説明

スナック菓子製造方法及びスナック菓子

【課題】これまでにない食感のスナック菓子及びそのようなスナック菓子を製造するための製造方法を提供する。
【解決手段】スナック菓子製造方法が、パフ生地を膨化させてパフ種を得る工程と、前記パフ種を油で被覆する工程と、前記油で被覆した前記パフ種を衣生地で被覆する工程と、前記衣生地で被覆した前記パフ種を油調する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スナック菓子製造方法及びスナック菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらやから揚げのような、種(たね)となる具材に衣液をつけて油調した食品は数多く存在する。また、種として焼成モチ米菓や煎餅を用い、これに衣液(バッター)をつけて油調することによって得られる菓子も知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2001−161276号公報
【特許文献2】特開2001−231455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の例では、ある程度の硬さを有する略中実な具材が種として用いられてきた。しかしながら、例えばパフ菓子のような、あまり硬さがなく比較的気泡を多く含んだ脆い具材を種として用いた例はなかった。このような具材を種として用いることができれば、これまでにない食感の食品ひいてはスナック菓子を提供することができるであろう。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、これまでにない食感のスナック菓子及びそのようなスナック菓子を製造するための製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための主たる発明は、パフ生地を膨化させてパフ種を得る工程と、前記パフ種を油で被覆する工程と、前記油で被覆した前記パフ種を衣生地で被覆する工程と、前記衣生地で被覆した前記パフ種を油調する工程とを備えることを特徴とするスナック菓子製造方法である。
【0006】
本発明の他の態様は、パフ生地を膨化させてパフ種を得る工程と、前記パフ種を油で被覆する工程と、前記油で被覆した前記パフ種を衣生地で被覆する工程と、前記衣生地で被覆した前記パフ種を油調する工程とを備える方法によって製造されるスナック菓子である。
【0007】
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、これまでにない食感のスナック菓子及びそのようなスナック菓子を製造するための製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
===開示の概要===
以下、本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載する発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0010】
本発明の一態様は、パフ生地を膨化させてパフ種を得る工程と、前記パフ種を油で被覆する工程と、前記油で被覆した前記パフ種を衣生地で被覆する工程と、前記衣生地で被覆した前記パフ種を油調する工程とを備えるスナック菓子製造方法である。
【0011】
パフ生地を膨化することによって得られるパフ種に、油を被覆することなく、衣生地を被覆しようとすると、衣生地がパフ種に浸透して、種たるべきパフ種が収縮ないし溶解してしまい、油調することができない。
【0012】
一方、本発明にあっては、パフ種を先ず油で被覆してから、衣生地で被覆する。こうすると、パフ種を被覆する油が「膜」の役割を果たし、衣生地がパフ種に浸透してこれを収縮させてしまうことを防止することができる。よって、パフ種を、衣生地で被覆された状態で、油調することが可能となる。これにより、これまでにない食感のスナック菓子、及びそのようなスナック菓子を製造するための製造方法を提供することができる。
【0013】
ここで、本明細書でいう「パフ生地」とは、いわゆるパフ菓子・パフスナック菓子のもととなる生地であり、原料としては、コーングリッツ、米グリッツ、豆グリッツ、ホワイトソルガム等が挙げられる。また、上記原料に、ポテト、小麦粉、穀類、澱粉等を混合した混合原料を使用してもよい。また、野菜、ココア、海産物、肉類、香辛料等を副素材原料として混合することもできる。
【0014】
パフ生地の「膨化」は、一般的なエクストルーダを用いて行う。エクストルーダの種類は問わず、一軸又は二軸エクストルーダでもよい。
【0015】
本明細書でいう「パフ種」は、上記「パフ生地」を「膨化」させることによって得られるものであり、いわゆるパフ菓子・パフスナック菓子と同様のものである。あまり硬さがなく比較的気泡を多く含んだ脆い食材である。本願では、これを「種(たね)」として用いるので、「パフ種」と呼ぶことにする。
【0016】
このパフ種に油を「被覆」するのであるが、この「被覆」とは、文字通り、油がパフ種を覆っている状態を指す。「被覆」の方法は種々考えられる。例えば、後述の実施例のように、パフ種を容器に入れて、その容器の中に油を注ぎ込み、容器の中でパフ種と油をかき混ぜながら「被覆」を行ってもよい。また、製造ラインにパフ種を流すのであれば、ライン上を流れているパフ種に油を掛けるようにしてもよい。
【0017】
