説明

スパイラル鋼管の製造装置

【課題】成形機への送り込み時の帯状鋼材の蛇行を抑止すると同時に、切削によらず帯状鋼材の両エッジの開先加工を良好に且つ速く行えるスパイラル鋼管製造装置を提供する。
【解決手段】スパイラル鋼管製造装置は、帯状鋼材5をスパイラル鋼管50に成形造管する成形機4の入り側に、帯状鋼材5の両エッジ部を圧延により開先加工しながら帯状鋼材5を成形機4に送り込む圧延式開先加工機3を設置した。圧延式開先加工機3は帯状鋼材5を挟持する一対の開先ピンチローラー30a,30bを備える。開先ピンチローラー30a,30bの両端部には外側へ向けてテーパ状に大径となった圧延部31が形成されている。圧延部31によって帯状鋼材5の幅方向両端部が位置決め状態に保持され、エッジ部に開先が施される。従って、帯状鋼材5は幅方向の蛇行が抑止された状態でエッジ部に開先加工されながら成形機4に送り込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続した帯状鋼材を螺旋状に成形造管してスパイラル鋼管を製造するスパイラル鋼管の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種スパイラル鋼管の製造装置では、図5を参照して、アンコイラー506でコイルCから巻きほどかれた帯状鋼材502は、レベラー507で平坦化され、開先加工機505で幅方向端部の両エッジ部が開先加工された後、一対のピンチローラー503で成形機501に送り込まれる。そして、成形機501では、帯状鋼材502を螺旋状に成形造管しながらエッジ部の継ぎ目を溶接してスパイラル鋼管520に仕上げられる。このような製造装置において、帯状鋼材502が幅方向に蛇行すると、溶接時の開先間隔や開先加工機505での開先加工精度等にバラツキが生じて品質の良いスパイラル鋼管520の製造が困難となる。
【0003】
そのため、従来は、成形機501の入り側の適宜箇所において帯状鋼材502の幅方向端部を押し付ける押し付けサイドガイドローラー504を設置して、帯状鋼材502の幅方向の蛇行を抑制させていた。なお、開先加工機505は、切削により帯状鋼材502の両エッジ部を所定の開先角度に削り取るカッターで構成される。
【特許文献1】特開平5−138241号公報
【特許文献2】特開平6−47433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、帯状鋼材502が蛇行することにより上記押し付けサイドガイドローラー504に強く押し付けられると、帯状鋼材502の端部が押し付けられて変形することがあった。このように帯状鋼材502の端部が変形すると、開先加工機505での切削による両エッジ部の開先形状にバラツキが生じたり、帯状鋼材505の幅寸法に変動が生じて、その後の溶接で不具合が発生する。
【0005】
また、上記開先加工機505は、カッターにより切削加工を行うため、開先加工速度が遅く成形機501への帯状鋼材502の送り込み速度を速くすることが困難であった。さらには開先加工機505から飛散する切削粉が帯状鋼材502に付着して溶接不良を生じさせたり、また、ピンチローラー503、押し付けサイドガイドローラー504等にも切削粉が付着して帯状鋼板502の送り込みにズレを生じさせる等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、成形機への送り込み時の帯状鋼材の蛇行を抑止すると同時に、切削によらず帯状鋼材の両エッジの開先加工を良好に且つ速く行えるスパイラル鋼管製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るスパイラル鋼管の製造装置は、
連続した帯状鋼材からスパイラル鋼管を製造する装置であって、
帯状鋼材を螺旋状に成形造管しながら継ぎ目を溶接する成形機の入り側において、帯状鋼材の両エッジ部を圧延により開先加工しながら該帯状鋼材を上記成形機に送り込む圧延式開先加工手段を設置したことを特徴とする。
上記圧延式開先加工手段によれば、帯状鋼材の両エッジ部の開先加工を圧延により行うので、帯状鋼材は、幅方向に強固に位置決めされる。これにより、帯状鋼材の幅方向の蛇行が抑止される。すなわち、従来装置のような、帯状鋼材の蛇行を抑制させるための押し付けサイドガイドローラーを特別に配置しなくても、帯状鋼材の蛇行を抑止できる。従って、帯状鋼材は、上記圧延式開先加工手段によって幅方向の蛇行が抑止された状態でエッジ部に開先加工されながら成形機に送り込まれる。
また、圧延により帯状鋼材の開先加工を行うので、切削粉が発生せず、切削粉の飛散に起因するトラブルが無くなり、しかも、開先加工速度を切削の場合よりも速くすることができる。
【0008】
(2)上記圧延式開先加工手段は、帯状鋼材を挟持する一対の開先ピンチローラーを備え、少なくとも一方の開先ピンチローラーの両端部には、外側へ向けてテーパ状に大径となって帯状鋼材の両エッジ部を圧延する圧延部が形成されているものでもよい。
