説明

スパウト付き収容体

【課題】外気などが入り込むことを防止して再封止が可能であると共に、構造が簡単で安定した内容物の注出操作が行えるスパウト付き収容体を提供する。
【解決手段】本発明のスパウト付き収容体は、重ねたシート状部材3a,3bに、スパウト10の溶着部15の両端側から収容部S内に向けて延びる歪ラインL1,L2を跨いで溶着される第1のシールライン20と、歪ラインL1,L2の下端を包み、収容部Sを区画するとともに第1のシールライン20との間で密着領域S2を発生させるように溶着される第2のシールライン30が形成される。そして、第2のシールライン30の一部30aを未溶着とし、収容部S内の内圧を高めた際、内容物50を、第1のシールライン20と第2のシールライン30との間の密着領域S2に流入可能とし、流入した内容物を、流路を介して注出可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状部材を重ねて溶着することにより内容物を収容する収容部を形成すると共に、内容物を注出可能にするスパウトを溶着したスパウト付き収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば合成樹脂製のシート(プラスチックフイルムなど)を重ねて溶着(熱溶着)すると共に、これにスパウトと称される注出口を溶着(熱溶着)したスパウト付き収容体が知られている。このようなスパウト付き収容体は、内部(収容部)に液体や半流動体などの内容物を充填し、スパウトを介して内容物が注出されるようになっており、医療分野、食品分野、日用品分野等、様々な分野で使用されている。
【0003】
ところで、上記したスパウト付き収容体を利用するに際し、特定の分野では、スパウトを介して内容物を取り出す際に、収容部内に外気などが入り込むのを防止したいことがある。これは、外気が入り込むことで内容物と反応し、内容物の性質が変化してしまう可能性があるためである。通常、上記したスパウト付き収容体では、内容物を取り出した後、再封止できるように、キャップのような閉塞体が設けられるが、使用時において、閉塞体を外し、そのまま内容物を注出した後、再び閉塞体を取着しても、閉塞体を開封して注出操作をする際に、必然的に外気が収容部に入り込んでしまう。
【0004】
このため、例えば、特許文献1には、内容物を注出する開口部に棒状体(シール部材)を遊挿しておくと共に、棒状体に傾斜部を形成し、この傾斜部を開口部の下方領域に形成した開口傾斜部に当接させた注出口構造が知られている。前記棒状体には、付勢部材(バネ)が固定されており、棒状体に形成された傾斜部を、開口傾斜部に当て付けることでシールするようにしている。すなわち、棒状体を付勢力に抗して押し込むことで、棒状体の傾斜部と開口傾斜部との当接が離間して内容物の注出が可能となり、かつ、棒状体に付勢力が作用することで、棒状体の傾斜部が開口傾斜部に当て付けられて内容物がシールされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−62791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した公知技術の注出口構造では、棒状体を付勢する付勢部材を組み込む必要があるため、構造が複雑になると共に組み込み性が悪く、コストが高くなってしまう。また、付勢部材に抗して棒状体を押し込む必要があるため、内容物を注出する際の操作が面倒であると共に、内容物の安定した注出操作が行い難いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、内容物注出時に外気などが入り込むことを防止して再封止が可能であると共に、構造が簡単で安定した内容物の注出操作が行えるスパウト付き収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、シート状部材を重ねて周囲を溶着した溶着領域の内側に形成され、内容物を収容する収容部と、前記重ねたシート状部材に介在されて溶着される溶着部を具備し、内容物を注出可能とする流路を具備したスパウトと、を有するスパウト付き収容体であって、前記重ねたシート状部材に、前記溶着部の両端側から収容部内に向けて延びる歪ラインを跨いで溶着される第1のシールラインと、前記歪ラインの下端を包み、前記収容部を区画するとともに前記第1のシールラインとの間で密着領域を発生させるように溶着される第2のシールラインを形成し、前記第2のシールラインの一部を未溶着とし、前記収容部内の内圧を高めた際、内容物を、前記第1のシールラインと前記第2のシールラインとの間の前記密着領域に流入可能とし、流入した内容物を、前記流路を介して注出可能としたことを特徴とする。
