説明

ストリップ圧延設備用の案内装置

本発明は、材料1を加工するための設備における案内装置であって、材料1の長手方向に沿った両側2a、2bで調節することができて互いに平行に配置されたルーラ3a、3bを備えており、それぞれの調節装置4によってルーラ3a、3bに圧力を加えることができる案内装置であって、少なくとも1つの調節装置4が、互いに直列に接続された少なくとも2つの加圧装置4a、4bを備えていることを特徴とする案内装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料を加工するための設備における案内装置、特に金属圧延機、好ましくはストリップ圧延機の構成部品としての案内装置に関する。この案内装置は、様々な素材、温度、幅、および厚さを有する様々な材料、特に金属材料のストリップを案内するためのものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、圧延機用の案内装置、特に圧延または切断される材料の側部ガイド用の案内装置の構成部品としての案内ルーラ(Fuehrungslineale)が記載されている。この従来技術は、特に、帯状材料を案内する際の案内ルーラの摩耗を取り扱っている。
【0003】
さらに、特許文献2には、ローラテーブル(Rollgang)上を搬送される圧延ストリップ用のそのような側部ガイドを調節するための方法および装置も記載されている。この従来技術でも調節され、ストリップに当接するように圧力を加えられた案内ルーラの摩耗が問題として認識されている。
【0004】
基本的には、圧延スタンドまたは共通の圧延ラインの入口側および/または出口側で、ストリップが圧延スタンドを通って正しく進むことができることを保証するため、および/またはコイルに対してずれることなくストリップを正しく巻き取ることができることを保証するために、そのような案内ルーラは、各側ごとに、または両側まとめて、ストリップ縁部に対して予め定義された押付力を及ぼすように調節される。
【0005】
これに関して、特許文献3が、熱間広幅ストリップの仕上げ圧延ラインの入口の前に配置された、圧延方向に対して横方向で移動可能な案内ルーラまたは案内ローラ用の位置決め制御機構を提案する。
【0006】
同様に、特許文献4にも、ローラテーブル上を搬送される圧延ストリップ用の側部ガイドが開示されており、ここでは、案内ルーラが油圧シリンダによって駆動され、この油圧シリンダはさらに、対応する調節機構によって厳密に位置決めすることができ、その力を調節することができる。
【0007】
圧延ラインのローラテーブル上、特に鋼板圧延機またはアルミニウム板圧延機などストリップ圧延機のローラテーブル上では、基本的に、様々な温度、幅、および厚さを有する様々な材料からなるストリップを均一かつ確実に案内する必要がある。しかし、それに対応して、材料、その温度、またはその幅および厚さに応じて、この種のストリップ案内機構に要求される押付力も変化する。1つにはストリップの案内を保証し、しかしそれと同時に、ストリップ縁部の変形が生じず、ストリップが全体的に湾曲せず、またはストリップ全体が変形されず、したがってストリップ縁部または案内ルーラに損傷が残らないように配慮すると、案内すべき材料が柔かくなる、高温になる、広くなる、および/または薄くなるにつれて、要求される押付力は小さくなるはずである。
【0008】
しかし、従来技術から知られている案内ルーラの電気機械式または油圧式の駆動機構は、基本的には、調節可能な最大の押付力になるように設計されており、したがって、例えば柔かい、温度が高い、広い、および/または薄いストリップのためのより低い押付力を調節することができる可能性は技術的に限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開1427923A号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開4140784A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開3423560A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開4003717A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、材料を加工するための設備における案内装置であって、材料の長手方向に沿った両側で調節することができて互いに平行に配置されたルーラを備えており、加工対象の材料の縁部に対して案内ルーラが及ぼす押付力を、最大押付力に比べて明らかに低い圧力であっても確実に調節することができ、したがって案内装置の使用可能な用途を、多様な加工対象材料、特に、柔かい、広い、および/または特に薄い断面の材料、例えば薄いストリップに合わせることができ、それと同時に特に縁部領域におけるストリップの損傷を防止する案内装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を備えた案内装置によって解決される。本発明の有利な形態は従属請求項で定義する。
