説明

スパイラル型分離膜モジュールおよびスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ

【課題】 スパイラル型分離膜エレメントの交換作業を容易にかつ迅速に行うことを可能とし、濃縮液の滞留部が存在せず、かつ中空糸膜分離装置への装着が容易であるスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダおよびそれを備えたスパイラル型分離膜モジュールを提供することにある。
【解決手段】 スパイラル型分離膜モジュール100は、スパイラル型分離膜エレメント1の両端にスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ60を装着してなる。スパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ60は、原液入口12が設けられた第1のヘッダ部61と、透過液出口13および濃縮液出口14が設けられた第2のヘッダ部62とを含む。スパイラル型分離膜エレメント1の集液管5の一端部は、コネクタ56により第2のヘッダ部62の透過液出口13に連結される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スパイラル型分離膜エレメント用ヘッダおよびそれを備えたスパイラル型分離膜モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、純水または用水の造水プロセス、食品、薬品等の製造プロセス、生活排水、産業排水等の各種プロセスにおいて、原液から固形物質や融解性物質を分離するために、スパイラル型、中空糸、平膜等の分離膜モジュールが多く使用されている。
【0003】例えば、スパイラル型分離膜モジュールは、圧力容器内にスパイラル型分離膜エレメントを装填した構造を有する。このスパイラル型分離膜エレメントは、膜面積を大きくとれ、かつ中空糸膜に比べて膜が破損しにくいという利点を有する。
【0004】図3は、従来のスパイラル型分離膜モジュールの一例を示す一部切欠き斜視図である。図3のスパイラル型分離膜モジュール101において、圧力容器50は筒形ケース51およびその筒形ケース51の両端の開口部を閉塞する一対の端板52および53により構成される。一方の端板52には、原液入口12が形成され、他方の端板53には濃縮液出口14が形成され、かつ端板53の中央部に透過液出口13が形成されている。透過液出口13には短管57が取り付けられている。
【0005】圧力容器50内の隣接するスパイラル型分離膜エレメント1は、集液管5の一端部同士がコネクタ56で連結されており、また濃縮液出口14側のスパイラル型分離膜エレメント1は集液管5の一端部が短管57とコネクタ56で連結されている。このようにして、3本のスパイラル型分離膜エレメント1が直列に並んで圧力容器50内に装填されている。
【0006】各スパイラル型分離膜エレメント1の外周面と圧力容器50の内周面との間はOリング55により液密にシールされている。
【0007】図3に示すように、原液9は原液入口12から圧力容器50内に供給され、原液入口12側のスパイラル型分離膜エレメント1の一方の端面からスパイラル型分離膜エレメント1内に流入し、原液流路を通って他方の端面から流出する。原液入口12側のスパイラル型分離膜エレメント1から流出した原液9は、同様にして、隣接するスパイラル型分離膜エレメント1を通過し、さらに濃縮液出口14側のスパイラル型分離膜エレメント1を通過した後、濃縮液11として濃縮液出口14から排出される。この過程で、3つのスパイラル型分離膜エレメント1の分離膜2を透過した水が、集液管5を通り透過液出口13から透過液10として排出される。
【0008】大規模な造水施設においては、図3に示すスパイラル型分離膜モジュール101のように複数のスパイラル型分離膜エレメント1を装填したスパイラル型分離膜モジュールを並列、かつ直列に並べてクリスマスツリー型に配置している。これにより、処理容量が大きくなっても高い操作効率をあげることができる。一方、小規模な造水ユニットでは、圧力容器50内に1本のスパイラル型分離膜エレメント1を装填したスパイラル型分離膜モジュールを並列に配置して処理を行っている。
