説明

スピーカ装置

【課題】使用しない時にはスピーカを露出させることなく片づけられるようにする。
【解決手段】収容筐体71の内部には、収容筐体71の長手方向を軸方向とする回転軸73が回転自在に設けられている。また、回転軸73には、放音部6の左端が固定されている。巻取り機構74は、収容部7から引き出された放音部6を、回転軸73に巻きつけて収容するために設けられている。放音部6が回転軸73に巻き取られた状態、つまり、放音部6が収容部7の収容筐体71に収容されている状態においては、放音部6が外部に露出することなく片づけられている。また、収容筐体71は、収容筐体71の外部から加えられた力が放音部6の静電型スピーカに直接伝わることを防止するから、外部から加えられた力によって放音部6の静電型スピーカ(振動体)が破損する可能性を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカの分野においては、静電型スピーカと呼ばれるスピーカがある。この静電型スピーカは、間隔を開けて向かい合う2枚の電極と、この2枚の電極の間に挿入された導電性を有するシート状の振動体とから構成されており、振動体に所定のバイアス電圧を印加しておき、電極に印加する電圧を変化させると、振動体に作用する静電力が変化し、これにより振動体が変位する。この印加電圧を入力される音響信号に応じて変化させれば、それに応じて振動体は変位を繰り返し、音響信号に応じた音響波が振動体から発生する。そして、このような静電型スピーカにおいては、非特許文献1に記載されているように、2枚の電極および振動体を柔らかい材料のものとすることで、様々な形に変形させることができるフレキシブル型の静電型スピーカが考案されている。
また、特許文献1には、圧電プラスチック製のフィルム状スピーカをスクリーン基材に接着固定したスクリーン部と、スクリーン部の下端部に取付けられている巻取り枠を有する投影用スクリーンが開示されている。この投影用スクリーンは、収納時には巻取り枠にスクリーン部が巻き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−45689号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】武岡成人、外5名、「コンデンサマイク/スピーカを用いた1bit波面記録再生システム」、電子情報通信学会技術研究報告.EA,応用音響、電子情報通信学会、平成17年6月、pp.25−30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなスピーカは、折り畳んだり他の物に巻き付けたりすることができるため、使用していない時には小さくして片づけることができる。しかしながら、折り畳んだり他のものに巻き付けたりしただけでは、スピーカが露出したままとなる。
【0006】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、使用しない時にはスピーカを露出させることなく片づけられる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、曲げが可能な電極と、曲げが可能で前記電極に対向して離間配置された振動体とを有する静電型スピーカを備えたシート状の放音部と、前記振動体へバイアス電圧を印加し、入力された音響信号を前記電極に供給する駆動部と、前記放音部を収容する空間を内部に有し、前記空間から外部へ開き前記放音部が通過する開口部を有する筐体とを有するスピーカ装置を提供する。
【0008】
本発明においては、前記筐体は、前記放音部の端部が固定され、前記放音部を巻き取る軸と、前記放音部を巻き取る方向へ前記軸を回転させる巻取り手段と、を前記空間内に有し、前記放音部は、前記軸に固定された端部とは反対側の自由端を他の前記スピーカ装置に固定する固定手段を有する構成であってもよい。
【0009】
本発明においては、前記放音部は、前記静電型スピーカを複数有し、前記複数の静電型スピーカのうち、前記筐体外にある前記静電型スピーカを検知する検知手段を有し、前記駆動部は、前記検知手段により検知された前記静電型スピーカの前記電極へ前記音響信号を供給する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用しない時にはスピーカを露出させることなく片づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】音響システムを構成する装置を示した図である。
【図2】スピーカシステムの正面図である。
【図3】静電型スピーカの構造および電気的構成を模式的に示した図である。
【図4】図2のスピーカ装置のA−A´線断面図、B−B´線断面図である。
【図5】制御ユニットのハードウェア構成を示すブロック図である
【図6】変形例に係るスピーカシステムの正面図である。
【図7】変形例に係るスピーカ装置の断面図である。
【図8】変形例に係るスピーカシステムの正面図である。
【図9】変形例に係るスピーカ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る音響システムについて説明する。
(1)構成
(音響システムの構成)
図1は、音響システム1を構成する装置を示した図である。
音響システム1は、再生装置2と、スピーカシステム4と、ケーブル3とを備えている。再生装置2は、所謂音楽プレーヤであり、光ディスクやHDD(Hard Disk Drive)に記録されている音響データを読み出す。また、再生装置2は、読み出した音響データをデコードし、音響データが表す音のアナログ信号(音響信号)を生成してスピーカシステム4に出力する。スピーカシステム4は、ケーブル3が接続される図示せぬ接続部を備えており、ケーブル3を介して再生装置2と接続される。スピーカシステム4は、再生装置2から入力された音響信号に応じた音響波を発生させる。
