説明

スフィンゴ脂質由来医薬組成物

本発明は、医薬組成物としての特定のスフィンゴ脂質/スフィンゴ脂質誘導体、及び脂質ラフトに関連する障害の治療、防止、及び/又は改善のための医薬の製造におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質ラフト内の病理プロセスに関係する障害の治療又は予防及び/又は改善のための薬剤の調製における特異的スフィンゴ脂質誘導体の使用及び医薬組成物としての当該誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞膜を形成する脂質2重層は、何十年もの間その組織が生化学者及び生物物理学者による集中的調査の対象となってきた2次元液体である。2重層の大半は均質な流体であると考えられてきたが、2重層液体の構造及び力学についての我々のモデルの中に側方不均一性部分、脂質ミクロドメインを導入する試みがくり返し行なわれてきた(Glaser, Curr. Opin. Struct. Biol. 3 (1993), 475-481; Jacobson, Comments Mol. Cell Biophys. 8 (1992), 1-144; Jain, Adv. Lipid Res. 15 (1977), 1-60; Winchil, Curr. Opin. Struct. Biol. 3 (1993), 482-488。
【0003】
上皮細胞が、各ドメイン内に異なるタンパク質及び脂質組成物を伴った状態で頂端及び基底外側ドメインへとその細胞表面を分極するということが認識されたために、「脂質ラフト」の概念を導く新しい開発が着手された(Simons, Biochemistry 27 (1988), 6197-6202; Simons, Nature 387 (1997), 569-572)。膜タンパク質用のプラットフォームとして機能するスフィンゴ脂質及びコレステロールの集合体という概念は、これらの集合体が界面活性剤抽出を生き延びたという観察事実により推進されたものであり、界面活性剤耐性膜DRMと呼ばれる(Brown, Cell 68 (1992), 533-544)。これは、4℃でのトリトン−X100抽出に対する耐性とラフト会合を同一視する作業上の大発見であった。界面活性剤耐性の喪失を導くメチル−β−シクロデキストリンを使用したコレステロールの枯渇という第2の規準を付加することで(Ilangumaran, Biochem. J. 335 (1998), 433-440; Scheiffele, EMBO J. 16 (1997), 5501-5508)、現場内の複数の作業班は広範な生物学的反応における脂質ミクロドメインの役割を探究するように駆り立てられることになった。現在、細胞極性、タンパク質トラフィキング及びシグナル変換を含む数多くの細胞プロセスを調節する上での脂質アセンブリの役割に対する裏づけが増々増え続けている。
【0004】
細胞膜は2次元液体である。かくして側方不均質性は、膜平面内の液体−液体間の非混和性を暗に示している。水和した脂質2重層が温度の1関数としての相転移を起こすということは充分知られてきている。各々の脂質種について規定の温度で発生するこれらの転移にはつねに、系の秩序の幾分かの変化が関与している。これらの転移のうち最も重要なのは、2重層が秩序の高い擬似2次元結晶質固体から擬似2次元液体へと転移させられるいわゆる「主遷移」又は「連鎖融解転移」である。これには、特に2重層平面内の並進(位置)秩序及びこの平面に直交する方向での脂質鎖の配座秩序のものである、系の秩序の大幅な変化が関与する。並進秩序は、膜平面内の側方拡散係数に関係し、配座秩序は、アシル鎖内のトランス/ゴーシュ比に関係する。主転移は、秩序/無秩序相転移として記述されてきており、従って2つの相は、転移温度より低い温度での固体秩序(So)相及びこの温度より高い温度での液体秩序(ld)相として標識づけされ得る。コレステロールとリン脂質は、コレステロールの少ない液体無秩序(ld)相と共存できる液体秩序(lo)相を形成する能力をもち、かくして、完全に液相の膜内での相の共存を可能にする(Ipsen, Biochem. Biophys. Acta 905 (1987) 162-172; Ipsen, Biophys. J. 56 (1989), 661-667)。ステロールは、脂質の並進可動性を大幅に削減させることなく、ステロールが連鎖に最も隣接している場合に隣接する脂肪族鎖上で配座の秩序化を課することのできるその平坦で剛直な分子構造の結果として(Sankaram, Biochemistry 29 (1990), 10676-10684)それを行なう(Nielsen, Phys. Rev. E. Stat. Phys. Plasmas Fluids Relat. Interdiscip. Topics 59 (1999), 5790-5803)。ステロールは、so(ゲル)脂質2重鎖相の結晶格子の中に正確に適合しないという事実に起因して、それは、それがこの相内で溶解する場合、結晶並進秩序を分断するが、それでも配座秩序を大幅に混乱させることはない。かくして、適切なモル画分にあるコレステロールは、ld又はso脂質2重層相を液体秩序(lo)相へと転換させることができる。
【0005】
