スピーカユニット
【課題】低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する振動板をデジタル音声信号で直接駆動するスピーカユニットを実現すること。
【解決手段】炭素質音響振動板25を備えたスピーカ本体14と、デジタル音源10から供給される多値ビットのデジタル音声信号を所要ビットのデジタル信号に変換するデルタシグマ変調器11及び温度計コード変換部12と、デジタル信号のビット数に対応して複数設けられ前記炭素質音響振動板25をそれぞれ振動させる複数のボイスコイル24と、デジタル信号に基づいて各ボイスコイル24を個別に駆動するドライバ回路13とを具備したデジタルスピーカユニットである。
【解決手段】炭素質音響振動板25を備えたスピーカ本体14と、デジタル音源10から供給される多値ビットのデジタル音声信号を所要ビットのデジタル信号に変換するデルタシグマ変調器11及び温度計コード変換部12と、デジタル信号のビット数に対応して複数設けられ前記炭素質音響振動板25をそれぞれ振動させる複数のボイスコイル24と、デジタル信号に基づいて各ボイスコイル24を個別に駆動するドライバ回路13とを具備したデジタルスピーカユニットである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声再生用のスピーカユニットに関し、特にデジタルの音声信号により直接駆動されるスピーカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルの音声信号を、アナログ信号に変換せずに、直接スピーカに供給して再生を行うデジタルスピーカが開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のデジタルスピーカは、ボイスコイルボビンに巻回された複数のボイスコイルのそれぞれに、デジタル信号の各ビットに対応する駆動力が発生するように重み付けし、各ボイスコイルに印加する一定電圧の極性をデジタル信号の各2ビットの2値に応じて切り替えることにより、ボイスコイルに流れる電流の方向が2値に応じて設定されるようにしたものである。この構成により、デジタル信号の量子化に対応した比率で駆動力を発生させることができる。
【0003】
また、デジタル信号から高い品質のアナログ信号を生成するデジタルアナログ変換装置をデジタルスピーカの駆動装置に適用し、再生音声品質の改善、回路規模の縮小を実現したスピーカユニットが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のスピーカユニットは、デルタシグマ変調器のnビット出力をフォーマッターにより温度計コードに変換し、後置フィルタでミスマッチシェーピング処理を行い、その出力をバッファ回路に入力し、バッファ回路から出力されるデジタル信号でコイルを制御して磁場を加算することが記載されている(段落0063、0078参照)。
【0004】
一方、各種音響機器や映像機器、携帯電話等のモバイル機器等に使用されているスピーカの振動板には、広範囲な周波数帯域、特に高音域において明瞭な音を忠実に再生できる性質が要求される。そのため振動板の材質には、振動板に充分な剛性を付与すべく弾性率が高いことと、振動板を軽量化すべく密度が低いこと、という一見相反する性質が求められる。特に、近年注目されているデジタルスピーカ用の振動板には、振動応答性への要請から、これらの性質が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−326291号公報
【特許文献2】国際公開第2007/135928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する振動板をデジタル音声信号で直接駆動して、良好な音響特性を実現するスピーカユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデジタルスピーカユニットは、炭素質音響振動板を備えたスピーカ本体と、デジタル音源から供給される多値ビットのデジタル音声信号を所要ビットのデジタル信号に変換する変換回路と、前記変換回路から出力されるデジタル信号のビット数に対応して複数設けられ前記炭素質音響振動板をそれぞれ振動させる複数のボイスコイルと、前記変換回路から出力されるデジタル信号に基づいて前記各ボイスコイルを個別に駆動する駆動回路とを具備したことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、炭素質音響振動板を備えたスピーカ本体をデジタル信号で直接駆動するので、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する炭素質音響振動板の特性を利用して良好な音響特性を実現できる。
【0009】
また本発明は、上記デジタルスピーカユニットにおいて、前記変換回路は、前記デジタル音源から供給される多値ビットのデジタル音声信号をデルタシグマ変調するデルタシグマ変調器を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成により、デルタシグマ変調器を備えることにより、デジタル音源から供給される多値ビットのデジタル音声信号を所要ビットのデジタル信号に変換する過程で生じる量子化ノイズをノイズシェーピング効果により排除できると共に、オーバーサンプリング法により量子化誤差を抑圧する構成をとることも可能となる。
【0011】
また本発明は、上記デジタルスピーカユニットにおいて、前記変換回路は、前記デルタシグマ変調器の出力する所定ビットのデジタル信号を、前記ボイスコイルの個数に対応したビット数の温度計コードに変換する温度計コード変換部を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成により、デルタシグマ変調器から出力される2進数がビット毎に重みのある信号であるため、そのままの信号を使用したのではデジタル直接駆動が困難であるが、各ビットに重みの無い温度計コードに変換することで、スピーカ本体を直接デジタル信号で駆動できる。
【0013】
上記デジタルスピーカユニットにおいて、前記炭素質音響振動板は、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体で構成しても良い。
【0014】
また上記デジタルスピーカユニットにおいて、前記炭素質音響振動板は、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体からなる低密度層と、アモルファス炭素を含み、前記低密度層よりも厚みが薄く、前記低密度層よりも密度が高い高密度層とを具備する構成にできる。
【0015】
また上記デジタルスピーカユニットにおいて、前記スピーカ本体は、前記炭素質音響振動板に対して前記ボイスコイルを接触させて振動させる構成としても良い。または、前記炭素質音響振動板を可撓性のフィルム体で保持し、該フィルム体に対して前記ボイスコイルを接触させて振動させる構成としても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する振動板をデジタル音声信号で直接駆動して、良好な音響特性を実現するスピーカユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るデジタルスピーカユニットの概略的な全体図