【0009】図3のように複数のスパイラル型分離膜エレメント1を装填したスパイラル型分離膜モジュール101は横向きに設置されるが、スパイラル型分離膜エレメント1を1本装填したスパイラル型分離膜モジュールは縦向きに設置されることが多い。酵素やタンパクの濃縮および精製プロセスにおいては、スパイラル型分離膜エレメント1を1本装填したスパイラル型分離膜モジュールを数本から数十本規模で縦向きに並列に並べて設置し、処理を行っている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】スパイラル型分離膜モジュール101は、長時間使用するとスパイラル型分離膜エレメント1の目詰まりや劣化を生じ、分離性能が低下する。このため、スパイラル型分離膜エレメント1を定期的に交換する必要がある。
【0011】固定配管の膜分離装置では、スパイラル型分離膜エレメント1を交換する際の交換作業が煩雑になるという問題がある。図3に示すスパイラル型分離膜モジュール101では、原液配管が圧力容器50の一方の端板52の原液入口12に接続され、透過液配管および濃縮液配管がそれぞれ他方の端板53の透過液出口13および濃縮液出口14に接続されている。スパイラル型分離膜エレメント1を交換する際には、原液配管、透過液配管および濃縮液配管をそれぞれ端板52,53から取り外した後、端板52,53を筒形ケース51から取り外し、内部に挿入されたスパイラル型分離膜エレメント1を交換する。交換後は、再び端板52および53を筒形ケース51に固定し、配管を元の接続状態に復旧させる必要がある。このような解体および復旧作業は煩雑であり、膨大な時間や人手を要する。
【0012】特に、圧力容器50を縦向きに設置した場合、スパイラル型分離膜エレメント1を上方向に引き抜いて交換を行うので非常に作業性が悪い。また、スパイラル型分離膜エレメント1を上方向に引き抜いて交換を行うには、圧力容器50上端からスパイラル型分離膜エレメント1の1本分の交換スペースを確保する必要があるため、スペースの限られた場所への設置は困難である。
【0013】また、スパイラル型分離膜モジュール101は、圧力容器50の内周面とスパイラル型分離膜エレメント1の外周面とで形成される空隙部に濃縮液11が滞留するため、スパイラル型分離膜エレメント1の菌汚染やファウリング(膜面の汚れ)の要因となる。そこで、Uターンベッセルと呼ばれる圧力容器を用いるスパイラル型分離膜モジュールが提案されている。
【0014】図4は、Uターンベッセルを用いた従来のスパイラル型分離膜モジュールの断面図である。
【0015】図4のスパイラル型分離膜モジュール102は食品の製造プロセス等に用いられているもので、Uターンベッセル54内にスパイラル型分離膜エレメント1が装填されている。Uターンベッセル54は、以下の点を除いて図3の圧力容器50と同様の構造を有する。
【0016】図4のUターンベッセル54においては、濃縮液出口14が、筒形ケース51の原液入口12近くに設けられている。また、スパイラル型分離膜エレメント1の外周面とUターンベッセル54の内周面との間はUパッキン58により液密にシールされている。
【0017】図4に示すスパイラル型分離膜モジュール102の運転時には、原液入口12から導入された原液9はスパイラル型分離膜エレメント1内を通る過程において濃縮液11と透過液10に分離される。透過液10は集液管5を通り透過液出口13より外部へ排出される。一方、濃縮液11は端板53まで達した後、そこで反転してスパイラル型分離膜エレメント1の外周面とUターンベッセル54の内周面との間に形成されている空隙部を通って、濃縮液出口14に達し、ここから外部へ排出される。
【0018】このように、Uターンベセッル54を用いたスパイラル型分離膜モジュール102では、圧力容器50の内周面とスパイラル型分離膜エレメント1の外周面とで形成される空隙部に濃縮液11が滞留することはない。
【0019】しかしながら、スパイラル型分離膜モジュール102においてもスパイラル型分離膜エレメント1の交換の作業性が悪く、また、交換のためのスペースを必要とする。
【0020】一方、膜分離には、上記のスパイラル型分離膜モジュールの他にも様々な種類の分離膜モジュールが用いられる。特に、中空糸膜エレメントを圧力容器内に装填してなる中空糸膜モジュールは、単位体積当たりの膜面積(体積効率)の点から多く使用されている。しかしながら、中空糸膜エレメントは膜が折れやすく、また、コストも高い。これに対し、スパイラル型分離膜エレメントは、膜が破損しにくくコストも低いので、中空糸膜モジュールの代わりにスパイラル型分離膜モジュールを用いれば、低コストで長期にわたり信頼性の高い運転を行うことができる。
