説明

ストレス性肌荒れ改善・予防経口剤

【課題】睡眠不足や食生活の乱れ、精神的なストレス、飲酒、喫煙等、生活習慣の変化による体の内側からの、いわゆる内的ストレスに起因した肌あれを改善する、ストレス性肌荒れ改善・予防経口剤及びストレス性皮下脂肪減少に対する抑制経口剤、ならびにストレス性肌荒れ改善・予防用経口組成物を提供する。
【解決手段】アラビトールからなるストレス性肌荒れ改善・予防経口剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレス性肌荒れ改善・予防経口剤及びストレス性肌荒れ改善・予防用経口組成物、ならびにストレス性皮下脂肪減少に対する抑制経口剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肌あれとは、皮膚のかさかさ感、ひび割れ皮溝・皮丘の不明瞭化等として認識される。従来、これらの肌あれ改善に用いられる皮膚外用剤等は、ワセリンや尿素、多価アルコール等の保湿剤、抗炎症剤等を用いることが一般的であった。しかしながら、これらの皮膚外用剤は、紫外線や乾燥、物理刺激等の外的要因による肌あれに対しては効果が得られるものの、睡眠不足や食生活の乱れ、精神的なストレス、飲酒、喫煙等、生活習慣の変化による体の内側からの、いわゆる内的ストレスに起因した肌あれを根本的に改善することはできなかった。また、ビタミン剤等の経口剤は効果が不十分であった(特許文献1:特開2007−63177号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−63177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、睡眠不足や食生活の乱れ、精神的なストレス、飲酒、喫煙等、生活習慣の変化による体の内側からの、いわゆる内的ストレスに起因した肌あれを改善する、ストレス性肌荒れ改善・予防経口剤及びストレス性肌荒れ改善・予防用経口組成物、ならびにストレス性皮下脂肪減少に対する抑制経口剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、睡眠の質が低下し、食生活が乱れること等の内的ストレスによって起きる肌あれ、具体的には、皮膚バリア機能の低下、皮膚の乾燥、皮膚表面形態の悪化に対して、アラビトールに予防・改善効果があることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
また、さらに内的ストレスにより皮下脂肪が減少することを知見し、アラビトールが、内的ストレスに起因する皮下脂肪減少に対して抑制効果を有することを知見した。さらに、この皮下脂肪が肌荒れに関与していることを知見し、ストレス性肌荒れ改善・予防効果の評価に用いることができることを知見した。
【0007】
従って、本発明は下記ストレス性肌荒れ改善・予防経口剤及びストレス性肌荒れ改善・予防用経口組成物、ならびにストレス性皮下脂肪減少に対する抑制経口剤を提供する。
[1].アラビトールからなるストレス性肌荒れ改善・予防経口剤。
[2].アラビトールを有効成分として含有するストレス性肌荒れ改善・予防用経口組成物。
[3].アラビトールからなる、ストレス性皮下脂肪減少に対する抑制経口剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、いわゆる内的ストレスに起因した肌あれを改善する、ストレス性肌荒れ改善・予防経口剤及びストレス性肌荒れ改善・予防用経口組成物、ならびにストレス性皮下脂肪減少に対する抑制経口剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】試験例のTEWL相対値を示すグラフである。
【図2】試験例の角質水分量相対値を示すグラフである。
【図3】試験例のSa相対値を示すグラフである。
【図4】本発明の試験例における、対照群、睡眠制御+高脂肪食摂取群及びD−アラビトール摂取群のマウスの皮膚構造を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明はアラビトールからなるストレス性肌荒れ改善・予防経口剤であり、アラビトールをストレス性肌荒れ改善・予防用途に用いるものである。また、本発明は、アラビトールからなる、ストレス性皮下脂肪減少に対する抑制経口剤であり、アラビトールをストレス性皮下脂肪減少に対する抑制用途に用いるものである。
【0011】