【0009】
上記した構造のスパウト付き収容体によれば、スパウトを介在した状態で重ねたシート状部材の周囲を溶着すると、スパウトの溶着部の両端側から収容部内に向けて歪みラインが生じる。この歪みラインは、重ねたシート状部材にスパウトの溶着部を介在するとその部分が膨らみ、この膨らんだ部分にシート状部材を溶着することによって生じるものであり、この歪みラインの間は、重ねたシート状部材の内面が密着し難い領域、乃至は密着できない領域(歪領域)となっている。そして、前記重ねたシート状部材に、この歪ラインを跨いで第1のシールラインを溶着形成し、かつ、前記歪ラインの下端を包み、前記収容部を区画するとともに前記第1のシールラインとの間で密着領域を発生させるように第2のシールラインを溶着形成することで、前記歪領域を包囲するようにして、シート状部材の内面同士が密着した密着領域が形成されるようになる。
【0010】
前記第2のシールラインの一部は未溶着とされており、収容部内の内容物を、前記第1のシールラインと前記第2のシールラインとの間の密着領域に流入可能としているため、収容部に外圧を作用させるなどして収容部内における内容物の内圧を高めると、内容物は、第2のシールラインの一部の未溶着部分(流路口)を超えて密着領域を広げるようにして密着領域内に移動することができ、前記歪領域からスパウトの流路を介して外部に注出することが可能となる。
【0011】
そして、収容部に対する外圧をなくす(収容部内の内圧が低下する)と、それまで押圧力が作用した内容物によって広げられた状態となっている密着領域は、各シールラインの作用によって密着するようになり、それまで内容物が通過していた部分が封止され、外部から気体や液体などが収容部内に流入することが防止される。この場合、内容物は歪み領域に残るようになり、スパウトの流路から外気が収容部内に入り込むことを確実に防止することが可能となる。
【0012】
なお、上記した歪ライン、第1のシールライン、及び、第2のシールラインについては、重ねたシート状部材の大きさ、スパウトの溶着部の形状、及びその大きさ等によって適宜変形することが可能である。例えば、第1のシールラインと第2のシールラインとを近付けることにより、シート状部材相互の密着力を高める(シール効果を高める)ことが可能となり、また、第1のシールラインと第2のシールラインとの間の距離を離すことで、シート状部材の密着力を弱めて、弱い力の外圧で内容物を注出することが可能となる。また、第2のシールラインは、第1のシールラインとの間で密着領域が形成されるように溶着されていれば良く、未溶着部分(流路口)を形成する位置や、大きさについては、適宜、変形することが可能である。
【0013】
上記した構成において、前記スパウトの溶着部には、前記収容部内に突出すると共に前記重ねたシート状部材に対して未溶着となり、かつ、前記流路に連通する流路口を具備したガイド部を一体形成しておくことが好ましい。
【0014】
このようなガイド部を溶着部に対して一体形成しておくことで、上記した歪ラインを明確に形成することが可能になると共に、広い範囲に亘って確実に歪領域を形成しておくことができ、シール効果を高めることが可能となる。
【0015】
また、このようなガイド部を形成する場合、ガイド部は、収容部側に移行するに連れて対向するシート状部材から次第に離間する一対の傾斜部を備えており、前記流路口を、各傾斜部にそれぞれ形成しておくことが好ましい。
【0016】
このようなガイド部の構成により、内容物を安定して注出することができるとともに、歪領域内に確実に内容物を残すことができ、安定したシール効果を発揮することが可能となる。
【0017】
また、上記したスパウト付き収容体は、前記重ねたシート状部材を自立体容器となるように周囲を溶着し、前記第1のシールラインを、自立方向に沿って前記周囲の溶着部との間で内容物を貯留可能にする貯留領域が発生するように溶着しておくことが好ましい。
【0018】
このような貯留領域を形成しておくことで、自立体容器とした場合、貯留領域に内容物が残るため、収容部内の内容物が減っても倒れ難くすることができる。
【0019】
また、上記したように、第2のシールラインは、その一部が未溶着部分(流路口)となっていれば良いが、このような構成では、連続的に点状に溶着される部分を有していても良い(第2のシールラインすべてが連続的に点状に溶着される部分で構成されたものを含む)。この場合、内容物は、第2のシールラインを構成する各溶着点間の未溶着部分を介して、前記第1のシールラインと前記第2のシールラインとの間の前記密着領域に流入するようになる。
