説明

スパンボンドウェブの製造装置

【課題】 紡糸された合成樹脂製フィラメント群の開繊性を良好にするための空気流分散装置を備えたスパンボンドウェブ製造装置を提供する。
【解決手段】 この製造装置は、紡糸口金1と、紡糸口金1から紡糸された合成樹脂製フィラメント群2,2・・を空気流で牽引した後、矩形出口から排出するための矩形筒体状のエジェクター3と、コロナ帯電装置6と、コロナ帯電装置6の下方に連設されている空気流分散装置11、及び捕集したウェブを上流から下流に搬送するための捕集コンベア4を備える。分散装置11は、合成樹脂製フィラメント群2,2・・の上流側のみに設けられている。そして、分散装置11は、空気流の方向をコアンダ効果により上流側のみに変更させるための傾斜面12を備えている。傾斜面12には第一傾斜ガイド13と第二傾斜ガイド14とが交互に複数形成されている。ガイド14の方がガイド13よりも、傾斜が大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製フィラメント群が堆積されてなるスパンボンドウェブを製造する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパンボンドウェブは、以下のような周知の方法で製造されている。すなわち、図1に示すように、多数の紡糸孔を有する紡糸口金1から吐出された合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・は、矩形筒体の形状を持つエジェクター3の矩形入口に導入され、エジェクター3内で合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・が下方に向けて噴出している空気流によって下方へ牽引された後、エジェクター3の矩形出口から排出され、エジェクター3の矩形出口の下方に設けられた捕集コンベア4上に堆積してスパンボンドウェブ5が製造されている。捕集コンベア4は、図1の矢印方向に移動しており、これにより、スパンボンドウェブ5は下流側に搬送され、たとえば、一対の加熱エンボスロール(図示せず)間に通すなどの所定の処理が施され、合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・相互間が結合されてスパンボンド不織布が生産されている。
【0003】
エジェクター3の矩形出口から搬出された合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・は、下流側及び上流側に十分に開繊するのが好ましい。開繊が不十分であると、合成樹脂製フィラメント2が複数本集束した集束フィラメントが、スパンボンドウェブ5中に存在し、繊維密度が不均一なスパンボンドウェブ5になってしまう。また、繊維密度が不均一であると、見掛け上の地合も悪い低品質のスパンボンドウェブ5になってしまう。
【0004】
このため、従来より、合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・を十分に開繊することを目的として、エジェクター3の矩形出口に種々の装置が用いられている。特許文献1には、エジェクター3の矩形出口に、コロナ帯電装置6を取り付けることが記載されている。コロナ帯電装置6は、合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・に静電気を与え、静電気同士の反発力によって、エジェクター3から下方に噴出している空気流に打ち勝って、合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・を上流側及び下流側に開繊させようというものである。
【0005】
また、特許文献2には、エジェクター3の矩形出口に空気流分散装置21を取り付けることが記載されている。この空気流分散装置21は、下方に向けて一定の角度βで傾斜し上流側(図3の左側)に凸となった第一ガイド22と、下方に向けて一定の角度αで傾斜し下流側(図3の右側)に凹となった第二ガイド23とが、交互に複数、エジェクター3の矩形出口の幅方向(矩形出口の横方向)に並んでなるものである。この空気流分散装置21を用いると、エジェクター3内で下方に向けて噴出している空気流は、エジェクター3の矩形出口で上流側及び下流側に分けられ、空気流に乗って下方へ搬送されている合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・は上流側及び下流側に開繊するというものである。すなわち、空気流を上流側及び下流側に拡散させることにより、合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・も拡散させて開繊し、その交絡を低減させようというものである。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたコロナ帯電装置6も、特許文献2に記載された空気流分散装置21も、合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・をある程度開繊し得るが、未だ十分とはいえなかった。特に近年、生産性の向上を図るために、合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・の本数を増加させることが試みられており、本数が増加すればするほど、開繊性が不良となり、集束フィラメントが増加する傾向となっている。
