説明

スピーカ装置

【課題】偏平形態を維持しつつ、必要な方向に効果的に音の放射を行なうことができ、また、振動板の軽量化により音響エネルギーも効率的に傍聴者へ伝えることができる平面的なスピーカ装置を提供する。
【解決手段】振動面が略平面状の振動板と、前記振動板を駆動する駆動手段とからなるスピーカ装置において、前記振動板が、周辺の少なくとも一部に切欠き部を有する非均等形状となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動ユニット等を利用し、そのエネルギーを放射面に伝えることにより音響エネルギーに変換し、スピーカと同様の働きをさせる形式の音響ユニットは特表2002−528019号公報などにおいて公知である。
【0003】
この先行技術によれば、既存のスピーカでは難しかった薄型化や小型化が可能となるが、取付け構造や薄型化を考慮し、振動板には平板状のものを採用することが多い。
その場合、平板の振動板は無指向性であるため、音響ユニットは指向性を持たないことになり、全ての方向に音響エネルギーを均一に放射してしまう。この結果、不要な方向にも音響エネルギーが分散されるので、車両のセンタースピーカとして搭載したような場合に、搭乗者のいない車室内のセンター方向に音の放射が多く、搭乗者に音響エネルギーを効率的に伝え難くなるという問題があった。
【特許文献1】特表2002−528019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、薄型形態を維持しつつ、必要な方向に効果的に音の放射を行なうことができ、また、軽量化により音響エネルギーも効率的に傍聴者へ伝えることが可能な平面的スピーカ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明は、振動面が略平面状の振動板と、前記振動板を駆動する駆動手段とからなるスピーカ装置において、前記振動板が、周辺の少なくとも一部に切欠き部を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明は振動板の周辺の少なくとも一部に切欠き部を設けることで振動板を意図的に非均等形状にしているので、切欠き部分からの音響エネルギーの放射が少なく、切欠き以外の部分から必要な方向に音響エネルギーを放射することができる。また、切欠き部を設けることで振動板の体積が減り、その分軽量化できるので、音圧レベルを向上でき、音響エネルギーを効率的に傍聴者へ伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
前記切欠き部内に第2のスピーカ装置を配置している。
これによれば、切欠き部の形成により空いたスペースを有効に活用してコンパクトな形状を維持しつつ広い周波数域の高品質な音場を創成できるというすぐれた効果が得られる。
【0008】
車両の中央部に配置されるセンタースピーカである。
これによれば、搭乗者のいない車室内のセンターコンソール側への音の放射を小さくし、左右の搭乗者側を中心に音場を形成できるので、臨場感に溢れる高品質な音場を創成できるというすぐれた効果が得られる。
【実施例1】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1ないし図5は本発明によるスピーカ装置の一例を示しており、1は共振用の振動板、2は該振動板1を駆動する手段である駆動ユニット、3は取付けベースを兼ねた背面パネル、4は振動板1と背面パネル3の隙間を結合するクッション部材、5は駆動ユニット2の熱を放散させる放熱板である。6は別の第2のスピーカ装置である。
【0010】
前記振動板1は硬質の合成樹脂あるいはこれと補強物質との複合等により共振に適した剛性を有しており、天部に所要面積の平坦な振動面10を有しているが、本発明は振動面を矩形状のごとき単純な形状とせず、意図的に周辺の一部、この例では前側の辺の中心線を含む部分に、奥端が前記振動面10に達しあるいは近接するごとく凹入した切欠き部1aを形成している。
【0011】
切欠き部1aはこの例ではV字状ないしはU字状に類する平面輪郭となっており、該切欠き部1aの形成に伴い、切欠き部左右両側に、前方に延出するヨーク状部1b、1bが形成されている。これらヨーク状部1b、1bには、前記振動面10に連なりかつ前方に下傾した傾斜状振動面11がそれぞれ形成されている。
【0012】
前記振動面10と傾斜状振動面11,11の外端には適度の曲率で下降する縁壁12が連設されており、この縁壁12は前記切欠き部1aにおいて垂直状の端壁120となっている。したがって、振動板1は全体の断面では皿状となっている。
【0013】
駆動ユニット2は実施例では2個用いられており、前記振動板1の振動面10に対応する位置でかつ切欠き部1aの両側にある傾斜状振動面11,11の延長上の位置に配置されている。
それら駆動ユニット2は、たとえば磁気回路に駆動用のボイスコイルが装着され、通電することでボイスコイル部分が上下に振幅する公知の形式のものが用いられる。駆動ユニット2は、磁気回路とボビンおよびボイスコイルを所定の関係で保持する手段を有しており、該保持手段は中間にフランジ21を有している。軸方向に移動自在なボイスコイルを含む振動部20は前記振動板1の方向に向いており、振動面10の内面側には図3のように駆動部を位置決めする環状低突壁100が設けられている。
【0014】
背面パネル3は平面矩形状をなした樹脂成形体などからなり、面板部3aには、前記振動板1の振動面10に対応する位置でかつ切欠き部1aを境として左右の位置に、内部に穴300を有する環状突壁30、30が設けられている。
背面パネル3の周縁部には、前記振動板1の縁壁12と相似した輪郭の囲壁32が形成されている。この囲壁32の一部には、前記振動板1の切欠き部1aを画す端壁120と相似した形状を有する比較的高い前壁320を有している。そして、前記前壁320の外側の面板部3bには、第2のスピーカ装置6の取付け部33が設けられている。