【0020】
このような構成では、内容物が密着領域内に流入する際、密着領域内への過剰な押圧力を分散することが可能となり、シート状部材の内面の安定維持が保たれて外気の流入を効果的に防止することが可能となる。
【0021】
また、上記したように第1のシールラインと第2のシールラインとの間に形成される密着領域には、スポット溶着を施しても良い。
【0022】
このようなスポット溶着を施しておくことで、密着領域に過大の押圧力がかかることが防止され、これにより、シート状部材の内面の変形を防止して、密着領域を安定して形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、内容物注出時に外気などが入り込むことを防止して再封止が可能であると共に、構造が簡単で安定した内容物の注出操作が行えるスパウト付き収容体が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るスパウト付き収容体の第1の実施形態を示す図であり、溶着部分を斜線で示した斜視図。
【図2】図1に示すスパウト付き収容体に用いられているスパウト部分を拡大して示す図。
【図3】スパウトの内部構造を示す部分断面図。
【図4】内容物が歪領域に貯留された状態を示す図。
【図5】内容物の注出状態を示す図。
【図6】第2のシールラインの変形例を示す図。
【図7】スパウト付き収容体の第2の実施形態を示す図。
【図8】第2のシールラインの変形例を示す図。
【図9】スパウト付き収容体の第3の実施形態を示す図。
【図10】スパウトの取着位置、第1のシールライン及び第2のシールラインの変形例を示す図。
【図11】スパウト付き収容体の第4の実施形態を示す図。
【図12】図9に示した構成において、密着領域にスポット溶着を施したスパウト付き収容体。
【図13】スパウト付き収容体の第5の実施形態を示す図。
【図14】第2のシールラインの第1変形例を示す図。
【図15】第2のシールラインの第2変形例を示す図。
【図16】第2のシールラインの第3変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1から図4は、本発明に係るスパウト付き収容体の第1の実施形態を示す図であり、図1は、溶着部分を斜線で示した斜視図、図2は、図1に示すスパウト付き収容体に用いられているスパウト部分を拡大して示す図、図3は、スパウトの内部構造を示す部分断面図、そして、図4は、内容物が歪領域に貯留された状態を示す図である。
【0026】
本実施形態に係るスパウト付き収容体1は、例えば、図1に示すような形態で構成することができ、略矩形形状のシート状部材3a,3bを重ね合わせ、斜線で示す周辺部分をヒートバー等によって熱溶着することによって、その収容体本体が形成される。
【0027】
前記シート状部材3a,3bは、柔軟性を有する合成樹脂製のシート(プラスチックフイルム)、例えば、溶着し易いように、ポリエチレンやポリプロピレンなどによって構成されており、公知のように、その表面側に、収容物に対するバリア性(ガスバリア性および遮光性)を高めるように、ナイロン、アルミホイルなどを積層した、いわゆる複合層で構成されることが好ましい。
【0028】
上記したように、前記シート状部材3a,3bを、図に示す斜線領域でヒートバーによって熱溶着することにより、液体や半流動体のような内容物が収容される収容部Sを有する収容体本体が形成される。具体的に本実施形態では、重ね合わされたシート状部材3a,3b同士を、上端部4、側縁部5,6、及び下端部7で熱溶着することで、内容物50を収容するための収容部Sを画定する収容体本体が形成される。なお、本実施形態では、上端部4から一方の側縁部5に向けて傾斜部8が形成されており、この傾斜部8に以下に詳述するスパウト10が介在されて溶着される。また、本実施形態では、下端部7を溶着するに際して、底部7aが溶着されており、スパウト付き収容体は、自立体として構成されている。
【0029】
前記傾斜部8に介在されて溶着されるスパウト10は、略円筒形状に形成された口栓部11と、口栓部11の内部に形成され、収容部Sに収容された内容物を注出するための流路12と、前記口栓部11の露出部分に形成され、流路12に流れる内容物を排出する排出口(開口)12aとを備えており、このような形態のスパウトは、樹脂、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィンによって一体成型することが可能である。前記スパウト10には、シート状部材3a,3bに介在されて溶着される溶着部15が一体形成されており、重ね合わせたシート状部材3a,3bの周囲を溶着するに際して、シート状部材3a,3bは、溶着部15の表面に一体的に溶着される。このため、溶着部15は、断面舟形形状、断面略楕円形状、断面略円形状など、シート状部材が密着して溶着し易い形状に形成されている。なお、前記口栓部11には、必要に応じて、スクリュー式のキャップやヒンジ式のキャップのような閉塞体(図示せず)を着脱可能に装着するようにしても良い。
