説明

スパイラル鋼管の製造方法およびスパイラル鋼管周長制御システム

【課題】スパイラル鋼管の製造工程において、溶接のオフセット不良を防止しつつ、周長を容易に調整可能とする。
【解決手段】製造途中のスパイラル鋼管7の管状に成形された部分の内周長または外周長を内面溶接の直後となる位置で測定する。スパイラル鋼管7の内周長または外周長の測定値に基づいた内周長または外周長の変化量を求める。そして、スパイラル鋼管7の内周長または外周長が目標値に近づくように、内面溶接された直後の前記製造途中のスパイラル鋼管7を回転移動する。この際に、スパイラル鋼管7の鋼帯2に対する修正角度を外周長の変化量から求め、その修正角度だけスパイラル鋼管7を鋼帯2に対して回転移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイラル鋼管(スパイラル溶接鋼管)の製造工程中における鋼帯の成形・溶接後の鋼管の周長が一定となるように制御することが可能なスパイラル鋼管の製造方法およびスパイラル鋼管周長制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スパイラル鋼管は、素材である鋼帯を螺旋状に巻き曲げ成形しながら、その継ぎ目を溶接接合することにより連続的に製造される。そして、スパイラル鋼管の製造では、溶接位置の移動、溶接ギャップや管周長の変動、更にオフセット(溶接部の段差)を発生させながら鋼管の成形を行っている。これら変動原因の大半は、材料コイルの降伏点のばらつきやコイルキャンバー(蛇行)であり、いずれも予測し難い要因であるため、変動への対処はオペレーターの経験と習熟度に頼るところが多い。特に鋼管の周長、ギャップ、オフセットの3つは、相互に関連があり、品質に直結するものであるが、これら品質管理項目のうち、鋼管の周長および/または径の制御方法に関連して、従来、以下のことが特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
まず、特許文献1は、スパイラル鋼管の外周値(外周側の周長)を自動測定すると共に、外周値の自動制御を行う事を目的とし、スパイラル鋼管の外周に設置した複数の非接触変位計を用い、該配置位置からパイプ表面までの距離の変位量を測定し、前記変位量をパイプ外周値に換算することによりパイプ外周値を把握すると共に、溶接時に強制的に板厚方向のオフセットを付与するための外周調整機構を連動させることにより、鋼管の外周値を狙いとなる外周値となるように制御するものである。
【0004】
特許文献2は、スパイラル鋼管の製造方法において、オフセットを生じることなく鋼管の外径を常に所定の公差内に収めることを目的とし、内面溶接直後の管外径を測定し、その結果得られた外形変動に応じて内面溶接時のバッキング押力を制御して管外径を調整するものである。
【0005】
特許文献3は、スパイラル鋼管の周長を時系列的に測定し、その測定値と制御目標値との偏差に関連する比例項および積分項からなる制御式に従い周長修正のための制御量を演算し、この演算結果に基いて溶接点におけるスパイラル鋼管と金属帯(鋼帯)との相対位置を調整することを特徴とするスパイラル鋼管の管周長制御方法である。
【0006】
【特許文献1】特開平5−23733号公報
【特許文献2】特開平61−180613号公報
【特許文献3】特開昭57−115994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法は、溶接時に強制的に板厚方向のオフセットを付与することで外周長の制御を行う方法であるが、この方法ではオフセット調整量によっては溶接時に鋼帯幅方向端の突合せ部に板厚方向の過大なオフセットが生じ、溶接終了後の鋼管の溶接ビード部形状が悪化(いわゆるオフセット不良が発生)するほか、溶接ビード部に内部欠陥が生じやすくなる。また、外周長を小さくする方向の制御はしやすいが、外周長を大きくする方向の制御はし難いという問題がある。
【0008】
特許文献2には、特許文献1のように鋼管の外径調整時に突合せ部にオフセットが生じない方法との記載がある。しかし、外径変動に応じて内面溶接時のバッキング押力を制御する特許文献2の方法では、やはり外径を小さくする方向の制御はしやすいが、外径を大きくする方向の制御はし難い(バッキング押力がある程度の値以上となるとバッキング押力をそれ以上上げても外径があまり大きくならなくなる)という問題がある。
【0009】
特許文献3の方法では、溶接点におけるスパイラル鋼管と金属帯(鋼帯)との相対的な上下位置の差(いわゆる段差)を補助ロールを用いて変更するため、特許文献1に開示の方法と同様に溶接ビード部の形状不良(オフセット不良)や溶接ビード部に内部欠陥が生じやすくなるという問題がある。
なお、特許文献3には成形角度の変更によってもスパイラル鋼管の周長を変化させることが可能であると記載があるが、その詳細については一切触れられていない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、スパイラル鋼管の製造工程において、溶接ビード部の形状不良や内部欠陥を生じることなく、鋼管の周長を一定に制御することが可能なスパイラル鋼管の製造方法およびスパイラル鋼管周長制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のスパイラル鋼管の製造方法は、鋼帯を外面および内面ローラからなる成形装置を用いて連続的に管状に成形しながら、前記鋼帯の幅方向端面の互いに突き合わされる部分を溶接していくことにより前記鋼帯からスパイラル鋼管を連続的に製造するスパイラル鋼管の製造方法において、
製造途中のスパイラル鋼管の管状に成形された部分の内周長または外周長を前記溶接位置の近傍で測定し、