【図2】上記一実施の形態におけるスピーカ本体の構造を示す模式的な断面図
【図3】上記一実施の形態における複数のボイスコイル配置を示す模式図
【図4】ボイスコイルと炭素質音響振動板とドライバ回路との関係を示す模式図
【図5】ボイスコイルとドライバ回路との関係を示す回路図
【図6】上記一実施の形態におけるデルタシグマ変調器の回路構成図
【図7】低密度層と高密度層を有する炭素質音響振動板の概念図
【図8】経過時間と質量変化率の関係を示す炭素質音響振動板の特性図
【図9】(a)スピーカをデジタル直接駆動するデジタル信号の全体波形図、(b)デジタル信号の一部を拡大した波形図
【図10】(a)可撓性フィルムで炭素質音響振動板を支持するスピーカ本体の断面図、(b)同図(a)の平面図
【図11】炭素質音響振動板のみの場合のデジタルスピーカの周波数特性図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態は、スピーカ本体の振動板として炭素質音響振動板を備え、デジタル音源から供給されるデジタル信号でボイスコイルを直接駆動して炭素質音響振動板を振動させるデジタルスピーカユニットである。
【0019】
図1は本発明の一実施の形態に係るデジタルスピーカユニットの概略的な全体図である。
図1においてデジタル音源10は、CDプレーや、DVDプレーヤ、その他のデジタル形式の音声再生デバイスで構成することができ、デジタルスピーカユニットに対してデジタル音声信号を出力する。
【0020】
本実施の形態のデジタルスピーカユニットは、マルチビットのデルタシグマ変調器11と、デルタシグマ変調器11の出力するデジタル信号を重みの無いNビットの温度計コードに変換する温度計コード変換部12と、温度計コードに基づいて駆動制御するドライバ回路13と、炭素質音響振動板を備えたスピーカ本体14とを主な構成要素としている。
【0021】
図2を参照して、スピーカ本体14の構造を説明する。
スピーカ本体14は、中心部に板状をなすセンターポール21を備える有底筒状のヨーク22と、センターポール21の基端部に配されたマグネット23とを備える。このマグネット23とヨーク22とセンターポール21とによって磁気回路を構成している。また、スピーカ本体14は、磁気回路内に、このセンターポール21の外周に隙間を有して取り囲む不図示のコイルボビンを介して複数のボイスコイル24と、このボイスコイル24の先端部に取り付けられた炭素質音響振動板25とを備える。炭素質音響振動板25の外周縁部はエッジ26を介してフレーム27に振動可能に支持されている。複数のボイスコイル24のコイル数Nは温度計コード変換部12の出力ビット数Nに対応させている。
【0022】
図3〜図5にスピーカ駆動系の概念図を示す。N個のボイスコイル(24−1〜24−N)は独立して配置されており(図3)、一端が炭素質音響振動板25に連結されたコイル保持部28にそれぞれ巻回されている(図4)。なお、コイル保持部28を用いることなく、ボイスコイル(24−1〜24−N)の端部を炭素質音響振動板25の一方の面に直接的に連結させる構造とすることもできる。また、図5に示すように、各ボイスコイル(24−1〜24−N)はドライバ回路(1)〜(N)から独立して制御可能に構成されている。
【0023】
上記スピーカ本体14では、マグネット23とヨーク22とセンターポール21とによって構成された磁気回路中に置かれたボイスコイル24に電流を流し、ボイスコイル24に対して磁力線と直交方向に生じる力を利用して炭素質音響振動板25を振動させて音波を発生させる。ボイスコイル24には、温度計コード変換部12から出力されるデジタル信号の各ビット値に応じて電流が流される。
【0024】
図6はデルタシグマ変調器11の回路構成図である。なお、同図に示す回路構成は一例であり、さらに高次のデルタシグマ変調器を用いることもできる。ここでは、多値入力ビットで表現されたデジタル音声信号を16ビットとし、デルタシグマ変調器11からのnビット出力を4ビットとする。
【0025】
デルタシグマ変調器11は、基本的には積分器31、量子化器32、遅延器33、およびフィードバックループを備えて構成されている。τはフィードバックゲインである。デルタシグマ変調器11に入力された多値ビット(例えば16ビット)は積分器31を通り量子化器32でnビット(例えば9値=4ビット)に変換される。量子化の際に発生する量子化誤差は遅延器33を通るフィードバックループで入力端へ戻され差分をとることで、量子化誤差だけが積分される。入力をX、出力をY、量子化誤差をQとすると、関係式はY=X+(1−Z−1)Qで表わされる。量子化誤差Qに乗算されている伝達関数(1−Z−1)は周波数特性を有しており、直流付近で小さくなるので、この特性が後述するノイズシェーピング効果となる。
【0026】
デルタシグマ変調器11では、量子化器32によって多値ビットのデジタル音声信号を出力ビット数nに対応した数に量子化している。量子化器32によって生じる量子化誤差はオーバーサンプリング手法を適用することで解消できる。オーバーサンプリングとは、信号帯域よりも十分に高い周波数でサンプリングを行う手法の一つのことである。また、デルタシグマ変調の場合、ノイズシェーピング効果により原信号精度を改善できる。すなわち、量子化器を使って量子化を行うと、全周波数に均等に量子化ノイズが分布するが、デルタシグマ変調によって、不要なノイズ成分は、オーバーサンプリングした高い周波数領域にシフトすることで、原信号付近のノイズが押さえられ、原信号の精度を改善できる効果がある。
【0027】
温度計コード変換部12は、デルタシグマ変調器11のnビット出力を、ボイスコイル数に対応したNビットの温度計コードに変換する。たとえば、8ビットの温度計コードに変換する場合であれば、デルタシグマ変調器出力(0010)、(0101)、(1000)を、それぞれ温度計コード(00000011)、(00011111)、(11111111)へ変換する。デルタシグマ変調器11から出力される2進数がビット毎に重みのある信号であるため、そのままの信号を使用したのではデジタル直接駆動が困難であるが、各ビットに重みの無い温度計コードに変換することで、スピーカ本体14を直接デジタル信号で駆動できる。
【0028】
ドライバ回路13は、温度計コード変換部12から出力される温度計コードに基づいて個々のボイスコイル24−1〜24−Nを独立に駆動する。具体的には、各ボイスコイル24−1〜24−Nと温度計コードの各ビット値とが1対1で対応しており、温度計コード変換部12から温度計コードのビット毎に、図9(a)(b)に示すような1ビット信号(ON/OFF)が出力される。温度計コード「1」のボイスコイル24には電流を流し、温度計コード「0」のボイスコイル24には電流が流れないように駆動する。ボイスコイル24に流れる電流に比例して当該ボイスコイル24自身が動き、そのボイスコイル24に結合した炭素質音響振動板25が振動して、音声が生成される。
【0029】
次に、本実施の形態で用いられる炭素質音響振動板25の構造及び製造方法について詳しく説明する。
