説明

ストレージ装置

【課題】SATA規格やSAS規格に適合させることができるストレージ装置を提供すること。
【解決手段】多層配線基板に、記憶装置を含む内部回路と、外部装置と接続するための複数のコネクタ端子と、前記内部回路の配線と前記複数のコネクタ端子とを接続する複数のコネクタパッドとを形成し、前記複数のコネクタパッドのうちの信号用のコネクタパッドを表層の信号導体パターン導体および内層グランド導体により成るマイクロストリップ線路により構成したストレージ装置は、前記マイクロストリップ線路が、表層の信号導体パターン導体と異なる複数の層の内層グランド導体とによって形成されるように、対象となる複数の内層グランド導体をパターン形成することで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SATA(Serial Advanced Technology Attachment)規格やSAS(Serial Attached SCSI)規格では、高速な差動信号であるSATA信号やSAS信号の正確な信号伝送を確保するために、伝送線路が遵守すべきインピーダンス等が規定されている(例えば特許文献1等)。
【0003】
多層配線基板に記憶装置を含む内部回路を搭載するストレージ装置では、SATA信号やSAS信号によるストレージデータの授受を可能にするため、ケーブルコネクタが接続されるコネクタ端子と記憶装置を含む内部回路との間を接続するコネクタパッドを設けている。
【0004】
ところが、従来では、このコネクタパッド部分において、インピーダンスの変動が大きく、SATA規格やSAS規格に適合させることが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−257567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、SATA規格やSAS規格に適合させることができるストレージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様によれば、多層配線基板に、記憶装置を含む内部回路と、外部装置と接続するための複数のコネクタ端子と、前記内部回路の配線と前記複数のコネクタ端子とを接続する複数のコネクタパッドとを形成し、前記複数のコネクタパッドのうちの信号用のコネクタパッドを表層の信号導体パターン導体および内層グランド導体により成るマイクロストリップ線路により構成したストレージ装置において、前記マイクロストリップ線路が、表層の信号導体パターン導体と異なる複数の層の内層グランド導体とによって形成されるように、対象となる複数の内層グランド導体をパターン形成することで構成されていることを特徴とするストレージ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、SATA規格やSAS規格に適合させることができるストレージ装置が実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係るストレージ装置の要部外観構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示すコネクタパッドを構成する差動マイクロストリップ線路のパターン設計例(その1)であり、(1)は平面図、(2)は斜視図である。
【図3】図3は、図1に示すコネクタパッドを構成する差動マイクロストリップ線路のパターン設計例(その2)であり、(1)は平面図、(2)は斜視図である。
【図4】図4は、図1に示すコネクタパッドを構成する差動マイクロストリップ線路のパターン設計例(その3)であり、(1)は平面図、(2)は斜視図である。
【図5】図5は、図1に示すコネクタパッドを構成する差動マイクロストリップ線路のパターン設計例(その4)であり、(1)は平面図、(2)は斜視図である。
【図6】図6は、図2〜図5に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路でのTDR測定による差動インピーダンスの変化を示す特性図である。
【図7】図7は、図2〜図5に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路での差動リターンロスの変化を示す特性図である。
【図8】図8は、SATA規格での差動リターンロスの規格値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係るストレージ装置を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係るストレージ装置の要部外観構成を示す平面図である。図1において、ストレージ装置(SSD:Solid State Drive)1は、多層配線基板2に、複数の不揮発性の記憶装置3が搭載され、各記憶装置等に対する内部回路、複数のコネクタ端子4、複数のコネクタパッド5が形成されている。記憶装置3としては、例えば、NANDフラッシュメモリが採用される。