【0013】
(スピーカシステムの構成)
図2は、スピーカシステム4の正面図である。
以降の図の説明においては、直交するX軸、Y軸およびZ軸で方向を示しており、スピーカシステム4を正面から見たときの左右方向をX軸の方向、奥行き方向をY軸の方向、高さ方向をZ軸の方向としている。また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは図面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。また、図中の各構成要素の寸法は、構成要素の形状を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてある。スピーカシステム4は、音響波を発生させるスピーカ装置5aと、スピーカ装置5aに接続されるスピーカ装置5bとから構成されている。なお、本実施形態において、スピーカシステム4は、左側にスピーカ装置5a、右側にスピーカ装置5bを配置して構成されている。また、本実施形態において、スピーカ装置5a,5bの構成は同じであるため、両者を区別する必要が特に無い場合には添字の「a」および「b」の記載を省略する。この符号の末尾に付された文字の省略については、他の構成要素についても同様とする。スピーカシステム4を構成するスピーカ装置5は、放音部6と、収容部7と、支持部8とを備えている。
【0014】
放音部6は、正面から見て矩形の形状を有しており、保護布611,612と、静電型スピーカ621,622,623と、雄型コネクタ631a,632aとを備えている。放音部6の左端は、固定端として収容部7の内部に固定されている。放音部6の右端は、自由端であり、雄型コネクタ631a,632aを有している。放音部6の上端と下端は自由端である。雄型コネクタ631a,632aは、スピーカ装置5bに設けられた雌型コネクタ721b,722bと接続または分離が可能である。すなわち、雄型コネクタは、軸に固定された端部とは反対側の自由端を他のスピーカ装置に固定する固定手段の一例として機能する。
【0015】
保護布611,612は、所謂布であり、正面から見て矩形の形状を有している。保護布611と保護布612の間には、Z軸方向を長手方向とした静電型スピーカ621,622,623が、X軸方向に所定の間隔をあけて配置されている。保護布611と保護布612は、保護布611,612の外部から加えられた力が、静電型スピーカ621,622,623に直接伝わることを防止する。なお、図2においては、説明の都合上、保護布611の一部が省略されており、静電型スピーカ621,622,623の一部が保護布611に覆われずに露出しているが、実際には静電型スピーカ621,622,623のすべてが保護布611に覆われて構成されている。
【0016】
静電型スピーカ621,622,623は、それぞれに入力された音響信号に応じた音響波を発生する。静電型スピーカ621,622,623は、Z軸方向に長手を有し、正面から見て矩形の形状を有している。静電型スピーカ621,622,623のZ軸方向の長さは、保護布611,612のZ軸方向の長さよりも短い。また、静電型スピーカ621,622,623のX軸方向の長さの総和は、保護布611のX軸方向の長さよりも短い。また、静電型スピーカ621,622,623のY軸方向の長さは、数mmであり、静電型スピーカ621,622,623のX軸方向の長さと、静電型スピーカ621,622,623のZ軸方向の長さに比べて短い。静電型スピーカ621,622,623は、図示せぬ接着テープで保護布611,612に接着されているため、各部材の位置関係が変化することがない。なお、この接着テープは、表面と裏面の両方に接着剤が塗布されており、電気を通さずに空気と音を通すものとする。なお、本実施形態においては、静電型スピーカ621,622,623の構成は同じであるため、それぞれを区別する必要が無い場合は、静電型スピーカ621についての説明を代表して行い、静電型スピーカ622,623についての説明を省略する。なお、静電型スピーカ621のY軸方向の長さは、数mmに限られず、数十mmの長さであってもよい。
【0017】
図3は、静電型スピーカ621の構造および電気的構成を模式的に示した図である。
静電型スピーカ621は、振動体6211と、弾性部材6212U,6212Lと、電極6213U,6213Lとを備えている。なお、本実施形態においては、弾性部材6212U,6212Lの構成、および、電極6213U,6213Lの構成は同じであるため、両者を区別する必要が特に無い場合は添字の「U」および「L」の記載を省略する。
【0018】
まず、静電型スピーカ621を構成する各部材について説明する。振動体6211は、例えばPET(polyethylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)、PP(polypropylene:ポリプロピレン)などのフィルムに、金属膜を蒸着あるいは導電性塗料を塗布したものであり、数μm〜数十μm程度の厚さとなっている。電極6213は、導電性を有する経糸と、同じく導電性を有する緯糸を平織りした布である。電極6213は、平織りされて空気の通過が可能となっているため、音響透過性が確保されている。なお、電極6213は、絶縁性を有する糸で織られた絶縁布で包んだ構造とすることで、電極6213同士が接触しても短絡することがないようにしてもよい。また、電極6213は、PETまたはPPなどの絶縁性を有する合成樹脂のフィルムを基材とし、フィルムの一方の面に導電性のある金属を蒸着して導電膜を形成し、表面から裏面に貫通する孔を複数設けた構成であってもよい。
