説明

スピーカ保持具及び電気機器

【課題】 スピーカの筐体への取り付けを簡単に行うことができ、スピーカが発する振動を吸収することができ、スピーカが発した音声が筐体内に漏洩しにくいスピーカ取付構造を有する電気機器、及びスピーカの取り付けに用いるスピーカ保持具を提供する。
【解決手段】 弾性部材によるスピーカ保持具20の正面の周囲に帯状枠部25を突設し、帯状枠部25の突出端に平面25aを形成する。電気機器の筐体には、スピーカ保持具20を摺動させることで着脱でき、スピーカ保持具20の帯状枠部25の平面25aを筐体の内面に当接させた状態でスピーカ保持具20を装着する装着部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、オーディオ装置、プロジェクタ及び電話器等のスピーカを内部に備えて音声を出力することが可能な電気機器に関し、またスピーカを保持し、電気機器の筐体に固定されるスピーカ保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、オーディオ装置、プロジェクタ及び電話器等の電気機器は、音声を出力するスピーカを筐体内に備えている。これらの電気機器におけるスピーカの取り付けには様々な構成が提案されており、例えば特許文献1においては、スピーカの背面に当接するスピーカ当接部及びスピーカ当接部から延びる係合脚部を有するスピーカ固定用ホルダにスピーカを装着し、基板に形成された係合孔とスピーカ固定用ホルダの係合脚部とを係合させることでスピーカを固定する構成が提案されている。この場合、スピーカの固定を簡単に行うことができるという利点がある。
【0003】
特許文献2においては、筒状の胴部の両端の開口部に内側へ向けて突出するフランジ部をそれぞれ一体的に形成したゴム製のホルダにスピーカを装着し、ホルダに形成した脚部を回路基板に形成した係止孔に挿入してホルダを固定するスピーカの取付構造が提案されている。また、スピーカの正面側のフランジ部に先端が先細り状で環状に連続した突条を形成し、突条と機器の筐体の内面とを密着させて、筐体に形成された孔部のみから放音することで、筐体内での音の回り込みを抑制できるようにしてある。
【0004】
特許文献3においては、スピーカに設けられた取付フランジ部が挿着される袋状収容部と、電気機器の筐体に設けられた支持ボスに固定されるブッシュ部とを一体的に有し、エラストマ又はゴム等から成形される振動吸収部材を用いて、振動吸収部材の袋状収容部にスピーカのフランジ部を挿着した状態でブッシュ部を支持ボスに挿入し、ネジにより固定するスピーカの取付機構が提案されている。スピーカが発する振動は振動吸収部材により吸収されるため、振動が電気機器の筐体を介して他の部品に伝わることを抑制できる。
【0005】
特許文献4においては、スピーカの音放出部を除く部分を弾性材が密着して覆う保持部を有するスピーカ固定具が提案されている。保持部の弾性材を変形させることで、スピーカを保持部から着脱することができる。また、スピーカ固定具を電気機器に取り付ける場合には、筐体にテープ、接着剤又はビス等を用いて取り付けるようにしてある。
【特許文献1】特開2002−291080号公報
【特許文献2】特開平8−79348号公報
【特許文献3】特開平10−66179号公報
【特許文献4】特開2003−153127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のスピーカ固定用ホルダにおいては、スピーカ固定用ホルダを基板に直接係合する構成であるため、スピーカが発する振動が基板に伝わり、基板上の電子部品の動作に悪影響を与えるという問題がある。
【0007】
特許文献2に記載のスピーカ取付構造においても同様に、ホルダを基板に固定する構成であるため、スピーカが発する振動が基板に伝わるという問題があり、更に、ホルダに形成された先細り状で環状に連続する突条が筐体の内面に接しているため、スピーカが発する振動が突状から筐体に伝わり、筐体を介して筐体内の電子部品又は機械部品等に伝わるという問題がある。
【0008】
特許文献3に記載のスピーカの取付機構においては、スピーカのフランジ部が挿着された振動吸収部材によりスピーカが発する振動を吸収することができるが、振動吸収部材を筐体にネジ止めする必要があるため、ネジにより部品点数が増加し、ネジ止めを行うため取付工程が煩雑になるという問題がある。また、スピーカの正面と筐体との間に隙間を設けて固定する構成であるため、スピーカから出力された音が筐体内に漏洩し、筐体内で反響する虞があり、これにより音質が悪化するという問題がある。
【0009】