【0030】
重ねたシート状部材3a,3bに対して、上記したような構造のスパウト10を介在して溶着すると、溶着部15の両端側から収容部S内に向けて延出する歪みラインL1,L2が生じるようになる。すなわち、歪みラインL1,L2は、重ねたシート状部材3a,3bにスパウトの溶着部15を介在すると、その部分が膨らみ、この膨らんだ部分を溶着することによって必然的に収容部内に向けて生じるものであり、この歪みラインL1,L2の間の領域S1は、重ねたシート状部材3a,3bの内面が密着し難い領域、乃至は密着できない領域(以下、歪領域S1と称する)となっている。
【0031】
このような歪みラインL1,L2は、上記のように、スパウトの膨らんだ溶着部15によって形成されるが、本実施形態では、スパウト10の溶着部15に、収容部S内に突出すると共に、重ねたシート状部材3a,3bに対して未溶着となり、かつ前記流路12に連通する流路口18を具備したガイド部17を形成することで、そのような歪みラインL1,L2を幅広く明確に生じさせ、かつ、歪領域S1が広い範囲で形成されるようにしている。
【0032】
具体的に、本実施形態のガイド部17は、図2から図4に示すように、溶着部15の両溶着面を、そのまま収容部S内に垂下させ、かつ、収容部側に移行するに連れて対向するシート状部材3,3bから次第に離間するような一対の傾斜部17a,17bを備えた構造となっており、前記流路12に連通する流路口18を、それぞれの傾斜部17a,17bに形成した構造となっている。これらの傾斜部17a,17bは、シート状部材3a,3bに対しては未溶着となっており、図2に示すように、このような未溶着部分を有するガイド部17が存在することで、歪領域S1がガイド部17の両端縁に沿って形成され易くなる。すなわち、ガイド部17の両端縁17d,17eに沿って、前記歪みラインL1,L2が収容部S側に向けて形成され、ガイド部17の下方側の広い範囲に、前記歪領域S1が形成されるようになる。
なお、スパウトにこのようなガイド部17を形成しない構成であれば、歪みラインL1,L2は、収容部側に移行するに連れて次第に接近し、狭い範囲で略三角錐形状の歪領域が形成される。
【0033】
また、前記シート状部材3a,3bを溶着する際、その収容部Sの領域には、シールラインが形成される。図1及び図5に示すように、シールラインは、上記したように生じる歪ラインL1,L2を跨ぐようにして溶着される第1のシールライン20と、歪ラインL1,L2の下端を包み(歪ラインL1,L2と交差しないように形成される)、収容部Sを区画するとともに第1のシールライン20との間で密着領域S2を発生させるように溶着される第2のシールライン30とを有する(本発明において、第1のシールラインとは、歪ラインL1,L2を跨ぐようにして溶着されるシール領域を意味し、第2のシールラインとは、第1のシールラインとの間で密着領域S2を形成するように溶着されるシール領域を意味する)。
【0034】
この場合、本実施形態の第1のシールライン20は、上端部4から前記歪ラインL1,L2を跨ぎ、側縁部5に沿って下端部7に向けて延出するように形成される。このように第1のシールライン20は、歪ラインL1,L2を跨ぐように形成されることから、その間は未溶着となって、前記歪領域S1が、図1及び図5に示すように、略矩形状に現れる。また、第2のシールライン30は、上端部4から第1のシールライン20に沿うように形成され、歪ラインL1,L2の下端を包むようにして、第1のシールライン20の縦方向延出部に合流するように形成される。この第2のシールライン30は、第1のシールライン20と近接して形成されるため、その間のシート状部材3a,3bは、互いに密着する方向に力を受けて相互に密着する領域となる(歪領域S1の両サイドに密着領域S2が形成される)。この場合、両シールライン20,30を近付けるほど、密着領域S2における密着力を高めることができる。
【0035】
