ストロボ用分光アダプタ
【課題】拡散光であるストロボ光の一部を分光して異なる方向にスポット光を照射することができるストロボ用分光アダプタを提供する。
【解決手段】カメラCに着脱自在に取り付けられる本体部S1に発光ヘッド部S2が回動自在に支持されたストロボSに装着されるものであり、ストロボSの発光ヘッド部S2に着脱自在に嵌着される、環状の樹脂成形品である装着部10と、ストロボSの発光ヘッド部S2における発光面側に張り出すように傾斜させた状態で、装着部10に支持部材30を介して、支持された凹面鏡20とから構成されている。
【解決手段】カメラCに着脱自在に取り付けられる本体部S1に発光ヘッド部S2が回動自在に支持されたストロボSに装着されるものであり、ストロボSの発光ヘッド部S2に着脱自在に嵌着される、環状の樹脂成形品である装着部10と、ストロボSの発光ヘッド部S2における発光面側に張り出すように傾斜させた状態で、装着部10に支持部材30を介して、支持された凹面鏡20とから構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カメラに着脱自在に取り付けられるストロボに装着されるストロボ用分光アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自然な感じを出すために、被写体に直接ストロボ光を照射するのではなく、ストロボ光を天井に向けて照射するバウンス撮影が行われているが、正面からの照射光が全くないバウンス光だけではトップライトになってしまうので、被写体が人物や動物の場合は、顔が暗くなったり、目に輝きがなくなってしまうといった問題がある。
【0003】
従って、こういった問題を解決するために、バウンス撮影を行う場合は、図11に示すように、天井に向かって照射されるストロボの照射光の一部を分光して被写体に照射する反射板であるバウンサ51をストロボ50に内蔵したり、別途ストロボ50に装着したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−087056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したようなバウンサ51を使用すると、拡散光であるストロボ光の一部を分光して異なる方向に照射することはできるが、バウンサ51で反射された光は拡散光であるため、例えば、被写体に光を均一に照射するのではなく、被写体に拡散光を照射しながら、被写体の後ろの壁面等や被写体の手前の床面等にスポット光を照射することによって、特殊効果を狙ったイメージ写真を取りたい場合には、こういったバウンサは役にたたず、拡散光を照射するストロボ以外に、スポット光を照射可能な光源を別途用意するしかなかった。
【0006】
そこで、この発明の課題は、拡散光であるストロボ光の一部を分光して異なる方向にスポット光を照射することができるストロボ用分光アダプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、カメラに着脱自在に取り付けられる本体部に発光ヘッド部が回動自在に支持されたストロボに装着されるストロボ用分光アダプタであって、前記ストロボの前記発光ヘッド部に着脱自在に装着される装着部と、前記ストロボの前記発光ヘッド部における発光面側に張り出すように傾斜させた状態で、前記装着部に支持された凹面鏡とを備えていることを特徴とするストロボ用分光アダプタを提供するものである。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明のストロボ用分光アダプタにおいて、前記凹面鏡は、前記発光ヘッドの発光面に対する傾斜角度が50〜80度に設定されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明のストロボ用分光アダプタにおいて、前記凹面鏡は、前記発光ヘッドの発光面に対する傾斜角度を変更可能に前記装着部に支持されている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、請求項1に係る発明のストロボ用分光アダプタは、ストロボの発光ヘッド部に着脱自在に装着される装着部と、ストロボの発光ヘッド部における発光面側に張り出すように傾斜させた状態で、装着部に支持された凹面鏡とを備えているので、ストロボの発光ヘッドに装着すると、拡散光であるストロボ光の一部が、凹面鏡によって反射され、スポット光として異なる方向に照射される。
【0011】
従って、例えば、被写体に光を均一に照射するのではなく、被写体に拡散光を照射しながら、被写体の後ろの壁面等にスポット光を照射したい場合は、ストロボ光を天井に向けて照射するバウンス撮影行うことで、トップライトとして被写体に拡散光を照射しながら、凹面鏡によって反射されたストロボ光の一部を、スポット光として被写体の後ろの壁等に照射することができる。