脂質ラフトは、細胞膜内部の膜構成要素を分離するように機能する(細胞膜の外層中でスフィンゴミエリン及びコレステロールを富有する)特殊な化学組成物の脂質プラットフォームである。ラフトは比較的小さい(直径30〜50nm、サイズ推定値は使用されるプローブ及び分析される細胞型に応じて著しく変動する)ものと理解されるが、それらは或る種の条件下で合体し得る。脂質組成に関するその特異性は、不均質なモデル膜系における相分離挙動を連想させる。実際、化学組成及び界面活性剤溶解度に関するその特性の多くは、不飽和ホスファチジルコリン・スフィンゴミエリン(又は長鎖飽和ホスファチジルコリン)及びコレステロール(de Almeida, Biophys. J. 85 (2003), 2406-2416)の三元混合物から成るモデル系の中で見られるものに類似している。ラフトは、血漿膜を構成する異種l相脂質2重層内のlo相のドメインとみなすことができる。生体膜は液体であるという意見の一致がみられることから、so相共存は大部分の場合について無視することができる。その他の相(単数又は複数)がld相であるかlo相であるかは、この相(これらの相)を構成するリン脂質の化学的同一性及びその中のコレステロールのモル画分によって左右されることになる。ラフトは、液体秩序相と同一視でき、非ラフト液相としての膜の残りの部分を基準とする。熱力学の枠内では、相はつねに多数の分子から成る巨視的系である。しかしながら、脂質2重層内では、相は往々にして、各々それ自体1つの相の熱力学的定義を厳密に満たすのに充分な数の分子を有することのできない小さなドメイン(わずか数千個の分子であることが多い)へと断片化される傾向をもつ。かくして液体秩序ラフト相は、膜内のラフト相の全てのドメイン(小さいもの又はクラスタ化されたもの)を含む。ラフトをとり囲む膜の残りは、均質な浸透性の液相であってもよいし、或いは又、まだ特徴づけされていない液体ドメインへとさらに細分割されてもよい。
【0006】
Pralle, J. Cell. Biol. (2000) 148, 997-1008は、脂質ラフトのサイズを測定するために光子力顕微鏡を利用し、線維芽細胞の血漿膜の中のラフトが、約3000個のスフィンゴ脂質により覆われた表面積に対応する直径50nmの集合体として拡散するということを発見した。その脂質組成及び細胞小器官表面積が詳細に検査された培養したベビーハムスタの腎臓(BHK)細胞からのデータに基づいて、個々の細胞が約2000μm2の表面積を有することがわかる。細胞血漿膜の脂質組成物は、26%のホスファチジルコリン、24%のスフィンゴミエリン、及び12%のグリコスフィンゴ脂質を含有する。血漿膜内の脂質組織の非対称性に起因して、大部分のスフィンゴ脂質は2重層の外層を占有しているが、一方ホスファチジルコリンは半分未満しかこの層中にないと推測されてきた。
【0007】
スフィンゴ脂質の大部分がラフト関連のものであると仮定すると、ラフトは細胞表面の半分超を網羅することになる。膜タンパク質の密度は1μm2あたり約20,000分子であると推測されてきた。かくして、血漿膜はそれに応じて約40×106個のタンパク質分子を含むことになる。50−nmのラフトの数は約106となり、タンパク質の密度がラフト内で周囲の2重層内と同じであるならば、各ラフトは約20のタンパク質分子を担持することになる。BHK細胞が代表的なものであるとすると、線維芽細胞血漿膜内を浮動するラフトの密度は高いことになる。20×106個のラフトタンパク質分子が多少の差こそあれ無作為に分布させられた場合、各ラフトはおそらく異なるタンパク質サブセットを含有することになる。従って、1つのラフトの細胞質ゾル層に付着したキナーゼが同じ個々のラフト内でその基質と遭遇する可能性は低い。個々のラフトの小さいサイズは、ラフトで運ばれるシグナリングタンパク質を「オフ」状態に保つために重要であり得る。従って、活性化が起こるためには、数多くのラフトが合わさってクラスタ化し、外で起こっていることにより邪魔されることなくシグナル変換プロセスに参加するタンパク質が遭遇し得るより大きなプラットフォームを形成しなくてはならない。かくして、ラフトは小さいものであり、活性化された時点でそれらはクラスタ化し、機能的に関係のあるタンパク質が相互作用し得るより大きなプラットフォームを形成する。ラフト会合及びクラスタ化を分析するための1つの方法は、特異的抗体により生きた細胞の表面上でラフト及び非ラフト構成要素をパッチングすることにある。(Harder, J Cell Biol. 141 (1998), 929-942; Janes, Semin Immunol. 12 (2000), 23-34)。2つのラフト構成要素が抗体により交差結合されている場合、それらは血漿膜内で重複するパッチを形成することになる。しかしながらラフトタンパク質及びトランスフェリンレセプタといったような非ラフトマーカーのパッチングは、分離したパッチを導く。2つのラフト構成要素の同時パッチングは、細胞に対する両方の抗体の同時付加に依存している。抗体が逐次付加された場合、分離したパッチが優位を占める。とりわけ、パッチング挙動はコレステロールに依存している。小さいサイズ及び個々のラフトの不均質な組成の結果として、これらの構造に、シグナリングが続いて起こるはずである場合、特異的な形でクラスタ化されなくてはならない。日々の臨床的実践において遭遇するこのようなラフトクラスタ化プロセスの1例は、アレルギー免疫応答中のIgEシグナリングである(Sheets, Curr. Opin. Chem. Biol. 3 (1999), 95-99; Holowka, Semin. Immunol. 13 (2001), 99-105)。肥満細胞又は好塩基性細胞の脱顆粒を刺激することによりアレルギー反応を惹起するアレルゲンは多価であり、複数のIgE抗体分子を結合させる。2つ以上のIgEレセプタ[Fc(ε)RI]の交差結合は、界面活性剤耐性の増大により測定されるようにラフトとのその会合を増大させる。ラフト内で、交差結合されたFc(ε)RIは、2重アシル化されたSrc関連キナーゼであるラフト会合Lynによりリン酸化されたチロシンとなる。Fc(ε)RIリン酸化は、Syk関連キナーゼを補充し、これらのキナーゼは活性化され、下流側シグナリング分子の結合及び足場を導き、最終的にシグナリングプラットフォームの形成を導く。この構造は、ラフトタンパク質LAT(T細胞の活性化のリンカー)を内含し、これが拡張するプラットフォーム内への付加的なラフトのクラスタ化を誘導する(Rivera, Int. Arch. Allergy Immunol. 124 (2001), 137-141)。シグナリングはカルシウム動員を導き、これが細胞内貯蔵からのヒスタミンといったような予め形成されたメディエータの放出を誘発する。ラフトプラットフォーム内により多くの関与物質が収集されればされるほど、シグナリング応答は高くなる。