本発明のデジタルスピーカユニットでは、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体を有する振動板を炭素質音響振動板25として用いることができる。この炭素質音響振動板25は、前記多孔体の板を低密度層として具備し、アモルファス炭素を含み、前記低密度層よりも厚みが薄く、前記低密度層よりも密度が高い高密度層をさらに具備することが好適である。
【0030】
ここで、層の数は、高密度層と低密度層の2層構造、低密度層の両面を高密度層で挾む3層構造、逆に、高密度層の両面を低密度層で挾む3層構造、さらに高密度層だけの1層構造等、様々な構成が可能である。
【0031】
前記多孔体の気孔の形状が球状であり、その数平均気孔径が5μ以上150μm以下であることが望ましい。前記炭素粉末は数平均径が0.2μm以下であり、平均長さが20μm以下であるカーボンナノ繊維を含むことが望ましい。前記高密度層は、前記アモルファス炭素中に均一に分散した黒鉛を含む場合がある。この炭素質音響振動板は、乾燥後、温度25℃、湿度60%の環境に250時間放置したときの質量の増加が5%以下であることが望ましい。
【0032】
また、炭素含有樹脂に炭素粉末を均一に混合し、混合物をフィルム状に成形し加熱して炭素前駆体とし、炭素前駆体を不活性雰囲気中で炭素化する方法を用いて炭素質音響振動板の製造をすることができる。かかる炭素質音響振動板の製造方法において、前記炭素前駆体化の温度においては固体または液体であり、前記炭素化の温度において消失して気孔を残す穴開け材の粒子を前記混合物に予め混合することによって、前記炭素化後においてアモルファス炭素と炭素粉末とを含む多孔体とする。
【0033】
前記炭素化の前において、前記炭素前駆体の板の少なくとも一方の面に炭素含有樹脂の層を形成することによって、前記炭素化後において、前記多孔体からなる低密度層と低密度層よりも密度が高い高密度層を含む炭素質音響振動板とすることをさらに含むことが好適である。なお、高密度層の両面を低密度層で挟む構造は、例えば、穴開け材を含まない炭素前駆体の両面に穴開け材を含む炭素前駆体の層を樹脂で接着して一体化して炭素化することにより得られる。
【0034】
前記穴開け材の粒子は球状であることが望ましい。前記炭素粉末はカーボンナノ繊維を含むことが望ましい。前記炭素含有樹脂の層は、その中に均一に分散した黒鉛を含む場合がある。前記炭素化は、1200℃以上の温度で行なわれることが望ましい。
【0035】
以上のように、炭素含有樹脂と炭素粉末との混合物に、炭素前駆体化するときの温度においては固体または液体であり、炭素化の温度において消失して気孔を残す穴開け材、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)の粒子を混合することにより、炭素化の過程において、この穴開け材はその立体的形状に応じた立体的形状の気孔を残して消失する。したがって、穴開け材の配合比を制御することで気孔率を容易に制御することができ、穴開け材の粒子の立体的形状およびサイズを選択することで気孔の立体的形状およびサイズを容易に制御することができ、気孔率40%以上の多孔体を実現することができる。
【0036】
なお、気孔率とは気孔を含む多孔体全体の体積に対する気孔の体積の百分率であり、炭素の密度を1.5g/cm3として、多孔体全体の体積および質量から計算される気孔率と定義する。
【0037】
前記多孔体からなる低密度層と高密度層との複層構造とすれば、必要な剛性を維持しつつ気孔率を60%以上とすることができ、振動板全体の密度を0.5g/cm3以下とすることができる。
高密度層は総厚の1〜30%程度で効果を発現し、ヤング率100GPa程度の剛性で高音域再生の役割を担う。
【0038】
低密度層のヤング率は2〜3GPa程度であり振動板全体を軽量にして全体の音質を維持し、振動応答性を良くする。
【0039】
これらを一体化して焼成して炭素化し、複数層の炭素質材を形成するので、特性の制御、特に高音域までの可聴音域の音を出力することができる多層平面スピーカー振動板が可能となる。
【0040】
ドーム形状にして剛性を付与するのではなく、緻密で高剛性の高密度層とコアとなる軽量の低密度層のハリ強度とのバランスで再生限界周波数の高い平面振動板が得られる。気孔率設計によっても再生音域が変動するが、気孔径は大きく影響しない。ハンドリング性が良好となり、耐衝撃性も向上する。また、多孔体の低密度層の片面あるいは両面を高密度層で覆うことでユニットへの組み込みの際の接着剤の吸い込みを防止することができる。
【0041】
音響振動板にさらに要請される特性として、空気中の水分を吸って重くなって音響特性が変わらないように、吸湿性が低いことが挙げられる。炭素化の温度を1200℃以上とすることで、乾燥後、温度25℃、湿度60%の環境に250時間放置したときの質量の増加が5%以下であるものが得られる。
【0042】
以上の説明では、炭素質音響振動板をエッジを介してフレームで保持する構造について例示したが、可撓性フィルムで炭素質音響振動板を支持する構造とすることも可能である。
【0043】
図10(a)は可撓性フィルムで炭素質音響振動板を支持するスピーカ本体の断面図、同図(b)はその平面図である。図10(a)に示すように、ヨーク22、マグネット23、センターポール21、ボイスコイル24及びフレーム27については、図2に示すスピーカ本体14と同様の構造を有している。炭素質音響振動板41は可撓性フィルム42の内側面に固定されている。可撓性フィルム42は中央部がドーム状に膨出した形状をなしており、板状をなすフィルムベース43の上面に固定されている。フィルムベース43の下面外周縁部にボイスコイル24の端部が当接して振動を伝達するように構成されている。なお、可撓性フィルム42には強度を確保するための凹凸加工が加えられている。
【0044】
以上のように構成されたスピーカ本体に対して、図1に示すようなデジタル駆動系を接続してデジタルスピーカユニットを構成する。デジタル音源から供給されるデジタル音声信号によるスピーカ本体の駆動方法は、前述した通りである。
【0045】
このように、炭素質音響振動板41を所要の剛性と可撓性のある可撓性フィルム42で保持することにより、炭素質音響振動板をフレームで保持する構造に比べて、高い音圧を実現できる。本発明者による検証実験では、フィルムに炭素質振動板を組み合わせることで、ピーク音圧として90dBsplを実現できた。したがって、高い音圧を必要とする用途では、図10に示すように炭素質音響振動板41を可撓性フィルム42で保持する構成が望ましい。
【実施例】
【0046】
(実施例1)低密度層の両面を高密度層で覆う3層の実施例
アモルファス炭素源としての塩化ビニル樹脂35質量%と平均粒径0.1μmで長さ5μmのカーボンナノ繊維1.4質量%、気孔形成のための穴開け材としてのPMMAを複合した組成物に対して可塑剤としてジアリルフタレートモノマーを添加して、ヘンシェルミキサーを用いて分散させた後、加圧ニーダーを用いて十分に混練を繰り返して組成物を得、ペレタイザーによってペレット化し成形用組成物を得た。この成型用組成物のペレットを押出成形で厚さ400μmのシート状の成型物とし、さらに両面にフラン樹脂をコーティングして硬化させ、多層シートとした。この多層シートを200℃のエアオーブン中で5時間処理しプリカーサー(炭素前駆体)とした。その後、窒素ガス中で20℃/hの昇温速度で昇温し、1000℃で3時間保持した。自然冷却したのちに、真空中1400℃で3時間保持した後、自然冷却して焼成を完了した。これにより、図7に概念的に示すように、アモルファス炭素110中にカーボンナノ繊維の粉末112が均一に分散し、PMMAの粒子が消失した後に残った球状の気孔114を有する多孔体の低密度層116とその両面を覆うアモルファス炭素からなる高密度層118とを有する音響振動板が得られた。