【0012】
また、被写体に拡散光を照射しながら、被写体の手前の床等にスポット光を照射したい場合は、被写体に直接ストロボ光を照射することで、キャッチライトとして被写体に拡散光を照射しながら、凹面鏡によって反射されたストロボ光の一部を、スポット光として被写体の手前の床面等に照射することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明のストロボ用分光アダプタは、ストロボの発光ヘッドの発光面に対する凹面鏡の傾斜角度が50〜80度に設定されているので、最も効果的にスポット光を分光することができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明のストロボ用分光アダプタは、ストロボの発光ヘッドの発光面に対する凹面鏡の傾斜角度を変更することができるので、拡散光に対するスポット光の分校比率をある程度の自由度で任意に設定することができ、仕上りのバリエーションが増えるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係るストロボ用分光アダプタの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】(a)は同上のストロボ用分光アダプタを示す平面図、(b)は同上のストロボ用分光アダプタを示す正面図、(c)は同上のストロボ用分光アダプタを示す背面図、(d)は同上のストロボ用分光アダプタを示す底面図、(e)は同上のストロボ用分光アダプタを示す右側面図である。
【図3】(a)はカメラに取り付けたストロボに同上のストロボ用分光アダプタを装着する前の状態を示す側面図、(b)は装着した状態を示す側面図である。
【図4】同上のストロボ用分光アダプタを使用したときのストロボ光の照射状態を示す図である。
【図5】同上のストロボ用分光アダプタを使用したときのストロボ光の照射状態を示す図である。
【図6】(a)は他の実施形態であるストロボ用分光アダプタを示す正面図、(b)は同上のストロボ用分光アダプタを示す右側面図である。
【図7】図6(a)のX−X線に沿った部分断面図である。
【図8】同上のストロボ用分光アダプタにおける凹面鏡の位置決め機構を示す部分拡大側面図である。
【図9】(a)は同上のストロボ用分光アダプタにおける凹面鏡を最も前傾させた位置に位置決めした状態を示す部分側面図、(b)は同上のストロボ用分光アダプタにおける凹面鏡を最も後傾させた位置に位置決めした状態を示す部分側面図である。
【図10】(a)は同上のストロボ用分光アダプタにおける凹面鏡を背面側に折り畳んだ状態を示す右側面図、(b)は同上のストロボ用分光アダプタにおける凹面鏡を背面側に折り畳んだ状態を示す背面図である。
【図11】従来のバウンサを使用したときのストロボ光の照射状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1〜図3に示すように、このストロボ用分光アダプタ1は、カメラCに着脱自在に取り付けられる本体部S1に発光ヘッド部S2が回動自在に支持されたストロボSに装着されるものであり、ストロボSの発光ヘッド部S2に着脱自在に嵌着される、環状の樹脂成形品である装着部10と、ストロボSの発光ヘッド部S2における発光面側に張り出すように傾斜させた状態で、装着部10に支持部材30を介して、支持された凹面鏡20とから構成されている。
【0017】
前記装着部10は、上端側の開口面積が下端側の開口面積よりも僅かに小さくなるように形成されており、図3(a)、(b)に示すように、ストロボSの発光ヘッド部S2に外嵌めしたときに、発光ヘッド部S2の発光面が装着部10の上端面と面一または僅かに突出するような状態で、容易に脱落しないように、ストロボSの機種に応じて、その内寸が設定されている。
【0018】
前記支持部30は、装着部10の背面側に連設されており、凹面鏡20の下端部が支持部30に埋設されることによって、凹面鏡20が所定の傾斜角度で支持部30に支持されている。
【0019】
前記凹面鏡20は、直径が79mm、曲率半径が80mmで、装着部10の幅と略同一直径の正面円形状であり、図2(e)に示すように、その外周縁を通る平面と装着部10の上端面とのなす角度θが50〜80度となるように、その傾斜角度が設定されている。
【0020】
以上のように構成されたストロボ用分光アダプタ1を、カメラCに取り付けたストロボSの発光ヘッド部S2に装着すると、図3(b)に示すように、その凹面鏡20がストロボSの発光ヘッド部S2における発光面側に張り出すような状態となり、拡散光であるストロボ光の一部が、凹面鏡20によって反射され、スポット光として異なる方向に照射されることになる。
【0021】
