説明

スパウトの構造

【課題】 スパウト付容器にキャップを装着した状態で、内容物を加熱殺菌しても全く水
が残留せず、かつ、スパウトにアダプターを簡易に装着出来るスパウトを提供する。
【解決手段】 容器2に取り付けるスパウト1の注出筒4の外周に、それぞれネジ山条数
の異なる2つのネジ7、8を螺刻したネジ部を形成し、
前記ネジ部の注出端側のネジ山径φ2 を小径部とし、前記ネジ部の容器側のネジ山径φ
1 を大径部とすることによって、ネジ山の条数の多い一方のネジに密封性と共に易着脱性
を要求するアダプターをネジ装着出来、一方のネジよりネジ山の条数の少ない他方のネジ
に高密封性を要求するキャップ11をネジ装着出来るようにすることで、キャップ11を
装着したスパウト付容器3の内容物を加熱滅菌しても全く水が残留せず、スパウト1にア
ダプターを簡易に素速く装着出来て、操作性が良好となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に取り付けるスパウトの構造に関するもので、より詳しくは、スパウト
の注出筒の外周面にネジ山の条数の異なる2種類のネジを螺刻してなり、一方のネジに易
着脱性の接続部材をネジ装着出来るようにし、他方のネジに高密封性の密封部材をネジ装
着出来るようにしたスパウトの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スパウトは、例えば袋状容器であるパウチ等に密封状態で取り付けるもので、このスパ
ウトを通してあるいは他の開口部を通して、パウチ等内に内容物としての液状物等を充填
すると共に、パウチ等内の加熱滅菌した液状物等を取り出すためのものである。このスパ
ウトの構造として下記に示すような技術が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−104453号公報
【0004】
この特許文献1のスパウト50の構造は、図9、10に示すように、パウチの側部に溶
着する取付基部51と、この取付基部51から外方に向かって延び外周面にネジ山52を
有する注出筒53と、この注出筒53の注出端に溶着するシール材54と、注出筒53の
ネジ山52にネジ装着するキャップ55と、このキャップ55の天板内面に設けて注出筒
53の注出端に液密に当接する環状シール部56と、を備えてなるものである。
【0005】
このスパウト50の構造によれば、注出筒53の注出端にシール材54を溶着し、且つ
、この注出筒53にキャップ55をネジ装着する二重のシール構造とし、その上さらに、
シール材54をキャップ55の天板に設けた環状シール部56により押さえ付けている。
したがって、シール材54の溶着をそれほど強くする必要がなく、注出筒53の注出端か
らシール材54を容易に剥がせて利便性が高まり、また、環状シール部56によりシール
材54上に加熱滅菌に由来する水の残留がなく、さらに、スパウトの注出筒53にキャッ
プ55をネジ装着することでリシールが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のスパウト50の構造は、注出筒53からシール材54を容易に剥がせて利
便性が高く、シール材54上に水の残留がないという特徴があり一般に多用されている。
しかし、密封性を高めるために、注出筒53に対するキャップ55のネジ込み量を多くし
てあるため、開封後に注出筒53にアダプター等を装着する際にも、密封性をそれほど必
要としないのにネジ込み量を多くしなければならず、アダプター等の着脱の際にも、密封
時と同様のネジ込み量が必要になるという煩わしさがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、スパウトにキャップを装着した状態で、そのスパウトに取り
付けた容器の内容物を加熱滅菌する際には、シール材とキャップとの間に水が残留しない
密封性を維持し、さらに、スパウトからキャップ及びシール材を外した後、スパウトにア
ダプターを装着する際には、簡易に素速く行うことができるスパウトの構造を提供するこ
とにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなるこ
とを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、容器に取り付けるスパウトの注出筒の外周に、それぞれネ
ジ山条数の異なる2つのネジを螺刻したネジ部を形成し、前記ネジ部の注出端側のネジ山
径を小径部、前記ネジ部の容器側のネジ山径を大径部としたことを特徴とするスパウトの
構造が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、前記大径部のネジ山高さを、前記小径部のネジ山高さより高く
して、前記大径部のネジ山径を前記小径部のネジ山径より大径に形成した上記スパウトの
構造が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、前記大径部の注出筒の外径を、前記小径部の注出筒の外径より
太くして、
前記大径部のネジ山径を前記小径部のネジ山径より大径に形成した上記スパウトの構造
が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、該小径部のネジ山条数が、該大径部のネジ山条数より多い条数
に形成されている上記スパウトの構造が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、前記小径部のネジ山が4条ネジであり、前記大径部のネジ山が
1条または2条ネジである上記スパウトの構造が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、前記ネジ山条数の少ないネジ部には密封部材が螺着され、前記
ネジ山条数の多いネジ部には、該密封部材が螺脱された後に接続部材が螺着されるように
された上記スパウトの構造が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、前記小径部と大径部の間に、小径部より大きく大径部より小さ
い径のネジ部を設けて成る上記スパウトの構造が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、前記接続部材はアダプターであり、前記密封部材はキャップで
ある上記スパウトの構造が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、前記注出筒の注出端をシール材にて密封してなる上記スパウト
の構造が提供される。
【0017】
また、本発明によれば、前記キャップの天板内面に前記注出筒の注出端に対応した環状
シール部を設けた上記スパウトの構造が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、前記容器はパウチである上記スパウトの構造が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスパウトは、スパウトの注出筒におけるネジ山の条数の少ない方のネジに密封
部材をネジ装着出来るため、注出筒と密封部材との密封性が高くなるとともに、ネジ山の
条数の多い方のネジに接続部材をネジ装着出来るため、注出筒に接続部材を簡単に少ない
ネジ込み量でネジ装着することが出来る。
そのため、ひとつのスパウトで密封性と同時に素早い着脱性という、一見相反する要請
にひとつのスパウトで対応することができ、スパウトに取り付けた容器の内容物を加熱滅
菌しても、注出筒の注出端と密封部材との間に水が入らず、かつ、残ることもないと共に
、注出筒から密封部材を外した後、接続部材を簡易に素速く着脱出来るという異質の効果
を奏し得る。
【0020】
また、注出筒をストレートに形成すれば、キャップからの水抜けが良くなるばかりでな
く、取付基部との接合部も細くすることができ、スパウト全体をコンパクトにすることが
できる。
【0021】
また、注出筒の注出端をシール材によって密封し、その上にキャップをネジ装着すれば
、注出筒の注出端を二重に密封することになり、密封性が一層優れたものになる。
さらに、注出筒の注出端を密封してあるシール材をさらにキャップの環状シール部によ
り押さえ付けることにより、なお一層注出筒の注出端とシール材との間に水が入らず、シ
ール材上に水が残ることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明のスパウトの実施の形態を形態を説明する。