アラビトールは糖アルコールの1種であり、D−アラビトールが挙げられる。アラビトールの投与量(摂取量)は、有効量であれば特に限定されないが、成人体重1kg当り0.05mg〜500mgの範囲とすることができる。その摂取方法は特に限定されず、アラビトールを経口から摂取できればよい。
【0012】
肌あれ改善効果は、(1)経表皮水分喪失量(TEWL)、(2)角質水分量、(3)レプリカ採取による皮膚表面形状の粗さ等を指標にできることが知られており、本発明の肌あれ改善効果も上記方法によって評価できる。一方、後述の試験例により明らかであるように、睡眠抑制、高脂肪食摂食等の内的ストレスにより、皮下脂肪が減少すること、上記肌あれの指標と皮下脂肪の減少とに相関性があること、皮下脂肪減少が肌荒れに関与していることがわかった。
【0013】
上記結果から、ストレスを起因とする皮下脂肪の増減を指標にした、肌あれ改善効果の評価方法が提供できる。例えば、内的ストレスに起因した肌あれ、具体的には睡眠抑制と高脂肪食摂食によるストレスをかけたマウスと、同様にストレスをかけたマウスに、被試験物を摂食させたマウスとの皮下脂肪の厚さを比較し、対照と比較して皮下脂肪の厚さの減少が抑制された割合により、肌あれ改善効果を評価するものである。睡眠抑制と高脂肪食摂食については特に限定されず、例えば後述する試験例の方法が挙げられる。被試験物の摂食方法は、例えば、粉末飼料や固形飼料に混合又は飲料水に溶解し、自由摂取させる方法が挙げられる。皮下脂肪の厚さの評価方法は、皮膚を摘出し、10体積%ホルマリンで固定後、常法に従ってパラフィン切片を作製し、ヘマトキシン・エオシン等の染色により皮膚構造の全体像の観察を行うことにより測定できる。
【0014】
本発明のストレス性肌荒れ改善・予防経口剤、ストレス性皮下脂肪減少に対する抑制経口剤は、医薬品、医薬部外品、食品等に配合することができ、アラビトールを有効成分とするストレス性肌荒れ改善・予防用経口組成物、アラビトールを有効成分とするストレス性皮下脂肪減少に対する抑制用経口組成物とすることができる。ストレス性肌荒れ改善・予防又はストレス性皮下脂肪減少に対する抑制のために用いられるものである旨の表示を付した医薬品、医薬部外品、食品とすることができる。組成物の剤型としては特に限定されず、錠剤(チュアブル錠、口腔内崩壊錠等を含む)、顆粒剤、カプセル剤等の固形剤、ドリンク剤(液剤)等、経口投与可能な剤型に調製することができる。組成物中のアラビトールの含有量は特に限定されず、上記投与量(摂取量)に応じて適宜選定されるが、0.1〜100質量%の範囲で適宜選定される。
【0015】
本発明の組成物には、各剤型に応じて、通常用いられる任意成分を配合することができる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、その適量を配合することができる。
【0016】
任意成分としては、ビタミン、ミネラル、美肌成分、甘味剤、酸味剤、防腐剤、香料、色素等が挙げられる。
【0017】
ビタミンとしては、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、A、D、E、K、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ユビキノン及びこれらの誘導体等が挙げられる。この中でも、B1、B2、B6、B12、Cが好ましい。ビタミンの組成物中の適切な配合量は、各々栄養機能食品の栄養素の配合限度量に従うのが好ましい。
【0018】
ミネラルとしては、カルシウム、鉄、リン、マグネシウム、カリウム、セレン、亜鉛等が挙げられる。最適な配合量は、栄養機能食品の栄養素の配合限度量に従うのが好ましい。ミネラルの組成物中の最適な含有量は、各々栄養機能食品の栄養素の配合限度量に従うのが好ましい。
【0019】
美肌成分としては、肌の保湿力を高めたり、肌の新陳代謝を向上させる成分を配合することができる。例えば、ヒアルロン酸、エラスチン、コエンザイムQ10、α−リポ酸、アロエ、セラミド、ローヤルゼリー、アスタキサンチン、アミノ酸類、グルコサミン、エラグ酸、補酵素等が挙げられる。
【0020】
甘味剤としては、白糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、ハチミツ、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等が挙げられる。酸味剤としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸等が挙げられる。