従って、例えば、図4に示すように、ストロボSの発光ヘッド部S2における発光面を真上に向けた状態でバウンス撮影を行うと、拡散光であるストロボ光が天井面に照射されて、拡散光dlが上方から被写体に照射されると共に、拡散光であるストロボ光の一部が、凹面鏡20によって反射され、スポット光slとして被写体の後ろの壁面等に照射されることになり、また、図5に示すように、ストロボSの発光ヘッド部S2における発光面を斜め真上に向けた状態でバウンス撮影を行うと、拡散光であるストロボ光が天井面に照射されて、拡散光dlが上方から被写体に照射されると共に、拡散光であるストロボ光の一部が、凹面鏡20によって反射され、スポット光slとして被写体の一部及び床面に照射されることになるので、反射光が拡散光となるバウンサを用いた従来のバウンス撮影のように被写体に光を均一に照射する場合とは異なり、特殊効果を狙ったイメージ写真を撮影することができる。なお、図4及び図5では、ストロボ用分光アダプタ1を使用して天井バウンス撮影を行う場合について説明したが、ストロボを横に向けることで、ストロボ光を横壁面に照射する横壁バウンス撮影を行う場合にも、このストロボ用分光アダプタ1を使用することで、天井バウンス撮影と同様に、特殊効果を狙ったイメージ写真を撮影することができることは言うまでもない。
【0022】
また、ストロボSの発光ヘッド部S2における発光面を正面の被写体に向けた状態で通常の撮影を行うと、拡散光であるストロボ光が被写体に直接照射されると共に、拡散光であるストロボ光の一部が、凹面鏡20によって反射され、スポット光として被写体の手前で床面に照射されることになるので、上述したバウンス撮影の場合とは違ったイメージ写真を撮影することができる。
【0023】
また、マクロ撮影(接写)を行う場合は、被写体がカメラに近いためにストロボ光を被写体に直接照射することができないので、バウンサを使用することで、バウンサからの反射光(拡散光)を被写体に照射することがあるが、こういったバウンサに替えて、このストロボ用分光アダプタ1を使用すると、凹面鏡20によって反射されたスポット光を被写体に照射することができるので、従来のバウンサを使用する場合に比べて、被写体に対する照射光量を大きくすることができるという効果がある。
【0024】
図6〜図10は、他の実施形態を示している。上述したストロボ用分光アダプタ1は、凹面鏡20の傾斜角度が50〜80度の範囲内の所定角度に固定されていたが、このストロボ用分光アダプタ2は、凹面鏡20の傾斜角度を所定の範囲内で段階的に変更することができるようになっている。
【0025】
同図に示すように、このストロボ用分光アダプタ2も、基本的には、上述したストロボ用分光アダプタ1と同様の構成を有しているので、同一構成要素には同一符号付して、その説明を省略し、異なる構成要素である支持部材30Aについて詳細に説明する。
【0026】
前記支持部材30Aは、装着部10の背面側の両側部に連設された左右一対の支持ベース31と、この支持ベース31の上端面に固定された、凹面鏡20を回動可能に支持する支持ユニット32とを備えており、支持ユニット32は、凹面鏡20の傾斜角度を所定の範囲内で段階的に変更することができる位置決め機能を有している。
【0027】
前記支持ユニット32は、凹面鏡20下端部を支持する円柱状の支持部33と、両端部が支持部33の両端部からそれぞれ突出するように、支持部33の中心に埋設された回動軸34と、支持部33の両端部からそれぞれ突出した回動軸34を回転可能に支持する左右の支持ブロック35、36と、回動軸34の一方の端部に固定された、外周面に複数の係止爪37aが適宜連設された円盤37とを備えており、左右の支持ブロック35、36は、左右一対の支持ベース31、31にそれぞれ固定されている。
【0028】
一方の支持ブロック35は、回動軸34の一方の端部に固定された円盤37を収容する円形凹部35aが形成された本体部35Aと、この本体部35Aの円形凹部35aを閉塞する蓋板35Bとを備えており、円盤37が円形凹部35a内で回転することができるようになっている。
【0029】
前記支持ブロック35の本体部35Aには、円形凹部35aの内周面に孔35bが形成されており、この孔35bには、円盤37の係止爪37a間に係合する係止ピン38と、この係止ピン38を円盤37の中心側に付勢するコイルばね39とが収容されている。従って、凹面鏡20を、その回動方向に動かそうとすると、円盤37の係止爪37aが係止ピン38を押圧し、コイルばね39が圧縮されて係止ピン38が後退するので、係止爪37aに対する係止ピン38の係合が解除され、凹面鏡20を回動させることができるが、その回動を止めると、コイルばね39によって円盤37の中心側に付勢されている係止ピン38が係止爪37a間に係合するので、凹面鏡20がその姿勢で位置決めされる。
【0030】