ラフトクラスタ化によるシグナリングカスケードの無制御増幅は、活性化過剰を誘発し、クインケ浮腫やアレルギー性ショックといったような生命を脅すような結果をもたらす可能性がある。シグナリング集合体全体を脱リンにより解離させるか又はエンドサイトーシスによる構成要素の内在化によってダウンレギュレートすることが可能である(Xu, J. Cell Sci, 111 (1998), 2385-2396)。かくしてIgeシグナリングにおいては、脂質ラフトは流体ミクロドメイン内に関与タンパク質を集中させその側方拡散を制限してシグナリング部位にタンパク質がとどまるようにすることによって、効率を増大させるのに役立つ。脂質ラフトへの分配という小さな変更でさえ、増幅を通して、アレルギー反応において起こるように、シグナリングカスケードを開始させるか又は有害な量的過剰を促す可能性がある(Kholodenko, Trends Cell Biol. 10 (2000), 173-178)。ラフトクラスタ化のもう1つの臨床的に関連性ある例は、他の細菌のなかでもClostridium Streptcoccus及びAeromonas種により分泌される孔形成毒素の発病の機序である。これらの毒素は、軽いセリュライトからガス壊疽及び偽膜性大腸炎に至る範囲の疾病をひき起こす可能性がある。最も研究されているのは、海洋細菌Aeromonas hydrophila由来の毒素アエロリシンである。アエロリシンは、分泌され宿主細胞の表面上でGPI定着されたラフトタンパク質に結合する。タンパク質分解の後膜内に毒素が取込まれ、次にラフト依存的に7量体化して、その中を小分子及びイオンが流れ病原性変化を誘発するラフト会合チャンネルを形成する。アエロリシンのオリゴマー化は溶解状態で誘発され得るが生きた細胞の表面で105分の1未満の低い毒素濃度で発生する。この多大な効率増加は、毒素のオリゴマー化により駆動されるラフトクラスタ内への集中及びラフト結合による活性化に起因する。ここでも又、わずかな変化が、ラフトクラスタ化の増幅による莫大な効果を導き得る(Lesieur, Mol. Membr. Biol. 14 (1997), 45-64; Abrami, J. Cell Biol. 147 (1999), 175-184)。
【0008】
脂質ラフトは、特異的タンパク質セットを含有する(van Meer, Annu. Rev. Cell Biol. 5 (1989), 247-275; Simons, Annu. Rev. Biophys. Biomol. Atruct. 33 (2004), 269-295)。これらには、なかんづく、2重アシル化タンパク質、例えばsrcファミリーのチロシンキナーゼ、ヘテロマーGタンパク質のGαサブユニット及び内皮一酸化窒素シンターゼ、コレステロール及びパルミチン酸塩連結ハリネズミタンパク質及びその他のパルミチン酸塩連結タンパク質ならびに膜貫通タンパク質が含まれる。飽和アシル鎖及びコレステロールが付着されたタンパク質を、液体秩序ラフトドメインと会合させることができる。モデル膜での研究は、このような脂質修飾を含むペプチドが液体秩序ドメインと会合するということを確認した(Wang, Biophys. J. 79 (2000,) 919-933)。GPIアンカーがその脂肪酸組成に関して異なっているということに留意すべきである。一部のGPIアンカーは不飽和アシル鎖を含有しており、これらが脂質ラフトとどのように相互作用するかは、今後研究されなくてはならない。
【0009】
膜貫通タンパク質は、2重層を横断することから、液体秩序ドメインの充てんを分断し得る。それでもlo相は液相であり従って膜平面内に長距離秩序をもたない。脂質ラフトとタンパク質の会合は、2つの共存する相の間のタンパク質の分配のための平衡分配係数によって描写される単純な溶解度問題として考えることができ、そうでなければそれはラフト脂質に対する或る程度の化学的親和力を要求するものと理解することができる。複数のタンパク質がコレステロールと相互作用する。カベオリンが主たる例である(Murata, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995), 10339-10343)。同様に、ガングリオシドを含むグリコスフィンゴ脂質と相互作用する受容タンパク質の例もある(Hakomori, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99 (2002), 225-232)。スフィンゴ脂質に対する結合のため、構造タンパク質モチーフが同定されてきた(Mahfoud, J. Biol. Chem. 277 (2002), 11292-11296)。最近の結果は同様に、タンパク質が膜環境に応じて異なる状態で存在し得るということも実証している。Gタンパク質カップリングされた7らせん膜貫通タンパク質であるグルタミン酸塩レセプタは、コレステロールが欠如した膜へと再構成された時点で低親和力状態にある。レセプタは、液体秩序コレステロール含有膜の中でその配座を変え、今度は高い親和力でそのリガンドを結合させる(Eroglu, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 100 (2003), 10219-10124)。EGFレセプタはガングリオシドGM3との相互作用によって活性化され、コレステロール枯渇により不活性化される(Miljan, Sci. STKE. 160 (2002) 15)。該レセプタは、高親和力結合能力について脂質環境に依存していると思われる。この挙動差を検分するための1つの方法は、膜の2重層溶媒中の溶質としてタンパク質を考えることであると思われる。脂質2重層が2相を有する場合各々の相は異なる溶媒である。タンパク質は、その環境に左右され従ってそれが溶解させられている2重層溶媒相に左右される配座を有する。従って非ラフトドメイン内ではそれは1つの配座を有し、ラフトドメインではもう1つの配座を有するものと予想することができる。レセプタ活性化は、2重層中の異なる脂質ドメイン間の分配係数及び相共存により左右されることになる。もう1つの問題点は、液体秩序2重層が液体無秩序2重層に比べ厚いため、タンパク質の膜貫通ドメインの長さにある。これらのパラメータは、細胞表面に対するタンパク質選別の役割を果たす(Bretscher, Science 26 (1993), 1281-1281)。ただし、膜貫通ドメインを2重層の厚みといかに整合させるべきかは、未解決の問題である。今までのところ、異なる膜貫通ドメイン長をもつ異なる膜貫通タンパク質がいかにして液体秩序及び液体無秩序ドメインへと分配するかということからの詳細な分析は全く実施されていない。血漿膜内の単スパン膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインは通常、ゴルジ複合体内又は小胞体内に常在するタンパク質の膜貫通ドメインよりも長い。
