説明

ストレプトリシンOの変異体形態

有毒ではないが、S.pyogenesに対する防御を誘導する能力をなお維持するGAS25(ストレプトリシンO)の形態は、S.pyogenesに対する防御を誘導するためのワクチン組成物で有用である。一実施形態において、本発明は、アミノ酸P427、W535、C530、A248、およびD482からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸変化を含む精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質を提供し、ここで、このアミノ酸位置は配列番号1に従って番号付けられ、この変異体SLOタンパク質の溶血活性は野生型SLOに対して少なくとも50%低下している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年12月21日に出願されたUS61/016193および2008年8月13日に出願されたUS61/088381(これらの完全な内容は、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、免疫学およびワクチン学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
ストレプトリシンO(SLO;GAS25)は、ヒト病原体である化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(GAS)の最も重要な病原性因子の一つである。ヒトにおいて初期の強い免疫応答を呼び起こすその能力のため、それは、GAS感染の診断マーカーとして日常的に用いられている。
【0004】
SLOは、細胞膜上のコレステロールとの相互作用、自己オリゴマー形成、およびポア形成を通してそれらの細胞溶解活性を発揮する高相同性チオール活性化細胞溶解素(TACY)のファミリーに属する。さらに、ヒトIgGのFc領域に結合することによって古典的補体経路を直接、活性化するそれらの能力は、宿主細胞への直接的な補体媒介性攻撃を生じる可能性がある。TACYはまた、サイトカインおよび炎症性メディエーターの誘導によって宿主防御および免疫細胞機能に干渉することもできる。
【0005】
一部のTACYは、実験動物を受動的および能動的に防御することができる。非特許文献1参照。しかしながら、これらの毒素のワクチン候補としての使用は、それらの有害な副作用の複雑なパターンによって妨げられている。したがって、有毒でないSLOタンパク質が当該分野で必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】FEMS Lett.182巻、2000年、197〜205頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有毒ではないが、S.pyogenesに対する防御を誘導する能力をなお維持するストレプトリシンO(SLO;GAS25)の変異体を提供する。変異体形態のSLOは、S.pyogenesに対する防御を誘導するためのワクチン組成物でとりわけ有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】SLOの3次元コンピュータモデルを示す図である。プロリンは、空間充填として表されている。Pro427は白色で彩色されている。
【図2】野生型SLOおよびSLO変異体P427Lを含むE.coli抽出物を用いる溶血アッセイの結果を示すグラフである。
【図3】精製SLO変異体P427Lを示すSDS−ポリアクリルアミドゲルの顕微鏡写真である。
【図4】精製野生型SLOおよびSLO変異体P427Lを用いる溶血アッセイの結果を示すグラフである。
【図5】E.coli溶解物上清のSDS−ポリアクリルアミドゲルの顕微鏡写真である。レーンA、E.coliネガティブコントロール;レーンB、タグなしのrSLO野生型;レーンC、タグなしのrSLO P427L;およびレーンD、タグなしの精製rSLO野生型(5mg)。
【図6】同じ条件下で、SLO変異体P427Lが野生型SLOの1000分の1の溶血性であることを示すグラフである。
【図7】野生型SLOおよびSLO変異体P427Lによる溶血へのコレステロールの効果を示すグラフである。
【図8A】細胞抽出物におけるタグなし全タンパク質のSDS−PAGE分析の顕微鏡写真である。図8A、SLO野生型およびP427Lタグなしタンパク質の発現;図8B、SLO P427L+W535、P427L+C530G、およびP427L+C530G+W535Fタグなしタンパク質の発現。
【図8B】細胞抽出物におけるタグなし全タンパク質のSDS−PAGE分析の顕微鏡写真である。図8A、SLO野生型およびP427Lタグなしタンパク質の発現;図8B、SLO P427L+W535、P427L+C530G、およびP427L+C530G+W535Fタグなしタンパク質の発現。
【図9】細胞抽出物におけるHisタグ付き全タンパク質のSDS−PAGE分析の顕微鏡写真である。
【図10】精製されたHisタグ付きタンパク質のSDS−PAGE分析の顕微鏡写真である。
【図11】精製されたタグなしタンパク質のSDS−PAGE分析の顕微鏡写真である。図11A、レーン:A、SLO野生型タグなし;B、SLO P427Lタグなし;分子量マーカー(116−66.2−45−35−25−18.4−14.4);黒色矢印は、変異体クローンおよび野生型クローンから精製されたSLOタンパク質を示す。図11B、レーンA、SLO野生型タグなし(3μg)、レーンB、SLO P427L−W535Fタグなし(3μg);分子量マーカー(116−66.2−45−35−25−18.4−14.4);黒色矢印は、変異体クローンおよび野生型クローンから精製されたSLOタンパク質を示す。
【図12】精製されたタグなしSLO野生型タンパク質のSDS−PAGE分析の顕微鏡写真である。野生型SLOの様々な精製ロットの試料を、還元条件下および非還元条件下で分析した。
【図13】Hisタグ付きSLO変異体の溶血試験の結果を示すグラフである。
【図14】抗SLO抗血清によるSLO誘導性溶血活性の阻害を示すグラフである。
【図15】SLO溶血の抗SLO抗血清阻害の滴定を示すグラフである。
【図16】SLO溶血活性滴定を示すグラフである。
【図17】野生型SLO、化学的に解毒された野生型SLO、およびSLO変異体(P427L;P427L+W535F)の溶血活性の滴定を示すグラフである。
【図18】野生型SLOおよびSLO変異体(P427L;P427L+W535F)の溶血活性の滴定を示すグラフである。
【図19】野生型SLOおよび化学的に解毒された野生型SLOの溶血活性の滴定を示すグラフである。
【図20】SLO溶血活性(50ng/mlのSLO)の50%低下を得るのに必要とされるSLO変異体P427L+W535Fに対する抗血清の希釈度を示すグラフである。
【図21】SLO溶血活性(100ng/mlのSLO)の50%低下を得るのに必要とされるSLO変異体P427L+W535Fに対する抗血清の希釈度を示すグラフである。
【図22】溶血阻害アッセイが、100%溶血を可能にする毒素濃度で行われたことを示す滴定曲線である。
【図23−1】SLOタンパク質のアラインメントを示す図である。M1_SF370、配列番号1;M12_2096、配列番号2;M12_9429、配列番号3;M1_5005、配列番号4;M2、配列番号5;M28、配列番号6;M6、配列番号7;M18、配列番号8;M5、配列番号9;M3、配列番号10;M3_SSI、配列番号11;およびM4、配列番号12。
【図23−2】SLOタンパク質のアラインメントを示す図である。M1_SF370、配列番号1;M12_2096、配列番号2;M12_9429、配列番号3;M1_5005、配列番号4;M2、配列番号5;M28、配列番号6;M6、配列番号7;M18、配列番号8;M5、配列番号9;M3、配列番号10;M3_SSI、配列番号11;およびM4、配列番号12。
【図23−3】SLOタンパク質のアラインメントを示す図である。M1_SF370、配列番号1;M12_2096、配列番号2;M12_9429、配列番号3;M1_5005、配列番号4;M2、配列番号5;M28、配列番号6;M6、配列番号7;M18、配列番号8;M5、配列番号9;M3、配列番号10;M3_SSI、配列番号11;およびM4、配列番号12。
【図23−4】SLOタンパク質のアラインメントを示す図である。M1_SF370、配列番号1;M12_2096、配列番号2;M12_9429、配列番号3;M1_5005、配列番号4;M2、配列番号5;M28、配列番号6;M6、配列番号7;M18、配列番号8;M5、配列番号9;M3、配列番号10;M3_SSI、配列番号11;およびM4、配列番号12。
【図24−1】野生型SLOおよびHisタグ付きSLO変異体のアラインメントを示す図である。SLO_M1菌株SF370、配列番号13;SLO WT_hisタグ付き、配列番号14;SLOmut.P427L_hisタグ付き、配列番号15;SLOmut.C530G_hisタグ付き、配列番号16;SLOmut.ΔA248_hisタグ付き、配列番号17;SLOmut.W535F_hisタグ付き、配列番号18;およびSLOmut.W535F&D482N_hisタグ付き、配列番号19。
【図24−2】野生型SLOおよびHisタグ付きSLO変異体のアラインメントを示す図である。SLO_M1菌株SF370、配列番号13;SLO WT_hisタグ付き、配列番号14;SLOmut.P427L_hisタグ付き、配列番号15;SLOmut.C530G_hisタグ付き、配列番号16;SLOmut.ΔA248_hisタグ付き、配列番号17;SLOmut.W535F_hisタグ付き、配列番号18;およびSLOmut.W535F&D482N_hisタグ付き、配列番号19。
【図25】野生型SLOに対する抗血清およびSLO変異体P427L+W535Fに対する抗血清によるSLO溶血活性の低下を比較するグラフである。
【図26】アジュバントとしてミョウバンかまたはMF59のいずれかを用いる組換えSLO変異体P427L+W535Fのインビボ防御特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
変異体SLOタンパク質
本発明による変異体形態のSLOは、溶血アッセイによって決定される場合、野生型SLOと比較して、野生型SLOより少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)低い溶血活性を有するが、免疫原性であり、例えば、それらは、マウスモデルにおいてGAS致死的攻撃に対する防御を与える(実施例7参照)。本発明のSLO変異体には、SLO変異体P427L(配列番号20)、W535F(配列番号21)、C530G(配列番号22)、ΔA248(配列番号23)、W535F+D482N(配列番号24)、P427L+W535F(配列番号25)、P427L+C530G(配列番号26)、およびP427L+C530G+W535F(配列番号27)が含まれる。本発明はまた、これらの変異体のHisタグ付きバージョンを含む。例は図24に示されている。
【0010】
本発明のSLO変異体には、配列番号1に示された野生型SLO配列に従って番号付けられたアミノ酸P427、W535、C530、A248、およびD482の1つまたは複数においてアミノ酸変化(すなわち、置換、欠失、または挿入)を有するものが含まれる。図23は、様々なM型に由来する野生型GAS25配列のアラインメントを提供する。
【0011】
本発明のSLO変異体は、位置P427、W535、C530、A248、および/またはD482に単一、二重、または三重のアミノ酸変化を含む(「単一変異体」、「二重変異体」、「三重変異体」)。したがって、SLO変異体は、以下を含むことができる:
i.P427L(配列番号20)、P427R、P427N、P427C、P427Q、P427E、P427G、P427H、P427I、P427L、P427K、P427M、P427F、P427A、P427S、P427T、P427W、P427Y、またはP427V;
ii.W535F(配列番号21)、W535R、W535N、W535D、W535C、W535Q、W535E、W535G、W535I、W535L、W535K、W535M、W535A、W535P、W535S、W535T、W535Y、またはW535V;
iii.C530G(配列番号22)、C530R、C530N、C530D、C530S、C530Q、C530E、C530A、C530H、C530I、C530L、C530K、C530M、C530F、C530P、C530T、C530W、C530Y、またはC530V;
iv.D482L、D482R、D482N、D482C、D482Q、D482E、D482G、D482H、D482I、D482L、D482K、D482M、D482F、D482A、D482S、D482T、D482W、D482Y、またはD482V;
v.A248L、A248R、A248N、A248C、A248Q、A248E、A248G、A248H、A248I、A248L、A248K、A248M、A248F、A248S、A248T、A248W、A248Y、またはA248V
vi.ΔP427;またはΔW535;またはΔC530;またはΔD482;またはΔA248(配列番号23);ならびに
vii.W535F+D482N(配列番号24)、P427L+W535F(配列番号25)、P427L+C530G(配列番号26)、およびP427L+C530G+W535F(配列番号27)などのそれらの組合せ。
【0012】
本発明の二重変異体には、P427L+W535F(配列番号25)、P427L+C530G(配列番号26)、P427L+A248L、P427L+D482L、W535F+C530G、W535F+A248L、W535F+D482L、C530G+A248L、およびA248L+D482Lが含まれる。三重変異体には、P427L+C530G+A248L、P427L+C530G+D482L、P427L+A248L+D482L、P427L+C530G+W535F(配列番号27)、W535F+C530G+A248L、W535F+C530G+D482L、W535F+A248L+D482L、およびC530G+A248L+D482Lが含まれる。
【0013】
本発明の変異体SLOタンパク質はまた、上記で開示されているような変異体SLOタンパク質および別のGAS抗原を含む融合ポリペプチドを含む。GAS抗原は、例えば、WO02/34771に開示されており、それらには、GAS39(spy0266;gi−15674446)、GAS40(spy0269;gi−15674449)、GAS42(spy0287;gi−15674461)、GAS45(M5005_spy0249;gi−71910063)、GAS57(spy0416;gi−15674549)、GAS58(spy0430;gi−15674556)、GAS84(spy1274;gi−15675229)、GAS95(spt1733;gi−15675582)、GAS117(spy0448;gi−15674571)、GAS130(spy0591;gi−15674677)、GAS137(spy0652;gi−15674720)、GAS159(spy1105;gi−15675088)、GAS193(spy2025;gi−15675802)、GAS202(spy1309;gi−15675258)、GAS217(spy0925;gi−15674945)、GAS236(spy1126;gi−15675106)、GAS253(spy1524;gi−15675423)、GAS277(spy1939;gi−15675742)、GAS294(spy1173;gi−15675145)、GAS309(spy0124;gi−15674341)、GAS366(spy1525;gi−15675424)、GAS372(spy1625;gi−15675501)、GAS384(spy1874;gi−15675693)、GAS389(spy1981;gi−15675772)、GAS504(spy1751;gi−15675600)、GAS509(spy1618;gi−15675496)、GAS290(spy1959;gi−15675757)、GAS511(spy1743;gi−15675592)、GAS527(spy1204;gi−15675169)、GAS529(spy1280;gi−15675233)、およびGAS533(spy1877;gi−15675696)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、GAS抗原には、GAS68(Spy0163;gi13621456)、GAS84(Spy1274;gi13622398)、GAS88(Spy1361;gi13622470)、GAS89(Spy1390;gi13622493)、GAS98(Spy1882;gi13622916)、GAS99(Spy1979;gi13622993)、GAS102(Spy2016、gi13623025)、GAS146(Spy0763;gi13621942)、GAS195(Spy2043;gi13623043)、GAS561(Spy1134;gi13622269)、GAS179(Spy1718、gi13622773)およびGAS681(spy1152;gi1362228)が含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
変異体SLOタンパク質をコードする核酸分子
本発明は、変異体SLOタンパク質をコードする核酸分子を含む。本発明はまた、かかる分子と少なくとも50%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む。特定の配列に依存して、配列同一性の程度は、好ましくは、50%を超える(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)。ヌクレオチド配列間の同一性は、好ましくは、以下のパラメータ:ギャップオープンペナルティ=12およびギャップ伸長ペナルティ=1を使用したアフィンギャップ検索を使用したMPSRCHプログラム(Oxford Molecular)で実行されるSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。
【0015】
本発明はまた、これらの分子とハイブリッド形成することができる核酸分子を提供する。ハイブリッド形成反応を、異なる「ストリンジェンシー」条件下で行うことができる。ハイブリッド形成反応のストリンジェンシーを増加させる条件は、広く知られており、当該分野で公開されている。例えば、Sambrookらの7.52ページ、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,1989を参照のこと。関連条件の例には、以下が含まれる(ストリンジェンシーが増加する順):25℃、37℃、50℃、55℃、および68℃でのインキュベーション;10×SSC、6×SSC、1×SSC、および0.1×SSCの緩衝剤濃度(SSCは0.15M NaClおよび15mMクエン酸緩衝剤である)ならびに他の緩衝系を使用したその等価物;0%、25%、50%、および75%のホルムアルデヒド濃度;5分間〜24時間のインキュベーション時間;1回、2回、またはそれを超える洗浄工程;1、2、または15分間の洗浄インキュベーション時間;ならびに6×SSC、1×SSC、0.1×SSC、または脱イオン水の洗浄液。ハイブリッド形成技術およびその至適化は、当該分野で周知である。例えば、Sambrook,1989;Ausubelら、eds.,Short
Protocols in Molecular Biology,4th ed.,1999;米国特許第5,707,829号;Ausubelら、eds.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 30,1987を参照のこと。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明の核酸分子は、低ストリンジェンシー条件下で標的とハイブリッド形成し、他の実施形態では、本発明の核酸分子は中ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成し、好ましい実施形態では、本発明の核酸分子は高ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成する。低ストリンジェンシーハイブリッド形成条件の例は、50℃および10×SSCである。中ストリンジェンシーハイブリッド形成条件の例は、55℃および1×SSCである。高ストリンジェンシーハイブリッド形成条件の例は、68℃および0.1×SSCである。
【0017】
変異体SLOタンパク質の産生
組換え産生
遺伝暗号の重複性は周知である。したがって、野生型SLOタンパク質または本発明のSLO変異タンパク質をコードする任意の核酸分子(ポリヌクレオチド)を用いて、そのタンパク質を組換えで産生することができる。野生型SLO、SLO変異体P427L、W535F、C530G、ΔA248、W535F+D482N、P427L+W535F、P427L+C530G、およびP427L+C530G+W535Fをコードするヌクレオチド配列の例は、配列表(それぞれ、配列番号28、29、30、31、32、33、34、35、および36も参照)に提供されている。野生型SLOをコードする核酸分子はまた、標準核酸精製技術を用いて適当なS.pyogenes細菌から単離することができ、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅技術を用いて、もしくは自動合成機を用いることによって、合成することができる。Caruthersら、Nucl. Acids Res. Symp. Ser.215巻、223頁、1980年;Hornら、Nucl. Acids Res. Symp. Ser.225巻、232頁、1980年;Hunkapillerら、Naure 310巻、105〜11頁、1984年;Granthamら、Nucleic Acids Res.9巻、r43〜r74頁、1981年参照。