そして、前記第2のシールライン30の一部には、未溶着部(流路口)30aが形成されており、収容部S内の内容物を、第1のシールライン20と第2のシールライン30との間の密着領域S2に流入可能としている。本実施形態の未溶着部30aは、第1のシールライン20との合流領域近傍に1箇所形成されており、これにより、スパウト10側の内圧が下がると、内容物は、この未溶着部30aを通過することが可能となる。すなわち、スパウト10の前記排出口(開口)12aを開放した状態で、収容部Sを押圧等することで内圧を高めると(スパウト側の内圧が下がると)、内容物は、前記密着領域S2の密着力に抗して流路口30a内に入り込むことが可能となり、ここに入り込んだ内容物は、密着していない前記歪領域S1を介してガイド部17の傾斜部17a,17bに形成された流路口18に流れることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態における前記第1のシールライン20は、自立方向に沿って周囲の溶着部(側縁部5の溶着部)との間で、内容物50を貯留可能にする貯留領域S3が発生するように溶着されている。このような貯留領域S3を形成しておくことで、図1に示すような自立体容器とした場合、貯留領域S3に内容物50が残るため、収容部S内の内容物が減っても、自立体容器を倒れ難くすることが可能となる。なお、図1では、貯留領域S3に内容物50が貯留された状態を示している。
【0037】
以上のように構成されるスパウト付き収容体1を製造する場合には、まず、前述したように、シート状部材3a,3bを重ね、側縁部5,6、底部7aを具備する下端部7、及び前記第1のシールライン20、第2のシールライン30を熱溶着するとともに、傾斜部8にスパウト10を介在して溶着部15にシート状部材3a,3bを熱溶着する。
【0038】
なお、上記したように周囲領域を熱溶着する際には、内容物50が充填できるように、周囲領域の一部(例えば、上端部4)を未溶着状態にしておく。この未溶着部分は、収容部S内に所定の内容物50を充填する部分となり、内容物50の充填作業が終了した段階で、その部分を熱溶着することで、内容物50が収容されたスパウト付き収容体1が完成する。
【0039】
内容物50が収容されたスパウト付き収容体1から内容物50を注出する際には、口栓部11から図示されていないキャップのような閉塞体を外し、収容体本体を傾けて収容部Sに対して押圧力を付与する。これにより、収容部S内の内容物50は、図5の矢印Aに示すように、前記第2のシールライン30の未溶着部分(流路口30a)を超えて密着状態にある密着領域S2を広げるようにして密着領域S2内に移動し、前記歪領域S1からスパウト10のガイド部17の傾斜部17a,17bに形成された流路口18に入り込む(図3参照)。そして、この流路口18に入り込んだ内容物は、そのまま流路12を介して口栓部11の排出口(開口)12aから外部に注出される。この場合、歪領域S1は、ガイド部17を形成したことで広い領域が確保されており、かつ一対の傾斜部17a,17bに形成されたそれぞれの流路口18を介して流路12に入り込むことができるため、安定した注出操作が可能となる。
【0040】
そして、収容部Sに対する押圧力を解除する(収容部内の内圧が低下する)と、上記したように広げられた状態となっている密着領域S2は、再び密着するようになり、それまで内容物が通過していた部分が封止され、外部から気体や液体などが収容部S内に流入することが防止される。この場合、内容物は歪領域S1に残ることから、スパウト10の流路12から外気が収容部S内に入り込むことを確実に防止することが可能となる。
【0041】
また、上記したような注出時には、図5の矢印Bで示すように、歪み領域S1から貯留領域S3に内容物が移動し、貯留領域S3内に内容物50が貯留されるようになる。このように貯留領域S3に内容物50が残るため、注出操作を繰り返して収容部S内の内容物が減っても、自立体容器を倒れ難くすることが可能となる。なお、貯留領域S3に貯留された内容物50は、最終的に貯留領域S3を押圧することで注出することが可能である。
【0042】
以上のように、本実施形態のスパウト付き収容体1によれば、所定形状のスパウト10をシート状部材3a,3bに介在して溶着を施すと共に、製袋工程時に、所定の領域にシールライン20,30を形成するだけで良いことから、注出操作時に収容部内に外気などが入り込むことのないスパウト付き収容体の構造が簡略化され、かつ、そのようなスパウト付き収容体を低コストで製造することが可能となる。特に、上記した構成によれば、スパウト10は、口栓部11、溶着部15、及びガイド部17を有する簡単な構造であり、再封止をするための特別な構造を備えていないため、スパウトの成型に要するコストを削減することが可能となる。