【0010】
Anderson, Mol. Biol. Cell 7 (1996), 1825-1834は、ホルボールエステルPMA又はマクロライドポリエン抗生物質ナイスタチン及びフィリピンを用いたCV−1又はHeLa細胞の治療が可逆的にシミアンウイルス40(SV40)による感染を遮断したということを実証している。周知の腫瘍プロモータであるホルボールエステルは、タンパク質キナーゼCの活性剤であり、その陥入を遮断することによりカベオラを分断する(Smart (1994) J. Cell Biol. 124, 307-313)。コレステロール結合薬物ナイスタチン及びフィリピンは、構造的に類似したアンフォテリシンβといったようなポリエン抗カビ剤の成員の代表であり、真菌感染の治療のための標準的療法において広く使用されている。Anderson及び共同研究者らは、これらの薬物によるコレステロール枯渇に起因するカベオラの選択的分断が、観察された効果の原因となり、カベオラがウイルス進入を媒介する可能性があるということを推測している。
【0011】
Gidwani, J. Cell Sci. 116 (2003), 3177-3187は、脂質ラフトを分断するために特異的両親媒性物質を利用するインビトロ検定について記述している。一部のセラミドが、細胞シグナリングにおける血漿膜構造及びホスホリパーゼD活性の役割を調査するための有用なプローブとして役立ち得るということが推測されている。
【0012】
Wang, Biochemistry 43 (2004), 1010-1018は、ステロール/ステロイド構造と脂質ラフトへの参加の間の関係について調査している。いずれかのラフト環境により支持され得るプロセスと細胞内のコレステロールに依存する生物学的プロセスを区別するためにステロールを使用することができることから、これらの著者はこの重要な問題を考慮している。興味深いことに、Wang及びその共同研究者らは、生体膜内の秩序ドメインの形成を促したステロイドを発見した。
【0013】
国際公開第01/22957号(WO01/22957)は、スフィンゴ脂質/コレステロールミクロドメインの変調のためのガングリオシドの使用について教示しており、ガングリオシドがタンパク質特にGPI−APの転位/交換によりラフトの変調をひき起こすことが教示されている。特にアンカータンパク質、アセチル化タンパク質、キナーゼ及び/又はコレステロールアンカータンパク質の場所に影響を及ぼすことによってスフィンゴ脂質−コレステロールミクロドメインを変調させるために臨床的環境下でガングリオシド、ガングリオシド誘導体又はコレステロール誘導体を使用できるということが推測されている。
【0014】
本発明の基礎を成す問題は、脂質ラフトにより調節される生物学的/生化学的プロセスに連結される及び/又は結びつけられる障害における臨床的及び/又は薬学的介入のための手段及び方法を提供することにある。
【0015】
この技術的問題に対する解決法は、以下で及びクレーム中で特徴づけされる実施形態を提供することによって達成される。
【発明の開示】
【0016】
したがって、本発明は、以下の式(1):
【化1】

を有する化合物又は医薬として許容されるその塩、誘導体、溶媒和物又はプロドラッグを含む医薬組成物を提供する。
【0017】
式(1)の化合物は、脂質ラフト上、その中、又はその内部に発生しうる生化学的/生物物理学的病理プロセスによってひき起こされる疾患/障害の治療、予防及び/又は改善のための医薬組成物の製造のための使用のためにも提供される。
【0018】
本書に提供されている構造式においては、
【化2】

は単結合又は2重結合を表わすために使用され
【化3】

は単結合、2重結合又は3重結合を表示するために用いられている。
【0019】
「炭化水素」は、炭素原子及び水素原子に基づく、直鎖又は分枝、飽和又は不飽和、非還式又は環式であるが、非芳香族性の基を表す。炭化水素基は、上記基の特定の組合せを含んでもよい。例えば、炭化水素基は、とりわけ、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルキレン−シクロアルキル基、シクロアルキレン−アルキル基、アルキレン−シクロアルケニル基、及びシクロアルケニレン−アルキル基を含むことができる。シクロアルキル基及びシクロアルキレン基は、好ましくは、それらの環内に3〜8個の炭素原子をもつ。シクロアルケニル基及びシクロアルケニレン基は、好ましくは、それらの環内に5〜8個の炭素原子をもつ。
【0020】
さらに、本発明において与えられている一般構造式は、表示された化合物の考えられるすべての立体異性体及びジアステレオマーを網羅するように意図されている。異なる形で指示されているのでないかぎり、天然に発生するコレステロールの立体化学的形態が好まれる。
【0021】
Xは、NH、NHCO、NHCONH、NHCO2、及びNHSO2から選ばれ、好ましくは、NH、NHCO又はNHCONH、より好ましくは、NHCOである。
【0022】
1は、OR、NR2又はOPO32-であり、ここで、RはH又はC1-4アルキルである。好ましくは、R1はOH又はOPO32-、より好ましくはOHである。R1は、OCO(C1-4アルキル)であることも企図される。
【0023】
2は、NH2、NH(C1-4アルキル)、OH、H、ハロゲン又はOであり、但し、R2がOである場合、