図1は本発明のスパウトをパウチに取り付けた状態の正面図、図2は本発明の実施例1
を示すスパウトの半裁縦断面図、図3は本発明の実施例2を示すスパウトの半裁縦断面図
、図4は図3のスパウトの平面図、図5は本発明のスパウトの底面図、図6は図3のスパ
ウトにキャップをネジ装着した状態の半裁縦断面図、図7は図3のスパウトにアダプター
をネジ装着した状態の半裁縦断面図である。これらの図において、スパウト1は、容器2
の側部に溶着されてスパウト付容器3を形成している。
【0023】
本発明のスパウトは、容器2に取り付けるスパウト1の注出筒4の外周に、それぞれネ
ジ山条数の異なる2つのネジ7a,8aを螺刻したネジ部を形成し、前記ネジ部の注出端
側を小径部S2、前記ネジ部の容器側を大径部S1とした構成に重要な特徴がある。
前記ネジ部の注出端4a側を小径部S2に構成し、前記ネジ部の容器側を大径部S1と
するための手段としては、前記大径部のネジ山高さH1を前記小径部のネジ山高さH2よ
り高く形成する態様(実施例1)、または、前記注出筒の容器側外径を太くして大径部の
ネジ山径φ1 を前記小径部のネジ山径φ2 より大径に形成する態様(実施例2)がある。
実施態様においては、図2に示したように注出筒はストレートに形成されていてもよく、
あるいは図3、4、6、7に示したように、小径部と大径部が段部を介して形成されてい
てもよい。
【0024】
本発明においてネジ山径とは、図2、3に示したように、一方のネジ山の外端から反対
側のネジ山の外端までの長さであり、大径部のネジ山径はφ1 、小径部のネジ山径はφ2
で示した。また、ネジ山の高さとは、同じく図2に示したようにネジの谷から山までの高
さを言い、大径部のネジ山高さをH1、小径部のネジ山高さをH2で示した。
図2は、本発明の実施例1の態様を示したものであり、大径部のネジ山高さH1を前記
小径部のネジ山高さH2より高く形成し、小径部のネジ山が4条ネジに形成され、大径部
のネジ山が2条ネジに形成されている。
【0025】
この態様では、注出筒がストレートに形成されていることにより、キャップからの水抜
けが良く、かつ、取付基部20との接合部も細くすることができるため、スパウト全体を
コンパクトに形成することができる。
前者の小径部のネジ7の4条ネジは、ネジ山7aのねじ込み角度が高く、わずかなねじ
込み量でネジ装着出来る特性があって操作性が良い反面、密封性が低く高密封性を得るに
は高トルクを必要とする。後者のネジ8の2条ネジは、ネジ山8aのねじ込み角度が低く
、ねじ込み量を多くしないとネジ装着出来ないが、その反面密封性が高く低トルクでも高
密封性を得られ、緩みにくい特性がある。
【0026】
なお、実施例1では、一方のネジ7が4条ネジ、他方のネジ8が2条ネジの例を説明し
たが、上記大径部と小径部とで異なる条数のネジが形成されているという条数の規定が満
たされる限りこれに限定されるものではない。つまり、ネジ7、8のいずれか一方が密封
性をそれほど要求されないがネジ装着が容易であり、いずれか他方がネジ装着の容易性を
あまり要求されないが高密封性であれば良い。また、逆に注出筒4の小径部S2を2条ネ
ジのネジ8として、小径部S2にキャップ11がネジ装着され、大径部S1を4条ネジの
ネジ7として、大径部S1にアダプター12がネジ装着されても良い。なお、複数のアダ
プターを使い分けたい場合などには、注出筒に、さらに異なるネジ山径のネジ部を設けて
もよい。
【0027】
図3は、小径部S2と大径部S1とが注出筒の段部を介して形成されている態様を示し
たものであり、このスパウト1の構造は、容器2に取り付けるスパウト1の注出筒4を、
その注出端4a側を注出筒小径部5に形成し容器2側を注出筒大径部6に形成して、これ
ら小径部5及び大径部6の外周面に、ネジ山の条数の異なる2種類のネジ7、8をそれぞ
れ螺刻して小径部S2及び大径部S1をなし、ネジ山7aの条数の多い一方のネジ7に密
封性と共に易着脱性を要求する接続部材9をネジ装着出来、一方のネジ7よりネジ山8a
の条数の少ない他方のネジ8に高密封性を要求する密封部材10をネジ装着出来るように
したものである。
【0028】