【0018】
cDNA分子を、テンプレートとしてmRNAを使用した標準的な分子生物学技術を使用して作製することができる。その後、cDNA分子を、当該分野で周知の分子生物学技術を使用して複製することができる。テンプレートとしてゲノムDNAまたはcDNAのいずれかを使用したPCRなどの増幅技術を使用して、本発明のポリヌクレオチドの更なる複製を得ることができる。
【0019】
所望により、当該分野で一般的に知られている方法を使用してポリヌクレオチドを操作して、種々の理由で抗原コード配列を変化させることができる(ポリペプチドまたはmRNA産物のクローニング、プロセシング、および/または発現を修飾する変更が含まれるが、これらに限定されない)。遺伝子フラグメントおよび合成オリゴヌクレオチドのランダム断片化およびPCR再アセンブリによるDNAシャフリングを使用して、ヌクレオチド配列を操作することができる。例えば、部位特異的変異誘発を使用して、新規の制限部位の挿入、グリコシル化パターンの変更、コドン優先度の変化、スプライスバリアントの産生、および変異の導入などを行うことができる。
【0020】
配列修飾(精製タグ配列の付加またはコドン至適化など)を使用して、発現を容易にすることができる。例えば、N末端リーダー配列を、タグタンパク質(ポリヒスチジン(「HIS」)またはグルタチオンS−トランスフェラーゼ(「GST」)など)をコードする配列と置換することができる。かかるタグタンパク質を使用して、発現タンパク質の精製、検出、および安定性を促進することができる。特定の原核生物宿主または真核生物宿主に好まれるコドンを選択して、タンパク質発現率を増大させ、または所望の性質(天然に存在する配列から生成した転写物よりも長い半減期など)を有するRNA転写物を産生することができる。これらの方法は当該分野で周知であり、WO05/032582号にさらに記載されている。
【0021】
発現ベクター
変異体SLOタンパク質をコードする核酸分子を、挿入するコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含む発現ベクターに挿入することができる。当業者に周知の方法を使用して、コード配列ならびに適切な転写調節エレメントおよび翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えが含まれる。
【0022】
宿主細胞
変異体SLOタンパク質を産生するための宿主細胞は、原核生物または真核生物であり得る。大腸菌は好ましい宿主細胞であるが、他の適切な宿主には、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・クレモリス、枯草菌、コレラ菌、チフス菌、ネズミチフス菌、ナイセリア・ラクタミカ、ナイセリア・シネレア、マイコバクテリア属(例えば、結核菌)、酵母、バキュロウイルス、哺乳動物細胞などが含まれる。
【0023】
宿主細胞株を、所望の様式で挿入配列の発現を調整する、または発現ポリペプチドをプロセシングする能力について選択することができる。かかるポリペプチド修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれるが、これらに限定されない。ポリペプチドの「プレプロ」形態を切断する翻訳後プロセシングを使用して、正確な挿入、折り畳み、および/または機能を促進することもできる。翻訳後活性のための特定の細胞機構および特徴的なメカニズムを有する異なる宿主細胞は、American Type Culture Collection(ATCC;10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209)から利用可能であり、外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングが確実になるように選択することができる。WO01/98340号を参照のこと。
【0024】
十分に確立された技術(トランスフェリン−ポリカチオン媒介DNA移入、裸またはカプセル化した核酸でのトランスフェクション、リポソーム媒介細胞融合、DNAコーティングラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、「遺伝子銃」法、およびDEAEまたはリン酸カルシウム媒介トランスフェクションが含まれるが、これらに限定されない)を使用して、発現構築物を宿主細胞に導入することができる。
【0025】
発現ベクターを使用して形質転換された宿主細胞を、細胞培養物からのタンパク質の発現および回収に適切な条件下で培養することができる。形質転換された細胞によって産生されたタンパク質を、使用したヌクレオチド配列および/または発現ベクターに応じて分泌し、または細胞内に含めることができる。当業者は、原核細胞膜または真核細胞膜を介した可溶性抗原の分泌を指示するシグナル配列を含むように発現ベクターをデザインすることができることを理解している。
【0026】
精製
シグナル輸出(export)配列は、組換え産生される変異体SLOタンパク質に含められ得、その結果、抗原は、公知の方法を使用して細胞培養培地から精製され得る。あるいは、本発明の組換え産生される変異体SLOタンパク質を、操作した宿主細胞から単離することができ、当該分野で周知の方法を使用して、細胞中の他の成分(タンパク質、炭水化物、または脂質など)から分離し得る。かかる方法には、サイズ排除クロマトグラフィ、硫酸アンモニウム分画、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、および分取ゲル電気泳動が含まれるが、これらに限定されない。精製変異体SLOタンパク質の調製物の純度は少なくとも80%であり、好ましくは、調製物の純度は、90%、95%、または99%である。調製物の純度を、当該分野で公知の任意の手段(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動など)によって評価することができる。適切な場合には、変異体SLOタンパク質を、例えば、尿素を使用して可溶化することができる。
【0027】
化学合成
変異体SLOタンパク質を、例えば、固相技術を使用して合成することができる。例えば、Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85,2149 54,1963;Robergeら、Science 269,202 04,1995を参照のこと。手動技術の使用または自動化によりタンパク質合成を行うことができる。例えば、Applied Biosystems 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer)を使用して、自動化された合成を行うことができる。任意選択的に、変異体SLOタンパク質のフラグメントを個別に合成し、化学的方法を使用して合わせて全長分子を産生することができる。
【0028】
抗体
本発明は、本発明の変異体SLOタンパク質に特異的に結合できるが、野生型のSLOタンパク質には結合しない抗体を提供する。用語「抗体」には、インタクトな免疫グロブリン分子、および抗原に結合することができるそのフラグメントが含まれる。これらには、ハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winterら、Nature 349,293−99,1991;米国特許第4,816,567号);F(ab’)2フラグメントおよびF(ab)フラグメントならびにFv分子;非共有結合性ヘテロ二量体(例えば、Inbarら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.69,2659−62,1972;Ehrlichら、Biochem 19,4091−96,1980);単鎖Fv分子(sFv)(例えば、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85,5897−83,1988);二量体および三量体抗体フラグメント構築物;ミニボディ(minibody)(例えば、Packら、Biochem 31,1579−84,1992;Cumberら、J.Immunology 149B,120−26,1992);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmannら、Nature 332,323−27,1988;Verhoeyanら、Science 239,1534−36,1988;および1994年9月21日公開の英国特許出願番号GB2,276,169号);およびかかる分子から得た任意の機能的フラグメントならびにファージディスプレイなどの従来にない過程によって得た抗体が含まれる。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体を得る方法は、当該分野で周知である。
【0029】
典型的には、エピトープを形成するのに少なくとも6、7、8、10、または12個の連続するアミノ酸が必要である。しかし、不連続アミノ酸を含むエピトープは、より多数(例えば、少なくとも15、25、または50個のアミノ酸)を必要とし得る。種々の免疫アッセイ(例えば、ウェスタンブロット、ELISA、放射免疫アッセイ、免疫組織化学アッセイ、免疫沈降、または当該分野で公知の他の免疫化学アッセイ)を使用して、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。競合結合または免疫放射線測定法についての多数のプロトコールが当該分野で周知である。かかる免疫アッセイは、典型的には、免疫原と免疫原に特異的に結合する抗体との間の複合体形成の測定を含む。変異体SLOタンパク質に特異的に結合する抗体の調製物から、典型的には、免疫化学アッセイで使用した場合に他のタンパク質を使用して得られる検出シグナルの少なくとも5倍、10倍、または20倍の検出シグナルが得られ、かつ野生型SLOタンパク質と接触させた場合に、検出可能なシグナルは提供しない。好ましくは、抗体は、免疫化学アッセイにおいて他のタンパク質を検出せず、溶液由来の特定の抗原を免疫沈降することができる。
【0030】
抗体の生成
変異体SLOタンパク質または非SLOポリペプチド抗原(下記)を使用して哺乳動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、またはヒトなど)を免疫化して、ポリクローナル抗体を産生することができる。必要に応じて、抗原を、担体タンパク質(ウシ血清アルブミン、サイログロブリン、およびキーホールリンペットヘモシアニンなど)に接合することができる。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを使用して、免疫学的応答を増大させることができる。かかるアジュバントには、フロイントアジュバント、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、および界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノール)が含まれるが、これらに限定されない。ヒトで使用されるアジュバントのうち、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバムが特に有用である。
【0031】
抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を、培養物中の連続的な細胞株によって抗体分子を産生する任意の技術を使用して調製することができる。これらの技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBVハイブリドーマ技術が含まれるが、これらに限定されない(Kohlerら、Nature 256,495 497,1985;Kozborら、J.Immunol.Methods 81,31 42,1985;Coteら、Proc.Natl.Acad.Sci.80,2026 2030,1983;Coleら、Mol.Cell Biol.62,109 120,1984)。
【0032】
さらに、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(マウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子にスプライシングして適切な抗原特異性および生物活性を有する分子を得る技術)を使用することができる(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.81,6851 6855,1984;Neubergerら、Nature 312,604 608,1984;Takedaら、Nature 314,452 454,1985)。モノクローナル抗体および他の抗体を「ヒト化」して、治療で使用する場合に抗体に対する患者の免疫応答の開始を防止することもできる。かかる抗体は、療法で直接使用するのに配列が十分にヒト抗体と類似し得るか、少数の重要な残基を変化させる必要があり得る。げっ歯類抗体配列とヒト抗体配列との間の相違を、各残基の部位特異的変異誘発または相補性決定領域全体のグラフティング(grating)によるヒト配列中の残基と異なる残基の置換によって最小にすることができる。
【0033】
あるいは、下記の組換え方法を使用してヒト化抗体を産生することができる。米国特許第5,565,332号に開示のように、特定の抗原に特異的に結合する抗体は、部分的または完全にヒト化された抗原結合部位を含むことができる。
【0034】
あるいは、単鎖抗体の産生について記載した技術を、当該分野公知の方法を使用して適合させて、特定の抗原に特異的に結合する単鎖抗体を産生することができる。関連する特異性を有するが、異なるイディオタイプ組成の抗体を、ランダム組み合わせ免疫グロブリンライブラリー由来のチェーンシャフリング(chain shuffling)によって生成することができる(Burton,Proc.Natl.Acad.Sci.88,11120 23,1991)。
【0035】
単鎖抗体を、テンプレートとしてハイブリドーマcDNAを使用したDNA増幅方法(PCRなど)を使用して構築することができる(Thirionら、1996,Eur.J.Cancer Prev.5,507−11)。単鎖抗体は、単一特異性または二重特異性であり得、2価または4価であり得る。4価の二重特異性単鎖抗体の構築は、例えば、Coloma & Morrison,1997,Nat.Biotechnol.15,159−63に教示されている。2価の二重特異性単鎖抗体は、Mallender & Voss,1994,J.Biol.Chem.269,199−206に教示されている。
【0036】
下記のように、単鎖抗体をコードするヌクレオチド配列を、手作業または自動化されたヌクレオチド合成によって構築し、標準的な組換えDNA法を使用して発現構築物にクローニングし、細胞に導入してコード配列を発現させることができる。あるいは、単鎖抗体を、例えば、繊維状ファージテクノロジーを使用して直接産生することができる(Verhaarら、1995,Int.J.Cancer 61,497−501;Nichollsら、1993,J.Immunol.Meth.165,81−91)。
【0037】
特定の抗原に特異的に結合する抗体を、文献に開示のリンパ球集団におけるインビボ産生の誘導または免疫グロブリンライブラリーもしくは高度に特異的な結合試薬のパネルのスクリーニングによって産生することもできる(Orlandiら、Proc.Natl.Acad.Sci.86,3833 3837,1989;Winterら、Nature 349,293 299,1991)。
【0038】
キメラ抗体を、WO93/03151号に開示のように構築することができる。免疫グロブリンに由来し、多価または多重特異性の結合タンパク質(WO94/13804号に記載の「二特異性抗体」など)を調製することもできる。
【0039】
抗体を、当該分野で周知の方法によって精製することができる。例えば、抗体を、関連抗原が結合するカラムの通過によってアフィニティ精製することができる。次いで、結合した抗体を、高塩濃度の緩衝剤を使用して、カラムから溶離することができる。
【0040】
薬学的組成物
本発明はまた、薬物として(例えば、免疫原性組成物またはワクチンとして)用いる組成物を提供する。本発明の組成物は、S.pyogenes感染の結果として引き起こされる疾患を予防および/または治療するのに有用であり、ポリペプチド、核酸分子、または抗体であり得る少なくとも1つの活性剤を含む。前記疾患は、例えば、菌血症、髄膜炎、産褥熱、猩紅熱、丹毒、咽頭炎、膿痂疹、壊死性筋膜炎、筋炎、または毒素性ショック症候群であり得る。
【0041】
変異体SLOタンパク質を含む組成物は、好ましくは、免疫原性組成物であり、より好ましくは、ワクチン組成物である。かかる組成物のpHは、好ましくは、pH6とpH8との間、好ましくは、約pH7である。pHを緩衝剤の使用によって維持することができる。組成物は、無菌でありおよび/または発熱物質を含まなくあり得る。組成物は、ヒトに関して等張であり得る。
【0042】
本発明のワクチンを、予防的または治療的に使用することができるが、典型的には、予防的であろう。したがって、本発明は、化膿連鎖球菌感染の治療的または予防的処置のための方法を含む。動物は、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。方法は、治療量または予防量の本発明の免疫原性組成物を動物に投与する工程を含む。
【0043】
いくつかの本発明の組成物は、本明細書に記載の変異体SLOタンパク質を含む。他の本発明の組成物は、変異体SLOタンパク質、任意選択的に、組成物中に含めることができる他の抗原をコードする核酸分子を含む(以下を参照のこと)。例えば、Robinson & Torres(1997)Seminars in Immunology 9:271−283;Donnellyら(1997)Ann.Rev Immunol 15:617−648;Scott−Taylor & Dalgleish(2000)Expert Opin Investig Drugs 9:471−480;Apostolopoulos & Plebanski(2000)Curr Opin Mol Ther 2:441−447;Ilan(1999)Curr Opin Mol Ther 1:116−120;Dubenskyら(2000)Mol Med 6:723−732;Robinson & Pertmer(2000)Adv Virus Res 55:1−74;Donnellyら(2000)Am J Respir Crit Care Med 162(4 Pt 2):S190−193;Davis(1999)Mt.Sinai J.Med.66:84−90を参照のこと。典型的には、核酸分子は、例えば、プラスミド形態のDNA分子である。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、1つまたは複数のさらなる活性剤を含むことができる。かかる薬剤には、(a)本発明の別の変異体SLOタンパク質、(b)小児ワクチンで有用なポリペプチド抗原、(c)高齢者または免疫無防備状態の個体のためのワクチンで有用なポリペプチド抗原、(d)(a)〜(c)をコードする核酸分子および(a)〜(c)に特異的に結合する抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
さらなる抗原
本発明の組成物を、本発明の治療方法、または予防方法で使用するための1つまたは複数の追加の抗原と組み合わせて投与することができる。適切な抗原には、以下に列挙した抗原が含まれる。さらに、本発明の組成物を使用して、任意の以下に列挙の病原体に起因する感染を治療または防止することができる。下記の抗原との組み合わせに加えて、本発明の組成物を、本明細書中に記載のアジュバントと組み合わせることもできる。
【0046】
本発明と共に使用するための抗原には、下記の1つまたは複数の抗原または下記の1つまたは複数の病原体由来の抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
A.細菌抗原
本発明での使用に適切な細菌抗原には、細菌から単離、精製、または由来することができるタンパク質、多糖類、リポ多糖類、外膜小胞が含まれる。さらに、細菌抗原には、細菌溶解物および不活化細菌処方物が含まれ得る。細菌抗原を、組換え発現によって産生することができる。細菌抗原には、好ましくは、その生活環の少なくとも1段階に細菌表面に曝露されるエピトープが含まれる。細菌抗原は、好ましくは、複数の血清型で保存される。細菌抗原には、下記の1つまたは複数の細菌由来の抗原および以下で同定した特定の抗原例が含まれる。
【0048】
ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitides):メニンギティディス抗原には、N.メニンギティディス血清群(A、C、W135、Y、および/またはBなど)から精製または由来したタンパク質(参考文献1〜7で同定されたタンパク質など)、糖類(多糖類、オリゴ糖、またはリポ多糖類が含まれる)、または外膜小胞(参考文献8、9、10、11)が含まれ得る。メニンギティディスタンパク質抗原を、接着剤、オートトランスポータ、毒素、Fe獲得タンパク質、および膜結合タンパク質(好ましくは、外膜内在性タンパク質(integral outer membrane protein))から選択することができる。
【0049】