【化4】

は二重結合であり、他の全ての場合、
【化5】

は単結合である。R2は、N(C1-4アルキル)2又はO(C1-4アルキル)であることも企図される。好ましくは、R2はOH又はOCH3である。
【0024】
3は、C9-25、好ましくはC9-19の炭化水素基であり、ここで、1以上の水素は場合によりハロゲンで置換される。好ましくは、R3は、1以上のトランス二重結合を含むC9-19炭化水素基又はC9-19アルキル基である。より好ましくは、R3はC13-15アルキル基である。
【0025】
4は、C1-5炭化水素基(ここで、1以上の水素はハロゲンで場合により置換される);1以上のC1-4アルキル基又はハロゲンで場合により置換されるC3-8シクロアルキル環;(C3-8シクロアルキル)メチレン基、ここで、シクロアルキル環は、1以上のC1-4アルキル基又はハロゲンで場合により置換される;〔2−(C3-8シクロアルキル)〕エチレン基、ここで、シクロアルキル環は、1以上のC1-4アルキル基又はハロゲンで場合により置換される;1−アダマンチル基、(1−アダマンチル)メチレン基、(1−アダマンチル)エチレン基;又はC6-30、好ましくは、C6-24炭化水素基であって、1以上のシス二重結合を含むもの(ここで、1以上の水素は、ハロゲンで場合により置換される)である。1以上の水素がハロゲンで場合により置換される、場合により1以上のトランス二重結合を含むC6-30、好ましくはC6-24炭化水素基も、置換基R4として企図される。さらに、当該C6-30及びC6-24炭化水素基内の末端炭素原子上の水素原子の内の1つは、OH、O(C1-4アルキル)、OCO(C1-4アルキル)で場合により置換されうる。
【0026】
4は、以下の式(2):
【化6】

の基であることもできる。
21は、1〜3の整数である。但し、XはNH、NHCONH又はNHCO2である場合、n21は1ではない。
22は、1又は2の整数、好ましくは1である。
23は、0〜5、好ましくは1〜4の整数である。
各R22は、独立にH又はC1-3アルキル、好ましくはH又はCH3である。
23はO−R21である。R23はNH−R24であってもよい。
21はC1-4アルキルである。R21はCO(C1-4アルキル)又はHであってもよい。好ましくは、R21はCH3又はCOCH3である。
24はC1-4アルキル、CO(C1-4アルキル)又はHである。好ましくは、R24はCOCH3又はHである。
4はHであることもできる。但し、XはNH又はNHCONHである。
【0027】
好ましくは、R4は、C1-5アルキル、C5-7シクロアルキルであって1以上のC1-4アルキル基で場合により置換されたもの;1−アダマンチル;又はC6-20アルケニルであって場合により1以上のトランス二重結合を含むものである。他の別のよりさらに好ましい態様においては、R4は式(2)の基である。XがNH又はNHCONHである場合、R4は、他の好ましい態様において、Hである。
【0028】
本発明に従うと、驚くべきことに、ヒトの疾患及び障害に関与する生物学的及び/又は生化学的プロセスは、脂質ラフトを分断することにより影響され得るということが発見された。これは、脂質ラフト内部の調節分子の分配、脂質ラフトとのタンパク質複合体の形成及び/又は脂質ラフトのクラスタ化と干渉し、かくして病的状態を妨げる。従って、ここで提供されているのは、細胞好ましくは異常細胞の脂質ラフト中、その上又はその内部で起こる生物学的プロセス、特に病理学的プロセスと干渉する能力をもつ特異的分子すなわちスフィンゴ脂質誘導体である。これらの分子は、本発明に従うと「脱ラフト化物質」とみなされる。脱ラフト化物質は、ラフト構成要素の生合成を阻害する能力、ラフト構成要素の膜内取込み(輸送)を阻害するか変調させる能力、膜からラフトの主要構成要素を抽出する能力、又は間に挿入することによりラフト構成要素間の相互作用を阻害する能力のいずれかを有する。同様に、「脱ラフト化物質」が脂質ラフトのサイズを改変させる能力をもつ化合物でありかくして前記ラフト内の単数又は複数の生物学的機能を阻害することも考慮されている。従って、脂質ラフトの体積又はサイズの「増大」も又、本書で提供されている構成要素により誘発される「脱ラフト化」プロセスとして考えられている。特に、本書に提供されている化合物は以上で記述されている生物学的プロセス、なかんづく脂質ラフト内への挿入によるラフト構成要素間の相互作用の防止/阻害において有用である。
【0029】
添付例で立証されているように、本書で提供されている化合物の脱ラフト化特性は、全く異なる生化学、生物物理学及び/又は細胞培養実験により見極められ立証されている。これらの検定には、脱ラフト化リポソーム親ラフト検定(D−LRA)、ウイルス出芽検定、ウイルス繁殖及び感染力検定、脱顆粒検定、SV40感染力検定ならびにHIV感染力検定が含まれる。技術的詳細は、添付の例の中で記されている。
【0030】
本書で提供されている化合物は、ヒトの疾患又は障害の治療(ならびに予防及び/又は改善)において特に有用である。本書で提供されている化合物は、特異的生物物理学的/生化学的試験において精査されてきており、又、細胞ベースの疾患/障害モデルの中でさらに評価されてきた。
【0031】
従って、本書に記述された化合物は同様に脂質ラフト上、その中又はその内部で発生する生化学/生物物理学的病理プロセス(単複)によりひき起こされる疾患/障害の治療、予防及び/又は改善においても有用である。かかる疾患/障害ならびにかかる生化学/生物物理学的病理プロセスの対応する例が本書に記されている。従って、脂質ラフト上、その中はその内部で発生する生化学/生物物理学的病理プロセスという用語は、例えば、ウイルス又は細菌感染時点でクラスタ化する病原体誘発型の異常ラフトクラスタ化、病原体感染時点での脂質ラフト内の(細菌)毒素のオリゴマー構造の形成又は脂質ラフト内での(免疫グロブリンEレセプタといった)シグナリング分子の活性増強、を意味する。同様に、通常よりもきつい脂質ラフト/脂質ラフト構成要素のパッキングも、本発明に従った「生化学/生物物理学的病理プロセス」とみなされる。
