説明

ストーカ炉及びストーカ炉の操業方法

【課題】アルミニウム等の低融点の金属類が溶融して火格子の底部に堆積して固化することがなく、ストーカ炉の作動不良を起こすことがなく、処理物に別の処理物が混入することがないストーカ炉及びストーカ炉の操業方法を提供する。
【解決手段】 ストーカ炉20は、可動火格子22a及び固定火格子22bを水平又は排出部側に向かって下り勾配となるように傾斜させて配置すると共に、可動火格子22aの排出部側端部が固定火格子22bの排出部側端部と同じ位置又はその近傍まで至るようにしたことを特徴し、ストーカ炉の操業法は可動火格子22aの前進と停止及び待機並びに可動火格子22aが所定時間を経過しても可動しない場合には警報を発するようにして制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーカ炉及びストーカ炉の操業方法に関し、さらに詳しくは、アルミニウム等の低融点の金属を含んだ電子基板等の廃電子部品の焼却処理に好適なストーカ炉及びストーカ炉の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、OA機器、あるいは携帯電話等を製造する電子部品製造業者や電子基板等の電子部品を利用した製品及び産業から発生するスクラップ類は年々増加を続けている。これらスクラップ類には、電気導体として使われる銅や、接点・メッキ皮膜等に使用された金、銀、白金、パラジウム等の貴金属の他、アルミニウム等の金属が含まれており、これら有価金属の回収は資源のリサイクルによる省資源化を図るという観点からも極めて重要である。そのため、これらのスクラップ類(以下、「貴金属類スクラップ」という。)は様々な方法によってリサイクルが行われている。
【0003】
貴金属類スクラップをリサイクルする方法としては、例えば、特許文献1(特開2003−64425号公報)に記載されているように、銅製錬における熔錬炉に銅精鉱と共に装入して処理する方法、貴金属類スクラップを薬剤に浸漬して有機物材料を溶解して含有されている貴金属を得る方法、貴金属類スクラップを燃焼炉で燃焼して灰化させ、灰化したものを自溶炉又は転炉で処理することで貴金属を得る方法などがある。しかし、貴金属類スクラップを銅精鉱と共に熔錬炉で直接処理する方法によると合成樹脂等の有機物系材料がマットやスラグの性状に影響を与えそのコントロールが難しいという問題がある。また、薬液による場合には大量の処理ができないという問題がある。
【0004】
さらに、貴金属類スクラップを燃焼炉で燃焼させて処理する方法は燃焼炉であるロータリーキルンへ投入されて排出されるまでが連続して行われるので貴金属類スクラップの焼きむらが起こるおそれがあり、処理設備に大きなスペースを要する等の問題があることから特許文献1では貴金属類スクラップを回転・混合機構を有する前処理炉内で400℃で燃焼して灰化させ、砂状粉化させることで焼却物を均一にするという提案がなされている。
【0005】
一方、ロータリーキルンとストーカ炉を組み合わせた燃焼処理炉が知られている。そのような燃焼処理炉としては、例えば、特許文献2(特開平10−267239号公報)や特許文献3(特開平9−159131号公報)がある。特許文献2は、ロータリーキルンとストーカ炉を組み合わせ、キルン炉内にピン状突起物を、螺旋状に設け、キルン炉内での燃焼時間を増やすことで、燃焼度合いの効率を向上させるというものである。また、特許文献3は、ロータリーキルンとストーカ炉との接続部近傍に垂直方向の隔壁を配設することにより、ストーカ炉からロータリーキルン側への輻射熱を遮断し、且つ、ストーカ炉からのOを含む排ガスに対してロータリーキルン出口側の抑制燃焼残渣の接触が防止されるので残渣が高温にならないことからクリンカの発生を防止することができるというものである。
【0006】
ここで、ストーカ炉には、例えば、並列揺動式、階段摺動式、水平摺動式、逆動式、移床式など様々な種類があり、それぞれ独自の構造を備えている。例えば、階段摺動式は、可動火格子と固定火格子を交互に階段状に配列し、可動火格子の往復運動により処理物を移送する構造を備えている。しかしながら、階段摺動式は火格子を階段状に配置しているので、その構造上、上流から下流に至るまでの炉の上下方向の高さが必要とされ、設備が大型化する。そのため、水平摺動式では火格子を処理物の焼却残渣(焼却灰)を排出する排出部側に向かって登り勾配となるように傾斜させて配置することで上流から下流に至るまでの距離を確保した上で炉の高さを低くすることを可能としている。
【0007】