【0043】
上記した第2のシールライン30については、例えば、図6に示すように形成することが可能である。この変形例の第2のシールライン30は、上端部4及び第1のシールライン20の縦方向延出部と交わることなく、第1のシールライン20に沿うように形成されており、その両端側が、上端部4及び第1のシールライン20の縦方向延出部との間で未溶着部分30a,30bとなって、内容物が通過できる(矢印A参照)流路口となっている。第2のシールライン30をこのように形成しても、歪領域S1の両サイドに密着領域S2を形成することが可能であり、このように未溶着部分を複数個所、形成する(第2のシールラインの両サイドに形成する)ことで、内容物が密着領域S1内に流れ易くなり、注出性(収容部Sを押圧した際の応答性)を向上することが可能となる。また、このように未溶着部分を複数、形成することで、内容物を確実に使い切り易くなる。
【0044】
次に、本発明に係るスパウト付き収容体の別の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、前記実施形態と同一の構成部分については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0045】
図7は、本発明に係るスパウト付き収容体の第2の実施形態を示す図である。
本実施形態では、第1のシールライン20A、及び第2のシールライン30Aを、共に上端部4から側縁部5に向かうように形成している。すなわち、本実施形態の第1のシールライン20A、及び第2のシールライン30Aは、収容体本体に、第1の実施形態のような貯留領域S3が形成されないように溶着されている。
このように、収容体本体には、貯留領域を形成しない構成であっても良い。
【0046】
また、本実施形態においても、図6に示した変形例と同様、第2のシールライン30Aの両端側が、上端部4及び第1のシールライン20Aの縦方向延出部との間で未溶着部分30a,30bとなって内容物が通過できる流路口となっていても良い(図8参照)。このように、第2のシールライン30Aの未溶着部分を広く形成しておくことで、歪領域S1の両サイドに密着領域S2を形成することが可能であり、内容物を密着領域S1に流れ易くして、注出性(応答性)を向上すると共に、内容物を確実に使い切り易くすることが可能となる。
【0047】
図9は、本発明に係るスパウト付き収容体の第3の実施形態を示す図である。
本実施形態では、収容体本体を矩形形状とし、その上端部4の一端側にスパウト10を溶着した例を示している。また、上記第2の実施形態と同様、第1のシールライン20B、及び第2のシールライン30Bは、共に上端部4から側縁部5に向かうように形成して、収容体本体に、第1の実施形態のような貯留領域S3が形成されないように溶着されている。
このように、収容体本体の形状については、適宜変形することができ、かつ、スパウト10が溶着される部分についても適宜変形することが可能である。
【0048】
なお、図10に示すように、第1のシールライン20Bを、両側縁部5,6から中央領域に向かうように形成し、かつ、図6及び図8に示した変形例と同様、第2のシールライン30Bを、その両端側が、第1のシールライン20Bの縦方向延出部との間で未溶着部分30a,30bとなって内容物が通過できる流路口となるように形成しても良い。このように、第2のシールライン30Bの未溶着部分を広く形成しておくことで、歪領域S1の両サイドに密着領域S2を形成することが可能であり、内容物を密着領域S1に流れ易くして、注出性(応答性)を向上すると共に、内容物を確実に使い切り易くすることが可能となる。
【0049】
また、図10に示すように、本発明における収容体本体は、下端部7に底部を形成しない、いわゆる三方体(非自立体)として構成されていても良い。このような収容体本体によれば、最終的に下端部7から内容物を充填し、下端部を溶着することでスパウト付き収容体を製造することが可能である。
【0050】
図11は、本発明に係るスパウト付き収容体の第4の実施形態を示す図である。
本実施形態では、収容体本体を矩形形状とし、その上端部4の中央部にスパウト10を溶着した例を示している。また、上記第1の実施形態と同様、第1のシールライン20C、及び第2のシールライン30Cは、収容体本体に貯留領域S3が形成されるように溶着されている。
このように、収容体本体の形状やスパウト10の溶着位置に関係なく、適宜、貯留領域S3を形成することも可能である。また、この実施形態においても、上記した変形例と同様、第2のシールライン30Cの他端側に、同様な未溶着部分を形成しても良い。