肺炎連鎖球菌:肺炎連鎖球菌抗原には、肺炎連鎖球菌由来の糖類(多糖類またはオリゴ糖が含まれる)および/またはタンパク質が含まれ得る。糖類抗原を、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、および33Fから選択することができる。タンパク質抗原を、WO98/18931号、WO98/18930号、米国特許第6,699,703号、米国特許第6,800,744号、WO97/43303号、およびWO97/37026号で同定されたタンパク質から選択することができる。肺炎連鎖球菌タンパク質を、ポリヒスチジントリアドファミリー(PhtX)、コリン結合タンパク質ファミリー(CbpX)、CbpX短縮物、LytXファミリー、LytX短縮物、CbpX短縮物−LytX短縮物キメラタンパク質、ニューモリシン(Ply)、PspA、PsaA、Sp128、Sp101、Sp130、Sp125、またはSp133から選択することができる。
【0050】
化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌):A群連鎖球菌抗原には、WO02/34771号またはWO2005/032582号で同定されたタンパク質(GAS39(spy0266;gi−15674446)、GAS40(spy0269;gi−15674449)、GAS42(spy0287;gi−15674461)、GAS45(M5005_spy0249;gi−71910063)、GAS57(spy0416;gi−15674549)、GAS58(spy0430;gi−15674556)、GAS84(spy1274;gi−15675229)、GAS95(spt1733;gi−15675582)、GAS117(spy0448;gi−15674571)、GAS130(spy0591;gi−15674677)、GAS137(spy0652;gi−15674720)、GAS159(spy1105;gi−15675088)、GAS193(spy2025;gi−15675802)、GAS202(spy1309;gi−15675258)、GAS217(spy0925;gi−15674945)、GAS236(spy1126;gi−15675106)、GAS253(spy1524;gi−15675423)、GAS277(spy1939;gi−15675742)、GAS294(spy1173;gi−15675145)、GAS309(spy0124;gi−15674341)、GAS366(spy1525;gi−15675424)、GAS372(spy1625;gi−15675501)、GAS384(spy1874;gi−15675693)、GAS389(spy1981;gi−15675772)、GAS504(spy1751;gi−15675600)、GAS509(spy1618;gi−15675496)、GAS290(spy1959;gi−15675757)、GAS511(spy1743;gi−15675592)、GAS527(spy1204;gi−15675169)、GAS529(spy1280;gi−15675233)およびGAS533(spy1877;gi−15675696)を含むが、これらに限定されない)、GAS Mタンパク質のフラグメントの融合物(WO02/094851号およびDale,Vaccine(1999)17:193−200およびDale,Vaccine 14(10):944−948に記載のものが含まれる)、フィブロネクチン結合タンパク質(Sfb1)、連鎖球菌ヘム結合タンパク質(Shp)、およびストレプトリシンS(SagA)が含まれ得る。さらなるGAS抗原としては、GAS68(Spy0163;gi13621456)、GAS84(Spy1274;gi13622398)、GAS88(Spy1361;gi13622470)、GAS89(Spy1390;gi13622493)、GAS98(Spy1882;gi13622916)、GAS99(Spy1979;gi13622993)、GAS102(Spy2016、gi13623025)、GAS146(Spy0763;gi13621942)、GAS195(Spy2043;gi13623043)、GAS561(Spy1134;gi13622269)、GAS179(Spy1718、gi13622773)およびGAS681(spy1152;gi1362228)が挙げられる。
【0051】
カタル球菌:モラクセラ抗原には、WO02/18595号およびWO99/58562号で同定された抗原、外膜タンパク質抗原(HMW−OMP)、C抗原、および/またはLPSが含まれる。
【0052】
百日咳菌:百日咳抗原には、百日咳ホロトキシン(petussis holotoxin)(PT)および百日咳菌由来の繊維状赤血球凝集素(FHA)が含まれ、任意選択的に、パータクチンおよび/または凝集原2および3抗原との組み合わせも含まれる。
【0053】
黄色ブドウ球菌:黄色ブドウ球菌抗原には、非毒性組換え緑膿菌外毒素Aと任意選択的に接合した黄色ブドウ球菌5型および8型莢膜多糖類(StaphVAX(商標)など)または表面タンパク質由来の抗原、インベイシン(ロイコシジン、キナーゼ、ヒアルロニダーゼ)、食細胞の貪食を阻害する表面因子(莢膜、プロテインA)、カロテノイド、カタラーゼ産物、プロテインA、凝固酵素、凝固因子、および/または真核生物細胞膜を溶解する膜損傷毒素(任意選択的に解毒した)(ヘモリシン、ロイコトキシン、ロイコシジン)が含まれる。
【0054】
表皮ブドウ球菌:表皮ブドウ球菌抗原には、粘液結合抗原(SAA)が含まれる。
【0055】
破傷風菌(破傷風):破傷風抗原には、本発明の組成物と接合した担体タンパク質として使用されることが好ましい破傷風トキソイド(TT)が含まれる。
【0056】
ジフテリア菌(Cornynebacterium diphtheriae)(ジフテリア):ジフテリア抗原には、好ましくは解毒されたジフテリア毒素(CRM197など)が含まれる。さらに、ADPリボシル化を調整するか、阻害するか、これに関連することができる抗原は、本発明の組成物との組み合わせ/同時投与/接合が意図される。担体タンパク質としてジフテリアトキソイドを使用することができる。
【0057】
インフルエンザ菌B(Hib):Hib抗原には、Hib糖類抗原が含まれる。
【0058】
緑膿菌:シュードモナス抗原には、内毒素A、Wzzタンパク質、緑膿菌LPS、より詳細にはPAO1から単離したLPS(O5血清型)、および/または外膜タンパク質(外膜タンパク質F(OprF)が含まれる)(Infect Immun.2001 May;69(5):3510−3515)が含まれる。
【0059】
レジオネラ・ニューモフィラ。細菌毒素は、レジオネラ・ニューモフィラに由来し得る。
【0060】
ストレプトコッカス・アガラクチア(B群連鎖球菌):B群連鎖球菌抗原には、WO02/34771号、WO03/093306号、WO04/041157号、またはWO2005/002619号で同定されたタンパク質抗原または糖類抗原(タンパク質GBS80、GBS104、GBS276、およびGBS322、ならびに血清型Ia、Ib、Ia/c、II、III、IV、V、VI、VII、およびVIII由来の糖類抗原が含まれる)が含まれる。
【0061】
淋菌(Neiserria gonorrhoeae):ゴノレー抗原には、Por(すなわち、ポリン)タンパク質(PorB(Zhuら、Vaccine(2004)22:660−669を参照のこと)など)、トランスフェリン結合タンパク質(TbpAおよびTbpB(Priceら、Infection and Immunity(2004)71(1):277−283を参照のこと)など)、混濁タンパク質(opacity protein)(Opaなど)、還元修飾性タンパク質(reduction−modifiable protein)(Rmp)、および外膜小胞(OMV)調製物(Planteら、J Infectious Disease(2000)182:848−855を参照のこと、例えば、WO99/24578、WO99/36544、WO99/57280、WO02/079243も参照のこと)が含まれる。
【0062】
トラコーマクラミジア:トラコーマクラミジア抗原には、血清型A、B、Ba、およびC由来の抗原(トラコーマの作用因子、盲目の原因)、血清型L1、L2、およびL3由来の抗原(性病性リンパ肉芽腫症に関連)、および血清型DからK由来の抗原が含まれる。トラコーマクラミジア抗原には、WO00/37494号、WO03/049762号、WO03/068811号、またはWO05/002619号で同定された抗原(PepA(CT045)、LcrE(CT089)、ArtJ(CT381)、DnaK(CT396)、CT398、OmpH−like(CT242)、L7/L12(CT316)、OmcA(CT444)、AtosS(CT467)、CT547、Eno(CT587)、HrtA(CT823)、およびMurG(CT761)が含まれる)も含まれ得る。
【0063】
梅毒トレポネーマ(梅毒):梅毒抗原には、TmpA抗原が含まれる。
【0064】
軟性下疳菌(軟性下疳の原因菌):デュクレイ抗原には、外膜タンパク質(DsrA)が含まれる。
【0065】
フェカリス菌またはフェシウム菌:抗原には、米国特許第6,756,361号に記載の三糖類反復または他の腸球菌由来の抗原が含まれる。
【0066】
ピロリ菌:ピロリ菌抗原には、Cag、Vac、Nap、HopX、HopY、および/またはウレアーゼ抗原が含まれる。
【0067】
腐性ブドウ球菌(staphylococcus saprophyticus):抗原には、腐性ブドウ球菌抗原の160kDa血球凝集素が含まれる。
【0068】
エンテロコリチカ菌抗原には、LPS(Infect Immun.2002 August;70(8):4414)が含まれる。
【0069】
大腸菌:大腸菌抗原は、毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管凝集性大腸菌(EAggEC)、びまん付着性大腸菌(DAEC)、腸管病原性大腸菌(EPEC)、および/または腸管出血性大腸菌(EHEC)に由来し得る。
【0070】
炭疽菌(炭疽病):炭疽菌抗原は任意選択的に解毒されており、A成分(致死因子(LF)および浮腫因子(EF))から選択することができ、その両方が、防御抗原(PA)として公知のB成分を共有することができる。
【0071】
ペスト菌(ペスト):ペスト抗原には、F1莢膜抗原(Infect Immun.2003 Jan;71(1)):374−383,LPS(Infect Immun.1999 Oct;67(10):5395)、ペスト菌V抗原(Infect Immun.1997 Nov;65(11):4476−4482)が含まれる。
【0072】
結核菌:結核抗原には、リポタンパク質、LPS、BCG抗原、抗原85Bの融合タンパク質(Ag85B)および/または任意選択的にカチオン性脂質小胞中に配合されたESAT−6(Infect Immun.2004 October;72(10):6148)、結核菌(Mtb)イソクエン酸デヒドロゲナーゼ関連抗原(Proc Natl Acad Sci USA.2004 Aug 24;101(34):12652)、および/またはMPT51抗原(Infect Immun.2004 July;72(7):3829)が含まれる。
【0073】
リケッチア属:抗原には、外膜タンパク質(外膜プロテインAおよび/またはB(OmpB)が含まれる)(Biochim Biophys Acta.2004 Nov 1;1702(2):145)、LPS、および表面タンパク質抗原(SPA)(J Autoimmun.1989 Jun;2 Suppl:81)が含まれる。
【0074】
リステリア菌。細菌抗原は、リステリア菌に由来し得る。
【0075】
クラミジア・ニューモニエ:抗原には、WO02/02606号で同定された抗原が含まれる。
【0076】
コレラ菌:抗原には、プロテイナーゼ抗原、LPS(特に、コレラ菌IIのリポ多糖類)、O1 Inaba O−特異的多糖類、コレラ菌O139、IEM108ワクチンの抗原(Infect Immun.2003 Oct;71(10):5498−504)、および/または閉鎖帯毒素(Zot)が含まれる。
【0077】
チフス菌(チフス熱):抗原には、莢膜多糖類、好ましくは抱合体(Vi、すなわち、vax−TyVi)が含まれる。
【0078】
ライム病ボレリア(ライム病):抗原には、リポタンパク質(OspA、OspB、OspC、およびOspDなど)、他の表面タンパク質(OspE関連タンパク質(Erps)など)、デコリン結合タンパク質(DbpAなど)、および抗原的に可変のVIタンパク質(P39およびP13に結合するタンパク質)(膜内在性タンパク質、Infect Immun.2001 May;69(5):3323−3334)、VlsE抗原変異タンパク質(J Clin Microbiol.1999 Dec;37(12):3997)など)が含まれる。
【0079】
ジンジバリス菌:抗原には、ジンジバリス菌外膜タンパク質(OMP)が含まれる。
【0080】
クレブシエラ属:抗原には、OMP(OMP Aが含まれる)または破傷風トキソイド任意選択的に接合した多糖類が含まれる。
【0081】
さらなる本発明の細菌抗原は、上記のいずれかの莢膜抗原、多糖類抗原、またはタンパク質抗原であり得る。さらなる細菌抗原には、外膜小胞(OMV)調製物も含まれ得る。さらに、抗原には、上記細菌のいずれかの生きたバージョン、弱毒化バージョン、および/または精製バージョンが含まれる。本発明の抗原は、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌に由来し得る。本発明の抗原は、好気性菌または嫌気性菌に由来し得る。
【0082】
さらに、上記細菌由来糖類のいずれか(多糖類、LPS、LOS、またはオリゴ糖)を、別の作用因子または抗原(担体タンパク質(例えば、CRM197など))と接合することができる。かかる接合は、米国特許第5,360,897号およびCan J Biochem Cell Biol.1984 May;62(5):270−5に記載のタンパク質上のアミノ基への糖類上のカルボニル部分の還元的アミド化によって生じる直接的接合であり得る。あるいは、糖類を、リンカーを介して、Bioconjugate Techniques,1996およびCRC,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,1993に記載のスクシンアミドまたは他の結合などを介して接合することができる。
【0083】
B.ウイルス抗原
本発明での使用に適切なウイルス抗原には、不活化(または死滅)ウイルス、弱毒化ウイルス、スプリットウイルス処方物、精製サブユニット処方物、ウイルスから単離、精製、または由来することができるウイルスタンパク質、ウイルス様粒子(VLP)が含まれる。ウイルス抗原は、細胞培養物または他の基質上に増殖したウイルスに由来し得る。あるいは、ウイルス抗原を、組換え的に発現することができる。ウイルス抗原には、好ましくは、その生活環の少なくとも1段階に細菌表面に曝露されるエピトープが含まれる。細菌抗原は、好ましくは、複数の血清型または分離株で保存される。細菌抗原には、下記の1つまたは複数の細菌由来の抗原および以下で同定した特定の抗原例が含まれる。
【0084】
オルソミクソウイルス:ウイルス抗原は、オルソミクソウイルス(インフルエンザA型、B型、およびC型など)に由来し得る。オルソミクソウイルス抗原を、1つまたは複数のウイルスタンパク質(血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、基質タンパク質(M1)、膜タンパク質(M2)、1つまたは複数の転写酵素成分(PB1、PB2、およびPA)が含まれる)から選択することができる。好ましい抗原には、HAおよびNAが含まれる。
【0085】
インフルエンザ抗原は、世界的流行間期の(年間流行性)インフルエンザ株に由来し得る。あるいは、インフルエンザ抗原は、世界的流行およびその発生を引き起こす可能性のある株(すなわち、現在広まっている株における赤血球凝集素と比較して新規の赤血球凝集素を有するインフルエンザ株、トリ被験体中で病原性を示し、且つヒト集団において水平伝播する可能性があるインフルエンザ株、またはヒトに病原性を示すインフルエンザ株)に由来し得る。
【0086】
パラミクソウイルス科のウイルス:ウイルス抗原は、パラミクソウイルス科のウイルス(ニューモウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)、およびモルビリウイルス(麻疹)など)に由来し得る。
【0087】
ニューモウイルス:ウイルス抗原は、ニューモウイルス(RSウイルス(RSV)、ウシRSウイルス、マウス肺炎ウイルス、およびシチメンチョウ鼻気管炎ウイルスなど)に由来し得る。好ましくは、ニューモウイルスはRSVである。ニューモウイルス抗原を、1つまたは複数の以下のタンパク質(表面タンパク質(融合物(F)、糖タンパク質(G)、および小疎水性タンパク質(SH))、基質タンパク質MおよびM2、ヌクレオカプシドタンパク質N、P、およびLならびに非構造タンパク質NS1およびNS2が含まれる)から選択することができる。好ましいニューモウイルス抗原には、F、G、およびMが含まれる。例えば、J Gen Virol.2004 Nov;85(Pt11):3229)を参照のこと。ニューモウイルス抗原を、キメラウイルス中に配合するか、これに由来することができる。例えば、キメラRSV/PIVウイルスは、RSVおよびPIVの両方の成分を含むことができる。
【0088】
パラミクソウイルス:ウイルス抗原は、パラミクソウイルス(パラインフルエンザウイルス1型〜4型(PIV)、ムンプス、センダイウイルス、サルウイルス5、ウシパラインフルエンザウイルス、およびニューカッスル病ウイルスなど)に由来し得る。好ましくは、パラミクソウイルスはPIVまたはムンプスである。パラミクソウイルス抗原を、1つまたは複数の以下のタンパク質から選択することができる:血球凝集素−ノイラミニダーゼ(HN)、融合タンパク質F1およびF2、核タンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、巨大タンパク質(L)、および基質タンパク質(M)。好ましいパラミクソウイルスタンパク質には、HN、F1、およびF2が含まれる。パラミクソウイルス抗原を、キメラウイルス中に配合するか、これに由来することができる。例えば、キメラRSV/PIVウイルスは、RSVおよびPIVの両方の成分を含むことができる。市販のムンプスワクチンには、1価の形態または麻疹ワクチンおよび風疹ワクチン(MMR)と組み合わせた弱毒化生ムンプスウイルスが含まれる。
【0089】
モルビリウイルス:ウイルス抗原は、モルビリウイルス(麻疹ウイルスなど)に由来し得る。モルビリウイルス抗原を、1つまたは複数の以下のタンパク質から選択することができる:血球凝集素(H)、糖タンパク質(G)、融合因子(F)、巨大タンパク質(L)、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼリンタンパク質(P)、および基質(M)。市販の麻疹ワクチンには、典型的にはムンプスおよび風疹(MMR)と組み合わせた弱毒化生麻疹ウイルスが含まれる。
【0090】
ピコルナウイルス:ウイルス抗原は、ピコルナウイルス(エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパルナウイルス、カルジオウイルス、およびアフトウイルスなど)に由来し得る。エンテロウイルス(ポリオウイルスなど)由来の抗原が好ましい。
【0091】
エンテロウイルス:ウイルス抗原は、エンテロウイルス(ポリオウイルス1型1、2型、または3型)、コクサッキーAウイルス1〜22型および24型、コクサッキーBウイルス1〜6型、エコーウイルス(ECHO)1〜9型、11〜27型、および29〜34型、ならびにエンテロウイルス68〜71など)に由来し得る。好ましくは、エンテロウイルスはポリオウイルスである。エンテロウイルス抗原は、好ましくは、1つまたは複数の以下のキャプシドタンパク質から選択される:VP1、VP2、VP3、およびVP4。市販のポリオワクチンには、不活化ポリオワクチン(IPV)および経口ポリオウイルスワクチン(OPV)が含まれる。
【0092】
ヘパルナウイルス:ウイルス抗原は、ヘパルナウイルス(A型肝炎ウイルス(HAV)など)に由来し得る。市販のHAVワクチンには、不活化HAVワクチンが含まれる。
【0093】
トガウイルス:ウイルス抗原は、トガウイルス(ルビウイルス、アルファウイルス、またはアルテリウイルスなど)に由来し得る。ルビウイルス(風疹ウイルスなど)由来の抗原が好ましい。トガウイルス抗原を、E1、E2、E3、C、NSP−1、NSPO−2、NSP−3、またはNSP−4から選択することができる。トガウイルス抗原を、好ましくは、E1、E2、またはE3から選択する。市販の風疹ワクチンには、典型的にはムンプスワクチンおよび麻疹ワクチン(MMR)と組み合わせた低温適応の生きたウイルスが含まれる。
【0094】
フラビウイルス:ウイルス抗原は、フラビウイルス(ダニ媒介性脳炎(TBE)、デング熱(1、2、3、または4型)、黄熱病、日本脳炎、ウエストナイル脳炎、セントルイス脳炎、ロシア春夏脳炎、ポワッサン脳炎など)に由来し得る。フラビウイルス抗原を、PrM、M、C、E、NS−1、NS−2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4b、およびNS5から選択することができる。フラビウイルス抗原を、好ましくは、PrM、M、およびEから選択する。市販のTBEワクチンには、不活化ウイルスワクチンが含まれる。
【0095】
ペスチウイルス:ウイルス抗原は、ペスチウイルス(ウシウイルス性下痢(BVDV)、ブタコレラ(CSFV)、またはボーダー病(BDV)など)に由来し得る。
【0096】
ヘパドナウイルス:ウイルス抗原は、ヘパドナウイルス(B型肝炎ウイルスなど)に由来し得る。ヘパドナウイルス抗原を、表面抗原(L、M、およびS)、コア抗原(HBc、HBe)から選択することができる。市販のHBVワクチンには、表面抗原Sタンパク質を含むサブユニットワクチンが含まれる。