そのようなストーカ炉として、図6に示す従来のストーカ炉200は、固定火格子220bの表面を可動火格子220aが油圧シリンダ250によって前後に摺動するように形成されており、固定火格子220bと可動火格子220aは排出部側に向かって約20°の登り勾配をもって配置されている。また、可動火格子220aの上流側(図6における油圧シリンダ250の上部)には図示しないロータリーキルンが配置されており、処理物である貴金属類スクラップを加熱することによってガス化した残渣であるガス化減容物が可動火格子220a上に供給されるようになっている。そして、可動火格子220aを前後に摺動させることにより可動火格子220a上に供給されたガス化減容物を徐々に前方に移送して固定火格子220b上に落下させ、処理物を加熱処理するようになっている。ストーカ炉200によってガス化減容物を燃焼した後の焼却灰2cは開閉ダンパ280aを介して有価金属含有滓としてコンテナ280に収容して排出される。また、固定火格子220bと可動火格子220aの下部側には固定火格子220bと可動火格子220aからこぼれ落ちたガス化減容物2bを回収するための回収扉290が設けられている。尚、固定火格子220bと可動火格子220aの下部側には燃焼空気供給口230が設けられており、燃焼空気の供給が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−64425号公報
【特許文献2】特開平10−267239号公報
【特許文献3】特開平9−159131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、キルン式還元炉で、600〜700℃、で約1時間、低空気比で酸化されないように燃焼、灰化させた貴金属類スクラップのガス化減容物を火格子が処理物の排出部側に向かって登り勾配をもって傾斜するように配置された従来のストーカ炉によって処理した場合、火格子が排出部側に向かって斜め上勾配となっているためアルミニウム等の低融点の金属類は溶融して火格子の一部(図6に示すAの部分)に滞留すると共に、温度が下がった場合には固化してストーカ炉の作動不良を起こすという問題があった。
【0010】
また、従来のストーカ炉は、可動火格子220aが固定火格子220bの表面の途中位置までしか移動することができないような構造となっていたため可動火格子220aの排出部側の端部が到達し得ない固定火格子220b上に存在するガス化減容物を完全に排除することができずに滞留してしまい、ロットの異なる処理物や別の処理物を処理した場合に前回の残留物が混入してしまうという問題があった。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、アルミニウム等の低融点の金属類が溶融して火格子の底部に堆積したり固化することがなく、また、ストーカ炉の作動不良を起こすことがないストーカ炉及びストーカ炉の操業方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、火格子の一部に処理物が滞留することがなく、処理物に別の処理物が混入することがないストーカ炉及びストーカ炉の操業方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、ストーカ炉を効率よく操業することができるストーカ炉及びストーカ炉の操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、可動火格子と固定火格子を備えて形成されるストーカ上に供給される処理物を空気を吹き込みながら燃焼処理するストーカ炉において、可動火格子及び固定火格子を水平又は処理物の焼却残渣を排出する排出部側に向かって下り勾配となるように傾斜させて配置すると共に、可動火格子の排出部側の端部が固定火格子の排出部側の端部と同じ位置又はその近傍まで至るようにしたことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のストーカ炉において、可動火格子及び固定火格子の勾配は5°以内であることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、可動火格子と固定火格子を備えて形成されるストーカ上に供給される焼却物を空気を吹き込みながら燃焼処理するストーカ炉の操業法において、所定位置に待機させた可動火格子を前進と停止を繰り返しながら移動させると共に、可動火格子が所定時間を経過しても可動しない場合には警報を発するようにして可動火格子の動作制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るストーカ炉及びストーカ炉の操業方法によれば、アルミニウムリッチな貴金属類スクラップであっても火格子の一部に堆積したり固化することがなく、また、ストーカ炉の作動不良を起こすことがないので貴金属類スクラップを確実に処理することができるという効果がある。