また、小径部S2と大径部S1の間に、小径部より大きく大径部より小さい径のネジ部
を設け(図示せず)、多段の係合部を備えたものにすることも出来る。この新たなネジ部
は、注出筒小径部5の容器側に小径部S2よりネジ山高さの高いネジを螺刻する、注出筒
大径部6の注出端側に大径部S1よりネジ山高さの低いネジを螺刻する、あるいは、注出
筒小径部5と注出筒大径部6の間に新たな段部を設けてネジを螺刻するなど、本発明に基
づいて形成出来る。このスパウト付容器3におけるスパウト1の注出筒4には、図6に示
すように、密封部材10であるキャップ11がネジ装着されたり、図7に示すように、必
要に応じて接続部材9であるアダプター12がネジ装着されたりする。
【0029】
前記容器2の種類は限定されるものではないが、図1に示した例ではパウチ(以下、「
パウチ2」という)であり、したがって、上述のスパウト付容器3であるスパウト付パウ
チ(以下、「スパウト付パウチ3」という)を形成する。このパウチ2は、レトルト食品
などの内容物を収容するものであり、ガス並びに液体に対してバリアー性があり、さらに
、加熱滅菌に耐えうる耐熱性を備えた材料にて構成されている。そして、パウチ2は、内
容物としてチューブを通して生体の消化器官に直接投与される栄養剤等の場合に好ましく
使用される。
【0030】
前記スパウト1は、パウチ2の側部に取り付けるための取付基部20と、この取付基部
20に直立している注出筒4とからなり、この取付基部20にパウチ2の側部を溶着して
いる。一方、注出筒4には、上述のように小径部S2と大径部S1とが設けられ、小径部
S2はネジ山7aを有する一方のネジ7から形成され、大径部S1にはネジ山8aを有す
る方のネジ8から形成されている。実施例2では、注出筒小径部5に螺刻された一方のネ
ジ7は4条ネジであり、注出筒大径部6に螺刻された方のネジ8は1条ネジである。
【0031】
さらに、前記ネジ7、8には水抜きスリット7b、8bが設けられて、後に詳述する加
熱滅菌の際、侵入した水を抜くことが出来る。
また、前記注出筒4の前記注出端4aには、図5に示すように、シール材21が貼られ
密封される。このシール材21は、剥がし片21aがあり、この剥がし片21aを避けて
前記一方のネジ7のネジ山7aが設けられている。そして、このシール材21は、パウチ
2内に前記栄養剤を収容した後、加熱滅菌するがその際注出端4aから物質の出入りを防
ぎ、さらに輸送、保管中の異物侵入を防ぐためのものである。
【0032】
図6に示すように、前記密封部材10である前記キャップ11は、前記スパウト1の大
径部S1のネジ8にネジ装着されるものであり、天板22とスカート部23とからなる。
このスカート部23には、前記ネジ8の1条ネジ(実施例1の場合は2条ネジ)に沿うネ
ジ24が螺刻され、大径部S1にキャップ11がネジ装着される。天板22には、その内
面に注出筒4の注出端4aに沿う環状シール部25が設けられ、大径部S1にキャップ1
1がネジ装着された際、注出端4aを密封してあるシール材21をさらに環状シール部2
5により押さえ付けていることになる。したがって、なお一層注出端4aとシール材21
との間から水が入らず、シール材21上に水が残ることもない。さらに、なお一層注出端
4aとシール材21との密着度を必要以上に高くする必要がない。
【0033】
図7に示すように、前記接続部材9である前記アダプター12は、前記スパウト1の小
径部S2のネジ7にネジ装着されるものであり、キャップ本体30と、キャップ本体30
の天板31に突設されたチューブ継手32とからなる。キャップ本体30のスカート部3
3には、前記ネジ7の4条ネジに沿うネジ34が螺刻され、小径部S2にアダプター12
がネジ装着される。天板31には、その内面に注出筒4の注出端4a内周に嵌合するイン
ナーリング35が設けられ、小径部S2にアダプター12がネジ装着された際、液状内容
物が漏れないようになっている。チューブ継手32は、カテーテルなどのチューブが接続
され、生体の消化器官に栄養剤等の液状内容物が注入される。
【0034】
スパウトのネジ部の下の注出筒外周には、充填設備等でスパウト(またはスパウト付容
器)を搬送する際に把持するための把持部15が形成されている。把持部15の形状は、
