スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節することによって上皮細胞活性を調節する方法
本発明は、一般的に、内皮細胞機能的特徴を調節する方法およびそのために有用な薬剤に関する。より詳細には、本発明は、細胞内スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節することによって、血管内皮細胞の炎症誘発性表現型および血管形成表現型を調節する方法に関する。本発明の方法は、とりわけ、不適切な内皮細胞機能によって特徴付けられる状態、および、例えば、血管移植、器官移植、もしくは創傷治癒などの状態、または異常な内皮細胞の炎症性表現型または血管形成表現型によって特徴付けられる状態を含み得る状態の処置および/または予防に関連して有用である。さらに、本発明の方法は、一連の治療的および/または予防的使用のための薬剤の開発を容易にする(例えば、機能的に操作された内皮細胞集団など)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、内皮細胞機能的特徴を調節する方法およびそのために有用な薬剤に関する。より詳細には、本発明は、細胞内スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節することによって、血管内皮細胞の炎症誘発性表現型および血管形成表現型を調節する方法に関する。本発明の方法は、とりわけ、不適切な内皮細胞機能によって特徴付けられる状態、および、例えば、血管移植、器官移植、もしくは創傷治癒のなどの状態、または異常な内皮細胞の炎症性表現型または血管形成表現型によって特徴付けられる状態を含み得る状態の処置および/または予防に関連して有用である。さらに、本発明の方法は、一連の治療的および/または予防的使用のための薬剤の開発を容易にする(例えば、機能的に操作された内皮細胞集団など)。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書中における著者によって引用された刊行物の参考文献一覧の詳細は、本明細書の末尾にアルファベット順に収集されている。
【0003】
本明細書中におけるいかなる先行技術に対する言及も、その先行技術が共通の一般的な知見の一部を形成することの承認またはいかなる形態の示唆でもなく、かつそのように取られるべきではない。
【0004】
細胞の生存および増殖は、酸素および栄養の適切な供給ならびに毒素の除去に依存する。血管形成は、すでに存在している血管から新しい毛細管の発生に与えられた名称である。刺激された内皮細胞が新しい血管を形成するために、それらは増殖し、移動し、かつ周りの組織に侵入しなければならない。
【0005】
成体の哺乳動物においては、脈管構造は、再生の生理学的サイクルの間または創傷治癒の場合を除いては静止状態にある。さらに、酸素または栄養に関する付加的な要件は、通常、すでに存在している血管から新しい毛細管の新芽形成(sprouting)を生じる。局所的な過剰血管新生は、内皮細胞が分裂促進的シグナルに応答することができるように、静止状態の内皮細胞表現型の活性化表現型への切り換えを誘導した可溶性媒介物質の、組織による放出から生じると考えられている。分裂促進的増殖因子の放出は、細胞の移動、増殖、および分化のために新しい毛細管にシグナルを与えるレセプターの活性化を可能にし、それによって、活性化された表現型を血管形成表現型に切り換える。
【0006】
例えば、移植片の血管新生または創傷治癒の文脈などにおいて、血管形成を容易にするための方法を開発するための必要性が継続して存在する。内皮細胞を用いる作業および内皮細胞を操作することに関して、内皮細胞の生存度を維持するために、例えば、接着および細胞伸展媒介性抗アポトーシス性シグナルの必要性などの特定の固有の機能的制限が存在する。さらに、内皮細胞分化の活性化は、一般的に、血液前駆細胞マーカーCD34の損失を生じる。これは、不可逆的に、活性化された内皮細胞の表現型を変化させる。
【0007】
インビトロとインビボの両方の環境において血管形成を促進する際の顕著な関心を考慮すると、最適な内皮細胞表現型の維持を容易にすることと、最適な内皮細胞増殖を促進することの両方の手段を開発する必要性が存在する。本発明につながる研究において、ヒト内皮細胞におけるヒトスフィンゴシンキナーゼ遺伝子の過剰発現が、通常の細胞と比較して、内皮細胞増殖および細胞の生存の向上を生じることが決定された。さらに、スフィンゴシンキナーゼの過剰発現は、内皮細胞増殖の誘導にも関わらず、CD34の発現によって特徴付けられるような内皮細胞血液前駆細胞表現型を維持することが決定された。なおさらに、スフィンゴシンキナーゼの過剰発現は、内皮細胞炎症性表現型および血管形成表現型を誘導する。従って、本発明において、細胞内スフィンゴシンキナーゼレベルの調節に基づいて内皮細胞の増殖および分化の治療的操作を容易にする手段が提供される。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、文脈が他を必要としない限り、語「含む(comprise)」およびそのバリエーション(例えば、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」など)は、言及された整数もしくは段階、または整数もしくは段階の群を含むことを意味し、任意の他の整数もしくは段階、または整数もしくは段階の群の除外を意味しないと理解される。
【0009】
本発明の1つの局面は、1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法に関し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0010】
別の局面において、1つまたはそれ以上の血管内皮細胞機能的特徴を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することがこの血管内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0011】
なお別の局面において、1つまたはそれ以上のCD34+内皮細胞機能的特徴を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがCD34+内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0012】
本発明はまた、1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法を提供し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルをアップレギュレートすることが、通常の内皮細胞機能的特徴と比較してこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0013】
好ましくは、内皮細胞は血管内皮細胞である。
【0014】
なお別の局面において、血管内皮細胞増殖を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、通常の細胞増殖と比較して内皮細胞の増殖を向上させる。
【0015】
なおさらに別の局面において、血管内皮細胞の生存度を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、通常の内皮細胞の生存度と比較して血管内皮細胞の生存度を向上させる。
【0016】
なおさらに別の局面において、CD34+内皮細胞前駆細胞表現型を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、CD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持する。
【0017】
本発明のさらなる局面は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法に関し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0018】
別のさらなる局面において、この方法は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の血管内皮細胞機能的特徴を調節することに関し、この方法は、哺乳動物においてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0019】
本発明はまた、1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法を提供し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルをアップレギュレートすることが、通常の内皮細胞機能的特徴と比較してこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0020】
なお別のさらなる局面において、哺乳動物における血管内皮細胞増殖を調節する方法が提供され、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが通常の内皮細胞増殖と比較してこの内皮細胞の増殖を向上させる。
【0021】
まだ別のさらなる局面において、哺乳動物における血管内皮細胞の生存度を調節する方法が提供され、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが通常の内皮細胞生存度と比較してこの血管内皮細胞の生存度を向上させる。
【0022】
なお別の局面において、哺乳動物におけるCD34+内皮細胞前駆細胞表現型を調節する方法が提供され、方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがCD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持する。
【0023】
本発明の別の局面は、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法を意図し、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0024】
本発明のなお別の局面は、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない血管内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法を提供し、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、この内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0025】
なお別の局面において、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない血管内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法が提供され、この方法は、哺乳動物に、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節するのに十分な時間の間、およびそのために十分な条件下で有効量の薬剤を投与する段階を含む。
【0026】
本発明の別の局面は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節可能である薬剤の使用に関し、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、この内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0027】
別の局面において、本発明は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造におけるスフィンゴシンキナーゼまたはスフィンゴシンキナーゼをコードする核酸の使用に関し、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、この内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0028】
なお別のさらなる局面において、本発明は、本明細書中上記に規定したような調節薬剤および1つもしくはそれ以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む薬学的組成物を意図する。
【0029】
本発明のなお別の局面は、内皮細胞を生成する方法に関し、この内皮細胞は、通常の内皮細胞機能的特徴と比較して1つまたはそれ以上の機能的特徴の調節によって特徴付けられ、この方法は、細胞中でスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルの過剰発現を誘導する段階を含む。
【0030】
本発明のなお別の局面は、本明細書中に規定された方法に従って生成される内皮細胞に関する。
【0031】
本発明のなおさらに別の局面は、不適切な内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防における、本明細書中に規定された方法に従って開発された内皮細胞の使用に関する。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、部分的には、内皮細胞機能的特徴が、通常の内皮細胞のそれと比較して、過剰発現されたスフィンゴシンキナーゼによって調節され得るという判定に基づいて予想される。詳細には、過剰発現しているスフィンゴシンキナーゼが通常の抗アポトーシス性シグナルの非存在下で細胞増殖および細胞生存の向上を容易にすることが判定された。さらに、本発明の方法がCD34発現内皮細胞に適用される程度にまで、これらの前駆細胞様特性が増殖の発生にも関わらず維持され得る。なおさらに、内皮細胞のスフィンゴシンキナーゼ過剰発現は、炎症誘発性かつ血管形成表現型を内皮細胞に誘導する。従って、今や本発明の方法は、不適切な内皮細胞機能によって特徴付けられる状態を処置するため、またはさもなくばインビトロもしくはインビボのいずれかでの内皮細胞拡大を容易にするための治療的方法および/または予防的方法の合理的設計を可能にする。本明細書中に詳述される判定はまた、上記に詳述された状態を処置するか、またはさもなくば内皮細胞集団を播種するかおよび/もしくは拡大する文脈における使用のための、細胞薬剤と非細胞薬剤の両方の開発を容易にする。
【0033】
従って、本発明の1つの局面は、1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法に関し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0034】
「内皮細胞」との言及は、血管、リンパ管、または他の漿膜腔(例えば体液で満たされた腔)を満たす内皮細胞に対する言及として理解されるべきである。語句「内皮細胞」はまた、形態学、表現型、および/または内皮細胞の機能的活性の1つまたはそれ以上を示す細胞に対する言及として理解されるべきであり、およびまたその変異体または改変体への言及である。「改変体」には、発生の任意の分化段階において内皮細胞の形態学的もしくは表現型的特性または機能的活性のいくつかを示すがすべてを示すわけではない細胞が含まれるがこれらに限定されない。「変異体」には、天然にまたは非天然に改変された内皮細胞(例えば遺伝的に改変された細胞)が含まれるがこれらに限定されない。
【0035】
本発明の内皮細胞は発生の任意の分化段階にあり得ることが理解されるべきである。従って、細胞は未成熟であってもよく、それゆえに、さらなる分化の非存在下で機能的にコンピテントでなくてもよい(例えばCD34+前駆細胞)。この点に関して、内皮細胞に分化する能力を保持している高度に未成熟な細胞(例えば幹細胞)は、それにも関わらず、適切な条件下で内皮細胞に分化するそれらの能力に起因して本明細書中で使用される「内皮細胞」の定義を満たすものと理解されるべきである。好ましくは、対象の内皮細胞は血管内皮細胞であり、さらにより好ましくはCD34+内皮細胞である。
【0036】
従って、より特定には、1つまたはそれ以上の血管内皮細胞機能的特徴を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することはこの血管内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0037】
さらにより特定には、1つまたはそれ以上のCD34+内皮細胞機能的特徴を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼの過剰発現を誘導することがCD34+内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0038】
内皮細胞の「機能的特徴」との言及は、内皮細胞が示すことができる1つまたはそれ以上の機能的特徴のいずれかに対する言及として理解されるべきである。これには、例えば、増殖、分化、移動、静止状態もしくは活性状態のいずれかにおける生存度の維持、細胞表面分子発現、サイトカイン刺激への感作、炎症誘発性サイトカイン効果の調節、好中球を結合する能力の調節、ならびに炎症性表現型および/または血管形成表現型の調節が含まれる。本発明の文脈において、細胞内スフィンゴシンキナーゼの過剰発現が1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節を誘導することができることが決定された。この点に関して、内皮細胞機能的特徴の通常の範囲および程度を調節することに加えて、対象の調節は通常の生理学的条件下で一般的には誘導可能ではない機能的特徴、例えば向上した増殖性特徴および細胞生存性特徴ならびに変化した分化など(この後者の調節の型は本明細書中では「通常の内皮細胞機能的特徴と比較して」内皮細胞機能的特徴の調節といわれる)を誘導することまで拡張することが決定された。「通常」は、生理学的に通常のレベルのスフィンゴシンキナーゼを発現する細胞によって示される特徴または特徴の範囲を意味する。この点に関して、生理学的に通常のレベルのスフィンゴシンキナーゼは、所定の内皮細胞が静止状態にあるか活性化状態にあるか否かに依存するレベルの範囲に一致することが理解されるべきである。従って、内皮細胞が実行することができる機能的特徴の範囲が、通常、内皮細胞の分化の状態およびスフィンゴシンキナーゼの発現のレベルによって規定される。
【0039】
本発明を任意の1つの理論または作用の様式に限定することはないが、ここで生理学的に正常なレベルのスフィンゴシンキナーゼが発現され、血管内皮細胞が以下を含むがこれらに限定されない1つまたはそれ以上の特徴を示し得る。
(i)生存可能であるが静止状態の維持
(ii)適切な刺激条件下で分化する能力(例えばCD34+前駆細胞状態からより成熟した内皮細胞表現型への成熟)
(iii)増殖する能力
(iv)活性化状態における生存度の維持
(v)細胞表面分子発現を調節する能力、例えば接着分子発現など(例えば成熟または活性化状態の指示剤として)
(vi)サイトカイン刺激に応答する能力
(vii)好中球を結合する能力
(viii)炎症誘発性および/または血管形成表現型に分化する能力。
【0040】
本発明は通常の生理学的条件下で観察することができるこれらの機能的特徴を調節することに関する。しかし、通常の生理学的条件下で内皮細胞が供される特定の固有の機能的制限が存在することが理解されるべきである。例えば、生存度を維持するために、血管内皮細胞は、特定の抗アポトーシス性シグナル(例えば、通常の血管内皮細胞接着および細胞伸展の結果として生成されるもの)にさらされることと必要とする。従って、このようなシグナルの非存在下において-細胞が懸濁物中でインビトロで増殖される場合に生じ得るような場合-望ましくないアポトーシスが起こる。別の例においては、未成熟の静止状態の内皮細胞が細胞表面血液前駆細胞マーカーCD34を発現するのに対して、内皮細胞増殖の刺激および誘導(例えば、血管形成を容易にするために)がCD34発現、および定義の通り、不可逆的かつより成熟な表現型の発生の損失を生じる。特定の状況において、例えばCD34+内皮細胞集団を拡大することを追求している場合、増殖を開始するシグナルがまた表現型的成熟もたらすので、これは不利であることが判明し得る。
【0041】
従って、好ましい態様において、対象の機能的特徴は上記の要点(i)から(viii)までに詳述される機能的特徴のいずれか1つまたはそれ以上である。
【0042】
本明細書中前記に詳述されるように、内皮細胞においてスフィンゴシンキナーゼを過剰発現することが、スフィンゴシンキナーゼが通常の範囲内で発現される場合に一般的には観察されない機能的特徴の誘導を生じ得ることもまた決定された。従って、通常の内皮細胞の特徴「と比較して」内皮細胞の機能的特徴を「調節する」との言及は、スフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現が、通常の範囲内でスフィンゴシンキナーゼを発現する細胞の文脈において一般的には観察されない1つまたはそれ以上の特徴の誘導を生じることを意味するものとして理解されるべきである。しかし、対象の特徴が、内皮細胞の通常の機能的特徴の範囲を完全に置き換えてもよいこと、またはこれらの特徴の1つまたはそれ以上が1つまたはそれ以上の通常の特徴と共に発現されてもよいことが理解されるべきである。いかなる方法においても本発明を制限するものではないが、スフィンゴシンキナーゼレベルを過剰発現する内皮細胞において誘導され得る特徴の例には以下が含まれるがこれらに限定されない。
-増殖の増加した速度/程度、および増殖が起こり得る条件下での最小のみの環境的/細胞培養の条件についての必要性の両方の点からの改善された増殖特性(本明細書中では「向上した増殖」といわれる)。
-改善された細胞生存度。これはアポトーシスをダウンレギュレートすること、または細胞死を妨害するかもしくはさもなくば誘導することのいずれかのレベルで起こり得る。例えば、ストレスの条件下 (例えばインビトロ環境における組織培養補充物の除去など)での細胞生存は、マトリックス接着および細胞伸展の間のインテグリンレセプター関与の結果として供給される抗アポトーシス性シグナルの非存在下で通常起こるアポトーシスのダウンレギュレーションと同様に容易にされる。これは、例えば、インビトロ細胞培養集団が懸濁物中に維持されるために必要とされる場合に特に関連性がある(本明細書中では向上した生存度といわれる)。
-変化した分化経路。特に、CD34血液前駆細胞表面マーカーが内皮細胞前駆細胞増殖または静止CD34+内皮細胞の増殖の刺激に際してダウンレギュレートされるのに対して、スフィンゴシンキナーゼの過剰発現は、増殖/拡大の発生にも関わらずこれらの細胞のCD34発現と前駆細胞表現型の両方の維持を生じる(本明細書中では「CD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持する」といわれる)。
【0043】
それゆえに、対象の機能的特徴調節は好ましくは:
(i)向上した増殖
(ii)向上した生存度;および/または
(iii)CD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持すること
である。
【0044】
従って、本発明はまた、1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法を提供し、この方法はスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルをアップレギュレートすることが、通常の内皮細胞機能的特徴と比較して内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0045】
好ましくは、内皮細胞は血管内皮細胞である。
【0046】
1つの好ましい局面において、血管内皮細胞増殖を調節する方法が提供され、この方法はスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、通常の内皮細胞増殖と比較して内皮細胞の増殖を向上させる。
【0047】
別の態様において血管内皮生存度を調節する方法が提供され、この方法はスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが通常の内皮細胞生存度と比較してこの血管内皮細胞の生存度を向上させる。
【0048】
なお別の好ましい態様において、CD34+内皮細胞前駆細胞表現型を調節する方法が提供され、この方法はスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがCD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持する。
【0049】
これらの好ましい態様に従って、最も好ましくは調節は対象の機能的特徴のアップレギュレーションである。
【0050】
「スフィンゴシンキナーゼ」との言及は、このタンパク質のあらゆる型、およびその機能的誘導体、ホモログ、アナログ、化学的等価物、またはその模倣物に対する言及として理解されるべきである。これは、例えば、対象のスフィンゴシンキナーゼmRNAの選択的スプライシングから生じる任意のアイソフォームまたはこれらのタンパク質の機能的変異体または多型改変体を含む。
【0051】
本明細書中上記に詳述したように、活性化されていないかまたは刺激されていない内皮細胞において観察される基礎レベルよりも高い細胞内スフィンゴシンキナーゼのレベルを誘導することが、独特な機能的特徴の誘導を生じることが判定された。従って、スフィンゴシンキナーゼの「機能的レベル」との言及は、スフィンゴシンキナーゼの濃度それ自体とは対照的に任意の所定の細胞において存在するスフィンゴシンキナーゼ活性のレベルに対する言及として理解されるべきである。スフィンゴシンキナーゼの細胞内濃度の増加は一般的には細胞において観察されるスフィンゴシンキナーゼ機能的活性のレベルの増加と相関するが、当業者はまた、活性のレベルの増加が絶対的な細胞内スフィンゴシンキナーゼ濃度を単に増加させること以外の手段によって達成され得ることを理解する。例えば、増加した半減期を示すかまたはさもなくば向上した活性を示すスフィンゴシンキナーゼの型を使用し得る。それゆえに、対象のスフィンゴシンキナーゼレベルを「過剰発現する」との言及は、細胞内スフィンゴシンキナーゼを、所定の内皮細胞についての通常の生理学的条件下で発現されるよりも高い効果的な機能的レベルまでアップレギュレートすることに対する言及、または任意の機能性レベルであるが、天然に存在する生理学の効果に起因して対象の細胞において起こった増加であるよりはむしろアップレギュレーション事象が人工的にもたらされるようなレベルまでのスフィンゴシンキナーゼレベルのアップレギュレーションに対する言及として理解されるべきである。従って、この後者の型のアップレギュレーションは、通常の生理学的範囲にあるが前刺激レベルよりも高いレベルまでスフィンゴシンキナーゼをアップレギュレートすることと相関し得る。アップレギュレーションがそれによって達成される手段は生理学的経路を模倣することを追求する人工的な手段-例えばホルモンまたは他の刺激分子を導入することであり得る。従って、用語「発現する」は、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子の転写および翻訳の概念に限定されることを意図されない。むしろ、本明細書中以後でより詳細に議論されるように、これは、特定の時点における、内皮細胞中の通常の生理学的条件下で見い出されるものよりも、より高くかつ効果的なスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルの確立である結果に対する言及である(すなわち、本明細書中上記に詳述したように、これはスフィンゴシンキナーゼレベルの天然に存在しない増加を含み、この増加は、観察され得る通常の生理学的範囲にあり得る場合でもある)。「効果的な」レベルである対象の機能的レベルとの言及は、通常の内皮細胞と比較して内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴の調節を達成する過剰発現のレベルとして理解されるべきである。本発明をいかなる1つの理論または作用の様式にも限定することではないが、異なるレベルのスフィンゴシンキナーゼ過剰発現が特異的かつ識別可能な細胞の変化を誘導することが判定された。
【0052】
内皮細胞機能的特徴の文脈における「調節する」との言及は、本明細書中上記に詳述されるような機能的特徴を誘導することに対する言及として理解されるべきである。スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルの文脈において、「調節する」との言及は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルをアップレギュレートすることまたはダウンレギュレートすることに対する言及として理解されるべきである。任意の所定の内皮細胞型についての望ましい表現型変化を達成するためにスフィンゴシンキナーゼがそこまでアップレギュレートまたはダウンレギュレートされるべき特定の最適レベル(すなわち、「効果的」レベル)を決定することは、日常的な手順の問題である。当業者は、このようなレベルを決定する方法を熟知している。
【0053】
1つの態様において、本発明は内皮細胞の集団に独特な機能的特徴を導入する手段としてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルをアップレギュレートすることに関する。しかし、それにも関わらず、これらの特徴の発現を取り除くためにスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルをダウンレギュレートすることが望ましい状況が存在することが理解されるべきである。例えば、特定の目的を達成するために十分な時間の間、規定された内皮細胞の集団の文脈においてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルをアップレギュレートすることを追求し得る。しかし、一旦その目的が達成されると、それがもはや過剰発現されないように、および対象の内皮細胞がそれによって通常の表現型を取るように、スフィンゴシンキナーゼの細胞内機能的レベルを一過性でない程度にまでダウンレギュレートすることを追求することがあり得る。別の例において、例えば、遺伝的な変異の影響に起因して、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルの過剰発現によって実際に特徴付けられる特定の疾患状態を同定し得る。このような状況において、腫瘍形成をもたらし得る制御されない内皮細胞増殖(血管形成)を観察し得る。このような状況が存在する場合、正常な表現型プロフィールを問題の内皮細胞に回復される手段としてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルをダウンレギュレートすることを追求し得る。別の例において、炎症性状態におけるスフィンゴシンキナーゼレベルのダウンレギュレーションは、対象の炎症が内皮細胞炎症性表現型の発生に起因する場合に望ましいかもしれない。特に関連する例において、関節リウマチは血管形成および炎症性の両方の内皮細胞表現型の発生によって特徴付けられる。従って、内皮細胞スフィンゴシンキナーゼレベルのダウンレギュレーションは、治療的処置として望ましい。それゆえに本発明は、内皮細胞の集団に独特な表現型特性を導入するためにスフィンゴシンキナーゼ機能的レベルをアップレギュレートすること、および天然にまたは非天然に誘導されたスフィンゴシンキナーゼ過剰発現の状態をダウンレギュレートすることに関すると理解されるべきである。
【0054】
上記に詳述されるように、スフィンゴシンキナーゼ機能的レベルを「調節する」との言及は、これらのレベルをアップレギュレートすることまたはダウンレギュレートすることのいずれかに対する言及である。このような調節は任意の適切な手段によって達成され得、以下を含む。
(i)より多いかまたはより少ないかのいずれかのスフィンゴシンキナーゼが活性化のためおよび/またはその下流の標的と相互作用するために利用可能であるように、活性型または不活性型のスフィンゴシンキナーゼの絶対的レベルを調節すること(例えば細胞内スフィンゴシンキナーゼ濃度を増加させるかまたは減少させること)。