【0007】
【特許文献1】特表平7−505687号公報(請求の範囲及び図2)
【特許文献2】特開2005−146502公報(請求の範囲、図3及び図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、特許文献1及び2に記載された装置よりも、さらに良好に合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・を開繊し得る装置を提供することである。
【0009】
本発明者等は、開繊性をさらに良好にするため、従来全く考慮されたことのない組み合わせ、すなわち、特許文献1に記載されたコロナ帯電装置6と、特許文献2に記載された空気流分散装置21との組み合わせを試みた。具体的には、コロナ帯電装置6の下方に、空気流分散装置21を連設することを試みた。しかしながら、この試みでは多少の効果は認められるものの、格段の開繊性の向上には至らなかった。この原因は、特許文献2に記載された空気流分散装置21の第一ガイド22は、エジェクター3の矩形出口において上流側(図3の左側)に凸となっており、エジェクター3から排出された合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・のうち、下流側(図3の右側)に開繊されたものと衝突するからである。すなわち、コロナ帯電装置6によって静電荷を与えられ、下流側に開繊された合成樹脂製フィラメント2は、上流側に凸となった第一ガイド22に衝突しやすくなっている。衝突すると、与えられている静電荷が放電してしまい、静電荷の作用による開繊性が減少してしまうのである。また、放電した合成樹脂製フィラメント2と、静電荷が与えられた合成樹脂製フィラメント2とが混在すると、それらは反発するよりも引き合う作用が働くようになり、むしろ集束フィラメントが生じやすくなるのである。したがって、コロナ帯電装置6の下方に、特許文献2に記載された空気流分散装置21を連設すると、コロナ帯電装置6による開繊が空気流分散装置21によって相殺されてしまうのである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、コロナ帯電装置6による開繊が、空気流分散装置で相殺されずに、さらに増長するように、空気流分散装置の形状を工夫したことに特徴を有するものである。すなわち、本発明は、多数の紡糸孔を有する紡糸口金と、該紡糸口金から紡糸された合成樹脂製フィラメント群を空気流によって下方に牽引するためのエジェクターであって、該合成樹脂製フィラメント群を導入するための矩形入口と、該合成樹脂製フィラメント群を排出するための矩形出口とを備えた矩形筒体形状のエジェクターと、該エジェクターの該矩形出口に設けられたコロナ帯電装置と、該コロナ帯電装置の下方に連設された空気流分散装置と、及び該矩形出口から該コロナ帯電装置及び該空気流分散装置を経て、該空気流と共に排出された該合成樹脂製フィラメント群を捕集すると共に、捕集されたスパンボンドウェブを上流側から下流側に搬送するための捕集コンベアとを備えたスパンボンドウェブの製造装置において、前記空気流分散装置は、前記矩形出口から排出される該合成樹脂製フィラメント群の前記上流側のみ又は前記下流側のみに設けられ、前記空気流の方向をコアンダ効果により前記上流側のみ又は前記下流側のみに変更させるための傾斜面を備えており、該傾斜面には第一傾斜ガイドと第二傾斜ガイドとが交互に複数形成されており、該第二傾斜ガイドの方が該第一傾斜ガイドよりも、傾斜が大きいことを特徴とするスパンボンドウェブの製造装置に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明で用いる空気流分散装置は、矩形出口から排出される空気流をコアンダ効果により、上流側のみに変更させる傾斜面を備えており(下流側のみに変更させる傾斜面を備えているものは後述する。)、しかも、この傾斜面には傾斜の程度が異なる第一傾斜ガイドと第二傾斜ガイドが設けられている。したがって、コロナ帯電装置により帯電した合成樹脂製フィラメント群の進行方向は、傾斜面によって空気流と共に上流側のみに変更される。しかも、傾斜面には第一傾斜ガイドと第二傾斜ガイドが設けられているから、より上流側へ二分割して開繊される。しかも、合成樹脂製フィラメント群は、空気流分散装置によるコアンダ効果によって、上流側のみに変更されるから、合成樹脂製フィラメント群が実質的に空気流分散装置と接触することがない。したがって、合成樹脂製フィラメント群はコロナ帯電装置で与えられた静電荷が放電することなく、上流側に開繊された合成樹脂製フィラメント群が、より上流側に二分割して開繊され、開繊性が相殺されることなく増長される。よって、本発明によれば、繊維密度がより均一でより地合の良好なスパンボンドウェブが得られるという効果を奏する。
【0012】