【0032】
以下の化合物(10a)〜(10h)は、化合物1の好ましい例である。
【化7】

【0033】
以下の化合物(10i)〜(10s)、及び化合物(10u)〜(10x)も、本発明に係る医薬組成物中の式(1)の化合物として好ましい。
【化8】

【0034】
スフィンゴシン誘導体に特に有利なディスラフティング特性を付与するいくつかの構造的特徴が存在する。これらの構造的特徴は、好ましい化合物中、単独で又は組み合されて存在しうる。
【0035】
上記特徴の内の1つは、式(1)を有するスフィンゴシン誘導体のX基に付着した嵩高い(バルキーな)基の存在である。バルキーな基を担持するスフィンゴシン誘導体が取り込まれると、ラフトの構造は乱され、これが、生物学的機能の調節を導きうると推定される。このメカニズムを介して作用しうるディスラフターの例は、R4が1−アダマンチル、(1−アダマンチル)メチレン又は(1−アダマンチル)エチレンであるところの先に列記したスフィンゴシン誘導体である。このメカニズムを介して作用しうる誘導体の他の例は、R4が、1以上のC1-4アルキル基又はハロゲンで場合により置換されたC3-8シクロアルキル環;(C3-8シクロアルキル)メチレン基であって、そのシクロアルキル環が1以上のC1-4アルキル基又はハロゲンで場合により置換されたもの;又は〔2−(C3-8シクロアルキル)〕エチレン基であって、そのシクロアルキル環が、1以上のC1-4アルキル基又はハロゲンにより場合により置換されたものであるところの先に列記したスフィンゴシン誘導体である。この作用モードを提示する他の誘導体は、式中R4が、2−アミノ基に付着されたゲラニル又はファルネシル残基により例示される分枝炭化水素であるところのスフィンゴシン誘導体である。
【0036】
第2の構造的特徴は、側鎖の全体両親媒性構造をもたらすスフィンゴシン誘導体の親油性側鎖の内の1つの中の1以上の極性基の存在である。このタイプのスフィンゴシン誘導体がラフト中に取り込まれると、上記両親媒性側鎖がラフト構造を乱すと信じられ、これが、その機能の調節をもたらしうる。このメカニズムを介して作用しうるディスラフターの例は、式中R4が式(2)の基であるところの先に列記したスフィンゴシン誘導体である。
【0037】
第3の構造的特徴は、スフィンゴシン誘導体の脂質側鎖の内の1つの中のシス二重結合の存在である。シス二重結合の存在は、柔軟性を低下させ、そして脂質側鎖の伸びたコンホメーションからの逸脱を引き起こす。このタイプのスフィンゴシン誘導体がラフト中に取り込まれると、非柔軟性、かつ、非線形の側鎖がラフト構造を乱すと信じられ、これが、その生物学的機能の調節をもたらしうる。このメカニズムを介して作用しうるディスラフターの例は、式中、R4が、1以上のシス二重結合を含むC6-30炭化水素基であって、1以上の水素がハロゲンにより場合により置換されたものであるところの先に列記されたスフィンゴシン誘導体である。
【0038】
スフィンゴシン誘導体のディスラスティング特性を強化すると信じられる第4の構造的特徴は、分子の有する全体的に見て「円錐状の形状」である。これは、スフィンゴシン誘導体に、長い脂質側鎖と、短い脂質側鎖を取り込むことにより達成されうる。例えば、R3が長い側鎖、例えば、C9-25アルキルでありながら、R4は、短い側鎖、例えば、C1-5炭化水素(ここで、1以上の水素が場合によりハロゲンで置換される)であることができる。
【0039】
式中XがNHCOである式(1)を有するセラミド誘導体は、標準的なペプチド・カップリング条件下、Koskinen(P.M. Koskinen, A.M.P. Koskinen, Synthesis 1998, 1075、及び当該文献中に引用される文献)によりレビューされるように様々な長さの骨格をもって得られうるスフィンゴシン・ベースを、好適なカルボン酸と反応させることにより容易に製造されうる。多種多様な好適なカルボン酸構造ブロックが商業的に入手しうる。さらに、オリゴグリコール基を含むカルボン酸構造ブロックは、商業的に入手しうるし又はそれらの合成は、F. Voegtle (F. Voegtle, V. Heimann, Liebigs Ann. Chem. 1980, 858-862)により記載されるように達成しうる。対応のアルコキシ(ポリ−1,3−プロピレン)酢酸構造ブロックは、商業的に入手しうるメトキシプロピオン酸メチル・エステルの還元、その後の3−ブロモプロピオネートによるO−アルキル化、そしてその後のケン化により、得られうる。連続的な還元/アルキル化サイクルは、増加した鎖長をもつ構造ブロックを作り出すことができる。モノ−、ビス−及びトリ−1,2−プロピレングリコール・モノエチル・エーテルは商業的に入手しうる。ブロモアセテートによるそれらのアルキル化及びその後のケン化は、対応のカルボン酸構造ブロックを提供しうる。
【0040】
式中XがNHCONHとNHCO2である、式(1)を有する、それぞれ、ウレアとカーバメートは、スフィンゴシン誘導体から調製されうる対応のイソシアネートと、アルコール又はアミンとの反応により形成されうる。これらのアルコールとアミンは、本分野に周知の手順によりカルボン酸から容易に得られうる。
【0041】
これに反し、式中XがNHである式(1)を有する化合物は、それ自体商業的に入手しうるか又は対応のカルボン酸から得られうる。対応のカルビノールから得られる好適な前駆体を用いた単純なアルキル化戦略により、提供されうる。
【0042】
式中XがNHSO2である式(1)を有する化合物は、対応のアルキル又はアルケニル・ハライドのスルホン化(E.E. Gilbert, Sulfonylation and Related Reactions, Interscience, New York, 1965, pp. 136-148, 161-163)、その後のスルホニル・クロライドへの変換を介して形成されうる、各種スルホニル・クロライドとの、スフィンゴシン・ベースの反応により合成されうる。
【0043】
化合物(10a)、(10b)、(10c)、及び(10d)は商業的に入手しうる。
【0044】