【0021】しかしながら、スパイラル型分離膜モジュール101の原液入口12、透過液出口13および濃縮液出口14の配置が中空糸膜モジュールとは異なるため、中空糸膜分離装置の全ての配管をスパイラル型分離膜モジュール101に合わせて新製しない限り、中空糸膜分離装置にスパイラル型分離膜モジュール101を装着することは不可能である。このため、中空糸膜モジュールをスパイラル型分離膜モジュールに取り換える作業は大がかりになり、非常にコストがかかる。
【0022】本発明の目的は、スパイラル型分離膜エレメントの交換作業を容易にかつ迅速に行うことを可能とし、濃縮液の滞留部が存在せず、かつ中空糸膜分離装置への装着が容易であるスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダおよびそれを備えたスパイラル型分離膜モジュールを提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段および発明の効果】第1の発明に係るスパイラル型分離膜モジュールは、原液入口が設けられた第1のヘッダ部をスパイラル型分離膜エレメントの一端部に装着し、透過液出口および濃縮液出口が設けられた第2のヘッダ部をスパイラル型分離膜エレメントの他端部に装着したものである。
【0024】本発明に係るスパイラル型分離膜モジュールの運転時には、第1のヘッダ部に設けられた原液入口に原液配管が接続され、また、第2のヘッダ部に設けられた濃縮液出口および透過液出口に濃縮液配管および透過液配管が接続される。
【0025】原液は、第1のヘッダ部の原液入口よりスパイラル型分離膜モジュール内に供給される。原液は、スパイラル型分離膜エレメントを通過する過程において透過液と濃縮液に分離され、透過液は第2のヘッダ部の透過液出口から排出され、濃縮液は第2のヘッダ部の濃縮液出口より排出される。
【0026】この場合、スパイラル型分離膜エレメントの外周部に液が供給されないので、スパイラル型分離膜モジュール内における液の滞留を防ぐことができる。また、第1および第2のヘッダ部を取り外した後、スパイラル型分離膜エレメントを軸方向と垂直な方向に取り出すことにより、スパイラル型分離膜エレメントを交換することができるので、少ないスペースでスパイラル型分離膜エレメントの交換作業を効率良く行うことができる。
【0027】また、スパイラル型分離膜エレメントの外周面が外装材で被覆されていることが好ましい。
【0028】これにより、低圧で行う膜分離操作において、圧力容器なしでスパイラル型分離膜モジュールを運転することができる。
【0029】また、圧力容器がないとスパイラル型分離膜モジュールが軽量となるため、スパイラル型分離膜エレメントに第1のヘッダ部および第2のヘッダ部を装着したまま、スパイラル型分離膜モジュールを配管から取り外して交換する際にも、交換作業を効率よく行うことができる。
【0030】特に、第1のヘッダ部はスパイラル型分離膜エレメントの一端部に嵌合する円筒状の側面部と底面部とを有し、原液入口は第1のヘッダ部の底面部に設けられ、第2のヘッダ部はスパイラル型分離膜エレメントの一端部に嵌合する円筒状の側面部と底面部とを有し、透過液出口は第2のヘッダ部の側面部に設けられ、濃縮液出口は第2のヘッダ部の底面部に設けられ、第2のヘッダ部に透過液出口とスパイラル型分離膜エレメントの集液管とを連絡する管路が設けられてもよい。
【0031】これにより、スパイラル型分離膜モジュールの原液入口、濃縮液出口および透過液出口の配置が中空糸膜モジュールの原液入口、濃縮液出口および透過液出口の配置と同様になる。このため、中空糸膜分離装置の原液配管、濃縮液配管および透過液配管の配置を変更することなく、スパイラル型分離膜モジュールを中空糸膜モジュールに代えて中空糸膜分離装置に容易に装着することができる。
【0032】第2の発明に係るスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダは、スパイラル型分離膜エレメントに装着されるスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダであって、スパイラル型分離膜エレメントの一端部に装着される第1のヘッダ部と、スパイラル型分離膜エレメントの他端部に装着される第2のヘッダ部とを備え、第1のヘッダ部に原液入口が設けられ、第2のヘッダ部に透過液出口および濃縮液出口が設けられたものである。
