説明

スパンボンド不織布

【課題】本発明は、丸断面連続繊維を用いてエンボす加工により扁平化し、ノーバインダーで、表面の平滑性を向上させつつ、繊維の強力も保持して、特定方向の不織布強力が優れたスパンボンド不織布を提案するものである。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートを主成分とした、繊度が0.5dtex〜4dtex、単繊維の断面が略丸断面である連続繊維が開繊された後、熱圧着により接合一体化されてなる不織布において、該不織布を構成する繊維断面の平均扁平度が、2.0以下、見掛密度が500kg/m3〜1200kg/m3、目付当りの縦引張強度が3N/3cm/(g/m2)以上、縦伸度が15%〜50%であることを特徴とするスパンボンド不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の表面平滑性と特定方向に特に強い引張強力などが要求される分野、例えば、電線押さえ巻きテープ、印刷基材、ハウスラップなどの分野において有用なスパンボンド不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、不織布はその性能とコストの優れたバランスより、多くの用途に展開されており、用途毎に要求される性能に対応した設計がなされている。そして、例えば電線押さえ巻きテープなどに特に要求される性能は、引張強力、シース材との剥離を容易にする表面の緻密さ及び表面平滑性、さらに巻き上げ量を増加できるという経済上の理由から薄くて強いという性能も要求されている。
【0003】
従来、ポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布において、表面平滑で薄くて強い不織布を得るには、例えば、特許文献1に記載のごとく、扁平断面糸を用いて加熱圧着接合強度を向上させる方法が知られている。しかしながら、電線押さえ巻きテープに必要とされる強力及び表面平滑性は、前記先行技術の方法だけでは確保できないという問題を有していた。電線押さえ巻きテープに適した不織布を得る方法として、特許文献2及び特許文献3には、扁平断面糸に加えて、接着剤の併用、いわゆる樹脂加工による方法が示されている。このように、従来は、ポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布において、表面平滑で、薄くて強い不織布を得るには、加熱圧着による接合のみでは強力及び平滑性が不足するため、樹脂加工を併用する必要があった。
【0004】
樹脂加工を併用しないノーバインダータイプの、表面が平滑で、薄くて強い不織布を得る方法として、特許文献4及び特許文献5には、還元粘度の高いポリエステルからなる繊度の低い扁平断面糸を用いて部分熱圧着する方法が示されている。しかしながら、この方法では、異型断面による繊維の強力低下を、還元粘度を高くして繊維強力を維持したにもかかわらず、ノーバインダーで、且つ、薄くするために圧縮率を高めて熱圧着しているため、薄く且つ表面の平滑性は向上するが、繊維の損傷が大きくなることでの強力低下が著しくなり、実質的には強力が低下する問題がある。
【特許文献1】特公昭57−24427号公報
【特許文献2】特開昭55−32342号公報
【特許文献3】特開昭57−56564号公報
【特許文献4】特開2001−89963号公報
【特許文献5】特開2001−140157号公報
【0005】
上述の如く、ノーバインダーで、表面の平滑性を向上させ、且つ、繊維の強力も保持して不織布強力も優れたスパンボンド不織布は得られていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、本発明は、ノーバインダーで、表面の平滑性を向上させつつ、繊維の強力も保持して、特定方向の不織布強力が優れたスパンボンド不織布を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、繊維強力の高い丸断面形状の繊維を用い、繊維の損傷をできるだけ抑制することで不織布強力をも向上できることを知見し、遂に本発明を完成するに到った。