特許文献4に記載のスピーカ固定具においても、スピーカを弾性材が密着して覆う構成であるため、弾性材によりスピーカが発する振動を吸収することができるが、スピーカ固定具を筐体にテープ、接着剤又はネジ等により固定する必要があるため、テープ、接着剤又はネジ等により部品点数が増加し、取付工程が煩雑になるという問題がある。また、スピーカの正面と筐体との間に隙間を設けて固定する構成であるため、スピーカから出力された音が筐体内に漏洩し、筐体内で反響する虞があり、これにより音質が悪化するという問題がある。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、スピーカのフランジ部を覆ってスピーカを保持する保持部に、スピーカの正面となる面の周囲から突出する帯状枠部を形成し、帯状枠部の突出端に平面を形成することにより、電気機器の筐体の内面に帯状枠部の平面を密着させて固定することができるため、スピーカが発する振動が筐体に伝わりにくく、また、スピーカが発した音声が筐体内に漏洩しにくいスピーカ保持具を提供することにある。
【0011】
また本発明の他の目的とするところは、スピーカに設けられたコードを係止する係止部を設けることにより、スピーカとコードとの接続部分が破壊されることを防止できるスピーカ保持具を提供することにある。
【0012】
また本発明の他の目的とするところは、スピーカのコードを係止する係止部を、保持部の外側面に設けることにより、電気機器の筐体に固定する場合に、係止部及び係止部に係止されたコードが固定の妨げとならないスピーカ保持具を提供することにある。
【0013】
また本発明の他の目的とするところは、保持部に形成された開口を跨いで、開口から露出したスピーカの背面に当接して支持するバンド部を設けることにより、より強固にスピーカを保持することができ、より振動が筐体に伝わりにくいスピーカ保持具を提供することにある。
【0014】
また本発明の他の目的とするところは、スピーカ保持具を摺動させて着脱し、スピーカ保持具の帯状枠部の平面を筐体に当接させて装着する装着部を筐体に設けることにより、スピーカ及びスピーカ保持具の筐体への取り付けを簡単に行うことができ、また、スピーカが発する振動が筐体に伝わりにくく、スピーカが発した音声が筐体内に漏洩しにくい電気機器を提供することにある。
【0015】
また本発明の他の目的とするところは、筐体が蓋部及び本体部に分かれている場合に、スピーカ保持具を摺動可能に保持する摺動保持部、及び摺動保持部に保持されたスピーカ保持具の一端側と係合する第1の係合部を本体部に設け、スピーカ保持具の他端側と係合する第2の係合部を蓋部に設けることにより、スピーカ及びスピーカ保持具の筐体への固定を簡単に、且つ確実に行うことができる電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るスピーカ保持具は、スピーカのフランジ部を覆って前記スピーカを保持する保持部を備え、弾性材により成形してあるスピーカ保持具において、前記保持部は、前記スピーカの正面の周縁を覆う部分を有しており、前記スピーカの正面の周囲を囲んで、前記部分に前記スピーカの正面方向へ突設された帯状枠部を備え、該帯状枠部の突出端を平面にしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、弾性材によるスピーカ保持具の正面の周囲に帯状枠部を形成し、帯状枠部の突出端に平面を形成し、スピーカ保持具を電気機器に装着する場合に、電気機器の筐体内面に帯状枠部の平面を密着させて固定する。スピーカが発する振動は保持部の弾性材により吸収され、スピーカ保持具が帯状枠部の密着により強固に固定されているため、振動が保持部から筐体へ伝わらない。また、スピーカの正面の周囲を帯状枠部が囲むため、筐体内にスピーカが発した音声が漏洩しにくい。
【0018】
また、本発明に係るスピーカ保持具は、前記スピーカに接続された電気信号入力用のコードを係止する係止部を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、スピーカのコードはスピーカに半田付けしてあることが多く、コードに力が加えられた場合に、コードが外れる虞があるが、スピーカ保持具にコードを係止する係止部を弾性材で一体的に設けて、コードに加わる力を係止部が吸収し、コードが外れることを防止する。
【0020】
また、本発明に係るスピーカ保持具は、前記保持部が、前記スピーカのフランジ部の側面を覆う部分を有し、前記係止部は、前記部分に設けてあることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、スピーカのコードを係止する係止部をスピーカ保持具の外側面に設けて、スピーカ保持具を筐体に装着する場合に、係止部及び係止部に係止されたスピーカのコードが装着の妨げとならないようにする。