【0018】
また、本発明に係るストーカ炉及びストーカ炉の操業方法によれば、焼却物を完全に排出部まで押し出して系外に排出するので、他の焼却物(別ロット品など)を処理した場合にも混在することがないという効果がある。このように、焼却物の完全排出によって他の処理物と混在することがないので処理物の品位を安定させることができるという効果がある。
【0019】
さらに、本発明に係るストーカ炉及びストーカ炉の操業方法によれば、既設定置炉の負荷低減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ロータリーキルンとストーカ炉を備えた処理装置の全体図である。
【図2】本発明に係るストーカ炉の側面断面図である。
【図3】火格子の制御を示すブロック図である。
【図4】貴金属類スクラップの処理のフローチャートである。
【図5】本発明に係るストーカ炉の操業方法の一実施形態のフローチャートである。
【図6】従来のストーカ炉の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るストーカ炉及びストーカ炉の操業方法の好ましい一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、貴金属類スクラップのリサイクルを図るために焼却処理を行うためのロータリーキルンとストーカ炉を備えた処理装置の全体図、図2は本発明に係るストーカ炉の側面断面図である。図示された処理装置1は、概略として、第一の燃焼炉であるロータリーキルン10と、第二の燃焼炉であるストーカ炉20と、第三の燃焼炉である二次燃焼炉21を備えて構成されている。
【0022】
ロータリーキルン10は、円筒状の横置き型で、一方側の端面に貴金属類スクラップ2aを投入するための投入口12が設けられると共に、それとは反対側の端面には排出口13が設けられている。ロータリーキルン10は排出口13側に向かって僅かに傾斜するようにして配置されており、図示しないモータによって回転可能とされている。投入口12の近傍にはバーナ14が配置されており、重油や再生燃料などの燃料を燃焼させることによって炉内に向かって火炎を吹き出し、それによって炉内を高温に保持することができるようになっている。尚、一般の産業廃棄物等を焼却処理するような場合には一般的に炉内温度は800℃以上の高温に保たれるが、本発明の場合には貴金属類スクラップ2aを燃焼させるのではなく、後述するように、炉内へのフリーエアの侵入を阻止しつつ炉内の温度を600〜700℃で保持することによって貴金属類スクラップ2aをガス化し、熱分解させるものである。このように、投入口12から炉内に投入された貴金属類スクラップ2aは、高温の雰囲気の中で撹拌されながら排出口13方向へ徐々に移動し、熱分解されて可燃性の熱分解ガスとガス化減容物2bとなる。
【0023】
ここで、ロータリーキルン10に投入する貴金属類スクラップ2aは図示しない粉砕機によって所定のサイズに粉砕されて貯留されており、粉砕された貴金属類スクラップ2aはフレコンバッグ(電動ホイストにて運搬・投入)5でホッパ3内に投入され、投入シュート7を介してロータリーキルン10内に投入されるようになっている。また、各種の貴金属類スクラップ2aに含まれる貴金属類の品位の一例を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
ロータリーキルン10の排出口13側の端面はストーカ炉20と連結されており、排出口13から排出されるガス化減容物2bはストーカ炉20の可動火格子22a上に落下すると共に、熱分解ガスは第三の燃焼炉である二次燃焼炉21内に導入されるようになっている。ロータリーキルン10は一般的なものに比べてその長さが短く、具体的には、ロータリーキルン10の長さはその内径との比較で表すと内径の1.5〜2.5倍のショートタイプのロータリーキルン10となっている。また、ロータリーキルン10の回転速度は図示しない減速機によって少なくとも0.04〜0.5rpmの範囲で回転させることが可能に構成されており、そのような回転数で処理することよって貴金属類スクラップ2aのショートパスを防止し、ロータリーキルン10内に少なくとも1時間以上保持して加熱分解することが可能とされている。
【0026】