前記内周長または外周長の測定値に基づいた前記スパイラル鋼管の内周長または外周長の変化量に応じて、前記スパイラル鋼管の内周長または外周長が目標値に近づくように前記製造途中のスパイラル鋼管の位置を変化させて、当該スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度を修正することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載のスパイラル鋼管の製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記内周長または外周長の変化量ΔLに対する前記スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度の修正量αを以下に示す式で求めることを特徴とする。
α=1/B・(cosθ−1/cosθ)ΔL
ここで、Bは前記鋼帯の幅、θは前記鋼帯の製造途中の前記鋼管に対する進入角度を示す。
【0013】
また、請求項3に記載のスパイラル鋼管の製造方法は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記鋼帯に対する前記スパイラル鋼管の角度を変更する方法が、製造途中の前記スパイラル鋼管を支持する鋼管支持部材の角度を変更することによるものであることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載のスパイラル鋼管の製造方法は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記内周長または外周長の測定に際し、前記内面ローラを支持するマンドレルの先端部に設けられた距離計を製造途中の前記スパイラル鋼管の周方向に回転させるとともに、当該距離計に当該距離計の各回転角度における前記鋼管の内面までの距離を非接触で測定させ、
前記距離計により計測された当該距離計の各回転角度における前記鋼管内面までの距離と、前記距離計の回転角度とを用いて、前記鋼管の内周長または外周長を算出することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載のスパイラル鋼管周長制御システムは、鋼帯を外面および内面ローラからなる成形装置を用いて連続的に管状に成形しながら、前記鋼帯の幅方向端面の互いに突き合わされる部分を溶接していくことにより前記鋼帯からスパイラル鋼管を連続的に製造する際に当該スパイラル鋼管の周長を制御するスパイラル鋼管周長制御システムであって、
製造途中のスパイラル鋼管の管状に成形された部分の内周長または外周長を前記溶接位置の近傍で測定する周長測定手段と、
前記スパイラル鋼管の位置を変化させて、当該スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度を修正する鋼管角度修正手段と、
前記周長測定手段に測定される前記内周長または外周長から前記スパイラル鋼管の内周長または外周長の変化量を算出するとともに、当該内周長または外周長の変化量に応じて、前記スパイラル鋼管の内周長または外周長が目標値に近づくように、前記製造途中のスパイラル鋼管の位置を変化させて、当該スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度を修正する際の角度の修正量を算出する修正角度演算手段と、
前記鋼管角度修正手段を制御して、前記修正角度演算手段で求められた前記修正量分だけ前記鋼管の角度を修正させる鋼管角度制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載のスパイラル鋼管周長制御システムは、請求項5に記載の発明において、前記修正角度演算手段は、前記内周長または外周長の変化量ΔLに対する前記スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度の修正量αを以下に示す式で求めることを特徴とする。
α=1/B・(cosθ−1/cosθ)ΔL
ここで、Bは前記鋼帯の幅、θは前記鋼帯の前記鋼管に対する進入角度を示す。
【0017】
また、請求項7に記載のスパイラル鋼管周長制御システムは、請求項5または請求項6に記載の発明において、前記鋼管角度修正手段は、前記製造途中のスパイラル鋼管を支持するとともに回転移動自在な鋼管支持部材と、当該鋼管支持部材を所定角度範囲内で回転駆動する回転駆動手段とを備えていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に記載のスパイラル鋼管周長制御システムは、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の発明において、前記周長測定手段は、前記内面ローラを支持するマンドレルの先端部に設けられ、製造途中の前記スパイラル鋼管内で当該スパイラル鋼管の周方向に沿って回転自在な距離計と当該距離計の測定値からスパイラル鋼管の外周長または内周長を算出する周長算出手段とを備え、
前記距離計は、製造途中の前記スパイラル鋼管の周方向に沿って回転するとともに、前記鋼管の内面までの距離を各回転角度において非接触で測定し、
前記周長算出手段は、前記距離計により測定された各回転角度での前記鋼管内面までの距離と、前記距離計の回転角度とを用いて、前記鋼管の内周長または外周長を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載のスパイラル鋼管の製造方法および請求項5に記載のスパイラル鋼管周長制御システムによれば、スパイラル鋼管を連続的に製造している際に変化するスパイラル鋼管の外周長または内周長を測定し、測定された外周長または内周長の変化量に応じて、製造途中のスパイラル鋼管の鋼帯に対する角度をスパイラル鋼管の位置を変更して修正することにより、スパイラル鋼管の外周長または内周長(いかこれらを周長と略す場合ある)を例えば所定の範囲内に維持することができる。ここで、スパイラル鋼管の鋼帯に対する角度を修正することで、相対的に鋼帯のスパイラル鋼管に対する進入角を変更した状態となり、これによって、スパイラル鋼管の周長が変化することになる。以上のことから、スパイラル鋼管の周長を高い精度で一定とする制御を容易に自動化することが可能となる。この場合に、周長を長くする方向の修正も、周長を短くする方向の修正も容易に行える。また、上述のオフセット不良が生じることがなく、品質の高い溶接が可能となる。また、コイルから巻き戻される鋼帯側を動かして進入角度を変更するよりも、鋼管側を動かす構成とすることで、製造装置が煩雑になったり、大型化したりするのを防止できる。