【0047】
このようにして得られた音響振動板の低密度層116の気孔率は70%、数平均気孔径は60μmであった。振動板全体では、厚み約350μm、曲げ強度25MPa、ヤング率8GPa、音速4200m/sec、密度0.45g/cm3、吸湿性1質量%以下と優れた物性を有するものであった。
【0048】
なお、音速は密度とヤング率の実測値から計算により求めた(以下同様)。吸湿性は、100℃で30分間乾燥した後、温度25℃、湿度60%の環境に放置した時の質量増加率(%)である。図8に経過時間と質量変化率の関係を示す。比較例1として、最後の焼成(炭素化)の温度を1000℃としたときの結果も示す。図8からわかるように、炭素化の温度を1200℃以上とすることで、250時間後の質量の増加が5%以下である吸湿性の低い振動板が得られる。
【0049】
(実施例2)高密度層にフィラー(黒鉛)を入れた実施例
アモルファス炭素源としての、塩化ビニル樹脂35質量%と平均粒径0.1μmで長さ5μmのカーボンナノ繊維1.4質量%、気孔形成のための穴開け材としてPMMAを複合した組成物に対して可塑剤としてジアリルフタレートモノマーを添加して、ヘンシェルミキサーを用いて分散させた後、加圧ニーダーを用いて十分に混練を繰り返して組成物を得、ペレタイザーによってペレット化し成形用組成物を得た。この成型用組成物のペレットを押出成形で厚さ400μmのシート状の成型物とし、さらにフラン樹脂に平均粒径4μm程度の黒鉛(日本黒鉛製SP270)5質量%を分散させ、硬化剤を入れた液を両面にコーティングして硬化させ、多層シートとした。この多層シートを200℃のエアオーブン中で5時間処理しプリカーサー(炭素前駆体)とした。その後、窒素ガス中で20℃/hの昇温速度で昇温し、1000℃で3時間保持した。自然冷却したのちに、真空中で1500℃で3時間保持した後、自然冷却して焼成を完了し、複合炭素振動板を得た。
【0050】
このようにして得られた音響振動板の低密度層の気孔率は70%、数平均気孔径は60μmであった。振動板全体は、厚み約350μm、曲げ強度23MPa、ヤング率5GPa、音速3333m/sec、密度0.45g/cm3、と優れた物性を有するものであった。
【0051】
(実施例3)多孔体のみの実施例
気孔率50%単層成形体アモルファス炭素源としての、塩化ビニル樹脂54質量%と平均粒径0.1μmで長さ5μmのカーボンナノ繊維1.4質量%、気孔形成のための穴開け材としてPMMAを複合した組成物に対して可塑剤としてジアリルフタレートモノマーを添加して、ヘンシェルミキサーを用いて分散させた後、加圧ニーダーを用いて十分に混練を繰り返して組成物を得、ペレタイザーによってペレット化し成形用組成物を得た。このペレットを用いて厚み400μmのフィルム状の押し出し成形を行った。このフィルムを200℃に過熱したエアオーブン中で5時間処理しプリカーサー(炭素前駆体)とした。その後、窒素ガス中で20℃/時以下の昇温速度で昇温し、1000℃で3時間保持した。自然冷却したのちに、真空雰囲気中で1500℃にて3時間保持した後、自然冷却して焼成を完了し、複合炭素振動板を得た。
【0052】
このようにして得られた多孔質の音響振動板は、気孔率が50%、気孔径60μm、厚み約350μm、曲げ強度29MPa、ヤング率7GPa、音速3055m/sec、密度0.75g/cm3、と優れた物性を有するものであった。
【0053】
次に、上述したデジタルスピーカユニットに上記実施例1で作成した振動板を使用した場合のスピーカの周波数特性について説明する。デジタルスピーカユニットに備えるボイスコイル24は6個のボイスコイルから構成し、デルタシグマ変調器11では16ビットのデジタル音声信号を4ビットに変換し、温度計コード変換部12から出力される温度計コードは6ビット構成とした。
【0054】
図11は実施例1で得られた振動板を用いた場合の周波数特性を示している。同図に示すように、炭素質振動板のみの場合、700Hz付近から可聴周波数域の上限であるといわれる20kHzまで非常にフラットな特性が実現できた。図11に示す周波数特性であれば、極めて品質の良好な音質を再現できる。また、ピーク音圧として85dBspl以上を実現できている。
【0055】
以上説明したように、本発明の一実施の形態に係るデジタルスピーカユニットによれば、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する炭素質音響振動板25をデジタル音声信号で直接駆動して、良好な音響特性を実現することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 デジタル音源
11 デルタシグマ変調器
12 温度計コード変換部
13 ドライバ回路
14 スピーカ本体
21 センターピース
22 ヨーク
23 マグネット
24 ボイスコイル
25 炭素質音響振動板
26 エッジ
27 フレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声再生用のスピーカユニットに関し、特にデジタルの音声信号により直接駆動されるスピーカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルの音声信号を、アナログ信号に変換せずに、直接スピーカに供給して再生を行うデジタルスピーカが開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のデジタルスピーカは、ボイスコイルボビンに巻回された複数のボイスコイルのそれぞれに、デジタル信号の各ビットに対応する駆動力が発生するように重み付けし、各ボイスコイルに印加する一定電圧の極性をデジタル信号の各2ビットの2値に応じて切り替えることにより、ボイスコイルに流れる電流の方向が2値に応じて設定されるようにしたものである。この構成により、デジタル信号の量子化に対応した比率で駆動力を発生させることができる。
【0003】
また、デジタル信号から高い品質のアナログ信号を生成するデジタルアナログ変換装置をデジタルスピーカの駆動装置に適用し、再生音声品質の改善、回路規模の縮小を実現したスピーカユニットが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のスピーカユニットは、デルタシグマ変調器のnビット出力をフォーマッターにより温度計コードに変換し、後置フィルタでミスマッチシェーピング処理を行い、その出力をバッファ回路に入力し、バッファ回路から出力されるデジタル信号でコイルを制御して磁場を加算することが記載されている(段落0063、0078参照)。
【0004】