即ち本発明は(1)ポリエチレンテレフタレートを主成分とした、繊度が0.5dtex〜4dtex、単繊維の断面が略丸断面である連続繊維が開繊された後、熱圧着により接合一体化されてなる不織布において、該不織布を構成する繊維断面の平均扁平度が、2.0以下、見掛密度が500kg/m3〜1200kg/m3、目付当りの縦引張強度が3N/3cm/(g/m2)以上、縦伸度が15%〜50%であることを特徴とするスパンボンド不織布、(2)構成繊維の固有粘度が0.62以上であることを特徴とする(1)記載のスパンボンド不織布、(3)厚み当りの縦方向の引張強度が、1500N/(3cm)/(mm)であることを特徴とする(1)又は(2)記載のスパンボンド不織布、(4)カレンダー加工より少なくとも片面が平滑化されたことを特徴とする、(1)〜(3)いずれかに記載のスパンボンド不織布、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスパンボンド不織布は、繊維強力を最も効率よく利用できる丸断面繊維を用いて、且つ、圧着による細密充填化はするが、繊維の損傷をできるだけ抑制して繊維強力を保持し、特定方向の強力を向上させるのに、繊維配列を直列化させて構成し、ノーバインダーで、表面の平滑性を必要に応じてエンボス加工により向上させたスパンボンド不織布であるので、表面平滑で、且つ、高強力化が要求される電線用巻きテープ、印刷基材、ハウスラップなどの用途に最適なスパンボンド不織布として提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の不織布は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とした不織布であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは価格と強度のバランスに優れ、また連続繊維が開繊された後、熱圧着により接合一体化されてなる不織布であれば、柔軟性・強度等の物性に優れるからである。
【0010】
本発明においてポリエチレンテレフタレートを主成分とするとは、エチレンテレフタレート単位を90モル%以上含有する組成であり、好ましくは含有率98%以上、より好ましくは含有率99%以上である。
【0011】
本発明の不織布を構成するポリエチレンテレフタレート長繊維は、力学特性を保持するために固有粘度が0.62以上が好ましい。固有粘度が0.58以下では、紡糸時の配向結晶化を生起する引取速度が高くなるので、4000m/分〜5500m/分の引取速度範囲では低収縮化及び力学特性の付与が不充分となるので好ましくない。理由は明確ではないが、配向結晶化が不充分となり、シースコア構造化によるシース部の結晶化によるコア部の拘束力が劣るためではないかと推測される。他方、固有粘度が1.4を越える場合、4000m/分〜5500m/分で配向結晶化が進み過ぎてボイドを発生し、低比重化するため、力学特性の低下を招き好ましくない。本発明のより好ましい固有粘度は0.63〜0.8である。
【0012】
本発明の不織布は、連続繊維が開繊積層された後、バインダー成分を用いないで熱圧着により接合一体化されていることが好ましい。連続繊維とすることにより、後述の通り特定方向への繊維の配列コントロールが可能となり、一方向に特に強い強力を付与することができるからである。また、連続繊維を開繊することにより、不織布の斑が顕著に向上し、高い均質性が得られる。また、熱圧着による一体化により、表面の平滑性と圧縮充填による不織布の形態を保持して、繊維の強力を生かした不織布強力の発現が可能となる。ニードルパンチ等の機械的交絡処理による不織布形態形成では、繊維の損傷が大きくなり、不織布強力の低下をおこすので好ましくない。本発明では、連続繊維を開繊積層し、連続してフラットロールによる熱圧着を完了するか、連続繊維を開繊積層した段階で、形態固定のためエンボス加工を施して巻き取り、次いで、フラットロールによる加工を施して熱圧着を完了することができる。
【0013】
この場合は、エンボス加工の圧着面積率が50%を超える場合は、繊維形態の極端扁平に変形して強度が低下した繊維本数が多くなり、不織布強度の低下を生じる場合があり、圧着面積率が少なすぎると、次の工程への移行時不織布形態の保持が不充分になる場合がある。本発明でのエンボスの圧着面積率は、好ましくは5%〜30%未満、より好ましくは、10%〜25%である。
【0014】
本発明の不織布は単繊維の断面が略丸断面の連続繊維が開繊された後、熱圧着により接合一体化されてなる不織布であることが好ましい。本発明では、繊維の断面形状は、力学特性を最も効率よく利用できる略丸断面繊維を用いるものである。他の異型断面では、繊維形成時に繊維強力が丸断面に較べ低くなるので、力学特性の利用効率が低下する。
【0015】