【0022】
また、本発明に係るスピーカ保持具は、前記保持部が、前記スピーカの周囲を囲む環状をなしており、前記保持部の周縁間に跨設され、前記スピーカの背面側を当接支持するバンド部を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、保持部に形成された開口を跨いでバンド部を設け、バンド部が開口から露出するスピーカの背面に当接してスピーカをより強固に保持し、スピーカが発する振動を筐体に伝わりにくくする。
【0024】
また、本発明に係る電気機器は、スピーカと、前述の発明に記載のスピーカ保持具と、前記スピーカ及び前記スピーカ保持具を収容する筐体と、該筐体に設けてあり、前記スピーカ保持具を摺動させて着脱し、前記スピーカ保持具の前記平面を前記筐体の内面に当接させて前記スピーカ保持具を装着する装着部とを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、電気機器の筐体に、スピーカ保持具を摺動させることで着脱でき、スピーカ保持具の帯状枠部の平面を筐体の内面に当接させて装着できる装着部を設ける。これにより、スピーカ保持具を筐体に簡単に装着することができ、スピーカが発する振動が筐体に伝わらないようにすることができ、また、スピーカが発した音声が筐体内に漏洩しにくくなる。
【0026】
また、本発明に係る電気機器は、前記筐体が開閉可能な蓋部及び該蓋部に覆われる本体部を有し、前記装着部は、前記本体部に設けてあり、前記スピーカ保持具を前記本体部の内面に沿って摺動可能に保持する摺動保持部と、前記本体部に設けてあり、前記摺動保持部に保持された前記スピーカ保持具の一端側と係合する第1の係合部と、前記蓋部に設けてあり、前記蓋部を閉じた場合に前記摺動保持部に保持された前記スピーカ保持具の他端側と係合する第2の係合部とを有することを特徴とする。
【0027】
本発明においては、筐体の本体に設けられた摺動保持部にスピーカ保持具を摺動させて装着し、一端側を第1の係合部に係合させて固定し、筐体の蓋部を閉じて、蓋部に設けられた第2の係合部をスピーカ保持具の他端側に係合させて固定する。これにより、スピーカ保持具を簡単にかつ確実に筐体内に固定できる。また、スピーカを筐体に固定する場合に、スピーカ保持具以外に別部材が必要なく、部品点数が少ない。
【発明の効果】
【0028】
本発明による場合は、スピーカのフランジ部を覆ってスピーカを保持する保持部に、スピーカの正面となる面の周囲から突出する帯状枠部を形成し、帯状枠部の突出端に平面を形成することにより、電気機器の筐体の内面に帯状枠部の平面を密着させて固定することができ、スピーカが発する振動が筐体に伝わりにくくできるため、筐体内のその他の電子部品及び機械部品等が振動の影響を受ける虞がなく、また、スピーカが発した音声が筐体内に漏洩しにくくできるため、スピーカから筐体の外に放音される音声の音質を高めることができる。
【0029】
また本発明による場合は、スピーカに設けられたコードを係止する係止部を設けることにより、スピーカのコードに加わる力を係止部が吸収することができるため、スピーカとコードとの接続部分が破壊されることを防止できる。
【0030】
また本発明による場合は、スピーカのコードを係止する係止部を、保持部の外側面に設けることにより、スピーカ保持具を電気機器の筐体に固定する場合に、係止部及び係止部に係止されたコードが固定の妨げとならないため、スピーカ保持具の固定を行いやすくできる。
【0031】
また本発明による場合は、保持部に形成された開口を跨いで、開口から露出したスピーカの背面に当接して支持するバンド部を設けることにより、より強固にスピーカを保持することができ、より振動が筐体に伝わりにくくできるため、筐体内のその他の電子部品及び機械部品等が振動の影響を受ける虞をなくすことができる。
【0032】
また本発明による場合は、スピーカ保持具を摺動させて着脱し、スピーカ保持具の帯状枠部の平面を筐体に当接させて装着する装着部を筐体に設けることにより、スピーカ及びスピーカ保持具の筐体への取り付けを簡単に行うことができるため、組立工程を簡略化することができ、スピーカが発する振動が筐体に伝わりにくくすることができるため、筐体内のその他の電子部品及び機械部品等が振動の影響を受ける虞がなく、また、スピーカが発した音声が筐体内に漏洩しにくくできるため、スピーカから筐体の外に放音される音声の音質を高めることができる。
【0033】