また、下流側のみに変更させる傾斜面を備えたものを用いれば、上記と同様の作用で、合成樹脂製フィラメント群は、コロナ帯電装置によって静電荷を与えられ、上流側及び下流側に開繊されると共に、より下流側に二分割して開繊されるため、開繊性が相殺されることなく増長され、繊維密度がより均一でより地合の良好なスパンボンドウェブが得られるという効果を奏する。なお、下流側のみに変更させる傾斜面を備えたものよりも、上流側のみに変更させる傾斜面を備えたものを用いる方が、本発明の効果はより顕著である。この理由は、捕集コンベアが下流側に移動しているため、合成樹脂製フィラメント群が下流側に引っ張られ拘束される傾向があり、下流側での開繊性は上流側での開繊性よりも不十分になる傾向があるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るスパンボンドウェブの製造装置は、多数の紡糸孔を有する紡糸口金1を備えている。紡糸口金1には溶融した合成樹脂が供給され、各紡糸孔から溶融紡糸されることにより、合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・が吐出される。吐出された合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・は、紡糸口金1の下方に設けられた矩形筒体のエジェクター3に導入される。すなわち、合成樹脂フィラメント群2,2,2・・・は、エジェクター3の矩形入口に導入された後、エジェクター3内で下方に向けて噴出している空気流によって下方へ牽引され、その後、エジェクター3の矩形出口から排出されるのである。
【0014】
矩形出口には、コロナ帯電装置6が設けられている。コロナ帯電装置6は周知のものが用いられる。コロナ帯電装置6によって、合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・に静電荷が付与され、各合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・間に反発力が働き、上流側及び下流側に合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・が開繊される。
【0015】
本発明で特徴的なことは、コロナ帯電装置6の下方に、特定の形状の空気流分散装置11が連設されていることである。本発明で用いる空気流分散装置11は、矩形出口から排出される空気流の方向を上流側のみ又は下流側のみに変更させるための傾斜面12を備えてなり、傾斜面には第一傾斜ガイド13と第二傾斜ガイド14とが交互に複数形成されており、第二傾斜ガイド14の方が第一傾斜ガイド13よりも、傾斜が大きいことを特徴としている。具体的な形状としては、図4〜図7に示した形状や、図8及び図9に示した形状となっており、これがコロナ帯電装置6の下方の上流側のみ又は下流側のみに連設されているのである。なお、空気流分散装置11は、上流側と下流側の両方に連設されることはない。両方に連設されると、両傾斜面間で空気流が乱れて開繊性が不良となる。また、空気流分散装置11(特に傾斜面12)の材質は任意であるが、コロナ帯電装置に連設することから、コロナのアーク放電を生じさせないこと、及び広幅での加工精度が得られることを満足するものであれば、どのような材質であってもよい。
【0016】
図4は、本発明の一例に係る空気流分散装置11を傾斜面12の方向から撮影した写真であり、図5は下方側から撮影した写真である。図6は傾斜面12の一部を模式的に示した模式図であり、図7はこの空気流分散装置11の縦断面図である。この空気流分散装置11の傾斜面12は、湾曲した第一傾斜ガイド13と第二傾斜ガイド14とが交互に幅方向に複数並んでいる。湾曲は下方へ広がる曲面となっており、平面の場合と比べて、コアンダ効果によってより大きく空気流の方向が上流側又は下流側に変更される。湾曲している場合の傾斜は、曲率半径が小さいほど傾斜の程度が大きくなる。図4〜図7に示したものは、第一傾斜ガイド13の曲率半径が300mmで、第二傾斜ガイドの曲率半径が145mmとなっている。
【0017】
図4〜図7に示したものは、第一傾斜ガイド13と第二傾斜ガイド14の幅が、同一となっており、交互に幅方向に複数並んでいる。したがって、第一傾斜ガイド13に沿って流れる空気流と、第二傾斜ガイド14に沿って流れる空気流は、略同一量となり、空気流と共に下方へ搬送されてきた合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・は、上流又は下流側において、略同一量づつに分割され、均一な開繊が可能となる。
【0018】
図8は、本発明の一例に係る空気流分散装置11を下方側から撮影した写真であり、図9はこの縦断面図である。この空気流分散装置11は、第一傾斜ガイド13と第二傾斜ガイド14の間に、第三傾斜ガイド15が設けられている。第三傾斜ガイド15の傾斜は、第一傾斜ガイド13の傾斜よりも大きく、第二傾斜ガイド14よりも小さくなっている。図8及び図9に示したものは、第一傾斜ガイド13の曲率半径が300mmで、第二傾斜ガイド14の曲率半径が110mmで、第三傾斜ガイドの曲率判決が160mmとなっている。
【0019】