弾性部材6212は、中綿を熱を加えて圧縮したものであって、弾性、通気性および絶縁性を有する。弾性部材6212は、外部から力を加えられると変形し、外部から加えられた力が取り除かれると元の形状に戻る。なお、弾性部材6212は、中綿以外の素材であってもよく、例えば、合成樹脂をスポンジ状や不織布状にしたものなどであってもよい。
【0019】
次に、静電型スピーカ621の構成について説明する。振動体6211は、弾性部材6212Uと弾性部材6212Lに挟まれている。また、弾性部材6212Uには、振動体6211が配置された側の面とは反対側の面に電極6213Uが配置されており、弾性部材6212Lには、振動体6211が配置された側の面とは反対側の面に電極6213Lが配置されている。つまり、電極6213Uと電極6213Lは弾性部材6212U,6212Lと振動体6211とを挟んで対向するように配置されている。なお、静電型スピーカ621は、電極6213U,6213Lと、振動体6211と、弾性部材6212U,6212Lの各部材を図示せぬ絶縁性を有した糸で縫い合わされているため、それぞれの部材の位置関係が変化することがない。また、電極6213と、振動体6211と、弾性部材6212は、それぞれ曲げが可能で、柔軟性を有しているため、糸で縫い合わされた状態においても形状を自在に変形させることが可能に構成されている。
【0020】
次に、静電型スピーカ621の電気的構成について説明する。静電型スピーカ621は、変圧器6214と、外部から音響信号が入力される入力部6215と、振動体6211に対して直流バイアスを与えるバイアス電源6216とを備えている。バイアス電源6216は、振動体6211と、変圧器6214の出力側の中点とに接続されており、2つの電極6213U,6213Lはそれぞれ変圧器6214の出力側の一端および他端に接続されている。この構成においては、入力部6215に音響信号が入力されると入力された音響信号に応じた電圧が電極6213U,6213Lに印加され、静電型スピーカ621は、プッシュプル型の静電型スピーカとして動作する。すなわち、バイアス電源6216、変圧器6214および入力部6215は、振動体へバイアス電圧を印加し、入力された音響信号を電極に供給する駆動部の一例として機能する。
【0021】
例えば、入力部6215に音響信号が入力されると、入力された音響信号に応じた電圧が変圧器6214から電極6213Uと電極6213Lに印加される。そして、印加された電圧によって電極6213Uと電極6213Lとの間に電位差が生じると、電極6213Uと電極6213Lとの間にある振動体6211には、電極6213Uと電極6213Lのいずれかの側へ引き寄せられるような静電力が働く。
【0022】
入力部6215に音響信号が入力され、この音響信号が変圧器6214に供給されて電極6213Uにプラスの電圧が印加され、電極6213Lにマイナスの電圧が印加されると、振動体6211にはバイアス電源6216によりプラスの電圧が印加されているため、振動体6211は、プラスの電圧が印加されている電極6213Uと反発する一方、マイナスの電圧が印加されている電極6213Lに吸引され、電極6213L側へ変位する。
【0023】
また、入力部6215に音響信号が入力され、この音響信号が変圧器6214に供給されて電極6213Uにマイナスの電圧が印加され、電極6213Lにプラスの電圧が印加されると、振動体6211はプラスの電圧が印加されている電極6213Lと反発する一方、マイナスの電圧が印加されている電極6213Uに吸引され、電極6213U側へ変位する。
【0024】
このように、振動体6211が音響信号に応じて電極6213U側または電極6213L側に変位し、その変位方向が逐次変わることによって振動となり、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音が振動体6211から発生することになる。なお、発生した音は、弾性部材6212U,6212L、電極6213U,6213Lを通過して静電型スピーカ621の外部に放射されることになる。
【0025】
(収容部7の構成)
図4は、図2のスピーカ装置5aの断面図である。図4(a)は図2のスピーカ装置5aのA−A´線断面図である。また、図4(b)は図2のスピーカ装置5aのB−B´線断面図である。
図2と図4に示すように、収容部7は、収容筐体71と、回転軸73と、巻取り機構74と、雌型コネクタ721,722と、位置検出器75と、開口部76とを備えている。収容部7の収容筐体71は、例えば金属や各種の樹脂材料などの比較的硬い材料によって、円筒状に形成されている。なお、収容部7の収容筐体71は、放音部6の材料の硬さよりも硬い(ビッカース硬さ及びヤング率の値が大きい)材料によって形成されている。収容筐体71の側面には、収容筐体71の内外の空間に通じる矩形の開口部76が設けられている。開口部76のZ軸方向の長さは、放音部6のZ軸方向の長さよりも長く、開口部76のY軸方向の長さは、放音部6のY軸方向の長さよりも長く形成されている。雌型コネクタ721,722は、収容筐体71の外周面に配置されており、収容筐体71をZ軸方向から見たときに開口部76に対向する位置に配置されている。また、雌型コネクタ721と雌型コネクタ722は、Z軸方向に予め決められた間隔を開けて収容筐体71に設けられている。雌型コネクタ721と雌型コネクタ722は、他のスピーカ装置の放音部に設けられた雄型コネクタと接続されることで、他のスピーカ装置の放音部を張力のかかった状態で支持するように構成されている。例えば、図2においては、雌型コネクタ721bと雄型コネクタ631aとを接続させ、雌型コネクタ722bと雄型コネクタ632aとを接続させることで、雌型コネクタ721bと雌型コネクタ722bが、スピーカ装置5aの放音部6を張力のかかった状態で支持することになる。