【0021】
例えば、錠剤(チュアブル錠、口腔内崩壊錠等を含む)、顆粒剤、カプセル剤等の固形剤の場合には、下記賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を配合することができる。
【0022】
賦形剤としては、セルロース及びその誘導体、スターチ及びその誘導体、糖類、糖アルコール類等が挙げられ、より具体的には、結晶セルロース、乳糖、白糖、マンニトール、エリスリトール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。
【0023】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、デンプン、アルファー化デンプン等が挙げられる。
【0024】
崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン等が挙げられる。
【0025】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク等が挙げられる。
【0026】
固形剤の製造方法は特に限定されず、アラビトール及び任意成分を混合し、上記混合物を、打錠機等で圧縮成型して錠剤を得ることができ、上記混合物を個包装することにより、顆粒剤を得ることができる。さらに、上記混合物を、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を含有するカプセルに充填し、カプセル剤にすることができる。
【0027】
例えば、ドリンク剤(液剤)の場合は、増粘多糖類等を配合することができる。増粘多糖類としては、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、キサンタンガム、カードラン(β−1,3−グルカン)、ヒアルロン酸等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。液剤は、アラビトール、任意成分及び水(残部)を混合して得ることができる。
【実施例】
【0028】
以下、試験例及び実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0029】
[試験例]
[睡眠制御+高脂肪食摂取群]
マウスを以下に示す方法により睡眠不良状態にさせ、さらに高脂肪飼料(日本クレア株式会社製Quick Fat)を自由摂取させることにより(偏食状態)、生活習慣が乱れた状態にした。日本エスエルシー株式会社から購入したヘアレスマウス Hos:HR−1を水中に設置したアクリル製の円柱上で生活させ(RH Silvaら,Neuropharmacology 46,p895−903,(2004)参照)、レム睡眠(体の休息)阻害による睡眠不良状態を人工的に引き起こした。さらに、動物性油脂由来の脂肪を多く含む高脂肪飼料(日本クレア株式会社製Quick Fat)を摂取させた。
【0030】
[D−アラビトール摂取群]
D−アラビトール2質量%を高脂肪飼料に混合し、試験開始時から与える以外は、睡眠制御+高脂肪食摂取群と同様の方法で飼育した。
【0031】
[マルチビタミン摂取群]
大塚製薬製マルチビタミン(V.C、V.E、ナイアシンアミド、パントテン酸Ca、V.B6、V.B2、V.B1、V.A、葉酸、ビオチン、V.D、V.B12含有)2質量%を高脂肪飼料に混合し、試験開始時から与える以外は、睡眠制御+高脂肪食摂取群と同様の方法で飼育した。
【0032】
[対照群]
対照群については、通常飼育用飼料として、日本農産工業株式会社製ラボMRストックを供与し、Shephard Specialty Papers社製アルファドライ(通常床敷)上で飼育した。
各群6匹で、4週間「睡眠制御+高脂肪食摂取」後、マウスの皮膚状態について下記評価を行った。
【0033】
[経表皮水分喪失量(TEWL)]
マウスをステンレス製のケージの蓋に置き、十分に静止するのを待ってから、Delfin Technologies 社製VapoMeterを用いて、無麻酔下で背部皮膚の経表皮水分損失を連続して5回計測し、その平均値を1匹の測定値とした。各結果は、6匹の平均値を算出した後(表1)、「睡眠制御+高脂肪食摂取」群に対する相対値を示した(図1)。
【0034】
[角質水分量]