(ii)任意の所定のスフィンゴシンキナーゼ分子の機能的有効性が増加されるかまたは減少されるかのいずれかであるように、スフィンゴシンキナーゼを作用させるかまたは拮抗させること。例えば、スフィンゴシンキナーゼの半減期を増加させることは、スフィンゴシンキナーゼの絶対的な細胞内濃度の増加を実際に必要とすることなく、スフィンゴシンキナーゼ活性の全体的レベルの増加を達成し得る。同様に、例えば、その下流の標的へのスフィンゴシンキナーゼの結合に関連する何らかの立体障害を導入する分子にスフィンゴシンキナーゼをカップリングすることによるスフィンゴシンキナーゼの部分的な拮抗作用は、スフィンゴシンキナーゼシグナル伝達の有効性を必ずしも除去するものではないが、減少するように作用し得る。従って、これは、スフィンゴシンキナーゼの絶対的な濃度をダウンレギュレート必ずしもすることなく、スフィンゴシンキナーゼ機能をダウンレギュレートする手段を提供し得る。
【0055】
スフィンゴシンキナーゼ機能のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを達成することに関して、この目的を達成するための手段は当業者に周知であり、以下を含むがこれらに限定されない。
(i)細胞のスフィンゴシンキナーゼを発現する能力をアップレギュレートするために、スフィンゴシンキナーゼまたはその機能的等価物、誘導体、もしくはアナログをコードする核酸分子を細胞に導入すること。
(ii)遺伝子の転写的および/または翻訳的調節を調節するタンパク質性分子または非タンパク質性分子を細胞に導入することであって、ここでこの遺伝子はスフィンゴシンキナーゼ遺伝子もしくはその機能的部分またはスフィンゴシンキナーゼ遺伝子の発現を直接的もしくは間接的に調節する何らかの他の遺伝子であり得る。
(iii)スフィンゴシンキナーゼ発現産物(活性型または不活性型のいずれか)、またはその機能的誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物を細胞に導入すること。
(iv)スフィンゴシンキナーゼ発現産物に対してアンタゴニストとして機能するタンパク質性分子または非タンパク質性分子を導入すること。
(v)スフィンゴシンキナーゼ発現産物のアゴニストとして機能するタンパク質性分子または非タンパク質性分子を導入すること。
【0056】
上記のタンパク質性分子は、任意の適切な供給源(例えば、天然の供給源、組換えの供給源、または合成の供給源)に由来し得、および例えば、天然物のスクリーニングの後で同定された融合タンパク質または分子を含む。非タンパク質性分子との言及は、例えば、核酸分子に対する言及であり得るか、または天然の供給源(例えば、天然物のスクリーニングなど)に由来する分子であり得るか、または化学合成された分子であり得る。本発明は、スフィンゴシンキナーゼ発現産物のアナログまたはアゴニストもしくはアンタゴニストとして作用することができる低分子を意図する。化学的アゴニストはスフィンゴシンキナーゼ発現産物に必ずしも由来しなくてもよいが、特定のコンホメーションの類似性を共有してもよい。代替として、化学的アゴニストは特定の物理化学的特性を満たすように詳細に設計され得る。アンタゴニストは、スフィンゴシンキナーゼがその通常の生物学的機能を実行することをブロック、阻害、またはさもなくば妨害することができる任意の化合物であり得る(例えばその活性化を妨害するかまたはさもなくば活性化されたスフィンゴシンキナーゼの下流の機能を妨害する分子など)。アンタゴニストには、哺乳動物細胞中でスフィンゴシンキナーゼの遺伝子またはmRNAの転写または翻訳を妨害するモノクローナル抗体およびアンチセンス核酸が含まれる。発現の調節はまた、抗原、RNA、リボソーム、DNAzyme、RNAアプタマー、抗体、または同時抑制における使用のための適切な分子を利用して達成され得る。上記の要点(i)-(v)において言及されるタンパク質性分子および非タンパク質性分子は本明細書中では集合的に「調節薬剤」といわれる。
【0057】
本明細書中上記に規定した調節薬剤のスクリーニングは、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子またはその機能的等価物もしくは誘導体を含む細胞を薬剤と接触させることおよびスフィンゴシンキナーゼタンパク質産生または機能的活性の調節をスクリーニングすること、スフィンゴシンキナーゼをコードする核酸分子の発現の調節、または下流のスフィンゴシンキナーゼ細胞標的の活性もしくは発現の調節を含むがこれに全く限定されないいくつかの適切な方法の任意の1つによって達成され得る。このような調節の検出は、ウェスタンブロッティング、電気泳動移動度シフトアッセイおよび/またはスフィンゴシンキナーゼ活性のレポーター読み取り(例えばルシフェラーゼ、CATなど)のような技術を利用して達成され得る。
【0058】
スフィンゴシンキナーゼ遺伝子またはその機能的等価物もしくは誘導体が、試験の対象物である細胞中に天然に存在し得るか、またはそれが試験目的のために宿主細胞にトランスフェクトされたかもしれないことが理解されるべきである。さらに、天然に存在するかまたはトランスフェクトされた遺伝子が構成的に発現され得、それによって、とりわけ、核酸レベルまたは発現産物レベルのいずれかにおいてスフィンゴシンキナーゼ活性をダウンレギュレートする薬剤のスクリーニングのために有用であるモデルを提供し、あるいはこの遺伝子は活性化を必要とし得、それによって、とりわけ、スフィンゴシンキナーゼ発現をアップレギュレートする薬剤のスクリーニングのために有用であるモデルを提供する。さらに、スフィンゴシンキナーゼ核酸分子が細胞にトランスフェクトされる程度まで、その分子は完全なスフィンゴシンキナーゼ遺伝子を含み得るか、またはそれは単に遺伝子の一部(例えばスフィンゴシンキナーゼ産物の発現を調節する部分など)を含み得る。例えば、スフィンゴシンキナーゼプロモーター領域は試験の対象である細胞にトランスフェクトされ得る。この点に関して、プロモーターのみが利用される場合、プロモーターの活性の調節を検出することは、例えば、プロモーターをレポーター遺伝子にライゲーションすることによって達成され得る。例えば、プロモーターはルシフェラーゼまたはCATプロモーターにライゲーションされ得、その遺伝子の発現の調節は蛍光強度またはCATレポーター活性の調節を介してそれぞれ検出され得る。
【0059】
別の例において、検出の対象は、スフィンゴシンキナーゼそれ自体であるよりもむしろ下流のスフィンゴシンキナーゼ調節標的であり得る。なお別の例には、最小のレポーターにライゲーションされたスフィンゴシンキナーゼ結合部位が含まれる。例えば、スフィンゴシンキナーゼ活性の調節は内皮細胞中の機能的活性の調節のスクリーニングによって検出され得る。これは、スフィンゴシンキナーゼ発現の調節がそれ自体検出の対象ではない場合の間接的な系の例であり得る。むしろ、スフィンゴシンキナーゼがその発現を調節する分子の調節がモニターされる。
【0060】
これらの方法は、例えば合成のライブラリー、コンビナトリアルライブラリー、化学ライブラリー、および天然のライブラリーを含むタンパク質性または非タンパク質性の薬剤などのような推定の調節因子の高スループットスクリーニングを実行するためのメカニズムを提供する。これらの方法はまた、スフィンゴシンキナーゼ核酸分子もしくは発現産物それ自体のいずれかを結合するか、または上流の分子(この上流の分子は続いてスフィンゴシンキナーゼ発現または発現産物活性を調節する)の発現を調節する薬剤の検出を容易にする。従って、これらの方法は、スフィンゴシンキナーゼの発現および/または活性を直接的または間接的のいずれかで調節する薬剤を検出するためのメカニズムを提供する。
【0061】
本発明の方法に従って利用される薬剤は任意の適切な形態を取り得る。例えば、タンパク質性薬剤は、種々の程度まで、グルコシル化されてもよくもしくはグルコシル化されなくてもよく、リン酸化されてもよくもしくは脱リン酸化されていてもよく、および/または、タンパク質と共に使用され、連結され、結合され、またはさもなくば付随する一連の他の分子(例えばアミノ酸、脂質、炭水化物、または他のペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質)を含んでもよい。同様に、対象の非タンパク質性分子はまた、任意の適切な形態を取り得る。本明細書中に記載されるタンパク質性薬剤および非タンパク質性薬剤の両方は、任意の他のタンパク質性分子または非タンパク質性分子と連結、結合、さもなくは付随され得る。例えば、本発明の1つの態様において、薬剤は局在化された領域へのその標的化を可能にする分子に付随する。
【0062】
対象のタンパク質性分子または非タンパク質性分子は、スフィンゴシンキナーゼの発現またはスフィンゴシンキナーゼ発現産物の活性を調節するために直接的または間接的のいずれかで作用し得る。分子は、それぞれ、発現または活性を調節するために、それがスフィンゴシンキナーゼ核酸分子または発現産物に付随する場合に直接的に作用する。分子は、他の分子が、それぞれ、スフィンゴシンキナーゼ核酸分子または発現産物の発現または活性を直接的または間接的のいずれかで調節する、スフィンゴシンキナーゼ核酸分子または発現産物以外の分子に付随する場合に間接的に作用する。従って、本発明の方法は、調節段階のカスケードの誘導を介するスフィンゴシンキナーゼの核酸分子発現または発現産物活性の調節を含む。
【0063】
この文脈において用語「発現」とは、核酸分子の転写および翻訳をいう。「発現産物」との言及は、核酸分子の転写および翻訳から生じる産物に対する言及である。
【0064】
本明細書中に記載される分子の「誘導体」(例えばスフィンゴシンキナーゼまたは他のタンパク質性薬剤もしくは非タンパク質性薬剤)には、天然の供給源または天然でない供給源のいずれかからのフラグメント、部分(parts)、部分(portion)、または改変体が含まれる。天然でない供給源には、例えば、組換え供給源または合成供給源が含まれる。「組換え供給源」は、対象の分子がそこから収集される細胞供給源が遺伝的に変化されていることを意味する。このことは、例えば、その特定の細胞の供給源による産生の速度および量を増加またはさもなくば向上させるために起こり得る。部分またはフラグメントには、例えば、分子の活性領域が含まれる。誘導体はアミノ酸の挿入、欠失、または置換に由来し得る。アミノ酸挿入誘導体には、アミノ末端融合物および/またはカルボキシ末端融合物ならびに単一または複数のアミノ酸の配列内挿入が含まれる。挿入アミノ酸配列の改変体は、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基がタンパク質中の所定の部位に導入されるが、生じる生成物の適切なスクリーニングを用いるランダムな挿入もまた可能であるものである。欠失改変体は、配列からの1つまたはそれ以上のアミノ酸の除去によって特徴付けられる。置換アミノ酸改変体は、配列中の少なくとも1つの残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されているものである。アミノ酸配列への付加には、上記に詳述したように、他のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質との融合物が含まれる。
【0065】
誘導体にはまた、ペプチド、ポリペプチド、または他のタンパク質性もしくは非タンパク質性の分子に融合された特定のエピトープまたは全体のタンパク質の部分を有するフラグメントが含まれる。例えば、スフィンゴシンキナーゼまたはその誘導体は細胞へのその侵入を容易にするための分子に融合され得る。本明細書中で意図される分子のアナログには、側鎖への修飾、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の合成の間の非天然アミノ酸および/またはそれらの誘導体の取り込み、ならびに架橋剤の使用およびコンホメーションの制約をタンパク質性分子またはそれらのアナログに課す他の方法が含まれるがこれらに限定されない。
【0066】
本発明の方法に従って利用され得る核酸配列の誘導体は、同様に、他の核酸分子との融合物を含む、単一または複数のヌクレオチド置換、欠失、および/または付加に由来し得る。本発明において利用される核酸分子の誘導体には、オリゴヌクレオチド、PCRプライマー、アンチセンス分子、核酸分子の同時抑制および融合における使用のために適切な分子が含まれる。核酸配列の誘導体にはまた、縮重改変体が含まれる。
【0067】
スフィンゴシンキナーゼの「改変体」は、それが改変体であるスフィンゴシンキナーゼの型の少なくとも何らかの機能的活性を示す分子を意味すると理解されるべきである。バリエーションは任意の型を取り得、天然の供給源または天然に存在しない供給源であり得る。変異体分子は修飾された機能的活性を示すものである。
【0068】
「ホモログ」は、その分子が本発明の方法に従って処理されるもの以外の種に由来することを意味する。これは、例えば、その処理されるもの以外の種が、対象の受けた処理によって天然に産生されるスフィンゴシンキナーゼのそれに対して同様のかつ適切な機能的特徴を示すスフィンゴシンキナーゼの型を産生することが決定される場合に起こり得る。
【0069】
化学的等価物および機能的等価物は、対象の分子の機能的活性の任意の1つまたはそれ以上を示す分子として理解されるべきであり、その機能的等価物は、任意の供給源に由来し得る(例えば天然物のスクリーニングなどのようなスクリーニングプロセスを介して化学合成または同定される)。例えば化学的または機能的等価物は周知の方法(例えばコンビナトリアルケミストリーまたは組換えライブラリーの高スループットスクリーニングまたは天然物スクリーニングに従うことなど)を利用して設計および/または同定され得る。
【0070】
例えば、有機低分子を含むライブラリーがスクリーニングされ得、ここで多数の特定の親の基の置換を有する有機分子が使用される。一般的な合成スキームは公開された方法に従い得る(例えば、Bunin BA, et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:4708-4712; DeWitt SH, et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6969-6913)。手短に述べると、各連続的な合成段階において、複数の異なる選択された置換基の1つがアレイにおけるチューブの選択されたサブセットの各々に加えられ、チューブのサブセットの選択は、ライブラリーを産生する際に利用される異なる置換基のすべての可能な順列を生成することなどである。1つの適切な順列ストラテジーは米国特許第5,763,263号に概説されている。
【0071】
生物学的に活性な化合物を探索するためにランダムな有機分子のコンビナトリアルライブラリーを使用することにおいて現在広範囲に及ぶ関心が存在する(例えば、米国特許第5,763,263号を参照されたい)。この型のライブラリーをスクリーニングすることによって発見されたリガンドは、天然のリガンドを模倣するかもしくはブロックする際に、または生物学的標的の天然に存在するリガンドを妨害する際に有用であり得る。本発明の文脈において、例えば、これらは、例えばより強力な薬理学的効果などの特性を示すスフィンゴシンキナーゼアナログを開発することのための出発点として使用され得る。スフィンゴシンキナーゼまたはその機能的部分は、本発明に従って、種々の固相または液相の合成方法によって形成される組み合わせライブラリーにおいて使用され得る(例えば米国特許第5,763,263号およびそこに引用される参考文献を参照されたい)。米国特許第5,753,187号において開示されるような技術の使用によって、数百万の新規な化学的および/または生物学的な化合物が数週間未満で日常的にスクリーニングされ得る。同定された多数の化合物の中で、適切な生物学的活性を示すもののみがさらに分析された。
【0072】
高スループットライブラリースクリーニング方法に関して、選択された生物学的薬剤(例えば生体分子、高分子複合体、または細胞など)と特異的に相互作用可能であるオリゴマー性または低分子ライブラリー化合物は、一連の周知の化合物(例えば上記のものなど)から当業者によって容易に選択されるコンビナトリアルライブラリーデバイスを利用してスクリーニングされる。このような方法において、ライブラリーの各メンバーは選択された因子と特異的に相互作用するその能力についてスクリーニングされる。この方法を実施する際に、生物学的因子は化合物を含むチューブに引き出され、各チューブ中で個別のライブラリーの化合物と相互作用することが可能にされる。この相互作用は、望ましい相互作用の存在をモニターするために使用され得る検出可能なシグナルを産生するように設計される。好ましくは、この生物学的因子は水溶液中に存在し、さらなる条件が所望の相互作用に依存して適合される。検出は例えば、物質の検出のための任意の周知の機能的または機能的でない基礎的方法によって実行され得る。
【0073】
スフィンゴシンキナーゼの活性を模倣する分子をスクリーニングすることに加えて、内皮細胞増殖を調節することに関してスフィンゴシンキナーゼの機能的活性をアップレギュレートまたはダウンレギュレートするためにスフィンゴシンキナーゼに対してアゴニスト的またはアンタゴニスト的に機能する分子を同定および利用することもまた望ましいかもしれない。このような分子の使用は以下により詳細に記載される。対象の分子がタンパク質性である程度まで、それは、例えば、融合タンパク質を含む天然のまたは組換えの供給源に由来し得るか、または例えば、上記のスクリーニング方法に従う。非タンパク質性分子は、例えば、上記に同定した方法論に従ってまた同定または生成された化学的分子または合成分子であり得る。従って、本発明は、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用することができるスフィンゴシンキナーゼの化学的アナログの使用を意図する。化学的アゴニストはスフィンゴシンキナーゼに必ずしも由来しなくてもよいかもしれないが、特定のコンホメーションの類似性を共有するかもしれない。代替として、化学的アゴニストはスフィンゴシンキナーゼの特定の物理化学的特性を模倣するように特異的に設計され得る。アンタゴニストは、スフィンゴシンキナーゼがその通常の生物学的機能を実行することをブロック、阻害、またはさもなくば妨害することができる任意の化合物であり得る。アンタゴニストには、スフィンゴシンキナーゼまたはスフィンゴシンキナーゼの一部に特異的なモノクローナル抗体が含まれる。
【0074】
スフィンゴシンキナーゼのアナログまたは本明細書中で意図されるスフィンゴシンキナーゼのアゴニスト性またはアンタゴニスト性薬剤のアナログには、側鎖への修飾、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の合成の間の非天然アミノ酸および/または誘導体の取り込み、ならびに架橋剤の使用およびコンホメーションの制約をそれらのアナログに課す他の方法が含まれるがこれらに限定されない。これらの修飾を取り得る特異的な型は、対象の分子がタンパク質性であるかまたは非タンパク質性であるかに依存する。特定の修飾の性質および/または適合性は当業者によって日常的に決定され得る。
【0075】
例えば、本発明によって意図される側鎖の修飾の例には、例えばアルデヒドを用いる反応による還元的アルキル化、続いてNaBH4を用いる還元によるアミノ基の修飾;メチルアセトイミデートを用いるアミジン化;無水酢酸を用いるアシル化;シアン酸を用いるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を用いるアミノ基のトリニトロベンゼン化;無水コハク酸およびテトラヒドロフタル酸無水物を用いるアミノ基のアシル化;ならびにピリドキサール-5-リン酸を用いるリジンのピリドキシル化、続いてNaBH4を用いる還元が含まれる。
【0076】
アルギニン残基のグアニジン基は、例えば2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサール、およびグリオキサールなどの試薬を用いるヘテロ環縮合生成物の形成によって修飾され得る。
【0077】
カルボキシル基はO-アシルイソウレア形成、その後の引き続く誘導体化(例えば対応するアミドまで)を介するカルボジイミド活性化によって修飾され得る。
【0078】
スルフヒドリル基は、例えばヨード酢酸またはヨードアセトアミドを用いるカルボキシルメチル化;システイン酸への過ギ酸酸化;他のチオール化合物を用いる混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸、または他の置換マレイミドを用いる反応;4-クロロ水銀安息香酸、4-クロロ水銀フェニルスルホン酸、フェニル水銀クロライド、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノール、および他の水銀剤を使用する水銀誘導体の形成;アルカリpHにおけるシアン酸を用いるカルバモイル化のような方法によって修飾され得る。
【0079】
トリプトファン残基は、例えば、N-ブロモスクシニミドを用いる酸化または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミドもしくはスルフェニルハライドを用いるインドール環のアルキル化によって修飾され得る。他方チロシン残基は、3-ニトロチロシン誘導体を形成するテトラニトロメタンを用いるニトロ化によって変化され得る。
【0080】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体を用いるアルキル化またはジエチルピロカーボネートを用いるN-カルボエトキシル化によって達成され得る。
【0081】
タンパク質合成の間に非天然アミノ酸および誘導体を取り込むことの例には、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のD-異性体の使用が含まれるがこれらに限定されない。本明細書中で意図される非天然アミノ酸のリストを表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
架橋剤は、例えば、ホモ二官能性架橋剤(例えばn=1からn=6の(CH2)nスペーサー基を有する二官能性イミドエステル、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシニミドエステルなど)、ならびにN-ヒドロキシスクシニミドおよび別の基特異的反応性部分のようなアミノ反応性部分を通常含むヘテロ二官能性試薬を使用して3Dコンホメーションを安定化するために、使用され得る。
【0084】
本発明の方法は、インビトロとインビボの両方で機能する内皮細胞の調節を意図する。好ましい方法はインビボで個体を処置することであるが、それにも関わらず、本発明の方法はインビトロ環境において適用されることが望ましいかもしれないことが理解されるべきである。例えば、ドナー移植片において、宿主へのその導入に先立って、本発明の方法に従う内皮細胞増殖を誘導することによって血管形成を開始することを追求し得る。別の例において、培養中の内皮細胞の集団を、処置を受けている被験体へのそれらの局在化された導入の前に拡大することを追求し得る。なお別の例において、本発明の方法は細胞株を作製するために利用され得る。
【0085】
従って、本発明の別の局面は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法に関し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、この内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的な特徴を調節する。
【0086】
より特定には、方法は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の血管内皮細胞機能的特徴を調節することに関し、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、この内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的な特徴を調節する。
【0087】
さらにより特定には、血管内皮細胞はCD34+内皮細胞である。
【0088】
好ましくは、機能的特徴は以下の1つまたはそれ以上である。
(i)生存可能であるが静止状態の維持
(ii)適切な刺激条件下で分化する能力(例えばCD34+前駆細胞状態からより成熟した内皮細胞表現型への成熟)
(iii)増殖する能力
(iv)活性化状態における生存度の維持
(v)細胞表面分子発現を調節する能力、例えば接着分子発現など(例えば成熟または活性化状態の指示剤として)
(vi)サイトカイン刺激に応答する能力
(vii)好中球を結合する能力
(viii)炎症誘発性および/または血管形成表現型に分化する能力。
【0089】
本発明はまた、1つまたはそれ以上の血管内皮細胞機能的特徴を調節する方法を提供し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、通常の内皮細胞機能的特徴と比較して、スフィンゴシンキナーゼキナーゼのレベルをアップレギュレートすることがこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0090】
1つの好ましい態様において、哺乳動物における血管内皮細胞の増殖を調節する方法が提供され、この方法は、哺乳細胞においてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、通常の内皮細胞の増殖と比較して、この血管内皮細胞の増殖を向上させる。
【0091】
別の好ましい態様において、哺乳動物における血管内皮細胞の生存度を調節する方法が提供され、この方法は、哺乳細胞においてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、通常の内皮細胞の生存度と比較して、この内皮細胞の生存度を向上させる。
【0092】
なお別の好ましい態様において、哺乳動物におけるCD34+内皮細胞前駆細胞表現型を調節する方法が提供され、この方法は、哺乳細胞においてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することがCD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持する。
【0093】
本発明のさらなる局面は、疾患状態または他の望ましくない状態の処置および/または予防に関連する本発明の使用に関する。本発明を任意の1つの理論または作用の様式に限定するものではないが、内皮細胞の増殖、生存度、および前駆細胞CD34+内皮細胞表現型の維持の向上、ならびに内皮細胞の炎症性表現型および血管形成表現型の調節を容易にする方法論の開発が、インビトロまたはインビボのいずれかにおいて内皮細胞集団を迅速かつ効率的に拡大する手段を提供する。例えば、これらの細胞の生存度が向上され得るという事実は、理想的な環境因子が存在しないかもしれない状況において本発明を特に有用にする。この点に関して、本発明者らは、これにより内皮細胞の特に強固な集団を生成する手段を開発した。特に好ましい態様において、本発明の方法は、血管移植片を確立するため、組織もしくは器官の移植片の血管新生を誘導するかもしくは播種するため、またはアミロイド斑沈着の領域などのような血管が破壊された領域の血管新生を誘導するために利用され得る。別の例において、本発明の方法は、望ましい生存または成熟の条件を提供するためにスフィンゴシンキナーゼ過剰発現によって誘導される表現型の特色を必要とし得る内皮細胞を介して血管系に薬物を送達するために利用され得る。さらに、未成熟の内皮細胞の集団を維持することは、このような細胞が、たとえ非血管細胞系統でも特定の細胞系統に沿ってそれらの刺激および分化(例えば筋肉細胞への分化)を容易にするために必要とされる程度まで有用であり得る。スフィンゴシンキナーゼ過剰発現はこの文脈において有用である。なぜなら、未成熟の増殖している内皮細胞の集団が効果的な様式で維持され得るからである。なおさらに、炎症性状態(例えば関節リウマチ)における炎症性表現型および/または血管形成表現型のダウンレギュレーションが望ましい。
【0094】
それゆえに本発明は、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法を意図し、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴をアップレギュレートする。
【0095】
「異常なまたはさもなくば望ましくない内皮細胞機能」との言及は、活性よりも下の細胞機能、過剰に活性である内皮細胞機能、機能が低すぎる不適切な生理学的には正常な機能、または機能の非存在に対する言及として理解されるべきである。この点に関して、「機能」との言及は、本明細書中上記に規定した任意の1つまたはそれ以上の通常の機能的特徴に対する言及として理解されるべきである。「不適切な機能」との言及はまた、内皮細胞経路に沿って分化するために不十分な数の前駆細胞の存在に対する言及を含むと理解されるべきである。例えば、創傷治癒および組織/器官移植などのような特定の状況において、内皮細胞経路に沿って分化するために利用可能である非常に低いレベルのCD34+前駆細胞が存在し得る。本発明の方法は、増殖の開始に関わらず、内皮細胞前駆細胞拡大を生成する手段のみならずこれらの前駆細胞の集団を維持する手段もまた提供する。
【0096】
より詳細には、本発明は、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない血管内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法を提供し、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴をアップレギュレートする。
【0097】
好ましくは、状態は、血管移植、創傷治癒および組織/器官移植、または血管が破壊された組織の修復であり、スフィンゴシンキナーゼの調節はアップレギュレーションである。最も好ましい態様において、アップレギュレートされた機能的特徴は、向上した内皮細胞増殖、向上した内皮細胞生存度、および/またはCD34+内皮細胞前駆細胞表現型の維持の1つまたはそれ以上である。
【0098】
別の好ましい態様において、状態は炎症性状態であり、スフィンゴシンキナーゼ調節はダウンレギュレーションである。最も好ましくは、ダウンレギュレートされた機能的特徴は内皮細胞の炎症性表現型および/または血管形成表現型のダウンレギュレーションである。
【0099】
なお別の好ましい態様において、状態は望ましくない血管形成によって特徴付けられ、スフィンゴシンキナーゼの調節はダウンレギュレーションである。最も好ましくは、ダウンレギュレートされた機能的特徴は内皮細胞血管形成表現型であり、状態は腫瘍である。
【0100】
最も好ましい態様において、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない血管内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法が提供され、この方法は、哺乳動物に、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節するのに十分な時間の間、およびそのために十分な条件下で有効量の薬剤を投与する段階を含む。
【0101】
「薬剤」との言及は、本明細書中上記に規定したのと同じ意味を有すると理解されるべきである。しかし、本発明のこの局面の文脈において、「薬剤」との言及はまた、本発明の方法に従って処理された内皮細胞の集団に対する言及としても理解されるべきである。例えば、不適切な血管内皮細胞機能によって特徴付けられる状態を予防的または治療的に処置することは、本発明の方法に従って入手可能である改善された機能的特徴の1つまたはそれ以上を示す内皮細胞の集団を患者に導入することによって達成され得る。例えば、適切に処理されたCD34+内皮細胞前駆細胞の集団は、創傷修復の部位または異常な血管破壊の部位(例えばアミロイド斑が沈着している場所で起こる)のような血管再生を必要とする部位に導入され得る。
【0102】
「有効量」は、望ましい応答を保持するか、または発症を遅らせるかもしくは進行を阻害するか、または処置された特定の状態の発症もしくは進行を全体的に中断するために、少なくとも部分的に必要である量を意味する。その量は、処置される個体の健康状態および身体的な状態、処置される個体の分類学的なグループ、所望される保護の程度、組成物の処方、医学的状況の評価、および他の関連する因子に依存して変化する。その量は日常的な治験を通して決定され得る比較的広い範囲に収まることが予想される。