【0012】
複数のコネクタ端子4には、外部装置のコネクタが接続される。複数のコネクタ端子4は、複数のコネクタパッド5と図示しない複数の接続ばね片によって接続されており、コネクタ端子4と接続バネ片とは半田によって固定され、コネクタパッド5と接続バネ片とは、半田によって固定されている。複数のコネクタパッド5は、記憶装置3や基板上の内部回路と表層配線、内層配線を介して接続される。複数のコネクタパッド5のうちの信号用コネクタパッドは、差動マイクロストリップ線路で構成されている。
【0013】
ここで、SATA規格やSAS規格では、高速な差動信号であるSATA信号やSAS信号の正確な信号伝送を確保するために、伝送線路の差動インピーダンスが規定されている。また、SATA規格では、伝送線路にインピーダンスが大きく変動する部分があると反射が大きくなるので、それに対する規格として差動リターンロスが規定されている(図8参照)。
【0014】
伝送線路全体の差動インピーダンスは、コネクタ端子4までの線路(ケーブル等)でのインピーダンスと、コネクタ端子4からコネクタパッド5、記憶装置3等に至る経路でのインピーダンスとに分けられる。そのうち、コネクタ端子4から記憶装置3等に至る経路では、差動マイクロストリップ線路で構成されるコネクタパッド5の部分において、差動インピーダンスの変動が大きく、これが差動リターンロスの規格値に対してマージンが無くなったり、規格値を超過したりする原因になっている。
【0015】
マイクロストリップ線路のインピーダンスは、導体線路とグランド(GND)導体との間に介在する誘電体層の厚さに依存する。この点は、差動マイクロストリップ線路においても同様である。そこで、多層配線基板2におけるコネクタパッド5を構成する差動マイクロストリップ線路では、表層の信号導体パターン導体に対するGND層を何層目のGND層にするかによって差動インピーダンスを調整している。
【0016】
しかし、コネクタパッド5を構成する差動マイクロストリップ線路は、表層の信号導体パターン導体に半田付けされる部分が適当なインダクタンス成分を持つように湾曲した形状をしている関係で、対象GND層の選定が困難であり、コネクタパッド5の部分では差動インピーダンスが変動する傾向にある。
【0017】
そこで、本実施の形態では、例えば、図2〜図5に示すように、コネクタパッド5を構成する差動マイクロストリップ線路での対象GND層を種々に変更して、差動インピーダンスの変動を小さくする対象GND層を選定するようにした。なお、図2〜図5は、図1に示すコネクタパッド部分を構成する差動マイクロストリップ線路のパターン設計例(その1〜その4)である。それぞれ、平面図(a)と斜視図(b)とを示してある。各平面図(a)において、上方がコネクタ端子4側であり、下方が記憶装置3等側である。各斜視図(b)では、誘電体層は示されていないが、コネクタ端子4側を左斜め下にし、記憶装置3等側を右斜め上にして内層の各GND層が示されている。
【0018】
図2〜図5では、理解を容易にするため、コネクタパッド5を構成する差動マイクロストリップ線路において、表層に形成される対をなす信号導体パターン導体10a,10bを取り上げ、対象GND層を選定する場合が示されている。なお、両側にGND導体パターン導体11a,11bも示されているが、ここでは重要ではない。
【0019】
信号導体パターン導体10aは、記憶装置3等側の端部から直接内部回路への導体線路12が引き出されている。また、信号導体パターン導体10bは、記憶装置3等側の端部に引出部13が突き出して設けられ、この引出部13から導体線路12が引き出されている。信号導体パターン導体10a,10bは、図2〜図5では、説明の便宜から長方形状で示してあるが、前記したように、記憶装置3や基板上の内部回路の接続線が半田付けされるいわゆるランドを含み任意の形状をしている。
【0020】
図2に示す差動マイクロストリップ線路は、表層の信号導体パターン導体10a,10bの対象GND層が、第2層のGND層GND2の全体で構成されている。図3に示す差動マイクロストリップ線路は、表層の信号導体パターン導体10a,10bのコネクタ端子4側から引出部13を含めた全体に対するGND層が、第4層のGND層GND4となり、それ以降の記憶装置3等側に対するGND層が第2層のGND層GND2となるように構成されている。
【0021】
図4に示す差動マイクロストリップ線路は、信号導体パターン導体10a,10bの信号伝搬方向である長手方向をほぼ真ん中で分け、そのうち、コネクタ端子4側の半分に対するGND層が、第4層のGND層GND4となり、記憶装置3等側の半分以降の基板側に対するGND層が、第2層のGND層GND2となるように構成されている。
【0022】