本発明の不織布は、単繊維繊度は0.5dtex〜5dtexであることが好ましい。繊度が0.4dtex未満では、不織布の張り腰がなくなり加工工程で問題がでる場合があり、繊度が6dtexを超える場合は、熱圧着による一体化が不充分となる場合があるので、本発明での好ましい単繊維の繊度は0.5dtex〜4dtex、より好ましくは1dtex〜3dtexである。
【0016】
本発明の不織布は、不織布を構成する繊維断面の平均扁平度が、2.0以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.5以下である。
本発明では、力学特性を最も効率よく利用できる丸断面繊維を用いて、熱圧着により、不織布表層及び内層の繊維を変形させて一体化させるので、繊維断面も相当する変形を生じる。繊維断面が変形すると、損傷による繊維の強力が低下して、不織布の力学特性も低下する。このため、できるだけ繊維断面の変形を少なくして繊維全体は細密充填となるよう圧着して、繊維強力を保持する必要があり、繊維の変形度を本発明では限定する。すなわち、該不織布を構成する繊維の繊維断面の平均扁平度が、2.0以下とすることが好ましい。圧縮による扁平化によって生じた扁平度が2.0を超える場合は、不織布の強力低下も大きくなり好ましくない。繊維の変形を抑制しつつ一定の嵩密度まで細密充填に近い状態に圧着することで、繊維の強度を保持して、不織布強度も高くできる。
【0017】
不織布の見掛密度は500kg/m3〜1200kg/m3、好ましくは600kg/m3〜1100kg/m3、より好ましくは800kg/m3〜1000kg/m3である。
嵩密度が500kg/m3以下では、不織布構造が繊維の強度を生かしきれず不織布強度が劣り、且つ、嵩高過ぎて押し巻き機能が低下する場合がある。また、1200kg/m3を超えると繊維形態が変形し過ぎてフィルム化し、繊維の強力低下による不織布強度の低下を生ずるので好ましくない。
【0018】
本発明不織布は、電線押え巻きテープ、印刷基材用途等に適合させるため、目付当りの縦引張強度が3N/3cm/(g/m2)以上、縦伸度が15%〜50%が必要である。目付当りの縦方向の引張強度が3N/(3cm)/(g/m2)未満では、必要な巻張力を付与できない場合があり、伸度は、50%を超えるとテープに伸びが発生して工程トラブルになる場合があり、又、伸度が15%未満では、テープが工程中で破断しやすくなる場合がある。本発明の好ましい目付当りの縦方向の引張強度は、4N/(3cm)/(g/m2)以上、伸度は、20%〜40%であり、より好ましくは、目付当りの縦方向の引張強度は、5N/(3cm)/(g/m2)以上、伸度は25%〜40%である。
【0019】
本発明不織布の用途として、縦方向への高張力が特に必要な電線押え巻きテープでは、同時に軽量化も必要なため、横強力を必要最低限にして、できるだけ低目付で縦強力を高くする必要がある。不織布の縦強力を高くするには、繊維の配列を縦方向に多く配列させる必要がある。繊維配列の方法として、直交配列では縦方向に配列させる繊維本数を多くし、横方向に配列させる繊維本数を少なくして、縦横の強力バランスを設定するのが好ましい。ランダム配列では、縦方向に繊維の配列角度を狭くして縦横の強力バランスを設定するのが好ましい。例えば、縦方向の強力を横方向の強力の3倍〜4倍高くする場合は、繊維配列角度は、縦方向に対し20°〜5°になるよう設定するのが好ましい。繊維の配列角度を3°以内にすると横方向の強力が極端に低下するので好ましくない。本発明の好ましい実施形態では、本発明の好ましい目付当りの縦方向の引張強度は、横方向の引張強度の3.0倍〜5.0倍、より好ましくは、3.5倍〜4.0倍である。
【0020】
本発明不織布では、厚み当りの縦方向の引張強度は、特には限定されないが、電線押し巻きテープに供する場合は、引張方向に高強度でも薄くない場合は、押し巻き加工機に適用できない場合があり、他方、薄くても引張方向の強度が低い場合は、押し巻き加工中に切断などの工程トラブルを発生する場合があり好ましくない。本発明における好ましい厚み当りの縦強力は、1500N/(3cm)/(mm)以上、より好ましくは、2000N/(3cm)/(mm)以上である。なお、本発明不織布の厚みは、特には限定されないが、電線押し巻きテープ用途では、所望に応じて、30μm〜100μmの範囲で、前述の不織布特性を満足する範囲で設定するのが望ましい。
【0021】