図8及び図9に示したものは、第一傾斜ガイド13、第二傾斜ガイド14及び第三傾斜ガイド15の幅が同一となっている。そして、第一傾斜ガイド13/第三傾斜ガイド15/第二傾斜ガイド14/第三傾斜ガイド15の順で、幅方向に複数並んでいる。したがって、第一傾斜ガイド13に沿って流れる空気量をAとしたとき、第二傾斜ガイド14に沿って流れる空気量はAとなり、第三傾斜ガイド15に沿って流れる空気量は2Aとなる。この場合は、空気流と共に下方へ搬送されてきた合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・は、上流側又は下流側において、三分割される。なお、傾斜面には、第三傾斜ガイドに加えてさらに第四傾斜ガイドや第五傾斜ガイド等を設けてもよい。しかし、構造が複雑になるのに比例として、開繊性が良好になるものでもない。
【0020】
空気流分散装置11をコロナ帯電装置6の下方に連設するには、空気流分散装置11に設けられた取付部16を、コロナ帯電装置6の下面にボルト等で固定すればよい。コロナ帯電装置6と空気流分散装置11との間は、密着しているのが好ましい。両者の間に間隙があると、ここから空気が出入りして、エジェクター3の矩形出口から排出される空気流が乱れる恐れがある。
【0021】
以上のようにして空気流分散装置11で開繊された合成樹脂製フィラメント群2,2,2・・・は、捕集コンベア4上に捕集され堆積して、スパンボンドウェブとなる。捕集コンベア4は、図1の矢印方向、すなわち上流側から下流側に移動しており、これにより、スパンボンドウェブ5は下流側に搬送される。
【0022】
スパンボンドウェブ5には、従来公知の処理が施されて、スパンボンド不織布が生産される。従来公知の処理としては、(1)スパンボンドウェブ5にバインダーを付与して、堆積している合成樹脂製フィラメント相互間を結合する処理、(2)スパンボンドウェブ5を一対の加熱エンボスロール間に通して、合成樹脂製フィラメントの一部を溶融又は軟化させて、合成樹脂製フィラメント相互間を融着する処理、(3)スパンボンドウェブ5に高圧水流を付与するか又はニードルパンチを施して、堆積している合成樹脂製フィラメント相互間を絡合する処理等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例に基づいて、更に本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、コロナ帯電装置と空気流分散装置を組み合わせて、エジェクターから空気流と共に排出される合成樹脂製フィラメント群を開繊するに際し、この空気流の方向を上流側のみ又は下流側のみに変更する第一傾斜ガイド及び第二傾斜ガイドを設けた空気流分散装置を用いた点に特徴を有するものとして、解釈されるべきである。
【0024】
実施例1
空気流分散装置として、図4に示したものであって、以下のような形状及び寸法のものを準備した。
第一傾斜ガイドの曲率半径:300mm
第二傾斜ガイドの曲率半径:145mm
第一傾斜ガイドの幅 :15mm
第二傾斜ガイドの幅 :15mm
傾斜面の幅 :650mm
【0025】
この空気流分散装置をコロナ帯電装置の下方であって上流側に連設して、スパンボンドウェブの製造装置を作成し、以下のようにしてスパンボンドウェブを得た。すなわち、3000個の紡糸孔を有する600mm幅の矩形紡糸口金に、溶融したポリプロピレンを供給し、ポリプロピレンフィラメント群を溶融紡糸した。このポリプロピレンフィラメント群を、650mm幅の矩形筒体形状のエジェクターに導入し、空気流によって下方に牽引した。エジェクターの矩形出口には同幅のコロナ帯電装置が設けられており、ポリプロピレンフィラメント群に静電荷を帯電させた。なお、コロナ帯電装置の電源電圧は−30KVとし、放電電流値は0.1mA/cm2であった。その直後、空気流分散装置によって、ポリプロピレンフィラメント群を開繊した。そして、捕集コンベア上にポリプロピレンフィラメント群を捕集し堆積させてスパンボンドウェブを得た。
【0026】
スパンボンドウェブは、捕集コンベアにより下流側に搬送され、その後、一対の加熱されたエンボスロール間に通して、ポリプロピレンフィラメントの一部を軟化させて、ポリプロピレンフィラメント相互間を融着させ、スパンボンド不織布を得た。このスパンボンド不織布の目付は20g/m2であった。また、スパンボンド不織布を構成しているポリプロピレンフィラメントの繊度は約1.8デニールであった。
【0027】
比較例1
コロナ帯電装置に電源を投入しない他は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。
【0028】
比較例2
空気流開繊装置を取り外した他は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。
【0029】
実施例1及び比較例1、2で得られたスパンボンド不織布について、以下の試験を行った。
[1cm幅目付変動率(%)]