一方、各種音響機器や映像機器、携帯電話等のモバイル機器等に使用されているスピーカの振動板には、広範囲な周波数帯域、特に高音域において明瞭な音を忠実に再生できる性質が要求される。そのため振動板の材質には、振動板に充分な剛性を付与すべく弾性率が高いことと、振動板を軽量化すべく密度が低いこと、という一見相反する性質が求められる。特に、近年注目されているデジタルスピーカ用の振動板には、振動応答性への要請から、これらの性質が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−326291号公報
【特許文献2】国際公開第2007/135928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する振動板をデジタル音声信号で直接駆動して、良好な音響特性を実現するスピーカユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデジタルスピーカユニットは、炭素質音響振動板を備えたスピーカ本体と、デジタル音源から供給される多値ビットのデジタル音声信号を所要ビットのデジタル信号に変換する変換回路と、前記変換回路から出力されるデジタル信号のビット数に対応して複数設けられ前記炭素質音響振動板をそれぞれ振動させる複数のボイスコイルと、前記変換回路から出力されるデジタル信号に基づいて前記各ボイスコイルを個別に駆動する駆動回路とを具備したことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、炭素質音響振動板を備えたスピーカ本体をデジタル信号で直接駆動するので、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する炭素質音響振動板の特性を利用して良好な音響特性を実現できる。
【0009】
また本発明は、上記デジタルスピーカユニットにおいて、前記変換回路は、前記デジタル音源から供給される多値ビットのデジタル音声信号をデルタシグマ変調するデルタシグマ変調器を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成により、デルタシグマ変調器を備えることにより、デジタル音源から供給される多値ビットのデジタル音声信号を所要ビットのデジタル信号に変換する過程で生じる量子化ノイズをノイズシェーピング効果により排除できると共に、オーバーサンプリング法により量子化誤差を抑圧する構成をとることも可能となる。
【0011】
また本発明は、上記デジタルスピーカユニットにおいて、前記変換回路は、前記デルタシグマ変調器の出力する所定ビットのデジタル信号を、前記ボイスコイルの個数に対応したビット数の温度計コードに変換する温度計コード変換部を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成により、デルタシグマ変調器から出力される2進数がビット毎に重みのある信号であるため、そのままの信号を使用したのではデジタル直接駆動が困難であるが、各ビットに重みの無い温度計コードに変換することで、スピーカ本体を直接デジタル信号で駆動できる。
【0013】
上記デジタルスピーカユニットにおいて、前記炭素質音響振動板は、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体で構成しても良い。
【0014】
また上記デジタルスピーカユニットにおいて、前記炭素質音響振動板は、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体からなる低密度層と、アモルファス炭素を含み、前記低密度層よりも厚みが薄く、前記低密度層よりも密度が高い高密度層とを具備する構成にできる。
【0015】
また上記デジタルスピーカユニットにおいて、前記スピーカ本体は、前記炭素質音響振動板に対して前記ボイスコイルを接触させて振動させる構成としても良い。または、前記炭素質音響振動板を可撓性のフィルム体で保持し、該フィルム体に対して前記ボイスコイルを接触させて振動させる構成としても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する振動板をデジタル音声信号で直接駆動して、良好な音響特性を実現するスピーカユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るデジタルスピーカユニットの概略的な全体図
【図2】上記一実施の形態におけるスピーカ本体の構造を示す模式的な断面図
【図3】上記一実施の形態における複数のボイスコイル配置を示す模式図
【図4】ボイスコイルと炭素質音響振動板とドライバ回路との関係を示す模式図
【図5】ボイスコイルとドライバ回路との関係を示す回路図
【図6】上記一実施の形態におけるデルタシグマ変調器の回路構成図
【図7】低密度層と高密度層を有する炭素質音響振動板の概念図
【図8】経過時間と質量変化率の関係を示す炭素質音響振動板の特性図
【図9】(a)スピーカをデジタル直接駆動するデジタル信号の全体波形図、(b)デジタル信号の一部を拡大した波形図
【図10】(a)可撓性フィルムで炭素質音響振動板を支持するスピーカ本体の断面図、(b)同図(a)の平面図
【図11】炭素質音響振動板のみの場合のデジタルスピーカの周波数特性図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態は、スピーカ本体の振動板として炭素質音響振動板を備え、デジタル音源から供給されるデジタル信号でボイスコイルを直接駆動して炭素質音響振動板を振動させるデジタルスピーカユニットである。
【0019】
図1は本発明の一実施の形態に係るデジタルスピーカユニットの概略的な全体図である。
図1においてデジタル音源10は、CDプレーや、DVDプレーヤ、その他のデジタル形式の音声再生デバイスで構成することができ、デジタルスピーカユニットに対してデジタル音声信号を出力する。
【0020】
本実施の形態のデジタルスピーカユニットは、マルチビットのデルタシグマ変調器11と、デルタシグマ変調器11の出力するデジタル信号を重みの無いNビットの温度計コードに変換する温度計コード変換部12と、温度計コードに基づいて駆動制御するドライバ回路13と、炭素質音響振動板を備えたスピーカ本体14とを主な構成要素としている。
【0021】
図2を参照して、スピーカ本体14の構造を説明する。
スピーカ本体14は、中心部に板状をなすセンターポール21を備える有底筒状のヨーク22と、センターポール21の基端部に配されたマグネット23とを備える。このマグネット23とヨーク22とセンターポール21とによって磁気回路を構成している。また、スピーカ本体14は、磁気回路内に、このセンターポール21の外周に隙間を有して取り囲む不図示のコイルボビンを介して複数のボイスコイル24と、このボイスコイル24の先端部に取り付けられた炭素質音響振動板25とを備える。炭素質音響振動板25の外周縁部はエッジ26を介してフレーム27に振動可能に支持されている。複数のボイスコイル24のコイル数Nは温度計コード変換部12の出力ビット数Nに対応させている。
【0022】