図5に示す差動マイクロストリップ線路は、引出部13を含まない信号導体パターン導体10a,10bの全体に対するGND層が、第4層のGND層GND4となり、引出部13以降の基板側に対するGND層が、第2層のGND層GND2となるように構成されている。
【0023】
次に、図6〜図8を参照して、コネクタパッド5として形成した図2〜図5に示す差動マイクロストリップ線路の評価結果について説明する。なお、図6は、図2〜図5に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路でのTDR測定による差動インピーダンスの変化を示す特性図である。図7は、図2〜図5に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路での差動リターンロスの変化を示す特性図である。図8は、SATA規格での差動リターンロスの規格値を示す図である。
【0024】
図6において、縦軸は差動インピーダンス[Ω]であり、50Ωから150Ωまで目盛られている。横軸は、TDR(Time Domain Reflectometory:時間領域反射測定法)により測定した、伝送線路にパルスを印加してから反射して戻ってくるまでの時間[ns]であり、ほぼ距離に比例している。横軸の左方がコネクタ端子4側、右方が基板側である。特性(1)は、図2に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路での差動インピーダンス特性である。特性(2)は、図3に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路での差動インピーダンス特性である。特性(3)は、図4に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路での差動インピーダンス特性である。特性(4)は、図5に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路での差動インピーダンス特性である。
【0025】
特性(1)〜特性(4)は、全て同様に同じ箇所で大きく変動している。この変動箇所がコネクタパッド5の部分に対応している。その変動箇所から左側(コネクタ端子4側)と右側(基板側)とでは、差動インピーダンスはほぼ100Ωで安定した特性を示している。変動箇所においては、コネクタ端子4側では100Ωから減少してから100Ωに向かって上昇し、基板側では100Ωを超えて上昇してから100Ωに向かって減少する変化を示している。
【0026】
ところで、図6に示すように、特性(3)(4)での変化幅は、特性(1)(2)での変化幅よりも小さくなっている。相違点は、特性(1)(2)では、変化幅がほぼ同じ大きさで上下に変化している。これに対して、特性(3)(4)では、共に、コネクタ端子4側では100Ωからの降下量が減り、基板側では100Ωからの上昇量が減っている点である。特性(3)(4)の間では、特性(3)の変化幅は、特性(4)よりも若干小さくなっている。
【0027】
この点について検討する。図2や図3に例示する差動マイクロストリップ線路の構造では、対象GND層に、信号導体パターン導体10a,10bとそれから引き出される導体線路12とを全体として同じGND層を選択しているので、コネクタパッド5の部分での差動インピーダンスを全体として上げる、下げるという設計になっている。図2や図3に例示する線路構造では、差動インピーダンスの変動量を抑えることができないと言える。
【0028】
これに対して、図4や図5に例示する差動マイクロストリップ線路の構造では、引出部13を含まない信号導体パターン導体10a,10bを信号伝搬方向にコネクタ端子4側と記憶装置3側との2つに分け、コネクタ端子4側の半分では表層から遠い方のGND層を対象とし、記憶装置3側の半分を含む以降基板側では表層に近い方のGND層を対象とする(図4)。或いは、引出部13を含まない信号導体パターン導体10a,10bの全体が対応するコネクタ端子4側では表層から遠い方のGND層を対象とし、引出部13を含めた記憶装置3側以降の基板側では表層に近い方のGND層を対象とする(図5)というように、対象GND層をコネクタ端子4側と基板側とで違えるようにしたので、コネクタパッド5の部分での差動インピーダンスの変動量を抑えることができていると言える。特性(3)(4)の比較では、図4に示す構成の方が優れている。
【0029】
次に、差動リターンロスについて説明する。図8に示すように、差動リターンロスの最小値は、「150−300MHz」「300−600MHz」「600−1200MHz」「1200−2400MHz」「2400−3000MHz」「3000−5000MHz」の周波数範囲毎に定められている。
【0030】
図7において、縦軸は差動リターンロス[dB]であり、0〜−40dBまで目盛られている。横軸は周波数[MHz]であり、0〜10000MHzまで目盛られている。周波数範囲15は、「1200−2400MHz」である。この周波数範囲15での差動リターンロス特性は、コネクタパッド5の部分で生ずる特性である。