【0020】
請求項2に記載のスパイラル鋼管の製造方法および請求項6に記載のスパイラル鋼管周長制御システムによれば、前記式に基づいて、周長の変化量ΔLに対するスパイラル鋼管の角度の変化量αを算出して、スパイラル鋼管の内周長または外周長の変化量に応じて、前記スパイラル鋼管の内周長または外周長が目標値に近づくように、当該スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度を修正することができる。これにより、スパイラル鋼管の周長を精度高く一定に保持する制御を容易に自動化することができる。
【0021】
請求項3に記載のスパイラル鋼管の製造方法および請求項7に記載のスパイラル鋼管周長制御システムによれば、スパイラル鋼管の製造装置を煩雑化したり大型化したりすることなく、製造途中のスパイラル鋼管の角度を修正することにより、鋼帯のスパイラル鋼管に対する進入角度を変更することが可能となる。
【0022】
請求項4に記載のスパイラル鋼管の製造方法および請求項8に記載のスパイラル鋼管周長制御システムによれば、スパイラル鋼管の製造装置の一部としての成形装置の構造を利用するとともに一つの距離計を用いた簡単な構成で、自動的に成形直後(内面溶接直後)のスパイラル鋼管の周長を測定することが可能となる。これにより、スパイラル鋼管の製造における周長の制御の自動化を容易なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明の実施の形態に係るスパイラル鋼管の製造方法およびスパイラル鋼管周長制御システムを説明する前に、スパイラル鋼管の製造装置の概略を説明する。
なお、図1は、スパイラル鋼管の製造装置の概略を示すとともに、スパイラル鋼管周長制御システムを示すものである。また、図2および図3は、スパイラル鋼管の製造装置の概略を示すとともに、スパイラル鋼管周長制御システムにおける周長測定手段としてのスパイラル鋼管の周長測定装置を示す図であって、図2はスパイラル鋼管の出側(下流側)から素材である鋼帯の入側(上流側)に向かって見た図(正面図)であり、図3は要部側面図である。
【0024】
図1に示すように、スパイラル鋼管の製造装置においては、鋼帯2を搬入する側、すなわち、入側に設けられて鋼帯2を支持する鋼帯支持部材としての入側フレーム33と、鋼帯を螺旋状に曲げて幅方向端面同士を溶接して形成される製造途中のスパイラル鋼管7(以後、単に鋼管7と称する場合がある)を支持する鋼管支持部材としての出側フレーム32とを備えている。
そして、入側フレーム33には、鋼帯2の角度を規制するサイドガイド34、鋼帯の左右の端面(幅方向端面)を切削して整えるエッジミラー35、鋼帯2を挟んだ状態で後述の成形装置3に搬送するピンチローラ36等が設けられている。
また、入側フレーム33の上流側には、鋼帯2のコイルが配置されており、このコイルが巻き戻されて、上述のサイドガイド34等まで鋼帯2が搬送されることになる。
【0025】
また、出側フレーム32には、例えば、図2および図3に示すように、内面ローラ4および外面ローラ5を備える成形装置3と、内面溶接装置(図3に内面溶接装置のノズル6を図示)と、図示しない外面溶接装置と、成形装置3の内面ローラ4を支持するとともに、内面溶接装置のノズル6を支持するマンドレル10に設けられた周長測定装置(周長測定手段)9等が設けられている。
【0026】
また、入側フレーム33は、例えば、工場等の製造現場に固定的(鋼管径の変更や鋼帯幅の変更時等で装置が停止している状態で鋼帯の進入角を変更可能となっている)に設けられているのに対して、出側フレーム32は、入側フレーム33に回転自在に接続され、固定の入側フレーム33に対して出側フレーム32が回転移動可能となっている。
また、出側フレーム32には、鋼帯2に対する製造途中のスパイラル鋼管7の角度を修正する鋼管角度修正手段の回転駆動手段としてのアクチュエータ31(回転駆動手段:移動量を制御可能なシリンダ装置等)が接続され、出側フレーム32(鋼管7)の入側フレーム33(鋼帯2)に対する角度を修正(変更)可能となっている。また、アクチュエータ31もしくは出側フレーム32には、出側フレーム32の回転移動速度および回転移動量を検出可能とするために位置検出器が取り付けられている。
なお、アクチュエータ31として、位置検出器とシリンダーが一体になったシルナックシリンダーを用いてもよい。
【0027】
なお、入側フレーム33に対する出側フレーム32の回転中心位置は、例えば、鋼帯2が成形装置3により後述のようにスパイラル状に曲げられて管状とされる際に、鋼帯の接合側端面が、製造途中の鋼管7の端面に接触する位置となっている。そして、出側フレーム32の回転軸方向は、鋼帯2および鋼管7の軸方向に直交する方向となる。
そして、前記成形装置3は、例えば、鋼管7の内周面側に鋼管7の軸方向に沿って1列に並べられた複数個の内面ローラ4と、鋼管7の外周面側に鋼管7の軸方向に沿うとともに、1列の内面ローラ4に対して鋼帯2の搬送方向の先側と後側とにそれぞれ前記鋼管7の軸方向に沿って1列ずつ合わせて2列に並べられた複数個の外面ローラ5とを有する。
【0028】
そして、成形装置3は、図2および図3に示すように、製造途中のスパイラル鋼管の軸方向に対して所定の進入角度で連続的に搬送される鋼帯2を螺旋状に巻くように曲げて鋼帯2を管状に成形する。