【0097】
C型肝炎ウイルス:ウイルス抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)に由来し得る。HCV抗原を、1つまたは複数のE1、E2、E1/E2、NS345ポリタンパク質、NS345−コアポリタンパク質、コア、および/または非構造領域由来のペプチド(Houghtonら、Hepatology(1991)14:381)から選択することができる。
【0098】
ラブドウイルス:ウイルス抗原は、ラブドウイルス(リッサウイルス(狂犬病ウイルス)およびベシクロウイルス(VSV)など)に由来し得る。ラブドウイルス抗原を、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、巨大タンパク質(L)、非構造タンパク質(NS)から選択することができる。市販の狂犬病ウイルスワクチンは、ヒト二倍体細胞またはアカゲザル胎児肺細胞で成長した死滅ウイルスを含む。
【0099】
カリシウイルス科;ウイルス抗原は、カルシウイルス科(ノーウォークウイルスおよびノーウォーク様ウイルス(ハワイウイルスおよびスノーマウンテンウイルスなど)など)に由来し得る。
【0100】
コロナウイルス:ウイルス抗原は、コロナウイルス、SARS、ヒト呼吸器コロナウイルス、トリ伝染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)、およびブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)に由来し得る。コロナウイルス抗原を、スパイク(S)、エンベロープ(E)、基質(M)、ヌクレオカプシド(N)、および血球凝集素−エステラーゼ糖タンパク質(HE)から選択することができる。好ましくは、コロナウイルス抗原は、SARSウイルスに由来する。SARSウイルス抗原は、WO04/92360号に記載されている。
【0101】
レトロウイルス:ウイルス抗原は、レトロウイルス(オンコウイルス、レンチウイルス、またはスプーマウイルスなど)に由来し得る。オンコウイルス抗原は、HTLV−1、HTLV−2、またはHTLV−5に由来し得る。レンチウイルス抗原は、HIV−1またはHIV−2に由来し得る。レトロウイルス抗原を、gag、pol、env、tax、tat、rex、rev、nef、vif、vpu、およびvprから選択することができる。HIV抗原を、gag(p24gagおよびp55gag)、env(gp160およびgp41)、pol、tat、nef、rev vpu、ミニタンパク質(好ましくは、p55 gagおよびgp140v欠失)から選択することができる。HIV抗原は、1つまたは複数の以下の株に由来し得る:HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV−1CM235、HIV−1US4。
【0102】
レオウイルス:ウイルス抗原は、レオウイルス(オルトレオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、またはコルティウイルスなど)に由来し得る。レオウイルス抗原を、構造タンパク質λ1、λ2、λ3、μ1、μ2、σ1、σ2、もしくはσ3、または非構造タンパク質σNS、μNS、もしくはσ1sから選択することができる。好ましいレオウイルス抗原は、ロタウイルスに由来し得る。ロタウイルス抗原を、VP1、VP2、VP3、VP4(または切断産物VP5およびVP8)、NSP1、VP6、NSP3、NSP2、VP7、NSP4、またはNSP5から選択することができる。好ましいロタウイルス抗原には、VP4(または切断産物VP5およびVP8)、およびVP7が含まれる。
【0103】
パルボウイルス:ウイルス抗原は、パルボウイルス(パルボウイルスB19など)に由来し得る。パルボウイルス抗原を、VP−1、VP−2、VP−3、NS−1、およびNS−2から選択することができる。好ましくは、パルボウイルス抗原は、キャプシドタンパク質VP−2である。
【0104】
デルタ肝炎ウイルス(HDV):ウイルス抗原は、HDV、特に、HDV由来のδ−抗原(例えば、米国特許第5,378,814号を参照のこと)に由来し得る。
【0105】
E型肝炎ウイルス(HEV):ウイルス抗原は、HEVに由来し得る。
【0106】
G型肝炎ウイルス(HGV):ウイルス抗原は、HGVに由来し得る。
【0107】
ヒトヘルペスウイルス:ウイルス抗原は、ヒトヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)、およびヒトヘルペスウイルス8(HHV8)など)に由来し得る。ヒトヘルペスウイルス抗原を、最初期タンパク質(α)、初期タンパク質(β)、および後期タンパク質(γ)から選択することができる。HSV抗原は、HSV−1株またはHSV−2株に由来し得る。HSV抗原を、糖タンパク質gB、gC、gD、およびgH、融合タンパク質(gB)、または免疫回避タンパク質(gC、gE、またはgI)から選択することができる。VZV抗原を、コアタンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、テグメントタンパク質、またはエンベロープタンパク質から選択することができる。弱毒化生VZVワクチンは市販されている。EBV抗原を、初期抗原(EA)タンパク質、ウイルスキャプシド抗原(VCA)、および膜抗原(MA)の糖タンパク質から選択することができる。CMV抗原を、キャプシドタンパク質、エンベロープ糖タンパク質(gBおよびgHなど)、およびテグメントタンパク質から選択することができる。
【0108】
パポーバウイルス:抗原は、パポーバウイルス(パピローマウイルスおよびポリオーマウイルスなど)に由来し得る。パピローマウイルスには、HPV血清型1、2、4、5、6、8、11、13、16、18、31、33、35、39、41、42、47、51、57、58、63、および65が含まれる。好ましくは、HPV抗原は、血清型6、11、16、または18に由来する。HPV抗原を、キャプシドタンパク質(L1)および(L2)またはE1〜E7、またはその融合物から選択することができる。HPV抗原を、好ましくは、ウイルス様粒子(VLP)に配合する。ポリオーマウイルス(Polyomyavirus)には、BKウイルスおよびJKウイルスが含まれる。ポリオーマウイルス抗原を、VP1、VP2、またはVP3から選択することができる。
【0109】
Vaccines,4th Edition(Plotkin and Orenstein ed.2004);Medical Microbiology 4th Edition(Murrayら、ed.2002);Virology,3rd Edition(W.K.Joklik ed.1988);Fundamental Virology,2nd Edition(B.N.Fields and D.M.Knipe,eds.1991)(本発明の組成物と併せて意図される)に含まれる抗原、組成物、方法、および微生物がさらに提供される。
【0110】
C.真菌抗原
本発明で用いる真菌抗原は、1つまたは複数の下記の真菌に由来し得る。
【0111】
真菌抗原は、皮膚糸状菌(Dermatophytres)(エピデルモフィトン・フロッコーサム(Epidermophyton floccusum)、ミクロスポルム・オドウィニ(Microsporum audouini)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)、ミクロスポルム・ディストルツム(Microsporum distortum)、ミクロスポルム・エクイヌム(Microsporum equinum)、ミクロスポルム・ジプスム(Microsporum gypsum)、ミクロスポルム・ナヌム(Microsporum nanum)、トリコフィトン・コンセントリクム(Trichophyton concentricum)、トリコフィトン・エクイヌム(Trichophyton equinum)、トリコフィトン・ガリネ(Trichophyton gallinae)、トリコフィトン・ジプセウム(Trichophyton gypseum)、トリコフィトン・メグニニ(Trichophyton megnini)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・キンケアヌム(Trichophyton quinckeanum)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・シェーンレイニ(Trichophyton schoenleini)、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ベルコスム(Trichophyton verrucosum)、T.ベルコスム・アルブム変種(T.verrucosum var.album)、ジスコイデス変種(var.discoides)、オクラセイム変種(var.ochraceum)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、および/またはトリコフィトン・ファビホルメ(Trichophyton faviforme)が含まれる)に由来し得る。
【0112】
真菌病原体は、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、クロコウジカビ、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・シドウィ(Aspergillus sydowi)、アスペルギルス・フラバタス(Aspergillus flavatus)、アスペルギルス・グラウクス(Aspergillus glaucus)、ブラストシゾマイセス・カピタタス(Blastoschizomyces capitatus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・エノラーゼ(Candida enolase)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・クセイ(Candida kusei)、カンジダ・パラクエセイ(Candida parakwsei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)、カンジダ・グイリエルモンジ(Candida guilliermondi)、クラドスポリム・カリオニイ(Cladosporium carrionii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチディス(Blastomyces dermatidis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ゲオトリクム・クラバタム(Geotrichum clavatum)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、肺炎桿菌、南アメリカ分芽菌、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、ピシウムン・インシジオスム(Pythiumn insidiosum)、ピチロスポルム・オバール(Pityrosporum ovale)、酵母(Sacharomyces cerevisae)、サッカロマイセス・ブラウディ、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、スケドスポリウム・アピオスペルム(Scedosporium apiosperum)、スポロトリクス・シェンキ(Sporothrix schenckii)、トリコスポロン・ベイゲリ(Trichosporon beigelii)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、ペニシリウム・マルネフェイ(Penicillium marneffei)、マラセジア(Malassezia)属菌種、フォンセケア(Fonsecaea)属菌種、ワンギエラ(Wangiella)属菌種、スポロトリクス(Sporothrix)属菌種、バシジオボラス(Basidiobolus)属菌種、コニディオボラス(Conidiobolus)属菌種、リゾプス(Rhizopus)属菌種、ムコール(Mucor)属菌種、アブシディア(Absidia)属菌種、モルチエレラ(Mortierella)属菌種、クニンガメラ(Cunninghamella)属菌種、サクセネア(Saksenaea)属菌種、アルテルナリア(Alternaria)属菌種、カーブラリア(Curvularia)属菌種、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)属菌種、フザリウム(Fusarium)属菌種、アスペルギルス(Aspergillus)属菌種、ペニシリウム(Penicillium)属菌種、アモノリニア(Monolinia)属菌種、リゾクトニア(Rhizoctonia)属菌種、ペシロマイセス(Paecilomyces)属菌種、ピトマイセス(Pithomyces)属菌種、およびクラドスポリウム(Cladosporium)属菌種に由来し得る。
【0113】
真菌抗原の産生プロセスは、当該分野で周知である(米国特許第6,333,164号を参照のこと)。好ましい方法では、その細胞壁が実質的に除去されているか少なくとも部分的に除去された真菌細胞から得ることができる不溶性画分から抽出および分離した可溶化画分を、プロセスが、生きた真菌細胞を得る工程;その細胞壁が実質的に除去されているか少なくとも部分的に除去された真菌細胞を得る工程;その細胞壁が実質的に除去されているか少なくとも部分的に除去された真菌細胞を破裂させる工程;不溶性画分を得る工程;ならびに不溶性画分から可溶化画分を抽出および分離する工程を含むという点で特徴づけた。
【0114】
D.STD抗原
本発明の組成物は、1つまたは複数の性感染症(STD)由来の抗原を含むことができる。かかる抗原は、STD(クラミジア、陰部ヘルペス、肝炎(HCVなど)、陰部疣贅、淋病、梅毒、および/または軟性下疳など)を予防または治療することができる(WO00/15255号を参照のこと)。抗原は、1つまたは複数のウイルスまたは細菌のSTDに由来し得る。本発明で用いるウイルスSTD抗原は、例えば、HIV、単純ヘルペスウイルス(HSV−1およびHSV−2)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、および肝炎(HCV)に由来し得る。本発明で用いる細菌STD抗原は、例えば、淋菌、トラコーマクラミジア、梅毒トレポネーマ、軟性下疳菌、大腸菌、およびストレプトコッカス・アガラクチアに由来し得る。これらの病原体由来の特異的抗原の例は、上に記載している。
【0115】
E.呼吸器抗原
本発明の組成物は、呼吸器疾患を引き起こす病原体由来の1つまたは複数の抗原を含むことができる。例えば、呼吸器抗原は、呼吸器ウイルス(オルソミクソウイルス(インフルエンザ)、ニューモウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)、モルビリウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、VZV、およびコロナウイルス(SARS)など)に由来し得る。呼吸器抗原は、呼吸器疾患を引き起こす細菌(肺炎連鎖球菌、緑膿菌、百日咳菌、結核菌、肺炎マイコプラズマ、クラミジア・ニューモニエ、炭疽菌、およびカタル球菌など)に由来し得る。これらの病原体由来の特異的抗原の例は、上に記載している。
【0116】
F.小児ワクチン抗原
本発明の組成物は、小児被験体での使用に適切な1つまたは複数の抗原を含むことができる。小児被験体は、典型的には、約3歳未満、約2歳未満、または約1歳未満である。小児抗原を、6ヶ月、1年、2年、または3年にわたって複数回投与することができる。小児抗原は、小児集団を標的にすることができるウイルスおよび/または小児集団が感染に感受性を示すウイルスに由来し得る。小児ウイルス抗原には、1つまたは複数のオルソミクソウイルス(インフルエンザ)、ニューモウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIVおよびムンプス)、モルビリウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、および水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)由来の抗原が含まれる。小児細菌抗原には、1つまたは複数の肺炎連鎖球菌、ナイセリア・メニンギティディス、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、カタル球菌、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、破傷風菌(破傷風)、ジフテリア菌(ジフテリア)、インフルエンザ菌B(Hib)、緑膿菌、ストレプトコッカス・アガラクチア(B群連鎖球菌)、および大腸菌由来の抗原が含まれる。これらの病原体由来の特異的抗原の例は、上に記載している。
【0117】
G.高齢者または免疫無防備状態の個体での使用に適切な抗原
本発明の組成物は、高齢者または免疫無防備状態の個体での使用に適切な1つまたは複数の抗原を含むことができる。かかる個体に、より頻繁に、標的化抗原に対するその免疫応答を改良するためにより高い用量またはアジュバント化(adjuvanted)処方物でワクチン接種することが必要であり得る。高齢者または免疫無防備状態の個体での使用のために標的化することができる抗原には、1つまたは複数の以下の病原体由来の抗原が含まれる:ナイセリア・メニンギティディス、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、カタル球菌、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、破傷風菌(破傷風)、ジフテリア菌(ジフテリア)、インフルエンザ菌B(Hib)、緑膿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、ストレプトコッカス・アガラクチア(B群連鎖球菌)、フェカリス菌、ピロリ菌、肺炎クラミジア(Clamydia pneumoniae)、オルソミクソウイルス(インフルエンザ)、ニューモウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIVおよびムンプス)、モルビリウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)。これらの病原体由来の特異的抗原の例は、上に記載している。
【0118】
H.青年期ワクチンでの使用に適切な抗原
本発明の組成物は、青年期被験体での使用に適切な1つまたは複数の抗原を含むことができる。青年期は、以前に投与した小児ワクチンの追加免疫が必要であり得る。青年期での使用に適切であり得る小児抗原は、上に記載されている。さらに、性行為の開始前に防御免疫または治療的免疫を確実にするために、STD病原体由来の抗原を投与するために青年期を標的化することができる。青年期での使用に適切であり得るSTD抗原は、上に記載されている。
【0119】
I.抗原処方物
本発明の他の態様では、吸着抗原を有する微粒子の生成方法を提供する。本方法は、(a)(i)水、(ii)界面活性剤、(iii)有機溶媒、および(iv)ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、およびポリシアノアクリラートからなる群より選択される生分解性ポリマーを含む混合物の分散によって乳濁液を準備する工程を含む。ポリマーは、典型的には、有機溶媒と比較して約1%〜約3%の濃度の混合物で存在する一方で、界面活性剤は、典型的には、約0.00001:1〜約0.1:1(より典型的には、約0.0001:1〜約0.1:1、約0.001:1〜約0.1:1、または約0.005:1〜約0.1:1)の水:水、界面活性剤:ポリマー比で混合物中に存在する、準備する工程、(b)乳濁液から有機溶媒を除去する工程、および(c)微粒子表面上に抗原を吸着させる工程を含む。一定の実施形態では、生分解性ポリマーは、有機溶媒と比較して約3%〜約10%の濃度で存在する。
【0120】
本明細書中で使用するための微粒子を、滅菌可能で、非毒性を示し、生分解性を示す材料から形成するであろう。かかる材料には、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、PACA、およびポリシアノアクリラートが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明と共に使用するための微粒子は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、特に、ポリ(ラクチド)(「PLA」)またはD,L−ラクチドとグリコリドまたはグリコール酸とのコポリマー(ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリドなど)(「PLG」または「PLGA」)、またはD,L−ラクチドとカプロラクトンとのコポリマーに由来する。微粒子は、種々の分子量、PLGなどのコポリマーの場合、種々のラクチド:グリコリド比を有する任意の種々の重合開始材料に由来し得、その選択は、同時投与される高分子に一部依存して、多くの選択肢があるであろう。これらのパラメータは、以下により完全に考察されている。
【0121】
さらなる抗原には、外膜小胞(OMV)調製物も含まれ得る。
【0122】
さらなる処方方法および抗原(特に、腫瘍抗原)は、米国特許出願番号09/581,772号に記載されている。
【0123】
J.抗原についての参考文献
以下の参考文献は、本発明の組成物と併せて有用な抗原を含む。
【0124】
【数1】