【0051】
図12は、図9に示したスパウト付き溶着部の変形例を示しており、密着領域S2にスポット溶着40を施した構成を示す図である。
上記したように、第1のシールライン20Bと第2のシールライン30Bとの間には、密着領域S2が形成されることとなるが、第2のシールライン30Bの一部を未溶着にして流路口を形成する場合(図の構成では第2のシールライン30Bの両サイド30a,30bが流路口となる)、流路口付近では、内容物が流入する際、密着しているシート状部材が大きく離反する部分となる(大きく離反し易い領域を斜線で示してある)。
【0052】
このため、収容部Sを強く押圧すると、密着領域S2には、内容物の流入時に過大な押圧力が作用して、密着しているシート状部材同士が大きく離反することとなり、これにより、シート状部材の内面が変形して、押圧力を解除した際に、再び密着領域S2が形成され難くなってしまう。すなわち、密着領域S2が不完全になると外気の流入を招く要因となってしまうことから、この部分に、図に示すように、スポット溶着40を施しておくことで、密着領域S2に過大の押圧力がかかることが防止され、シート状部材の内面の変形を防止して、密着領域S2を安定して形成することが可能となる。
なお、スポット溶着40の大きさ、それを形成する位置、個数については、第1のシールラインや第2のシールラインの構成、流路口を形成する位置、その個数、及び密着領域における密着力などに応じて適宜変形することが可能である。
【0053】
図13は、スパウト付き収容体の第5の実施形態を示す図である。
この実施形態は、図8に示したスパウト付き収容体における第2のシールラインの構成を変更したものである。
【0054】
本発明においては、第2のシールラインは、連続的に溶着されている以外にも、連続的に点状に溶着される部分を有していても良い。すなわち、本実施形態の第2のシールラインは、歪ラインL1,L2の下端を包み込むように連続溶着されるシールライン30Dと、このシールライン30Dの両側から、シールライン30Dに沿うように、それぞれ間隔をおいて連続的に点状に溶着されるシールライン30D´とを備えている。この場合、シールライン30D´は、内容物が通過できるシールライン30Dの両側の流路口30a,30bの部分に形成されている。
【0055】
このような構成では、内容物が密着領域S2内に流入する際、密着領域内への過剰な押圧力を分散することが可能となり、シート状部材の内面の安定維持が保たれて外気の流入を効果的に防止することが可能となる。なお、密着領域S2における密着力を調整するように、上記した構成と同様、密着領域S2に、適宜スポット溶着40を施しても良いし、或いは、シールライン30Dの両端30c,30dを密着領域S2側に屈曲するように溶着して、密着領域S2内の密着性を高めても良い。
【0056】
図14は、第2のシールラインの第1変形例を示す図である。
この変形例の第2のシールラインは、歪ラインL1,L2の下端を包み込むように連続溶着されるシールライン30Eを湾曲状に形成するとともに、シールライン30Eの両側から、直線状となるように、それぞれ間隔をおいて連続的に点状に溶着されるシールライン30E´とを備えている。この場合、シールライン30E´は、内容物が通過する流路口30a,30bの部分に形成されている。
【0057】
また、図15は、第2のシールラインの第2変形例を示す図である。
この変形例の第2のシールラインは、歪ラインL1,L2の下端を包み込むように連続溶着されるシールライン30Fを直線状に形成するとともに、シールライン30Fの両側から、略直線状となるように、それぞれ間隔をおいて連続的に点状に溶着されるシールライン30F´とを備えている。この場合、シールライン30E´は、内容物が通過する流路口30a,30bの部分に形成されている。また、シールライン30Fの一端30eは、密着領域S2側に屈曲するように溶着されている。
【0058】
これらの変形例に示すように、第2のシールラインを、連続溶着されるシールラインと、それぞれ間隔をおいて連続的に点状に溶着されるシールラインによって構成する場合、その配置態様や延出方向、密着領域S2内の密着性を高める溶着態様については、適宜変形することが可能である。
【0059】
また、図16は、第2のシールラインの第3変形例を示す図である。
この変形例の第2のシールラインは、歪ラインL1,L2の下端を包み込むように形成されるシールラインすべてを、それぞれ間隔をおいて連続的に点状に溶着されるシールライン30Gによって構成している。このように、第2のシールラインについては、すべてが間隔をおいて点状溶着される構成であっても良い。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0061】