内面溶接装置は、平板状の鋼帯2が成形装置3で曲げられることにより、鋼管7側の端面(既に管状に成形された鋼帯2の幅方向端面)に成形されたばかりの鋼帯2の幅方向の鋼管7側端面が当接した状態となったところで、これら端面の突合せ部分を鋼管7の内側から溶接する。すなわち、鋼帯を外面および内面ローラからなる成形装置を用いて連続的に管状に成形しながら、管状に成形されることにより前記鋼帯の幅方向端面の互いに突き合わされる部分を、溶接していくことになる。
外面溶接装置は、上述のように内面溶接装置により鋼管7の内側から溶接された内面溶接部分(前記突合せ部分)を鋼管7の外側から溶接するようになっている。
内面溶接装置および外面溶接装置は、サブマージアーク溶接を行うものである。
【0029】
すなわち、スパイラル鋼管の製造装置においては、コイルとされた鋼帯が巻き戻されて平にされた状態で入側フレーム33を通って成形装置3に搬送され、出側フレーム32において、成形装置3によりスパイラル状で管状に成形された後に内面溶接され、次いで外面溶接される。これらのスパイラル鋼管の製造工程は連続的に行われており、前の工程が上流側となる位置に配置され、後の工程が下流側となる位置に配置される。
そして、製造されたスパイラル鋼管が連続的に延出していくことになるが、スパイラル鋼管の製造を連続して行っている状態でスパイラル鋼管を走行切断することにより、個々のスパイラル鋼管が得られることになる。
【0030】
そして、このようなスパイラル鋼管の製造装置に設けられるスパイラル鋼管周長制御システムは、製造途中のスパイラル鋼管7の管状に成形された部分の内周長または外周長を内面溶接の直後となる位置(溶接位置の近傍)で測定する周長測定手段としての周長測定装置9と、鋼管7の位置を変化させて、鋼管7の鋼帯2に対する角度を修正する鋼管角度修正手段としての出側フレーム32およびアクチュエータ31と、周長測定装置9に測定される前記鋼管7の内周長または外周長から前記鋼管7の内周長または外周長の変化量を算出するとともに、当該内周長または外周長の変化量に応じて、前記鋼管7の内周長または外周長が目標値に近づくように、内面溶接された直後の製造途中のスパイラル鋼管7の位置を変化させて、当該鋼管7の鋼帯2に対する角度を修正する際の角度の修正量を算出する修正角度演算手段としての修正量演算装置(図示略)と、アクチュエータ31を制御して、前記修正量演算装置で求められた修正量分だけ鋼管の角度を修正させる鋼管角度制御手段としての制御装置とを備えている。
なお、前記制御装置内に修正量演算装置が含まれるものとしてもよい。
【0031】
周長測定装置9は、マンドレル(インナービーム)10に設けられるものである。マンドレル10は、成形されて内面溶接された製造途中のスパイラル鋼管7の入側の開口から鋼管7内に挿入された状態に配置されている。このマンドレル10は、鋼帯2を管状に成形する成形装置3の内面ローラ4を支持しているものであり、成形装置3の一部となる。内面ローラ4は、マンドレル10の下側にマンドレル10の長さ方向に沿って複数個が等間隔に回転自在に固定されている。また、マンドレル10の先端部の下側には、内面溶接用のノズル6が支持されている。
【0032】
マンドレル10は鋼管7の長さ方向に延びており、このマンドレル10の先端部には、マンドレル10の長さ方向(中心軸方向)に沿って伸縮するシリンダー(直線移動手段)11が取り付けられている。このシリンダー11の先端部には、台座12が固定されている。したがってシリンダー11が伸縮すると、この台座12が鋼管7の長さ方向(鋼管7の中心軸と平行)に鋼管7内の下部を直線移動するようになっている。
【0033】
台座12の上部には、上下方向に伸縮するシリンダー(位置調整手段)14が取り付けられており、このシリンダー14の先端部にはモーター(回転手段)15が固定されている。このモーター15の出力軸は鋼管7の長さ方向に延びている。モーター15の出力軸にはローター16が結合されており、このローター16の端部に距離計17が固定されている。これにより、シリンダー14を伸縮させることにより、距離計17が鋼管7の径方向に上下移動し、距離計17が鋼管7の中心部近傍に位置するように位置調整できるようになっている。また、モーター15を回転駆動させることにより、距離計17が鋼管7の内側で鋼管7の周方向に回転するようになっている。
【0034】
この例では、距離計17は、レーザー式変位センサーから構成されている。ローター16には、図示しないが、距離計17の回転角θを検出するためのエンコーダ(センサー;回転角計測手段)が設けられている。なお、モーター15が回転角を制御可能なステッピングモーターである場合は、当然のことながらエンコーダは不要であり、モーター15に回転角検出手段が付随していることになる。
【0035】
距離計17は、シリンダー11を伸縮させることにより鋼管7の長さ方向の位置を変えることができるようになっている。そして、鋼管7の長さ方向(中心軸方向)の同一断面の距離計17から鋼管7内面までの距離の測定が可能なように、距離計17の鋼管7の長さ方向の速度と鋼管7の進行速度とが同期するように、シリンダー11のピストンの伸長速度を設定する。ただし、シリンダー11のピストンのストロークには限りがあるので、鋼管7の進行速度や距離計17の回転速度、内周長の測定頻度(鋼管7の長さ方向の測定ピッチ)によっても異なるが、1回(鋼管7の1断面)の内周長測定後、該ピストンを下限値(シリンダー内に最も収納された位置)にまで速やかに移動させ、次の測定に備えるようにするのが好ましい。
【0036】
シリンダー11には、距離計17の鋼管7の長さ方向の位置・速度の制御が可能なように、図示しないが位置検出器が取り付けられている。なお、シリンダー11に、位置検出器とシリンダーが一体になったシルナックシリンダーを用いてもよい。