【0031】
図7において、特性(6)は、図2に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路での差動リターンロス特性である。特性(7)は、図3に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路での差動リターンロス特性である。特性(8)は、図4に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路での差動リターンロス特性である。特性(9)は、図5に示す差動マイクロストリップ線路を含む伝送線路での差動リターンロス特性である。
【0032】
「1200−2400MHz」の周波数範囲15において、図3に例示する差動マイクロストリップ線路の構造での特性(7)は、最小値「8dB」に対するマージンが少なく一番厳しい特性になっている。これに対して、図4に例示する差動マイクロストリップ線路の構造での特性(8)は、特性(7)よりも約2.0dB改善されていることが解る。図5に例示する差動マイクロストリップ線路の構造での特性(9)でも、程度は小さいが同じく改善されている。
【0033】
以上のように、コネクタパッド部分に形成する差動マイクロストリップ線路において、表層に形成されるいわゆるランドを含む信号導体パターン導体を信号伝搬方向にコネクタ端子4側と記憶装置3側との2つに分け、GND対象層に、コネクタ端子4側の半分では表層から遠い方のGND層を選択し、記憶装置3側の半分以降基板側では表層に近い方のGND層を選択すれば(図4)、コネクタパッド部分での差動インピーダンスの変動量を抑制することができ、その結果、差動リターンロスの規格値に対するマージンを増やすことができる。
【0034】
したがって、本実施の形態によれば、SATA規格やSAS規格に適合させることができるストレージ装置が実現できる。なお、本実施の形態では、差動マイクロストリップ線路の差動インピーダンスの変動を抑制する場合について説明したが、本発明は、いわゆるシングルのマイクロストリップ線路のインピーダンス変動を抑制する場合にも同様に適用できるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 ストレージ装置(SSD)、2 多層配線基板、3 記憶装置、4 コネクタ端子、5 コネクタパッド、10a,10b 信号導体パターン導体、GND2 第2層のグランド、GND4 第4層のグランド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層配線基板に、記憶装置を含む内部回路と、外部装置と接続するための複数のコネクタ端子と、前記内部回路の配線と前記複数のコネクタ端子とを接続する複数のコネクタパッドとを形成し、前記複数のコネクタパッドのうちの信号用のコネクタパッドを表層の信号導体パターン導体および内層グランド導体により成るマイクロストリップ線路により構成したストレージ装置において、
前記マイクロストリップ線路が、表層の信号導体パターン導体と異なる複数の層の内層グランド導体とによって形成されるように、対象となる複数の内層グランド導体をパターン形成することで構成されている
ことを特徴とするストレージ装置。
【請求項2】
前記マイクロストリップ線路は、前記コネクタ端子に近い部分ほど表層から遠い層の内層グランド導体が、表層の信号導体パターン導体の対象内層グランド導体となるように、複数の内層グランド導体をパターン形成することで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のストレージ装置。
【請求項3】
前記マイクロストリップ線路は、前記表層の信号導体パターン導体の対象内層グランド導体が異なる2つの層の内層グランド導体によって形成され、前記表層の信号導体パターン導体の信号伝搬方向のほぼ真ん中で、前記異なる2つの層の内層グランド導体の切り替えが行われるように、2層の内層グランド導体をパターン形成することで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のストレージ装置。
【請求項4】
前記マイクロストリップ線路は、差動マイクロストリップ線路であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のストレージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−34317(P2011−34317A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179584(P2009−179584)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】