【0125】
【数2】

【0126】
【数3】

上記で引用した全ての特許、特許出願、および学術論文の内容は、本明細書中で完全に記載されているかのように参考として援用される。
【0127】
糖類抗原または炭水化物抗原を使用する場合、好ましくは、この抗原を担体タンパク質と接合して免疫原性を増強する。Ramsayら(2001)Lancet357(9251):195−196;Lindberg(1999)Vaccine 17 Suppl 2:S28−36;Buttery & Moxon(2000)J R Coll Physicians Lond 34:163−168;Ahmad & Chapnick(1999)Infect Dis Clin North Am 13:113−133,vii;Goldblatt(1998)J.Med.Microbiol.47:563−567;欧州特許第0477508号;米国特許第5,306,492号;WO98/42721号;Conjugate Vaccines(eds.Cruseら)ISBN 3805549326、特に、vol.10:48−114;Hermanson(1996)Bioconjugate Techniques ISBN:0123423368 or 012342335Xを参照のこと。好ましい担体タンパク質は、細菌毒素またはトキソイド(ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドなど)である。CRM197ジフテリアトキソイドが特に好ましい。
【0128】
他の担体ポリペプチドには、髄膜炎菌外膜タンパク質(EP−A−0372501号)、合成ペプチド(EP−A−0378881号およびEP−A0427347号)、熱ショックタンパク質(WO93/17712号およびWO94/03208号)、百日咳タンパク質(WO98/58668号およびEP A 0471177号)、インフルエンザ菌由来のタンパク質D(WO00/56360号)、サイトカイン(WO91/01146号)、リンホカイン、ホルモン、成長因子、C.difficile由来の毒素AまたはB(WO00/61761号)、鉄取り込みタンパク質(WO01/72337号)などが含まれる。混合物がセリグラフ(serigraph)AおよびCの両方由来の莢膜糖類を含む場合、MenA糖類:MenC糖類の比(w/w)は1を超える(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、またはそれを超える)ことが好ましい場合がある。異なる糖類を、同型または異なる型の担体タンパク質に接合することができる。必要に応じて任意の適切なリンカーを使用した任意の適切な接合反応を使用することができる。
【0129】
必要に応じて、有毒タンパク質抗原を解毒することができる(例えば、化学的手段および/または遺伝子手段による百日咳毒素の解毒)。
【0130】
薬学的に許容可能な担体
本発明の組成物は、典型的には、上記成分に加えて、1つまたは複数の「薬学的に許容可能な担体」を含むであろう。これらには、担体自体が組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘導しない任意の担体が含まれる。適切な担体は、典型的には、巨大でゆっくり代謝される高分子(タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(油滴またはリポソームなど)など)である。かかる担体は、当業者に周知である。組成物はまた、希釈剤(水、生理食塩水、グリセロールなど)を含むことができる。さらに、補助剤(湿潤剤または乳化剤およびpH緩衝物質など)が存在し得る。薬学的に許容可能な成分の徹底的な考察は、Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy.20th ed.,ISBN:0683306472で得られる。
【0131】
免疫調節薬
アジュバント
本発明のワクチンを、他の免疫調節薬と併せて投与することができる。特に、組成物は、通常、アジュバントを含むであろう。本発明と共に使用するためのアジュバントには、1つまたは複数の下記のアジュバントが含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
A.ミネラル含有組成物
本発明でのアジュバントとしての使用に適切なミネラル含有組成物は、ミネラル塩(アルミニウム塩およびカルシウム塩など)を含む。本発明は、水酸化物(例えば、オキシヒドロキシド)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシホスフェート、オルトホスフェート)、硫酸塩などのミネラル塩(例えば、chapters8 & 9 of Vaccine Design…(1995)eds.Powell & Newman.ISBN:030644867X.Plenum.)または異なるミネラル化合物の混合物(例えば、リン酸塩アジュバントと水酸化物アジュバントとの混合物(任意選択的にリン酸塩が過剰))を含み、この化合物は任意の適切な形態(例えば、ゲル、血漿、無定形など)をとり、塩に吸着していることが好ましい。ミネラル含有組成物を、金属塩の粒子として処方することもできる(WO00/23105号)。
【0133】
アルミニウム塩を、Al3+の用量が0.2mg/用量と1.0mg/用量との間であるように本発明のワクチン中に含めることができる。
【0134】
1つの実施形態では、本発明で用いるアルミニウムベースのアジュバントは、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム(AlK(SO))またはミョウバン誘導体(リン酸緩衝剤中で抗原とミョウバンとを混合し、その後に滴定し、水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウムなどの塩基で沈殿させることによってインサイチュで形成したミョウバン誘導体など)である。
【0135】
本発明のワクチン処方で用いる別のアルミニウムベースのアジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント(Al(OH))または結晶オキシ水酸化アルミニウム(AlOOH)(優れた吸着剤であり、表面積が約500m/gである)である。あるいは、リン酸アルミニウムアジュバント(AlPO)またはヒドロキシリン酸アルミニウム(水酸化アルミニウムアジュバントのいくつかまたは全てのヒドロキシル基の代わりにリン酸基を含む)を提供する。本明細書中で提供する好ましいリン酸アルミニウムアジュバントは無定形であり、酸性、塩基性、および中性の媒質中に可溶である。
【0136】
別の実施形態では、本発明のアジュバントは、リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムの両方を含む。そのより特定の実施形態では、アジュバントは、水酸化アルミニウムよりも大量のリン酸アルミニウムを有する(2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または9:1超などのリン酸アルミニウム:水酸化アルミニウムの重量比)。さらにより詳細には、ワクチン中のアルミニウム塩は、0.4〜1.0mg/ワクチン用量、0.4〜0.8mg/ワクチン用量、0.5〜0.7mg/ワクチン用量、または約0.6mg/ワクチン用量で存在する。
【0137】
一般に、好ましいアルミニウムベースのアジュバントまたは複数のアルミニウムベースのアジュバントの比率(リン酸アルミニウム:水酸化アルミニウムなど)を、抗原が所望のpHでアジュバントとして逆の電荷を有するように分子間の静電気引力を至適化することによって選択する。例えば、リン酸アルミニウムアジュバント(等電点=4)はリゾチームを吸着するが、pH7.4でアルブミンを吸着しない。アルブミンが標的である場合、水酸化アルミニウムアジュバントを選択するであろう(iep 11.4)。あるいは、リン酸塩での水酸化アルミニウムの前処理によってその等電点が低下し、より塩基性の高い抗原に好ましいアジュバントとなる。
【0138】
B.油性乳濁液
本発明でのアジュバントとしての使用に適切な油性乳濁液組成物には、スクアレン−水乳濁液(MF59(ミクロフルイダイザー(microfluidizer)を使用して、5%スクアレン、0.5%TWEEN(商標)80、および0.5%Span85をサブミクロン粒子に処方したもの)など)が含まれる。WO90/14837号を参照のこと。Podda,Vaccine(2001)19:2673−2680;Freyら、Vaccine(2003)21:4234−4237も参照のこと。MF59を、FLUAD(商標)インフルエンザウイルス3価サブユニットワクチンにおけるアジュバントとして使用する。
【0139】
組成物中での使用に特に好ましいアジュバントは、サブミクロン水中油型乳濁液である。本明細書中での使用に好ましいサブミクロン水中油型乳濁液は、種々の量のMTP−PEを任意選択的に含むスクアレン/水乳濁液(4〜5% w/v スクアレン、0.25〜1.0% w/v TWEEN(商標)80□(ポリオキシエチレンソルビタン(polyoxyelthylenesorbitan)モノオレアート、および/または0.25〜1.0% SPAN 85(商標)(ソルビタントリオレアート)、および任意選択的にN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−ヒドロキシホスホホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)を含むサブミクロン水中油型乳濁液(例えば、「MF59」として公知のサブミクロン水中油型乳濁液(国際公開番号WO90/14837号;米国特許第6,299,884号および同第6,451,325号、およびOttら、in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.and Newman,M.J.eds.)Plenum Press,New York,1995,pp.277−296))など)である。MF59は、4〜5% w/v スクアレン(例えば、4.3%)、0.25〜0.5% w/v TWEEN(商標)80、および0.5% w/v SPAN 85(商標)を含み、任意選択的に種々の量のMTP−PEを含み、これがModel 110Yミクロフルイダイザー(Microfluidics、Newton、MA)などのミクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に処方されている。例えば、MTP−PEは、約0〜500μg/用量、より好ましくは0〜250μg/用量、最も好ましくは0〜100μg/用量で存在し得る。本明細書中で使用される場合、用語「MF59−0」は、MTP−PEを欠く上記サブミクロン水中油型乳濁液いう一方で、用語「MF59−MTP」は、MTP−PEを含む処方物を示す。例えば、「MF59−100」は、100μg MTP−PE/用量などを含む。MF69(本明細書中で用いる別のサブミクロン水中油型乳濁液)は、4.3% w/v スクアレン、0.25% w/v TWEEN(商標)80、および0.75% w/v SPAN 85(商標)、および任意選択的にMTP−PEを含む。さらに別のサブミクロン水中油型乳濁液は、SAFとしても公知のMF75であり、これは10%スクアレン、0.4% TWEEN(商標)80、5%プルロニックブロック重合体L121、およびthr−MDPを含み、サブミクロン乳濁液にミクロ流体化もされている。MF75−MTPは、MTP(100〜400μg MTP−PE/用量など)を含むMF75処方物を示す。
【0140】
組成物で用いるサブミクロン水中油型乳濁液、その作製方法、および免疫賦活剤(ムラミルペプチドなど)は、WO90/14837号および米国特許第6,299,884号および同第6,451,325号に詳述されている。
【0141】
フロイント完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA)を、本発明でアジュバントとして使用することもできる。
【0142】
C.サポニン処方物
サポニン処方物を、本発明でアジュバントとして使用することもできる。サポニンは、ステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群であり、広範な植物種の樹皮、葉、幹、根、さらに花弁中で見出される。キラヤサポナリア モリナ(Quillalaia saponaria Molina)の木の樹皮から単離したサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。スミラックス・オルナタ(Smilax ornata)(サルサパリラ(sarsaprilla))、シュッコンカスミソウ(Gypsophilla paniculata)(ブライドベール(brides veil))、およびサボンソウ(ソープルート(soap root))由来のサポニンを購入することもできる。サポニンアジュバント処方物には、精製処方物(QS21など)および脂質処方物(ISCOMなど)が含まれる。
【0143】
サポニン組成物は、高速薄層クロマトグラフィ(HP−TLC)および逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)を使用して精製されている。これらの技術を使用した特定の精製画分(QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−B、およびQH−Cが含まれる)が同定されている。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の生成方法は、米国特許第5,057,540号に開示されている。サポニン処方物はまた、コレステロールなどのステロールを含むこともできる(WO96/33739号を参照のこと)。
【0144】
サポニンとコレステロールとの組み合わせを使用して、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる固有の粒子を形成することができる。ISCOMは、典型的には、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質も含む。任意の公知のサポニンを、ISCOMで使用することができる。好ましくは、ISCOMは、1つまたは複数のQuil A、QHA、およびQHCを含む。ISCOMは、EP0109942号、WO96/11711号、およびWO96/33739号にさらに記載されている。任意選択的に、ISCOMSは、さらなる界面活性剤を欠いていてもよい。WO00/07621号を参照のこと。
【0145】
サポニンベースのアジュバント開発の概説を、Barr,ら、Advanced Drug Delivery Reviews(1998)32:247−271に見出すことができる。Sjolander,ら、Advanced Drug Delivery Reviews(1998)32:321−338も参照のこと。
【0146】
D.ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)を、本発明でアジュバントとして使用することもできる。これらの構造物は、一般に、任意選択的にリン脂質と組み合わせた、またはこれを用いて処方したウイルス由来の1つまたは複数のタンパク質を含む。これらは、一般に、非病原性で複製せず、一般に、任意の未変性のウイルスゲノムを含まない。ウイルスタンパク質を、組換え的に産生し、または全ウイルスから単離することができる。ビロソームまたはVLPでの使用に適切なこれらのウイルスタンパク質には、インフルエンザウイルス(HAまたはNA)、B型肝炎ウイルス(コアタンパク質またはキャプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビス・ウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、HIV、RNA−ファージ、Qβ−ファージ(コートタンパク質など)、GA−ファージ、fr−ファージ、AP205ファージ、およびTy(レトロトランスポゾンTyタンパク質p1など)由来のタンパク質が含まれる。VLPは、WO03/024480号、WO03/024481号、Niikuraら、Virology(2002)293:273−280;Lenzら、Journal of Immunology(2001)5246−5355;Pinto,ら、Journal of Infectious Diseases(2003)188:327−338;およびGerberら、Journal of Virology(2001)75(10):4752−4760でさらに考察されている。ビロソームは、例えば、Gluckら、Vaccine(2002)20:B10−B16でさらに考察されている。免疫増強する再構築されたインフルエンザビロソーム(IRIV)を、鼻腔内3価INFLEXAL(商標)製品(Mischler & Metcalfe(2002)Vaccine 20 Suppl 5:B17−23)およびINFLUVAC PLUS(商標)製品におけるサブユニット抗原送達系として使用する。
【0147】
E.細菌または微生物誘導体
本発明での使用に適切なアジュバントには、以下などの細菌または微生物誘導体が含まれる。
【0148】
(1)腸内細菌リポ多糖類(LPS)の非毒性誘導体
かかる誘導体には、モノホスホリル脂質A(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が含まれる。3dMPLは、3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aと4、5、または6アシル化鎖との混合物である。3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい「小粒子」形態は、EP0689454号に開示されている。かかる3dMPLの「小粒子」は、0.22ミクロン膜で濾過滅菌するのに十分に小さい(EP0689454号)。他の非毒性LPS誘導体には、モノホスホリル脂質A模倣物(アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC529)など)が含まれる。Johnsonら(1999)Bioorg Med Chem Lett 9:2273−2278を参照のこと。
【0149】
(2)脂質A誘導体
脂質A誘導体には、大腸菌(OM−174)由来の脂質A誘導体が含まれる。OM−174は、例えば、Meraldiら、Vaccine(2003)21:2485−2491およびPajak,ら、Vaccine(2003)21:836−842に記載されている。
【0150】
(3)免疫刺激性オリゴヌクレオチド
本発明でのアジュバントとしての使用に適切な免疫刺激性オリゴヌクレオチドには、CpGモチーフ(非メチル化シトシンの後にグアノシンを含み、リン酸結合によって結合した配列)を含むヌクレオチド配列が含まれる。回分配列またはポリ(dG)配列を含む細菌二本鎖RNAまたはオリゴヌクレオチドも免疫刺激性を示すことが示されている。
【0151】
CpGは、ホスホロチオアート修飾物などのヌクレオチド修飾物/アナログが含まれ得、二本鎖または一本鎖であり得る。任意選択的に、グアノシンを、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンなどのアナログと置換することができる。可能なアナログ置換の例については、Kandimalla,ら、Nucleic Acids Research(2003)31(9):2393−2400;WO02/26757号およびWO99/62923号を参照のこと。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、Krieg,Nature Medicine(2003)9(7):831−835;McCluskie,ら、FEMS Immunology and Medical Microbiology(2002)32:179−185;WO98/40100号;米国特許第6,207,646号;米国特許第6,239,116号および米国特許第6,429,199号でさらに考察されている。
【0152】
CpG配列を、TLR9(モチーフGTCGTTまたはTTCGTTなど)に指向することができる。Kandimalla,ら、Biochemical Society Transactions(2003)31(part 3):654−658を参照のこと。CpG配列は、Th1免疫応答の誘導に特異的であり得るか(CpG−A ODNなど)、B細胞応答の誘導により特異的であり得る(CpG−B ODNなど)。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、Blackwell,ら、J.Immunol.(2003)170(8):4061−4068;Krieg,TRENDS in
Immunology(2002)23(2):64−65およびWO01/95935号で考察されている。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。
【0153】
好ましくは、5’末端が受容体認識のために接近することができるようにCpGオリゴヌクレオチドを構築する。任意選択的に、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列をその3’末端で結合して、「イムノマー」を形成することができる。例えば、Kandimalla,ら、BBRC(2003)306:948−953;Kandimalla,ら、Biochemical Society Transactions(2003)31(part 3):664−658;Bhagatら、BBRC(2003)300:853−861、およびWO03/035836号を参照のこと。
【0154】
(4)ADP−リボシル化毒素およびその解毒誘導体
細菌ADP−リボシル化毒素およびその解毒誘導体を、本発明でアジュバントとして使用することができる。好ましくは、タンパク質は、大腸菌(すなわち、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(「LT」)、コレラ菌(「CT」)、または百日咳菌(「PT」)に由来する。粘膜アジュバントとしての解毒ADP−リボシル化毒素の使用は、WO95/17211号に記載されており、非経口アジュバントとしてはWO98/42375号に記載されている。好ましくは、アジュバントは、解毒LT変異体(LT−K63、LT−R72、およびLTR192Gなど)である。ADP−リボシル化毒素およびその解毒誘導体(特に、LT−K63およびLT−R72)のアジュバントとしての使用を、以下の参考文献で見出すことができる:Beignon,ら、Infection and Immunity(2002)70(6):3012−3019;Pizza,ら、Vaccine(2001)19:2534−2541;Pizza,ら、Int.J.Med.Microbiol(2000)290(4−5):455−461;Scharton−Kerstenら、Infection and Immunity(2000)68(9):5306−5313;Ryanら、Infection and Immunity(1999)67(12):6270−6280;Partidosら、Immunol.Lett.(1999)67(3):209−216;Peppoloniら、Vaccines(2003)2(2):285−293;およびPineら、(2002)J.Control Release(2002)85(1−3):263−270。アミノ酸置換についての数値の基準は、好ましくは、Domenighiniら、Mol.Microbiol(1995)15(6):1165−1167に記載のADP−リボシル化毒素のAおよびBサブユニットのアラインメントに基づく。