また、シリンダー11、14には、油圧式、空気圧式あるいは電動式のいずれかが用いられ、そして遠隔操作される。
【0037】
図4に示すように、シリンダー14を伸縮させることにより、鋼管7の径が種々に変化しても、距離計17と鋼管7とが干渉しないように、また距離計17の測定可能範囲を外れないように、距離計17の鋼管7の高さ方向の位置(径方向の位置)を調整できるようになっている。なお、図示しないが距離計17の昇降量を検出するためのセンサー(位置検出器)がシリンダー14に付随して取り付けられており、距離計17およびローター16の位置をシリンダー14の可動範囲で自在に設定することが可能になっている。なお、シリンダー14に、位置検出器とシリンダーが一体になったシルナックシリンダーを用いてもよい。
【0038】
次に、鋼管7の内面の形状(内周長)を測定する原理を図5に示す。
スパイラル鋼管7の製管中に距離計17を用いて内周長を測定するため、スパイラル鋼管7の回転方向と距離計17の回転方向によって、内周長の測定方法は以下のようになる。
【0039】
【数1】

【0040】
N1またはN2は多いほど高精度で内周長の測定が可能となるが、計測データ(L)の処理量も増大するため、マイコンやパソコン等の電子計算機のデータ処理能力を考慮して適正な値に設定する。
また、距離計17の回転中心周りの角速度ωsについては、大きくする方がスパイラル鋼管7の長さ方向に内周長を細かく測定することが可能となるメリットがあるが、必要以上に大きくすると時間あたりの計測データ処理量が増大するため、適正範囲に設定する。
【0041】
図6は、内周長測定における台座12の移動用シリンダー11の動作状況を模式的に示す図である。
同図には、AパターンおよびBパターンの2種類を例示しているが、Aパターンは、製管速度(鋼管7の長さ方向の進行速度)が大きい、すなわち比較的小径のスパイラル鋼管7を測定する場合を表し、Bパターンは、製管速度が小さい、すなわち比較的大径のスパイラル鋼管7を測定する場合を表す。
同図を見ると、鋼管7の長さ方向の測定ピッチ(間隔)は、Aパターンの方(=P)がBパターン(=P)に比べて大きくなっているが、Aパターンにおける距離計17の回転速度を増加させるか、あるいは上述のように距離計17の回転方向をスパイラル鋼管7の回転方向と逆にして、上記式(2)で内周長を算出することにより、内周長測定時間を短縮させ、測定ピッチを小さく、すなわち内周長を小刻みに測定することは可能である。
【0042】
図7に示すように、被測定対象であるスパイラル鋼管7の内面に、溶接ビード21や内面サブマージアーク溶接の際のフラックス等からなる凸部22があると、距離計17による鋼管7の内面形状測定に悪影響を及ぼす。
例えば、距離計17がレーザー式変位センサーからなる場合、レーザービームの照射部に凸部22があると、ビームの乱反射により測定が不能になるか、たとえ計測できたとしても図6に示すように本来の距離L4やL5に比べて異常に小さな値として検出される可能性がある。
【0043】
このような場合には、図7に示すように、(1)距離Lの時系列計測データからA点、B点、C点およびD点のような変曲点を検出、(2)A点とB点間、ならびにC点とD点間のLの実測値を除外、(3)A点とB点間、ならびにC点とD点間を補間するL値を計算し、これを用いて内周長を算出する。これにより、精度の高い内周長が計算できる。
【0044】
なお、以上の説明では、スパイラル鋼管7の内周長の測定方法について述べたが、スパイラル鋼管7の外周長を測定する場合には、前記式(1)および式(2)において、L(θ)の代わりに、以下に記載のL’(θ)を用いることで外周長も算出できる。
【0045】
L’(θ)=L(θ)+t ‥‥(3)
ここで、L(θ)は、θにおける距離計の回転中心からスパイラル鋼管内面までの距離であり、tは、鋼帯の平均肉厚である。
【0046】
さらに、式(1)あるいは式(2)で求まる内周長、式(3)で求まる外周長を各々、πで除することにより、鋼管の平均内径、および平均外径の算出が可能である。
【0047】
また、以上の説明では、距離計17としてレーザー式変位センサーからなる距離計を用いた場合を説明したが、距離計17は超音波距離計等他の非接触タイプの距離計であってもよい。
また、以上の説明では、距離計17として1個の距離計を使用してスパイラル鋼管の周長や径を測定する場合について説明を行ったが、距離計17として2個以上の距離計を使用し測定してもよい。例えば、2個の距離計を各々鋼管内面までの距離を測定可能なように背中合わせにセットし、各々180°回転させて測定した距離データと回転角データを元に1/2周長を算出し、これら1/2周長を足し合せて周長としてもよい。この場合、1個の距離計を用いる場合に比べて、1周長の測定時間が1/2に短縮されるメリットがある。一般に距離計17としてN個の距離計を用いる場合、各々の距離計を鋼管内面に向けて、回転方向に360/N(°)の一定間隔で配置すればよい。
【0048】
また、前述の実施の形態では、シリンダー14を用いて距離計17の鋼管7の径方向の位置を調整するようにしたが、これに代えて、例えば、長さの異なるアルミ中空フレーム等の取付部材を用意し、鋼管径に応じた取付部材を用いるようにしてもよい。この場合、取付部材の交換は人手を介して行う。
【0049】
また、前述の実施例では、距離計17を鋼管7の周方向に回転させるとともに、鋼管7の長さ方向に鋼管7の進行速度で移動させるようにしたが、シリンダー(直線移動手段)を設けずに、距離計17を鋼管7の周方向に回転させるだけにしてもよい。
【0050】
以上のような式(1)もしくは式(2)等を用いた方法により、スパイラル鋼管7の連続的製造において、一定時間ごとに製造途中のスパイラル鋼管の周長が求められることになるが、この例においては、例えば、CPU、ROM、RAM等を備えた周知の汎用の演算装置(図示略)に、上述の方法で前記鋼管7の周長を求めるプログラムが記憶されて、周長測定装置9の距離計17から出力される距離計の各回点角度における距離を示す値と、モーター15のエンコーダ等から出力される距離計の回転角度とから鋼管7の周長が算出される。なお、演算装置は、周長を求める周長演算装置となる。