図3〜図5にスピーカ駆動系の概念図を示す。N個のボイスコイル(24−1〜24−N)は独立して配置されており(図3)、一端が炭素質音響振動板25に連結されたコイル保持部28にそれぞれ巻回されている(図4)。なお、コイル保持部28を用いることなく、ボイスコイル(24−1〜24−N)の端部を炭素質音響振動板25の一方の面に直接的に連結させる構造とすることもできる。また、図5に示すように、各ボイスコイル(24−1〜24−N)はドライバ回路(1)〜(N)から独立して制御可能に構成されている。
【0023】
上記スピーカ本体14では、マグネット23とヨーク22とセンターポール21とによって構成された磁気回路中に置かれたボイスコイル24に電流を流し、ボイスコイル24に対して磁力線と直交方向に生じる力を利用して炭素質音響振動板25を振動させて音波を発生させる。ボイスコイル24には、温度計コード変換部12から出力されるデジタル信号の各ビット値に応じて電流が流される。
【0024】
図6はデルタシグマ変調器11の回路構成図である。なお、同図に示す回路構成は一例であり、さらに高次のデルタシグマ変調器を用いることもできる。ここでは、多値入力ビットで表現されたデジタル音声信号を16ビットとし、デルタシグマ変調器11からのnビット出力を4ビットとする。
【0025】
デルタシグマ変調器11は、基本的には積分器31、量子化器32、遅延器33、およびフィードバックループを備えて構成されている。τはフィードバックゲインである。デルタシグマ変調器11に入力された多値ビット(例えば16ビット)は積分器31を通り量子化器32でnビット(例えば9値=4ビット)に変換される。量子化の際に発生する量子化誤差は遅延器33を通るフィードバックループで入力端へ戻され差分をとることで、量子化誤差だけが積分される。入力をX、出力をY、量子化誤差をQとすると、関係式はY=X+(1−Z−1)Qで表わされる。量子化誤差Qに乗算されている伝達関数(1−Z−1)は周波数特性を有しており、直流付近で小さくなるので、この特性が後述するノイズシェーピング効果となる。
【0026】
デルタシグマ変調器11では、量子化器32によって多値ビットのデジタル音声信号を出力ビット数nに対応した数に量子化している。量子化器32によって生じる量子化誤差はオーバーサンプリング手法を適用することで解消できる。オーバーサンプリングとは、信号帯域よりも十分に高い周波数でサンプリングを行う手法の一つのことである。また、デルタシグマ変調の場合、ノイズシェーピング効果により原信号精度を改善できる。すなわち、量子化器を使って量子化を行うと、全周波数に均等に量子化ノイズが分布するが、デルタシグマ変調によって、不要なノイズ成分は、オーバーサンプリングした高い周波数領域にシフトすることで、原信号付近のノイズが押さえられ、原信号の精度を改善できる効果がある。
【0027】
温度計コード変換部12は、デルタシグマ変調器11のnビット出力を、ボイスコイル数に対応したNビットの温度計コードに変換する。たとえば、8ビットの温度計コードに変換する場合であれば、デルタシグマ変調器出力(0010)、(0101)、(1000)を、それぞれ温度計コード(00000011)、(00011111)、(11111111)へ変換する。デルタシグマ変調器11から出力される2進数がビット毎に重みのある信号であるため、そのままの信号を使用したのではデジタル直接駆動が困難であるが、各ビットに重みの無い温度計コードに変換することで、スピーカ本体14を直接デジタル信号で駆動できる。
【0028】
ドライバ回路13は、温度計コード変換部12から出力される温度計コードに基づいて個々のボイスコイル24−1〜24−Nを独立に駆動する。具体的には、各ボイスコイル24−1〜24−Nと温度計コードの各ビット値とが1対1で対応しており、温度計コード変換部12から温度計コードのビット毎に、図9(a)(b)に示すような1ビット信号(ON/OFF)が出力される。温度計コード「1」のボイスコイル24には電流を流し、温度計コード「0」のボイスコイル24には電流が流れないように駆動する。ボイスコイル24に流れる電流に比例して当該ボイスコイル24自身が動き、そのボイスコイル24に結合した炭素質音響振動板25が振動して、音声が生成される。
【0029】
次に、本実施の形態で用いられる炭素質音響振動板25の構造及び製造方法について詳しく説明する。
本発明のデジタルスピーカユニットでは、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体を有する振動板を炭素質音響振動板25として用いることができる。この炭素質音響振動板25は、前記多孔体の板を低密度層として具備し、アモルファス炭素を含み、前記低密度層よりも厚みが薄く、前記低密度層よりも密度が高い高密度層をさらに具備することが好適である。
【0030】
ここで、層の数は、高密度層と低密度層の2層構造、低密度層の両面を高密度層で挾む3層構造、逆に、高密度層の両面を低密度層で挾む3層構造、さらに高密度層だけの1層構造等、様々な構成が可能である。
【0031】
前記多孔体の気孔の形状が球状であり、その数平均気孔径が5μ以上150μm以下であることが望ましい。前記炭素粉末は数平均径が0.2μm以下であり、平均長さが20μm以下であるカーボンナノ繊維を含むことが望ましい。前記高密度層は、前記アモルファス炭素中に均一に分散した黒鉛を含む場合がある。この炭素質音響振動板は、乾燥後、温度25℃、湿度60%の環境に250時間放置したときの質量の増加が5%以下であることが望ましい。
【0032】
また、炭素含有樹脂に炭素粉末を均一に混合し、混合物をフィルム状に成形し加熱して炭素前駆体とし、炭素前駆体を不活性雰囲気中で炭素化する方法を用いて炭素質音響振動板の製造をすることができる。かかる炭素質音響振動板の製造方法において、前記炭素前駆体化の温度においては固体または液体であり、前記炭素化の温度において消失して気孔を残す穴開け材の粒子を前記混合物に予め混合することによって、前記炭素化後においてアモルファス炭素と炭素粉末とを含む多孔体とする。
【0033】
前記炭素化の前において、前記炭素前駆体の板の少なくとも一方の面に炭素含有樹脂の層を形成することによって、前記炭素化後において、前記多孔体からなる低密度層と低密度層よりも密度が高い高密度層を含む炭素質音響振動板とすることをさらに含むことが好適である。なお、高密度層の両面を低密度層で挟む構造は、例えば、穴開け材を含まない炭素前駆体の両面に穴開け材を含む炭素前駆体の層を樹脂で接着して一体化して炭素化することにより得られる。
【0034】
前記穴開け材の粒子は球状であることが望ましい。前記炭素粉末はカーボンナノ繊維を含むことが望ましい。前記炭素含有樹脂の層は、その中に均一に分散した黒鉛を含む場合がある。前記炭素化は、1200℃以上の温度で行なわれることが望ましい。
【0035】
以上のように、炭素含有樹脂と炭素粉末との混合物に、炭素前駆体化するときの温度においては固体または液体であり、炭素化の温度において消失して気孔を残す穴開け材、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)の粒子を混合することにより、炭素化の過程において、この穴開け材はその立体的形状に応じた立体的形状の気孔を残して消失する。したがって、穴開け材の配合比を制御することで気孔率を容易に制御することができ、穴開け材の粒子の立体的形状およびサイズを選択することで気孔の立体的形状およびサイズを容易に制御することができ、気孔率40%以上の多孔体を実現することができる。