また本発明による場合は、筐体が蓋部及び本体部に分かれている場合に、スピーカ保持具を摺動可能に保持する摺動保持部、及び摺動保持部に保持されたスピーカ保持具の一端側と係合する第1の係合部を本体部に設け、スピーカ保持具の他端側と係合する第2の係合部を蓋部に設けることにより、スピーカ保持具以外の別部材なしでスピーカを筐体に固定できるため、部品点数が少なく、コストを削減できる。また、スピーカ保持具を簡単に筐体内に固定できるため、組立工程を簡略化でき、組立コストを削減できる。また、スピーカ保持具を強固に筐体内面に固定できるため、スピーカが発する振動が筐体に伝わりにくくすることができ、筐体内のその他の電子部品及び機械部品等が振動の影響を受ける虞をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。なお、本実施の形態においては、電気機器としてプロジェクタを例に説明を行う。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係るプロジェクタの構成を示す分解斜視図である。図において1は、プロジェクタの筐体であり、筐体1は扁平な直方体形状をなし、筐体1の底面、左右側面及び後側面を有する本体部1aと、筐体1の上面及び前側面を有する蓋部1bとに分かれている。筐体1内には、画像投射ユニット2、回路基板3、複数の空冷ファン4、4…及びスピーカ10等が収容してあり、筐体1の前側面からは投射レンズを有する鏡筒5が突出するようにしてある。
【0035】
画像投射ユニット2は、原画像を表示する画像表示パネル、画像表示パネルの一面に光を照射する投光ランプ及び画像表示パネルの他面から透過光を外部に投射する投射レンズ等を備えており、投射レンズからスクリーンへ原画像を拡大表示する公知の構成を有している。図中の画像表示ユニット2は、投射レンズの鏡筒5が一側に突設され、他の構成部材を内蔵するユニット筐体として図示してあり、筐体1内のほぼ全域を占めるように収容してある。また、回路基板3は、電源IC及び制御IC等が実装してあり、画像投射ユニット2の後上側を覆うように取り付けてある。また、画像投射ユニット2を冷却するために駆動される空冷ファン4、4…は、筐体1の左側面に沿って並設してある。空冷ファン4、4…が吸い込んだ空気は、筐体1内の構成部品を冷却した後、筐体1の右側面に形成された複数の通風口7、7…から排出される。
【0036】
筐体1の本体部1aの左後側には、スピーカ10を装着するためのスピーカ装着部9が配設してあり、スピーカ10は、ゴムにより成形されたスピーカ保持具20に保持された状態で、スピーカ装着部9に装着してあり、図示しない信号入出力用のコードによって回路基板3に接続され、回路基板3に設けられた制御回路により制御されて音声を出力する。
【0037】
図2は、本発明の実施の形態1に係るスピーカ保持具20の構成を示す背面斜視図であり、スピーカ保持具20と共に、スピーカ10を並べて図示してある。図3は、本発明の実施の形態1に係るスピーカ保持具20の構成を示す正面斜視図であり、図4は、本発明の実施の形態1に係るスピーカ保持具20がスピーカ10を保持している状態を示す背面斜視図である。
【0038】
スピーカ10は、磁気回路及びコーン形の振動板を内部に備える略円柱形の振動部12と、振動部12の正面側の側面を囲んで設けられた略矩形状のフランジ部11と、振動部12の背面に接続された駆動信号入力用の2本のコード13、13とを備える構成である。また、振動部12及びフランジ部11の正面は放音面14をなす。
【0039】
スピーカ保持具20は、スピーカ10のフランジ部11の周側面を覆う周面被覆部21a、放音面14の周縁を覆う正面被覆部21b及びフランジ部11の背面の周縁を覆う背面被覆部21cを弾性部材により一体成形した扁平な略直方体状の弾性保持部21を備えており、弾性保持部21がスピーカ10のフランジ部11を周側面、正面及び背面から覆うことで、スピーカ10を保持するようにしてある。
【0040】
スピーカ保持具20の弾性保持部21は、スピーカ10の放音面14及びその反対面をそれぞれ周縁部分のみ覆うようにしてあるため、弾性保持部21の正面被覆部21bには長穴状に開口した正面開口部22が設けられ、背面被覆部21cには長穴状に開口した背面開口部23が設けられている。スピーカ保持具20は弾性部材により成形してあるため、スピーカ保持具20を弾性変形させ、正面開口部22又は背面開口部23からスピーカ10を弾性保持部21内に収容して、スピーカ10を保持するようにしてある。
【0041】
スピーカ保持具20の長辺側の両側面には、スピーカ保持具20をプロジェクタの筐体1に固定するための固定部24、24がそれぞれ設けられている。固定部24、24は、側面の略中央から正面にかけての部分を、側面の長手方向に沿って外側へ突出させたものであり、スピーカ保持具20と一体的に形成してある。
【0042】