【0103】
本明細書中における「処置」および「予防」に対する言及は、その最も広い文脈にあると見なされるべきである。用語「処置」は、被験体が全体的な回復まで処置されることを必ずしも意味しない。同様に、「予防」は、被験体が疾患状態に最終的に罹患しないことを必ずしも意味しない。従って、処置および予防には、特定の状態の徴候の寛解または特定の状態を発症するリスクを妨害もしくはさもなくば減少されることが含まれる。用語「予防」は、特定の状態の重篤度の減少または発症を減少させることと見なされ得る。「処置」はまた、すでに存在している状態の重篤度を減少させ得る。
【0104】
本発明はさらに、治療の組み合わせ(例えば、他のタンパク質性または非タンパク質性の分子と一緒に行う調節薬剤の投与など)を意図し、これは望ましい治療的なまたは予防的な結果を容易にし得る。
【0105】
本明細書中上記に記載した本発明の分子[本明細書中では集合的に「調節薬剤」といわれる]の投与は、薬学的組成物の形態で、任意の便利な手段によって実行され得る。この薬学的組成物の調節薬剤は、特定の場合に依存する量で投与された場合に治療活性を示すことが意図される。バリエーションは、例えば、ヒトまたは動物に、および選択された治療薬剤に依存する。広い範囲の用量が適用可能であり得る。患者を想定すると、例えば、約0.1mgから約1mgまでの調節薬剤が1日当たり体重1キログラム当たりに投与され得る。投薬レジメは最適な治療応答を提供するように調整され得る。例えば、いくつかの分割された用量が毎日、毎週、毎月、もしくは他の適切な時間間隔で投与され得るか、または用量は状況の緊急性によって示されるのに応じて比例的に減少され得る。
【0106】
調節薬剤は、例えば経口、静脈内(水溶性である場合)、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、または坐剤の経路または移植(例えば、徐放性分子を使用して)などのような便利な様式で投与され得る。調節薬剤は、酸付加塩または金属複合体、例えば、亜鉛、鉄などとの塩(これらは本願の目的のための塩と見なされる)のような薬学的に許容される非毒性塩の形態で投与され得る。このような酸付加塩の例は、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩などである。活性成分が錠剤型で投与されるべきである場合、その錠剤は、トラガカント、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤;アルギン酸などの崩壊剤;およびステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含み得る。
【0107】
投与の経路には、呼吸器、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、皮内、筋肉内、眼内、くも膜下腔内、脳内、鼻腔内、注入、経口、直腸、IVドリップパッチを介して、および移植が含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、投与の経路は経口である。
【0108】
これらの方法に従って、本発明に従って規定される薬剤は1つまたはそれ以上の他の化合物または分子と同時投与され得る。「同時投与される」は、同じかまたは異なる経路を介する同じ処方物または2つの異なる処方物中での同時の投与、あるいは同じかまたは異なる経路による連続的な投与を意味する。例えば、対象のスフィンゴシンキナーゼはその効果を向上させるためにアゴニスト性薬剤と共に投与され得る。代替として、器官組織移植の場合において、スフィンゴシンキナーゼは免疫抑制薬物と共に投与され得る。「連続的」投与は、2つの型の分子の投与の間の秒、分、時間、または日数の時間の違いを意味する。これらの分子は任意の順序で投与され得る。
【0109】
本発明の別の局面は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節可能である薬剤の使用に関し、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0110】
別の局面において、本発明は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造におけるスフィンゴシンキナーゼまたはスフィンゴシンキナーゼをコードする核酸の使用に関し、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0111】
これらの好ましい態様に従って、対象の内皮細胞は好ましくは血管内皮細胞であり、さらにより好ましくはCD34+血管内皮細胞である。
【0112】
さらにより好ましくは、医薬は、本明細書中上記に記載された異常なまたは望ましくない内皮細胞機能によって特徴付けられる状態を処置するために使用される。
【0113】
用語「哺乳動物」および「被験体」は、本明細書中で使用される場合、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ)、実験用試験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ)、および捕獲される野生動物(例えば、キツネ、カンガルー、シカ)を含む。好ましくは、この哺乳動物はヒトまたは実験用試験動物である。さらにより好ましくは、この哺乳動物はヒトである。
【0114】
なお別のさらなる局面において、本発明は、本明細書中上記に規定したような調節薬剤および1つもしくはそれ以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む薬学的組成物を意図する。薬剤は活性成分といわれる。
【0115】
注射可能な使用のために適切な薬学的形態は、滅菌した水溶液(水溶性の場合)もしくは懸濁物、および滅菌した注射可能な溶液もしくは懸濁液の即席の調整のための滅菌した粉末を含み、またはクリームの形態もしくは局所的適用のために適切な他の形態であり得る。これは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌のような微生物の夾雑作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の妨害は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)によってもたらされ得る。多くの場合において、等張剤(例えば、糖および塩化ナトリウム)を含めることが好ましい。注射可能な組成物の吸収の延長は、組成物中での吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によってもたらされ得る。
【0116】
滅菌した注射可能な溶液は、上記に列挙された種々の他の成分と共に適切な溶媒中に必要とされる量の活性成分を取り込むこと、必要な場合、その後のフィルター滅菌によって調製される。一般的に、分散物は、種々の滅菌された活性成分を、基本分散媒体および上記に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルに取り込むことによって調製される。滅菌された注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製の方法は、事前にフィルター滅菌されたその溶液から活性成分および任意の付加的な所望される成分の粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0117】
活性成分が適切に保護される場合、それらは例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用の担体と共に経口投与され得、またはハードシェルまたはソフトシェルのゼラチンカプセル中に封入され得、または錠剤中に圧縮され得、または食物と共に直接的に取り込まれ得る。経口治療的投与のために、活性化合物が賦形剤と共に取り込まれ得、および消化可能な型の錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁物、シロップ、ウェハースなどにおいて使用される。このような組成物および調製物は重量で少なくとも1%の活性化合物を含むべきである。組成物および調製物のパーセンテージは、当然変化され得、および好都合には、単位の重量の約5%から約80%までの間であり得る。このような適切な投薬量におけるこのような治療的に有用な組成物における活性化合物の量が得られる。本発明に従う好ましい組成物または調製物は、経口投薬量単位形態が約0.1μgから2000mgの間の活性化合物を含むように調製される。
【0118】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどはまた、本明細書以後に列挙されるような成分を含み得る:アラビアガム、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびスクロース、ラクトース、もしくはサッカリンなどの甘味料、またはペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリー香料などの香料が加えられ得る。投薬単位形態がカプセルである場合、それは上記の型の物質に加えて液体担体を含み得る。種々の他の物質が、コーティングとしてまたはさもなくば投薬単位の物理形態を修飾するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルがセラック、糖、または両方でコートされ得る。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味料としてのスクロース、保存料としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにチェリー香料またはオレンジ香料などの香料を含み得る。当然、任意の投薬単位形態を調製する際に使用される任意の物質は、薬学的に純粋であり、かつ利用される量で実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、徐放性の調製物および処方物に取り込まれ得る。
【0119】
薬学的組成物はまた、例えば標的細胞にトランスフェクト可能であるベクターなどの遺伝的分子を含み得、ここでこのベクターはスフィンゴシンキナーゼまたは本明細書中上記に規定された調節薬剤をコードする核酸分子を有する。このベクターは、例えばウイルスベクターであり得る。薬学的組成物はまた、本発明の方法に従って処理された内皮細胞集団を含み得る。
【0120】
本発明のなお別の局面は、内皮細胞を生成する方法に関し、この内皮細胞は、通常の内皮細胞機能的特徴と比較して1つまたはそれ以上の機能的特徴の調節によって特徴付けられ、方法は、細胞中でスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルの過剰発現を誘導する段階を含む。
【0121】
本発明のなお別の局面は、本明細書中に規定された方法に従って生成される内皮細胞に関する。
【0122】
本発明のなおさらに別の局面は、不適切な内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防における、本明細書中に規定された方法に従って開発された内皮細胞の使用に関する。
【0123】
本発明のさらなる特色は、以下の非限定的な図面および実施例においてより完全に記載される。
【0124】
実施例1
上昇した細胞内レベルのスフィンゴシンキナーゼはPECAM-1の標的化された調節を通して細胞の生存を向上させる
材料および方法
HUVECのトランスフェクション
HUVECを、50g/ml内皮増殖補充物(Collaborative Research, MA, USA)および50g/mlヘパリン(Sigma, St Louis, Missouri, USA)を補充した培地を用いて、以前に記載されたように(Litwin M, Clark K, Noack L, Furze J, Berndt M, Albelda S et al. (1997) J Cell Biol 139(1):219-228)単離および培養した。
【0125】
アデノウイルス産生およびSKを過剰発現するHUVECの生成
Qbiogen Version 1.4 AdEasy(商標)Vectorシステムマニュアル(http:www.qbiogene.com/products/adenovirus/adeasy.shtml)に従って、AdEasyシステムを使用してSK(または空のベクターEV)を有する組換えアデノウイルスを産生した。293細胞を、25cm2フラスコ中で、10%ウシ胎仔血清(FCS)を含む完全Dulbecco改変Eagle培地(CSL Biosciences, Parkville, Australia)中で培養した。ウイルスを293細胞中で増幅し、塩化セシウム勾配上で遠心分離を用いて精製した。ウイルス力価を、製造業者のプロトコールに従って、TCID50法を使用して決定した。HUVECの一過性トランスフェクションを、SKまたはEVのアデノウイルス調製物を用いて、同様のレベルのGFP発現を生じる等価なプラーク形成単位(pfu)/細胞を使用する感染によって達成した。
【0126】
細胞をトランスフェクションの24-72時間後に機能的アッセイのために使用した。SKの過剰発現をウェスタンブロットとSK活性アッセイの両方を用いて確認した。
【0127】
ウェスタンブロッティング
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を、12%アクリルアミドゲルを使用して、細胞溶解物に対して、記載されるように実行した(Pitson SM, Moretti PA, Zebol JR, Xia P, Gamble JR, Vadas MA et al. (2000) J Biol Chem; 275(43):33945-33950)。タンパク質をPVDFメンブレンに転写し、0.1% Tween20を有するPBS中の5%低脂肪乳中で1時間ブロックし、そしてM2マウス抗FLAG抗体(Sigma, St Louis, MO)、ウサギポリクローナル抗ホスホ-Akt(Cell Signaling Technology)、ウサギポリクローナル抗Akt(Cell Signaling Technology)、抗ホスホチロシン(Cell Signaling Technology)を用いて4℃で一晩、あるいはマウス抗サイクリンD1もしくはマウス抗サイクリンE(Santa Cruz Biotechnology)、またはThe Hanson Institute, Adelaide, Australiaにおいて惹起されたPECAM-1に対するマウスモノクローナル抗体(51-6F6)を用いて室温で1時間、インキュベートした。このメンブレンを西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化抗マウスIgG(Pierce)または抗ウサギIgG(Pierce)と共にインキュベートし、そして免疫複合体を、増強した化学発光(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して検出した。
【0128】
SK活性
SK活性を以前に記載されたように測定した(Xia P, Gamble JR, Rye KA, Wang L, Hii CS, Cockerill P et al. (1998) Proc Natl Acad Sci U S A; 95(24):14196-14201)。手短に述べると、D-エリスロスフィンゴシンおよび[-32]ATPを基質として使用し、および全細胞溶解物と共にインキュベートした。標識された脂質を抽出し、TLCによって分離した。放射活性スポットをPhosphoimageシステムによって定量した。
【0129】
蛍光活性化セルソーティング(FACS)
PECAM-1およびVE-カドヘリンの細胞表面発現のフローサイトメトリー分析を、本発明者らの研究室において生成された、PECAM-1またはVE-カドヘリンに対する10g/mlマウスモノクローナル一次抗体(51-6F6または55-7H1)を使用して(Gamble JR, Khew-Goodall Y, Vadas MA. (1993) J Immunol; 150(10):4494-4503)、以前に記載されたように実行した(Xia P, Gamble JR, Rye KA, Wang L, Hii CS, Cockerill P et al. (1998)前出)。使用した二次抗体は、ヤギ抗マウスIgG R-フィコエリトリン結合体であった(Southern Biotech Birmingham, AL, USA)。メジアン蛍光強度を、Coulter Epics Profile XLフローサイトメーターを使用して測定した。CD34の細胞表面発現のFACS分析を、1×106細胞を10Lの抗CD34、R-フィコエリトリン(R-PE)結合マウス抗ヒトmAb(BD Pharmingen, San Diego, CA)と共に室温で30分間インキュベートすること、および次いでメジアン蛍光強度を測定することによって行った。
【0130】
カスパーゼ-3活性の測定
細胞溶解物を、カスパーゼ-3溶解緩衝液(10% NP-40, 1M Tris-HCL, 1M EDTA)を使用して、記載されるように調製した(Laemmli UK. (1970) Nature; 227(259):680-685)。10Lの溶解物を96ウェルトレイに配置した。10mLのカスパーゼ-3緩衝液(12g/L Hepes、100g/L スクロース、1g/L Chaps, pH 7.4)を15.45mg DL-ジチオスレイトール(Sigma, St Louis, USA)および10Lの2.5mM DEVD-AFC基質(Calbiochem-Novabiochem, Darmstadt, Germany)と共に混合した。この混合物(200L)を各ウェルに加え、5時間インキュベートした。蛍光をウェルプレートリーダーを用いて測定し(励起波長および発光波長は385nmおよび460nm)、タンパク質濃度について標準化した。
【0131】
アポトーシス性細胞の免疫蛍光染色
細胞をフィブロネクチンコートしたLabTekスライドにウェル当たり6×104細胞で、種々の濃度のFCSを含む培地中で播種し、および37℃で24時間インキュベートした。この細胞を150L DAPI-メタノール(Roche, Manheim, Germany)と共に37℃で15分間インキュベートし、次いでメタノールで洗浄した。アポトーシス性細胞は、フラグメント化された核を非常に明るく染色する免疫蛍光顕微鏡法によって可視化されたのに対して、生細胞はインタクトな核を有し、強くない染色を有した。連続する視野におけるアポトーシス性細胞のパーセンテージを計算した。
【0132】
細胞浸透性
内皮細胞を、フィブロネクチンコートした3.0mトランスウェルにウェル当たり10×104細胞で播種し、600Lの培養培地をトランスウェルの底に加えた。FITCデキストラン(500g/mL)を各トランスウェルに加え、次いで20Lの培地を所定の時点で各トランスウェルの底から収集し、およびウェル当たり60Lの無血清培地を含む96ウェルマイクロタイタートレイに分配した。蛍光を、ウェルプレートリーダーを使用して、485nmおよび530nmの励起波長および発光波長を使用して測定した。
【0133】
細胞生存
内皮細胞を、無血清培地中、ウェル当たり3×103細胞で、ゼラチンコートした96ウェルマイクロタイタートレイに配置した。MTS(Promega, WL, USA)を使用して細胞生存度を測定した。490nmにおける光学密度を0日目、1日目、2日目、および3日目に測定した。
【0134】
細胞懸濁物
細胞を、組織培養用でない、1%ウシ血清アルブミンでコートした非接着性の96ウェルマイクロタイタートレイにおいて、ウェル当たり8×103細胞で、無血清培地中で上記のようにプレーティングした。光学密度を、上記のようにMTSを使用して0日目、1日目、2日目、および3日目に測定した。
【0135】
結果
SKの過剰発現はSK活性を向上した
内皮細胞機能に対するSKの過剰発現の効果を決定するために、HUVECを、1pfu/細胞でSKを含むアデノウイルスで感染させた。1pfu/細胞でのHUVECの感染は、対象に対してSK活性の5.17(95% CI 4.86-5.51)倍の増加を生じ、これは統計学的に有意であった(p 0.001)。
【0136】
スフィンゴシンキナーゼの過剰発現は細胞生存および懸濁物中の生存を向上する
細胞生存を、ECGを補充した無血清培地中で、および1%ウシ血清アルブミンでコートした非組織培養非接着性トレイ中で、無血清培養条件下で測定した。
【0137】
SKを過剰発現する細胞は、無血清条件において(図1a)および懸濁物中で増殖した場合に(図1b)、対象細胞と比較して向上した生存を示した。プレーティングの24時間後、SKを過剰発現する細胞の数が増加した。プレーティングの48時間後でさえ、対照細胞と比較して、SF条件下または非接着条件のいずれかにおいてSKを過剰発現するより多くの細胞が生存した。対照的に、EV細胞の細胞数は24時間の間維持されたが、その後急速に減少した。SKを過剰発現する細胞は、懸濁物中で凝集体を形成することが顕微鏡によって可視化され、これは対照細胞によって形成されるものよりもより広範囲であった。サイクリンEおよびDの測定は、EV細胞と比較してSKを過剰発現する細胞間のレベルの変化を示さず(図1c)、従ってこのことは、SKを過剰発現する細胞において見られる数の変化が抗アポトーシス性効果に起因し得ることを示唆した。
【0138】
SKの過剰発現は血清欠乏誘導性アポトーシスに対する抵抗性を付与する
SKを過剰発現する細胞における血清欠乏誘導性アポトーシスに対する抵抗性を、基本条件下および血清欠乏の24時間後にDAPI染色を実行することによって確認した。図2は、基本条件下で、SKを過剰発現する細胞と対照との間のアポトーシス性細胞の数の違いが存在しなかったことを示す。血清欠乏を用いると、対照細胞はアポトーシス性細胞の数の大きな増加を伴って応答したのに対して、SKを過剰発現する細胞の間では、無視できる数のアポトーシス性細胞が存在した。
【0139】
DAPI染色の結果を、基本条件下および24時間の血清欠乏に応答したカスパーゼ-3活性の測定によって確認した。SKの過剰発現が基本カスパーゼ-3活性を有意に減少すること(図3a)、および血清欠乏によって誘導されるカスパーゼ-3活性化に対するさらなる抵抗性を付与すること(図3b)を示した。
【0140】
SKの過剰発現はPI-3K/Akt経路を活性化する
増殖因子などの生存因子および細胞外マトリックスへの付着は、PI-3K/Akt経路を含む多数の経路を通して細胞生存に影響を与える。この経路がSKの過剰発現によって誘導される生存の増加に関与するか否かを決定するために、Aktのリン酸化を評価した。図4(a)において示されるように、基本条件下では、対照と比較してSKを過剰発現する細胞においてリン酸化されたAKT(p-Akt)のパーセンテージの有意な違いは存在しなかった(p=0.47)。血清欠乏に応答したAktのリン酸化の減少がEV細胞において見られた。しかし、SKを過剰発現する細胞は、Aktのリン酸化のさらなる増加による血清欠乏のストレスに応答した。従って、無血清条件において、SKを過剰発現する細胞は、対照よりも有意に多いAktのリン酸化を有し、このことはこの経路の活性化を示唆した。これは、5つの別々の内皮細胞株において、ImageQuantソフトウェアによって確認および定量した(図4(b))。
【0141】
PI-3キナーゼ経路はSK誘導性細胞生存を媒介する
PI-3KはAkt活性化の上流の既知のレギュレーターであり、従って、SK媒介細胞生存に対するPI-3Kを阻害すること(LY294002を用いる)の効果を調べた。SK誘導された細胞生存はLY294002の存在下で消滅したが、MAPK経路の2つのインヒビター、UO126またはPD98059のいずれかの存在下では消滅しなかった(図5)。LY294002、UO126、およびPD98059がすべて対照細胞の細胞生存を有意に減少したのに対して、SKを過剰発現する細胞は細胞生存の減少を伴ってLY294002に応答したが、UO126またはPD98059には応答しなかった。このことは、SK誘導性細胞生存がPI-3K経路を通して媒介されること、およびMAPK経路は関与していないことを示す。このことは、MAPK経路およびPI-3K/Akt経路を含むS1P媒介性細胞生存と対照的である。
【0142】
スフィンゴシンキナーゼはPECAM-1発現および脱リン酸化を誘導する
SKの過剰発現は、フローサイトメトリーによって測定されるように、対照と比較してPECAM-1の細胞表面発現を有意に増加した(図6a)。これはウェスタンブロットによって確認された(図6b)。外因性S1Pを用いる通常のHUVECの刺激は、PECAM-1発現を誘導しなかった。しかし、他のジャンクションタンパク質カテニンでは変化が存在せず(図6b)、VEカドヘリンでは少ない減少が存在した(図6d)。
【0143】
内皮細胞においてPECAM-1はチロシン残基上でリン酸化され、リン酸化はPECAM-1の調節の1つの方法である。従って、PECAM-1のリン酸化がウェスタンブロットによって測定された。スフィンゴシンキナーゼの発現の向上はPECAM-1のリン酸化を有意に減少した(図6c)。3つの別々の内皮細胞株において、対照と比較した、SKを過剰発現する細胞についてリン酸化されたPECAM-1の割合の平均倍数パーセント減少は48%であった(95% CI 28-63%)、p=0.054。
【0144】
PECAM-1はまた、ジャンクション浸透性の調節のために重要な細胞-細胞相互作用を媒介することに関与している。PECAM-1発現の増加およびPECAM-1のリン酸化の減少と一致して、SKを過剰発現する細胞は、対照細胞よりも低い基礎的な浸透性を示したが(図7a)、これらは既知の浸透性の刺激因子であるトロンビンに対して正常に応答した(図7b)。
【0145】
SK誘導された生存はPECAM-1によって媒介される
PECAM-1の発現および調節の変化を考慮して、PECAM-1を、懸濁物中および無血清条件中の両方においてSK誘導性内皮細胞生存の原因であるかについて試験した。ウサギポリクローナル抗PECAM-1抗体は、無血清条件中および懸濁物中の両方においてSKを過剰発現する細胞の生存を有意に減少させたのに対して、通常のウサギ血清はSKを過剰発現する細胞または対照細胞のいずれかに対して効果を有しなかった(図8a、b)。VE-カドヘリンに対するマウスモノクローナル抗体(55-7H1)はSKを過剰発現する細胞(p=0.61)または対照細胞(p=0.69)の生存を減少させることに効果を有しなかった。このことは、懸濁物中でのSK誘導性の生存する能力はPECAM-1によって媒介され、別のジャンクション分子VEカドヘリンを通してではないことを示す。
【0146】
SKはPECAM-1を通してPI-3キナーゼ経路を活性化するようにシグナル伝達する
全体のAktおよび活性型のAkt(リン酸化されたAkt)を基本条件下で、6時間の血清欠乏に応答させて、ウェスタンブロットによって測定した。結果を図9(a)に示し、定量化を図9(b)に示す。血清欠乏に応答したAkt経路のSK媒介活性化を再度実証する。ウサギポリクローナル抗PECAM-1抗体は、SKを過剰発現する細胞についてのAktのリン酸化のストレス誘導性増加を対象レベルにまで減少させたが(しかし正常ウサギ血清は減少させなかった)、対照細胞には効果を有しなかった。
【0147】
SK媒介性細胞生存はGPCRに作用するS1Pによって媒介されない
SKの下流のエフェクターであるS1PはEDGレセプター(百日咳毒素感受性Gタンパク質共役レセプターのメンバー)を通して細胞生存を媒介する。SKの過剰発現がS1Pの分泌の増加をもたらし、次いで外因性に作用することが可能であるか否か、またはSKそれ自体がS1Pの細胞外生成に伴って放出されるか否かを決定するために、百日咳毒素を用いてGPCRを阻害することの細胞生存への効果を試験した。SK媒介性細胞生存は百日咳毒素の存在下では阻害されず(図10)、S1Pの作用の細胞内部位と一致した。外因性に加えられたS1PはPECAM-1発現またはそのリン酸化状態(データ示さず)のレベルのいずれかに効果を有しなかった。このことは、EDG活性化が細胞生存のPECAM-1媒介性変化に関与しないことをさらに示唆する。
【0148】
実施例2
炎症および血管形成の調節のための新しい標的としてのスフィンゴシンキナーゼ
方法
HUVEC培養
HUVECを、50μg/ml内皮増殖補充物(Collaborative Research, MA, USA)および50μg/mlヘパリン(Sigma, St Louis, Missouri, USA)を補充した培地を使用して、以前に記載されたように(Litwin M, et al. (1997)前出)単離および培養した。
【0149】
アデノウイルス産生および一過性細胞株の生成
Qbiogeneバージョン1.4 AdEasy(商標)Vectorシステムマニュアル(http:www.qbiogene.com/products/adenovirus/adeasy.shtml)に従って、AdEasyシステムを使用してSK、G82D、または空のベクター(EV)を有する組換えアデノウイルスを産生した。293細胞を、Dulbecco改変Eagle培地(CSL Biosciences, Parkville, Australia)中で培養した。ウイルスを293細胞中で増幅し、塩化セシウム勾配上で遠心分離を用いて精製した。ウイルス力価を、製造業者のプロトコールに従って、TCID50法を使用して決定した。HUVECの一過性トランスフェクションを、SKまたはEVのアデノウイルス調製を用いて、GFP発現の同様のレベルを生じる等価なプラーク形成単位(pfu)/細胞を使用する感染によって達成した。
【0150】
レトロウイルス産生および安定な細胞株の生成
FLAG-エピトープタグ化されたSK、G82D(Pitson SM, et al. (2000)前出)、または構築物なし(EV)をベクターPrufNeo(Zannettino AC, Rayner JR, Ashman LK, Gonda TJ, Simmons PJ. (1996) J Immunol; 156(2):611-620)にクローニングした。レトロウイルス産生を、PrufNeo-SK、PrufNeo-G82D、またはPrufNeo-EVのリン酸カルシウムトランスフェクションによってBing細胞に行った。レトロウイルス上清を48時間で収集した。安定な細胞株をレトロウイルス上清を用いてHUVECに感染させることによって生成させ、続いて48時間、G418(Promega, Madison, WI, USA)を用いる選択を行った。SKの過剰発現を、ウェスタンブロットおよびSK活性アッセイの両方を用いて確認した。
【0151】
ウェスタンブロッティング
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を、12%アクリルアミドゲルを使用して、細胞溶解物に対して、記載されるように実行した(Laemmli UK.(1970)前出)。タンパク質をPVDFメンブレンに転写し、0.1% Tween20を有するPBS中の5%低脂肪乳中で1時間ブロックし、そしてM2マウス抗FLAG抗体(Sigma, St Louis, Missouri, USA)を用いて4℃で一晩インキュベートした。このメンブレンを西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化抗マウスIgG(Pierce)と共にインキュベートし、そして免疫複合体を、増強した化学発光(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して検出した。SK活性を以前に記載されたように測定した(11)。手短に述べると、D-エリスロスフィンゴシンおよび[γ-32]ATPを基質として使用し、これを全細胞溶解物と共にインキュベートした。標識された脂質を抽出し、TLCによって分離した。放射活性スポットをPhosphoimageシステムによって定量した。
【0152】
蛍光活性化セルソーティング(FACS)