図8(a)に示すように注出筒に段差を設けて把持部とする形態(実施例1の形態)が好
適であるが、図8(b)に示すように断面四角形状に突出させた形態(実施例2の形態)
、あるいは段差と突出を組み合わせて把持面積を確保するようにした形態等でもよい。突
出させる場合は、図8(c)に示すようにネジ部に向かう面を傾斜させると、水抜けがよ
くなる。また、把持部は把持・搬送操作に支障のない程度に断続的に設けてもよい。
【0035】
次に、上記構成になるスパウト1の使用方法を述べる。
まず、図6に示すように、スパウト1の注出筒4の注出端4aにシール材21を溶着な
どの手段により貼り付け密封し、さらに、大径部S1にキャップ11をネジ装着するが、
この部分は1条または2条ネジであるため密封性の高いネジ装着ができる。したがって、
注出筒4の注出端4aは、シール材21及びその上から1条ネジ効果に加えて環状シール
部25により押さえ付けているから、多重に密封していることになる。この多重密封状態
のスパウト1をパウチ2の側部に溶着などの手段により取り付ける。その後、パウチ2の
開口部(図示せず)から液状内容物を充填し、その開口部を閉じる。次に、レトルト(加
圧滅菌用釜)に入れ加熱滅菌する。
【0036】
この滅菌操作に由来する水は、環状シール部25によりシール材21上に入らず残留も
せず、さらに注出筒4とキャップ11との間に存在しても、水抜きスリット7b、8bに
よりスムーズに抜けて残留しない。勿論、この多重密封により、注出端4aを通して液状
内容物及び水などの外部物質の出入りがないことは言うまでもない。この栄養剤入りのス
パウト付パウチ3には、通常、アダプター12などの付属品を付けて包装し、最終製品と
して流通ルートに乗せるものであるが、スパウト付パウチ3と付属品をそれぞれ独立した
製品として流通させてもよい。なお、パウチ2の側部にスパウト1を溶着などの手段によ
り取り付け、スパウト1の注出筒4の注出端4aから液状内容物を充填した後、注出端4
aにシール材21を貼り、さらに、大径S1にキャップ11をネジ装着して、レトルトに
入れ加熱滅菌してもよい。
【0037】
使用に際しては、スパウト1の注出筒4からキャップ11を外し、注出筒4の注出端4
aからシール材21を剥がし、小径部S2にアダプター12をネジ装着するが、この部分
が4条ネジであるため簡単にネジ装着できる。そして、アダプター12のチューブ継手3
2にカテーテルなどのチューブを接続し、注出筒4を下にして液状内容物入りのスパウト
付パウチ3を吊り金具につり吊り下げれば、生体の消化器官に栄養剤等の液状内容物を直
接注入することが出来る。また、注入の必要性が無くなった場合は、吊り金具からスパウ
ト付パウチ3を外し、注出筒4からアダプター12を容易に外せて、キャップ11をネジ
装着すれば内容物をこぼすことなく廃棄することが出来る。
【0038】
次に実施例2に示したスパウトの構造の優位性について、実証する。
小径部のネジ山を1条とし、大径部のネジ山を4条とするスパウトを図3に示した形状
で作成した。このスパウトの口内径はφ22.8mm,口外径はφ25mmであり、1条
ネジの山径はφ30mm,4条ネジの山径はφ27mmである。
上記スパウトを用いて、締めトルク(cNm)を350、400、450とした時の、
1条ネジと4条ネジの夫々に付いて、開栓トルク(cNm)と締め角度(°)を測定し、
結果を表1に示した。測定値はサンプル5個の平均値である。
【表1】

表に示した測定結果より、下記の結論が得られた。
・開栓トルクは1条ネジが4条ネジの2倍以上大きい;
・締め角度においては、1条ネジは1回転半以上、4条ネジは半回転程度である;
・1条ネジでは締めトルクを大きくすると、開栓トルク、締め角度ともに大きくなる傾向
がある;
以上の実験からも分かるように、1条ネジは緩みにくいが、装着に手間が係るのに対し
て、4条ネジは簡単に装着出来るが、緩みやすいという、相反する特徴を持っている。
したがって、本発明は、この相反する特徴を活かして、不使用時には緩みにくく、装着
時には簡単に装着出来るという特性を、一つのスパウトに持たせたものであり、その技術
的意義は大きいものがある。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のスパウトは、これを取り付けたパウチに収容した内容物をそのまま加熱滅菌し