なお、距離計の各回転角度毎に当該距離計で計測される当該距離計から前記鋼管7の内面までの距離と当該距離計の回転角度から鋼管7の周長を算出する周長算出手段としての前記周長演算装置は、上述の制御装置に設けられるものとしてもよい。
【0051】
そして、この例のスパイラル鋼管周長制御システムにおいては、算出された周長が順次上述の制御装置に送られ、当該制御装置の修正量演算装置において、出側フレーム32の修正角度が修正量として後述のように算出される。そして、上述のアクチュエータ31の作動量が決定されてアクチュエータ31が制御装置の制御のもとに作動されて出側フレーム32の入側フレーム33に対する角度が変更(修正)されることにより、製造されるスパイラル鋼管の角度が変化する。
【0052】
なお、成形装置3で成形されて少なくとも内面溶接が終了した製造途中の鋼管7を移動させて鋼帯2に対する鋼管7の角度を修正することにより、相対的に鋼帯2の前記進入角度を変更しているので、鋼帯2を移動させた場合よりも極めて容易に鋼帯2の進入角度を変更することが可能となり、上述のように溶接部のビート部の形状不良等を発生することなく、スパイラル鋼管7の製造において、当該スパイラル鋼管7の周長を所定範囲(所定の周長の許容値の範囲内)に収めるように制御することができる。
【0053】
ここで、平面状とされた鋼帯を巻き曲げて管状とする際に、鋼帯2の進入角度(例えば、巻き曲げられる前の鋼帯の長さ方向と、管状とされた直後の製造途中のスパイラル鋼管7の軸方向もしくは当該軸方向と直交する方向とがなす角度)が異なると、スパイラル鋼管7の周長が異なるものとなる。ここで、進入角度が広いと鋼帯2の単位長さに対して形成されるスパイラル鋼管7の長さが長くなるとともにスパイラル鋼管7の周長が短くなり、進入角度が狭いと鋼帯7の単位長さに対して形成されるスパイラル鋼管7の長さが短くなるとともにスパイラル鋼管7の周長が長くなる。
【0054】
したがって、鋼帯2の進入角度を調整することにより、比較的自由にスパイラル鋼管7の周長を長くしたり、短くしたりする変更可能となり、かつ、溶接される鋼帯2の幅方向端面同士の間にオフセットが生じることがなく、溶接のビート部形状の不良の発生を防止できる。なお、鋼帯2は、鋼帯2のコイルから平面状に巻き戻されながら上述の内面ローラ4および外面ローラ5を有する成形装置3に送られており、鋼帯2の製造途中のスパイラル鋼管7に対する進入角度を変更することが困難である。また、鋼帯2の進入角度を変更可能なスパイラル鋼管7の製造装置を作れたとしても、スパイラル鋼管7の製造装置が煩雑になるとともに大型化する虞がある。したがって、上述のように鋼管7側を動かして相対的に鋼帯2の進入角度を変更する方が、製造装置を簡単な構造とするとともに、低コストに製造装置を設けることができる。
【0055】
ここで、スパイラル鋼管周長制御システムを用いたいスパイラル鋼管の製造方法におけるスパイラル鋼管の周長(径)の調整方法を図8のフローチャートを参照して説明する。
まず、初期処理として、周長目標値を設定する(ステップS1)。例えば、スパイラル鋼管の新しいロットを製造開始する際や製造されるスパイラル鋼管の周長(外周長または内周長)すなわち径(外径または内径)が変更される際などに、当該スパイラル鋼管の例えば設計上の周長もしくは径を目標値として制御装置に入力する。
【0056】
次に、実際にスパイラル鋼管の製造が開始された際に、上述の周長測定装置9を用いた上述の周長測定を行い、周長測定装置9から周長の計測値(算出値)か、当該周長を算出するために必要な距離計17の測定値と距離計の回転角度のデータを取得する(ステップS2)。
なお、周長測定装置9から周長の算出された計測値ではなく、距離計17の測定値と回転角度等に関するデータを取得した場合には、修正量演算装置側で周長を上述の方法で算出する。
【0057】
また、スパイラル鋼管の製造時には、周長測定装置9から定期的に周長のデータもしくは周長を算出可能なデータが入力されるので、当該データの入力の度にステップS2の処理を行うことになる。
また、制御装置が周長測定装置9を制御するものとして、制御装置からの指示に基づいて周長測定装置9が周長の測定を行うものとしてもよい。
【0058】
次に、目標値との偏差が予め設定された測定誤差εの絶対値より小さいか否かを判定する(ステップS3)。すなわち、この例の周長の測定において見込まれる測定誤差εを設定しておき、周長の測定値と目標値との差(偏差)が、測定誤差εの絶対値の範囲内ならば、測定値と目標値とのズレは測定誤差と見なすことができる。
そして、偏差が測定誤差範囲内(許容範囲内)ならば、後述の出側フレーム32の角度の修正を行うことなく、スパイラル鋼管の製造を続行し、ステップS2に戻って引き続き周長の測定が順次行なわれることになる。
また、前記偏差が測定誤差εの絶対値以上となった場合には、出側フレーム32の鋼帯2に対する角度を変更するために、出側フレーム32の鋼帯2に対する角度の修正値αを算出する以下の処理を行う(ステップS4)。なお、出側フレーム32の鋼帯2に対する角度を変更することで、鋼管7に対する鋼帯2の進入角度が相対的に変化することになる。
【0059】
(1)周長偏差(=周長測定値−周長目標値)>0の場合
周長偏差(=周長測定値―周長目標値)>0の場合は、周長が小さくなる方向に出側フレーム32の角度を修正する必要がある。
図9に示すように、鋼帯2の幅Bと鋼管7の外径Dと成形角度θ(正符号:反時計方向角度、負符号:時計方向角度)の間には、以下の関係が成立つ。ここで、成形角度θは、上述の進入角度で、鋼管7の軸方向に直交する線(鋼帯2の面方向に沿っている)と鋼帯2の長手方向に沿った線とがなす角度である。