ただし、係止爪37aは、円盤37の全周にわたって一定間隔で形成されているわけではなく、図9(a)に示すように、傾斜角度(凹面鏡20の外周縁を通る平面と装着部10の上端面とのなす角度)θ1が20度から、同図(b)に示すように、傾斜角度θ2が110度までの間に相当する領域に一定間隔で形成されており、この間で段階的に位置決めできるようになっていると共に、図10(a)、(b)に示すように、凹面鏡20を装着部10の背面側に完全に倒した収納位置で位置決めすることができるように、対応する位置に一対の係止爪37a、37aが形成されている。従って、凹面鏡20の傾斜角度θ2から収納位置までの間は、凹面鏡20を位置決めすることができないようになっている。
【0031】
以上のように構成されたストロボ用分光アダプタ2は、ストロボSの発光面に対する凹面鏡20の傾斜角度を所定の範囲内で段階的に変更することができるので、撮影者が、拡散光に対するスポット光の分校比率をある程度の自由度で任意に設定することができ、仕上りのバリエーションが増えるという効果がある。
【0032】
また、このストロボ用分光アダプタ2は、凹面鏡20を装着部10の背面側に完全に倒した収納位置で位置決めすることができるので、このストロボ用分光アダプタ2をストロボSに装着した状態であっても、その分光機能を使用することなく、通常の撮影を行うことが可能であり、使い勝手がよい。
【0033】
また、凹面鏡20を収納位置に位置決めすると、ストロボ用分光アダプタ2自体が嵩張らないので、持ち運びに便利であると共に、自宅での保管スペースも小さくなり、取扱性がよい。
【0034】
なお、このストロボ用分光アダプタ2では、実際に使用されるであろうと想定される範囲内で凹面鏡20の傾斜角度を段階的に変更することができるようになっているが、これに限定されるものではなく、凹面鏡20が回動可能な全範囲内で段階的に位置決めすることができるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0035】
また、このストロボ用分光アダプタ2では、回動軸34に取り付けた、複数の係止爪37aを有する円盤37と、この円盤37の係止爪37a間に係合する係止ピン38とからなる位置決め機構を採用しているが、これに限定されるものではなく、種々の位置決め機構を採用することができることは言うまでもない。
【0036】
また、このストロボ用分光アダプタ2では、凹面鏡20を段階的に位置決めするようになっているが、これに限定されるものではなく、例えば、凹面鏡20が固定された回動軸をある程度の太さにし、その回動軸を回動可能に支持する軸受部材に対する回動軸の摩擦抵抗を大きくすることによって、凹面鏡20を任意の姿勢で位置決めすることも可能である。
【0037】
また、凹面鏡20の最大直径については適宜設定すればよいが、ストロボ発光面の横幅の130〜80%程度に設定しておくことが望ましい。凹面鏡20の最大直径がストロボ発光面の横幅の130%を上回ると、嵩張って携帯性が悪くなるからであり、凹面鏡20の最大直径がストロボ発光面の横幅の80%を下回ると、十分な分光効果を得られないからである。
【0038】
また、上述した各実施形態では、ストロボSの発光ヘッド部S2に着脱自在に嵌着される環状の装着部10を採用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ストロボSの発光ヘッド部S2の周面に巻き付けて固定するバンド状の装着部を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のストロボ用分光アダプタは、ストロボ撮影をする際に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、2 ストロボ用分光アダプタ
10 装着部
20 凹面鏡
30、30A 支持部材
31 支持ベース
32 支持ユニット
33 支持部
34 回動軸
35、36 支持ブロック
35A 本体部
35B 蓋板
35a 円形凹部
35b 孔
37 円盤
37a 係止爪
38 係止ピン
39 コイルばね
C カメラ
S ストロボ
S1 本体部
S2 発光ヘッド部
【技術分野】
【0001】
この発明は、カメラに着脱自在に取り付けられるストロボに装着されるストロボ用分光アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自然な感じを出すために、被写体に直接ストロボ光を照射するのではなく、ストロボ光を天井に向けて照射するバウンス撮影が行われているが、正面からの照射光が全くないバウンス光だけではトップライトになってしまうので、被写体が人物や動物の場合は、顔が暗くなったり、目に輝きがなくなってしまうといった問題がある。
【0003】