また、スピーカ保持具20の短辺側の一側面には、スピーカ10を保持した場合にスピーカ10のコード13、13を押さえるためのコード係止部26が設けてある。コード係止部26は、スピーカ保持具20の側面に突設された、コード13、13を巻き付けるための、断面略T字型のT字突起26aと、T字突起26aに巻き付けたコード13、13が解けることを防止するための、スピーカ保持具20の側面のT字突起26aの左右にそれぞれ突設された押さえ突起26b、26bとを備えている。T字突起26a及び押さえ突起26b、26bは、スピーカ保持具20の弾性保持部21と一体的に弾性部材により形成してある。
【0043】
また、スピーカ保持具20の正面部分には、正面部分の周縁を囲むように、略矩形枠状の帯状枠部25が突設してある。帯状枠部25は、スピーカ10の放音面14と略平行で滑らかな連続した平面25aを有するように、弾性保持部21と一体的に形成してあり、また、弾性保持部21にコード係止部26が突設されている一端側のみ、枠の一部分が欠けた形状をなしている。帯状枠部25の平面25aは、スピーカ保持具20をプロジェクタの筐体1に固定した場合に、筐体1の内面に当接する部分であり、帯状枠部25の平面25aが筐体1の内面に密着するようにして、スピーカ保持具20を筐体1に堅固に固定し、スピーカ10が発する振動が筐体1へ伝わりにくくすると共に、帯状枠部25がスピーカ10の放音面14の周囲を囲むようにして、放音面14から放音された音声が筐体1内部に漏れにくくしている。
【0044】
図5は、本発明の実施の形態1に係るプロジェクタのスピーカ装着部9の構造を示す斜視図であり、図6は、本発明の実施の形態1に係るプロジェクタのスピーカ装着部9にスピーカを装着した状態を示す斜視図である。なお、図5及び図6において、スピーカ10のコード13、13は図示を省略している。
【0045】
スピーカ装着部9は、筐体1の本体部1aに形成された複数の貫通孔40、40…を有しており、複数の貫通孔40、40…は略矩形状に縦横に並べて形成してあり、筐体1内に配されたスピーカ10が発した音声を、貫通孔40、40…から筐体1の外部へ放音することができるようにしてある。略矩形状に並べられた貫通孔40、40…の左右を囲んで、筐体1の内側面には、スピーカ保持具20の帯状枠部25が筐体1の内側面に接触した状態で、スピーカ保持具20を上下方向にスライド可能に保持する摺動保持部41、41が設けてある。摺動保持部41、41は、筐体1の内側面に略平行に突設された上下方向に長い2つの板を、突出方向の中途部分でそれぞれ内向きに屈曲させたものであり、スピーカ保持具20の固定部24、24をそれぞれ筐体1の内側面と摺動保持部41、41とで挟んで保持するようにしてある。
【0046】
略矩形状に並べられた複数の貫通孔40、40…の下側には、摺動保持部41、41に保持されたスピーカ保持具20の下端部分と係合して、スピーカ保持具を下方向へスライド不可に固定する第1の係合板42が設けてある。第1の係合板42は、筐体1の内側面に突設された上下方向に長い板であり、スピーカ保持具20の下側面に第1の係合板42の上側面が当接するようにしてある。また、第1の係合板42の上側面には、突出方向の中途から先端までの部分に、上方向へ延出する延出部42aが設けてあり、延出部42aがスピーカ保持具20及びスピーカ10の背面を押さえるようにしてある。
【0047】
また、第1の係合板42は、2つの摺動保持部41、41の間の中間位置ではなく、摺動保持部41、41の一方に近い位置に設けてある。これは、第1の係合板42がスピーカ保持具20のコード係止部26に当たらないようにするためであり、且つ、第1の係合板42の延出部42aがスピーカ10の背面から突出している振動部12に当たらないようにするためである。
【0048】
筐体1の蓋部1bには、摺動保持部41、41に保持されたスピーカ保持具20の上端部分と係合して、スピーカ保持具20を上方向へスライド不可に固定する第2の係合板43が設けてある。第2の係合板43は、第1の係合板42と同様の形状の板であり、蓋部1bの下面に突設され、蓋部1bを装着した場合に、第2の係合板43の下側面がスピーカ保持具20の上側面に当接するようにしてある。また、第2の係合板43の下側面には、第1の係合板42の延出部42aと同様に、延出部43aが設けてあり、延出部43aがスピーカ保持具20及びスピーカ10の背面を押さえるようにしてある。また、第2の係合板43は、第1の係合板42がスピーカ保持具20と係合する位置の対角位置でスピーカ保持具20と係合するようにしてある。
【0049】