これにより、上記開先ピンチローラー両端部の圧延部によって帯状鋼材の幅方向両端部が位置決め状態に保持され、且つ圧延により帯状鋼材のエッジ部に良好な開先が施される。
【0009】
(3)上記成形機の入り側に設置される設備が同一のフレーム上に配設され、該フレームは、上記成形機へ送り込む帯状鋼材の進入角度を変更できるように揺動自在に設置されていてもよい。
スパイラル鋼管の管径は、成形機への帯状鋼材の進入角度および帯状鋼材幅によって決定される。従って、上記フレームを揺動させることで、成形機へ送り込む帯状鋼材の進入角度を容易に調整でき、簡単にスパイラル鋼管の管径を設定できる。
【0010】
(4)上記成形機の入り側には、コイルから帯状鋼材を巻きほどくアンコイラーと、該アンコイラーから供給される帯状鋼材を平坦化するレベラーと、該レベラーから帯状鋼材が供給される上記圧延式開先加工手段とが設置され、上記アンコイラーは、帯状鋼材が略U字形状の軌跡を描いて上記レベラーに供給されるように配置されていてもよい。
これにより、アンコイラーとレベラーとを直線的に並設する場合に比べて、成形機の入り側に設置される設備の長さを短く設定でき、本スパイラル鋼管製造装置の設置スペースを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、帯状鋼材は、圧延式開先加工手段によって幅方向の蛇行が抑止された状態でエッジ部に開先加工されながら成形機に送り込まれるので、スパイラル鋼管の溶接品質および生産性の向上を図ることができる。また、従来装置のような特別の押し付けサイドガイドローラーを配置しなくても帯状鋼材の蛇行を抑止でき、その分シンプルに装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1、図2に示すように、本実施の形態によるスパイラル鋼管の製造装置は、アンコイラー1、レベラー2、圧延式開先加工機(圧延式開先加工手段)3、成形機4がこの順に配設されている。このスパイラル鋼管の製造装置では、アンコイラー1でコイル10から巻きほどかれた帯状鋼材5は、上下に設置された複数のローラーを有するレベラー2に通されて平坦化される。そして、平坦化された帯状鋼材5は、圧延式開先加工機3で挟持された状態で幅方向端部の両エッジ部が圧延により開先加工されながら成形機4に送り込まれる。成形機4は、外面成形ローラー41と内面成形ローラー42とが配設され、また、内面溶接トーチ43と外面溶接トーチ44とが備えられている。この成形機4では、所定の進入角度で送り込まれた帯状鋼材5を、外面および内面の各成形ローラー41,42によって螺旋状に成形造管しながら帯状鋼材5のエッジ部の継ぎ目を内面溶接と外面溶接とを順次に行って、スパイラル鋼管50に仕上げられる。なお、このスパイラル鋼管の製造装置には、送りローラー7a,7b,7cが配置されている。
【0013】
また、上記のアンコイラー1、レベラー2、圧延式開先加工機3、送りローラー7a,7b,7c等の成形機4の入り側に設置される設備は、同一のフレーム6上に設置されている。そして、このフレーム6は、成形機4の位置で回動可能に支持され、アンコイラー1を配置する外側コーナー部にアクチュエータ60が取り付けられており、このアクチュエータ60の進退駆動によって揺動される(図2参照)。スパイラル鋼管50の管径は、下記関係式で示されるように、成形機4への帯状鋼材5の進入角度θおよび帯状鋼材5の幅によって決定される。
【0014】
【数1】

【0015】
従って、上記アクチュエータ60によってフレーム6を揺動させることで、成形機4へ送り込む帯状鋼材5の進入角度を容易に調整することができ、簡単にスパイラル鋼管50の管径を設定できる。
【0016】
上記アンコイラー1は、スタンド11、コイル10の支持アーム12、コイル10の押さえアーム13、コイル10から巻きほどかれた帯状鋼材5を受け留める受けアーム14を備えている。支持アーム12および押さえアーム13には、一端をスタンド11に取り付けたアクチュエータ15,16が連結されており、コイル10の外径に応じて揺動自在に構成されている。押さえアーム13の先端には、コイル10上部を押さえる押さえローラー13aが取り付けられている。また、アンコイラー1は、帯状鋼材5が略U字形状の軌跡を描いて上記レベラー2に供給されるようにレベラー2側に寄った上方に配置されている。これにより、アンコイラー1とレベラー2とを直線的に並設する場合に比べて、成形機4の入り側に設置される設備の長さを短く配置でき、本スパイラル鋼管製造装置の設置スペースを小さくすることができる。
【0017】