例えば、スパウト10の構成については、種々変形することが可能であり、口栓部11やガイド部17の形状、流路12や流出口18の配置態様など、その構成については適宜変形することが可能である。また、歪ラインL1,L2を跨ぐ第1のシールライン、及び、歪ラインL1.L2を包む第2のシールラインについては、重ねたシート状部材3a,3bの大きさ(内容量)、スパウト10の大きさ、溶着位置等によって、その幅や形成位置等、適宜変形することが可能である。また、第2のシールラインについても、第1のシールラインとの間で密着領域が形成されれば、その流出口(未溶着部分)の大きさや数についても適宜変形することが可能である。さらに、第1のシールラインについては、貯留領域を形成する場合、貯留領域との間で部分的に未溶着部分が存在していても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 スパウト付き収容体
3a,3b シート状部材
10 スパウト
12 流路
15 溶着部
17 ガイド部
20,20A,20B,20C 第1のシールライン
30,30A〜30G,30D´,30E´,30F´ 第2のシールライン
40 スポット溶着
50 内容物
L1,L2 歪ライン
S 収容部
S1 歪領域
S2 密着領域
S3 貯留領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を重ねて周囲を溶着した溶着領域の内側に形成され、内容物を収容する収容部と、前記重ねたシート状部材に介在されて溶着される溶着部を具備し、内容物を注出可能とする流路を具備したスパウトと、を有するスパウト付き収容体であって、
前記重ねたシート状部材に、前記溶着部の両端側から収容部内に向けて延びる歪ラインを跨いで溶着される第1のシールラインと、前記歪ラインの下端を包み、前記収容部を区画するとともに前記第1のシールラインとの間で密着領域を発生させるように溶着される第2のシールラインを形成し、
前記第2のシールラインの一部を未溶着とし、前記収容部内の内圧を高めた際、内容物を、前記第1のシールラインと前記第2のシールラインとの間の前記密着領域に流入可能とし、流入した内容物を、前記流路を介して注出可能としたことを特徴とするスパウト付き収容体。
【請求項2】
前記スパウトの溶着部には、前記収容部内に突出すると共に前記重ねたシート状部材に対して未溶着となり、かつ、前記流路に連通する流路口を具備したガイド部が一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスパウト付き収容体。
【請求項3】
前記ガイド部は、収容部側に移行するに連れて対向するシート状部材から次第に離間する一対の傾斜部を備えており、
前記流路口は、各傾斜部にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスパウト付き収容体。
【請求項4】
前記重ねたシート状部材を自立体容器となるように周囲を溶着し、
前記第1のシールラインは、自立方向に沿って前記周囲の溶着部との間で内容物を貯留可能にする貯留領域が形成されるように溶着されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスパウト付き収容体。
【請求項5】
前記第2のシールラインは、連続的に点状に溶着される部分を有しており、各溶着点間の未溶着部分を介して、前記第1のシールラインと前記第2のシールラインとの間の前記密着領域に内容物を流入可能としたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスパウト付き収容体。
【請求項6】
前記第1のシールラインと第2のシールラインとの間に形成される密着領域に、スポット溶着を施したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のスパウト付き収容体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−206780(P2012−206780A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97063(P2011−97063)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000228408)日本キム株式会社 (37)
【Fターム(参考)】