また、ロータリーキルン10とストーカ炉20との連結部分はフリーエアが侵入しないようにしっかりとシール部材16が嵌挿されている。シール部材16は、リング状のパッキン部材であり、これを図示しないシールリングで押圧することでシール部材16を付勢し、ロータリーキルン10の回転によってシール部材16が摩耗した場合でもその隙間を逐次埋めることにより常にシールが完全に行われるようになっている。これによってロータリーキルン10内の貴金属類スクラップ2aに対する空気比を0.4以下に保持してその熱分解を促す。
【0027】
さて、ストーカ炉20は、図2に示すように、可動火格子22aと固定火格子22bの表面上にロータリーキルン10を介して供給されたガス化減容物2bを可動火格子22a及び固定火格子22bの下部側から空気を吹き込むことによって燃焼処理する燃焼炉であり、炉壁や火炎からの輻射熱や燃焼ガスによる接触伝熱によってガス化減容物2bの焼却処理を行う。可動火格子22aはレール25a上に移動可能に配置されており、油圧シリンダ25の伸縮によって固定火格子22bの表面上を前後に摺動するように形成されている。そして、固定火格子22bと可動火格子22aは排出部側に向かって約2°斜め下方向に下り勾配をもって配置されている。また、可動火格子22aは、可動火格子22aの先端部が固定火格子22bの最先端部と同じ位置に至るまで可動火格子22a上を摺動するように構成されている。
【0028】
固定火格子22bと可動火格子22aを排出部側に向かって斜め下方向に下り勾配を設けたので、アルミニウム等の低融点の金属類が溶融しても勾配に沿って排出部側に流れ、固定火格子22b上の一部に滞留して固化することがないためそれによってストーカ炉20が作動不良を起こすということがない。固定火格子22bと可動火格子22aの下り勾配があまり大きいと十分な加熱処理を施す前にガス化減容物2bが滑り落ちてしまうおそれがあるので0°(水平)から5°以下(傾斜角:0〜5°)とすることが好ましい。尚、固定火格子22bと可動火格子22aは少なくとも排出部側に向かって上り勾配となっていなければよいので水平とすることもできる。また、固定火格子22bと可動火格子22aの先端側は斜め下側に向かって傾斜するようにして形成されており、先端部にガス化減容物2bが付着するのを防止している。
【0029】
一方、可動火格子22aの動作については制御装置26によって油圧シリンダ25の動作を制御することにより行われるようになっている。図3に示すように、制御装置26は油圧シリンダ25と電気的に接続されており、制御装置26は油圧シリンダ25に対して前進、後退、停止をシーケンス制御する。すなわち、可動火格子22aは排出部側に向かって前進と停止を繰り返しながら移動し、可動火格子22aの排出部側先端が固定火格子22bの排出部側先端に至ったら今度は初期位置まで後退して一定時間待機し、その後再び排出部側に向かって前進と停止を繰り返しながらの移動を行うようになっている(図5参照)。そして、前進、停止、待機の時間は制御装置26によって設定可能とされている。尚、制御装置26は汎用のコンピュータが備える中央処理装置、記憶装置、入力装置、表示装置、通信装置等を備えて構成されているがその機能は周知であるため詳しい説明は省略する。また、可動火格子22aが制御装置26によって設定されたような動作を一定時間行わなかった場合には油圧シリンダ25又は可動火格子22aの故障の可能性があるため警報を発するように構成されている。警報はブザやサイレン等の音響による警報や回転赤色灯やライトの明滅等による視覚による警報などがあり、それらを併用することもできる。
【0030】
上述したような構造により、可動火格子22a上に供給されたガス化減容物2bは可動火格子22aの前後への移動によって徐々に前方に移送されて固定火格子22b上に至り、その間加熱処理されるようになっている。そして、ストーカ炉20によるガス化減容物2bを燃焼した後の焼却灰2cは開閉ダンパ28aを介して有価金属類含有滓としてコンテナ28に収容され排出される。また、固定火格子22bと可動火格子22aの下部側には固定火格子22bと可動火格子22aからこぼれ落ちたガス化減容物2bを回収するための回収扉29が設けられている。尚、固定火格子22bと可動火格子22aの下部側には燃焼空気供給口23が設けられており、燃焼空気の供給が行われるようになっている。
【0031】