ここで、「油」としては、後述の実施例のパーム油に限らず、コーン油、紅花油等、どのようなものを用いてもよい。とにかく、衣生地がパフ種に浸透してしまうのを抑止する「膜」として機能するものであればよい。
【0018】
次に、パフ種を「衣生地」で被覆するのであるが、ここでいう「衣生地」とは、いわゆるバッター・衣液と同様のものである。衣生地は、小麦粉を主原料としてこれを水で溶いたものが多いが、澱粉、ポテトフラワー、コーンパウダー、乳製品パウダーを主原料とするものでもよい。また、水ではなく牛乳等の他の液体でこれら粉体原料を溶いたものでもよいし、卵、調味料等の副素材を含んでいてもよい。すなわち、衣生地は、菓子、特にスナック菓子に使用する原料を用いていればどのようなものでもよい。
【0019】
衣生地による「被覆」とは、文字通り、衣生地がパフ種を覆っている状態を指す。「被覆」の方法は種々考えられる。例えば、後述の実施例のように、パフ種を衣生地に浸すことによって「被覆」を行ってもよい。また、製造ラインにパフ種を流すのであれば、ライン上を流れているパフ種に衣生地を掛けるようにしてもよい。
本発明では、上記のように衣生地で被覆したパフ種を油調することで、これまでにない食感のスナック菓子を得ることができる。
【0020】
なお、パフ種の油調後、得られたスナック菓子を遠心分離工程に付してもよい。油調後に油をきることで、やはりこれまでにない食感のスナック菓子を得ることができる。遠心分離の方法としては、遠心分離機を用いることが一般的に考えられるが、その他の方法によってもよい。
【0021】
また、油調する前に、衣生地で被覆したパフ種に打ち粉をしてもよい。打ち粉をすることにより、衣生地掛けした表面を波立たせて、スナック菓子表面に不均一な皺状のテクスチャーを与えることができる。これは、後述の実施例のように、個々に形が不揃いになるような(例えば、まるで本物の「から揚げ」のような)スナック菓子を製造したい場合等に、特に有効である。打ち粉としては、小麦粉や、澱粉、ポテトフラワー等のその他の粉体原料を用いることができる。また、よりサラサラした状態の原料を使った方が、均一な打ち粉掛けが可能となり、掛かりむらを抑えることができる。
【0022】
また、少なくとも油又は衣生地に予め味付けをしておいてもよい。これにより、スナック菓子全体に、均一に「下味」をつけることができる。
【0023】
また、油の重量は、パフ生地の重量に対して50%以上であるのが好ましい。パフ生地の重量に対して油の重量が50%未満であると、油の「膜」としての機能が弱く、衣生地によるパフ種の収縮が起こりやすくなり、また、スナック菓子の大きさに10%以上の誤差が生じる。そこで、スナック菓子の収縮を抑えつつ、スナック菓子の大きさをある程度均一にしたい場合等には、上記のように、油の重量をパフ生地の重量に対して50%以上とするのがよい。
【0024】
また、後述の実施例のように、個々に形が不揃いになるような(例えば、まるで本物の「から揚げ」のような)スナック菓子を製造したい場合には、衣生地の粘度が1500〜6000cPであるのが好ましい。粘度が1500cP未満の場合、規定量の衣生地がパフ種に乗らず、油調後に、意図したような不揃いな形のスナック菓子が得られない。また、表面が皮膜のような感じになる。一方、粘度が6001cP以上の場合、衣生地の切れが悪く、団子のような衣生地がパフ種に付着してしまい、得られるスナック菓子は全体的にゴロゴロした感じになってしまう。なお、この粘度は、C型粘度計(東京計器CVR−20)を使用した際の粘度である。
【0025】
なお、衣生地の温度は、原料を混合し終わった際に、5〜12℃、好ましくは10℃となるようにするのが望ましい。5℃未満の場合、混合時に氷状の冷水を使わなければならず、混合が困難である。また、衣生地の温度が高すぎると、衣生地の粘度が上昇してしまう。
【0026】
また、後述の実施例のように、個々に形が不揃いになるような(例えば、まるで本物の「から揚げ」のような)スナック菓子を製造したい場合には、打ち粉をしてから20秒以内にパフ種を油調するのが好ましい。20秒を超えてしまうと、打ち粉と衣生地がなじんでしまい、意図したような不揃いな形のスナック菓子が得られないのである。
【0027】
===実施形態===
図1に、本発明の一実施形態のフローチャートを示す。
まず、コーングリッツ等の原料からなるパフ生地を、例えば一軸又は二軸エクストルーダを使って膨化させて、パフ種を得る(S101)。次いで、得られたパフ種に油を被覆して、パフ種表面に油膜を形成する(S102)。それから、油で被覆されたパフ種に、小麦粉等の粉体原料と水等の液体とからなる衣生地を被覆する(S103)。その後、必要に応じて、打ち粉をする(S104)。最後に、パフ種を油調する(S105)。
【0028】
このようにして得られるスナック菓子は、種の部分(中心部分)がいわゆるパフ菓子からなり、衣の部分(外側部分)がフライされた状態となる。パフ菓子はそもそもサクサクとした食感と、ジワっととろけるような食感を併せ持つ食材であるが、本スナック菓子では、このパフ種(パフ菓子)のサクサクとした食感・とろけるような食感と、フライされた衣のサクサク感・パリパリ感とが相まって、これまでにない食感が提供される。
【実施例】
【0029】
本発明の一実施例を以下に記載する。
パフ生地としては、コーングリッツ原料からなる生地を採用した。パフ生地と同量のパーム油を量り取り、溶解し、予め香料を添加しておいた。香料の重量は、パーム油の約0.8%とした。
【0030】