【0012】
本発明は、冒頭に述べた種類の案内装置を取り扱い、そのような案内装置は、例えばストリップ圧延機において、例えばステッケル圧延機や冷間圧延機の逆転式スタンドなど圧延スタンドの入口側および/または出口側、またはタンデム式に配置された圧延スタンドの入口側および/または出口側、特に巻取り装置の前または後ろで使用される。
【0013】
本発明は、考えられるすべての材料の加工、特に金属圧延機またはプラスチック加工ラインで使用することができる。しかし、本発明による案内装置が、仕上げ圧延ライン(いわゆる仕上げ圧延機(Finish Rolling Mill))の少なくとも1つの圧延スタンドの入口側または出口側、または巻取り設備の前に配置されると特に好ましい。
【0014】
本発明によれば、案内装置においてルーラが配置され、ルーラは、材料の長手方向に沿った両側で調節することができ、互いに平行に配置され、それらのルーラによって、加工装置内で、特に例えば圧延スタンドなど加工装置の間で、加工される材料の心合わせおよび/または位置合わせが行われる。様々な材料断面、好ましくはストリップの寸法に対して案内装置を広範に使用できることを保証するために、少なくとも1つの調節機構によって少なくとも1つのルーラに直接圧力を加えることができる。対応する調節装置によって1つのルーラだけに圧力を加えることができる場合には、その調節装置によって、圧力を加えられたルーラを介して、かつ案内される材料自体を介して、反対側のルーラの調節も行われる。しかし、材料の長手方向に沿った両側でルーラに圧力を直接加えることができる好ましい場合には、それに対応して、各ルーラが専用の調節装置を備える。
【0015】
少なくとも1つの調節装置が、より広範な調節可能な圧力にわたって、最大押付力よりも明らかに低い厳密に定義された圧力をもルーラを介して加工対象の材料に加えることができることを保証するために、本発明によれば、少なくとも1つの調節装置が、互いに直列に接続された、したがって互いに協働する少なくとも2つの加圧装置を備えており、これらの加圧装置はまた、場合によっては2つの異なる最大調節圧力を加えることができる。
【0016】
したがって、互いに直列に接続された加圧装置を適切に選択すると、例えば比較的大きい方の加圧装置と比較的小さな加圧装置を使用することによって、好ましくは、第1の加圧装置によって基本圧力を加えることができ、第2の加圧装置によって、上記の基本圧力に加えて、加工される材料または加工対象の材料に対するルーラの全圧の微調節を行うことができる。
【0017】
加圧装置が少なくとも2つのピストン−シリンダユニットを備えている限り、本発明の特に好ましい実施形態では、比較的小さい方のシリンダが、比較的大きい方のシリンダのピストンロッドに固定されるか、またはピストンロッド内に固定され、好ましくはピストンロッドに組み込まれている。これにより、ピストン−シリンダユニットの特に効果的で確実な直列接続を利用できるようになり、これによってさらに、小さいピストン−シリンダユニットによって付加される圧力が、大きいピストン−シリンダユニットによって付加される圧力に確実に加わることが保証される。この場合、比較的小さい方のピストン−シリンダユニットが、比較的大きい方のピストン−シリンダユニットの最大圧力の最大50%、特に好ましくは最大35%を付加することができると特に好ましい。
【0018】
本発明による案内装置のさらなる好ましい形態では、複数の加圧装置の連結が機械的に、好ましくは少なくとも1つのラックアンドピニオン機構によって行われる。この好ましい形態により、案内装置内部で向かい側のルーラと平行な各ルーラの確実な調節、および場合によっては加工対象の材料の長手方向に沿った側部に対して完全に垂直な方向での各ルーラの確実な調節を、複数の加圧装置を使用する場合でも特に簡単な手段によって保証することができる。
【0019】
既に冒頭で述べたように、本発明による案内装置は、各ルーラ当たりの加圧装置の数に関して特に限定はないが、互いに直列に接続された2つのピストン−シリンダユニットを備える少なくとも1つの加圧装置が、ルーラの1つのみと接続しているのが好ましい。これにより、本発明による目的を達成するために必要な装備を最小限に抑えられる。しかし、この場合には、例えばストリップの縁部など材料の長手方向に沿った両側に対する加圧は、加工対象の材料が、加圧装置を設けられたルーラによって、その材料の長手方向に沿った反対側の側部に配置されたルーラに押し付けられるときに行われる。