コンテナ28は、燃焼処理された焼却灰2cを排出するためにストーカ炉20の下部側と蛇腹状のエキスパンションによって連結された状態で配置されている。そして、コンテナ28の上部側にはその周壁を冷却する冷却機構27が設けられている。冷却機構27は、コンテナ28の上部側の周壁に図示しない冷却管を巻回して冷却水を循環させることでコンテナ28の上部側の周壁部を冷却し、それによって火格子22から落下してくる焼却灰2cをコンテナ28内で冷却するようになっている。冷却はコンテナ28内が約100℃以下の温度になるように行われる。これにより、コンテナ28を取り出す際に高温の焼却灰2cに残存している可燃性の熱分解ガス等が空気と接触することで燃え出すことが防止される。そして、回収された焼却灰2cは、例えば、銅製錬所の中間原料として使用することによって貴金属類スクラップに含まれる貴金属のリサイクルが図られる。
【0032】
一方、貴金属類スクラップ2aを熱分解することによって発生した可燃性の熱分解ガスは、ストーカ炉20の上部に位置する二次燃焼炉21内に導入され、二次燃焼炉21に備えられたバーナ24によって完全燃焼処理される。また、ストーカ炉20でガス化減容物2bを焼却処理した際に発生する燃焼排ガスも二次燃焼炉21に送られて熱分解ガスと共に完全燃焼される。ここで、焼却炉におけるダイオキシン類の発生は安定した完全燃焼を行うことによってダイオキシン類及びその前駆体を高温で分解することで抑制できることが知られている。そのため、熱分解ガスの燃焼は900℃以上の温度で行う。そして、熱分解ガスを燃焼させた後の排ガスは、煙道31によって二次燃焼炉21と連通された急冷塔40に送られるようになっている。
【0033】
急冷塔40には冷却水を散布するためのノズル41が複数設けられており、ノズル41から冷却水を噴出して煙道31を通って運ばれてきた排ガスに向かって散布することで排ガスの温度が80℃以下になるように一気に急冷する。ダイオキシンの発生要因の一つであるデノボ合成は300℃付近で最も発生しやすいといわれており、その温度帯に長く留まらせることなく一気に通過させることでダイオキシン類の発生を抑制する。80℃以下に冷却された排ガスは洗浄塔45においてアルカリ洗浄液で洗浄され、さらにダクト32を通ってミストコットレル50に運ばれるようになっている。そして、排ガスは、ミストコットレル50によって煤塵やミストが除去された後、排気ダクト33を通って完全に無害化された状態で排気される。
【0034】
次に、本発明に係る及びストーカ炉の操業方法について上述したストーカ炉20の動作と共に説明する。図4は貴金属類スクラップの処理のフローチャート、図5は本発明に係るストーカ炉の操業方法の一実施形態のフローチャートである。
【0035】
はじめに、貴金属類スクラップ2aは、予め図示しない粉砕機によって所定の大きさに粉砕されて貯留されており、粉砕された貴金属類スクラップ2aをフレコンバッグ5によってホッパ3内に投入して貯留され、そこから投入シュート7を介して投入口12から第一の燃焼炉であるロータリーキルン10内に投入する。ロータリーキルン10は、バーナ14によって炉内の温度が600〜700℃に保持されており、投入口12から投入された貴金属類スクラップ2aをそのような高温の雰囲気の中でフリーエアの侵入を阻止しつつ、少なくとも1時間保持することで貴金属類スクラップ2aが熱分解されて可燃性の熱分解ガスとガス化減容物2bとなる。ロータリーキルン10はその長さが内径の1.5〜2.5倍と通常のものより短いショートタイプのキルンであり、また、貴金属類スクラップ2aの加熱分解の際には0.04〜0.5rpmの範囲で回転させることで十分に撹拌し、貴金属類スクラップ2aをロータリーキルン10内に少なくとも1時間以上保持して十分な加熱分解を行う。
【0036】
ガス化減容物2bは、ロータリーキルン10の回転及びその僅かの傾斜により排出口13方向へ徐々に移動して第二の燃焼炉であるストーカ炉20内の可動火格子22a上に排出される(ステップS1)。一方、可燃性の熱分解ガスはストーカ炉20の上部に位置する二次燃焼炉21内に導入される。
【0037】
ストーカ炉20内の可動火格子22aは、制御装置26に予め設定されたタイムスケジュールに基づいて油圧シリンダ25の動作を制御することによって前進、停止を繰り返しながら前後に移動する。このときの可動火格子22aの動作は図5に示すようなフローに従って制御される。すなわち、最初は可動火格子22aは最も後退した位置(油圧シリンダ25側)に待機しており(ステップS10)、この状態で可動火格子22a上にガス化減容物2bがロータリーキルン10を介して供給される。そして、制御装置26に予め設定した時間(例えば、「2.1秒」等)に基づいてその時間だけ油圧シリンダ25を動作させて可動火格子22aの前進を行う(ステップS11)。そして、前進させるべき時間が経過したら制御装置26に予め設定した時間(例えば、「5秒」等)に基づいてその時間だけ可動火格子22aを停止させる(ステップS12)。停止時間が経過したら再び可動火格子22aの前進を行うが、このとき停止時間(例えば、「5秒」等)を越え、さらに予め設定した時間(例えば、「270秒」等)を経過しても可動火格子22aが停止した状態であるときは故障であると判断し(ステップS13)、警告を発する(ステップS14)。これにより、作業者はストーカー炉20の異常を容易に知ることができるのでストーカ炉20の操業の安全性を確保することができる。