従って、こういった問題を解決するために、バウンス撮影を行う場合は、図11に示すように、天井に向かって照射されるストロボの照射光の一部を分光して被写体に照射する反射板であるバウンサ51をストロボ50に内蔵したり、別途ストロボ50に装着したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−087056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したようなバウンサ51を使用すると、拡散光であるストロボ光の一部を分光して異なる方向に照射することはできるが、バウンサ51で反射された光は拡散光であるため、例えば、被写体に光を均一に照射するのではなく、被写体に拡散光を照射しながら、被写体の後ろの壁面等や被写体の手前の床面等にスポット光を照射することによって、特殊効果を狙ったイメージ写真を取りたい場合には、こういったバウンサは役にたたず、拡散光を照射するストロボ以外に、スポット光を照射可能な光源を別途用意するしかなかった。
【0006】
そこで、この発明の課題は、拡散光であるストロボ光の一部を分光して異なる方向にスポット光を照射することができるストロボ用分光アダプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、カメラに着脱自在に取り付けられる本体部に発光ヘッド部が回動自在に支持されたストロボに装着されるストロボ用分光アダプタであって、前記ストロボの前記発光ヘッド部に着脱自在に装着される装着部と、前記ストロボの前記発光ヘッド部における発光面側に張り出すように傾斜させた状態で、前記装着部に支持された凹面鏡とを備えていることを特徴とするストロボ用分光アダプタを提供するものである。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明のストロボ用分光アダプタにおいて、前記凹面鏡は、前記発光ヘッドの発光面に対する傾斜角度が50〜80度に設定されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明のストロボ用分光アダプタにおいて、前記凹面鏡は、前記発光ヘッドの発光面に対する傾斜角度を変更可能に前記装着部に支持されている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、請求項1に係る発明のストロボ用分光アダプタは、ストロボの発光ヘッド部に着脱自在に装着される装着部と、ストロボの発光ヘッド部における発光面側に張り出すように傾斜させた状態で、装着部に支持された凹面鏡とを備えているので、ストロボの発光ヘッドに装着すると、拡散光であるストロボ光の一部が、凹面鏡によって反射され、スポット光として異なる方向に照射される。
【0011】
従って、例えば、被写体に光を均一に照射するのではなく、被写体に拡散光を照射しながら、被写体の後ろの壁面等にスポット光を照射したい場合は、ストロボ光を天井に向けて照射するバウンス撮影行うことで、トップライトとして被写体に拡散光を照射しながら、凹面鏡によって反射されたストロボ光の一部を、スポット光として被写体の後ろの壁等に照射することができる。
【0012】
また、被写体に拡散光を照射しながら、被写体の手前の床等にスポット光を照射したい場合は、被写体に直接ストロボ光を照射することで、キャッチライトとして被写体に拡散光を照射しながら、凹面鏡によって反射されたストロボ光の一部を、スポット光として被写体の手前の床面等に照射することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明のストロボ用分光アダプタは、ストロボの発光ヘッドの発光面に対する凹面鏡の傾斜角度が50〜80度に設定されているので、最も効果的にスポット光を分光することができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明のストロボ用分光アダプタは、ストロボの発光ヘッドの発光面に対する凹面鏡の傾斜角度を変更することができるので、拡散光に対するスポット光の分校比率をある程度の自由度で任意に設定することができ、仕上りのバリエーションが増えるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係るストロボ用分光アダプタの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】(a)は同上のストロボ用分光アダプタを示す平面図、(b)は同上のストロボ用分光アダプタを示す正面図、(c)は同上のストロボ用分光アダプタを示す背面図、(d)は同上のストロボ用分光アダプタを示す底面図、(e)は同上のストロボ用分光アダプタを示す右側面図である。
【図3】(a)はカメラに取り付けたストロボに同上のストロボ用分光アダプタを装着する前の状態を示す側面図、(b)は装着した状態を示す側面図である。