【0026】
収容筐体71の内部には、収容筐体71の長手方向を軸方向とする回転軸73が回転自在に設けられている。また、回転軸73には、放音部6の左端が固定されている。巻取り機構74は、収容部7から引き出された放音部6を、回転軸73に巻きつけて収容するために設けられている。例えば、巻取り機構74は、弾性に富む帯状の金属をその面方向に渦巻き状に巻き込んで形成された、所謂ぜんまいばねを有している。巻取り機構74のぜんまいばねは、放音部6を引き出す方向に回転軸73が回転されることによって巻き込まれ、巻き込まれた渦巻きを元に戻すための力を動力源として蓄える。また、巻取り機構74のぜんまいばねは、巻き込まれた渦巻きを元に戻すための力を動力源として、放音部6を巻きつける方向に回転軸73を回転させる。すなわち、回転軸は、放音部の端部が固定され、放音部を巻き取る軸の一例として機能し、巻取り機構は、放音部を巻き取る方向へ軸を回転させる巻取り手段の一例として機能する。
【0027】
放音部6が回転軸73に巻き取られた状態、つまり、放音部6が収容部7の収容筐体71に収容されている状態においては、放音部6が外部に露出することなく片づけられている。また、収容筐体71は、収容筐体71の外部から加えられた力が放音部6の静電型スピーカに直接伝わることを防止するから、外部から加えられた力によって放音部6の静電型スピーカ(振動体)が破損する可能性を小さくする。
【0028】
位置検出器75は、例えばアブソリュート方式のロータリーエンコーダであり、放音部6の全てが収容部7に収容された状態における回転軸73の角度を基準として回転軸73が回転した角度(以下、回転角度と称する)を計測して出力する。回転軸73は、収容部7から放音部6が引き出されることで回転する。つまり、収容部7から引き出された放音部6の長さに応じて回転角度が一意に定められるから、位置検出器75が出力する回転角度は、収容部7から引き出された放音部6の長さに応じた値を示す。
【0029】
(支持部8の構成)
支持部8は、収容部7が転倒するのを防ぐための部材であり、その形状は円盤状となっている。支持部8の支持筐体81において、上面の中心部には孔83が設けられている。また、収容部7の収容筐体71において、下面の中心部には雄ねじ77が設けられている。雄ねじ77を孔83に挿入して嵌め合わせることにより、収容部7の収容筐体71が支持部8の支持筐体81に固定される。つまり、支持部8の支持筐体81が、収容部7の収容筐体71を支持する。なお、支持部8の支持筐体81の内部には、スピーカ装置5の各部を制御する制御ユニット82が設けられている。また、支持筐体81および収容筐体71は、互いの筐体内の空間を共有し得るような孔を設けることで、例えば配線などの引き込み、引き出しを可能としてもよい。
【0030】
(制御ユニットのハードウェア構成)
次に、制御ユニット82のハードウェア構成について、図2、図4、図5を用いて説明する。なお、本実施形態において、スピーカ装置5aとスピーカ装置5bは、それぞれ制御ユニット82を備えている。そこで、図5の制御ユニット82は、図2、図4に示されたスピーカ装置5aに備えられているものとする。図5は、制御ユニット82のハードウェア構成を示すブロック図である。図に示されているように、制御ユニット82は、制御部821と、接続部822と、信号処理部823とを備えている。
【0031】
接続部822は、ケーブル3が接続されるコネクタを備えている。また、接続部822には、再生装置2から出力された音響信号がケーブル3を介して入力される。信号処理部823は、静電型スピーカ621,622,623のそれぞれに対応したアンプを備えており、再生装置2から出力された音響信号を増幅して静電型スピーカ621,622,623に対して出力する機能を備えている。
【0032】
制御部821は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置や、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の各種メモリを備えている。制御部821のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出しRAMにロードして実行することによりスピーカ装置5の各部を制御する機能を備えている。
制御部821には、雄型コネクタ631aと雌型コネクタ721aとが接続されている。また、制御部821には、雄型コネクタ631aに他のスピーカ装置に備えられた雌型コネクタが接続されたことを検知するための機能が備えられている。例えば、制御部821が、雄型コネクタ631aに雌型コネクタ721bが接続されたことを検知する場合について説明する。まず、雌型コネクタ721bには、スピーカ装置5bの制御部821から出力された信号が入力されている。そして、雌型コネクタ721bと雄型コネクタ631aが接続されると、この信号が雌型コネクタ721bから雄型コネクタ631aへと供給される。雄型コネクタ631aは、制御部821に接続されている。したがって、雌型コネクタ721bから雄型コネクタ631aに供給された信号は、雄型コネクタ631aを介して制御部821へと供給されることになる。制御部821は、この信号を検知することによって、雄型コネクタ631aに雌型コネクタ721bが接続されたと判断する。なお、制御部821は、スピーカ装置5bの制御部821と同様に、雌型コネクタ721aに対して信号を出力する。
【0033】