以上の構成の電気機器において、スピーカ10を筐体1に取り付ける場合は、まず、スピーカ保持具20を弾性変形させ、正面開口部22又は背面開口部23からスピーカ10をスピーカ保持具20内に収容し、スピーカ10の背面のコード13、13をコード係止部26のT字突起26aに巻き付ける。T字突起26aに巻き付けられたコード13、13は、押さえ突起26b、26bにより両側から押さえられるため、簡単に外れることはない。
【0050】
次いで、筐体1の本体部1aに設けられた摺動保持部41、41と筐体1の内面との間に、スピーカ保持具20の固定部24、24を挟み込み、摺動保持部41、41に沿って筐体1の上側から下側へ、第1の係合板42と係合するまでスピーカ保持具20をスライドさせる。その後、蓋体1bを本体部1aに装着し、第2の係合板43をスピーカ保持具20の上部と係合させて、スピーカ保持具20を固定する。
【0051】
スピーカ10はスピーカ保持具20によりフランジ部11を覆われて保持され、スピーカ保持具20は摺動保持部41、41、第1の係合板42及び第2の係合板43により四方の側面及び背面を押さえられて筐体1の内側面に固定される。よって、スピーカ10の筐体1への取り付けを簡単に行うことができる。
【0052】
スピーカ10は弾性部材によるスピーカ保持具20に保持されているため、スピーカ10が発する振動はスピーカ保持具20に吸収され、筐体1へ伝わりにくい。また、スピーカ保持具20の帯状枠部25の平面25aを筐体1の内面に密着させて、スピーカ保持具を堅固に固定しているため、より筐体1へ振動が伝わりにくくしてある。また、帯状枠部25がスピーカ10の放音面14の周囲を囲むように設けてあるため、スピーカ10から発せられた音声が筐体1内に漏れることなく、確実に貫通孔40、40…から筐体1の外部へ放音できる。
【0053】
なお、本実施の形態においては、スピーカ保持具20にコード係止部26を一体的に備える構成を示したが、これに限らず、別の部品としてスピーカ保持具20にコード係止部26を取り付けて一体とする構成であってもよく、また、コード係止部26を備えない構成であってもよい。また、コード係止部26をT字突起26a及び押さえ突起26b、26bによって構成したが、これに限るものではなく、T字突起26aのみであってもよく、または、他の形状であってもよい。また、第1の係合板42及び第2の係合板43の形状は一例であって、これに限るものではない。
【0054】
また、帯状枠部25は、コード係止部26が設けられている一端側にて、枠が一部欠けている構成を示したが、これに限るものではなく、欠けがなく周全てを囲む構成であってもよく、又はより多くの欠けている部分を有する構成であってもよい。
【0055】
また、スピーカ保持具20の素材はゴムに限定するものではなく、例えばポリウレタン、塩化ビニル、塩化ポリエチレン及びシリコンフォーム等の弾性を有する素材を用いてもよい。また、本実施形態においては電気機器としてプロジェクタを例に説明を行ったが、これに限るものではなく、オーディオ装置又はテレビ等の他の電気機器であって、スピーカを内蔵するものに関して、同様の構成を適用することができる。
【0056】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係るスピーカ保持具20aの構成を示す背面斜視図であり、スピーカ保持具20aとともに、スピーカ10を並べて図示してある。図8は、本発明の実施の形態2に係るスピーカ保持具20aがスピーカ10を保持している状態を示す背面斜視図である。
【0057】
実施の形態2に係るスピーカ保持具20aは、実施の形態1に係るスピーカ保持具20とほぼ同じ構成であり、スピーカ10のフランジ部11を収容して保持する弾性保持部21と、弾性保持部21の側面に設けられた固定部24、24及びコード係止部26と、弾性保持部21の正面に設けられた帯状枠部25(図3参照)とを備えている。
【0058】
弾性保持部21の背面に形成された背面開口部23には、背面開口部23を縦横に跨いで、略十字形のバンド部27が設けてある。バンド部27は、弾性保持部21と一体的にゴムによって形成されたものであり、スピーカ10をスピーカ保持具20が保持する場合に、スピーカ10の振動部12の背面を押さえるようにしてある。なお、背面開口部23にバンド部27が設けられているため、スピーカ10は前面開口部22からスピーカ保持具20a内に収容する。
【0059】
以上の構成のスピーカ保持具20aを用いた場合、スピーカ10の振動部12をバンド部27で押さえることができるため、スピーカ10をより確実に保持することができると共に、振動部12からの振動をバンド部27で吸収できるため、スピーカ10からの振動が他の構成部品へ伝わることをより確実に防止することができる。
【0060】
なお、実施の形態2においては、スピーカ保持具20aのバンド部を、背面開口部23を縦横に跨る略十字形としたが、これに限るものではなく、縦又は横のどちらか一方のみに跨る略長方形に形成してもよい。また、縦横方向のみでなく、斜め方向にバンド部を設けてもよい。