E-セレクチンおよびVCAM-1の細胞表面発現のフローサイトメトリー分析を、本発明者らの研究室において生成された、E-セレクチンまたはVCAM-1に対する10μg/mlマウスモノクローナル一次抗体(49-1B11または51-10C9)を使用して(Gamble JR, Khew-Goodall Y, Vadas MA (1993) 前出)、以前に記載されたように実行した(11)。使用した二次抗体は抗マウスフルオレセイン-イソチオシアネート、またはGFP-発現細胞については、ヤギ抗マウスIgG R-フィコエリトリン結合体(Southern Biotech Birmingham, AL, USA)であった。メジアン蛍光強度を、Coulter Epics Profile XLフローサイトメーターを使用して測定した。
【0153】
Matrigel中での管形成
96ウェルマイクロタイタートレイをMatrigel Basement Membrane Matrix(Beckton Dickinson Labware, Bedford, MA, USA)でコートした。内皮細胞をHUVE培地中で3×105細胞/mlの濃度で調製し、140μlを各ウェルに加えた。細胞を規則的な間隔で、管形成を観察するために顕微鏡によって可視化した。
【0154】
好中球接着アッセイ
HUVECを、フィブロネクチンコートされたLab-Tekスライドに、ウェル当たり3×104細胞で播種し、37℃で24時間インキュベートした。細胞を洗浄し、次いで好中球をウェル当たり1×105細胞で各ウェルに加えた。細胞を37℃で30分間インキュベートし、次いでいかなる接着していない好中球も3回洗浄することによって除去した。内皮細胞をメタノールで固定した。連続する視野における接着した好中球の数を顕微鏡によって測定した。
【0155】
統計学的分析
パラメトリックデータのためにスチューデントt検定を使用し、0.05未満のp値を有意であると見なした。比率についての有意差検定を、Statisticaバージョン6.1(Statsoft, Inc.)を使用するANOVA型回帰によって実行した。結果の測定値をすべてlog変換し、これは、予測値が常に正であることを保証し、選択されたベースラインに対する分析のメジアン倍数変化としての解釈を可能にした。分析の大部分は通常の直線回帰によって実行し、報告されたp値は適切な自由度を伴うt検定によって決定した。特定のベースラインに対する平均(μ)効果、およびそれらの付随する標準誤差(s.e.)を、回帰係数の適切な直線の対照によって決定した。log変換した結果のデータの分析のために、概算の大集団試料の95%信頼区間(CI)を以下の式:μ+/-1.96*s.e.を使用して得た。次いで、概算の95%CIを有するメジアン倍数変化(特定のベースラインと比較して)を、戻し変換(すなわち、累乗計算)によって得た。
【0156】
結果
SKの過剰発現はSK活性を増加する
SKの過剰発現の内皮細胞機能に対する効果を決定するために、HUVECに、SKを含むレトロウイルスまたはSKを含むアデノウイルスのいずれかを1pfu/細胞で感染させた。アデノウイルス感染のこのレベルが内皮細胞における内因性SKのTNFα刺激と同様のレベルのSK活性を生じるので(12)、およびレトロウイルス媒介遺伝子送達を用いて達成されたのと同様のSK活性のレベルであるので、このレベルを選択した。
【0157】
SKの過剰発現はHUVECにおける接着分子発現を変化させる
SKの過剰発現が内皮細胞の内因性表現型に変化を生じるか否かを決定するために、本発明者らは、これらの感染細胞上での接着分子発現を調べた。レトロウイルス媒介性のSKの過剰発現は基礎的なVCAM-1発現をアップレギュレートした(図11a)。レトロウイルス媒介性のSKの過剰発現は、図11bに示されるように、VCAM-1発現の同様の増加を生じた(p=0.052)。これは、使用した信頼区間が大集団試料信頼区間であったので、および自由度について調整しなかったので、統計学的な有意性には完全には達しなかった。統計学的有意性は、平均差としての(p=0.04)、またはノンパラメトリック検定の使用によるこのデータの分析によって達成された。VCAM-1と対照的に、基礎的なE-セレクチン発現は、レトロウイルス媒介トランスフェクション(n=4, p=0.44)またはアデノウイルス媒介トランスフェクション(n=3, p=0.71)によって生成されたSKを過剰発現する細胞において変化しなかった。SKの過剰発現が基礎レベルのVCAM-1を誘導したので、次に本発明者らは、これらの細胞がTNFαを用いる刺激に対して応答の変化を示すか否かを決定することを追求した。SKを過剰発現するHUVECを4時間TNFαで刺激し、接着分子発現を測定した。レトロウイルス媒介性送達またはアデノウイルス媒介性送達のいずれかを用いて達成されたSKの過剰発現が、通常のTNFα誘導性のVCAM-1発現のアップレギュレーションを有意に増強した(図11c、d)。興味深いことには、SKを過剰発現する細胞はまた、たとえ基礎的なEセレクチン発現が変化しなくても、TNFαを用いる刺激後のEセレクチン応答の増強を示した(図11e、f)。ドミナントネガティブなSK(G82D)の過剰発現は、EVを用いるのと比較して、TNFαに応答してVCAM-1およびEセレクチンの誘導を有意に阻害した(それぞれ図11c、e)。
【0158】
細胞が、対照においてVCAM-1およびEセレクチンをアップレギュレートすることに失敗した閾値下の用量のTNFαで刺激された場合、有意なレベルの両方の接着分子が、SKを過剰発現する細胞において誘導された(図12a、b)。SKを過剰発現する細胞におけるTNFαによるVCAM-1発現の誘導は、3回の別々の実験において、EV細胞よりも4.42(95% CI 1.51-12.94)倍高かった(p<0.05)。2つの別々の内皮細胞株において、TNFαによるEセレクチン発現の誘導は、EV細胞を用いるのと比較してSKを過剰発現する細胞において1.7倍および3.1倍高かった。TNFαによる内皮細胞でのEセレクチンの誘導は、4-6時間でピークとなり、18-24時間までにほぼ基礎レベルまで低下する(Gamble JR, Khew-Goodall Y, Vadas MA. (1993)前出;Gamble JR, Harlan JM, Klebanoff SJ, Vadas MA. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82(24):8668-8671)。SKの過剰発現がこの時間経過を変化させるか否かを決定するために、SKまたはEVを有するレトロウイルスで感染させた細胞を0.5ng/mLのTNFαで18時間処理し、Eセレクチンの細胞表面発現を測定した。代表的な結果を表2に示す。4つのこのような株において、EV細胞と比較して、SKを過剰発現する細胞において、TNFαでの刺激の18時間後に2.01(95% CI 1.14-3.53)倍のEセレクチン発現の増加が存在した(p=0.11)。G82Dの過剰発現はこの応答の有意な阻害を生じた(対照より上の平均倍数増加0.44、95% CI 0.25-0.92、p=0.014)。同様の結果がアデノウイルス媒介遺伝子移入を用いて得られた。SKのレトロウイルス送達およびアデノウイルス送達はECの同様の表現型を生じ、これは接着分子の発現の増強およびTNFαに対する応答の変化であった。しかし、アデノウイルス系は多数の細胞が迅速に生成されることを可能にし、それゆえにこの方法が将来の実験のために使用された。
【0159】
SKの細胞内過剰発現の効果はS1Pレセプターを通して媒介されるのではない
接着分子のS1P誘導性アップレギュレーションの原因であるEDGレセプターは百日咳毒素感受性であることが知られており、これがGタンパク質共役レセプターであることと一致している。これらの結果がEDGレセプターに逆向きに作用するS1Pの分泌によって説明され得るか否かを調べるために、細胞を百日咳毒素(50ng/ml)で処理し、接着分子発現を測定した。百日咳毒素は、SKまたはEVのいずれかを過剰発現する細胞において、基礎的なまたはTNFα誘導性のVCAM-1またはEセレクチンの発現を阻害しなかった(図13)。現実の事実として、2つの別々の内皮細胞単離物を使用して、百日咳毒素処理を用いて見られる接着分子発現の増強は存在しなかった。SKを過剰発現する細胞におけるTNFα誘導性接着分子応答の増強がEDGレセプターに作用するS1Pに起因するか否かを決定するために、細胞を百日咳毒素(50ng/ml)で18時間前処理し、次いで百日咳毒素の存在下で、TNFα(0.5ng/ml)で4時間刺激した。接着分子発現をこれらの細胞において測定した。2つの別々の内皮細胞株において、百日咳毒素を用いる前処理は、対照細胞またはSKを過剰発現する細胞において、TNFα誘導性のVCAM-1発現またはEセレクチン発現を変化させなかった (図13c、d)。S1Pの細胞内対EDGレセプター媒介性効果をさらに低下させるために、本発明者らは、SKを過剰発現する細胞を外因性S1P(5μM)を用いて4時間刺激した。SKを過剰発現する細胞とEVを過剰発現する細胞の両方が、VCAM-1およびEセレクチンの発現のアップレギュレーションによって、外因性に加えたS1Pに応答した。このことは、EDGレセプターが、図14に示されるように、なお正常に作用していたことを示唆する。S1P刺激に対するEセレクチン応答が、対照と比較して、SKを過剰発現する細胞において1.75(95% CI 1.4-2.18)倍高かった(p<0.001)ことが興味深く、このことは、SKの過剰発現が細胞をS1Pに感作させたことを示唆する。百日咳毒素は、SKを過剰発現する細胞における増強されたTNFα誘導性接着分子応答を阻害することに失敗したが、百日咳毒素での前処理は、SKを過剰発現する細胞およびEVを過剰発現する細胞の両方においてS1Pを用いる外因性刺激に対する応答を阻害した。このことはSKの細胞内の役割についてのさらなる支持を提供する。
【0160】
SKは内皮細胞への好中球の接着を増強する
SKの細胞内過剰発現から生じる接着分子発現の変化が機能的な結果を有するか否かを決定するために、内皮細胞への好中球接着を測定した。基礎的状態において、SKを過剰発現する細胞は有意な好中球接着を示し、これは、対照細胞が好中球を結合しなかったことと対照的である(図15a、b)。低用量のTNFα(0.04ng/ml)を用いる内皮細胞の刺激は、対照細胞における最小の好中球接着を生じたが(図15d)、SKを過剰発現する細胞への有意により高い接着を生じた(図15e)。PMN接着を媒介する際のSKについての役割と一致して、ドミナントネガティブなSKであるG82Dを過剰発現する内皮細胞は、TNFαを用いる刺激に応答するPMN接着を阻害した(図15c、f)。100内皮細胞当たりに接着した好中球の数の定量化を図16に示す。
【0161】
SKは管形成を促進する
毛細管様ネットワーク(管)に配列する内皮細胞の能力は血管形成のインビトロ相関物であり、血管形成は慢性の炎症性疾患の特徴的な特性である。それゆえに、SKの過剰発現がまた、内皮細胞の管を形成する能力を増強するか否かを決定することが追求された。内皮細胞を、複合体基底膜マトリックスであるMatrigelにプレーティングした。等しい数の、SKを過剰発現する細胞およびEVを過剰発現する細胞を播種し、細胞を単一の細胞集団として可視化した。播種から15分間以内に、SKを過剰発現する細胞はすでに再配列を開始したのに対して、EV細胞は組織化されないままであった。30分間までに、SKを過剰発現する細胞は、EV細胞と比較して管配列のより大きな証拠を示した(図17a、b)。1時間までに、SKを過剰発現する細胞による管形成は、EV細胞と比較して高度に発達した(図17c、d)。18時間までに(管形成が完了した時間)、SKを過剰発現する細胞およびEV細胞の両方は同様のパターンの管形成を示した。これらの結果は、SKの過剰発現が管形成の速度を刺激することを示す。
【0162】
【表2】
【0163】
表2は、SKまたは対照(EV)を有するレトロウイルスで感染させた細胞におけるメジアン蛍光強度(MFI)によって示されるような、基礎のおよび刺激された(4時間または18時間の間のTNFα 0.5ng/ml)Eセレクチン発現を示す。この表は、試験された4つの別々の内皮細胞株の代表的なものである単一の内皮細胞株からの結果を示す。
【0164】
当業者は、本明細書中に記載された発明が、具体的に記載されたもの以外のバリエーションおよび改変を受け入れ可能であることを認識している。本発明はすべてのこのようなバリエーションおよび改変を含むことが理解されるべきである。本発明はまた、個別にまたは集合的に、本明細書中で言及されるかまたは示されるすべての段階、特色、組成物、および化合物を、ならびに段階または特色の任意の2つまたはそれ以上の任意の組み合わせおよびすべての組み合わせを含む。
【0165】
参照文献
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】FCSの非存在下(a)ならびにFCSおよび細胞外マトリックスへの接着の両方の非存在下(b)における、光学密度によって反映されるようなSKまたはEVを過剰発現するHUVECの生存を示す画像である。(a)は9回の独立した実験に由来する43個の観察のプールしたデータを示し、(b)は0日目=1に標準化された2回の独立した実験からの10個の観察のプールしたデータを示す。0日目の対応するベクターと比較して*p<0.001であった。バーは95%信頼区間を表す。(c)は基本条件下(0.5%FCSを補充し、増殖因子を補充しない内皮基本培地中で24時間)、および増殖因子を用いる24時間の刺激に応答した場合の、SKを過剰発現する細胞および対照(EV)を過剰発現する細胞におけるサイクリンD1およびサイクリンEの発現を示す(ウェスタンブロットによって)。ロードしたFlt-1(VEGF-RI)を示す。
【図2】20%FCSを補充した培養培地(a)および無血清培地(b)中のSKを過剰発現する細胞および対照(EV)を過剰発現する細胞上で実行されたDAPI染色を示す画像である。アポトーシス性細胞は強いDAPIの核染色を示す。
【図3】基本培地条件下(a)、または24時間の血清欠乏後(b)に測定された、SKを過剰発現する細胞およびEV対照を過剰発現する細胞中のカスパーゼ-3活性のグラフ表示である。この図は、EV=1(a)またはEV=10(b)に標準化した、5つの別々の内皮細胞株からプールしたデータを示す。EVと比較して*p<0.05であった。バーは95%信頼区間を表す。
【図4】基本条件下、および6時間の血清欠乏(SF)に応答した、SKを過剰発現する細胞および対照を過剰発現する細胞におけるAkt(p-Akt)のリン酸化を示すウェスタンブロット画像である。図Xbは5つの別々の内皮細胞株からのプールしたデータを示し、無血清条件におけるEVと比較して*p 0.05 SKであった。バーはSEMを表す。
【図5】SK(密なドット)またはEV(まばらなドット)を過剰発現するHUVECの細胞生存に対する、10mM LY294002(LY)を用いるPI-3K経路、または20mM UO126(UO)もしくは20mM PD98059(PD)を用いるMAPK経路を阻害することの効果のグラフ表示である。DMSOの等価な濃度のビヒクル対照を示す。この図は、0日目=1に調整した、2回の別々の実験からの8個の観察のプールしたデータを示す。バーは95%信頼区間を表す。2日目のSKまたはEVを過剰発現する対応する未処理細胞と比較して*p<0.001であった。
【図6】PECAM-1に対するSKの過剰発現の効果を示す画像である。SKを過剰発現する細胞およびEV対照を過剰発現する細胞におけるメジアン蛍光強度(MFI)によって示されるPECAM-1の細胞表面発現を(a)に示す。この図は、EVに対して標準化された3回の別々の実験からのプールしたデータを示す。EVと比較して*p<0.01 SKであった。バーは95%信頼区間を表す。(b)はこれらの細胞におけるPECAM-1およびb-カテニン発現についてのウェスタンブロットを示す。(c)はSKを過剰発現する細胞および対照(EV)を過剰発現する細胞におけるPECAM-1リン酸化を示す。(d)はVEカドヘリンの細胞表面発現を示し、3回の別々の実験からのプールしたデータを表す。
【図7】基本条件下(a)またはトロンビン刺激(0.2単位/ml)に応答した場合(b)の、異なる時点にわたるSKを過剰発現する細胞およびEVを過剰発現する細胞のFITC-デキストランへの浸透性(時間=0に標準化)を示すグラフ表示である。(b)はトロンビンを用いる処理に応答したEVおよびSKの浸透性の比較を示し、すべての時点にわたって基本条件下でEVと比較して*p<0.001 SKであった。この図は、3回の別々の実験からの7個の観察のプールしたデータを示す。バーは95%信頼区間を表す。
【図8】懸濁物中(a)および無血清条件(b)におけるSK(密なドット)またはEV対照(まばらなドット)を過剰発現するHUVECの細胞生存に対するPECAM-1シグナル伝達を変化させることの効果のグラフ表示である。20mg/mlウサギポリクローナル抗PECAM-1抗体(RP)、20mg/ml正常ウサギ血清(NRS)、およびVEカドヘリンに対するモノクローナル抗体(55-7H1)(20mg/ml)の細胞生存に対する効果を示す。この図は、0日目=1に標準化した、2つの別々の実験からの10個の観察のプールしたデータを示す。バーは95%信頼区間を表す。2日目の未処理ベクターと比較して*p<0.001であった。
【図9】SK(密なドット)を過剰発現する細胞およびEV対照(まばらなドット)を過剰発現する細胞におけるPI-3K/Akt経路の活性化に対するPECAM-1シグナル伝達の効果のグラフ表示である。(a)は、血清欠乏の6時間後の基本条件下でリン酸化されたAkt(p-Akt)および全体のAktを測定するウェスタンブロットを示す。20mg/mlのウサギポリクローナル抗PECAM-1抗体(RP)および20mg/ml正常ウサギ血清(NRS)の効果を示す。(b)は(a)と同様に実行した4回の別々の実験からのリン酸化されたAktの定量のプールしたデータを示す。バーはSEMを表す。無血清条件における未処理のSK対未処理のEV、および無血清条件における未処理のSKと比較したRPで処理したSKで*p<0.05であった。
【図10】SK(密なドット)またはEV (まばらなドット)を過剰発現するHUVECにおける細胞生存に対する百日咳毒素(50ng/ml)を用いるGPCRを阻害する効果のグラフ表示である。(a)は0日目=1に標準化した2回の別々の実験からの8個の観察のプールしたデータを示す。2日目の未処理SKと比較して*p<0.05であった。バーは95%信頼区間を表す。(b)は2回の別々の実験からの6個の観察のプールしたデータを示す。バーはSEMを表す。未処理SKと比較して*p<0.05であった。
【図11】レトロウイルス(a,c,e)またはアデノウイルス(b,d,f)の感染によって達成された、SKを過剰発現する細胞、G82Dを過剰発現する細胞、および対照(EV)を過剰発現する細胞について、基本の(a,b)およびTNFα刺激された接着分子発現(c-f)を実証するグラフ表示である。VCAM-1発現はa-dに示され、Eセレクチン発現はe、fに示される。結果は、基本についてEV=1、刺激された発現についてEV=10に標準化し、バーは95%信頼区間を表す。図a-fは、内皮細胞の異なる単離物を使用して、3回、6回、4回、5回、4回および6回の別々の実験からのプールした結果をそれぞれ示す。EVと比較して*p<0.05であった。
【図12】アデノウイルスに感染させた細胞において4時間の間TNFα(0.004ng/ml)を用いる非常に低い用量に対するVCAM-1(a)およびEセレクチン(b)の応答を実証するグラフ表示である。この図は、同じ傾向が観察された2つの別々の実験の代表的なものである単回の実験からのデータを示す。
【図13】SKを過剰発現する細胞および対照(EV)を過剰発現する細胞においてメジアン蛍光強度(MFI)によって反映されるような、基礎 (a,b)およびTNFα刺激された(c,d)、VCAM-1発現(a,c)およびEセレクチン発現(b,d)に対する50ng/ml百日咳毒素(PTx)を用いる18時間の処理の効果を実証するグラフ表示である。この図は、異なる内皮細胞の単離物を使用した2回の別々の実験の代表的なものである単回の実験からのデータを示す、
【図14】SKを過剰発現する細胞およびEVを過剰発現する細胞において4時間S1P 5μMを用いる刺激に対する接着分子応答を実証するグラフ表示である。VCAM-1発現を(a)に示し、Eカドヘリン発現を(b)に示す。この図は2回の独立した実験からのプールしたデータを示し、バーはSEMを表す。スチューデントのt検定によって未処理ベクターと比較して*p<0.05であった。
【図15】基本状態において(a-c)および0.04ng/mL TNFαで4時間刺激した場合(d-f)の、EVを過剰発現する内皮細胞(a,d)、SKを過剰発現する内皮細胞(b,e)、およびG82Dを過剰発現する内皮細胞(c,f)への好中球接着の画像(80倍拡大)である。白色矢印は接着好中球を示す。この図は2回の別々の実験の代表的なものである1回の実験からのデータを示す。
【図16】2回の別々の実験から得られた10個の別々の顕微鏡視野のプールしたデータから決定された、100内皮細胞当たりの接着好中球の数のグラフ表示である。バーはSEMを表す。対応するEVと比較して*p<0.05、スチューデントのt検定によって、対応するEVと比較して**P<0.001であった。
【図17】30分(A)または1時間(B)でのMatrigel中でのSKを過剰発現する細胞および対照(EV)を過剰発現する細胞による管形成の画像である。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、内皮細胞機能的特徴を調節する方法およびそのために有用な薬剤に関する。より詳細には、本発明は、細胞内スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節することによって、血管内皮細胞の炎症誘発性表現型および血管形成表現型を調節する方法に関する。本発明の方法は、とりわけ、不適切な内皮細胞機能によって特徴付けられる状態、および、例えば、血管移植、器官移植、もしくは創傷治癒のなどの状態、または異常な内皮細胞の炎症性表現型または血管形成表現型によって特徴付けられる状態を含み得る状態の処置および/または予防に関連して有用である。さらに、本発明の方法は、一連の治療的および/または予防的使用のための薬剤の開発を容易にする(例えば、機能的に操作された内皮細胞集団など)。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書中における著者によって引用された刊行物の参考文献一覧の詳細は、本明細書の末尾にアルファベット順に収集されている。
【0003】
本明細書中におけるいかなる先行技術に対する言及も、その先行技術が共通の一般的な知見の一部を形成することの承認またはいかなる形態の示唆でもなく、かつそのように取られるべきではない。
【0004】
細胞の生存および増殖は、酸素および栄養の適切な供給ならびに毒素の除去に依存する。血管形成は、すでに存在している血管から新しい毛細管の発生に与えられた名称である。刺激された内皮細胞が新しい血管を形成するために、それらは増殖し、移動し、かつ周りの組織に侵入しなければならない。
【0005】
成体の哺乳動物においては、脈管構造は、再生の生理学的サイクルの間または創傷治癒の場合を除いては静止状態にある。さらに、酸素または栄養に関する付加的な要件は、通常、すでに存在している血管から新しい毛細管の新芽形成(sprouting)を生じる。局所的な過剰血管新生は、内皮細胞が分裂促進的シグナルに応答することができるように、静止状態の内皮細胞表現型の活性化表現型への切り換えを誘導した可溶性媒介物質の、組織による放出から生じると考えられている。分裂促進的増殖因子の放出は、細胞の移動、増殖、および分化のために新しい毛細管にシグナルを与えるレセプターの活性化を可能にし、それによって、活性化された表現型を血管形成表現型に切り換える。
【0006】
例えば、移植片の血管新生または創傷治癒の文脈などにおいて、血管形成を容易にするための方法を開発するための必要性が継続して存在する。内皮細胞を用いる作業および内皮細胞を操作することに関して、内皮細胞の生存度を維持するために、例えば、接着および細胞伸展媒介性抗アポトーシス性シグナルの必要性などの特定の固有の機能的制限が存在する。さらに、内皮細胞分化の活性化は、一般的に、血液前駆細胞マーカーCD34の損失を生じる。これは、不可逆的に、活性化された内皮細胞の表現型を変化させる。
【0007】
インビトロとインビボの両方の環境において血管形成を促進する際の顕著な関心を考慮すると、最適な内皮細胞表現型の維持を容易にすることと、最適な内皮細胞増殖を促進することの両方の手段を開発する必要性が存在する。本発明につながる研究において、ヒト内皮細胞におけるヒトスフィンゴシンキナーゼ遺伝子の過剰発現が、通常の細胞と比較して、内皮細胞増殖および細胞の生存の向上を生じることが決定された。さらに、スフィンゴシンキナーゼの過剰発現は、内皮細胞増殖の誘導にも関わらず、CD34の発現によって特徴付けられるような内皮細胞血液前駆細胞表現型を維持することが決定された。なおさらに、スフィンゴシンキナーゼの過剰発現は、内皮細胞炎症性表現型および血管形成表現型を誘導する。従って、本発明において、細胞内スフィンゴシンキナーゼレベルの調節に基づいて内皮細胞の増殖および分化の治療的操作を容易にする手段が提供される。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、文脈が他を必要としない限り、語「含む(comprise)」およびそのバリエーション(例えば、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」など)は、言及された整数もしくは段階、または整数もしくは段階の群を含むことを意味し、任意の他の整数もしくは段階、または整数もしくは段階の群の除外を意味しないと理解される。
【0009】
本発明の1つの局面は、1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法に関し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0010】
別の局面において、1つまたはそれ以上の血管内皮細胞機能的特徴を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することがこの血管内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0011】
なお別の局面において、1つまたはそれ以上のCD34+内皮細胞機能的特徴を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがCD34+内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0012】
本発明はまた、1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法を提供し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルをアップレギュレートすることが、通常の内皮細胞機能的特徴と比較してこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0013】
好ましくは、内皮細胞は血管内皮細胞である。
【0014】
なお別の局面において、血管内皮細胞増殖を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、通常の細胞増殖と比較して内皮細胞の増殖を向上させる。
【0015】
なおさらに別の局面において、血管内皮細胞の生存度を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、通常の内皮細胞の生存度と比較して血管内皮細胞の生存度を向上させる。
【0016】
なおさらに別の局面において、CD34+内皮細胞前駆細胞表現型を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、CD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持する。
【0017】
本発明のさらなる局面は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法に関し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0018】
別のさらなる局面において、この方法は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の血管内皮細胞機能的特徴を調節することに関し、この方法は、哺乳動物においてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0019】
本発明はまた、1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法を提供し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルをアップレギュレートすることが、通常の内皮細胞機能的特徴と比較してこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0020】
なお別のさらなる局面において、哺乳動物における血管内皮細胞増殖を調節する方法が提供され、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが通常の内皮細胞増殖と比較してこの内皮細胞の増殖を向上させる。
【0021】
まだ別のさらなる局面において、哺乳動物における血管内皮細胞の生存度を調節する方法が提供され、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが通常の内皮細胞生存度と比較してこの血管内皮細胞の生存度を向上させる。
【0022】
なお別の局面において、哺乳動物におけるCD34+内皮細胞前駆細胞表現型を調節する方法が提供され、方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがCD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持する。
【0023】
本発明の別の局面は、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法を意図し、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0024】
本発明のなお別の局面は、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない血管内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法を提供し、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、この内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0025】
なお別の局面において、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない血管内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法が提供され、この方法は、哺乳動物に、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節するのに十分な時間の間、およびそのために十分な条件下で有効量の薬剤を投与する段階を含む。
【0026】
本発明の別の局面は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節可能である薬剤の使用に関し、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、この内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0027】
別の局面において、本発明は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造におけるスフィンゴシンキナーゼまたはスフィンゴシンキナーゼをコードする核酸の使用に関し、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、この内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0028】