sinθ=B/πD ‥‥(4)
これより、D=B/πsinθ ‥‥(5)
【0060】
式(5)から、Dを小さくする(周長を小さくする)にはθを大きくすればよいが、同一サイズのスパイラル鋼管7の製造中にθ(鋼帯2の進入角度)を動かすことは設備的に困難を伴う。本発明では、図2に示すように、アクチュエータ(回転駆動手段)31により出側フレーム32を角度α(正符号:反時計方向角度、負符号:時計方向角度)で揺動させることで、鋼帯2の進入角度θを相対的に修正する。すなわち、製造途中の鋼管7の位置を動かすことで、鋼帯2に対する鋼管7の角度を変更する。
式(5)において、Bは一定と仮定すると、以下の関係が成立つ。
【0061】
【数2】

【0062】
式(6)と図9の関係から、成形角度θの変化を打消すように出側フレーム32を角度αだけ変化させればよいことから、αが以下のように示されることになる。
α=Δθ=π/B・(cosθ−1/cosθ)ΔD ‥‥(7)
ここで、ΔDは成形後の鋼管7の外径Dの変化量を表す。
一方、鋼管7の外周長Lと鋼管7の外径Dの間には以下の関係が成立つ。
L=πD
ΔL=πΔD ‥‥(8)
式(7)と式(8)から、以下の関係が得られる。
α=π/B・(cosθ−1/cosθ)ΔD=1/B・(cosθ−1/cosθ)ΔL ‥‥(9)
ΔL>0の場合、すなわち外周長が大きくなる方向に変化した場合、式(9)からα<0になり、出側フレーム32を時計廻りに式(9)で計算される角度|α|(=αの絶対値)分を調整すればよい。
すなわち、出側フレーム32を鋼帯2の進入角度θが相対的に大きくなる方向にαで示される角度だけ回転移動させればよい。
内周長(=L−2πt、tは鋼管の板厚)についても同様の調整を行えばよい。
【0063】
(2)周長偏差(=周長測定値―周長目標値)<0の場合
周長偏差(=周長測定値―周長目標値)<0の場合は、周長が大きくなる方向に出側角度を修正する必要がある。
前述のΔL<0の場合、すなわち外周長が小さくなる方向に変化した場合、式(9)から
α>0になり、出側フレームを反時計廻りに式(9)で計算される角度|α|(=αの絶対値)
分を調整すればよい。
【0064】
すなわち、出側フレーム32を鋼帯2の進入角度θが相対的に小さくなる方向にαで示される角度だけ回転移動させればよい。
内周長(=L−2πt、tは鋼管の板厚)についても同様の調整を行えばよい。
以後は、一定の時間間隔あるいは鋼管長さ方向に関して一定間隔で行われる周長測定毎に、図1に示すフローチャートに従い、同様の出側角度調整を繰り返せばよい。
【実施例】
【0065】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
本実施例では、図9に示すスパイラル鋼管7の製造工程において、コイル幅Bを1845mm、成形角度θ(鋼帯2の進入角度θ)を21.53度、成形後の鋼管外径(目標)を1600mm、鋼管外周長(目標)を5027mmとして、鋼管内面側のコイル幅方向端面突合せ部のサブマージアーク溶接直後に設けた周長測定装置9を用いて鋼管周長(外周長)の測定を行い、当該周長実測値をもとに出側角度修正量αを算出し、図1に示す制御フローに従って鋼管周長の制御を行った。
【0066】
表1に、鋼管周長(外周長)実測値とこれを円周率で除して算出した鋼管外径計算値、ならびに前記(6)式をもとに算出した出側角度修正量αを例示する。なお、表1は、鋼管周長(外周長)、鋼管外径計算値、出側角度修正量αとの関係を外周長(外径)が大きい順に並べたものであり、時系列的に実測値を示したものではない。
表1に示すように、鋼管周長実測値が鋼管周長目標値(=5027mm)を上回るとα<0となり、図9において出側フレーム32を時計廻りに角度|α|(=αの絶対値)分の調整が行われ、やがて鋼管周長が小さくなる方向に変化することが確認できた。
一方、表1において鋼管周長実測値が鋼管周長目標値(=5027mm)を下回るとα>0となり、図9において出側フレーム32を反時計廻りに角度|α|(=αの絶対値)分の調整が行われ、やがて鋼管周長が大きくなる方向に変化することが確認できた。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態に係るスパイラル鋼管の製造方法に用いられるスパイラル鋼管の製造装置およびスパイラル鋼管周長制御システムの概略を示す概略図である。
【図2】前記スパイラル鋼管の製造装置およびスパイラル鋼管周長制御システムの概略を示す図であって、スパイラル鋼管の出側(下流側)から素材である鋼帯の入側(上流側)に向かって見た図である。
【図3】同、要部側面図である。
【図4】(a)は大径の鋼管の内周長を測定する場合を示す図であり、(b)は大径の鋼管の内周長を測定する場合を示す図である。
【図5】鋼管の内面の内周長を測定する原理を示す図であって、(a)は鋼管内の距離計を示す図であり、(b)は距離計の回転角と鋼管内面までの距離との関係を示す図である。
【図6】内周長測定における台座の移動用シリンダーの動作状況を示す図であって、(a)はスパイラル鋼管の周長測定装置の側面図であり、台座の移動用シリンダーのストロークを時間軸で表した図である。
【図7】鋼管の内面に溶接ビードや凸部がある場合の鋼管の内面の内周長の計算方法を説明するための図であって、(a)は鋼管内の距離計を示す図であり、(b)は補間法を用いた距離計の回転角と鋼管内面までの距離との関係を示す図である。
【図8】前記スパイラル鋼管の製造方法における周長の調整方法を示すフローチャートである。
【図9】鋼帯の幅と鋼管の外径と成形角度との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
2 鋼帯
3 成形装置
4 内面ローラ
5 外面ローラ
7 鋼管(製造途中のスパイラル鋼管)