また、制御部821のROMには、位置検出器75から入力される回転角度に対応づけて、収容部7の外側に位置する静電型スピーカ621,622,623を特定するための情報(位置情報)が記述されている。例えば、制御部821のROMには、位置情報として、回転角度aに対応づけて静電型スピーカ623、回転角度b(b>a)に対応づけて静電型スピーカ623と静電型スピーカ622、回転角度c(b>c)に対応づけて静電型スピーカ623と静電型スピーカ622と静電型スピーカ621が収容部7の外側に位置している旨が記述されている。制御部821は、回転角度が入力されると、収容部7の外側に位置する静電型スピーカ621,622,623を特定する。すなわち、制御部は、複数の静電型スピーカのうち、筐体外にある静電型スピーカを検知する検知手段の一例として機能する。
【0034】
(スピーカシステム4の動作)
スピーカ装置5は、収容部7に放音部6が収容されている状態においては、放音部6が収容筐体71によって保護されるから、外部から加えられた力によって振動体が破損する可能性を小さくする。
【0035】
利用者は、スピーカ装置5aとスピーカ装置5bをスピーカシステム4として設置するために、スピーカ装置5aの収容部7から放音部6を引き出す。この際、位置検出器75は、収容部7から引き出された放音部6の長さに応じた回転角度を出力する。制御部821は、ROMに記述された位置情報と、位置検出器75から出力された回転角度に基づいて、収容部7から引き出された放音部6の静電型スピーカを特定する。
【0036】
そして、利用者は、放音部6に設けられた雄型コネクタ631aと、スピーカ装置5bに設けられた雌型コネクタ721bとを接続させ、放音部6に設けられた雄型コネクタ632aと、スピーカ装置5bに設けられた雌型コネクタ722bとを接続させる。この接続により、スピーカ装置5bの制御部821から出力された信号が雌型コネクタ721bから雄型コネクタ631aへと供給されることになる。
【0037】
制御部821は、雄型コネクタ631aと雌型コネクタ721bとが接続されたことを検知すると、信号処理部823の制御を開始する。制御部821は、収容部7の外側に位置していると判断した静電型スピーカ621,622,623に対して、再生装置2から入力された音響信号を出力するように信号処理部823を制御する。例えば、制御部821は、静電型スピーカ623と静電型スピーカ622が収容部7の外側に位置していると特定した場合においては、静電型スピーカ623と静電型スピーカ622に対してのみ音響信号を出力するように信号処理部823を制御する。つまり、制御部821は、放音部6に備えられた静電型スピーカ621,622,623のうち、収容部7の外側に位置する静電型スピーカにだけ音響信号に応じた音響波を発生させ、収容部7の内側に位置する静電型スピーカには音響波を発生させないように制御する。
【0038】
なお、制御部821は、雄型コネクタ631の接続を検知しない状態においては、信号処理部823の制御を開始しない。つまり、信号処理部823が放音部6に音響信号を出力しないから、放音部6から音響信号に応じた音響波が発生することが無い。
【0039】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の実施の一例にすぎない。本発明は、上述した実施形態に対して以下の変形を適用した態様で実施することも可能である。なお、以下に示す変形例は、必要に応じて、各々を適当に組み合わせて実施されてもよいものである。
【0040】
(変形例1)
上述した実施形態において、スピーカシステム4は、音響波を発生させるためのスピーカ装置5aと、スピーカ装置5aの放音部6aを張力のかかった状態で支持するためのスピーカ装置5bとから構成されていた。しかし、スピーカシステム4の構成はこれに限らず、少なくとも2以上のスピーカ装置5から構成されていればよい。
図6は、変形例に係るスピーカシステムの正面図である。
スピーカシステム40は、スピーカ装置5aと、スピーカ装置5bと、スピーカ装置5cとから構成されている。スピーカ装置5aとスピーカ装置5bは、音響信号に応じた音響波を発生させるために設けられている。スピーカ装置5bはスピーカ装置5aの放音部6aを張力のかかった状態で支持するために設けられており、スピーカ装置5cはスピーカ装置5bの放音部6bを張力のかかった状態で支持するために設けられている。
【0041】
スピーカ装置5aは、再生装置2から出力された音響信号が入力される接続部822aを備えている。スピーカ装置5aは、接続部822aと雄型コネクタ6310とが接続されており、接続部822aに入力された音響信号が雄型コネクタ6310に供給されるように構成されている。スピーカ装置5bは、雌型コネクタ7210と接続された接続部822bを備えており、雌型コネクタ7210に入力された音響信号が接続部822bに供給されるように構成されている。雄型コネクタ6310と雌型コネクタ7210には、音響信号を伝達し得る電極(以降、スピーカ電極と称する)が設けられている。このような構成を有することで、スピーカシステム40は、スピーカ装置5aの接続部822aに入力された音響信号を、雄型コネクタ6310と雌型コネクタ7210に設けられたスピーカ電極を介して、スピーカ装置5bの接続部822bに供給することが可能となる。なお、スピーカ装置5は、接続部822aに入力された音響信号に応じた音響波を放音部6から発生することが可能である。したがって、スピーカシステム40は、スピーカ装置5aの接続部822aに入力された音響信号に応じた音響波を、放音部6aおよび放音部6bから発生させることが可能となる。
【0042】