なお別のさらなる局面において、本発明は、本明細書中上記に規定したような調節薬剤および1つもしくはそれ以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む薬学的組成物を意図する。
【0029】
本発明のなお別の局面は、内皮細胞を生成する方法に関し、この内皮細胞は、通常の内皮細胞機能的特徴と比較して1つまたはそれ以上の機能的特徴の調節によって特徴付けられ、この方法は、細胞中でスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルの過剰発現を誘導する段階を含む。
【0030】
本発明のなお別の局面は、本明細書中に規定された方法に従って生成される内皮細胞に関する。
【0031】
本発明のなおさらに別の局面は、不適切な内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防における、本明細書中に規定された方法に従って開発された内皮細胞の使用に関する。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、部分的には、内皮細胞機能的特徴が、通常の内皮細胞のそれと比較して、過剰発現されたスフィンゴシンキナーゼによって調節され得るという判定に基づいて予想される。詳細には、過剰発現しているスフィンゴシンキナーゼが通常の抗アポトーシス性シグナルの非存在下で細胞増殖および細胞生存の向上を容易にすることが判定された。さらに、本発明の方法がCD34発現内皮細胞に適用される程度にまで、これらの前駆細胞様特性が増殖の発生にも関わらず維持され得る。なおさらに、内皮細胞のスフィンゴシンキナーゼ過剰発現は、炎症誘発性かつ血管形成表現型を内皮細胞に誘導する。従って、今や本発明の方法は、不適切な内皮細胞機能によって特徴付けられる状態を処置するため、またはさもなくばインビトロもしくはインビボのいずれかでの内皮細胞拡大を容易にするための治療的方法および/または予防的方法の合理的設計を可能にする。本明細書中に詳述される判定はまた、上記に詳述された状態を処置するか、またはさもなくば内皮細胞集団を播種するかおよび/もしくは拡大する文脈における使用のための、細胞薬剤と非細胞薬剤の両方の開発を容易にする。
【0033】
従って、本発明の1つの局面は、1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法に関し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0034】
「内皮細胞」との言及は、血管、リンパ管、または他の漿膜腔(例えば体液で満たされた腔)を満たす内皮細胞に対する言及として理解されるべきである。語句「内皮細胞」はまた、形態学、表現型、および/または内皮細胞の機能的活性の1つまたはそれ以上を示す細胞に対する言及として理解されるべきであり、およびまたその変異体または改変体への言及である。「改変体」には、発生の任意の分化段階において内皮細胞の形態学的もしくは表現型的特性または機能的活性のいくつかを示すがすべてを示すわけではない細胞が含まれるがこれらに限定されない。「変異体」には、天然にまたは非天然に改変された内皮細胞(例えば遺伝的に改変された細胞)が含まれるがこれらに限定されない。
【0035】
本発明の内皮細胞は発生の任意の分化段階にあり得ることが理解されるべきである。従って、細胞は未成熟であってもよく、それゆえに、さらなる分化の非存在下で機能的にコンピテントでなくてもよい(例えばCD34+前駆細胞)。この点に関して、内皮細胞に分化する能力を保持している高度に未成熟な細胞(例えば幹細胞)は、それにも関わらず、適切な条件下で内皮細胞に分化するそれらの能力に起因して本明細書中で使用される「内皮細胞」の定義を満たすものと理解されるべきである。好ましくは、対象の内皮細胞は血管内皮細胞であり、さらにより好ましくはCD34+内皮細胞である。
【0036】
従って、より特定には、1つまたはそれ以上の血管内皮細胞機能的特徴を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することはこの血管内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0037】
さらにより特定には、1つまたはそれ以上のCD34+内皮細胞機能的特徴を調節する方法が提供され、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼの過剰発現を誘導することがCD34+内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0038】
内皮細胞の「機能的特徴」との言及は、内皮細胞が示すことができる1つまたはそれ以上の機能的特徴のいずれかに対する言及として理解されるべきである。これには、例えば、増殖、分化、移動、静止状態もしくは活性状態のいずれかにおける生存度の維持、細胞表面分子発現、サイトカイン刺激への感作、炎症誘発性サイトカイン効果の調節、好中球を結合する能力の調節、ならびに炎症性表現型および/または血管形成表現型の調節が含まれる。本発明の文脈において、細胞内スフィンゴシンキナーゼの過剰発現が1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節を誘導することができることが決定された。この点に関して、内皮細胞機能的特徴の通常の範囲および程度を調節することに加えて、対象の調節は通常の生理学的条件下で一般的には誘導可能ではない機能的特徴、例えば向上した増殖性特徴および細胞生存性特徴ならびに変化した分化など(この後者の調節の型は本明細書中では「通常の内皮細胞機能的特徴と比較して」内皮細胞機能的特徴の調節といわれる)を誘導することまで拡張することが決定された。「通常」は、生理学的に通常のレベルのスフィンゴシンキナーゼを発現する細胞によって示される特徴または特徴の範囲を意味する。この点に関して、生理学的に通常のレベルのスフィンゴシンキナーゼは、所定の内皮細胞が静止状態にあるか活性化状態にあるか否かに依存するレベルの範囲に一致することが理解されるべきである。従って、内皮細胞が実行することができる機能的特徴の範囲が、通常、内皮細胞の分化の状態およびスフィンゴシンキナーゼの発現のレベルによって規定される。
【0039】
本発明を任意の1つの理論または作用の様式に限定することはないが、ここで生理学的に正常なレベルのスフィンゴシンキナーゼが発現され、血管内皮細胞が以下を含むがこれらに限定されない1つまたはそれ以上の特徴を示し得る。
(i)生存可能であるが静止状態の維持
(ii)適切な刺激条件下で分化する能力(例えばCD34+前駆細胞状態からより成熟した内皮細胞表現型への成熟)
(iii)増殖する能力
(iv)活性化状態における生存度の維持
(v)細胞表面分子発現を調節する能力、例えば接着分子発現など(例えば成熟または活性化状態の指示剤として)
(vi)サイトカイン刺激に応答する能力
(vii)好中球を結合する能力
(viii)炎症誘発性および/または血管形成表現型に分化する能力。
【0040】
本発明は通常の生理学的条件下で観察することができるこれらの機能的特徴を調節することに関する。しかし、通常の生理学的条件下で内皮細胞が供される特定の固有の機能的制限が存在することが理解されるべきである。例えば、生存度を維持するために、血管内皮細胞は、特定の抗アポトーシス性シグナル(例えば、通常の血管内皮細胞接着および細胞伸展の結果として生成されるもの)にさらされることと必要とする。従って、このようなシグナルの非存在下において-細胞が懸濁物中でインビトロで増殖される場合に生じ得るような場合-望ましくないアポトーシスが起こる。別の例においては、未成熟の静止状態の内皮細胞が細胞表面血液前駆細胞マーカーCD34を発現するのに対して、内皮細胞増殖の刺激および誘導(例えば、血管形成を容易にするために)がCD34発現、および定義の通り、不可逆的かつより成熟な表現型の発生の損失を生じる。特定の状況において、例えばCD34+内皮細胞集団を拡大することを追求している場合、増殖を開始するシグナルがまた表現型的成熟もたらすので、これは不利であることが判明し得る。
【0041】
従って、好ましい態様において、対象の機能的特徴は上記の要点(i)から(viii)までに詳述される機能的特徴のいずれか1つまたはそれ以上である。
【0042】
本明細書中前記に詳述されるように、内皮細胞においてスフィンゴシンキナーゼを過剰発現することが、スフィンゴシンキナーゼが通常の範囲内で発現される場合に一般的には観察されない機能的特徴の誘導を生じ得ることもまた決定された。従って、通常の内皮細胞の特徴「と比較して」内皮細胞の機能的特徴を「調節する」との言及は、スフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現が、通常の範囲内でスフィンゴシンキナーゼを発現する細胞の文脈において一般的には観察されない1つまたはそれ以上の特徴の誘導を生じることを意味するものとして理解されるべきである。しかし、対象の特徴が、内皮細胞の通常の機能的特徴の範囲を完全に置き換えてもよいこと、またはこれらの特徴の1つまたはそれ以上が1つまたはそれ以上の通常の特徴と共に発現されてもよいことが理解されるべきである。いかなる方法においても本発明を制限するものではないが、スフィンゴシンキナーゼレベルを過剰発現する内皮細胞において誘導され得る特徴の例には以下が含まれるがこれらに限定されない。
-増殖の増加した速度/程度、および増殖が起こり得る条件下での最小のみの環境的/細胞培養の条件についての必要性の両方の点からの改善された増殖特性(本明細書中では「向上した増殖」といわれる)。
-改善された細胞生存度。これはアポトーシスをダウンレギュレートすること、または細胞死を妨害するかもしくはさもなくば誘導することのいずれかのレベルで起こり得る。例えば、ストレスの条件下 (例えばインビトロ環境における組織培養補充物の除去など)での細胞生存は、マトリックス接着および細胞伸展の間のインテグリンレセプター関与の結果として供給される抗アポトーシス性シグナルの非存在下で通常起こるアポトーシスのダウンレギュレーションと同様に容易にされる。これは、例えば、インビトロ細胞培養集団が懸濁物中に維持されるために必要とされる場合に特に関連性がある(本明細書中では向上した生存度といわれる)。
-変化した分化経路。特に、CD34血液前駆細胞表面マーカーが内皮細胞前駆細胞増殖または静止CD34+内皮細胞の増殖の刺激に際してダウンレギュレートされるのに対して、スフィンゴシンキナーゼの過剰発現は、増殖/拡大の発生にも関わらずこれらの細胞のCD34発現と前駆細胞表現型の両方の維持を生じる(本明細書中では「CD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持する」といわれる)。
【0043】
それゆえに、対象の機能的特徴調節は好ましくは:
(i)向上した増殖
(ii)向上した生存度;および/または
(iii)CD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持すること
である。
【0044】
従って、本発明はまた、1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法を提供し、この方法はスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルをアップレギュレートすることが、通常の内皮細胞機能的特徴と比較して内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0045】
好ましくは、内皮細胞は血管内皮細胞である。
【0046】
1つの好ましい局面において、血管内皮細胞増殖を調節する方法が提供され、この方法はスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、通常の内皮細胞増殖と比較して内皮細胞の増殖を向上させる。
【0047】
別の態様において血管内皮生存度を調節する方法が提供され、この方法はスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが通常の内皮細胞生存度と比較してこの血管内皮細胞の生存度を向上させる。
【0048】
なお別の好ましい態様において、CD34+内皮細胞前駆細胞表現型を調節する方法が提供され、この方法はスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがCD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持する。
【0049】
これらの好ましい態様に従って、最も好ましくは調節は対象の機能的特徴のアップレギュレーションである。
【0050】
「スフィンゴシンキナーゼ」との言及は、このタンパク質のあらゆる型、およびその機能的誘導体、ホモログ、アナログ、化学的等価物、またはその模倣物に対する言及として理解されるべきである。これは、例えば、対象のスフィンゴシンキナーゼmRNAの選択的スプライシングから生じる任意のアイソフォームまたはこれらのタンパク質の機能的変異体または多型改変体を含む。
【0051】
本明細書中上記に詳述したように、活性化されていないかまたは刺激されていない内皮細胞において観察される基礎レベルよりも高い細胞内スフィンゴシンキナーゼのレベルを誘導することが、独特な機能的特徴の誘導を生じることが判定された。従って、スフィンゴシンキナーゼの「機能的レベル」との言及は、スフィンゴシンキナーゼの濃度それ自体とは対照的に任意の所定の細胞において存在するスフィンゴシンキナーゼ活性のレベルに対する言及として理解されるべきである。スフィンゴシンキナーゼの細胞内濃度の増加は一般的には細胞において観察されるスフィンゴシンキナーゼ機能的活性のレベルの増加と相関するが、当業者はまた、活性のレベルの増加が絶対的な細胞内スフィンゴシンキナーゼ濃度を単に増加させること以外の手段によって達成され得ることを理解する。例えば、増加した半減期を示すかまたはさもなくば向上した活性を示すスフィンゴシンキナーゼの型を使用し得る。それゆえに、対象のスフィンゴシンキナーゼレベルを「過剰発現する」との言及は、細胞内スフィンゴシンキナーゼを、所定の内皮細胞についての通常の生理学的条件下で発現されるよりも高い効果的な機能的レベルまでアップレギュレートすることに対する言及、または任意の機能性レベルであるが、天然に存在する生理学の効果に起因して対象の細胞において起こった増加であるよりはむしろアップレギュレーション事象が人工的にもたらされるようなレベルまでのスフィンゴシンキナーゼレベルのアップレギュレーションに対する言及として理解されるべきである。従って、この後者の型のアップレギュレーションは、通常の生理学的範囲にあるが前刺激レベルよりも高いレベルまでスフィンゴシンキナーゼをアップレギュレートすることと相関し得る。アップレギュレーションがそれによって達成される手段は生理学的経路を模倣することを追求する人工的な手段-例えばホルモンまたは他の刺激分子を導入することであり得る。従って、用語「発現する」は、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子の転写および翻訳の概念に限定されることを意図されない。むしろ、本明細書中以後でより詳細に議論されるように、これは、特定の時点における、内皮細胞中の通常の生理学的条件下で見い出されるものよりも、より高くかつ効果的なスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルの確立である結果に対する言及である(すなわち、本明細書中上記に詳述したように、これはスフィンゴシンキナーゼレベルの天然に存在しない増加を含み、この増加は、観察され得る通常の生理学的範囲にあり得る場合でもある)。「効果的な」レベルである対象の機能的レベルとの言及は、通常の内皮細胞と比較して内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴の調節を達成する過剰発現のレベルとして理解されるべきである。本発明をいかなる1つの理論または作用の様式にも限定することではないが、異なるレベルのスフィンゴシンキナーゼ過剰発現が特異的かつ識別可能な細胞の変化を誘導することが判定された。
【0052】
内皮細胞機能的特徴の文脈における「調節する」との言及は、本明細書中上記に詳述されるような機能的特徴を誘導することに対する言及として理解されるべきである。スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルの文脈において、「調節する」との言及は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルをアップレギュレートすることまたはダウンレギュレートすることに対する言及として理解されるべきである。任意の所定の内皮細胞型についての望ましい表現型変化を達成するためにスフィンゴシンキナーゼがそこまでアップレギュレートまたはダウンレギュレートされるべき特定の最適レベル(すなわち、「効果的」レベル)を決定することは、日常的な手順の問題である。当業者は、このようなレベルを決定する方法を熟知している。
【0053】
1つの態様において、本発明は内皮細胞の集団に独特な機能的特徴を導入する手段としてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルをアップレギュレートすることに関する。しかし、それにも関わらず、これらの特徴の発現を取り除くためにスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルをダウンレギュレートすることが望ましい状況が存在することが理解されるべきである。例えば、特定の目的を達成するために十分な時間の間、規定された内皮細胞の集団の文脈においてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルをアップレギュレートすることを追求し得る。しかし、一旦その目的が達成されると、それがもはや過剰発現されないように、および対象の内皮細胞がそれによって通常の表現型を取るように、スフィンゴシンキナーゼの細胞内機能的レベルを一過性でない程度にまでダウンレギュレートすることを追求することがあり得る。別の例において、例えば、遺伝的な変異の影響に起因して、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルの過剰発現によって実際に特徴付けられる特定の疾患状態を同定し得る。このような状況において、腫瘍形成をもたらし得る制御されない内皮細胞増殖(血管形成)を観察し得る。このような状況が存在する場合、正常な表現型プロフィールを問題の内皮細胞に回復される手段としてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルをダウンレギュレートすることを追求し得る。別の例において、炎症性状態におけるスフィンゴシンキナーゼレベルのダウンレギュレーションは、対象の炎症が内皮細胞炎症性表現型の発生に起因する場合に望ましいかもしれない。特に関連する例において、関節リウマチは血管形成および炎症性の両方の内皮細胞表現型の発生によって特徴付けられる。従って、内皮細胞スフィンゴシンキナーゼレベルのダウンレギュレーションは、治療的処置として望ましい。それゆえに本発明は、内皮細胞の集団に独特な表現型特性を導入するためにスフィンゴシンキナーゼ機能的レベルをアップレギュレートすること、および天然にまたは非天然に誘導されたスフィンゴシンキナーゼ過剰発現の状態をダウンレギュレートすることに関すると理解されるべきである。
【0054】
上記に詳述されるように、スフィンゴシンキナーゼ機能的レベルを「調節する」との言及は、これらのレベルをアップレギュレートすることまたはダウンレギュレートすることのいずれかに対する言及である。このような調節は任意の適切な手段によって達成され得、以下を含む。
(i)より多いかまたはより少ないかのいずれかのスフィンゴシンキナーゼが活性化のためおよび/またはその下流の標的と相互作用するために利用可能であるように、活性型または不活性型のスフィンゴシンキナーゼの絶対的レベルを調節すること(例えば細胞内スフィンゴシンキナーゼ濃度を増加させるかまたは減少させること)。
(ii)任意の所定のスフィンゴシンキナーゼ分子の機能的有効性が増加されるかまたは減少されるかのいずれかであるように、スフィンゴシンキナーゼを作用させるかまたは拮抗させること。例えば、スフィンゴシンキナーゼの半減期を増加させることは、スフィンゴシンキナーゼの絶対的な細胞内濃度の増加を実際に必要とすることなく、スフィンゴシンキナーゼ活性の全体的レベルの増加を達成し得る。同様に、例えば、その下流の標的へのスフィンゴシンキナーゼの結合に関連する何らかの立体障害を導入する分子にスフィンゴシンキナーゼをカップリングすることによるスフィンゴシンキナーゼの部分的な拮抗作用は、スフィンゴシンキナーゼシグナル伝達の有効性を必ずしも除去するものではないが、減少するように作用し得る。従って、これは、スフィンゴシンキナーゼの絶対的な濃度をダウンレギュレート必ずしもすることなく、スフィンゴシンキナーゼ機能をダウンレギュレートする手段を提供し得る。
【0055】
スフィンゴシンキナーゼ機能のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを達成することに関して、この目的を達成するための手段は当業者に周知であり、以下を含むがこれらに限定されない。
(i)細胞のスフィンゴシンキナーゼを発現する能力をアップレギュレートするために、スフィンゴシンキナーゼまたはその機能的等価物、誘導体、もしくはアナログをコードする核酸分子を細胞に導入すること。
(ii)遺伝子の転写的および/または翻訳的調節を調節するタンパク質性分子または非タンパク質性分子を細胞に導入することであって、ここでこの遺伝子はスフィンゴシンキナーゼ遺伝子もしくはその機能的部分またはスフィンゴシンキナーゼ遺伝子の発現を直接的もしくは間接的に調節する何らかの他の遺伝子であり得る。
(iii)スフィンゴシンキナーゼ発現産物(活性型または不活性型のいずれか)、またはその機能的誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物を細胞に導入すること。
(iv)スフィンゴシンキナーゼ発現産物に対してアンタゴニストとして機能するタンパク質性分子または非タンパク質性分子を導入すること。
(v)スフィンゴシンキナーゼ発現産物のアゴニストとして機能するタンパク質性分子または非タンパク質性分子を導入すること。
【0056】
上記のタンパク質性分子は、任意の適切な供給源(例えば、天然の供給源、組換えの供給源、または合成の供給源)に由来し得、および例えば、天然物のスクリーニングの後で同定された融合タンパク質または分子を含む。非タンパク質性分子との言及は、例えば、核酸分子に対する言及であり得るか、または天然の供給源(例えば、天然物のスクリーニングなど)に由来する分子であり得るか、または化学合成された分子であり得る。本発明は、スフィンゴシンキナーゼ発現産物のアナログまたはアゴニストもしくはアンタゴニストとして作用することができる低分子を意図する。化学的アゴニストはスフィンゴシンキナーゼ発現産物に必ずしも由来しなくてもよいが、特定のコンホメーションの類似性を共有してもよい。代替として、化学的アゴニストは特定の物理化学的特性を満たすように詳細に設計され得る。アンタゴニストは、スフィンゴシンキナーゼがその通常の生物学的機能を実行することをブロック、阻害、またはさもなくば妨害することができる任意の化合物であり得る(例えばその活性化を妨害するかまたはさもなくば活性化されたスフィンゴシンキナーゼの下流の機能を妨害する分子など)。アンタゴニストには、哺乳動物細胞中でスフィンゴシンキナーゼの遺伝子またはmRNAの転写または翻訳を妨害するモノクローナル抗体およびアンチセンス核酸が含まれる。発現の調節はまた、抗原、RNA、リボソーム、DNAzyme、RNAアプタマー、抗体、または同時抑制における使用のための適切な分子を利用して達成され得る。上記の要点(i)-(v)において言及されるタンパク質性分子および非タンパク質性分子は本明細書中では集合的に「調節薬剤」といわれる。
【0057】
本明細書中上記に規定した調節薬剤のスクリーニングは、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子またはその機能的等価物もしくは誘導体を含む細胞を薬剤と接触させることおよびスフィンゴシンキナーゼタンパク質産生または機能的活性の調節をスクリーニングすること、スフィンゴシンキナーゼをコードする核酸分子の発現の調節、または下流のスフィンゴシンキナーゼ細胞標的の活性もしくは発現の調節を含むがこれに全く限定されないいくつかの適切な方法の任意の1つによって達成され得る。このような調節の検出は、ウェスタンブロッティング、電気泳動移動度シフトアッセイおよび/またはスフィンゴシンキナーゼ活性のレポーター読み取り(例えばルシフェラーゼ、CATなど)のような技術を利用して達成され得る。
【0058】
スフィンゴシンキナーゼ遺伝子またはその機能的等価物もしくは誘導体が、試験の対象物である細胞中に天然に存在し得るか、またはそれが試験目的のために宿主細胞にトランスフェクトされたかもしれないことが理解されるべきである。さらに、天然に存在するかまたはトランスフェクトされた遺伝子が構成的に発現され得、それによって、とりわけ、核酸レベルまたは発現産物レベルのいずれかにおいてスフィンゴシンキナーゼ活性をダウンレギュレートする薬剤のスクリーニングのために有用であるモデルを提供し、あるいはこの遺伝子は活性化を必要とし得、それによって、とりわけ、スフィンゴシンキナーゼ発現をアップレギュレートする薬剤のスクリーニングのために有用であるモデルを提供する。さらに、スフィンゴシンキナーゼ核酸分子が細胞にトランスフェクトされる程度まで、その分子は完全なスフィンゴシンキナーゼ遺伝子を含み得るか、またはそれは単に遺伝子の一部(例えばスフィンゴシンキナーゼ産物の発現を調節する部分など)を含み得る。例えば、スフィンゴシンキナーゼプロモーター領域は試験の対象である細胞にトランスフェクトされ得る。この点に関して、プロモーターのみが利用される場合、プロモーターの活性の調節を検出することは、例えば、プロモーターをレポーター遺伝子にライゲーションすることによって達成され得る。例えば、プロモーターはルシフェラーゼまたはCATプロモーターにライゲーションされ得、その遺伝子の発現の調節は蛍光強度またはCATレポーター活性の調節を介してそれぞれ検出され得る。
【0059】
別の例において、検出の対象は、スフィンゴシンキナーゼそれ自体であるよりもむしろ下流のスフィンゴシンキナーゼ調節標的であり得る。なお別の例には、最小のレポーターにライゲーションされたスフィンゴシンキナーゼ結合部位が含まれる。例えば、スフィンゴシンキナーゼ活性の調節は内皮細胞中の機能的活性の調節のスクリーニングによって検出され得る。これは、スフィンゴシンキナーゼ発現の調節がそれ自体検出の対象ではない場合の間接的な系の例であり得る。むしろ、スフィンゴシンキナーゼがその発現を調節する分子の調節がモニターされる。
【0060】
これらの方法は、例えば合成のライブラリー、コンビナトリアルライブラリー、化学ライブラリー、および天然のライブラリーを含むタンパク質性または非タンパク質性の薬剤などのような推定の調節因子の高スループットスクリーニングを実行するためのメカニズムを提供する。これらの方法はまた、スフィンゴシンキナーゼ核酸分子もしくは発現産物それ自体のいずれかを結合するか、または上流の分子(この上流の分子は続いてスフィンゴシンキナーゼ発現または発現産物活性を調節する)の発現を調節する薬剤の検出を容易にする。従って、これらの方法は、スフィンゴシンキナーゼの発現および/または活性を直接的または間接的のいずれかで調節する薬剤を検出するためのメカニズムを提供する。
【0061】
本発明の方法に従って利用される薬剤は任意の適切な形態を取り得る。例えば、タンパク質性薬剤は、種々の程度まで、グルコシル化されてもよくもしくはグルコシル化されなくてもよく、リン酸化されてもよくもしくは脱リン酸化されていてもよく、および/または、タンパク質と共に使用され、連結され、結合され、またはさもなくば付随する一連の他の分子(例えばアミノ酸、脂質、炭水化物、または他のペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質)を含んでもよい。同様に、対象の非タンパク質性分子はまた、任意の適切な形態を取り得る。本明細書中に記載されるタンパク質性薬剤および非タンパク質性薬剤の両方は、任意の他のタンパク質性分子または非タンパク質性分子と連結、結合、さもなくは付随され得る。例えば、本発明の1つの態様において、薬剤は局在化された領域へのその標的化を可能にする分子に付随する。
【0062】
対象のタンパク質性分子または非タンパク質性分子は、スフィンゴシンキナーゼの発現またはスフィンゴシンキナーゼ発現産物の活性を調節するために直接的または間接的のいずれかで作用し得る。分子は、それぞれ、発現または活性を調節するために、それがスフィンゴシンキナーゼ核酸分子または発現産物に付随する場合に直接的に作用する。分子は、他の分子が、それぞれ、スフィンゴシンキナーゼ核酸分子または発現産物の発現または活性を直接的または間接的のいずれかで調節する、スフィンゴシンキナーゼ核酸分子または発現産物以外の分子に付随する場合に間接的に作用する。従って、本発明の方法は、調節段階のカスケードの誘導を介するスフィンゴシンキナーゼの核酸分子発現または発現産物活性の調節を含む。
【0063】
この文脈において用語「発現」とは、核酸分子の転写および翻訳をいう。「発現産物」との言及は、核酸分子の転写および翻訳から生じる産物に対する言及である。
【0064】
本明細書中に記載される分子の「誘導体」(例えばスフィンゴシンキナーゼまたは他のタンパク質性薬剤もしくは非タンパク質性薬剤)には、天然の供給源または天然でない供給源のいずれかからのフラグメント、部分(parts)、部分(portion)、または改変体が含まれる。天然でない供給源には、例えば、組換え供給源または合成供給源が含まれる。「組換え供給源」は、対象の分子がそこから収集される細胞供給源が遺伝的に変化されていることを意味する。このことは、例えば、その特定の細胞の供給源による産生の速度および量を増加またはさもなくば向上させるために起こり得る。部分またはフラグメントには、例えば、分子の活性領域が含まれる。誘導体はアミノ酸の挿入、欠失、または置換に由来し得る。アミノ酸挿入誘導体には、アミノ末端融合物および/またはカルボキシ末端融合物ならびに単一または複数のアミノ酸の配列内挿入が含まれる。挿入アミノ酸配列の改変体は、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基がタンパク質中の所定の部位に導入されるが、生じる生成物の適切なスクリーニングを用いるランダムな挿入もまた可能であるものである。欠失改変体は、配列からの1つまたはそれ以上のアミノ酸の除去によって特徴付けられる。置換アミノ酸改変体は、配列中の少なくとも1つの残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されているものである。アミノ酸配列への付加には、上記に詳述したように、他のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質との融合物が含まれる。
【0065】
誘導体にはまた、ペプチド、ポリペプチド、または他のタンパク質性もしくは非タンパク質性の分子に融合された特定のエピトープまたは全体のタンパク質の部分を有するフラグメントが含まれる。例えば、スフィンゴシンキナーゼまたはその誘導体は細胞へのその侵入を容易にするための分子に融合され得る。本明細書中で意図される分子のアナログには、側鎖への修飾、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の合成の間の非天然アミノ酸および/またはそれらの誘導体の取り込み、ならびに架橋剤の使用およびコンホメーションの制約をタンパク質性分子またはそれらのアナログに課す他の方法が含まれるがこれらに限定されない。
【0066】
本発明の方法に従って利用され得る核酸配列の誘導体は、同様に、他の核酸分子との融合物を含む、単一または複数のヌクレオチド置換、欠失、および/または付加に由来し得る。本発明において利用される核酸分子の誘導体には、オリゴヌクレオチド、PCRプライマー、アンチセンス分子、核酸分子の同時抑制および融合における使用のために適切な分子が含まれる。核酸配列の誘導体にはまた、縮重改変体が含まれる。
【0067】