【0033】スパイラル型分離膜モジュールの運転時には、第1のヘッダ部の原液入口に原液配管が接続され、また、第2のヘッダ部の透過液出口および濃縮液出口に透過液配管および濃縮液配管がそれぞれ接続される。
【0034】この場合、スパイラル型分離膜エレメントの外周部に液が供給されないので、スパイラル型分離膜モジュール内における液の滞留を防ぐことができる。また、第1および第2のヘッダ部を取り外した後、スパイラル型分離膜エレメントを軸方向と垂直な方向に取り出すことによりスパイラル型分離膜エレメントを交換することができるので、少ないスペースでスパイラル型分離膜エレメントの交換作業を効率良く行うことができる。
【0035】また、第1のヘッダ部は、外周面が外装材で被覆されたスパイラル型分離膜エレメントの一端部に装着され、第2のヘッダ部はスパイラル型分離膜エレメントの他端部に装着されることが好ましい。
【0036】これにより、低圧で行う膜分離操作において、圧力容器なしでスパイラル型分離膜モジュールを運転することができる。
【0037】特に、第1のヘッダ部はスパイラル型分離膜エレメントの一端部に嵌合する円筒状の側面部と底面部とを有し、原液入口は第1のヘッダ部の底面部に設けられ、第2のヘッダ部はスパイラル型分離膜エレメントの他端部に嵌合する円筒状の側面部と底面部とを有し、透過液出口は第2のヘッダ部の側面部に設けられ、濃縮液出口は第2のヘッダ部の底面部に設けられ、第2のヘッダ部に透過液出口とスパイラル型分離膜エレメントとの集液管とを連絡する管路が設けられてもよい。
【0038】これにより、スパイラル型分離膜モジュールの原液入口、濃縮液出口および透過液出口の配置が中空糸膜モジュールの原液入口、濃縮液出口および透過液出口の配置と同様になる。このため、中空糸膜分離装置の原液配管、濃縮液配管および透過液配管の配置を変更することなく、スパイラル型分離膜モジュールを中空糸膜モジュールに代えて中空糸膜分離装置に容易に装着するこができる。
【0039】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係るスパイラル型分離膜モジュールの一例を示す断面図である。
【0040】図1に示すスパイラル型分離膜モジュール100は、スパイラル型分離膜エレメント1およびスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ60からなる。
【0041】スパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ60は、原液取り込み用の第1のヘッダ部61と、透過液および濃縮液取り出し用の第2のヘッダ部62とを含む。第1のヘッダ部61の底面中央部には、原液入口12が設けられ、第2のヘッダ部62の底面中央部には、濃縮液出口14が設けられ、また、第2のヘッダ部62の側面部には、透過液出口13が設けられている。このように、原液入口12と濃縮液出口14は同一方向に配置され、透過液出口13は、原液入口12および濃縮液入口14と垂直に配置されている。
【0042】スパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ60は、スパイラル型分離膜エレメント1の両端部に装着される。第1のヘッダ部61側の集液管5端部は閉塞されており、一方、第2のヘッダ部62側の集液管5端部は、コネクタ56により第2のヘッダ部62の透過液出口13に連結されている。
【0043】図2は、スパイラル型分離膜エレメントの一部切欠き斜視図である。図2に示すスパイラル型分離膜エレメント1は、透過液流路材3の両面に分離膜2を重ね合わせて3辺を接着することにより封筒状膜4を形成し、その封筒状膜4の開口部を有孔中空管からなる集液管5に取り付け、ネット状の原液流路材6とともに集液管5の外周面にスパイラル状に巻回してなる。封筒状膜4の外周面は、ガラス繊維強化プラスチックからなる外装材7で被覆され、また、両端部にはパッキンホルダ8が取り付けられている。
【0044】スパイラル型分離膜エレメント1の一方の端面側から供給された原液9は、原液流路材6に沿って流れ、スパイラル型分離膜エレメント1の他方の端面側から濃縮液11として排出される。原液9が原液流路材6に沿って流れる過程で分離膜2を透過した透過液が透過液流路材3に沿って集液管5の内部に流れ込み、集液管5の端部から排出される。