【0155】
F.生体接着剤および粘膜接着剤
生体接着剤および粘膜接着剤を、本発明でアジュバントとして使用することもできる。適切な生体接着剤には、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフィア(Singhら(2001)J.Cont.Rele.70:267−276)または粘膜接着剤(ポリアクリル酸の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類、およびカルボキシメチルセルロースなど)が含まれる。キトサンおよびその誘導体を、本発明でアジュバントとして使用することもできる。WO99/27960を参照のこと。
【0156】
G.微粒子
微粒子を、本発明でアジュバントとして使用することもできる。微粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、より好ましくは直径約200nm〜約30μm、最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの粒子)を、生分解性且つ非毒性の材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトンなど)(ポリ(ラクチドコグリコリド)が好ましい)から形成し、任意選択的に、負電荷の表面(例えば、SDS)または正電荷の表面(例えば、CTABなどの陽イオン性界面活性剤)を有するように処理する。
【0157】
H.リポソーム
アジュバントとしての使用に適切なリポソーム処方物の例は、米国特許第6,090,406号、米国特許第5,916,588号、および欧州特許第0626169号に記載されている。
【0158】
I.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル処方物
本発明での使用に適切なアジュバントには、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが含まれる。WO99/52549号。かかる処方物には、さらに、オクトキシノール(WO01/21207)と組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤および少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤(オクトキシノールなど)と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤(WO01/21152号)が含まれる。
【0159】
好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(laureth 9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0160】
J.ポリホスファゼン(PCPP)
PCPP処方物は、例えば、Andrianovら、“Preparation of hydrogel microspheres by coacervation of aqueous polyphophazene solutions”,Biomaterials(1998)19(1−3):109−115 and Payneら、“Protein Release from Polyphosphazene Matrices”,Adv.Drug.Delivery Review(1998)31(3):185−196に記載されている。
【0161】
K.ムラミルペプチド
本発明でのアジュバントとしての使用に適切なムラミルペプチドの例には、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミン(nor−MDP)、およびNアセチルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミニル−l−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が含まれる。
【0162】
L.イミダゾキノリン化合物
本発明でのアジュバントとしての使用に適切なイミダゾキノリン化合物の例には、イミキモドおよびそのアナログが含まれ、Stanley,Clin Exp Dermatol(2002)27(7):571−577;Jones,Curr Opin Investig Drugs(2003)4(2):214−218;米国特許第4,689,338号、同第5,389,640号、同第5,268,376号、同第4,929,624号、同第5,266,575号、同第5,352,784号、同第5,494,916号、同第5,482,936号、同第5,346,905号、同第5,395,937号、同第5,238,944号、および同第5,525,612号にさらに記載されている。
【0163】
M.チオセミカルバゾン化合物
チオセミカルバゾン化合物、ならびに本発明でのアジュバントとしての使用に適切な全ての化合物の処方、製造、およびスクリーニング方法の例には、WO04/60308号に記載のものが含まれる。チオセミカルバゾンは、TNF−αなどのサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核細胞の刺激で特に有効である。
【0164】
N.トリプタントリン化合物
トリプタントリン化合物、ならびに本発明でのアジュバントとしての使用に適切な全ての化合物の処方、製造、およびスクリーニング方法の例には、WO04/64759号に記載のものが含まれる。トリプタントリン化合物は、TNF−αなどのサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核細胞の刺激で特に有効である。
【0165】
本発明はまた、上記で同定した1つまたは複数のアジュバントの態様の組み合わせを含むこともできる。例えば、以下のアジュバント組成物を、本発明で使用することができる。
【0166】
(1)サポニンおよび水中油型乳濁液(WO99/11241号);
(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)(WO94/00153号を参照のこと);
(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;
(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL12(任意選択的に、+ステロール)(WO98/57659号);
(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型乳濁液との組み合わせ(欧州特許出願第0835318号、0735898号、および0761231号を参照のこと);
(6)10%スクアラン、0.4%Tween80、5%プロニック−ブロック重合体L121、およびthr−MDPを含み、サブミクロン乳濁液にミクロ流体化されているか、ボルテックスしてより大きな粒子サイズの乳濁液を生成したSAF。
【0167】
(7)2%スクアレン、0.2%Tween80、およびモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコラート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)(好ましくは、MPL+CWS(DETOX(商標))からなる群より選択される1つまたは複数の細菌細胞壁成分を含むRIBI(商標)アジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem);および
(8)1つまたは複数のミネラル塩(アルミニウム塩など)+LPSの非毒性誘導体(3dPMLなど)。
【0168】
(9)1つまたは複数のミネラル塩(アルミニウム塩など)+免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むヌクレオチド配列など)。
【0169】
O.ヒト免疫調節薬
本発明でアジュバントとしての使用に適切なヒト免疫調節薬には、サイトカイン(インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子など)が含まれる。
【0170】
アルミニウム塩およびMF59は、注射用インフルエンザワクチンとの使用に好ましいアジュバントである。細菌毒素および生体接着剤は、粘膜由来ワクチン(経鼻用ワクチンなど)との使用に好ましいアジュバントである。
【0171】
上記で引用した全ての特許、特許出願、および学術論文の内容は、本明細書中で完全に記載されているかのように参考により組み込まれる。
【0172】
治療方法
本発明は、治療において使用するための、上記の組成物を提供する。本発明は、化膿連鎖球菌に対する免疫応答を誘導または増大させるための、上記の組成物を提供する。本発明は、上記組成物を使用して化膿連鎖球菌に対する免疫応答を誘導または増大させる方法を提供する。免疫応答は、好ましくは防御的であり、抗体および/または細胞−媒介性免疫(全身免疫および粘膜免疫が含まれる)が含まれ得る。免疫応答には、ブースター応答が含まれる。
【0173】
十代および小児(よちよち歩きの子どもおよび乳児が含まれる)に、予防的用途でワクチンを投与することができ、治療用ワクチンを、典型的には、十代または成人に投与する。小児使用を意図するワクチンを、例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価する目的で成人に投与することもできる。
【0174】
本発明によって防止または治療することができる化膿連鎖球菌に起因する疾患には、咽頭炎(連鎖球菌性咽喉痛など)、猩紅熱、膿痂疹、丹毒、蜂巣炎、敗血、中毒性ショック症候群、壊死性筋膜炎、および後遺症(リウマチ熱および急性糸球体腎炎など)が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、他の連鎖球菌(例えば、GBS)に対しても有効であり得る。
【0175】
免疫応答の有効性を決定する試験
治療上の処置の有効性を評価する1つの方法は、本発明の組成物の投与後にGAS感染をモニタリングすることを含む。予防的治療の有効性を評価する1つの方法は、組成物の投与後に本発明の組成物における変異体SLOタンパク質に対する免疫応答をモニタリングすることを含む。
【0176】
本発明の免疫原性組成物の成分タンパク質の免疫原性を評価する別の方法は、組換え的に変異体SLOタンパク質を発現し、免疫ブロットによって患者の血清または粘膜分泌物をスクリーニングすることである。タンパク質と患者の血清との間の陽性反応は、患者が問題のタンパク質に対する免疫応答を事前に開始していることを示す(すなわち、タンパク質が免疫原である)。この方法を使用して、免疫優性タンパク質および/またはエピトープを同定することもできる。
【0177】
治療上の処置の有効性の別のチェック方法は、本発明の組成物の投与後のGAS感染のモニタリングを含む。予防的治療の有効性の1つのチェック方法は、組成物の投与後にSLOに対する全身(IgG1およびIgG2a産生レベルのモニタリングなど)および粘膜(IgA産生レベルのモニタリングなど)の両方の免疫応答をモニタリングすることを含む。典型的には、血清特異的抗体応答を免疫化後であるが攻撃誘発前に決定するのに対して、粘膜特異的抗体応答を免疫後且つ攻撃誘発後に決定する。
【0178】
本発明のワクチン組成物を、宿主(例えば、ヒト)投与前にインビトロおよびインビボ動物モデルで評価することができる。特に有用なマウスモデルには、腹腔内免疫化後に腹腔内攻撃誘発または鼻腔内攻撃誘発を行うマウスモデルが含まれる。
【0179】
本発明の免疫原性組成物の有効性を、動物モデル(例えば、モルモットまたはマウス)を免疫原性組成物で免疫化し、GASによる攻撃誘発後に得られた保護のレベルを確認することによってインビボで決定することもできる。
【0180】
インビボ有効性モデルには、以下が含まれるが、これらに限定されない:(i)ヒトGAS血清型を使用したマウス感染モデル、(ii)マウス適合GAS株(特にマウスに病原性を示すM23株など)を使用したマウスモデルであるマウス疾患モデル、および(iii)ヒトGAS分離株を使用した霊長類モデル。
【0181】
免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2免疫応答の一方または両方であり得る。免疫応答は、免疫応答の改良、増強、または変化であり得る。免疫応答は、全身免疫応答および粘膜免疫応答の一方または両方であり得る。好ましくは、免疫応答は、全身および/または粘膜の応答の増強である。
【0182】
全身免疫および/または粘膜免疫の増強は、TH1免疫応答および/またはTH2免疫応答の増強を反映している。好ましくは、免疫応答の増強には、IgG1および/またはIgG2aおよび/またはIgA産生の増加が含まれる。
【0183】
好ましくは、粘膜免疫応答はTH2免疫応答である。好ましくは、粘膜免疫応答には、IgA産生の増加が含まれる。
【0184】
活性化TH2細胞は抗体産生を増強し、それにより、細胞外感染に対する応答で有益である。活性化TH2細胞は、1つまたは複数のIL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10を分泌することができる。TH2免疫応答により、さらなる防御のためにIgG1、IgE、IgA、および記憶B細胞を産生することができる。
【0185】
TH2免疫応答には、TH2免疫応答に関連する1つまたは複数のサイトカイン(IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10など)の増加またはIgG1、IgE、IgA、および記憶B細胞産生の増加の1つまたは複数が含まれ得る。好ましくは、TH2免疫応答の増強には、IgG1産生の増加が含まれるであろう。
【0186】
TH1免疫応答には、CTLlの増加、TH1免疫応答に関連する1つまたは複数のサイトカイン(IL−2、IFNγ、およびTNFβなど)の増加、活性化マクロファージの増加、NK活性の増加、またはIgG2a産生の増加の1つまたは複数が含まれ得る。好ましくは、TH1免疫応答の増強には、IgG2a産生の増加が含まれるであろう。
【0187】
本発明の免疫原性組成物、特に、1つまたは複数の本発明の変異体SLOタンパク質を含む免疫原性組成物を、任意選択的にTh1および/またはTh2応答を誘発することができる免疫調節薬と共に、単独または他のGAS抗原と組み合わせて使用することができる。
【0188】
本発明はまた、1つまたは複数の免疫調節薬(ミネラル塩(アルミニウム塩など)など)およびCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを含む免疫原性組成物を含む。最も好ましくは、免疫原性組成物には、アルミニウム塩およびCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドの両方を含む。あるいは、免疫原性組成物は、ADPリボシル化毒素(解毒ADPリボシル化毒素など)およびCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを含む。好ましくは、1つまたは複数の免疫調節薬は、アジュバントを含む。アジュバントを、TH1アジュバントおよびTH2アジュバントからなる群の1つまたは複数から選択することができる。
【0189】
本発明の組成物は、好ましくは、GAS感染に有効に対処するために、細胞媒介性免疫および体液性免疫応答の両方を誘発するであろう。この免疫応答は、好ましくは、長期継続(例えば、中和)抗体および1つまたは複数のGAS抗原に曝露した場合に迅速に応答することができる細胞媒介性免疫を惹起するであろう。
【0190】
1つの特に好ましい実施形態では、免疫原性組成物は、中和抗体応答を誘発する変異体SLOタンパク質および細胞媒介性免疫応答を誘発する変異体SLOタンパク質を含む。このようにして、中和抗体応答は、最初のGAS感染を防止または阻害する一方で、増強されたTh1細胞応答を誘発することができる細胞媒介性免疫応答はGAS感染のさらなる拡大を防止する。
【0191】
本発明の組成物を、一般に、患者に直接投与するであろう。本発明の組成物を、種々の異なる経路を介して単独または組成物の一部として投与することができる。一定の組成物は、より有効な免疫応答、好ましくはCMI応答が得られるか、副作用を誘導する可能性が低いか、投与がより容易になるように一定の経路を好み得る。
【0192】
送達方法には、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または間質注射)、直腸、経口(例えば、錠剤、スプレー)、膣、局所、経皮(例えば、WO99/27961号を参照のこと)、経皮(例えば、WO02/074244号およびWO02/064162号を参照のこと)、鼻腔内(例えば、WO03/028760号を参照のこと)、眼球、耳、および肺、または他の粘膜投与が含まれる。
【0193】
一例として、本発明の組成物を、全身経路、粘膜経路、または経皮経路を開始して投与することができるか、特定の組織に直接投与することができる。本明細書中で使用される場合、用語「全身投与」には、任意の非経口投与経路が含まれるが、これらに限定されない。特に、非経口投与には、皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、または胸骨内注射、静脈内、動脈内、または腎臓透析注入技術が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、全身非経口投与は筋肉内注射である。本明細書中で使用される場合、用語「粘膜投与」には、経口、鼻腔内、膣内、直腸内、気管内、腸、および眼投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0194】
投薬治療は、単回投与計画または複数回投与計画であり得る。複数回投与を、初回免疫計画および/または追加免疫計画で使用することができる。複数回投与計画では、同一または異なる経路(例えば、非経口初回刺激および粘膜追加免疫、粘膜初回刺激および非経口追加免疫など)によって種々の回収で投与することができる。
【0195】
本発明の組成物を、種々の形態で調製することができる。例えば、組成物を、溶液または懸濁液のいずれかとして注射可能な組成物として調製することができる。注射前に溶液、懸濁液、または液体ビヒクルにするのに適切な固体形態(例えば、凍結乾燥組成物)を調製することもできる。経口投与のための組成物(錠剤もしくはカプセル、スプレーとして、またはシロップ(任意選択的に、風味づけする)としてなど)を調製することができる。肺投与のための組成物を、例えば、微粉またはスプレーを使用した吸入器として調製することができる。組成物を、坐剤またはペッサリーとして調製することができる。鼻、耳、または眼への投与のための組成物を、例えば、点滴薬として調製することができる。組成物は、患者への投与直前に組み合わせた組成物を再構成するようにデザインされたキット形態であり得る。かかるキットは、液体形態の1つまたは複数の変異体SLOまたは他の抗原および1つまたは複数の凍結乾燥抗原を含むことができる。
【0196】
ワクチンとして使用した免疫原性組成物は、免疫学的有効量の変異体SLOまたは他の抗原(または抗原をコードする核酸分子)、ならびに、必要に応じて、抗生物質などの任意の他の成分を含む。「免疫学的有効量」は、単回用量または一連の投与の一部として個体に投与した場合に測定可能な免疫応答を増加させるか臨床症状を防止または減少させる量である。
【0197】
本発明の免疫原性組成物を、抗生物質治療計画と組み合わせて投与することができる。1つの実施形態では、抗生物質を、本発明の抗原または1つまたは複数の本発明の変異体SLOタンパク質を含む組成物の投与前に投与する。
【0198】
別の実施形態では、抗生物質を、本発明の変異体SLOタンパク質の投与後に投与する。GAS感染治療での使用に適切な抗生物質の例には、ペニシリンもしくはその誘導体またはクリンダマイシン、セファロスポリン、糖ペプチド(例えば、バンコマイシン)、およびシクロセリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0199】
しかし、組成物中の活性剤の量は、治療を受ける個体の健康状態および生理的状態、年齢、治療を受ける個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望の防御の程度、ワクチンの処方、治療を行う医師の医学的状況の評価、および他の関連要因に応じて変化する。この量は比較的広範であり、日常的試験によって決定することができる。
キット
本発明はまた、本発明の1つまたは複数の容器を含むキットを提供する。組成物は、個別の抗原と同様に、液体形態であり得るか凍結乾燥させることができる。組成物に適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が含まれる。容器を、種々の材料(ガラスまたはプラスチックが含まれる)から形成することができる。容器は、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈内注射用溶液のバッグまたは皮下注射針によって突き刺すことができるストッパを有するバイアルであり得る)。
【0200】
キットは、さらに、薬学的に許容可能な緩衝剤(リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル液、またはデキストロース溶液など)を含む第2の容器を含む。キットはまた、末端利用者に有用な他の材料(他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジが含まれる)を含むことができる。キットはまた、別の活性剤(例えば、抗生物質)を含む第2または第3の容器を含むことができる。
【0201】
キットはまた、化膿連鎖球菌に対する免疫の誘導方法または化膿連鎖球菌感染の治療方法についての書面での指示を含む添付文書を含むことができる。添付文書は、未承認の添付文書であり得るか、食品医薬品局(FDA)または他の規制機関によって承認された添付文書であり得る。
【0202】
本開示で引用した全ての特許、特許出願、および参考文献は、特に、本明細書中で参考として援用される。上記開示は、一般に、本発明を説明する。以下の特定の実施例を参照して、本発明をより完全に理解することができる。これらの実施例は、例示のみを目的とし、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0203】
(実施例1)
野生型および変異体SLOタンパク質のクローニング
野生型および変異体SLOタンパク質をコードする遺伝子を、表1に示されたSF370ゲノム由来のプライマーを用いるPCRによって増幅した。
【0204】
PCR産物を、NheI−XhoIで消化し、その同じ酵素で切断されたpet24b+(Novagen)ベクターとライゲーションした。E.coli DH5αエレクトロコンピテント細胞を、ライゲーション反応物で形質転換した。LBPTK培地を加え、250rpmで撹拌しながら、37℃で1時間、インキュベートした後、50μg/mlのカナマイシンを含むLBPTKプレート上に細菌を蒔いた。陽性コロニーをコロニーPCRによって同定した。
【0205】
陽性コロニー由来のプラスミドを、50μg/mlのカナマイシンを含むLBPTK培地中での一晩の培養から調製し、DNAシーケンシングによって分析し、それによって、T7ポリメラーゼプロモーター下の予想される挿入遺伝子を確認した。クローニングされた遺伝子の最終のDNA配列およびタンパク質配列は、配列表に示されている。表2を参照されたい。
【0206】
【表1】