さらに、スピーカ装置5aは、放音部6aと放音部6bに対する音響信号の入力を切り替えることで、放音部6aと放音部6bに同一の音響波を発生(所謂モノラル)させてもよいし、異なる音響波を発生させてもよい。異なる音響波を発生させる場合、スピーカ装置5aは、放音部6aと放音部6bに対して、例えばステレオのように2チャンネルの音響信号に応じた音響波を発生させてもよいし、異なる音響信号に応じた音響波を発生させてもよい。なお、音響信号の切り替えは、次のようにすればよい。
再生装置は、Lチャンネルと、Rチャンネルの、2つのチャンネルで音響信号を出力する機能を備える。なお、Lチャンネルで出力される音響信号を音響信号L、Rチャンネルで出力される音響信号を音響信号Rと称する。スピーカ装置5aは、Lチャンネルに対応した制御ユニット82Lと、Rチャンネルに対応した制御ユニット82Rとを備える。制御ユニット82Lは、制御部821Lと、音響信号Lが入力される接続部822Lと、音響信号Lを増幅して放音部6aに出力する信号処理部823Lとを備える。また、制御ユニット82Rは、制御部821Rと、音響信号Rが入力される接続部822Rと、音響信号Rを増幅して放音部6bに出力する信号処理部823Rとを備える。つまり、制御ユニット82Lと制御ユニット82Rは、本実施形態における制御ユニット82と同一の構成を備えている。このような構成とすることで、制御ユニット82Lの制御部821Lが、音響信号Lに応じた音響波を放音部6aから発生させ、制御ユニット82Rの制御部821Rが、音響信号Rに応じた音響波を放音部6bから発生させることが可能となる。
また、スピーカ装置5の筐体部分には、音響信号の入力を切り替えるためのユーザーインタフェース(入力切替スイッチ)が備えられても良い。そして、スピーカシステム40の利用者が、任意のタイミングで入力切替スイッチを操作することで、放音部6に対する音響信号の入力を切り替えてもよい。
なお、再生装置2、および、スピーカ装置5が対応するチャンネルの数は、2に限らずいくつであってもよい。また、チャンネルに応じた音響信号は、放音部6ごとではなく、静電型スピーカ621ごとに入力されてもよい。
【0043】
なお、スピーカシステム40は、再生装置2とスピーカ装置5a、再生装置2とスピーカ装置5bとをケーブル3で接続することで、再生装置2からスピーカ装置5a,5bに対して音響信号が出力されるように構成してもよい。
【0044】
(変形例2)
放音部6に設けられる雄型コネクタの個数は2に限らない。雄型コネクタは、放音部6に少なくとも1以上設けられていればよい。また、制御部821が、雄型コネクタと、他のスピーカ装置に備えられた雌型コネクタとの接続を検知できればよい。また、収容部7に設けられる雌型コネクタの個数は2に限らない。雌型コネクタは、収容部7に少なくとも1以上設けられていればよく、他のスピーカ装置の放音部に設けられる雄型コネクタの個数と同じであればよい。
【0045】
収容筐体の外周面に設けられる雌型コネクタの位置および数は、図4に示した例に限らない。図7は、変形例に係るスピーカ装置5の断面図である。
雌型コネクタ725は、収容筐体71の外周面に配置されており、収容筐体71をZ軸方向から見たときに開口部76に対向する位置に配置されている。また、雌型コネクタ724と雌型コネクタ726は、収容筐体71の外周面に配置されており、開口部76と雌型コネクタ725の中間の位置に、それぞれ対向して配置されている。このように、収容筐体71の外周面に複数の雌型コネクタが設けられている場合においては、1のスピーカ装置5に対して複数のスピーカ装置5が接続可能となる。
なお、放音部6に雌型コネクタ、収容部7に雄型コネクタが設けられていてもよい。
【0046】
(変形例3)
上述した実施形態において、放音部6は、Z軸方向に長手方向を有する静電型スピーカをX軸方向に所定の間隔をあけて並べることで構成されていた。しかし、放音部6に設けられた静電型スピーカが、Z軸方向に長手方向を有するとは限らない。例えば、放音部6は、X軸方向に長手方向を有する静電型スピーカを、Z軸方向に所定の間隔を空けて並べることで構成されてもよい。
また、上述した実施形態において、スピーカ装置5は1の放音部6を備えていたが、スピーカ装置5は1以上の放音部6を備えていてもよい。
【0047】
図8は、変形例に係るスピーカシステムの正面図である。
スピーカシステム400は、音響波を発生させるスピーカ装置5aと、スピーカ装置5aに接続されるスピーカ装置5bとから構成されている。本変形例において、スピーカ装置5a,5bの構成は同じであるため、両者を区別する必要が特に無い場合には「a」および「b」の記載を省略する。スピーカ装置5は、放音部60cと、放音部60dと、収容部70と、支持部8とを備えている。本変形例においては、放音部60c,60dの構成は同じであるため、両者を区別する必要が特に無い場合には「c」および「d」の記載を省略する。
【0048】
放音部60は、正面から見て矩形の形状を有しており、保護布613,614と、静電型スピーカ624と、雄型コネクタ631とを備えている。放音部60の左端は、固定端として収容部70の内部に固定されている。放音部60の右端は、自由端である。また、放音部60の右端には、雄型コネクタ631が設けられている。放音部60の上端,下端は、右端と同様に自由端である。雄型コネクタ631は、スピーカ装置5bに設けられた雌型コネクタ721と接続する。保護布613,614は、正面から見て矩形の形状をした所謂布である。保護布613と保護布614の間には、X軸方向を長手方向とした静電型スピーカ624が配置されている。なお、図8においては、説明の都合上、保護布613の一部が省略されており、静電型スピーカ624の一部が保護布613に覆われずに露出しているが、実際には静電型スピーカ624のすべてが保護布613に覆われて構成されるものとする。
【0049】