【0020】
本発明による案内装置内部でルーラを互いに独立して調節することができると好ましい。なぜなら、それにより、加工対象の材料の両側での特に確実なプロセス制御を行うことができるようになるからである。特に、ストリップ幅にわたって厚さが異なるいわゆる連続テーラードブランクの圧延の場合、厚い方のストリップ側部での加圧に比べて、薄い方のストリップ側部に対する加圧を小さくすることで、両側でのストリップ縁部損傷が防止され、それと同時に確実なストリップの案内が行われる。
【0021】
いずれにせよ、調節または制御ユニットが、本発明による案内装置の少なくとも1つの調節装置と接続しているのが好ましい。複数の加圧装置が存在する場合、これらを互いに独立して制御または調節することができることが特に好ましい。これにより、特に好ましい形態では、加工設備において、できるだけ多様な製造物に対し、最大限の自由度のプロセス制御を利用できるようになる。
【0022】
本発明によれば、材料に対して垂直な方向での1つまたは複数のルーラの調節は、それぞれの調節装置の同期制御および調節のみによって行うことができる。しかし、材料に対して垂直な方向での1つまたは複数のルーラの調節を少なくとも1つの追加の案内レールが補助する実施形態が好ましい。少なくとも1つの調節装置がそれぞれのルーラの端部領域に提供され、これらの調節装置の間にそれぞれ1つの案内レールが配置されると特に好ましい。これにより、垂直から角度が傾いて材料に対してずれるルーラのずれが、確実に、特に簡単な手段によって妨げられる。
【0023】
以下、本発明を、本発明の異なる実施形態の3つの概略図を参照しながら説明する。しかし、その際、図示は説明のためのものにすぎず、添付の特許請求の範囲で定義する本発明の保護範囲を何らかの形で限定する意図のものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による案内装置の第1の実施形態の概略上面図である。
【図2】本発明による案内装置の第2の実施形態の概略上面図である。
【図3】本発明による案内装置の第3の実施形態の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に、材料1を案内するための本発明による案内装置の概略上面図を示す。材料1の長手方向に沿った両側にルーラ3aおよび3bが配置され、ルーラ3aおよび3bはそれぞれ、それらの端部領域に配置された2つの調節装置4a、4bおよび4c、4dによって材料1に対して調節することができる。材料1の長手方向に沿った縁部に対する圧力は、制御および調節することができ、予め定められており、ルーラ3a、3bによって、定められた大きさに調節することができる。説明のために、調節装置4dのみを概略図で詳細に示す。しかし、図1に示す第1の実施形態によれば、調節装置4a〜4dはすべて同様に構成される。調節装置4a〜4dは、大きさの異なる2つのシリンダ空間6aおよび6bを有する二重シリンダの形態で示されており、ここで、比較的大きい方のシリンダ空間6a内には、ピストンロッド7aが摺動可能に配置され、このピストンロッド7aは油圧機構(図示せず)によって調節および制御することができ、比較的小さい方のシリンダ空間6b内には、同様に、比較的小さい方のピストンロッド7bが摺動可能に配置され、このピストンロッド7bは油圧機構(図示せず)によって調節および制御することができる。大きいピストンロッド7aは基部8に固定され、一方、小さいピストンロッド7bはルーラ3bと接続している。図示される実施形態では、例えば小さいピストンロッド7bが二重シリンダ内へストロークエンドまで進められたときに、大きいピストン−シリンダユニット6a、7aによって二重シリンダの最大圧力が予め定められる。互いに直列に接続されたピストン−シリンダユニット4d、7bと4d、7aの追加によって、大きいピストン7aが二重シリンダ4d内へストロークエンドまで進められたときに、比較的小さい方のピストン−シリンダユニット4d、7bのみによって微調節できるようにして、調節装置4dのより小さい圧力の厳密な調節が行われる。
【0026】
図2に、本発明による案内装置の第2の実施形態を示す。この実施形態は、図1に示した第1の実施形態と以下の点のみが異なる。すなわち、ルーラ3aと協働する一対の調節装置4aと4bとの間、および第2のルーラ3bと協働する一対の調節装置4cと4dとの間に、それぞれ案内レール5a、5bが配置され、案内レール5a、5bは、独立して、材料1の長手方向に沿った縁部それぞれに対して垂直な方向でのそれぞれのルーラ3a、3bの移動を可能にする。
【0027】