スフィンゴシンキナーゼの「改変体」は、それが改変体であるスフィンゴシンキナーゼの型の少なくとも何らかの機能的活性を示す分子を意味すると理解されるべきである。バリエーションは任意の型を取り得、天然の供給源または天然に存在しない供給源であり得る。変異体分子は修飾された機能的活性を示すものである。
【0068】
「ホモログ」は、その分子が本発明の方法に従って処理されるもの以外の種に由来することを意味する。これは、例えば、その処理されるもの以外の種が、対象の受けた処理によって天然に産生されるスフィンゴシンキナーゼのそれに対して同様のかつ適切な機能的特徴を示すスフィンゴシンキナーゼの型を産生することが決定される場合に起こり得る。
【0069】
化学的等価物および機能的等価物は、対象の分子の機能的活性の任意の1つまたはそれ以上を示す分子として理解されるべきであり、その機能的等価物は、任意の供給源に由来し得る(例えば天然物のスクリーニングなどのようなスクリーニングプロセスを介して化学合成または同定される)。例えば化学的または機能的等価物は周知の方法(例えばコンビナトリアルケミストリーまたは組換えライブラリーの高スループットスクリーニングまたは天然物スクリーニングに従うことなど)を利用して設計および/または同定され得る。
【0070】
例えば、有機低分子を含むライブラリーがスクリーニングされ得、ここで多数の特定の親の基の置換を有する有機分子が使用される。一般的な合成スキームは公開された方法に従い得る(例えば、Bunin BA, et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:4708-4712; DeWitt SH, et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6969-6913)。手短に述べると、各連続的な合成段階において、複数の異なる選択された置換基の1つがアレイにおけるチューブの選択されたサブセットの各々に加えられ、チューブのサブセットの選択は、ライブラリーを産生する際に利用される異なる置換基のすべての可能な順列を生成することなどである。1つの適切な順列ストラテジーは米国特許第5,763,263号に概説されている。
【0071】
生物学的に活性な化合物を探索するためにランダムな有機分子のコンビナトリアルライブラリーを使用することにおいて現在広範囲に及ぶ関心が存在する(例えば、米国特許第5,763,263号を参照されたい)。この型のライブラリーをスクリーニングすることによって発見されたリガンドは、天然のリガンドを模倣するかもしくはブロックする際に、または生物学的標的の天然に存在するリガンドを妨害する際に有用であり得る。本発明の文脈において、例えば、これらは、例えばより強力な薬理学的効果などの特性を示すスフィンゴシンキナーゼアナログを開発することのための出発点として使用され得る。スフィンゴシンキナーゼまたはその機能的部分は、本発明に従って、種々の固相または液相の合成方法によって形成される組み合わせライブラリーにおいて使用され得る(例えば米国特許第5,763,263号およびそこに引用される参考文献を参照されたい)。米国特許第5,753,187号において開示されるような技術の使用によって、数百万の新規な化学的および/または生物学的な化合物が数週間未満で日常的にスクリーニングされ得る。同定された多数の化合物の中で、適切な生物学的活性を示すもののみがさらに分析された。
【0072】
高スループットライブラリースクリーニング方法に関して、選択された生物学的薬剤(例えば生体分子、高分子複合体、または細胞など)と特異的に相互作用可能であるオリゴマー性または低分子ライブラリー化合物は、一連の周知の化合物(例えば上記のものなど)から当業者によって容易に選択されるコンビナトリアルライブラリーデバイスを利用してスクリーニングされる。このような方法において、ライブラリーの各メンバーは選択された因子と特異的に相互作用するその能力についてスクリーニングされる。この方法を実施する際に、生物学的因子は化合物を含むチューブに引き出され、各チューブ中で個別のライブラリーの化合物と相互作用することが可能にされる。この相互作用は、望ましい相互作用の存在をモニターするために使用され得る検出可能なシグナルを産生するように設計される。好ましくは、この生物学的因子は水溶液中に存在し、さらなる条件が所望の相互作用に依存して適合される。検出は例えば、物質の検出のための任意の周知の機能的または機能的でない基礎的方法によって実行され得る。
【0073】
スフィンゴシンキナーゼの活性を模倣する分子をスクリーニングすることに加えて、内皮細胞増殖を調節することに関してスフィンゴシンキナーゼの機能的活性をアップレギュレートまたはダウンレギュレートするためにスフィンゴシンキナーゼに対してアゴニスト的またはアンタゴニスト的に機能する分子を同定および利用することもまた望ましいかもしれない。このような分子の使用は以下により詳細に記載される。対象の分子がタンパク質性である程度まで、それは、例えば、融合タンパク質を含む天然のまたは組換えの供給源に由来し得るか、または例えば、上記のスクリーニング方法に従う。非タンパク質性分子は、例えば、上記に同定した方法論に従ってまた同定または生成された化学的分子または合成分子であり得る。従って、本発明は、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用することができるスフィンゴシンキナーゼの化学的アナログの使用を意図する。化学的アゴニストはスフィンゴシンキナーゼに必ずしも由来しなくてもよいかもしれないが、特定のコンホメーションの類似性を共有するかもしれない。代替として、化学的アゴニストはスフィンゴシンキナーゼの特定の物理化学的特性を模倣するように特異的に設計され得る。アンタゴニストは、スフィンゴシンキナーゼがその通常の生物学的機能を実行することをブロック、阻害、またはさもなくば妨害することができる任意の化合物であり得る。アンタゴニストには、スフィンゴシンキナーゼまたはスフィンゴシンキナーゼの一部に特異的なモノクローナル抗体が含まれる。
【0074】
スフィンゴシンキナーゼのアナログまたは本明細書中で意図されるスフィンゴシンキナーゼのアゴニスト性またはアンタゴニスト性薬剤のアナログには、側鎖への修飾、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の合成の間の非天然アミノ酸および/または誘導体の取り込み、ならびに架橋剤の使用およびコンホメーションの制約をそれらのアナログに課す他の方法が含まれるがこれらに限定されない。これらの修飾を取り得る特異的な型は、対象の分子がタンパク質性であるかまたは非タンパク質性であるかに依存する。特定の修飾の性質および/または適合性は当業者によって日常的に決定され得る。
【0075】
例えば、本発明によって意図される側鎖の修飾の例には、例えばアルデヒドを用いる反応による還元的アルキル化、続いてNaBH4を用いる還元によるアミノ基の修飾;メチルアセトイミデートを用いるアミジン化;無水酢酸を用いるアシル化;シアン酸を用いるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を用いるアミノ基のトリニトロベンゼン化;無水コハク酸およびテトラヒドロフタル酸無水物を用いるアミノ基のアシル化;ならびにピリドキサール-5-リン酸を用いるリジンのピリドキシル化、続いてNaBH4を用いる還元が含まれる。
【0076】
アルギニン残基のグアニジン基は、例えば2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサール、およびグリオキサールなどの試薬を用いるヘテロ環縮合生成物の形成によって修飾され得る。
【0077】
カルボキシル基はO-アシルイソウレア形成、その後の引き続く誘導体化(例えば対応するアミドまで)を介するカルボジイミド活性化によって修飾され得る。
【0078】
スルフヒドリル基は、例えばヨード酢酸またはヨードアセトアミドを用いるカルボキシルメチル化;システイン酸への過ギ酸酸化;他のチオール化合物を用いる混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸、または他の置換マレイミドを用いる反応;4-クロロ水銀安息香酸、4-クロロ水銀フェニルスルホン酸、フェニル水銀クロライド、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノール、および他の水銀剤を使用する水銀誘導体の形成;アルカリpHにおけるシアン酸を用いるカルバモイル化のような方法によって修飾され得る。
【0079】
トリプトファン残基は、例えば、N-ブロモスクシニミドを用いる酸化または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミドもしくはスルフェニルハライドを用いるインドール環のアルキル化によって修飾され得る。他方チロシン残基は、3-ニトロチロシン誘導体を形成するテトラニトロメタンを用いるニトロ化によって変化され得る。
【0080】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体を用いるアルキル化またはジエチルピロカーボネートを用いるN-カルボエトキシル化によって達成され得る。
【0081】
タンパク質合成の間に非天然アミノ酸および誘導体を取り込むことの例には、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のD-異性体の使用が含まれるがこれらに限定されない。本明細書中で意図される非天然アミノ酸のリストを表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
架橋剤は、例えば、ホモ二官能性架橋剤(例えばn=1からn=6の(CH2)nスペーサー基を有する二官能性イミドエステル、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシニミドエステルなど)、ならびにN-ヒドロキシスクシニミドおよび別の基特異的反応性部分のようなアミノ反応性部分を通常含むヘテロ二官能性試薬を使用して3Dコンホメーションを安定化するために、使用され得る。
【0084】
本発明の方法は、インビトロとインビボの両方で機能する内皮細胞の調節を意図する。好ましい方法はインビボで個体を処置することであるが、それにも関わらず、本発明の方法はインビトロ環境において適用されることが望ましいかもしれないことが理解されるべきである。例えば、ドナー移植片において、宿主へのその導入に先立って、本発明の方法に従う内皮細胞増殖を誘導することによって血管形成を開始することを追求し得る。別の例において、培養中の内皮細胞の集団を、処置を受けている被験体へのそれらの局在化された導入の前に拡大することを追求し得る。なお別の例において、本発明の方法は細胞株を作製するために利用され得る。
【0085】
従って、本発明の別の局面は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法に関し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、この内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的な特徴を調節する。
【0086】
より特定には、方法は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の血管内皮細胞機能的特徴を調節することに関し、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、この内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的な特徴を調節する。
【0087】
さらにより特定には、血管内皮細胞はCD34+内皮細胞である。
【0088】
好ましくは、機能的特徴は以下の1つまたはそれ以上である。
(i)生存可能であるが静止状態の維持
(ii)適切な刺激条件下で分化する能力(例えばCD34+前駆細胞状態からより成熟した内皮細胞表現型への成熟)
(iii)増殖する能力
(iv)活性化状態における生存度の維持
(v)細胞表面分子発現を調節する能力、例えば接着分子発現など(例えば成熟または活性化状態の指示剤として)
(vi)サイトカイン刺激に応答する能力
(vii)好中球を結合する能力
(viii)炎症誘発性および/または血管形成表現型に分化する能力。
【0089】
本発明はまた、1つまたはそれ以上の血管内皮細胞機能的特徴を調節する方法を提供し、この方法は、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、通常の内皮細胞機能的特徴と比較して、スフィンゴシンキナーゼキナーゼのレベルをアップレギュレートすることがこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0090】
1つの好ましい態様において、哺乳動物における血管内皮細胞の増殖を調節する方法が提供され、この方法は、哺乳細胞においてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、通常の内皮細胞の増殖と比較して、この血管内皮細胞の増殖を向上させる。
【0091】
別の好ましい態様において、哺乳動物における血管内皮細胞の生存度を調節する方法が提供され、この方法は、哺乳細胞においてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、通常の内皮細胞の生存度と比較して、この内皮細胞の生存度を向上させる。
【0092】
なお別の好ましい態様において、哺乳動物におけるCD34+内皮細胞前駆細胞表現型を調節する方法が提供され、この方法は、哺乳細胞においてスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することがCD34+内皮細胞前駆細胞表現型を維持する。
【0093】
本発明のさらなる局面は、疾患状態または他の望ましくない状態の処置および/または予防に関連する本発明の使用に関する。本発明を任意の1つの理論または作用の様式に限定するものではないが、内皮細胞の増殖、生存度、および前駆細胞CD34+内皮細胞表現型の維持の向上、ならびに内皮細胞の炎症性表現型および血管形成表現型の調節を容易にする方法論の開発が、インビトロまたはインビボのいずれかにおいて内皮細胞集団を迅速かつ効率的に拡大する手段を提供する。例えば、これらの細胞の生存度が向上され得るという事実は、理想的な環境因子が存在しないかもしれない状況において本発明を特に有用にする。この点に関して、本発明者らは、これにより内皮細胞の特に強固な集団を生成する手段を開発した。特に好ましい態様において、本発明の方法は、血管移植片を確立するため、組織もしくは器官の移植片の血管新生を誘導するかもしくは播種するため、またはアミロイド斑沈着の領域などのような血管が破壊された領域の血管新生を誘導するために利用され得る。別の例において、本発明の方法は、望ましい生存または成熟の条件を提供するためにスフィンゴシンキナーゼ過剰発現によって誘導される表現型の特色を必要とし得る内皮細胞を介して血管系に薬物を送達するために利用され得る。さらに、未成熟の内皮細胞の集団を維持することは、このような細胞が、たとえ非血管細胞系統でも特定の細胞系統に沿ってそれらの刺激および分化(例えば筋肉細胞への分化)を容易にするために必要とされる程度まで有用であり得る。スフィンゴシンキナーゼ過剰発現はこの文脈において有用である。なぜなら、未成熟の増殖している内皮細胞の集団が効果的な様式で維持され得るからである。なおさらに、炎症性状態(例えば関節リウマチ)における炎症性表現型および/または血管形成表現型のダウンレギュレーションが望ましい。
【0094】
それゆえに本発明は、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法を意図し、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することがこの内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴をアップレギュレートする。
【0095】
「異常なまたはさもなくば望ましくない内皮細胞機能」との言及は、活性よりも下の細胞機能、過剰に活性である内皮細胞機能、機能が低すぎる不適切な生理学的には正常な機能、または機能の非存在に対する言及として理解されるべきである。この点に関して、「機能」との言及は、本明細書中上記に規定した任意の1つまたはそれ以上の通常の機能的特徴に対する言及として理解されるべきである。「不適切な機能」との言及はまた、内皮細胞経路に沿って分化するために不十分な数の前駆細胞の存在に対する言及を含むと理解されるべきである。例えば、創傷治癒および組織/器官移植などのような特定の状況において、内皮細胞経路に沿って分化するために利用可能である非常に低いレベルのCD34+前駆細胞が存在し得る。本発明の方法は、増殖の開始に関わらず、内皮細胞前駆細胞拡大を生成する手段のみならずこれらの前駆細胞の集団を維持する手段もまた提供する。
【0096】
より詳細には、本発明は、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない血管内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法を提供し、この方法は、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴をアップレギュレートする。
【0097】
好ましくは、状態は、血管移植、創傷治癒および組織/器官移植、または血管が破壊された組織の修復であり、スフィンゴシンキナーゼの調節はアップレギュレーションである。最も好ましい態様において、アップレギュレートされた機能的特徴は、向上した内皮細胞増殖、向上した内皮細胞生存度、および/またはCD34+内皮細胞前駆細胞表現型の維持の1つまたはそれ以上である。
【0098】
別の好ましい態様において、状態は炎症性状態であり、スフィンゴシンキナーゼ調節はダウンレギュレーションである。最も好ましくは、ダウンレギュレートされた機能的特徴は内皮細胞の炎症性表現型および/または血管形成表現型のダウンレギュレーションである。
【0099】
なお別の好ましい態様において、状態は望ましくない血管形成によって特徴付けられ、スフィンゴシンキナーゼの調節はダウンレギュレーションである。最も好ましくは、ダウンレギュレートされた機能的特徴は内皮細胞血管形成表現型であり、状態は腫瘍である。
【0100】
最も好ましい態様において、哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない血管内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法が提供され、この方法は、哺乳動物に、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節するのに十分な時間の間、およびそのために十分な条件下で有効量の薬剤を投与する段階を含む。
【0101】
「薬剤」との言及は、本明細書中上記に規定したのと同じ意味を有すると理解されるべきである。しかし、本発明のこの局面の文脈において、「薬剤」との言及はまた、本発明の方法に従って処理された内皮細胞の集団に対する言及としても理解されるべきである。例えば、不適切な血管内皮細胞機能によって特徴付けられる状態を予防的または治療的に処置することは、本発明の方法に従って入手可能である改善された機能的特徴の1つまたはそれ以上を示す内皮細胞の集団を患者に導入することによって達成され得る。例えば、適切に処理されたCD34+内皮細胞前駆細胞の集団は、創傷修復の部位または異常な血管破壊の部位(例えばアミロイド斑が沈着している場所で起こる)のような血管再生を必要とする部位に導入され得る。
【0102】
「有効量」は、望ましい応答を保持するか、または発症を遅らせるかもしくは進行を阻害するか、または処置された特定の状態の発症もしくは進行を全体的に中断するために、少なくとも部分的に必要である量を意味する。その量は、処置される個体の健康状態および身体的な状態、処置される個体の分類学的なグループ、所望される保護の程度、組成物の処方、医学的状況の評価、および他の関連する因子に依存して変化する。その量は日常的な治験を通して決定され得る比較的広い範囲に収まることが予想される。
【0103】
本明細書中における「処置」および「予防」に対する言及は、その最も広い文脈にあると見なされるべきである。用語「処置」は、被験体が全体的な回復まで処置されることを必ずしも意味しない。同様に、「予防」は、被験体が疾患状態に最終的に罹患しないことを必ずしも意味しない。従って、処置および予防には、特定の状態の徴候の寛解または特定の状態を発症するリスクを妨害もしくはさもなくば減少されることが含まれる。用語「予防」は、特定の状態の重篤度の減少または発症を減少させることと見なされ得る。「処置」はまた、すでに存在している状態の重篤度を減少させ得る。
【0104】
本発明はさらに、治療の組み合わせ(例えば、他のタンパク質性または非タンパク質性の分子と一緒に行う調節薬剤の投与など)を意図し、これは望ましい治療的なまたは予防的な結果を容易にし得る。
【0105】
本明細書中上記に記載した本発明の分子[本明細書中では集合的に「調節薬剤」といわれる]の投与は、薬学的組成物の形態で、任意の便利な手段によって実行され得る。この薬学的組成物の調節薬剤は、特定の場合に依存する量で投与された場合に治療活性を示すことが意図される。バリエーションは、例えば、ヒトまたは動物に、および選択された治療薬剤に依存する。広い範囲の用量が適用可能であり得る。患者を想定すると、例えば、約0.1mgから約1mgまでの調節薬剤が1日当たり体重1キログラム当たりに投与され得る。投薬レジメは最適な治療応答を提供するように調整され得る。例えば、いくつかの分割された用量が毎日、毎週、毎月、もしくは他の適切な時間間隔で投与され得るか、または用量は状況の緊急性によって示されるのに応じて比例的に減少され得る。
【0106】
調節薬剤は、例えば経口、静脈内(水溶性である場合)、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、または坐剤の経路または移植(例えば、徐放性分子を使用して)などのような便利な様式で投与され得る。調節薬剤は、酸付加塩または金属複合体、例えば、亜鉛、鉄などとの塩(これらは本願の目的のための塩と見なされる)のような薬学的に許容される非毒性塩の形態で投与され得る。このような酸付加塩の例は、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩などである。活性成分が錠剤型で投与されるべきである場合、その錠剤は、トラガカント、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤;アルギン酸などの崩壊剤;およびステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含み得る。
【0107】
投与の経路には、呼吸器、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、皮内、筋肉内、眼内、くも膜下腔内、脳内、鼻腔内、注入、経口、直腸、IVドリップパッチを介して、および移植が含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、投与の経路は経口である。
【0108】
これらの方法に従って、本発明に従って規定される薬剤は1つまたはそれ以上の他の化合物または分子と同時投与され得る。「同時投与される」は、同じかまたは異なる経路を介する同じ処方物または2つの異なる処方物中での同時の投与、あるいは同じかまたは異なる経路による連続的な投与を意味する。例えば、対象のスフィンゴシンキナーゼはその効果を向上させるためにアゴニスト性薬剤と共に投与され得る。代替として、器官組織移植の場合において、スフィンゴシンキナーゼは免疫抑制薬物と共に投与され得る。「連続的」投与は、2つの型の分子の投与の間の秒、分、時間、または日数の時間の違いを意味する。これらの分子は任意の順序で投与され得る。
【0109】
本発明の別の局面は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節可能である薬剤の使用に関し、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0110】
別の局面において、本発明は、哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造におけるスフィンゴシンキナーゼまたはスフィンゴシンキナーゼをコードする核酸の使用に関し、ここでスフィンゴシンキナーゼレベルの過剰発現を誘導することが、内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する。
【0111】
これらの好ましい態様に従って、対象の内皮細胞は好ましくは血管内皮細胞であり、さらにより好ましくはCD34+血管内皮細胞である。
【0112】
さらにより好ましくは、医薬は、本明細書中上記に記載された異常なまたは望ましくない内皮細胞機能によって特徴付けられる状態を処置するために使用される。
【0113】
用語「哺乳動物」および「被験体」は、本明細書中で使用される場合、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ)、実験用試験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ)、および捕獲される野生動物(例えば、キツネ、カンガルー、シカ)を含む。好ましくは、この哺乳動物はヒトまたは実験用試験動物である。さらにより好ましくは、この哺乳動物はヒトである。
【0114】
なお別のさらなる局面において、本発明は、本明細書中上記に規定したような調節薬剤および1つもしくはそれ以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む薬学的組成物を意図する。薬剤は活性成分といわれる。
【0115】
注射可能な使用のために適切な薬学的形態は、滅菌した水溶液(水溶性の場合)もしくは懸濁物、および滅菌した注射可能な溶液もしくは懸濁液の即席の調整のための滅菌した粉末を含み、またはクリームの形態もしくは局所的適用のために適切な他の形態であり得る。これは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌のような微生物の夾雑作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の妨害は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)によってもたらされ得る。多くの場合において、等張剤(例えば、糖および塩化ナトリウム)を含めることが好ましい。注射可能な組成物の吸収の延長は、組成物中での吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によってもたらされ得る。
【0116】
滅菌した注射可能な溶液は、上記に列挙された種々の他の成分と共に適切な溶媒中に必要とされる量の活性成分を取り込むこと、必要な場合、その後のフィルター滅菌によって調製される。一般的に、分散物は、種々の滅菌された活性成分を、基本分散媒体および上記に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルに取り込むことによって調製される。滅菌された注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製の方法は、事前にフィルター滅菌されたその溶液から活性成分および任意の付加的な所望される成分の粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0117】
活性成分が適切に保護される場合、それらは例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用の担体と共に経口投与され得、またはハードシェルまたはソフトシェルのゼラチンカプセル中に封入され得、または錠剤中に圧縮され得、または食物と共に直接的に取り込まれ得る。経口治療的投与のために、活性化合物が賦形剤と共に取り込まれ得、および消化可能な型の錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁物、シロップ、ウェハースなどにおいて使用される。このような組成物および調製物は重量で少なくとも1%の活性化合物を含むべきである。組成物および調製物のパーセンテージは、当然変化され得、および好都合には、単位の重量の約5%から約80%までの間であり得る。このような適切な投薬量におけるこのような治療的に有用な組成物における活性化合物の量が得られる。本発明に従う好ましい組成物または調製物は、経口投薬量単位形態が約0.1μgから2000mgの間の活性化合物を含むように調製される。
【0118】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどはまた、本明細書以後に列挙されるような成分を含み得る:アラビアガム、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびスクロース、ラクトース、もしくはサッカリンなどの甘味料、またはペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリー香料などの香料が加えられ得る。投薬単位形態がカプセルである場合、それは上記の型の物質に加えて液体担体を含み得る。種々の他の物質が、コーティングとしてまたはさもなくば投薬単位の物理形態を修飾するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルがセラック、糖、または両方でコートされ得る。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味料としてのスクロース、保存料としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにチェリー香料またはオレンジ香料などの香料を含み得る。当然、任意の投薬単位形態を調製する際に使用される任意の物質は、薬学的に純粋であり、かつ利用される量で実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、徐放性の調製物および処方物に取り込まれ得る。
【0119】
薬学的組成物はまた、例えば標的細胞にトランスフェクト可能であるベクターなどの遺伝的分子を含み得、ここでこのベクターはスフィンゴシンキナーゼまたは本明細書中上記に規定された調節薬剤をコードする核酸分子を有する。このベクターは、例えばウイルスベクターであり得る。薬学的組成物はまた、本発明の方法に従って処理された内皮細胞集団を含み得る。
【0120】
本発明のなお別の局面は、内皮細胞を生成する方法に関し、この内皮細胞は、通常の内皮細胞機能的特徴と比較して1つまたはそれ以上の機能的特徴の調節によって特徴付けられ、方法は、細胞中でスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルの過剰発現を誘導する段階を含む。
【0121】
本発明のなお別の局面は、本明細書中に規定された方法に従って生成される内皮細胞に関する。
【0122】
本発明のなおさらに別の局面は、不適切な内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防における、本明細書中に規定された方法に従って開発された内皮細胞の使用に関する。
【0123】
本発明のさらなる特色は、以下の非限定的な図面および実施例においてより完全に記載される。
【0124】
実施例1
上昇した細胞内レベルのスフィンゴシンキナーゼはPECAM-1の標的化された調節を通して細胞の生存を向上させる
材料および方法
HUVECのトランスフェクション
HUVECを、50g/ml内皮増殖補充物(Collaborative Research, MA, USA)および50g/mlヘパリン(Sigma, St Louis, Missouri, USA)を補充した培地を用いて、以前に記載されたように(Litwin M, Clark K, Noack L, Furze J, Berndt M, Albelda S et al. (1997) J Cell Biol 139(1):219-228)単離および培養した。