収容部70は、Z軸方向に所定の間隔を空けて設けられた、放音部60cと放音部60dとをそれぞれ引き出し可能に構成されている。スピーカ装置5aの制御部は、雄型コネクタ631cと、他のスピーカ装置に備えられた雌型コネクタとの接続を検知するための機能を備えている。また、スピーカ装置5aの制御部は、雄型コネクタ631dと、他のスピーカ装置に備えられた雌型コネクタとの接続を検知するための機能を備えている。そして、スピーカ装置5aの制御部は、放音部60c、放音部60dのいずれか一方、もしくは両方から音響信号に応じた音響波を発生させることが可能に構成されている。このような構成とすることで、スピーカシステム400は、例えば、聴者の耳の高さに応じて引き出された放音部から音響波を発生させることが可能となる。また、スピーカ装置5aの制御部は、複数の放音部60が引き出されたことを検知した場合には、夫々の放音部60に対して同一の音響信号に応じた音響波を発生させてもよいし、異なる音響信号に応じた音響波を発生させてもよい。
【0050】
(変形例4)
上述した実施形態において、放音部6は、静電型スピーカ621,622,623を備えているものとした。しかし、放音部6が備える静電型スピーカの数は3に限らず、1以上の静電型スピーカを備えていればよい。また、放音部6が2以上の静電型スピーカを備える場合においては、制御部821は、各静電型スピーカに対する音響信号の入力を切り替えることで、同一の音響波を発生(所謂モノラル)させてもよいし、異なる音響波を発生させてもよい。異なる音響波を発生させる場合、制御部821は、各静電型スピーカに対して、例えばステレオのように2チャンネルの音響信号に応じた音響波を発生させてもよいし、異なる音響信号に応じた音響波を発生させてもよい。
【0051】
(変形例5)
上述した実施形態においては、スピーカシステム4を構成するスピーカ装置5aとスピーカ装置5bとは、同一の構成を備えるものとした。しかし、スピーカ装置5bがスピーカ装置5aの放音部6aを支持するためだけに用いられる場合においては、スピーカ装置5bは、スピーカ装置5aと同一の構成を備える必要は無く、少なくとも放音部6と制御ユニット82とを備えない構成であってもよい。
【0052】
(変形例6)
上述した実施形態において制御部821は、ROMに記述された位置情報と、位置検出器75から出力された回転角度に基づいて、収容部7から引き出された放音部6の静電型スピーカを特定した。そして、制御部821は、収容部7の外側に位置する静電型スピーカにだけ音響信号に応じた音響波を発生させ、収容部7の内側に位置する静電型スピーカには音響波を発生させないように制御した。
しかし、制御部821は、収容部7の内側に位置する静電型スピーカに対して、音響波を発生させるように制御してもよい。また、制御部821は、収容部7から引き出された放音部6の長さに応じて、静電型スピーカに発生させる音響波の音量レベル、指向性、周波数特性を制御してもよい。例えば、制御部821は、収容部7から引き出された放音部6の長さが短い場合においては音量レベルを高くしたり、収容部7から引き出された放音部6の長さが長い場合においては音量レベルを低くしたりしてもよい。また、例えば、制御部821は、収容部7から引き出された静電型スピーカの数に応じて、それぞれの静電型スピーカに供給する音響信号の遅延量を調整することで、スピーカシステム4から放射される音の指向性を制御してもよい。また、指向性は周波数特性を有しているから、特に高周波帯域においては低周波帯域よりも指向性が強くなる。したがって、制御部821は、周波数帯域に応じて指向性が変化しないように、スピーカシステム4から放射される音の指向性を制御してもよい。
【0053】
(変形例7)
制御部821は、それぞれの静電型スピーカに供給する音響信号の遅延量を調整することで、スピーカシステム4から放射される音の指向性を制御してもよい。
(変形例8)
上述した実施形態において放音部6は、回転軸73に巻きつけられることで収容部7に収容された。しかし、放音部6を収容部7に収容する方法はこれに限らない。
図9は、変形例に係る収容部700と放音部600の断面図である。
図9に示したように、収容部700の収容筐体710は、四角筒に形成されており、側面に開口部760を有している。雌型コネクタ721は、収容筐体710の外周面に配置されており、収容筐体710をZ軸方向から見たときに開口部760に対向する位置に配置されている。放音部600の左端は固定端として収容筐体710の内部の固定部712に固定されており、放音部600の右端は自由端である。放音部600の右端には、雄型コネクタ631が設けられている。放音部600の上端,下端は、右端と同様に自由端である。また、放音部600は、谷折りと山折りを交互に繰り返す、所謂蛇腹折りで折り畳まれることで収容筐体710内に収容される。
【0054】
収容筐体710には、開口部760を閉じるための蓋780が設けられている。蓋780は、開口部760の近傍の収容筐体710の内側に設けられた蝶番711で開閉自在に設けられている。開口部760が閉じられている状態においては、収容筐体710は、収容筐体710の外部から加えられた力が放音部600の静電型スピーカに直接伝わることを防止する。また、収容筐体710は、放音部600に比べて硬い部材で形成されているから、外部から加えられた力によって放音部600の静電型スピーカ(振動体)が破損する可能性を小さくする。なお、収容筐体710の形状は円筒、四角筒に限定されるものではなく、多角形、楕円形など、他の形状であってもよい。なお、収容筐体710には、蓋780が設けられていなくてもよい。
【0055】
(変形例9)