マウスをステンレス製のケージの蓋に置き、十分に静止するのを待ってから、スカラ株式会社製モイスチャーチェッカーMY−707Sを用いて、無麻酔下で背部皮膚の角質水分量を連続して3回計測し、その平均値を1匹の測定値とした。各結果は、6匹の平均値を算出した後(表1)、「睡眠制御+高脂肪食摂取」群に対する相対値を示した(図2)。
【0035】
[レプリカ採取による皮膚表面形状の粗さ(Sa値)]
有限会社アサヒバイオメッド製反射用レプリカ作製キットASB−01のマニュアルに従って、ソムノペンチル麻酔下で背部皮膚のレプリカを採取後、Taylor Hobson 社製Talyscan 150を用いて表面形状を測定した(1cm×1cm、ピッチ20μm)。うねりを修正後、Sa値により、表面の凹凸を評価した。各結果は、6匹の平均値を算出した後(表1)、「睡眠制御+高脂肪食摂取」群に対する相対値を示した(図3)。Sa値の算出法について下記に示す。
【0036】
【数1】

(N、M:レプリカの縦軸、横軸の長さ、Zx、y:座標)
【0037】
D−アラビトールは、睡眠不良と高脂肪食摂取(偏食)によって生じる経表皮水分喪失量(TEWL)の増加を抑え、皮膚バリア機能の低下を予防・改善した。また、角質水分量の低下を抑え、皮膚の乾燥を予防・改善した。さらに、皮膚表面形状の粗さ(Sa値)の増大を抑え、きめが乱れるのを予防・改善した。一方、マルチビタミンは上記内的ストレス性の肌荒れに対する効果はほとんど認められなかった。
【0038】
【表1】

【0039】
[皮下脂肪の測定]
上記対照群、睡眠制御+高脂肪食摂取群及びD−アラビトール摂取群のマウスについて、ソムノペンチル麻酔下で皮膚を摘出し、10体積%ホルマリンで固定後、常法に従ってパラフィン切片を作製し、ヘマトキシン・エオシン染色により皮膚構造の全体像の観察を行った。マウスの皮膚構造を示す顕微鏡写真を図4に示す。また、対照群、睡眠制御+高脂肪食摂取群及びD−アラビトール摂取群のマウスの皮膚状態を目視で比較した。真皮の下、図の白色部分は皮下脂肪である。睡眠制御+高脂肪食摂取群では、ほとんど皮下脂肪が消失し、肌荒れが生じた。一方、D−アラビトール摂取群では、皮下脂肪の減少がなく、肌荒れを予防・改善した。
【0040】
対照群と、睡眠制御+高脂肪食摂取群との比較により、睡眠不良と高脂肪食摂取(偏食)により、経表皮水分喪失量(TEWL)が増加し、角質水分量が低下し、皮膚表面形状の粗さ(Sa値)が増大した。同様に、睡眠不良と高脂肪食摂取(偏食)により、皮下脂肪が減少した。さらに、D−アラビトールが、睡眠不良と高脂肪食摂取(偏食)による、経表皮水分喪失量増加、角質水分量低下及び皮膚表面形状の粗さ増大を抑制したのと同様に、睡眠不良と高脂肪食摂取(偏食)による皮下脂肪減少を抑制した。上記を総合的に判断すれば、睡眠抑制、高脂肪食摂食等の内的ストレスにより、皮下脂肪が減少すること、上記経表皮水分喪失量等の肌あれの指標と皮下脂肪の減少とに相関性があること、皮下脂肪が肌荒れに関与していることがわかった。
【0041】
[実施例1]
下記組成のチュアブル錠を常法により得た。
組成
エリスリトール 26.0質量%
D−アラビトール 60.0
バレイショデンプン 4.0
タルク 3.5
ステアリン酸マグネシウム 1.5
クエン酸 5.0
合計 100.0
【0042】
[実施例2]
下記組成のドリンク剤を常法により得た。
組成
ブドウ糖 1.5質量%
果糖 1.5
D−アラビトール 5.0
塩化ナトリウム 0.03
ビタミンC 0.03
クエン酸 0.01
リンゴ酸 0.01
ヒアルロン酸 0.01
香料 0.01
水 残部
合計 100.00

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラビトールからなるストレス性肌荒れ改善・予防経口剤。
【請求項2】
アラビトールを有効成分として含有するストレス性肌荒れ改善・予防用経口組成物。
【請求項3】
アラビトールからなる、ストレス性皮下脂肪減少に対する抑制経口剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−241749(P2010−241749A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93530(P2009−93530)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】