【0045】図1のスパイラル型分離膜モジュール100は、縦向きに設置される。運転時には、第1のヘッダ部61の原液入口12に原液配管が接続され、また、第2のヘッダ部62の透過液出口13および濃縮液出口14には、透過液配管および濃縮液配管がそれぞれ接続される。
【0046】原液配管より供給された原液9は、第1のヘッダ部61の原液入口12を通りスパイラル型分離膜エレメント1内に流入し、図2の原液流路材6に沿って流れた後、スパイラル型分離膜エレメント1の他方の端面から濃縮液11として流出する。この濃縮液11は、第2のヘッダ部62の濃縮液出口14から排出される。上述した過程で、図2に示したようにスパイラル型分離膜エレメント1の分離膜2を透過した透過液10は、スパイラル型分離膜エレメントの集液管5を通り第2のヘッダ部62の透過液出口13から外部に排出される。
【0047】スパイラル型分離膜モジュール100のスパイラル型分離膜エレメント1を交換する際には、第1のヘッダ部61の原液入口12に原液配管が接続され、第2のヘッダ部62の透過液出口13および濃縮液出口14に透過液配管および濃縮液配管がそれぞれ接続された状態で、第1のヘッダ部61をスパイラル型分離膜エレメント1から取り外すとともに、第2のヘッダ部62をスパイラル型分離膜エレメント1から取り外した後、スパイラル型分離膜エレメント1を横方向に取り外す。そして、新たなスパイラル型分離膜エレメント1を、第1のヘッダ部61および第2のヘッダ部62に取り付ける。
【0048】また、図1に示すように、スパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ60を用いると圧力容器50が不要となる。このため、圧力容器50内からスパイラル型分離膜エレメント1を上方へ引き抜く作業が不要となるので、交換の作業性も向上する。また、スパイラル型分離膜エレメント1の上方に交換のためのスペースを用意する必要がないので、スペースの限られた場所に膜分離装置を設置することができる。
【0049】また、スパイラル型分離膜モジュール100を原液配管、透過液配管および濃縮液配管から取り外し、スパイラル型分離膜エレメント1にスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ60を装着したまま、スパイラル型分離膜モジュール100を横方向に取り出して交換する際、圧力容器50をもたないスパイラル型分離膜モジュール100は軽量であるため、効率よく交換作業を行うことができる。
【0050】さらに、図1に示すスパイラル型分離膜モジュール100には、図3に示したスパイラル型分離膜モジュール101のような圧力容器50の内周面とスパイラル型分離膜エレメント1の外周面との間の空隙部は存在しない。このため、スパイラル型分離膜エレメント1の外周部が濃縮液11と接することがなく、スパイラル型分離膜モジュール100内に濃縮液11が滞留することもない。これにより、濃縮液11の滞留が要因となり生じる分離膜2の菌汚染やファウリングを防ぐことができる。
【0051】また、スパイラル型分離膜モジュール100では、上述したように空隙部が存在しないことから、洗浄の際に原液入口12から供給された洗浄液はスパイラル型分離膜エレメント1内を通過した後、滞留することなく、透過液出口13および濃縮液出口14から外部に排出される。このため、運転再開時にスパイラル型分離膜モジュール100内に残った洗浄液が原液に容易に置換される。したがって洗浄後、短時間で膜分離操作を再開することができる。また、スパイラル型分離膜エレメント1の交換のためにスパイラル型モジュール100内の液を抜く際にも、容易に、かつ短時間で液抜きを行うことができる。
【0052】さらに、スパイラル型分離膜モジュール100では、原液入口12、濃縮液出口14および透過液出口13が中空糸膜モジュールの原液入口、濃縮液出口および透過液出口とそれぞれ同じ配置で設けられている。このため、中空糸膜モジュールを用いた膜分離装置の原液配管、濃縮液配管および透過液配管の配置を変更することなく、膜分離装置に装着された中空糸膜モジュールに代えてスパイラル型分離膜モジュールを低コストで装着することができる。