【0207】
【表2】

E.coli BL21(DE3)(Novagen)コンピテント細胞を、正しい構築物で形質転換した。LBPTK培地を加え、250rpmで撹拌しながら、37℃で1時間、インキュベートした後、50μg/mlのカナマイシンを含むLBPTKプレート上に細菌を蒔いた。BL21(DE3)pet24b+SLO野生型タグなし細胞を、25℃で増殖させ、1mMのIPTGで誘導した。クローン発現を、SDS PAGEによって検証した(タグなし、図8Aおよび8B;Hisタグ付き、図9)。
【0208】
(実施例2)
Hisタグ付きタンパク質の精製
E.coliペレットを溶解緩衝液に懸濁し、室温で30〜40分間、混合した。溶解物を、30〜40000×gで、20〜25分間、遠心分離し、上清を、洗浄緩衝液Aで平衡化したカラム(1mlのNi活性化キレート化セファロースファストフロー樹脂を含むPoly−Prep)に添加した。添加された樹脂を、洗浄緩衝液Aで3回、洗浄緩衝液Bで3回、洗浄した。最終2mMのDTTを含むEppendorfチューブにおいて溶出緩衝液でタンパク質を溶出した。全溶出タンパク質を、Bradford試薬で定量し、その後、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した(図8および9)。
【0209】
緩衝液
溶解緩衝液:
10mlのB−PER(商標)(細菌タンパク質抽出試薬、Pierceカタログ78266)
MgCl 0.1mMの最終濃度
DNAsi I(SigmaカタログD−4263) 100ユニット
リゾチーム(SigmaカタログL−7651) 1mg/mlの最終濃度
洗浄緩衝液A:50mMのNaHPO、300mMのNaCl、pH8.0
洗浄緩衝液B:20mMのイミダゾール、50mMのNaHPO、300mMのNaCl、pH8.0
溶出緩衝液:250mMのイミダゾール、50mMのNaHPO、300mMのNaCl、pH8.0 。
【0210】
(実施例3)
タグなしタンパク質の精製
溶解物調製
約80〜110gの細菌培養ペレットを、6錠のCOMPLETE(登録商標)プロテアーゼ阻害剤、10mlの0.2M EDTA、pH7.5(5mMの最終濃度)、10mlの100mg/mlリゾチーム溶液、8mlの10000Kユニット/mlデオキシリボヌクレアーゼI溶液、および1mlの50mM MgCl溶液を追加した200〜280mlのB−PER(商標)試薬(Pierce)に懸濁した。細菌懸濁液を60分間、均一な懸濁液が得られるまで振盪することによって、細菌溶解を達成した。
【0211】
13000rpm(25400×g)での60分間の遠心分離後、上清を、0.22μmのフィルターを用いて濾過し、1.8〜1.9mSの伝導率が得られるまでHOで希釈する。pHを8.0に調整した。タンパク質濃度を、Bradford法によって決定した。
【0212】
陰イオン交換クロマトグラフィー
上記のように処理された溶解物由来の上清を、30mMのTRIS、pH8.0であらかじめ平衡化したHP 50/10 Qセファロースカラム(約200ml)に添加した。フロースルー(flow−through)を収集した。GAS25タンパク質を含む画分をプールし、10mMのNaホスフェート、pH6.8に対して透析した。タンパク質濃度を、Bradford法によって決定した。
緩衝液A:30mMのTRIS、pH8.0
緩衝液B:30mMのTRIS、1MのNaCl、pH8.0
平衡および添加:0%B
勾配:0〜25%Bの5CV−25%Bの2CV
洗浄:100%B 2CV+3CV
流量:20ml/分
画分容積:14ml 。
【0213】
ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー
前に得たプールを、10mMのNaホスフェート、pH6.8であらかじめ平衡化したCHT20カラムに添加した。フロースルーを収集した。
緩衝液A:10mMのNaホスフェート、pH6.8
緩衝液B:500mMのNaホスフェート、pH6.8
洗浄:8CV
洗浄:30%B 6CV
勾配:30〜100%B(10CV)
洗浄:100%B
流量:5ml/分
画分容積:5ml 。
【0214】
画分アリコートを、還元条件および非還元条件下で12%のCriterionゲルに添加した。GAS25タンパク質を含む画分をプールし、タンパク質濃度をBradford法によって決定した。
【0215】
ゲル濾過クロマトグラフィー
収集されたプールを、10ml未満の容積を得るためのAmiconフィルターを用いて濃縮した。濃縮した材料を、少なくとも3〜4カラム容積のPBSで平衡化したHiLoad Superdex 200 26/60に添加した。
緩衝液:PBS
溶出:アイソクラティック
流量:2.5ml/分
画分容積:5ml 。
【0216】
GAS25タンパク質を含む画分をプールし、タンパク質濃度をBradfordによって決定した。タンパク質濃度のさらなる推定を、Abs0.1%(=1 g/l)を1.119とみなすUV測定によって行った。タンパク質純度を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析する(図11)。
【0217】
(実施例4)
溶血アッセイ
定量的溶血アッセイについてのプロトコール
毒素の段階希釈物を、PBS+0.5%BSAを用いて、U字形底の96ウェルプレートに調製した。1mlのヒツジ血液を、PBS中で3回、洗浄し(3000×gでの遠心分離で)、血球を5mlのPBSに懸濁した。等容積の懸濁液を、50μlの各毒素希釈物に加え、37℃で30分間、インキュベートした。水中のTriton(2%)を用いて、100%溶血を得、PBS+0.5%BSAをネガティブコントロールとして用いた。その後、プレートを1,000×gで5分間、遠心分離し、上清を、96ウェル平底プレートへ慎重に移した。吸光度を540nmで読み取った。
【0218】
野生型SLOおよびSLO変異体P427Lを含むE.coli抽出物の比較
SLO P427Lをコードする遺伝子を、SF370 M1ゲノムからPCRを用いて増幅し、Hisタグ付きタンパク質のE.coli BL21DE3における発現を可能にするベクターpET21b+へクローニングした。類似した量の野生型および変異したストレプトリシンOタンパク質を発現するE.coliの可溶性抽出物(図5参照)を用いて、溶血アッセイを行って、その2つの抗原の細胞溶解性を比較した。アッセイの結果は図2に示されており、変異したタンパク質は、毒性が野生型の多くとも100分の1であることを実証している。
【0219】
精製された野生型SLOおよびSLO変異体P427Lの比較
SLO P427L変異体を、Hisタグ付き組換えタンパク質についての精製標準手順に従って精製した(図3)。様々な濃度の精製された野生型(wt)および変異したタンパク質を用いて、溶血アッセイを繰り返し、細胞溶解活性の減少を確認した(図4)。
【0220】
Hisタグ付きおよびタグなしの野生型SLOならびにSLO変異体P427Lを含むE.coli抽出物の溶血活性
本発明者らは、Hisタグなしの野生型組換えSLO(rSLO)(BL21 DE3、Novagen No.71382−pET24)およびHisタグなしのP427L変異体rSLO(BL21 DE3、Novagen No.71382−pET24)で形質転換されたE.coli溶解物の溶血活性を比較した。挿入なしのpET24で形質転換されたE.coli BL21 DE3(Novagen、No.71382)をネガティブコントロールとして用いた。ポジティブコントロールは、水中Triton2%を含む低張溶液であった。ネガティブコントロールは、タンパク質希釈緩衝液(0.5%BSAを含むPBS、pH7.4)であった。
【0221】
溶血については、上清の540nmにおける吸光度(A540nm)を測定することによって、決定した。力価を、最大A540nmの50%を有する希釈度(dilution)として計算した。
【0222】
結果は、表3および4、ならびに図6に示されている。これらのデータは、同じ条件下で、変異体P427Lが、野生型SLOの1000分の1の溶血性であることを示している。
【0223】
【表3】