背面パネル3の面板部1aには、環状突壁30よりも外側に、車両のダッシュボードなどへの据付固定用部が配設されており、また、後部などには前記駆動ユニットに対する配線の導口34が設けられている。
【0015】
放熱板5は前記背面パネル3の環状突壁30より大きな面積を有しており、環状突壁30の穴300に対応した位置にはくぼみ部50が設けられ、該くぼみ部50に駆動ユニット固定用ねじの通孔500が設けられている。
【0016】
前記2つの駆動ユニット2,2は、背面パネル3の各環状突壁30に嵌められることでフランジ21をもって支持され、図3のように、保持手段の穴から突出した端面部22が背面パネルの裏面に配された放熱板5のくぼみ部50に位置決めされ、通孔500を介してねじ7を端面部に螺合緊締することで組付け固定される。そして、各駆動ユニット2の振動部20は振動板1の振動面10にある環状低突壁内に位置され、接着剤で固定されている。
【0017】
クッション部材4は発泡樹脂などの弾性材料で構成された帯状体からなり、この例では2部体に分割され、第1の部体4aが背面パネル3の両側中間から後方の囲壁32の内側にほぼ沿うように配され、第2の部体4bが背面パネル3の両側中間から切欠き部1aと相似した形状の前壁320にほぼ沿うように配され、それぞれ下端面が接着剤により面板部3aに固定されている。
【0018】
前記振動板1は駆動ユニット2と接合されることによって背面パネル3と所要の隙間を有して対峙しており、前記第1の部体4aと第2の部体4bの上端面は振動板1の下面における周縁付近に接着剤により固定され、これにより振動板1は弾性的に支持されるとともに、振動板1と背面パネル3と間に密閉状の空間8が画成される。
【0019】
第2のスピーカ装置6は任意であるが、この実施例では、高域出力用のスピーカユニットであるツイータが用いられ、前記切欠き部1aの内側スペースに配置されている。
ツイータ本体6aは、背面パネルの前壁外側の面板部に設けられている取付け部33に傾斜状に嵌められ、振動板1の傾斜状振動面11に近似した傾斜状面60を有し、ツイータ本体6aの音放射部を露出させたカバー6bが切欠き部内に嵌着されている。カバーは前縁が振動板1の前端縁とほぼ整合している。
【0020】
本発明によるスピーカ装置Aは、たとえば、図7のように、車室内のダッシュボードBの中央部に設置するものであり、これにより、切欠き部1aが搭乗者のいない車室内のセンター方向(センターコンソール側)に臨み、切欠き部両側のヨーク状部1b、1bが搭乗者側に臨むよう延在する。
【0021】
振動ユニット2,2に通電すれば、ボイスコイルを含む振動部20が上下に振幅し、これと結合している振動板1が共振してスピーカ効果を発揮するが、搭乗者のいない車室内のセンター方向には切欠き部1aにより振動面が存さないので音の放射は少なく、搭乗者のいる側に延出する左右のヨーク状部1b、1bには、着座している搭乗者側に向けられるように傾斜した傾斜状振動面11,11があるので、音はこれに倣って図6(a)のように左右前方に効率的に放射することができ、図7のように搭乗者側を中心に効果的に音場が形成される。なお、図7において、色の濃い部分ほど音圧が高いことを表している。
【0022】
また、切欠き部1aにより創成されるスペースに第2のスピーカ装置6が配置されており、そのスピーカは前傾状にあるので、高音域の音がほどよい角度に放射される。
したがって、全体として偏平小型な形態でありながら、搭乗者の位置に即応した広い帯域の音響効果をあげることができる。しかも、振動板1に切欠き部1aを設けることでその分だけ振動板が軽量になるので、音圧レベルの向上も実現できる。
【0023】
図示するものは本発明の一態様であり、これに限定されるものではない。
1)切欠き部1aは音の放射が不要あるいは少なくてよい方向に臨む振動板部位に設けられるので、設ける辺と数も前方に限定されず、側方あるいは前方と側方などであってもよく、辺に対する位置も、中央に限らず片側に偏していてもよい。また、切欠きの形状も限定はない。
2)ヨーク部1bは大きくひれのように開いていてもよく、傾斜状振動面11は、2軸方向(X,Y方向)に複合したものであってもよい。
3)第2のスピーカ装置6は配置されなくてもよい。この場合、背面パネル3の端壁内側の板面部3bは除去され、振動板1と近似した輪郭形状とされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるスピーカ装置の一例を示す部分切欠斜視図である。
【図2】本発明によるスピーカ装置の平面図である。
【図3】図2のX−X線に沿う断面図である。
【図4】図2のY−Y−線に沿う断面図である。
【図5】本発明スピーカ装置の分解斜視図である。
【図6】(a)(b)は本発明スピーカ装置の音の放射方向を示す説明図である。
【図7】本発明を車室のダッシュボード中央部に設置した場合の車室内音圧分布図である。
【符号の説明】
【0025】
1 振動板
1a 切欠き部
2 駆動ユニット(駆動手段)
3 背面パネル
6 第2のスピーカ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動面が略平面状の振動板と、前記振動板を駆動する駆動手段とからなるスピーカ装置において、前記振動板が、周辺の少なくとも一部に切欠き部を有していることを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記切欠き部内に第2のスピーカ装置を配置していることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
車両の中央部に配置されるセンタースピーカであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−271142(P2008−271142A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110926(P2007−110926)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】