【0125】
アデノウイルス産生およびSKを過剰発現するHUVECの生成
Qbiogen Version 1.4 AdEasy(商標)Vectorシステムマニュアル(http:www.qbiogene.com/products/adenovirus/adeasy.shtml)に従って、AdEasyシステムを使用してSK(または空のベクターEV)を有する組換えアデノウイルスを産生した。293細胞を、25cm2フラスコ中で、10%ウシ胎仔血清(FCS)を含む完全Dulbecco改変Eagle培地(CSL Biosciences, Parkville, Australia)中で培養した。ウイルスを293細胞中で増幅し、塩化セシウム勾配上で遠心分離を用いて精製した。ウイルス力価を、製造業者のプロトコールに従って、TCID50法を使用して決定した。HUVECの一過性トランスフェクションを、SKまたはEVのアデノウイルス調製物を用いて、同様のレベルのGFP発現を生じる等価なプラーク形成単位(pfu)/細胞を使用する感染によって達成した。
【0126】
細胞をトランスフェクションの24-72時間後に機能的アッセイのために使用した。SKの過剰発現をウェスタンブロットとSK活性アッセイの両方を用いて確認した。
【0127】
ウェスタンブロッティング
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を、12%アクリルアミドゲルを使用して、細胞溶解物に対して、記載されるように実行した(Pitson SM, Moretti PA, Zebol JR, Xia P, Gamble JR, Vadas MA et al. (2000) J Biol Chem; 275(43):33945-33950)。タンパク質をPVDFメンブレンに転写し、0.1% Tween20を有するPBS中の5%低脂肪乳中で1時間ブロックし、そしてM2マウス抗FLAG抗体(Sigma, St Louis, MO)、ウサギポリクローナル抗ホスホ-Akt(Cell Signaling Technology)、ウサギポリクローナル抗Akt(Cell Signaling Technology)、抗ホスホチロシン(Cell Signaling Technology)を用いて4℃で一晩、あるいはマウス抗サイクリンD1もしくはマウス抗サイクリンE(Santa Cruz Biotechnology)、またはThe Hanson Institute, Adelaide, Australiaにおいて惹起されたPECAM-1に対するマウスモノクローナル抗体(51-6F6)を用いて室温で1時間、インキュベートした。このメンブレンを西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化抗マウスIgG(Pierce)または抗ウサギIgG(Pierce)と共にインキュベートし、そして免疫複合体を、増強した化学発光(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して検出した。
【0128】
SK活性
SK活性を以前に記載されたように測定した(Xia P, Gamble JR, Rye KA, Wang L, Hii CS, Cockerill P et al. (1998) Proc Natl Acad Sci U S A; 95(24):14196-14201)。手短に述べると、D-エリスロスフィンゴシンおよび[-32]ATPを基質として使用し、および全細胞溶解物と共にインキュベートした。標識された脂質を抽出し、TLCによって分離した。放射活性スポットをPhosphoimageシステムによって定量した。
【0129】
蛍光活性化セルソーティング(FACS)
PECAM-1およびVE-カドヘリンの細胞表面発現のフローサイトメトリー分析を、本発明者らの研究室において生成された、PECAM-1またはVE-カドヘリンに対する10g/mlマウスモノクローナル一次抗体(51-6F6または55-7H1)を使用して(Gamble JR, Khew-Goodall Y, Vadas MA. (1993) J Immunol; 150(10):4494-4503)、以前に記載されたように実行した(Xia P, Gamble JR, Rye KA, Wang L, Hii CS, Cockerill P et al. (1998)前出)。使用した二次抗体は、ヤギ抗マウスIgG R-フィコエリトリン結合体であった(Southern Biotech Birmingham, AL, USA)。メジアン蛍光強度を、Coulter Epics Profile XLフローサイトメーターを使用して測定した。CD34の細胞表面発現のFACS分析を、1×106細胞を10Lの抗CD34、R-フィコエリトリン(R-PE)結合マウス抗ヒトmAb(BD Pharmingen, San Diego, CA)と共に室温で30分間インキュベートすること、および次いでメジアン蛍光強度を測定することによって行った。
【0130】
カスパーゼ-3活性の測定
細胞溶解物を、カスパーゼ-3溶解緩衝液(10% NP-40, 1M Tris-HCL, 1M EDTA)を使用して、記載されるように調製した(Laemmli UK. (1970) Nature; 227(259):680-685)。10Lの溶解物を96ウェルトレイに配置した。10mLのカスパーゼ-3緩衝液(12g/L Hepes、100g/L スクロース、1g/L Chaps, pH 7.4)を15.45mg DL-ジチオスレイトール(Sigma, St Louis, USA)および10Lの2.5mM DEVD-AFC基質(Calbiochem-Novabiochem, Darmstadt, Germany)と共に混合した。この混合物(200L)を各ウェルに加え、5時間インキュベートした。蛍光をウェルプレートリーダーを用いて測定し(励起波長および発光波長は385nmおよび460nm)、タンパク質濃度について標準化した。
【0131】
アポトーシス性細胞の免疫蛍光染色
細胞をフィブロネクチンコートしたLabTekスライドにウェル当たり6×104細胞で、種々の濃度のFCSを含む培地中で播種し、および37℃で24時間インキュベートした。この細胞を150L DAPI-メタノール(Roche, Manheim, Germany)と共に37℃で15分間インキュベートし、次いでメタノールで洗浄した。アポトーシス性細胞は、フラグメント化された核を非常に明るく染色する免疫蛍光顕微鏡法によって可視化されたのに対して、生細胞はインタクトな核を有し、強くない染色を有した。連続する視野におけるアポトーシス性細胞のパーセンテージを計算した。
【0132】
細胞浸透性
内皮細胞を、フィブロネクチンコートした3.0mトランスウェルにウェル当たり10×104細胞で播種し、600Lの培養培地をトランスウェルの底に加えた。FITCデキストラン(500g/mL)を各トランスウェルに加え、次いで20Lの培地を所定の時点で各トランスウェルの底から収集し、およびウェル当たり60Lの無血清培地を含む96ウェルマイクロタイタートレイに分配した。蛍光を、ウェルプレートリーダーを使用して、485nmおよび530nmの励起波長および発光波長を使用して測定した。
【0133】
細胞生存
内皮細胞を、無血清培地中、ウェル当たり3×103細胞で、ゼラチンコートした96ウェルマイクロタイタートレイに配置した。MTS(Promega, WL, USA)を使用して細胞生存度を測定した。490nmにおける光学密度を0日目、1日目、2日目、および3日目に測定した。
【0134】
細胞懸濁物
細胞を、組織培養用でない、1%ウシ血清アルブミンでコートした非接着性の96ウェルマイクロタイタートレイにおいて、ウェル当たり8×103細胞で、無血清培地中で上記のようにプレーティングした。光学密度を、上記のようにMTSを使用して0日目、1日目、2日目、および3日目に測定した。
【0135】
結果
SKの過剰発現はSK活性を向上した
内皮細胞機能に対するSKの過剰発現の効果を決定するために、HUVECを、1pfu/細胞でSKを含むアデノウイルスで感染させた。1pfu/細胞でのHUVECの感染は、対象に対してSK活性の5.17(95% CI 4.86-5.51)倍の増加を生じ、これは統計学的に有意であった(p 0.001)。
【0136】
スフィンゴシンキナーゼの過剰発現は細胞生存および懸濁物中の生存を向上する
細胞生存を、ECGを補充した無血清培地中で、および1%ウシ血清アルブミンでコートした非組織培養非接着性トレイ中で、無血清培養条件下で測定した。
【0137】
SKを過剰発現する細胞は、無血清条件において(図1a)および懸濁物中で増殖した場合に(図1b)、対象細胞と比較して向上した生存を示した。プレーティングの24時間後、SKを過剰発現する細胞の数が増加した。プレーティングの48時間後でさえ、対照細胞と比較して、SF条件下または非接着条件のいずれかにおいてSKを過剰発現するより多くの細胞が生存した。対照的に、EV細胞の細胞数は24時間の間維持されたが、その後急速に減少した。SKを過剰発現する細胞は、懸濁物中で凝集体を形成することが顕微鏡によって可視化され、これは対照細胞によって形成されるものよりもより広範囲であった。サイクリンEおよびDの測定は、EV細胞と比較してSKを過剰発現する細胞間のレベルの変化を示さず(図1c)、従ってこのことは、SKを過剰発現する細胞において見られる数の変化が抗アポトーシス性効果に起因し得ることを示唆した。
【0138】
SKの過剰発現は血清欠乏誘導性アポトーシスに対する抵抗性を付与する
SKを過剰発現する細胞における血清欠乏誘導性アポトーシスに対する抵抗性を、基本条件下および血清欠乏の24時間後にDAPI染色を実行することによって確認した。図2は、基本条件下で、SKを過剰発現する細胞と対照との間のアポトーシス性細胞の数の違いが存在しなかったことを示す。血清欠乏を用いると、対照細胞はアポトーシス性細胞の数の大きな増加を伴って応答したのに対して、SKを過剰発現する細胞の間では、無視できる数のアポトーシス性細胞が存在した。
【0139】
DAPI染色の結果を、基本条件下および24時間の血清欠乏に応答したカスパーゼ-3活性の測定によって確認した。SKの過剰発現が基本カスパーゼ-3活性を有意に減少すること(図3a)、および血清欠乏によって誘導されるカスパーゼ-3活性化に対するさらなる抵抗性を付与すること(図3b)を示した。
【0140】
SKの過剰発現はPI-3K/Akt経路を活性化する
増殖因子などの生存因子および細胞外マトリックスへの付着は、PI-3K/Akt経路を含む多数の経路を通して細胞生存に影響を与える。この経路がSKの過剰発現によって誘導される生存の増加に関与するか否かを決定するために、Aktのリン酸化を評価した。図4(a)において示されるように、基本条件下では、対照と比較してSKを過剰発現する細胞においてリン酸化されたAKT(p-Akt)のパーセンテージの有意な違いは存在しなかった(p=0.47)。血清欠乏に応答したAktのリン酸化の減少がEV細胞において見られた。しかし、SKを過剰発現する細胞は、Aktのリン酸化のさらなる増加による血清欠乏のストレスに応答した。従って、無血清条件において、SKを過剰発現する細胞は、対照よりも有意に多いAktのリン酸化を有し、このことはこの経路の活性化を示唆した。これは、5つの別々の内皮細胞株において、ImageQuantソフトウェアによって確認および定量した(図4(b))。
【0141】
PI-3キナーゼ経路はSK誘導性細胞生存を媒介する
PI-3KはAkt活性化の上流の既知のレギュレーターであり、従って、SK媒介細胞生存に対するPI-3Kを阻害すること(LY294002を用いる)の効果を調べた。SK誘導された細胞生存はLY294002の存在下で消滅したが、MAPK経路の2つのインヒビター、UO126またはPD98059のいずれかの存在下では消滅しなかった(図5)。LY294002、UO126、およびPD98059がすべて対照細胞の細胞生存を有意に減少したのに対して、SKを過剰発現する細胞は細胞生存の減少を伴ってLY294002に応答したが、UO126またはPD98059には応答しなかった。このことは、SK誘導性細胞生存がPI-3K経路を通して媒介されること、およびMAPK経路は関与していないことを示す。このことは、MAPK経路およびPI-3K/Akt経路を含むS1P媒介性細胞生存と対照的である。
【0142】
スフィンゴシンキナーゼはPECAM-1発現および脱リン酸化を誘導する
SKの過剰発現は、フローサイトメトリーによって測定されるように、対照と比較してPECAM-1の細胞表面発現を有意に増加した(図6a)。これはウェスタンブロットによって確認された(図6b)。外因性S1Pを用いる通常のHUVECの刺激は、PECAM-1発現を誘導しなかった。しかし、他のジャンクションタンパク質カテニンでは変化が存在せず(図6b)、VEカドヘリンでは少ない減少が存在した(図6d)。
【0143】
内皮細胞においてPECAM-1はチロシン残基上でリン酸化され、リン酸化はPECAM-1の調節の1つの方法である。従って、PECAM-1のリン酸化がウェスタンブロットによって測定された。スフィンゴシンキナーゼの発現の向上はPECAM-1のリン酸化を有意に減少した(図6c)。3つの別々の内皮細胞株において、対照と比較した、SKを過剰発現する細胞についてリン酸化されたPECAM-1の割合の平均倍数パーセント減少は48%であった(95% CI 28-63%)、p=0.054。
【0144】
PECAM-1はまた、ジャンクション浸透性の調節のために重要な細胞-細胞相互作用を媒介することに関与している。PECAM-1発現の増加およびPECAM-1のリン酸化の減少と一致して、SKを過剰発現する細胞は、対照細胞よりも低い基礎的な浸透性を示したが(図7a)、これらは既知の浸透性の刺激因子であるトロンビンに対して正常に応答した(図7b)。
【0145】
SK誘導された生存はPECAM-1によって媒介される
PECAM-1の発現および調節の変化を考慮して、PECAM-1を、懸濁物中および無血清条件中の両方においてSK誘導性内皮細胞生存の原因であるかについて試験した。ウサギポリクローナル抗PECAM-1抗体は、無血清条件中および懸濁物中の両方においてSKを過剰発現する細胞の生存を有意に減少させたのに対して、通常のウサギ血清はSKを過剰発現する細胞または対照細胞のいずれかに対して効果を有しなかった(図8a、b)。VE-カドヘリンに対するマウスモノクローナル抗体(55-7H1)はSKを過剰発現する細胞(p=0.61)または対照細胞(p=0.69)の生存を減少させることに効果を有しなかった。このことは、懸濁物中でのSK誘導性の生存する能力はPECAM-1によって媒介され、別のジャンクション分子VEカドヘリンを通してではないことを示す。
【0146】
SKはPECAM-1を通してPI-3キナーゼ経路を活性化するようにシグナル伝達する
全体のAktおよび活性型のAkt(リン酸化されたAkt)を基本条件下で、6時間の血清欠乏に応答させて、ウェスタンブロットによって測定した。結果を図9(a)に示し、定量化を図9(b)に示す。血清欠乏に応答したAkt経路のSK媒介活性化を再度実証する。ウサギポリクローナル抗PECAM-1抗体は、SKを過剰発現する細胞についてのAktのリン酸化のストレス誘導性増加を対象レベルにまで減少させたが(しかし正常ウサギ血清は減少させなかった)、対照細胞には効果を有しなかった。
【0147】
SK媒介性細胞生存はGPCRに作用するS1Pによって媒介されない
SKの下流のエフェクターであるS1PはEDGレセプター(百日咳毒素感受性Gタンパク質共役レセプターのメンバー)を通して細胞生存を媒介する。SKの過剰発現がS1Pの分泌の増加をもたらし、次いで外因性に作用することが可能であるか否か、またはSKそれ自体がS1Pの細胞外生成に伴って放出されるか否かを決定するために、百日咳毒素を用いてGPCRを阻害することの細胞生存への効果を試験した。SK媒介性細胞生存は百日咳毒素の存在下では阻害されず(図10)、S1Pの作用の細胞内部位と一致した。外因性に加えられたS1PはPECAM-1発現またはそのリン酸化状態(データ示さず)のレベルのいずれかに効果を有しなかった。このことは、EDG活性化が細胞生存のPECAM-1媒介性変化に関与しないことをさらに示唆する。
【0148】
実施例2
炎症および血管形成の調節のための新しい標的としてのスフィンゴシンキナーゼ
方法
HUVEC培養
HUVECを、50μg/ml内皮増殖補充物(Collaborative Research, MA, USA)および50μg/mlヘパリン(Sigma, St Louis, Missouri, USA)を補充した培地を使用して、以前に記載されたように(Litwin M, et al. (1997)前出)単離および培養した。
【0149】
アデノウイルス産生および一過性細胞株の生成
Qbiogeneバージョン1.4 AdEasy(商標)Vectorシステムマニュアル(http:www.qbiogene.com/products/adenovirus/adeasy.shtml)に従って、AdEasyシステムを使用してSK、G82D、または空のベクター(EV)を有する組換えアデノウイルスを産生した。293細胞を、Dulbecco改変Eagle培地(CSL Biosciences, Parkville, Australia)中で培養した。ウイルスを293細胞中で増幅し、塩化セシウム勾配上で遠心分離を用いて精製した。ウイルス力価を、製造業者のプロトコールに従って、TCID50法を使用して決定した。HUVECの一過性トランスフェクションを、SKまたはEVのアデノウイルス調製を用いて、GFP発現の同様のレベルを生じる等価なプラーク形成単位(pfu)/細胞を使用する感染によって達成した。
【0150】
レトロウイルス産生および安定な細胞株の生成
FLAG-エピトープタグ化されたSK、G82D(Pitson SM, et al. (2000)前出)、または構築物なし(EV)をベクターPrufNeo(Zannettino AC, Rayner JR, Ashman LK, Gonda TJ, Simmons PJ. (1996) J Immunol; 156(2):611-620)にクローニングした。レトロウイルス産生を、PrufNeo-SK、PrufNeo-G82D、またはPrufNeo-EVのリン酸カルシウムトランスフェクションによってBing細胞に行った。レトロウイルス上清を48時間で収集した。安定な細胞株をレトロウイルス上清を用いてHUVECに感染させることによって生成させ、続いて48時間、G418(Promega, Madison, WI, USA)を用いる選択を行った。SKの過剰発現を、ウェスタンブロットおよびSK活性アッセイの両方を用いて確認した。
【0151】
ウェスタンブロッティング
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を、12%アクリルアミドゲルを使用して、細胞溶解物に対して、記載されるように実行した(Laemmli UK.(1970)前出)。タンパク質をPVDFメンブレンに転写し、0.1% Tween20を有するPBS中の5%低脂肪乳中で1時間ブロックし、そしてM2マウス抗FLAG抗体(Sigma, St Louis, Missouri, USA)を用いて4℃で一晩インキュベートした。このメンブレンを西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化抗マウスIgG(Pierce)と共にインキュベートし、そして免疫複合体を、増強した化学発光(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して検出した。SK活性を以前に記載されたように測定した(11)。手短に述べると、D-エリスロスフィンゴシンおよび[γ-32]ATPを基質として使用し、これを全細胞溶解物と共にインキュベートした。標識された脂質を抽出し、TLCによって分離した。放射活性スポットをPhosphoimageシステムによって定量した。
【0152】
蛍光活性化セルソーティング(FACS)
E-セレクチンおよびVCAM-1の細胞表面発現のフローサイトメトリー分析を、本発明者らの研究室において生成された、E-セレクチンまたはVCAM-1に対する10μg/mlマウスモノクローナル一次抗体(49-1B11または51-10C9)を使用して(Gamble JR, Khew-Goodall Y, Vadas MA (1993) 前出)、以前に記載されたように実行した(11)。使用した二次抗体は抗マウスフルオレセイン-イソチオシアネート、またはGFP-発現細胞については、ヤギ抗マウスIgG R-フィコエリトリン結合体(Southern Biotech Birmingham, AL, USA)であった。メジアン蛍光強度を、Coulter Epics Profile XLフローサイトメーターを使用して測定した。
【0153】
Matrigel中での管形成
96ウェルマイクロタイタートレイをMatrigel Basement Membrane Matrix(Beckton Dickinson Labware, Bedford, MA, USA)でコートした。内皮細胞をHUVE培地中で3×105細胞/mlの濃度で調製し、140μlを各ウェルに加えた。細胞を規則的な間隔で、管形成を観察するために顕微鏡によって可視化した。
【0154】
好中球接着アッセイ
HUVECを、フィブロネクチンコートされたLab-Tekスライドに、ウェル当たり3×104細胞で播種し、37℃で24時間インキュベートした。細胞を洗浄し、次いで好中球をウェル当たり1×105細胞で各ウェルに加えた。細胞を37℃で30分間インキュベートし、次いでいかなる接着していない好中球も3回洗浄することによって除去した。内皮細胞をメタノールで固定した。連続する視野における接着した好中球の数を顕微鏡によって測定した。
【0155】
統計学的分析
パラメトリックデータのためにスチューデントt検定を使用し、0.05未満のp値を有意であると見なした。比率についての有意差検定を、Statisticaバージョン6.1(Statsoft, Inc.)を使用するANOVA型回帰によって実行した。結果の測定値をすべてlog変換し、これは、予測値が常に正であることを保証し、選択されたベースラインに対する分析のメジアン倍数変化としての解釈を可能にした。分析の大部分は通常の直線回帰によって実行し、報告されたp値は適切な自由度を伴うt検定によって決定した。特定のベースラインに対する平均(μ)効果、およびそれらの付随する標準誤差(s.e.)を、回帰係数の適切な直線の対照によって決定した。log変換した結果のデータの分析のために、概算の大集団試料の95%信頼区間(CI)を以下の式:μ+/-1.96*s.e.を使用して得た。次いで、概算の95%CIを有するメジアン倍数変化(特定のベースラインと比較して)を、戻し変換(すなわち、累乗計算)によって得た。
【0156】
結果
SKの過剰発現はSK活性を増加する
SKの過剰発現の内皮細胞機能に対する効果を決定するために、HUVECに、SKを含むレトロウイルスまたはSKを含むアデノウイルスのいずれかを1pfu/細胞で感染させた。アデノウイルス感染のこのレベルが内皮細胞における内因性SKのTNFα刺激と同様のレベルのSK活性を生じるので(12)、およびレトロウイルス媒介遺伝子送達を用いて達成されたのと同様のSK活性のレベルであるので、このレベルを選択した。
【0157】
SKの過剰発現はHUVECにおける接着分子発現を変化させる
SKの過剰発現が内皮細胞の内因性表現型に変化を生じるか否かを決定するために、本発明者らは、これらの感染細胞上での接着分子発現を調べた。レトロウイルス媒介性のSKの過剰発現は基礎的なVCAM-1発現をアップレギュレートした(図11a)。レトロウイルス媒介性のSKの過剰発現は、図11bに示されるように、VCAM-1発現の同様の増加を生じた(p=0.052)。これは、使用した信頼区間が大集団試料信頼区間であったので、および自由度について調整しなかったので、統計学的な有意性には完全には達しなかった。統計学的有意性は、平均差としての(p=0.04)、またはノンパラメトリック検定の使用によるこのデータの分析によって達成された。VCAM-1と対照的に、基礎的なE-セレクチン発現は、レトロウイルス媒介トランスフェクション(n=4, p=0.44)またはアデノウイルス媒介トランスフェクション(n=3, p=0.71)によって生成されたSKを過剰発現する細胞において変化しなかった。SKの過剰発現が基礎レベルのVCAM-1を誘導したので、次に本発明者らは、これらの細胞がTNFαを用いる刺激に対して応答の変化を示すか否かを決定することを追求した。SKを過剰発現するHUVECを4時間TNFαで刺激し、接着分子発現を測定した。レトロウイルス媒介性送達またはアデノウイルス媒介性送達のいずれかを用いて達成されたSKの過剰発現が、通常のTNFα誘導性のVCAM-1発現のアップレギュレーションを有意に増強した(図11c、d)。興味深いことには、SKを過剰発現する細胞はまた、たとえ基礎的なEセレクチン発現が変化しなくても、TNFαを用いる刺激後のEセレクチン応答の増強を示した(図11e、f)。ドミナントネガティブなSK(G82D)の過剰発現は、EVを用いるのと比較して、TNFαに応答してVCAM-1およびEセレクチンの誘導を有意に阻害した(それぞれ図11c、e)。
【0158】
細胞が、対照においてVCAM-1およびEセレクチンをアップレギュレートすることに失敗した閾値下の用量のTNFαで刺激された場合、有意なレベルの両方の接着分子が、SKを過剰発現する細胞において誘導された(図12a、b)。SKを過剰発現する細胞におけるTNFαによるVCAM-1発現の誘導は、3回の別々の実験において、EV細胞よりも4.42(95% CI 1.51-12.94)倍高かった(p<0.05)。2つの別々の内皮細胞株において、TNFαによるEセレクチン発現の誘導は、EV細胞を用いるのと比較してSKを過剰発現する細胞において1.7倍および3.1倍高かった。TNFαによる内皮細胞でのEセレクチンの誘導は、4-6時間でピークとなり、18-24時間までにほぼ基礎レベルまで低下する(Gamble JR, Khew-Goodall Y, Vadas MA. (1993)前出;Gamble JR, Harlan JM, Klebanoff SJ, Vadas MA. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82(24):8668-8671)。SKの過剰発現がこの時間経過を変化させるか否かを決定するために、SKまたはEVを有するレトロウイルスで感染させた細胞を0.5ng/mLのTNFαで18時間処理し、Eセレクチンの細胞表面発現を測定した。代表的な結果を表2に示す。4つのこのような株において、EV細胞と比較して、SKを過剰発現する細胞において、TNFαでの刺激の18時間後に2.01(95% CI 1.14-3.53)倍のEセレクチン発現の増加が存在した(p=0.11)。G82Dの過剰発現はこの応答の有意な阻害を生じた(対照より上の平均倍数増加0.44、95% CI 0.25-0.92、p=0.014)。同様の結果がアデノウイルス媒介遺伝子移入を用いて得られた。SKのレトロウイルス送達およびアデノウイルス送達はECの同様の表現型を生じ、これは接着分子の発現の増強およびTNFαに対する応答の変化であった。しかし、アデノウイルス系は多数の細胞が迅速に生成されることを可能にし、それゆえにこの方法が将来の実験のために使用された。
【0159】
SKの細胞内過剰発現の効果はS1Pレセプターを通して媒介されるのではない
接着分子のS1P誘導性アップレギュレーションの原因であるEDGレセプターは百日咳毒素感受性であることが知られており、これがGタンパク質共役レセプターであることと一致している。これらの結果がEDGレセプターに逆向きに作用するS1Pの分泌によって説明され得るか否かを調べるために、細胞を百日咳毒素(50ng/ml)で処理し、接着分子発現を測定した。百日咳毒素は、SKまたはEVのいずれかを過剰発現する細胞において、基礎的なまたはTNFα誘導性のVCAM-1またはEセレクチンの発現を阻害しなかった(図13)。現実の事実として、2つの別々の内皮細胞単離物を使用して、百日咳毒素処理を用いて見られる接着分子発現の増強は存在しなかった。SKを過剰発現する細胞におけるTNFα誘導性接着分子応答の増強がEDGレセプターに作用するS1Pに起因するか否かを決定するために、細胞を百日咳毒素(50ng/ml)で18時間前処理し、次いで百日咳毒素の存在下で、TNFα(0.5ng/ml)で4時間刺激した。接着分子発現をこれらの細胞において測定した。2つの別々の内皮細胞株において、百日咳毒素を用いる前処理は、対照細胞またはSKを過剰発現する細胞において、TNFα誘導性のVCAM-1発現またはEセレクチン発現を変化させなかった (図13c、d)。S1Pの細胞内対EDGレセプター媒介性効果をさらに低下させるために、本発明者らは、SKを過剰発現する細胞を外因性S1P(5μM)を用いて4時間刺激した。SKを過剰発現する細胞とEVを過剰発現する細胞の両方が、VCAM-1およびEセレクチンの発現のアップレギュレーションによって、外因性に加えたS1Pに応答した。このことは、EDGレセプターが、図14に示されるように、なお正常に作用していたことを示唆する。S1P刺激に対するEセレクチン応答が、対照と比較して、SKを過剰発現する細胞において1.75(95% CI 1.4-2.18)倍高かった(p<0.001)ことが興味深く、このことは、SKの過剰発現が細胞をS1Pに感作させたことを示唆する。百日咳毒素は、SKを過剰発現する細胞における増強されたTNFα誘導性接着分子応答を阻害することに失敗したが、百日咳毒素での前処理は、SKを過剰発現する細胞およびEVを過剰発現する細胞の両方においてS1Pを用いる外因性刺激に対する応答を阻害した。このことはSKの細胞内の役割についてのさらなる支持を提供する。
【0160】
SKは内皮細胞への好中球の接着を増強する
SKの細胞内過剰発現から生じる接着分子発現の変化が機能的な結果を有するか否かを決定するために、内皮細胞への好中球接着を測定した。基礎的状態において、SKを過剰発現する細胞は有意な好中球接着を示し、これは、対照細胞が好中球を結合しなかったことと対照的である(図15a、b)。低用量のTNFα(0.04ng/ml)を用いる内皮細胞の刺激は、対照細胞における最小の好中球接着を生じたが(図15d)、SKを過剰発現する細胞への有意により高い接着を生じた(図15e)。PMN接着を媒介する際のSKについての役割と一致して、ドミナントネガティブなSKであるG82Dを過剰発現する内皮細胞は、TNFαを用いる刺激に応答するPMN接着を阻害した(図15c、f)。100内皮細胞当たりに接着した好中球の数の定量化を図16に示す。
【0161】
SKは管形成を促進する
毛細管様ネットワーク(管)に配列する内皮細胞の能力は血管形成のインビトロ相関物であり、血管形成は慢性の炎症性疾患の特徴的な特性である。それゆえに、SKの過剰発現がまた、内皮細胞の管を形成する能力を増強するか否かを決定することが追求された。内皮細胞を、複合体基底膜マトリックスであるMatrigelにプレーティングした。等しい数の、SKを過剰発現する細胞およびEVを過剰発現する細胞を播種し、細胞を単一の細胞集団として可視化した。播種から15分間以内に、SKを過剰発現する細胞はすでに再配列を開始したのに対して、EV細胞は組織化されないままであった。30分間までに、SKを過剰発現する細胞は、EV細胞と比較して管配列のより大きな証拠を示した(図17a、b)。1時間までに、SKを過剰発現する細胞による管形成は、EV細胞と比較して高度に発達した(図17c、d)。18時間までに(管形成が完了した時間)、SKを過剰発現する細胞およびEV細胞の両方は同様のパターンの管形成を示した。これらの結果は、SKの過剰発現が管形成の速度を刺激することを示す。
【0162】
【表2】
【0163】
表2は、SKまたは対照(EV)を有するレトロウイルスで感染させた細胞におけるメジアン蛍光強度(MFI)によって示されるような、基礎のおよび刺激された(4時間または18時間の間のTNFα 0.5ng/ml)Eセレクチン発現を示す。この表は、試験された4つの別々の内皮細胞株の代表的なものである単一の内皮細胞株からの結果を示す。
【0164】
当業者は、本明細書中に記載された発明が、具体的に記載されたもの以外のバリエーションおよび改変を受け入れ可能であることを認識している。本発明はすべてのこのようなバリエーションおよび改変を含むことが理解されるべきである。本発明はまた、個別にまたは集合的に、本明細書中で言及されるかまたは示されるすべての段階、特色、組成物、および化合物を、ならびに段階または特色の任意の2つまたはそれ以上の任意の組み合わせおよびすべての組み合わせを含む。