【0036】
なお、気孔率とは気孔を含む多孔体全体の体積に対する気孔の体積の百分率であり、炭素の密度を1.5g/cm3として、多孔体全体の体積および質量から計算される気孔率と定義する。
【0037】
前記多孔体からなる低密度層と高密度層との複層構造とすれば、必要な剛性を維持しつつ気孔率を60%以上とすることができ、振動板全体の密度を0.5g/cm3以下とすることができる。
高密度層は総厚の1〜30%程度で効果を発現し、ヤング率100GPa程度の剛性で高音域再生の役割を担う。
【0038】
低密度層のヤング率は2〜3GPa程度であり振動板全体を軽量にして全体の音質を維持し、振動応答性を良くする。
【0039】
これらを一体化して焼成して炭素化し、複数層の炭素質材を形成するので、特性の制御、特に高音域までの可聴音域の音を出力することができる多層平面スピーカー振動板が可能となる。
【0040】
ドーム形状にして剛性を付与するのではなく、緻密で高剛性の高密度層とコアとなる軽量の低密度層のハリ強度とのバランスで再生限界周波数の高い平面振動板が得られる。気孔率設計によっても再生音域が変動するが、気孔径は大きく影響しない。ハンドリング性が良好となり、耐衝撃性も向上する。また、多孔体の低密度層の片面あるいは両面を高密度層で覆うことでユニットへの組み込みの際の接着剤の吸い込みを防止することができる。
【0041】
音響振動板にさらに要請される特性として、空気中の水分を吸って重くなって音響特性が変わらないように、吸湿性が低いことが挙げられる。炭素化の温度を1200℃以上とすることで、乾燥後、温度25℃、湿度60%の環境に250時間放置したときの質量の増加が5%以下であるものが得られる。
【0042】
以上の説明では、炭素質音響振動板をエッジを介してフレームで保持する構造について例示したが、可撓性フィルムで炭素質音響振動板を支持する構造とすることも可能である。
【0043】
図10(a)は可撓性フィルムで炭素質音響振動板を支持するスピーカ本体の断面図、同図(b)はその平面図である。図10(a)に示すように、ヨーク22、マグネット23、センターポール21、ボイスコイル24及びフレーム27については、図2に示すスピーカ本体14と同様の構造を有している。炭素質音響振動板41は可撓性フィルム42の内側面に固定されている。可撓性フィルム42は中央部がドーム状に膨出した形状をなしており、板状をなすフィルムベース43の上面に固定されている。フィルムベース43の下面外周縁部にボイスコイル24の端部が当接して振動を伝達するように構成されている。なお、可撓性フィルム42には強度を確保するための凹凸加工が加えられている。
【0044】
以上のように構成されたスピーカ本体に対して、図1に示すようなデジタル駆動系を接続してデジタルスピーカユニットを構成する。デジタル音源から供給されるデジタル音声信号によるスピーカ本体の駆動方法は、前述した通りである。
【0045】
このように、炭素質音響振動板41を所要の剛性と可撓性のある可撓性フィルム42で保持することにより、炭素質音響振動板をフレームで保持する構造に比べて、高い音圧を実現できる。本発明者による検証実験では、フィルムに炭素質振動板を組み合わせることで、ピーク音圧として90dBsplを実現できた。したがって、高い音圧を必要とする用途では、図10に示すように炭素質音響振動板41を可撓性フィルム42で保持する構成が望ましい。
【実施例】
【0046】
(実施例1)低密度層の両面を高密度層で覆う3層の実施例
アモルファス炭素源としての塩化ビニル樹脂35質量%と平均粒径0.1μmで長さ5μmのカーボンナノ繊維1.4質量%、気孔形成のための穴開け材としてのPMMAを複合した組成物に対して可塑剤としてジアリルフタレートモノマーを添加して、ヘンシェルミキサーを用いて分散させた後、加圧ニーダーを用いて十分に混練を繰り返して組成物を得、ペレタイザーによってペレット化し成形用組成物を得た。この成型用組成物のペレットを押出成形で厚さ400μmのシート状の成型物とし、さらに両面にフラン樹脂をコーティングして硬化させ、多層シートとした。この多層シートを200℃のエアオーブン中で5時間処理しプリカーサー(炭素前駆体)とした。その後、窒素ガス中で20℃/hの昇温速度で昇温し、1000℃で3時間保持した。自然冷却したのちに、真空中1400℃で3時間保持した後、自然冷却して焼成を完了した。これにより、図7に概念的に示すように、アモルファス炭素110中にカーボンナノ繊維の粉末112が均一に分散し、PMMAの粒子が消失した後に残った球状の気孔114を有する多孔体の低密度層116とその両面を覆うアモルファス炭素からなる高密度層118とを有する音響振動板が得られた。
【0047】
このようにして得られた音響振動板の低密度層116の気孔率は70%、数平均気孔径は60μmであった。振動板全体では、厚み約350μm、曲げ強度25MPa、ヤング率8GPa、音速4200m/sec、密度0.45g/cm3、吸湿性1質量%以下と優れた物性を有するものであった。
【0048】
なお、音速は密度とヤング率の実測値から計算により求めた(以下同様)。吸湿性は、100℃で30分間乾燥した後、温度25℃、湿度60%の環境に放置した時の質量増加率(%)である。図8に経過時間と質量変化率の関係を示す。比較例1として、最後の焼成(炭素化)の温度を1000℃としたときの結果も示す。図8からわかるように、炭素化の温度を1200℃以上とすることで、250時間後の質量の増加が5%以下である吸湿性の低い振動板が得られる。
【0049】
(実施例2)高密度層にフィラー(黒鉛)を入れた実施例
アモルファス炭素源としての、塩化ビニル樹脂35質量%と平均粒径0.1μmで長さ5μmのカーボンナノ繊維1.4質量%、気孔形成のための穴開け材としてPMMAを複合した組成物に対して可塑剤としてジアリルフタレートモノマーを添加して、ヘンシェルミキサーを用いて分散させた後、加圧ニーダーを用いて十分に混練を繰り返して組成物を得、ペレタイザーによってペレット化し成形用組成物を得た。この成型用組成物のペレットを押出成形で厚さ400μmのシート状の成型物とし、さらにフラン樹脂に平均粒径4μm程度の黒鉛(日本黒鉛製SP270)5質量%を分散させ、硬化剤を入れた液を両面にコーティングして硬化させ、多層シートとした。この多層シートを200℃のエアオーブン中で5時間処理しプリカーサー(炭素前駆体)とした。その後、窒素ガス中で20℃/hの昇温速度で昇温し、1000℃で3時間保持した。自然冷却したのちに、真空中で1500℃で3時間保持した後、自然冷却して焼成を完了し、複合炭素振動板を得た。
【0050】
このようにして得られた音響振動板の低密度層の気孔率は70%、数平均気孔径は60μmであった。振動板全体は、厚み約350μm、曲げ強度23MPa、ヤング率5GPa、音速3333m/sec、密度0.45g/cm3、と優れた物性を有するものであった。
【0051】
(実施例3)多孔体のみの実施例