【0053】以上のように、本発明に係るスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ60を用いれば、スパイラル型分離膜エレメント1を容易にかつ迅速に交換することができ、また、交換のためのスペースをとる必要もない。また、スパイラル型分離膜モジュール100内に濃縮液の滞留部が存在しないため、分離膜2の菌汚染やファウリングを防ぐことができる。その結果、スパイラル型分離膜モジュール100の長期安定運転が可能となる。さらに、このスパイラル型分離膜モジュール100は、中空糸膜モジュールを用いた膜分離装置の配管の配置を変更することなく、容易に装着することができるので、低コストで中空糸膜モジュールをスパイラル型分離膜モジュールに取りかえることができる。特に、このスパイラル型分離膜モジュールを低圧で行う逆浸透膜分離操作や低圧で行う限外濾過膜分離操作に用いた場合、分離性能の高い運転を長期にわたって行うことが可能となる。
【0054】
【実施例】図1に示すスパイラル型分離膜モジュールを中空糸限外濾過膜分離装置に装着し、運転を行った。実施例におけるスパイラル型分離膜エレメントとしては、日東電工株式会社製NTU−3150−S4を用い、中空糸限外濾過膜分離装置としては、日東電工株式会社製UF−1を用いた。中空糸限外濾過膜分離装置の運転条件は下表の通りである。
【0055】
【表1】


【0056】この結果、得られた透過液の濁度は0.1度以下であった。また、透過流束は0.5m3 /hで、供給液(原液)流量に対する透過液の回収率は75%であった。
【0057】その後、このスパイラル型分離膜モジュールの次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄を行った。スパイラル型分離膜モジュールの原液入口から、洗浄液として、有効塩素濃度50ppmの次亜塩素酸ナトリウムを供給し、この洗浄液を用いて、スパイラル型分離膜モジュールの循環運転を30分間行った後、2時間放置した。洗浄後、再び表1と同条件で中空糸限外濾過膜分離装置の運転を再開した。
【0058】このスパイラル型分離膜モジュール内の洗浄液が原液で置換されるのにかかった時間は、中空糸膜モジュールと同等の短かい時間であった。このため、再び膜分離操作を再開できる状態になるのにかかった時間は、従来の圧力容器を用いたスパイラル型分離膜モジュールよりも短かった。
【0059】図1に示すスパイラル型分離膜モジュールにおいて、スパイラル型分離膜エレメントの交換を行った。
【0060】中空糸限外濾過膜分離装置の配管とスパイラル型分離膜モジュール用ヘッダは接続したままで、スパイラル型分離膜モジュール用ヘッダからスパイラル型分離膜エレメントのみを外して取り出した。新しく交換したスパイラル型分離膜エレメントは、取り外し時と逆の手順によりスパイラル型分離膜モジュール用ヘッダに取り付けた。この際、交換に要した時間は4分であった。
【0061】[比較例]比較例として、図3に示すような圧力容器内に実施例と同じスパイラル型分離膜エレメント(NTU−3150−S4)を1本装填したスパイラル型分離膜モジュールを用いた。このスパイラル型分離膜モジュールを縦向きにしてスパイラル型限外濾過膜分離装置RUW−5に装着し、運転を行った。スパイラル型限外濾過膜分離装置の運転条件は下表の通りである。
【0062】
【表2】


【0063】この結果、得られた透過液の濁度は1度以下であった。また、透過流束は0.5m3/hで、供給液(原液)流量に対する透過液の回収率は75%であった。
【0064】さらに、上記のスパイラル型分離膜モジュールにおいて、スパイラル型分離膜エレメントの交換を行った。
【0065】スパイラル型限外濾過膜分離装置の配管を圧力容器の端板から取り外した後、端板を筒形ケースから取り外し、内部に挿入されたスパイラル型分離膜エレメントを上方向に引き抜いて取り出した。スパイラル型分離膜エレメントの交換後は、再び端板を筒形ケースに固定し、配管を元の接続状態に戻した。この際、交換に要した時間は7分であった。
【0066】以上のように、実施例においては、スパイラル型分離膜モジュールを中空糸限外濾過膜分離装置に容易に装着することができるとともに、長期安定運転を行うことができる。また、スパイラル型分離膜モジュールの洗浄後、中空糸膜モジュールと同様に短時間で膜分離操作を再開することができる。さらに、少ないスペースでスパイラル型分離膜エレメントの交換作業を容易にかつ迅速に行うことができる。