巻取り機構74を、ぜんまいばねを動力源として回転軸73を回転させるものとした。しかし、巻取り機構74は、例えばモーターなどの動力に応じて回転軸73を回転させるものであってもよいし、回転軸73を回転させるための図示せぬハンドルを備え、人の力によって放音部6を巻き取るものであってもよい。つまり、巻取り機構74は、回転軸73を所定の方向に回転させることによって、回転軸73に固定された放音部6を巻取る構成を有していればよい。
【0056】
(変形例10)
上述した実施形態においては、放音部6、静電型スピーカ621,622,623の形状は矩形に限定されるものではなく、多角形、円形、楕円形など、他の形状であってもよい。また、収容部7の収容筐体71の形状は円柱に限定されるものではなく、多角柱であってもよい。
【0057】
(変形例11)
静電型スピーカ621を構成する、電極6213U,6213L、振動体6211、弾性部材6212U,6212Lの各部材は、絶縁性を有する糸で拘束されていたが、例えば絶縁性を有する接着テープで拘束されていてもよい。つまり、静電型スピーカ621を構成する、電極6213U,6213L、振動体6211、弾性部材6212U,6212Lの各部材の位置関係が変化しないよう拘束できればよい。
【0058】
(変形例12)
スピーカ装置5とは異なる外部の装置が、制御ユニット82の機能を備えている場合には、スピーカ装置5は制御ユニット82を備えていなくてもよい。
【0059】
(変形例13)
上述した実施形態において制御部821は、位置検出器75が出力した回転角度に基づいて、収容部7の外側に位置する静電型スピーカを特定した。しかし、収容部7の外側に位置する静電型スピーカを特定する方法はこれに限らない。
例えば、位置検出器75をインクリメンタル形のロータリーエンコーダとすることで、位置検出器75に回転軸73の回転回数を出力させる。そして、制御部821が、ROMに記述された回転回数と静電型スピーカの位置に関する情報に基づいて、収容部7の外側に位置する静電型スピーカを特定してもよい。
また、例えば、静電型スピーカを識別する情報が記憶された非接触型のICチップを、夫々の静電型スピーカに対応付けて設け、ICチップの情報を読み取るリーダー装置を収容筐体の開口部付近に設ける。このような構成とすることで、制御部821が、収容筐体の開口部を通過するICチップの情報をリーダー装置に読み取らせることで、収容部7の外側に位置する静電型スピーカ621を特定してもよい。
【0060】
(変形例14)
放音部は、1の静電型スピーカを備える場合においては、保護布を備えていなくてもよい。この場合、静電型スピーカは、その左端を固定端として収容部の回転軸に固定され、自由端であるその右端に雄型コネクタが設けられる。
【0061】
(変形例15)
上述した実施形態においては、2枚の電極と1枚の振動体とを有する所謂プッシュプル型の静電型スピーカを用いたが、1枚の電極と1枚の振動体とを有する所謂シングル型の静電型スピーカを用いてもよい。要は、音響信号に応じて変化する電場が形成され、帯電した振動体がこの電場から静電力をうけて変位し、その変位する方向が逐次変わることによって振動となり、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音が振動体から発生する構成であればよい。
【符号の説明】
【0062】
1…音響システム、2…再生装置、3…ケーブル、4,40,400…スピーカシステム、5…スピーカ装置、6,600,601,602…放音部、611,612,613,614…保護布、621,622,623,624…静電型スピーカ、6211…振動体、6212…弾性部材、6213…電極、6214…変圧器、6215…入力部、6216…バイアス電力供給源、631,632,6310…雄型コネクタ、7,70,700…収容部、71,710…収容筐体、711…蝶番、712…固定部、721,7210,722,724,725,726…雌型コネクタ、73…回転軸、74…巻取り機構、75…位置検出器、76,760…開口部、780…蓋、8…支持部、81…支持筐体、82…制御ユニット、821…制御部、822…接続部、823…信号処理部、83…孔、9…電力供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げが可能な電極と、曲げが可能で前記電極に対向して離間配置された振動体とを有する静電型スピーカを備えたシート状の放音部と、
前記振動体へバイアス電圧を印加し、入力された音響信号を前記電極に供給する駆動部と、
前記放音部を収容する空間を内部に有し、前記空間から外部へ開き前記放音部が通過する開口部を有する筐体と
を有するスピーカ装置。
【請求項2】
前記筐体は、
前記放音部の端部が固定され、前記放音部を巻き取る軸と、
前記放音部を巻き取る方向へ前記軸を回転させる巻取り手段と、
を前記空間内に有し、
前記放音部は、
前記軸に固定された端部とは反対側の自由端を他の前記スピーカ装置に固定する固定手段を有すること
を特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記放音部は、前記静電型スピーカを複数有し、
前記複数の静電型スピーカのうち、前記筐体外にある前記静電型スピーカを検知する検知手段を有し、
前記駆動部は、前記検知手段により検知された前記静電型スピーカの前記電極へ前記音響信号を供給すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−5061(P2012−5061A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140875(P2010−140875)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】