、使用時にスパウトにアダプターなどを着脱するよう操作が伴うような場合に利用可能性
が高く、特に、パウチの内容物が栄養剤などで、医療現場など使用されるような場合に極
めて利用可能性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例1に示したスパウトをパウチに取り付けた状態の正面図である。
【図2】実施例1に示したスパウトの半裁縦断面図である。
【図3】実施例2に示したスパウトの半裁縦断面図である。
【図4】図3のスパウトの平面図である。
【図5】図3のスパウトの底面図である。
【図6】図3のスパウトにキャップをネジ装着した状態の半裁縦断面図である。
【図7】図3のスパウトにアダプターをネジ装着した状態の半裁縦断面図である。
【図8】把持部の形状例を(a)(b)(c)で例示した断面図である。
【図9】従来例を示す半裁縦断面図である。
【図10】従来例を示す要部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1,50 スパウト
2 容器(パウチ)
3 スパウト付容器(スパウト付パウチ)
4,53 注出筒
4a 注出端
5 注出筒小径部
6 注出筒大径部
7 一方のネジ
7a,8a,52 ネジ山
7b,8b 水抜きスリット
8 他方のネジ
9 接続部材
10 密封部材
11,55 キャップ
12 アダプター
15 把持部
20,51 取付基部
21,54 シール材
21a 剥がし片
22,31 天板
23,33 スカート部
24,34 ネジ
25,56 環状シール部
30 キャップ本体
32 チューブ継手
35 インナーリング
S1 大径部
S2 小径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取り付けるスパウトの注出筒の外周に、それぞれネジ山条数の異なる2つのネジ
を螺刻したネジ部を形成し、
前記ネジ部の注出端側のネジ山径を小径部とし、前記ネジ部の容器側のネジ山径を大径
部としたことを特徴とするスパウトの構造。
【請求項2】
前記大径部のネジ山高さを、前記小径部のネジ山高さより高くして、
前記大径部のネジ山径を前記小径部のネジ山径より大径に形成した請求項1記載のスパ
ウトの構造。
【請求項3】
前記大径部の注出筒の外径を、前記小径部の注出筒の外径より太くして、
前記大径部のネジ山径を前記小径部のネジ山径より大径に形成した請求項1記載のスパ
ウトの構造。
【請求項4】
該小径部のネジ山条数が、該大径部のネジ山条数より多い条数に形成されている請求項
1ないし3のいずれか1項記載のスパウトの構造。
【請求項5】
前記小径部のネジ山が4条ネジであり、前記大径部のネジ山が1条または2条ネジであ
る請求項4記載のスパウトの構造。
【請求項6】
前記ネジ山条数の少ないネジ部には密封部材が螺着され、前記ネジ山条数の多いネジ部
には、該密封部材が螺脱された後に接続部材が螺着されるようにされた請求項1ないし5
のいずれか1項のスパウトの構造。
【請求項7】
前記小径部と大径部の間に、小径部より大きく大径部より小さい径のネジ部を設けて成
る請求項1ないし6のいずれか1項記載のスパウトの構造。
【請求項8】
前記接続部材はアダプターであり、前記密封部材はキャップである請求項6または7記
載のスパウトの構造。
【請求項9】
前記注出筒の注出端をシール材にて密封してなる請求項1ないし8のいずれか1項記載
のスパウトの構造。
【請求項10】
前記キャップの天板内面に前記注出筒の注出端に対応した環状シール部を設けた請求項
8または9記載のスパウトの構造。
【請求項11】
前記容器はパウチである請求項1ないし10のいずれか1項記載のスパウトの構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−273425(P2006−273425A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277006(P2005−277006)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】