得られたスパンボンド不織布の幅は約60cmであるが、両耳を5cmづつカットして、50cm幅の試料を準備した。そして、この試料の全幅を、CD方向(試料の幅方向。捕集コンベアの幅方向と一致するのでCD方向となる。)に1cm刻みにして、MD方向(試料の長手方向。捕集コンベアの移動方向と一致するのでMD方向となる。)に50cm長の短冊状の試料片を50枚準備した。この50枚の試料片の目付を測定し、平均値(X)と、各試料片の目付から平均値を減じた絶対値(R)を算出した。そして、Rの平均値をX(目付の平均値)で除した値に100を乗じて、1cm幅目付変動率(%)を算出した。
【0030】
この結果、実施例1で得られたスパンボンド不織布の1cm幅目付変動率は3%であった。これに対して、比較例1で得られたスパンボンド不織布は15%であり、比較例2で得られたスパンボンド不織布は10%であった。したがって、実施例1で得られたスパンボンド不織布の繊維密度は、比較例1及び2のものに比べて、均一であった。
【0031】
[集束フィラメントの状況]
実施例1、比較例1及び2で得られたスパンボンド不織布に、どの程度の割合で集束フィラメントが存在するか否かを、目視により観察した。この結果、実施例1で得られたスパンボンド不織布には、集束フィラメントは殆ど見当たらなかった。これに対して、比較例1で得られたスパンボンド不織布には、全体に亙って大小の集束フィラメントが見られた。また、比較例2で得られたスパンボンド不織布は、全体に亙って小さな集束フィラメントが見られた。したがって、実施例1で得られたスパンボンド不織布は、比較例1及び2のものに比べて、地合に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来のスパンボンドウェブ製造装置の概略を示した斜視図である。
【図2】従来のスパンボンドウェブ製造装置に用いられている空気流分散装置の概略を示した斜視図である。
【図3】図2に示した空気流分散装置の縦断面図である。
【図4】本発明の一例に係る空気流分散装置を傾斜面の方向から撮影した写真である。
【図5】図4に示した空気流分散装置を下方側から撮影した写真である。
【図6】図4に示した空気流分散装置の傾斜面の一部を模式的に示した模式図である。
【図7】図4に示した空気流分散装置の縦断面図である。
【図8】本発明の他の例に係る空気流分散装置を下方側から撮影した写真である。
【図9】図8に示した空気流分散装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 紡糸口金
2 合成樹脂製フィラメント
3 エジェクター
4 捕集コンベア
5 スパンボンドウェブ
6 コロナ帯電装置
11 空気流分散装置(本発明例)
12 傾斜面
13 第一傾斜ガイド
14 第二傾斜ガイド
15 第三傾斜ガイド
16 コロナ帯電装置への取付部
21 空気流分散装置(従来例)
22 第一ガイド
23 第二ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の紡糸孔を有する紡糸口金と、
該紡糸口金から紡糸された合成樹脂製フィラメント群を空気流によって下方に牽引するためのエジェクターであって、該合成樹脂製フィラメント群を導入するための矩形入口と、該合成樹脂製フィラメント群を排出するための矩形出口とを備えた矩形筒体形状のエジェクターと、
該エジェクターの該矩形出口に設けられたコロナ帯電装置と、
該コロナ帯電装置の下方に連設された空気流分散装置と、及び
該矩形出口から該コロナ帯電装置及び該空気流分散装置を経て、該空気流と共に排出された該合成樹脂製フィラメント群を捕集すると共に、捕集されたスパンボンドウェブを上流側から下流側に搬送するための捕集コンベアと
を備えたスパンボンドウェブの製造装置において、
前記空気流分散装置は、前記矩形出口から排出される該合成樹脂製フィラメント群の前記上流側のみ又は前記下流側のみに設けられ、前記空気流の方向をコアンダ効果により前記上流側のみ又は前記下流側のみに変更させるための傾斜面を備えており、該傾斜面には第一傾斜ガイドと第二傾斜ガイドとが交互に複数形成されており、該第二傾斜ガイドの方が該第一傾斜ガイドよりも、傾斜が大きいことを特徴とするスパンボンドウェブの製造装置。
【請求項2】
第一傾斜ガイド及び第二傾斜ガイドは、湾曲した曲面となっている請求項1記載のスパンボンドウェブの製造装置。
【請求項3】
第一傾斜ガイドと第二傾斜ガイドの幅が同一である請求項1又は2記載のスパンボンドウェブの製造装置。
【請求項4】
第一傾斜ガイドと第二傾斜ガイドの間に、第三傾斜ガイドが形成されており、第三傾斜ガイドの傾斜は、該第一傾斜ガイドよりも大きく該第二傾斜ガイドよりも小さい請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスパンボンドウェブの製造装置。
【請求項5】
第一傾斜ガイド、第二傾斜ガイド及び第三傾斜ガイドの各幅が同一である請求項4記載のスパンボンドウェブの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−161889(P2009−161889A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2727(P2008−2727)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(595038718)株式会社化繊ノズル製作所 (7)
【Fターム(参考)】