置の繰り出し過程で車両の制動が解除された場合、点灯させるストップランプを前記ハイマウントストップランプから前記スポイラランプからに切り替える第2の切り替え制御手順を有する、
ことを特徴とする請求項6記載のストップランプの点灯制御方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−185995(P2007−185995A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3617(P2006−3617)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】