【図4】同上のストロボ用分光アダプタを使用したときのストロボ光の照射状態を示す図である。
【図5】同上のストロボ用分光アダプタを使用したときのストロボ光の照射状態を示す図である。
【図6】(a)は他の実施形態であるストロボ用分光アダプタを示す正面図、(b)は同上のストロボ用分光アダプタを示す右側面図である。
【図7】図6(a)のX−X線に沿った部分断面図である。
【図8】同上のストロボ用分光アダプタにおける凹面鏡の位置決め機構を示す部分拡大側面図である。
【図9】(a)は同上のストロボ用分光アダプタにおける凹面鏡を最も前傾させた位置に位置決めした状態を示す部分側面図、(b)は同上のストロボ用分光アダプタにおける凹面鏡を最も後傾させた位置に位置決めした状態を示す部分側面図である。
【図10】(a)は同上のストロボ用分光アダプタにおける凹面鏡を背面側に折り畳んだ状態を示す右側面図、(b)は同上のストロボ用分光アダプタにおける凹面鏡を背面側に折り畳んだ状態を示す背面図である。
【図11】従来のバウンサを使用したときのストロボ光の照射状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1〜図3に示すように、このストロボ用分光アダプタ1は、カメラCに着脱自在に取り付けられる本体部S1に発光ヘッド部S2が回動自在に支持されたストロボSに装着されるものであり、ストロボSの発光ヘッド部S2に着脱自在に嵌着される、環状の樹脂成形品である装着部10と、ストロボSの発光ヘッド部S2における発光面側に張り出すように傾斜させた状態で、装着部10に支持部材30を介して、支持された凹面鏡20とから構成されている。
【0017】
前記装着部10は、上端側の開口面積が下端側の開口面積よりも僅かに小さくなるように形成されており、図3(a)、(b)に示すように、ストロボSの発光ヘッド部S2に外嵌めしたときに、発光ヘッド部S2の発光面が装着部10の上端面と面一または僅かに突出するような状態で、容易に脱落しないように、ストロボSの機種に応じて、その内寸が設定されている。
【0018】
前記支持部30は、装着部10の背面側に連設されており、凹面鏡20の下端部が支持部30に埋設されることによって、凹面鏡20が所定の傾斜角度で支持部30に支持されている。
【0019】
前記凹面鏡20は、直径が79mm、曲率半径が80mmで、装着部10の幅と略同一直径の正面円形状であり、図2(e)に示すように、その外周縁を通る平面と装着部10の上端面とのなす角度θが50〜80度となるように、その傾斜角度が設定されている。
【0020】
以上のように構成されたストロボ用分光アダプタ1を、カメラCに取り付けたストロボSの発光ヘッド部S2に装着すると、図3(b)に示すように、その凹面鏡20がストロボSの発光ヘッド部S2における発光面側に張り出すような状態となり、拡散光であるストロボ光の一部が、凹面鏡20によって反射され、スポット光として異なる方向に照射されることになる。
【0021】
従って、例えば、図4に示すように、ストロボSの発光ヘッド部S2における発光面を真上に向けた状態でバウンス撮影を行うと、拡散光であるストロボ光が天井面に照射されて、拡散光dlが上方から被写体に照射されると共に、拡散光であるストロボ光の一部が、凹面鏡20によって反射され、スポット光slとして被写体の後ろの壁面等に照射されることになり、また、図5に示すように、ストロボSの発光ヘッド部S2における発光面を斜め真上に向けた状態でバウンス撮影を行うと、拡散光であるストロボ光が天井面に照射されて、拡散光dlが上方から被写体に照射されると共に、拡散光であるストロボ光の一部が、凹面鏡20によって反射され、スポット光slとして被写体の一部及び床面に照射されることになるので、反射光が拡散光となるバウンサを用いた従来のバウンス撮影のように被写体に光を均一に照射する場合とは異なり、特殊効果を狙ったイメージ写真を撮影することができる。なお、図4及び図5では、ストロボ用分光アダプタ1を使用して天井バウンス撮影を行う場合について説明したが、ストロボを横に向けることで、ストロボ光を横壁面に照射する横壁バウンス撮影を行う場合にも、このストロボ用分光アダプタ1を使用することで、天井バウンス撮影と同様に、特殊効果を狙ったイメージ写真を撮影することができることは言うまでもない。
【0022】
また、ストロボSの発光ヘッド部S2における発光面を正面の被写体に向けた状態で通常の撮影を行うと、拡散光であるストロボ光が被写体に直接照射されると共に、拡散光であるストロボ光の一部が、凹面鏡20によって反射され、スポット光として被写体の手前で床面に照射されることになるので、上述したバウンス撮影の場合とは違ったイメージ写真を撮影することができる。
【0023】