最後に、図3に、本発明による案内装置の第3の実施形態を示す。この実施形態では、それぞれのルーラ3a、3bに、それぞれ1つの調節装置4a、4bのみが接続され、図1および図2による実施形態とは異なり、ルーラ3a、3bのほぼ中央に、ルーラ3a、3bの長さの半分の位置に配置される。ストリップ材料1の長手方向に沿った縁部に対して垂直な方向でのルーラ3a、3bそれぞれの移動を保証するために、ルーラ3a、3bのそれぞれの端部の領域に、案内レール5a、5bまたは5c、5dが、それぞれの調節装置4a、4bの両側に対として配置される。本発明による案内装置のこの第3の実施形態でも、調節装置4a、4bは、図1で既に詳細に論じた大きいピストンロッド7aと小さいピストンロッド7bをそれぞれ備える二重シリンダからなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料(1)を加工するための設備における案内装置であって、前記材料(1)の長手方向に沿った両側(2a、2b)で調節することができかつ互いに平行に配置されたルーラ(3a、3b)を備え、少なくとも1つの調節装置(4)によって少なくとも1つのルーラ(3a、3b)に圧力を加えることができる案内装置であって、
少なくとも1つの調節装置(4)が、相前後して直列に接続された少なくとも2つの加圧装置(4a、4b)を備えていることを特徴とする案内装置。
【請求項2】
前記加圧装置(4a、4b)が、相前後して直列に接続された2つのピストン−シリンダユニットを備えていることを特徴とする請求項1に記載の案内装置。
【請求項3】
相前後して直列に接続された前記2つのピストン−シリンダユニットが、比較的大きい方のピストン−シリンダユニットと比較的小さい方のピストン−シリンダユニットから成ることを特徴とする請求項2に記載の案内装置。
【請求項4】
前記比較的小さい方のシリンダが、前記比較的大きい方のシリンダのピストンロッドに固定され、好ましくは前記ピストンロッドに組み込まれていることを特徴とする請求項3に記載の案内装置。
【請求項5】
前記加圧装置(4a、4b)の連結が、機械的に、好ましくは少なくとも1つのラックアンドピニオン機構によって行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項6】
第1の加圧装置(4a)が所望の位置に固定可能であるように構成されており、前記材料(1)への加圧が前記第2の加圧装置(4b)のみによって行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項7】
相前後して直列に接続された2つのピストン−シリンダユニットを備えた前記少なくとも1つの加圧装置(4a、4b)が、前記ルーラ(3a、3b)の1つのみと接続していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項8】
前記ルーラ(3a、3b)が互いに独立して調節可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項9】
前記調節または制御ユニットが、少なくとも1つの調節装置(4)と接続していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項10】
前記加圧装置(4a、4b)が互いに独立して制御可能または調節可能に構成されていることを特徴とする請求項9に記載の案内装置。
【請求項11】
少なくとも1つの案内レール(5)が、前記材料(1)に対して垂直な方向における前記ルーラ(3a、3b)の一方または両方の調節を補助することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項12】
案内装置が金属圧延機、好ましくはストリップ圧延機の構成部品であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項13】
案内装置が仕上げ圧延ラインの少なくとも1つの圧延スタンドの出口側に配置されることを特徴とする請求項12に記載の案内装置。
【請求項14】
仕上げ圧延ラインの少なくとも1つの圧延スタンドの入口側に配置されることを特徴とする請求項12に記載の案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−504431(P2013−504431A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528271(P2012−528271)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005547
【国際公開番号】WO2011/029599
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】