9 周長測定装置(周長測定手段)
10 マンドレル
17 距離計
31 アクチュエータ(回転駆動手段)
32 出側フレーム(鋼管支持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯を外面および内面ローラからなる成形装置を用いて連続的に管状に成形しながら、前記鋼帯の幅方向端面の互いに突き合わされる部分を溶接していくことにより前記鋼帯からスパイラル鋼管を連続的に製造するスパイラル鋼管の製造方法において、
製造途中のスパイラル鋼管の管状に成形された部分の内周長または外周長を前記溶接位置の近傍で測定し、
前記内周長または外周長の測定値に基づいた前記スパイラル鋼管の内周長または外周長の変化量に応じて、前記スパイラル鋼管の内周長または外周長が目標値に近づくように前記製造途中のスパイラル鋼管の位置を変化させて、当該スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度を修正することを特徴とするスパイラル鋼管の製造方法。
【請求項2】
前記内周長または外周長の変化量ΔLに対する前記スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度の修正量αを以下に示す式で求めることを特徴とする請求項1に記載のスパイラル鋼管の製造方法。
α=1/B・(cosθ−1/cosθ)ΔL
ここで、Bは前記鋼帯の幅、θは前記鋼帯の製造途中の前記鋼管に対する進入角度を示す。
【請求項3】
前記鋼帯に対する前記スパイラル鋼管の角度を変更する方法が、製造途中の前記スパイラル鋼管を支持する鋼管支持部材の角度を変更することによるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスパイラル鋼管の製造方法。
【請求項4】
前記内周長または外周長の測定に際し、前記内面ローラを支持するマンドレルの先端部に設けられた距離計を製造途中の前記スパイラル鋼管の周方向に回転させるとともに、当該距離計に当該距離計の各回転角度における前記鋼管の内面までの距離を非接触で測定させ、
前記距離計により計測された当該距離計の各回転角度における前記鋼管内面までの距離と、前記距離計の回転角度とを用いて、前記鋼管の内周長または外周長を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスパイラル鋼管の製造方法。
【請求項5】
鋼帯を外面および内面ローラからなる成形装置を用いて連続的に管状に成形しながら、前記鋼帯の幅方向端面の互いに突き合わされる部分を溶接していくことにより前記鋼帯からスパイラル鋼管を連続的に製造する際に当該スパイラル鋼管の周長を制御するスパイラル鋼管周長制御システムであって、
製造途中のスパイラル鋼管の管状に成形された部分の内周長または外周長を前記溶接位置の近傍で測定する周長測定手段と、
前記スパイラル鋼管の位置を変化させて、当該スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度を修正する鋼管角度修正手段と、
前記周長測定手段に測定される前記内周長または外周長から前記スパイラル鋼管の内周長または外周長の変化量を算出するとともに、当該内周長または外周長の変化量に応じて、前記スパイラル鋼管の内周長または外周長が目標値に近づくように、前記製造途中のスパイラル鋼管の位置を変化させて、当該スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度を修正する際の角度の修正量を算出する修正角度演算手段と、
前記鋼管角度修正手段を制御して、前記修正角度演算手段で求められた前記修正量分だけ前記鋼管の角度を修正させる鋼管角度制御手段とを備えたことを特徴とするスパイラル鋼管周長制御システム。
【請求項6】
前記修正角度演算手段は、前記内周長または外周長の変化量ΔLに対する前記スパイラル鋼管の前記鋼帯に対する角度の修正量αを以下に示す式で求めることを特徴とする請求項5に記載のスパイラル鋼管周長制御システム。
α=1/B・(cosθ−1/cosθ)ΔL
ここで、Bは前記鋼帯の幅、θは前記鋼帯の前記鋼管に対する進入角度を示す。
【請求項7】
前記鋼管角度修正手段は、前記製造途中のスパイラル鋼管を支持するとともに回転移動自在な鋼管支持部材と、当該鋼管支持部材を所定角度範囲内で回転駆動する回転駆動手段とを備えていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載に記載のスパイラル鋼管周長制御システム。
【請求項8】
前記周長測定手段は、前記内面ローラを支持するマンドレルの先端部に設けられ、製造途中の前記スパイラル鋼管内で当該スパイラル鋼管の周方向に沿って回転自在な距離計と当該距離計の測定値からスパイラル鋼管の外周長または内周長を算出する周長算出手段とを備え、
前記距離計は、製造途中の前記スパイラル鋼管の周方向に沿って回転するとともに、前記鋼管の内面までの距離を各回転角度において非接触で測定し、
前記周長算出手段は、前記距離計により測定された各回転角度での前記鋼管内面までの距離と、前記距離計の回転角度とを用いて、前記鋼管の内周長または外周長を算出することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のスパイラル鋼管周長制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−120077(P2010−120077A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298552(P2008−298552)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(000182982)住金大径鋼管株式会社 (12)
【Fターム(参考)】