【0165】
参照文献
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】FCSの非存在下(a)ならびにFCSおよび細胞外マトリックスへの接着の両方の非存在下(b)における、光学密度によって反映されるようなSKまたはEVを過剰発現するHUVECの生存を示す画像である。(a)は9回の独立した実験に由来する43個の観察のプールしたデータを示し、(b)は0日目=1に標準化された2回の独立した実験からの10個の観察のプールしたデータを示す。0日目の対応するベクターと比較して*p<0.001であった。バーは95%信頼区間を表す。(c)は基本条件下(0.5%FCSを補充し、増殖因子を補充しない内皮基本培地中で24時間)、および増殖因子を用いる24時間の刺激に応答した場合の、SKを過剰発現する細胞および対照(EV)を過剰発現する細胞におけるサイクリンD1およびサイクリンEの発現を示す(ウェスタンブロットによって)。ロードしたFlt-1(VEGF-RI)を示す。
【図2】20%FCSを補充した培養培地(a)および無血清培地(b)中のSKを過剰発現する細胞および対照(EV)を過剰発現する細胞上で実行されたDAPI染色を示す画像である。アポトーシス性細胞は強いDAPIの核染色を示す。
【図3】基本培地条件下(a)、または24時間の血清欠乏後(b)に測定された、SKを過剰発現する細胞およびEV対照を過剰発現する細胞中のカスパーゼ-3活性のグラフ表示である。この図は、EV=1(a)またはEV=10(b)に標準化した、5つの別々の内皮細胞株からプールしたデータを示す。EVと比較して*p<0.05であった。バーは95%信頼区間を表す。
【図4】基本条件下、および6時間の血清欠乏(SF)に応答した、SKを過剰発現する細胞および対照を過剰発現する細胞におけるAkt(p-Akt)のリン酸化を示すウェスタンブロット画像である。図Xbは5つの別々の内皮細胞株からのプールしたデータを示し、無血清条件におけるEVと比較して*p 0.05 SKであった。バーはSEMを表す。
【図5】SK(密なドット)またはEV(まばらなドット)を過剰発現するHUVECの細胞生存に対する、10mM LY294002(LY)を用いるPI-3K経路、または20mM UO126(UO)もしくは20mM PD98059(PD)を用いるMAPK経路を阻害することの効果のグラフ表示である。DMSOの等価な濃度のビヒクル対照を示す。この図は、0日目=1に調整した、2回の別々の実験からの8個の観察のプールしたデータを示す。バーは95%信頼区間を表す。2日目のSKまたはEVを過剰発現する対応する未処理細胞と比較して*p<0.001であった。
【図6】PECAM-1に対するSKの過剰発現の効果を示す画像である。SKを過剰発現する細胞およびEV対照を過剰発現する細胞におけるメジアン蛍光強度(MFI)によって示されるPECAM-1の細胞表面発現を(a)に示す。この図は、EVに対して標準化された3回の別々の実験からのプールしたデータを示す。EVと比較して*p<0.01 SKであった。バーは95%信頼区間を表す。(b)はこれらの細胞におけるPECAM-1およびb-カテニン発現についてのウェスタンブロットを示す。(c)はSKを過剰発現する細胞および対照(EV)を過剰発現する細胞におけるPECAM-1リン酸化を示す。(d)はVEカドヘリンの細胞表面発現を示し、3回の別々の実験からのプールしたデータを表す。
【図7】基本条件下(a)またはトロンビン刺激(0.2単位/ml)に応答した場合(b)の、異なる時点にわたるSKを過剰発現する細胞およびEVを過剰発現する細胞のFITC-デキストランへの浸透性(時間=0に標準化)を示すグラフ表示である。(b)はトロンビンを用いる処理に応答したEVおよびSKの浸透性の比較を示し、すべての時点にわたって基本条件下でEVと比較して*p<0.001 SKであった。この図は、3回の別々の実験からの7個の観察のプールしたデータを示す。バーは95%信頼区間を表す。
【図8】懸濁物中(a)および無血清条件(b)におけるSK(密なドット)またはEV対照(まばらなドット)を過剰発現するHUVECの細胞生存に対するPECAM-1シグナル伝達を変化させることの効果のグラフ表示である。20mg/mlウサギポリクローナル抗PECAM-1抗体(RP)、20mg/ml正常ウサギ血清(NRS)、およびVEカドヘリンに対するモノクローナル抗体(55-7H1)(20mg/ml)の細胞生存に対する効果を示す。この図は、0日目=1に標準化した、2つの別々の実験からの10個の観察のプールしたデータを示す。バーは95%信頼区間を表す。2日目の未処理ベクターと比較して*p<0.001であった。
【図9】SK(密なドット)を過剰発現する細胞およびEV対照(まばらなドット)を過剰発現する細胞におけるPI-3K/Akt経路の活性化に対するPECAM-1シグナル伝達の効果のグラフ表示である。(a)は、血清欠乏の6時間後の基本条件下でリン酸化されたAkt(p-Akt)および全体のAktを測定するウェスタンブロットを示す。20mg/mlのウサギポリクローナル抗PECAM-1抗体(RP)および20mg/ml正常ウサギ血清(NRS)の効果を示す。(b)は(a)と同様に実行した4回の別々の実験からのリン酸化されたAktの定量のプールしたデータを示す。バーはSEMを表す。無血清条件における未処理のSK対未処理のEV、および無血清条件における未処理のSKと比較したRPで処理したSKで*p<0.05であった。
【図10】SK(密なドット)またはEV (まばらなドット)を過剰発現するHUVECにおける細胞生存に対する百日咳毒素(50ng/ml)を用いるGPCRを阻害する効果のグラフ表示である。(a)は0日目=1に標準化した2回の別々の実験からの8個の観察のプールしたデータを示す。2日目の未処理SKと比較して*p<0.05であった。バーは95%信頼区間を表す。(b)は2回の別々の実験からの6個の観察のプールしたデータを示す。バーはSEMを表す。未処理SKと比較して*p<0.05であった。
【図11】レトロウイルス(a,c,e)またはアデノウイルス(b,d,f)の感染によって達成された、SKを過剰発現する細胞、G82Dを過剰発現する細胞、および対照(EV)を過剰発現する細胞について、基本の(a,b)およびTNFα刺激された接着分子発現(c-f)を実証するグラフ表示である。VCAM-1発現はa-dに示され、Eセレクチン発現はe、fに示される。結果は、基本についてEV=1、刺激された発現についてEV=10に標準化し、バーは95%信頼区間を表す。図a-fは、内皮細胞の異なる単離物を使用して、3回、6回、4回、5回、4回および6回の別々の実験からのプールした結果をそれぞれ示す。EVと比較して*p<0.05であった。
【図12】アデノウイルスに感染させた細胞において4時間の間TNFα(0.004ng/ml)を用いる非常に低い用量に対するVCAM-1(a)およびEセレクチン(b)の応答を実証するグラフ表示である。この図は、同じ傾向が観察された2つの別々の実験の代表的なものである単回の実験からのデータを示す。
【図13】SKを過剰発現する細胞および対照(EV)を過剰発現する細胞においてメジアン蛍光強度(MFI)によって反映されるような、基礎 (a,b)およびTNFα刺激された(c,d)、VCAM-1発現(a,c)およびEセレクチン発現(b,d)に対する50ng/ml百日咳毒素(PTx)を用いる18時間の処理の効果を実証するグラフ表示である。この図は、異なる内皮細胞の単離物を使用した2回の別々の実験の代表的なものである単回の実験からのデータを示す、
【図14】SKを過剰発現する細胞およびEVを過剰発現する細胞において4時間S1P 5μMを用いる刺激に対する接着分子応答を実証するグラフ表示である。VCAM-1発現を(a)に示し、Eカドヘリン発現を(b)に示す。この図は2回の独立した実験からのプールしたデータを示し、バーはSEMを表す。スチューデントのt検定によって未処理ベクターと比較して*p<0.05であった。
【図15】基本状態において(a-c)および0.04ng/mL TNFαで4時間刺激した場合(d-f)の、EVを過剰発現する内皮細胞(a,d)、SKを過剰発現する内皮細胞(b,e)、およびG82Dを過剰発現する内皮細胞(c,f)への好中球接着の画像(80倍拡大)である。白色矢印は接着好中球を示す。この図は2回の別々の実験の代表的なものである1回の実験からのデータを示す。
【図16】2回の別々の実験から得られた10個の別々の顕微鏡視野のプールしたデータから決定された、100内皮細胞当たりの接着好中球の数のグラフ表示である。バーはSEMを表す。対応するEVと比較して*p<0.05、スチューデントのt検定によって、対応するEVと比較して**P<0.001であった。
【図17】30分(A)または1時間(B)でのMatrigel中でのSKを過剰発現する細胞および対照(EV)を過剰発現する細胞による管形成の画像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたはそれ以上の哺乳動物内皮細胞機能的特徴を調節する方法であって、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的な特徴を調節する、方法。
【請求項2】
哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法であって、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的な特徴を調節する、方法。
【請求項3】
哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法であって、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する、方法。
【請求項4】
内皮細胞が血管内皮細胞である、請求項1〜3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法であって、内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼの過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴が、生存度、増殖、分化、細胞表面分子発現、サイトカイン応答性または向上した増殖もしくは生存度の1つまたはそれ以上である、方法。
【請求項6】
細胞表面分子が接着分子である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
機能的特徴がアップレギュレートされる、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼの過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴が炎症誘発性表現型の誘導である、請求項4記載の方法。
【請求項9】
炎症誘発性表現型がダウンレギュレートされる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼの過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴が血管形成表現型の誘導である、請求項4記載の方法。
【請求項11】
血管形成表現型がアップレギュレートされる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
血管形成表現型がダウンレギュレートされる、請求項10記載の方法。
【請求項13】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼの過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴がCD34+内皮細胞前駆細胞表現型の維持である、請求項4記載の方法。
【請求項14】
CD34+前駆細胞表現型が維持される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
状態が血管移植、創傷修復、組織移植もしくは器官移植、または脈管遮断された組織の修復であり、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が向上した内皮細胞増殖、向上した内皮細胞生存度、またはCD34+内皮細胞前駆細胞表現型の維持の1つまたはそれ以上である、請求項3記載の方法。
【請求項16】
状態が炎症性状態であり、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が内皮細胞炎症性表現型または血管形成表現型の1つまたはそれ以上のダウンレギュレーションである、請求項3記載の方法。
【請求項17】
状態が関節リウマチである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
状態が望ましくない血管形成によって特徴付けられ、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が内皮細胞血管形成表現型のダウンレギュレーションである、請求項3記載の方法。
【請求項19】
状態が腫瘍である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
調節がスフィンゴシンキナーゼレベルのアップレギュレーションであり、かつアップレギュレーションが、スフィンゴシンキナーゼまたはその機能的等価物、誘導体、もしくはホモログをコードする核酸分子、あるいはスフィンゴシンキナーゼ発現産物、またはその機能的誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物を内皮細胞に導入することによって達成される、請求項1〜8、10〜11、または13〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
調節が、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子の転写的および/または翻訳的調節を調節するタンパク質性分子または非タンパク質性分子と、内皮細胞を接触させることによって達成される、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
調節がスフィンゴシンキナーゼレベルのアップレギュレーションであり、かつアップレギュレーションが、スフィンゴシンキナーゼ発現産物のアゴニストとして機能するタンパク質性分子または非タンパク質性分子と、内皮細胞を接触させることによって達成される、請求項1〜8、10〜11、または13〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
調節がスフィンゴシンキナーゼレベルのダウンレギュレーションであり、かつダウンレギュレーションが、スフィンゴシンキナーゼ発現産物のアンタゴニストとして機能するタンパク質性分子または非タンパク質性分子と、内皮細胞を接触させることによって達成される、請求項1〜6、8〜10、12〜13、または16〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
分子が変異体スフィンゴシンキナーゼであり、変異体が82位のグリシン残基のアスパラギン酸への置換によって特徴付けられる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
内皮細胞活性がインビボで調節される、請求項1または2記載の方法。
【請求項26】
内皮細胞活性がインビトロで調節される、請求項1または2記載の方法。
【請求項27】
哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造における、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節することが可能な薬剤の使用であって、ここでスフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する、使用。
【請求項28】
請求項27記載の使用であって、薬剤が、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子の転写的および/または翻訳的調節を調節するタンパク質性分子もしくは非タンパク質性分子であるか、スフィンゴシンキナーゼ活性のアゴニストとして機能するか、またはスフィンゴシンキナーゼ活性のアンタゴニストとして機能する、使用。
【請求項29】
哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造における、スフィンゴシンキナーゼまたはスフィンゴシンキナーゼをコードする核酸の使用であって、ここでスフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する、使用。
【請求項30】
内皮細胞が血管内皮細胞である、請求項27〜29のいずれか1項記載の使用。
【請求項31】
請求項30記載の使用であって、内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼの過剰発現によってアップレギュレートされ、かつ特徴が生存度、増殖、分化、細胞表面分子発現、サイトカイン応答性、または向上した増殖もしくは生存度の1つまたはそれ以上である、使用。
【請求項32】
細胞表面分子が接着分子である、請求項31記載の使用。
【請求項33】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼ過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴が炎症誘発性表現型の誘導である、請求項30記載の使用。
【請求項34】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼ過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴が血管形成表現型の誘導である、請求項30記載の使用。
【請求項35】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼ過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴がCD34+内皮細胞前駆細胞表現型の維持である、請求項30記載の使用。
【請求項36】
CD34+前駆細胞表現型が維持される、請求項35記載の使用。
【請求項37】
医薬が異常なまたはさもなくば望ましくない内皮細胞機能によって特徴付けられる状態を処置するために使用される、請求項27〜36のいずれか1項記載の使用。
【請求項38】
状態が血管移植、創傷修復、組織移植もしくは器官移植、または脈管遮断された組織の修復であり、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が向上した内皮細胞増殖、向上した内皮細胞生存度、またはCD34+内皮細胞前駆細胞表現型の維持の1つまたはそれ以上である、請求項37記載の使用。
【請求項39】
状態が炎症性状態であり、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が内皮細胞炎症性表現型または血管形成表現型の1つまたはそれ以上のダウンレギュレーションである、請求項37記載の使用。
【請求項40】
状態が関節リウマチである、請求項39記載の使用。
【請求項41】
状態が望ましくない血管形成によって特徴付けられ、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が内皮細胞血管形成表現型のダウンレギュレーションである、請求項37記載の使用。
【請求項42】
状態が腫瘍である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
請求項1〜26のいずれか1項の方法において使用される場合に、調節薬剤および1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項1】
1つまたはそれ以上の哺乳動物内皮細胞機能的特徴を調節する方法であって、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的な特徴を調節する、方法。
【請求項2】
哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴を調節する方法であって、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが、内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的な特徴を調節する、方法。
【請求項3】
哺乳動物における異常なまたはさもなくば望ましくない内皮細胞機能によって特徴付けられる状態の処置および/または予防のための方法であって、哺乳動物におけるスフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節する段階を含み、ここで、スフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する、方法。
【請求項4】
内皮細胞が血管内皮細胞である、請求項1〜3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法であって、内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼの過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴が、生存度、増殖、分化、細胞表面分子発現、サイトカイン応答性または向上した増殖もしくは生存度の1つまたはそれ以上である、方法。
【請求項6】
細胞表面分子が接着分子である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
機能的特徴がアップレギュレートされる、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼの過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴が炎症誘発性表現型の誘導である、請求項4記載の方法。
【請求項9】
炎症誘発性表現型がダウンレギュレートされる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼの過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴が血管形成表現型の誘導である、請求項4記載の方法。
【請求項11】
血管形成表現型がアップレギュレートされる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
血管形成表現型がダウンレギュレートされる、請求項10記載の方法。
【請求項13】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼの過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴がCD34+内皮細胞前駆細胞表現型の維持である、請求項4記載の方法。
【請求項14】
CD34+前駆細胞表現型が維持される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
状態が血管移植、創傷修復、組織移植もしくは器官移植、または脈管遮断された組織の修復であり、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が向上した内皮細胞増殖、向上した内皮細胞生存度、またはCD34+内皮細胞前駆細胞表現型の維持の1つまたはそれ以上である、請求項3記載の方法。
【請求項16】
状態が炎症性状態であり、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が内皮細胞炎症性表現型または血管形成表現型の1つまたはそれ以上のダウンレギュレーションである、請求項3記載の方法。
【請求項17】
状態が関節リウマチである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
状態が望ましくない血管形成によって特徴付けられ、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が内皮細胞血管形成表現型のダウンレギュレーションである、請求項3記載の方法。
【請求項19】
状態が腫瘍である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
調節がスフィンゴシンキナーゼレベルのアップレギュレーションであり、かつアップレギュレーションが、スフィンゴシンキナーゼまたはその機能的等価物、誘導体、もしくはホモログをコードする核酸分子、あるいはスフィンゴシンキナーゼ発現産物、またはその機能的誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物を内皮細胞に導入することによって達成される、請求項1〜8、10〜11、または13〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
調節が、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子の転写的および/または翻訳的調節を調節するタンパク質性分子または非タンパク質性分子と、内皮細胞を接触させることによって達成される、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
調節がスフィンゴシンキナーゼレベルのアップレギュレーションであり、かつアップレギュレーションが、スフィンゴシンキナーゼ発現産物のアゴニストとして機能するタンパク質性分子または非タンパク質性分子と、内皮細胞を接触させることによって達成される、請求項1〜8、10〜11、または13〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
調節がスフィンゴシンキナーゼレベルのダウンレギュレーションであり、かつダウンレギュレーションが、スフィンゴシンキナーゼ発現産物のアンタゴニストとして機能するタンパク質性分子または非タンパク質性分子と、内皮細胞を接触させることによって達成される、請求項1〜6、8〜10、12〜13、または16〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
分子が変異体スフィンゴシンキナーゼであり、変異体が82位のグリシン残基のアスパラギン酸への置換によって特徴付けられる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
内皮細胞活性がインビボで調節される、請求項1または2記載の方法。
【請求項26】
内皮細胞活性がインビトロで調節される、請求項1または2記載の方法。
【請求項27】
哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造における、スフィンゴシンキナーゼの機能的レベルを調節することが可能な薬剤の使用であって、ここでスフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する、使用。
【請求項28】
請求項27記載の使用であって、薬剤が、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子の転写的および/または翻訳的調節を調節するタンパク質性分子もしくは非タンパク質性分子であるか、スフィンゴシンキナーゼ活性のアゴニストとして機能するか、またはスフィンゴシンキナーゼ活性のアンタゴニストとして機能する、使用。
【請求項29】
哺乳動物における1つまたはそれ以上の内皮細胞機能的特徴の調節のための医薬の製造における、スフィンゴシンキナーゼまたはスフィンゴシンキナーゼをコードする核酸の使用であって、ここでスフィンゴシンキナーゼのレベルの過剰発現を誘導することが内皮細胞の1つまたはそれ以上の機能的特徴を調節する、使用。
【請求項30】
内皮細胞が血管内皮細胞である、請求項27〜29のいずれか1項記載の使用。
【請求項31】
請求項30記載の使用であって、内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼの過剰発現によってアップレギュレートされ、かつ特徴が生存度、増殖、分化、細胞表面分子発現、サイトカイン応答性、または向上した増殖もしくは生存度の1つまたはそれ以上である、使用。
【請求項32】
細胞表面分子が接着分子である、請求項31記載の使用。
【請求項33】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼ過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴が炎症誘発性表現型の誘導である、請求項30記載の使用。
【請求項34】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼ過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴が血管形成表現型の誘導である、請求項30記載の使用。
【請求項35】
内皮細胞機能的特徴がスフィンゴシンキナーゼ過剰発現によってアップレギュレート可能であり、かつ特徴がCD34+内皮細胞前駆細胞表現型の維持である、請求項30記載の使用。
【請求項36】
CD34+前駆細胞表現型が維持される、請求項35記載の使用。
【請求項37】
医薬が異常なまたはさもなくば望ましくない内皮細胞機能によって特徴付けられる状態を処置するために使用される、請求項27〜36のいずれか1項記載の使用。
【請求項38】
状態が血管移植、創傷修復、組織移植もしくは器官移植、または脈管遮断された組織の修復であり、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が向上した内皮細胞増殖、向上した内皮細胞生存度、またはCD34+内皮細胞前駆細胞表現型の維持の1つまたはそれ以上である、請求項37記載の使用。
【請求項39】
状態が炎症性状態であり、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が内皮細胞炎症性表現型または血管形成表現型の1つまたはそれ以上のダウンレギュレーションである、請求項37記載の使用。
【請求項40】
状態が関節リウマチである、請求項39記載の使用。
【請求項41】
状態が望ましくない血管形成によって特徴付けられ、かつ調節された内皮細胞機能的特徴が内皮細胞血管形成表現型のダウンレギュレーションである、請求項37記載の使用。
【請求項42】
状態が腫瘍である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
請求項1〜26のいずれか1項の方法において使用される場合に、調節薬剤および1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2006−514828(P2006−514828A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501245(P2005−501245)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001356
【国際公開番号】WO2004/035786
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(501315854)メドベット・サイエンス・プロプライエタリー・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001356
【国際公開番号】WO2004/035786
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(501315854)メドベット・サイエンス・プロプライエタリー・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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