【0067】これに対し、比較例においては、中空糸限外濾過膜分離装置の配管を変更しない限りスパイラル型分離膜モジュールを装着することができない。また、スパイラル型分離膜モジュール内に滞留した濃縮液が、スパイラル型分離膜エレメントの性能の低下および寿命の低下を引き起こす。さらに、スパイラル型分離膜モジュールの解体および復旧作業が煩雑であり、スパイラル型分離膜エレメントを交換するためのスペースが必要となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダおよびスパイラル型分離膜モジュールの例を示す断面図である。
【図2】スパイラル型分離膜エレメントの一部切欠き斜視図である。
【図3】従来のスパイラル型分離膜モジュールの一部切欠き斜視図である。
【図4】Uターンベッセルを用いたスパイラル型分離膜モジュールの断面図である。
【符号の説明】
1 スパイラル型分離膜エレメント
2 分離膜
5 集液管
7 外装材
9 原液
10 透過液
11 濃縮液
12 原液入口
13 透過液出口
14 濃縮液出口
50 圧力容器
54 Uターンベッセル
60 スパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ
61 第1のヘッダ部
62 第2のヘッダ部
100,101,102 スパイラル型分離膜モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 原液入口が設けられた第1のヘッダ部をスパイラル型分離膜エレメントの一端部に装着し、透過液出口および濃縮液出口が設けられた第2のヘッダ部を前記スパイラル型分離膜エレメントの他端部に装着したことを特徴とするスパイラル型分離膜モジュール。
【請求項2】 前記スパイラル型分離膜エレメントの外周面が外装材で被覆されたことを特徴とする請求項1記載のスパイラル型分離膜モジュール。
【請求項3】 前記第1のヘッダ部は前記スパイラル型分離膜エレメントの一端部に嵌合する円筒状の側面部と底面部とを有し、前記原液入口は前記第1のヘッダ部の前記底面部に設けられ、前記第2のヘッダ部は前記スパイラル型分離膜エレメントの他端部に嵌合する円筒状の側面部と底面部とを有し、前記透過液出口は前記第2のヘッダ部の前記側面部に設けられ、前記濃縮液出口は前記第2のヘッダ部の前記底面部に設けられ、前記第2のヘッダ部に前記透過液出口と前記スパイラル型分離膜エレメントの集液管とを連結する管路が設けられたことを特徴とする請求項1または2記載のスパイラル型分離膜モジュール。
【請求項4】 スパイラル型分離膜エレメントに装着されるスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダであって、前記スパイラル型分離膜エレメントの一端部に装着される第1のヘッダ部と、前記スパイラル型分離膜エレメントの他端部に装着される第2のヘッダ部とを備え、前記第1のヘッダ部に原液入口が設けられ、前記第2のヘッダ部に透過液出口および濃縮液出口が設けられたことを特徴とするスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ。
【請求項5】 前記第1のヘッダ部は、外周面が外装材で被覆されたスパイラル型分離膜エレメントの一端部に装着され、前記第2のヘッダ部は前記スパイラル型分離膜エレメントの他端部に装着されることを特徴とする請求項4記載のスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ。
【請求項6】 前記第1のヘッダ部は前記スパイラル型分離膜エレメントの一端部に嵌合する円筒状の側面部と底面部とを有し、前記原液入口は前記第1のヘッダ部の前記底面部に設けられ、前記第2のヘッダ部は前記スパイラル型分離膜エレメントの他端部に嵌合する円筒状の側面部と底面部とを有し、前記透過液出口は前記第2のヘッダ部の前記側面部に設けられ、前記濃縮液出口は前記第2のヘッダ部の前記底面部に設けられ、前記第2のヘッダ部に前記透過液出口と前記スパイラル型分離膜エレメントの集液管とを連結する管路が設けられたことを特徴とする請求項4または5記載のスパイラル型分離膜エレメント用ヘッダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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