化合物(10e)と(10f)は、基質としてC18−スフィンゴシンを、そして試薬として商業的に入手しうる4−tert−ブチルシクロヘキシル・カルボン酸と1−アダマンチル・カルボン酸を、それぞれ、使用して、標準的なペプチド・カップリング条件下、アミド形成により得られうる。C18−スフィンゴシンは、文献(A.H. Merrill, Y.A. Hannun (Eds.), Methods in Enzymology, Vol. 311. Academic Press, 1999; P.M. Koskinen, A.M.P. Koskinen, Synthesis 1998, 1075)中に記載されるように調製される。
【0045】
同様のやり方で、化合物(10g)は、エチル・ジアゾアセテート・アルキル化及びその後のケン化により、商業的に入手しうるテトラグリコールモノメチル・エーテルから2ステップで入手しうる、3,6,9,12,15−ペントキサヘキサデカノン酸との、C18−スフィンゴシンの反応により調製されうる。
【0046】
化合物(10h)は、商業的に入手しうるエチレングリコール・モノメチル・エーテルとエチル・ジアゾアセテート、その後の、得られたエチル・エーテルのケン化から文献中に記載されたように(R.B. Dyer, D.H. Metcalf, R.G. Ghirardelli, R.A. Palmer, E.M. Holt, J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 3621-3629)調製されうる、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸を用いたC18−スフィンゴシンのN−アルキル化により得られうる。
【0047】
化合物(10i)、(10p)、(10q)、(10r)、及び(10s)は、それぞれ、リノレン酸、farnesoic acid又はアラキドン酸との、C18−スフィンゴシン((10i)、(10p)及び(10r)に関して)又は3−メトキシ置換C18−スフィンゴシン((10q)及び(10s)に関して)のいずれかのN−アシル化により、調製されうる。
【0048】
化合物(10j)、(10k)、(10m)、(10u)、(10v)、(10w)、及び(10x)は、対応のカルボン酸前駆体による好適なスフィンゴシン誘導体のN−アシル化により同様のやり方で調製されうる。ここで、化合物(10j)と(10x)の合成は、選択されたヒドロキシ又はアミノ官能基の追加のアセチル化を含みうる。
【0049】
最後に、化合物(10n)と(10o)は、対応のセラミド前駆体の水素化リチウム・アルミニウム還元により調製されうる。
【0050】
本書に提供されているデータ及び情報に従って、本発明は、脂質ラフト内又はその上で発生する生物学的プロセスによって特徴づけされるヒトならびに動物の障害及び疾患の治療のための医療環境における、スフィンゴ脂質誘導体の使用を提供している。以下で詳述する通り、これらの疾患及び/又は障害には、例えばアルツハイマ病又はプリオン関連疾患/障害、クロイツフェルト・ヤコブ病、クル、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群及び致死性家族性不眠症(FFI)などの神経変性障害ならびにウイルス細菌又は寄生虫感染症などの感染性疾患が含まれる。さらに、添付の例で実証される通り、免疫障害及び/又はアレルギー障害を本書に提供されている化合物により改善、予防又は治療可能である。これらの障害には、特に高アレルギー性障害(喘息)、自己免疫疾患(バッテン病など)、全身性紅斑性狼瘡又は動脈硬化症が含まれる。増殖性障害(ガン)などのさらなる障害及び糖尿病といった全身性障害が、本書で提供されている化合物により治療されるべき価値のある標的とみなされている。しかしながらこの状況下で特に有用であるのは、感染性疾患(好ましくはウイルス及び細菌性疾患、最も好ましくはインフルエンザ感染症)ならびに喘息といったような高アレルギー性障害である。
【0051】
さまざまな生物学的検定の中で本発明において与えられている化合物の阻害活性を調査する前に、前記化合物を複数の毒性検定で評価して、使用される濃度範囲内でのその安定性を実証するか又はその最高非毒性濃度を決定することも可能である。かくして、各々の疾患関連検定において観察される阻害効果は、評価対象の化合物により及ぼされる毒性効果に起因するものではないということを保証することができる。毒性検定は当該技術分野において周知であり、なかんづく乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)又はアデニル酸キナーゼ(AK)検定又はアポトーシス検定を含み得る。それでもこれらの(細胞)毒性検定は、当業者には周知であるとおりにこれらの検定に制限されない。従って以下の検定は、制限的な意味のない例である。
【0052】
1つの物質に暴露された培養細胞からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出は、インビトロでの日常的な生体適合性試験における細胞毒性についての感応性の高い正確なマーカーを提供する(Allen, Promega Notes Magazine 45 (1994), 7)。Promega社より市販のCyto Tox-ONETM LDH検定キット(Promega # G7891)は、マルチウェル平板内に存在する生存不能細胞の数を推定するための螢光方法と組合わせた均質膜無欠性検定を代表するものである。
【0053】
検定は、各々の化合物濃度についてトリプリケートウェル内でメーカーの使用説明書(Promega技術告示第306号)に従って実施することができる。インキュベーション期間はMDCK細胞について16時間、RBL細胞について1.5時間であり、LDH検定が基準として役立つ検定(病巣削減検定及び脱顆粒検定)における曝露時間に対応する。溶媒対照は、最高の溶媒濃度でのみ行なうことができる。
【0054】