【0224】
【表4】

野生型SLOと様々なSLO変異体の比較
野生型SLOの溶血活性を、いくつかの異なるSLO変異体の溶血活性と比較した。結果は、図13および下記の表5に示されている。1溶血単位(HU)は、血球を2%Tritonで処理して得られた最大溶解の50%を得るのに必要とされる毒素量として定義される。
【0225】
【表5】

タンパク質純度の違いによって、太字で示された変異体の溶血単位/mgは過剰評価されている;しかしながら、(1)変異体W535Fは、変異体C530Gより溶血性が低いこと;(2)変異体P427Lは、野生型の約1000分の1の溶血性であり、他の2つの変異体W535FおよびC530Gの約6分の1〜25分の1の溶血性であること;ならびに(3)変異体ΔA248は、溶血性が野生型より確実に低いことは明らかである。
【0226】
コレステロールの効果
30℃での細胞増殖、および25℃での1mMのIPTGでの誘導、およびOD600nm約0.4〜0.6の後に得られた、E.coli溶解物または200mg/mlのコレステロールを含むE.coli溶解物のPBS−BSA0.5%における2〜5倍の段階希釈物を、それらの溶血活性についてアッセイした。誘導の3時間後、溶解緩衝液(B−PER溶液(PIERCE)、1mMのMgCl、100Kユニット/mlのデオキシリボヌクレアーゼ(Sigma)、およびリゾチーム(Sigma))で30〜40分間、細菌を溶解することによって得られた等容積のタンパク質調製物で、PBS中2%ヒツジ赤血球溶液の50マイクロリットルを処理した。その後、不溶性画分を遠心分離し(15分間、21000×g、4℃)、上清(E.coli溶解物)を、5mMの最終濃度でDTTを含む新しいEppendorfチューブへ移した。
【0227】
この条件下で、コレステロールは、100倍希釈率が用いられるまで、野生型も変異体形態SLOも阻害しなかった;したがって、変異体誘導溶解への効果はなかった。対照的に、野生型誘導溶解は大幅に低下した。ネガティブコントロールによって誘導された溶解は、コレステロールによって影響を及ぼされず、そのことにより、コレステロール誘導性阻害が特異的であることが示唆される。表6および図7参照。
【0228】
【表6】

(実施例5)
溶血の阻害
プロトコール
(アジュバントを含まない、またはアジュバントとしてミョウバンもしくはMF59(商標)を含む)野生型または変異体SLOタンパク質で免疫化したマウス由来の血清の2倍段階希釈物を、U字形底の96ウェルプレートに、PBS+0.5%BSAを用いて調製した。必要に応じて、PBSで、またはアジュバントのみで免疫化したマウスの血清をネガティブコントロールとして用いた。PBS+0.5%BSA中の50〜100ng/ml(3.5〜7HU)の毒素溶液の等容積を加え、プレートを撹拌(800rpm)しながら室温で20分間、インキュベートした。インキュベーション後、この溶液の50mlを新しい96ウェルプレートに移し、(PBS中で3回洗浄した)等容積のヒツジ赤血球懸濁液を加え、37℃で30分間、インキュベートした。その後、プレートを1,000×gで1分間、遠心分離し、上清を96ウェル平底プレートへ慎重に移し、吸光度を540nmで読み取った。下記の結果において、阻害力価は、Triton誘導溶血を50%低下させた血清希釈度として表される。
【0229】
野生型SLO抗血清によるSLO溶血の阻害
抗野生型SLO抗血清によるSLO溶血の阻害は、図14、図15、図16、および表7〜9に示されている。抗SLO血清力価は、1/7,000〜1/14,000に含まれる(相加平均、1/12,167±2,714)。ネガティブコントロール血清(フロイントアジュバント)力価は、1/375〜1/4,000に含まれる(相加平均、1/1,854±1,384)。
【0230】
【表7】

【0231】
【表8】

【0232】
【表9】

野生型SLO、化学的に解毒された野生型SLO、およびSLO変異体の溶血活性の滴定
野生型SLO、化学的に解毒された野生型SLO、およびSLO変異体(P427L;P427L+W535F)の溶血活性の滴定は、図17〜19および表10に示されている。
【0233】
【表10】

変異体SLOタンパク質に対する抗血清によるSLO溶血の阻害
変異体SLOタンパク質に対する抗血清によるSLO溶血の阻害は、図20〜22および表11〜13に示されている。50ng/ml(3.5HU)の毒素を用いて、SLO変異体W535−P427LについてのSLO溶血活性の50%低下を得るのに必要とされる血清希釈度は、ミョウバンアジュバントを用いて1/17,860であり、MF59(商標)アジュバントを用いて1/7991である。ネガティブコントロール(アジュバントのみ)力価は、1/1,000(ミョウバン)および1/125(MF59(商標))である。
【0234】
【表11】

【0235】
【表12】

【0236】
【表13】

野生型およびSLO変異体W535−P427Lについての、両方ともミョウバンアジュバントを用いてのSLO溶血活性の50%低下を得るのに必要とされる血清希釈度の比較は、図25に示されている。100ng/ml(7HU)の毒素を用いて、SLO変異体W535−P427LについてのSLO溶血活性の50%低下を得るのに必要とされる血清希釈度は、1/8750+/−1500の血清希釈度と比較して、1/12000である。ネガティブコントロール(アジュバントのみ)希釈度は、約1/50である。
【0237】
(実施例6)
インビボ防御実験
精製されたSLO P427Lタンパク質をフロイントアジュバントと共に、40匹のマウスへ腹腔内に投与した。その後、3348 M1 GAS菌株でマウスを鼻腔内で攻撃誘発した。表14は、3つの別々の実験で得られたデータを報告し、100%防御が全ての実験において一貫して達成されたことを示している。
【0238】
【表14】

10〜20匹のマウスの群を20μgの組換えタンパク質で、0日目、21日目、および35日目に免疫化した。ネガティブコントロール群のマウスについては、用いられたGAS組換えタンパク質のバージョンに依存して、GSTのみかまたはE.coli夾雑物かのいずれかで免疫化した。3回目の免疫化から2週間後、血液試料を採取した。2〜3日後、10cfu(50μl)のM1 3348 GAS菌株で免疫化したマウスを鼻腔内で攻撃誘発した。マウス生存を10〜14日間、モニターした。異なる群から得られた免疫血清を、SLO組換えタンパク質全体に関する免疫原性について試験した(ウェスタンブロット分析)。結果は表15および16に示されている。
【0239】
【表15】

【0240】
【表16】

SLO変異体P427L−W535FによるGAS M1菌株での鼻腔内攻撃誘発に対する防御
30匹のマウスを、SLO変異体P427L−W535Fで、アジュバントとしてミョウバンかまたはMF59のいずれかと共に、腹腔内で免疫化し、GAS M1菌株で鼻腔内攻撃誘発した。結果は図26に示されている。SLO変異体P427L−W535Fおよびミョウバンで免疫化したマウスの77パーセントが、(アジュバントのみで免疫化した)ネガティブコントロールマウスの3%と比較して、GAS M1菌株での鼻腔内攻撃誘発に対して防御された。SLO変異体P427L−W535FおよびMF59で免疫化したマウスの90パーセントが、(アジュバントのみで免疫化した)ネガティブコントロールマウスの10%と比較して、GAS M1菌株での鼻腔内攻撃誘発に対して防御された。これらの防御レベルは、野生型SLOでマウスを免疫化することによって得られたものに匹敵する。
【0241】
(実施例7)
プロトコール
SLOの静脈内注射。野生型SLOかまたは変異体SLOのいずれかのPBS中の溶液を、PBS+2mMのDTTの溶液中に希釈し、その後、マウスの尾静脈へ100μlを注射する。マウスを2〜3日間、観察する。野生型SLOの注射は、典型的には、数分以内で死をもたらす。
【0242】
インビボの致死性阻害アッセイ。免疫血清によって媒介される致死性阻害について、10μg/マウスの野生型SLO(PBS、2mMのDTT中100μg/mlの溶液)を、抗SLO血清か、または(アジュバントのみで免疫化したマウスから得られた)コントロール血清かのいずれかと室温で、「転倒して」回転させながら20分間、インキュベートする。インキュベーション後、その試料を、尾静脈への静脈内注射によってマウスに接種する。マウスを2〜3日間、観察する。
【0243】
野生型SLOおよび変異体SLO P427L−W535Fについての結果は表17に示されている。
【0244】
【表17】

インビボの急性毒性を、ポジティブコントロールとして10μg/マウスの用量の野生型SLO、ネガティブコントロールとしてフロイントアジュバントのみの注射を用いて評価した。10μg/マウスの野生型SLOを、野生型SLO抗血清かまたはコントロール血清のいずれかとインキュベートし、上記のようにマウスに接種した。結果は表18に示されている。
【0245】
【表18】

上記のように行われたもう一つの実験セットの結果は、表19および20に示されている。インビボの急性毒性を、5μg/マウスかまたは10μg/マウスのいずれかの野生型SLOを用いて評価した。特に、10μg/マウスの野生型SLOについては、GAS25 P427L−W535FかまたはPBSのみ(血清なし)かのいずれかで免疫化したマウス由来の血清とあらかじめインキュベートした。加えて、5μg/マウスの野生型SLOについては、GAS25 P427L−W535Fで免疫化したマウス由来の血清か、またはネガティブコントロール血清としてPBSとアジュバント(ミョウバン)で免疫化したマウス由来の血清のいずれかとあらかじめインキュベートした。
【0246】
結果は野生型SLOの致死用量は、抗SLO P427L−W535F血清によって中和されるが、同じ希釈度でのネガティブコントロール血清によっては中和されないことを示している。
【0247】
【表19】

【0248】
【表20】

(実施例8)
SLO P427L−W535Fでの免疫化は、野生型SLOの静脈内注射に対してマウスを防御する
5週齡のマウスを、野生型SLOかまたはSLO変異体P427L−W535Fかのいずれかで、アジュバントとしてミョウバンを用いて(2mg/ml水酸化アルミニウム中20μgのタンパク質)、腹腔内に3回(0日目、21日目、および35日目)免疫化した。アジュバントのみで免疫化したマウスをネガティブコントロールとして用いた。55日目、マウスに、PBS、2mMのDTT中の野生型SLOの様々な濃度の溶液を静脈内注射し、少なくとも72時間、モニターした。結果は表21に示されている。
【0249】
【表21】

5μg/マウスの野生型SLOは、アジュバントのみで免疫化したマウスに致死的である;これらのマウスは、SLO注射から数分内に死亡した。しかしながら、20μg/マウスの同じ野生型SLO調製物においてさえ、野生型SLOまたはP427L−W535F SLO変異体のいずれで免疫化したマウスも死亡しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸P427、W535、C530、A248、およびD482からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸変化を含む精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質であって、該アミノ酸位置が配列番号1に従って番号付けられ、該変異体SLOタンパク質の溶血活性が野生型SLOに対して少なくとも50%低下している、精製された変異体SLOタンパク質。
【請求項2】
配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、および配列番号27からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の精製された変異体SLOタンパク質。
【請求項3】
担体タンパク質にカップリングされている、請求項1に記載の精製された変異体SLOタンパク質。
【請求項4】
前記担体タンパク質が、細菌毒素、細菌トキソイド、N.meningitidis外膜タンパク質、熱ショックタンパク質、百日咳タンパク質、H.influenzaeタンパク質D、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、成長因子、C.difficile毒素A、C.difficile毒素B、および鉄取り込みタンパク質からなる群より選択される、請求項3に記載の精製された変異体SLOタンパク質。
【請求項5】
請求項1に記載の変異体SLOタンパク質をコードする核酸分子。
【請求項6】
前記変異体SLOタンパク質が配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、および配列番号27からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号57、配列番号58、および配列番号59に示されたコード配列の群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項8】
(a)以下:
(i)アミノ酸P427、W535、C530、A248、およびD482からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸変化を含む精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質であって、該アミノ酸位置が配列番号1に従って番号付けられ、該変異体SLOタンパク質の溶血活性が野生型SLOに対して少なくとも50%低下している、精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質、ならびに
(ii)該精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質をコードする核酸分子
から選択される活性剤、ならびに
(b)薬学的に許容可能な担体
を含むワクチン組成物。
【請求項9】
(iii)GAS抗原、および
(iv)GAS抗原をコードする核酸分子
からなる群より選択される1つまたは複数の活性剤をさらに含む、請求項8に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
小児用ワクチンで有用な活性剤をさらに含む、請求項8に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
前記活性剤が
(a)N.meningitidis、S.pneumoniae、Bordetella pertussis、Moraxella catarrhalis、Clostridium tetani、Chorinebacterim diphteriae、RSウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、およびロタウイルスのポリペプチド抗原からなる群より選択される病原体のポリペプチド抗原、ならびに
(b)該ポリペプチド抗原をコードする核酸分子
からなる群より選択される、請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
高齢者または免疫無防備状態の個体のためのワクチンで有用な第2の活性剤をさらに含む、請求項8に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
前記第2の活性剤が
(a)Enterococcus faecalis、Staphylococcus aureaus、Staphylococcus epidermis、Pseudomonas aeruginosa、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、インフルエンザウイルス、およびパラインフルエンザウイルスのポリペプチド抗原からなる群より選択される病原体のポリペプチド抗原、ならびに
(b)該ポリペプチド抗原をコードする核酸分子
からなる群より選択される、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
Streptococcus pyogenesによる感染を治療または予防する方法であって、
(a)以下:
(i)アミノ酸P427、W535、C530、A248、およびD482からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸変化を含む精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質であって、該アミノ酸位置が配列番号1に従って番号付けられ、該変異体SLOタンパク質の溶血活性が野生型SLOに対して少なくとも50%低下している、精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質、および
(ii)該精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質をコードする核酸分子
から選択される活性剤、ならびに
(b)薬学的に許容可能な担体
を含むワクチン組成物を、それを必要としている個体に有効量投与する工程を含む、方法。
【請求項15】
前記ワクチン組成物が、
(iii)GAS抗原、および
(iv)GAS抗原をコードする核酸分子
からなる群より選択される1つまたは複数の活性剤をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)請求項8から13のいずれか一項に記載のワクチン組成物を含む容器、および
(b)該組成物を用いてStreptococcus pyogenesによる感染を治療または予防するための使用説明書
を含むキット。
【請求項17】
Streptococcus pyogenesによる感染の予防または治療のためのワクチンを作製する方法であって、
(a)以下:
(i)アミノ酸P427、W535、C530、A248、およびD482からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸変化を含む精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質であって、該アミノ酸位置が配列番号1に従って番号付けられ、該変異体SLOタンパク質の溶血活性が野生型SLOに対して少なくとも50%低下している、精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質、ならびに
(ii)該精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質をコードする核酸分子
から選択される活性剤と、
(b)薬学的に許容可能な担体と、
を組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項18】
前記活性剤が前記精製された変異体SLOタンパク質であり、該変異体SLOタンパク質を:
(a)該変異体SLOタンパク質をコードする発現構築物を含む宿主細胞を培養する工程、および
(b)該変異体SLOタンパク質を回収する工程
を含む方法によって作製する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(iii)GAS抗原、および
(iv)GAS抗原をコードする核酸分子
からなる群より選択される1つまたは複数の活性剤を薬学的に許容可能な担体と組み合わせる工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
Streptococcus pyogenesによる感染を治療または予防するための薬物の製造における活性剤の使用であって、該活性剤が、
(i)アミノ酸P427、W535、C530、A248、およびD482からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸変化を含む精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質であって、該アミノ酸位置が配列番号1に従って番号付けられ、該変異体SLOタンパク質の溶血活性が野生型SLOに対して少なくとも50%低下している、精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質、ならびに
(ii)該精製された変異体ストレプトリシンO(SLO)タンパク質をコードする核酸分子
からなる群より選択される、使用。
【請求項21】
ワクチンとして使用する、請求項1から4のいずれか一項に記載の精製された変異体SLOタンパク質、または請求項5から7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項22】
治療で使用する、請求項1から4のいずれか一項に記載の精製された変異体SLOタンパク質、請求項5から7のいずれか一項に記載の核酸分子、または請求項8から13のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
Streptococcus pyogenesによる感染を治療または予防するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の精製された変異体SLOタンパク質、請求項5から7のいずれか一項に記載の核酸分子、または請求項8から13のいずれか一項に記載のワクチン組成物。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図11A】
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【図11B】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図23−3】
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【図23−4】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2011−507500(P2011−507500A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538946(P2010−538946)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003725
【国際公開番号】WO2009/081274
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】