次いで、このパフ生地を、エクストルーダを用いて膨化させた。
次いで、得られたパフ種を230℃前後のオーブンで1〜2分、焦げない程度に焼成した。そして、焼きあがったパフ種を温めておいたボールに移した。ボールに香料入りパーム油を少量ずつ、パフ種全体になじむようにかき混ぜながら注ぎ入れた。なお、このようにパフ種を焼成することにより、パフ種を温めることができるのと同時に、パフ種に含まれる余分な水分を飛ばすことができ、パフ種に掛ける油の浸透性を高めることができる。
【0031】
衣生地の材料は以下の通りとした。衣生地の全重量は、パフ生地に対して約5.62倍(香料入りパーム油を被覆したパフ種の約2.8倍)とした。
・小麦粉(薄力粉) 100.0%
・チキンペースト 18.0%
・食塩 4.0%
・グルタミン酸ナトリウム 4.0%
・ブラックペッパーパウダー 3.5%
・ニンニクパウダー 3.0%
・ジンジャーパウダー 0.7%
・ホワイトペッパーパウダー 0.5%
・メースパウダー 0.4%
・セージパウダー 0.4%
・パプリカ色素 0.2%
・冷水 150.0%
※小麦粉を100とした場合のそれぞれの重量比
【0032】
ボールに水(水道水)を量り取り、小麦粉以外の原料を投入し、撹拌した。次いで、小麦粉を少量ずつ加えながら撹拌した。小麦粉を投入し終わったら、目的の粘度(C型粘度計(東京計器CVR−20)で3000〜4000cP)に達するまで撹拌した。
【0033】
できあがった衣生地に、油掛けしたパフ種を完全に浸して、取り出し、打ち粉をして、パフ種の表面全体を打ち粉でコーティングした。打ち粉には小麦粉(強力粉)を用いた。打ち粉後、20秒以内に、上記パフ種を170℃のパーム油に投入し、撹拌しながら3分間フライした。
【0034】
フライ後、できあがったスナック菓子を引き上げ、遠心分離機を使用してスナック菓子に含まれる油分の量を30〜39%に調整した。その後、スナック菓子をボールに取り、撹拌しながら適量(スナック菓子100に対して2.5)のシーズニングを少量ずつ加えた。
【0035】
図2A及び図2Bに、本実施例により得られたスナック菓子1の概略的な斜視図及び断面図を示す。スナック菓子1の表面(衣生地の層20)は、全体的に不均一で、凸凹したテクスチャーに仕上がっており、見た目はまるで本物のから揚げのようであった。また、図2Bに示すように、本スナック菓子1においては、通常のパフ菓子のように気泡を含んだパフ種10が中心部に存在し、パフ種10の外表面に衣生地の層20が薄く形成されていた。パフ種10と衣生地の層20とは、互いになじみつつも、別個の層を形成しており、衣生地がパフ種10に浸漬しすぎているということはなかった。食した際、本スナック菓子は、外側の衣生地の層20のパリパリ感・カリカリ感と、中心部のパフ種10のサクサク感・とろける感触とを併せ持った食感を呈した。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】図2Aは、実施例により得られたスナック菓子の概略的な斜視図であり、図2Bは、その断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 スナック菓子
10 パフ種
20 衣生地の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パフ生地を膨化させてパフ種を得る工程と、
前記パフ種を油で被覆する工程と、
前記油で被覆した前記パフ種を衣生地で被覆する工程と、
前記衣生地で被覆した前記パフ種を油調する工程と
を備えることを特徴とするスナック菓子製造方法。
【請求項2】
油調した後に、得られたスナック菓子を遠心分離工程に付すことを特徴とする、請求項1に記載のスナック菓子製造方法。
【請求項3】
少なくとも前記油又は前記衣生地に予め味付けをしておくことを特徴とする、請求項1又は2に記載のスナック菓子製造方法。
【請求項4】
被覆する前記油の重量が、前記パフ生地の重量に対して50%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のスナック菓子製造方法。
【請求項5】
前記衣生地の粘度が、1500〜6000cPであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のスナック菓子製造方法。
【請求項6】
油調する前に、前記衣生地で被覆した前記パフ種に打ち粉をすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のスナック菓子製造方法。
【請求項7】
打ち粉をしてから20秒以内に前記パフ種を油調することを特徴とする、請求項6に記載のスナック菓子製造方法。
【請求項8】
パフ生地を膨化させてパフ種を得る工程と、
前記パフ種を油で被覆する工程と、
前記油で被覆した前記パフ種を衣生地で被覆する工程と、
前記衣生地で被覆した前記パフ種を油調する工程と
を備える方法によって製造されるスナック菓子。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−215499(P2007−215499A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40822(P2006−40822)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(303025825)株式会社東ハト (2)
【Fターム(参考)】