本発明不織布の160℃での乾熱収縮率は、特には限定されないが、電線押し巻きテープ用途では、乾熱収縮率が5%を超えると、テープのラミネート加工時、及び、又は、電線のシース被覆加工時の加熱により収縮変形してしまう場合がある。本発明不織布では、好ましい乾熱収縮率は3.5%以下、より好ましくは2%以下である。
【0022】
以下に本発明不織布の製法の一例を示す。
固有粘度0.65以上、0.80以下のポリエチレンテレフタレートを真空乾燥して、少なくとも水分率を0.003重量%以下として紡糸に供することが推奨される。水分率が0.03以上の場合は、水分による加水分解を生じて、本発明の望ましい固有粘度0.63以上の繊維を得られない場合があり好ましくない。本発明での好ましい水分率は0.002重量%以下である。乾燥工程を省略して、紡糸段階でベントより水分を除去する場合は、押出機で溶融される直前及び直後に高真空で水分を除去する方法が推奨される。なお、本発明不織布に必要な機能として、難燃性、耐光性、着色性等を所望される場合は、改質剤等を共重合させるか、後練り込みによる添加により改良されたポリエチレンテレフタレートを用いることができる。
【0023】
ついで、常法により、溶融紡糸を行う。紡糸温度は、ポリエチレンテレフタレートの融点より15℃〜50℃高い温度が推奨される。好ましくは25℃〜35℃高い温度が推奨される。固有粘度が低い場合は低い紡糸温度設定、固有粘度が高い場合は高目に設定することが推奨できる。オリフィスから溶融ポリマーを吐出する。オリフィス形状は丸断面が推奨される。吐出量は引取速度に応じて所望の繊度となる最適量とするのが好ましい。本発明では、好ましい繊度が1dtexから3dtexであるから、引取速度が5000m/分であれば、単孔あたりの吐出量は0.5g/分〜1.5g/分とするのが好ましい。吐出するノズルは多数列の小さなノズルを必要個数設置しても良いし、多列の孔を有する一枚のノズルを用いてもよい。吐出された溶融線条は、冷却されつつ細化させてアスピレーター機能をもつエジェクターで引取り、搬送ネット上に振落として、所望の目付量及び所望の繊維配列状態に調整しつつ開繊積層したウエッブを形成する。
【0024】
繊維配列は、例えば、ランダム配列を本発明に適用する場合、オリフィス列数を多くして、搬送ネット速度を高速化することで、縦方向(搬送ネットの進行方向)に繊維配列度を良くする方法が推奨される。このとき、繊維は弾性回復限界内で遅延回復して力学特性が低下する場合がある。このため、本発明では、開繊積層したウエッブの遅延回復を直ちに抑制してウエッブ形態を固定する方法を推奨する。具体的には、引取りネットでの挟み込み固定化する方法や、押さえローラーによる固定化方法が例示できる。工程の通過性を向上させるには予備エンボス加工が望ましい。エンボスの圧着面積率を高くすると本発明の範囲を外れる場合があるので、好ましくは5%〜30%、より好ましくは10%〜25%である。
【0025】
次いで、積層ウエッブは連続して、又は、非連続でエンボス加工を施される。エンボス形状は所望する不織布表面の必要機能に応じて最適なものを選択して処理する。本発明での電線押え巻きテープ用途では、表面の平滑性が必要なためプレーンロールによる熱圧着が推奨される。次いで、所望の幅にスリットして、所望の長さと巻き径に巻き取り本発明のスパンボンド不織布がえられる。得られた本発明のスパンボンド不織布は、そのまま各種基布として提供できる。必要に応じ、次いで、樹脂コーティング加工やラミネート加工して、電線押え巻きテープ、印刷基材やハウスラップ用途等に供される。
なお、本発明における例示は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
次に実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、実施例及び比較例中の特性値は以下の方法で測定した。
【0027】
<単繊維の繊度>
不織布の任意の部位からサンプリングした試験片の切断面が観察できるように、デジタル式測微接眼装置を装着した光学顕微鏡にセットして、繊維軸を横切る方向にほぼ直角に切断されている任意の繊維50本について、繊維断面の長軸と短軸の長さを測定し、各繊維の断面積を求め、それら値を平均して繊維の断面積を算出する。繊維密度を1.38g/cm3として長さ10,000mでの重量を計算して求める。
【0028】
<固有粘度>
不織布の任意の部位から不織布片をサンプリングし、テトラクロルエタン/フェノール(40部/60部重量比)混合溶媒に1g/100ml溶解させ、30℃雰囲気で粘度管にて測定し、0%濃度に換算した固有粘度(dl/g)を求める。