また、マクロ撮影(接写)を行う場合は、被写体がカメラに近いためにストロボ光を被写体に直接照射することができないので、バウンサを使用することで、バウンサからの反射光(拡散光)を被写体に照射することがあるが、こういったバウンサに替えて、このストロボ用分光アダプタ1を使用すると、凹面鏡20によって反射されたスポット光を被写体に照射することができるので、従来のバウンサを使用する場合に比べて、被写体に対する照射光量を大きくすることができるという効果がある。
【0024】
図6〜図10は、他の実施形態を示している。上述したストロボ用分光アダプタ1は、凹面鏡20の傾斜角度が50〜80度の範囲内の所定角度に固定されていたが、このストロボ用分光アダプタ2は、凹面鏡20の傾斜角度を所定の範囲内で段階的に変更することができるようになっている。
【0025】
同図に示すように、このストロボ用分光アダプタ2も、基本的には、上述したストロボ用分光アダプタ1と同様の構成を有しているので、同一構成要素には同一符号付して、その説明を省略し、異なる構成要素である支持部材30Aについて詳細に説明する。
【0026】
前記支持部材30Aは、装着部10の背面側の両側部に連設された左右一対の支持ベース31と、この支持ベース31の上端面に固定された、凹面鏡20を回動可能に支持する支持ユニット32とを備えており、支持ユニット32は、凹面鏡20の傾斜角度を所定の範囲内で段階的に変更することができる位置決め機能を有している。
【0027】
前記支持ユニット32は、凹面鏡20下端部を支持する円柱状の支持部33と、両端部が支持部33の両端部からそれぞれ突出するように、支持部33の中心に埋設された回動軸34と、支持部33の両端部からそれぞれ突出した回動軸34を回転可能に支持する左右の支持ブロック35、36と、回動軸34の一方の端部に固定された、外周面に複数の係止爪37aが適宜連設された円盤37とを備えており、左右の支持ブロック35、36は、左右一対の支持ベース31、31にそれぞれ固定されている。
【0028】
一方の支持ブロック35は、回動軸34の一方の端部に固定された円盤37を収容する円形凹部35aが形成された本体部35Aと、この本体部35Aの円形凹部35aを閉塞する蓋板35Bとを備えており、円盤37が円形凹部35a内で回転することができるようになっている。
【0029】
前記支持ブロック35の本体部35Aには、円形凹部35aの内周面に孔35bが形成されており、この孔35bには、円盤37の係止爪37a間に係合する係止ピン38と、この係止ピン38を円盤37の中心側に付勢するコイルばね39とが収容されている。従って、凹面鏡20を、その回動方向に動かそうとすると、円盤37の係止爪37aが係止ピン38を押圧し、コイルばね39が圧縮されて係止ピン38が後退するので、係止爪37aに対する係止ピン38の係合が解除され、凹面鏡20を回動させることができるが、その回動を止めると、コイルばね39によって円盤37の中心側に付勢されている係止ピン38が係止爪37a間に係合するので、凹面鏡20がその姿勢で位置決めされる。
【0030】
ただし、係止爪37aは、円盤37の全周にわたって一定間隔で形成されているわけではなく、図9(a)に示すように、傾斜角度(凹面鏡20の外周縁を通る平面と装着部10の上端面とのなす角度)θ1が20度から、同図(b)に示すように、傾斜角度θ2が110度までの間に相当する領域に一定間隔で形成されており、この間で段階的に位置決めできるようになっていると共に、図10(a)、(b)に示すように、凹面鏡20を装着部10の背面側に完全に倒した収納位置で位置決めすることができるように、対応する位置に一対の係止爪37a、37aが形成されている。従って、凹面鏡20の傾斜角度θ2から収納位置までの間は、凹面鏡20を位置決めすることができないようになっている。
【0031】
以上のように構成されたストロボ用分光アダプタ2は、ストロボSの発光面に対する凹面鏡20の傾斜角度を所定の範囲内で段階的に変更することができるので、撮影者が、拡散光に対するスポット光の分校比率をある程度の自由度で任意に設定することができ、仕上りのバリエーションが増えるという効果がある。
【0032】
また、このストロボ用分光アダプタ2は、凹面鏡20を装着部10の背面側に完全に倒した収納位置で位置決めすることができるので、このストロボ用分光アダプタ2をストロボSに装着した状態であっても、その分光機能を使用することなく、通常の撮影を行うことが可能であり、使い勝手がよい。
【0033】
また、凹面鏡20を収納位置に位置決めすると、ストロボ用分光アダプタ2自体が嵩張らないので、持ち運びに便利であると共に、自宅での保管スペースも小さくなり、取扱性がよい。
【0034】