【0038】
上述した制御(ステップS10〜14)により、可動火格子22a上に供給されたガス化減容物2bは固定火格子22b側へ移送されながら燃焼される(ステップS2)。その間、可動火格子22a及び固定火格子22bの下側に設けられた燃焼空気供給口23から空気を送り込んでガス化減容物2bに含まれる貴金属類以外の可燃物質の完全燃焼を促す。そして、燃焼後の焼却灰2cは有価金属等含有滓としてストーカ炉20の下部側に配置されたコンテナ28に収容されて排出される(ステップS3)。このとき、可動火格子22a及び固定火格子22bから落下してくる焼却灰2cはコンテナ28の上部側設けられた冷却機構27によって100℃以下に冷却されてコンテナ28内に収容される。これにより、コンテナ28を取り出す際に高温の焼却灰2cに残存している可燃物が空気と接触することで燃え出すことが防止される。そして、回収された焼却灰2cを、例えば、銅製錬所の中間原料として使用することによって貴金属類スクラップに含まれる貴金属類が回収されリサイクルが行われる(ステップS4)。
【0039】
一方、可燃性の熱分解ガスは二次燃焼炉21のバーナ24によって900℃以上の温度で燃焼処理される。貴金属類スクラップ2aをロータリーキルン10のロータリーキルン10内で燃焼させず二次燃焼炉21内で可燃性の熱分解ガスとして燃焼させることとしているのでロータリーキルン10の過熱による劣化の進行が防止されると共に、ダイオキシン類及びその前駆体の生成の抑制が図られる。そして、熱分解ガスを燃焼させた後の排ガスは煙道31によって二次燃焼炉21と連通された急冷塔40に送られ、複数のノズル41から冷却水が散布されてその温度が80℃以下になるように一気に急冷される。これにより、ダイオキシンの発生要因の一つであるデノボ合成が最も発生しやすいといわれている300℃付近の温度帯を一気に通過させることでダイオキシン類の発生の抑制を図っている。
【0040】
そして、80℃以下に冷却された排ガスは、洗浄塔45においてアルカリ洗浄液で洗浄されてミストコットレル50に運ばれ、煤塵やミストが除去された後、完全に無害化された状態で排気される。
【0041】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0042】
2a 貴金属類スクラップ
2b ガス化減容物
2c 焼却灰
10 ロータリーキルン
20 ストーカ炉
22a 可動火格子
22b 固定火格子
23 燃焼空気供給口
25 油圧シリンダ
25a レール
26 制御装置
28 コンテナ
28a 開閉ダンパ
29 回収扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動火格子と固定火格子を備えて形成されるストーカ上に供給される処理物を空気を吹き込みながら燃焼処理するストーカ炉において、
前記可動火格子及び固定火格子を水平又は処理物の焼却残渣を排出する排出部側に向かって下り勾配となるように傾斜させて配置すると共に、前記可動火格子の排出部側の端部が前記固定火格子の前記排出部側の端部と同じ位置又はその近傍まで至るようにしたことを特徴とするストーカ炉。
【請求項2】
請求項1に記載のストーカ炉において、
前記可動火格子及び前記固定火格子の勾配は5°以内であることを特徴とするストーカ炉。
【請求項3】
可動火格子と固定火格子を備えて形成されるストーカ上に供給される焼却物を空気を吹き込みながら燃焼処理するストーカ炉の操業法において、
所定位置に待機させた前記可動火格子を前進と停止を繰り返しながら移動させると共に、当該可動火格子が所定時間を経過しても可動しない場合には警報を発するように前記可動火格子の動作制御することを特徴とするストーカ炉の操業法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−223469(P2010−223469A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69514(P2009−69514)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】