【0029】
<扁平度>
不織布の長手方向に任意の点5箇所を設定し、同点の幅方向に任意の点から500μm毎に連続して10箇所の不織布断面をサンプリングして、SEMにて断面写真を撮影し、各断面写真中の単繊維の断面形状の短軸と長軸の長さを測定し、個々の単繊維の扁平度(扁平度=長軸の長さ/短軸の長さ)を求める。次いで、全測定サンプルの平均扁平度を求める。
【0030】
<厚さ>
JIS−L1906(2000)に準拠して測定。
【0031】
<目付(単位面積当りの質量)>
JIS−L1906(2000)に準拠して測定。
【0032】
<見掛密度>
上記方法にて測定した目付と厚みより1m3当りの見掛密度(kg/m3)を求める。
【0033】
<不織布の引張強度(強さ)と伸度(伸び率)>
JIS−L1906(2000)に準拠して測定。但し、幅は5cmとする。
【0034】
<縦強度/横強度比>
上記方法にて測定した縦強度と横強度の比として求める。
【0035】
<目付当りの縦強度>
上記方法にて測定した縦強度と目付より、目付当りの縦強度を求める。
【0036】
<厚み当りの縦強度>
上記方法にて測定した縦強度と厚みより、厚み(mm)当りの縦強度を求める。
【0037】
<実施例1>
水分率0.002重量%に乾燥した固有粘度0.76のポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)を紡糸温度300℃にて、オリフィス径φ0.2mmのノズルより、単孔吐出量1g/分で紡糸し、ノズル下50mmより25℃の空気を風速0.4m/秒にて冷却しつつ、ノズル下1.6mの点に設置したエジェクターで糸速4500m/分の速度で吸引させつつ引取り、下方1.5mの30m/分の速度で移動している引取ネット面へ繊維束を開繊させつつ振り落とし積層した。ネット面に積層されたウエッブは、次いで、圧着面積率15%のエンボスローラーにて、240℃で線圧2Nfにて仮留のエンボス加工して巻き取って、目付45g/m2、厚み0.24mmのスパンボンド不織布を得た。
次いで、温度240℃にて、フラットロールによる圧着処理を施し得られたスパンボンド不織布の特性を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1記載の不織布は表面の平滑性もよく、巻き付け時の破断がなく、巻き上がりが良好となる電線押し巻きテープ基布に適したスパンボンド不織布である。
【0040】
<実施例2>
水分率0.002重量%に乾燥した固有粘度0.67のポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)を紡糸温度295℃にて、糸速5000m/分の速度で吸引させつつ引取り、積層ウエッブの目付を35g/m2となるように開繊積層して、圧着面積率25%のエンボスローラーを用いた以外、実施例1と同様にして得たスパンボンド不織布の特性を表1に示す。
実施例2記載の不織布は実施例1と同様に、表面の平滑性が良好で、巻き付け時の破断がなく、巻き上がりが良好となる電線押し巻きテープ基布に適したスパンボンド不織布である。
【0041】
<実施例3>
固有粘度0.64のPETを295℃にて単孔吐出量1.5g/分で糸速5500m/分の速度で吸引させつつ引取り、開繊積層ウエッブ目付を55g/m2とし仮エンボスの圧着面積率15%とした以外、実施例2と同様にして得られたスパンボンド不織布の特性を表1に示す。
実施例3記載の不織布は、表面の平滑性が良好で、巻き付け時の破断がなく、巻き上がりが良好となる電線押し巻きテープ基布に適したスパンボンド不織布である。
【0042】
<比較例1>
幅0.05mm、長さ0.5mmの矩形断面オリフィスノズルを用い、紡糸温度290℃にて紡糸し、積層ウエッブの目付を45g/m2となるように開繊積層した以外、実施例2と同様にして得られたスパンボンド不織布の特性を表1に示す。
比較例1記載の不織布は、扁平断面繊維で構成されているので、丸断面繊維で構成された不織布に較べて力学特性がやや劣る、電線押し巻きテープ基布に使用可能だが、問題のあるスパンボンド不織布である。
【0043】
<比較例2>
実施例2の仮留エンボス加工したのみのスパンボンド不織布を電線押し巻きテープ基布に適合させようとした場合の例示である。
比較例2は、表面に毛羽立ちが多く平滑性が劣り、厚みが厚く、力学特性に劣るため、電線押し巻きテープ基布に不適合なスパンボンド不織布である。