なお、このストロボ用分光アダプタ2では、実際に使用されるであろうと想定される範囲内で凹面鏡20の傾斜角度を段階的に変更することができるようになっているが、これに限定されるものではなく、凹面鏡20が回動可能な全範囲内で段階的に位置決めすることができるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0035】
また、このストロボ用分光アダプタ2では、回動軸34に取り付けた、複数の係止爪37aを有する円盤37と、この円盤37の係止爪37a間に係合する係止ピン38とからなる位置決め機構を採用しているが、これに限定されるものではなく、種々の位置決め機構を採用することができることは言うまでもない。
【0036】
また、このストロボ用分光アダプタ2では、凹面鏡20を段階的に位置決めするようになっているが、これに限定されるものではなく、例えば、凹面鏡20が固定された回動軸をある程度の太さにし、その回動軸を回動可能に支持する軸受部材に対する回動軸の摩擦抵抗を大きくすることによって、凹面鏡20を任意の姿勢で位置決めすることも可能である。
【0037】
また、凹面鏡20の最大直径については適宜設定すればよいが、ストロボ発光面の横幅の130〜80%程度に設定しておくことが望ましい。凹面鏡20の最大直径がストロボ発光面の横幅の130%を上回ると、嵩張って携帯性が悪くなるからであり、凹面鏡20の最大直径がストロボ発光面の横幅の80%を下回ると、十分な分光効果を得られないからである。
【0038】
また、上述した各実施形態では、ストロボSの発光ヘッド部S2に着脱自在に嵌着される環状の装着部10を採用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ストロボSの発光ヘッド部S2の周面に巻き付けて固定するバンド状の装着部を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のストロボ用分光アダプタは、ストロボ撮影をする際に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、2 ストロボ用分光アダプタ
10 装着部
20 凹面鏡
30、30A 支持部材
31 支持ベース
32 支持ユニット
33 支持部
34 回動軸
35、36 支持ブロック
35A 本体部
35B 蓋板
35a 円形凹部
35b 孔
37 円盤
37a 係止爪
38 係止ピン
39 コイルばね
C カメラ
S ストロボ
S1 本体部
S2 発光ヘッド部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラに着脱自在に取り付けられる本体部に発光ヘッド部が回動自在に支持されたストロボに装着されるストロボ用分光アダプタであって、
前記ストロボの前記発光ヘッド部に着脱自在に装着される装着部と、
前記ストロボの前記発光ヘッド部における発光面側に張り出すように傾斜させた状態で、前記装着部に支持された凹面鏡と
を備えていることを特徴とするストロボ用分光アダプタ。
【請求項2】
前記凹面鏡は、前記発光ヘッドの発光面に対する傾斜角度が50〜80度に設定されている請求項1に記載のストロボ用分光アダプタ。
【請求項3】
前記凹面鏡は、前記発光ヘッドの発光面に対する傾斜角度を変更可能に前記装着部に支持されている請求項1に記載のストロボ用分光アダプタ。
【請求項1】
カメラに着脱自在に取り付けられる本体部に発光ヘッド部が回動自在に支持されたストロボに装着されるストロボ用分光アダプタであって、
前記ストロボの前記発光ヘッド部に着脱自在に装着される装着部と、
前記ストロボの前記発光ヘッド部における発光面側に張り出すように傾斜させた状態で、前記装着部に支持された凹面鏡と
を備えていることを特徴とするストロボ用分光アダプタ。
【請求項2】
前記凹面鏡は、前記発光ヘッドの発光面に対する傾斜角度が50〜80度に設定されている請求項1に記載のストロボ用分光アダプタ。
【請求項3】
前記凹面鏡は、前記発光ヘッドの発光面に対する傾斜角度を変更可能に前記装着部に支持されている請求項1に記載のストロボ用分光アダプタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−242663(P2011−242663A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115898(P2010−115898)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510140087)株式会社モトクラ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510140087)株式会社モトクラ (1)
【Fターム(参考)】
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