上記圧延式開先加工機3は、図3(a)に示すように、帯状鋼材5を挟持する一対の開先ピンチローラー30a,30bを備え、各開先ピンチローラー30a,30bの両端部には、外側へ向けてテーパ状に大径となった圧延部31が形成されている。この圧延部31での圧延により帯状鋼材5の両エッジ部に開先51が形成される。同時に、各圧延部31で帯状鋼材5の両エッジ部を圧延することで帯状鋼材5の幅方向両端部が位置決め状態に保持され、帯状鋼材5の幅方向の蛇行が抑止される。これにより、上記圧延式開先加工機3の前側あるいは後側には、従来装置のような特別の押し付けサイドガイドローラー504(図5参照)を配置しなくても、帯状鋼材5の蛇行を抑止できる。なお、成形機4においては、図3(b)に示すように、開先51が形成されたエッジ部の継ぎ目に内面溶接Y1および外面溶接Y2が行われる。また、上記圧延部31のテーパ状の角度は、図3(a)に示すものでは、45度に設定されているが、溶接時の開先幅や帯状鋼材5の厚み等によって適宜に設定される。
【0018】
そして、上記開先ピンチローラー30a,30bの一方または両方を回転駆動させると、帯状鋼材5を幅方向に位置決めした状態で両エッジ部の開先加工を行いながら成形機4に送り込むことができる。
【0019】
また、上記構成の圧延式開先加工機3では、切削によらず圧延により帯状鋼材5の両エッジ部の開先加工を行うので、切削粉が発生せず、切削粉の飛散に起因するトラブルが無くなり、しかも、開先加工速度を切削の場合よりも速くすることができる。
【0020】
以上のように、本実施の形態によるスパイラル鋼管の製造装置によれば、帯状鋼材5は、圧延式開先加工機3によって幅方向の蛇行が抑止された状態でエッジ部に開先加工されながら成形機4に送り込まれるので、スパイラル鋼管50の溶接品質および生産性の向上を図ることができる。また、従来装置のような特別の押し付けサイドガイドローラー504を配置しなくても帯状鋼材5の蛇行を抑止でき、その分シンプルに装置を構成することができる。
【0021】
なお、本発明は、上記実施の形態に限らず、適宜設計変更を施すことが可能である。
例えば、一対の開先ピンチローラーは、一方のローラー30a(30b)が帯状鋼材5の両エッジ部を圧延により開先加工する圧延部31を形成するもので、他方のローラー30cは円筒状のものでもよい(図4(a)参照)。この場合、帯状鋼材5の一面側のエッジ部に開先51が形成される(図4(b)参照)。
また、開先ピンチローラー30a,30bの圧延部31におけるテーパ形状は、凸状または凹状に湾曲して形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態によるスパイラル鋼管の製造装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】実施の形態によるスパイラル鋼管の製造装置の全体構成を示す上面図である。
【図3】圧延式開先加工機における一対の開先ピンチローラーを示す平面図である。
【図4】圧延式開先加工機における一対の開先ピンチローラーの他の例を示す平面図である。
【図5】従来のスパイラル鋼管の製造装置の概略構成を示す上面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 アンコイラー
2 レベラー
3 圧延式開先加工機(圧延式開先加工手段)
4 成形機
5 帯状鋼材
6 フレーム
10 コイル
30a,30b 開先ピンチローラー
31 圧延部
32 ローラー面
50 スパイラル鋼管
51 開先

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した帯状鋼材からスパイラル鋼管を製造する装置であって、
帯状鋼材を螺旋状に成形造管しながら継ぎ目を溶接する成形機の入り側において、帯状鋼材の両エッジ部を圧延により開先加工しながら該帯状鋼材を上記成形機に送り込む圧延式開先加工手段を設置したことを特徴とするスパイラル鋼管の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスパイラル鋼管の製造装置において、
上記圧延式開先加工手段は、帯状鋼材を挟持する一対の開先ピンチローラーを備え、少なくとも一方の開先ピンチローラーの両端部には、外側へ向けてテーパ状に大径となって帯状鋼材の両エッジ部を圧延する圧延部が形成されているスパイラル鋼管の製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスパイラル鋼管の製造装置において、
上記成形機の入り側に設置される設備が同一のフレーム上に配設され、該フレームは、上記成形機へ送り込む帯状鋼材の進入角度を変更できるように揺動自在に設置されているスパイラル鋼管の製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のスパイラル鋼管の製造装置において、
上記成形機の入り側には、コイルから帯状鋼材を巻きほどくアンコイラーと、該アンコイラーから供給される帯状鋼材を平坦化するレベラーと、該レベラーから帯状鋼材が供給される上記圧延式開先加工手段とが設置され、上記アンコイラーは、帯状鋼材が略U字形状の軌跡を描いて上記レベラーに供給されるように配置されているスパイラル鋼管の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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