【0044】
<比較例3>
圧着面積率50%のエンボスローラーを用いてスパンボンド不織布を得た。次いで温度260℃にて、フラットロールによる圧着処理を施しフラットエンボス処理を施した以外、実施例3と同様にして得られたスパンボンド不織布の特性を表1に示す。
比較例3は、圧縮変形を大きくして繊維の扁平度を大きくしたので、表面平滑性は優れるが、縦方向の力学特性が劣り、電線押し巻きテープ基布に使用可能だが、問題のあるスパンボンド不織布である。
【0045】
<比較例4>
固有粘度0.55のPETを用いた以外、実施例1と同様にして得られたスパンボンド不織布の特性を表1に示す。
比較例1は、表面平滑性は優れるが、固有粘度が低いため、力学特性が劣り、電線押し巻きテープ用基布には、不適当なスパンボンド不織布である。
【0046】
<比較例5>
単孔吐出量1.0g/分で、糸速3000m/分の速度で吸引させつつ引取り、積層ウエッブの目付を50g/m2となるように開繊積層し、全面にカレンダー温度210℃にておこなった以外、実施例3と同様にして得られた不織布の特性を表1に示す。
比較例5記載の不織布は、配向結晶化が不充分なため、平滑性は良いが、剛直性が劣る繊維からなる力学特性の劣る不織布のため、電線押し巻きテープ用基布には不適合なスパンボンド不織布である。
【0047】
<比較例6>
オリフィス孔φ0.1mmを用い、単孔吐出量0.2g/分にて、糸速4500m/分の速度で引き取った以外、実施例2と同様にして得たスパンボンド不織布は、目付35g/m2、厚み0.04mm、単繊維繊度0.45dtex、平均扁平度2.1、縦方向の強度101N/3cm、縦方向の伸度27%であった。このスパンボンド不織布は繊度が0.5dtex未満のため、腰がやや無く、押し巻き工程での作業性に問題のある不織布である。
【0048】
<比較例7>
オリフィス孔φ0.4mmを用い、単孔吐出量4.5g/分にて、糸速5000m/分の速度で引き取った以外、実施例2と同様にして得たスパンボンド不織布は、目付35g/m2、厚み0.10mm、単繊維繊度9dtex、平均扁平度1.4、縦方向の強度104N/3cm、縦方向の伸度38%であった。このスパンボンド不織布は繊度が9dtexと太いため、形態保持性がやや劣り、押し巻き工程での作業性に問題のある不織布である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のスパンボンド不織布は、丸断面繊維をエンボス加工により扁平化と同時に接合一体化せしめるが、不織布内層の繊維は扁平化による損傷をできるだけ抑制する方法で繊維強力を保持させ、特定方向の強力を向上させるのに、繊維配列を直列化させて構成しているので、ノーバインダーで、表面の平滑性を向上させ、且つ、繊維の強力も保持して、特定方向の不織布強力が優れたスパンボンド不織布であるので、より高強力化が要求される電線用巻きテープ基布、印刷基材、ハウスラップなどの用途に安価な基布として提供できる不織布であり、産業界に寄与すること大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートを主成分とした、繊度が0.5dtex〜4dtex、単繊維の断面が略丸断面である連続繊維が開繊された後、熱圧着により接合一体化されてなる不織布において、該不織布を構成する繊維断面の平均扁平度が、2.0以下、見掛密度が500kg/m3〜1200kg/m3、目付当りの縦引張強度が3N/3cm/(g/m2)以上、縦伸度が15%〜50%であることを特徴とするスパンボンド不織布。
【請求項2】
構成繊維の固有粘度が0.62以上であることを特徴とする請求項1記載のスパンボンド不織布
【請求項3】
厚み当りの縦方向の引張強度が、1500N/(3cm)/(mm)であることを特徴とする請求項1又は2記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
カレンダー加工より少なくとも片面が平滑化されたことを特徴とする、請求項1〜請求項3いずれかに記載のスパンボンド不織布。

【公開番号】特開2007−169851(P2007−169851A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371779(P2005−371779)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】