【0061】
実施の形態2に係るプロジェクタのその他の構成は、実施の形態1に係るプロジェクタの構成と同様であるため、対応する箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係るプロジェクタの構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るスピーカ保持具の構成を示す背面斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るスピーカ保持具の構成を示す正面斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るスピーカ保持具がスピーカを保持している状態を示す背面斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るプロジェクタのスピーカ装着部の構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るプロジェクタのスピーカ装着部にスピーカを装着した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係るスピーカ保持具の構成を示す背面斜視図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2に係るスピーカ保持具がスピーカを保持している状態を示す背面斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1 筐体
1a 本体部
1b 蓋部
9 スピーカ装着部
10 スピーカ
11 フランジ部
12 振動部
13 コード
14 放音面
20、20a スピーカ保持具
21 弾性保持部(保持部)
22 正面開口部
23 背面開口部
24 固定部
25 帯状枠部
25a 平面
26 コード係止部(係止部)
27 バンド部
41 摺動保持部
42 第1の係合板(第1の係止部)
43 第2の係合板(第2の係止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカのフランジ部を覆って前記スピーカを保持する保持部を備え、弾性材により成形してあるスピーカ保持具において、
前記保持部は、前記スピーカの正面の周縁を覆う部分を有しており、
前記スピーカの正面の周囲を囲んで、前記部分に前記スピーカの正面方向へ突設された帯状枠部を備え、
該帯状枠部の突出端を平面にしてあること
を特徴とするスピーカ保持具。
【請求項2】
前記スピーカに接続された電気信号入力用のコードを係止する係止部を備える請求項1に記載のスピーカ保持具。
【請求項3】
前記保持部は、前記スピーカのフランジ部の側面を覆う部分を有し、
前記係止部は、前記部分に設けてある請求項2に記載のスピーカ保持具。
【請求項4】
前記保持部は、前記スピーカの周囲を囲む環状をなしており、
前記保持部の周縁間に跨設され、前記スピーカの背面側を当接支持するバンド部を備える請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のスピーカ保持具。
【請求項5】
スピーカと、
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のスピーカ保持具と、
前記スピーカ及び前記スピーカ保持具を収容する筐体と、
該筐体に設けてあり、前記スピーカ保持具を摺動させて着脱し、前記スピーカ保持具の前記平面を前記筐体の内面に当接させて前記スピーカ保持具を装着する装着部と
を備えることを特徴とする電気機器。
【請求項6】
前記筐体は開閉可能な蓋部及び該蓋部に覆われる本体部を有し、
前記装着部は、
前記本体部に設けてあり、前記スピーカ保持具を前記本体部の内面に沿って摺動可能に保持する摺動保持部と、
前記本体部に設けてあり、前記摺動保持部に保持された前記スピーカ保持具の一端側と係合する第1の係合部と、
前記蓋部に設けてあり、前記蓋部を閉じた場合に前記摺動保持部に保持された前記スピーカ保持具の他端側と係合する第2の係合部と
を有する請求項5に記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−325010(P2006−325010A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146993(P2005−146993)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】