気孔率50%単層成形体アモルファス炭素源としての、塩化ビニル樹脂54質量%と平均粒径0.1μmで長さ5μmのカーボンナノ繊維1.4質量%、気孔形成のための穴開け材としてPMMAを複合した組成物に対して可塑剤としてジアリルフタレートモノマーを添加して、ヘンシェルミキサーを用いて分散させた後、加圧ニーダーを用いて十分に混練を繰り返して組成物を得、ペレタイザーによってペレット化し成形用組成物を得た。このペレットを用いて厚み400μmのフィルム状の押し出し成形を行った。このフィルムを200℃に過熱したエアオーブン中で5時間処理しプリカーサー(炭素前駆体)とした。その後、窒素ガス中で20℃/時以下の昇温速度で昇温し、1000℃で3時間保持した。自然冷却したのちに、真空雰囲気中で1500℃にて3時間保持した後、自然冷却して焼成を完了し、複合炭素振動板を得た。
【0052】
このようにして得られた多孔質の音響振動板は、気孔率が50%、気孔径60μm、厚み約350μm、曲げ強度29MPa、ヤング率7GPa、音速3055m/sec、密度0.75g/cm3、と優れた物性を有するものであった。
【0053】
次に、上述したデジタルスピーカユニットに上記実施例1で作成した振動板を使用した場合のスピーカの周波数特性について説明する。デジタルスピーカユニットに備えるボイスコイル24は6個のボイスコイルから構成し、デルタシグマ変調器11では16ビットのデジタル音声信号を4ビットに変換し、温度計コード変換部12から出力される温度計コードは6ビット構成とした。
【0054】
図11は実施例1で得られた振動板を用いた場合の周波数特性を示している。同図に示すように、炭素質振動板のみの場合、700Hz付近から可聴周波数域の上限であるといわれる20kHzまで非常にフラットな特性が実現できた。図11に示す周波数特性であれば、極めて品質の良好な音質を再現できる。また、ピーク音圧として85dBspl以上を実現できている。
【0055】
以上説明したように、本発明の一実施の形態に係るデジタルスピーカユニットによれば、低密度で軽量でありながら充分な剛性を有する炭素質音響振動板25をデジタル音声信号で直接駆動して、良好な音響特性を実現することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 デジタル音源
11 デルタシグマ変調器
12 温度計コード変換部
13 ドライバ回路
14 スピーカ本体
21 センターピース
22 ヨーク
23 マグネット
24 ボイスコイル
25 炭素質音響振動板
26 エッジ
27 フレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質音響振動板を備えたスピーカ本体と、デジタル音源から供給される多値ビットのデジタル音声信号を所要ビットのデジタル信号に変換する変換回路と、前記変換回路から出力されるデジタル信号のビット数に対応して複数設けられ前記炭素質音響振動板をそれぞれ振動させる複数のボイスコイルと、前記変換回路から出力されるデジタル信号に基づいて前記各ボイスコイルを個別に駆動する駆動回路と、を具備したことを特徴とするデジタルスピーカユニット。
【請求項2】
前記変換回路は、前記デジタル音源から供給される多値ビットのデジタル音声信号をデルタシグマ変調するデルタシグマ変調器を備えることを特徴とする請求項1記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項3】
前記変換回路は、前記デルタシグマ変調器の出力する所定ビットのデジタル信号を、前記ボイスコイルの個数に対応したビット数の温度計コードに変換する温度計コード変換部を備えることを特徴とする請求項2記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項4】
前記炭素質音響振動板は、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項5】
前記炭素質音響振動板は、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体からなる低密度層と、アモルファス炭素を含み、前記低密度層よりも厚みが薄く、前記低密度層よりも密度が高い高密度層とを具備することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項6】
前記スピーカ本体は、前記炭素質音響振動板に対して前記ボイスコイルを接触させて振動させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項7】
前記スピーカ本体は、前記炭素質音響振動板を可撓性のフィルム体で保持し、該フィルム体に対して前記ボイスコイルを接触させて振動させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項1】
炭素質音響振動板を備えたスピーカ本体と、デジタル音源から供給される多値ビットのデジタル音声信号を所要ビットのデジタル信号に変換する変換回路と、前記変換回路から出力されるデジタル信号のビット数に対応して複数設けられ前記炭素質音響振動板をそれぞれ振動させる複数のボイスコイルと、前記変換回路から出力されるデジタル信号に基づいて前記各ボイスコイルを個別に駆動する駆動回路と、を具備したことを特徴とするデジタルスピーカユニット。
【請求項2】
前記変換回路は、前記デジタル音源から供給される多値ビットのデジタル音声信号をデルタシグマ変調するデルタシグマ変調器を備えることを特徴とする請求項1記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項3】
前記変換回路は、前記デルタシグマ変調器の出力する所定ビットのデジタル信号を、前記ボイスコイルの個数に対応したビット数の温度計コードに変換する温度計コード変換部を備えることを特徴とする請求項2記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項4】
前記炭素質音響振動板は、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項5】
前記炭素質音響振動板は、アモルファス炭素と該アモルファス炭素中に均一に分散した炭素粉末とを含み、気孔率40%以上の多孔体からなる低密度層と、アモルファス炭素を含み、前記低密度層よりも厚みが薄く、前記低密度層よりも密度が高い高密度層とを具備することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項6】
前記スピーカ本体は、前記炭素質音響振動板に対して前記ボイスコイルを接触させて振動させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のデジタルスピーカユニット。
【請求項7】
前記スピーカ本体は、前記炭素質音響振動板を可撓性のフィルム体で保持し、該フィルム体に対して前記ボイスコイルを接触させて振動させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のデジタルスピーカユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−213062(P2010−213062A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57901(P2009−57901)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]