(Promegaプロトコルの中で記述されるように)96ウェル平板の3つのウェルに界面活性剤を添加することによって最大の検定読取り値を提供することができる。背景は、細胞無しのウェルで構成され得る。各ウェルは独立して処理及び計算され得、そのため各々の平板は必要な対照を含有することになる。トリプリケート読取り値は平均され、平均背景が差し引かれ、結果として得られた値は最大%に換算される。毒性閾値は以下のように定義づけすることができる。MDCK細胞については、閾値を未処理又は溶媒処理済み対照の百分率の2倍として定義づけできる。
【0055】
或る化合物濃度における結果が閾値より低い場合には、この濃度を非毒性とみなすことができる。最高の非毒性濃度、最大の許容濃度、用量は、毒性が観察されなかった最高の用量として定義づけすることができる。
【0056】
本書で記述されている検定内での化合物の全ての評価は、LDH放出検定内で決定される通りの最大許容濃度以下で処理され得る。
【0057】
第2の検定においては、損傷を受けた細胞からの酵素アデニル酸キナーゼ(AK)の放出が測定される。全ての真核細胞内に存在する頑丈なタンパク質であるAKは、細胞が死枯したときに培地内に放出される。該酵素はADPをリン酸化してATPを産生し、これは生物発光性ホタルルシフェラーゼ反応を用いて測定される。
【0058】
18時間及び48時間のインキュベーションの後、各ウェルの上清20μLと新しい平板内に移し、メーカーの使用説明書に従ってToxiLight検定(Cambrex)を実施する(ToxiLight, Cambrex Bio Science, Rockland, USA, カタログ番号 LT07-117)。アデニル酸キナーゼによる添加されたADPからATPへの転換の後、ルシフェラーゼは第2段階でATP及びルシェリンからの光形成の触媒として作用する。ルミネセンス測定は、Genios Pro計器(TECAN)で実施される。
【0059】
この検定は、観察された阻害が細胞の化合物誘発型損傷に起因するものでないことを確認するために実験の部の中で記述されたSV40検定に先立って実施され得る。
【0060】
第3の検定では、本発明において提供された化合物により及ぼされるアポトーシスの誘発が評価される。細胞膜のリン脂質非対称性の喪失は、アポトーシスプロセスの最も早期の細胞変化の1つを表わす(Creutz, C. E. (1992) Science 258, 924)。アネキシンは、カルシウムの存在下でリン脂質を結合する遍在する相同タンパク質である。リン脂質2重層の外層に対する内層からのホスファチジルセリンの動きはアポトーシスの早期指標であることから、アネキシンV及びその染色接合体が曝露されたホスファチジルセリンと強くそして特異的に相互作用することを理由として、アポトーシス検出のためにこれを使用することができる(Vermes (1995) J. Immunol. Methods 184, 39)。
【0061】
検定は、メーカーの使用説明書に従って実施することができる(アポトーシス検出のためのアネキシンV接合体、分子プローブ、カタログ番号A13201)。72時間のインキュベーション時間の後、5μMの最終濃度で細胞に対しDRAQ5TMを添加する。1時間のインキュベーション時間の後、培地を廃棄し、Alexa Fluor 488 (Alexa 488;分子プローブ)に対し接合されたアネキシンVを添加する(1mLあたり250ng)。インキュベーション及び洗浄の後、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、OPERA自動共焦点顕微鏡(Evotec Technologies GmbH)での顕微鏡分析を488及び633nmのレーザー励起及び浸水10倍対物レンズを用いて実施する。1ウェルあたり4つの画像を自動的に撮影でき、細胞の合計数(DRAQ5)及びAnnexinV-Alexa488の面積を自動画像分析により決定することができ、又トリプリケートについての平均及び標準偏差を計算することができる。核の合計数(着色したDRAQ5)でアネクシンVの面積(画素)を除し100%を乗じることによりアポトーシス指数を計算することができる。結果は、背景(溶媒処理された細胞)に対する正規化の後の未処理細胞に対する比較として表現することができる。
【0062】
この検定は、観察された阻害が化合物添加の後のアポトーシスの誘発の結果でないことを確認するために以下に記述されたSV40検定に先立って実施することもできる。
【0063】
最後に、光学顕微鏡を用いた検定作業中の細胞形態を目視により評価することにより、試験対象の化合物によりひき起こされた毒性効果の証拠を査定することができる。
【0064】
以下では、疾患及び障害についてのより詳細な情報が示されている。これらの疾患及び障害は、本書で提供されている化合物を用いることで予防、改善又は治療され得る。本明細書中に提供される化合物は、上記医療において特に有用であり、式(10a)、(10b)、(10c)、(10e)、(10f)、(10g)、(10h)、(10i)、(10j)、(10k)、(10l)、(10n)、(10o)、(10p)、(10q)、(10r)、(10u)、(10v)、(10w)、及び(10x)に示す化合物が特に好ましい。特に、本明細書中には、別個の医療的介在又は防止において(10a)、(10b)、(10c)、(10e)、(10f)、(10g)、(10h)、(10i)、(10j)、(10k)、(10l)、(10n)、(10o)、(10p)、(10q)、(10r)、(10u)、(10v)、(10w)、及び(10x)が特に好ましいことを記載している。理論により束縛されることなく、一部のケースでは、本書に記述されている化合物がどのように機能し得るかの機械的モデルが提供される。
【0065】
アルツハイマ病(AD)は、大きなI型膜貫通タンパク質APP、つまりアミロイド前駆体タンパク質から誘導されたフラグメントであるアミロイド・ベータ・ペプチド(Aβ)を含有するアミロイド斑の形成に依存している。Aβフラグメントは、ベータ−セクレターゼ(BACE)及びガンマセクレターゼと呼ばれる酵素により逐次的に分割される。BACEは、その管腔ドメイン内でAPPを分割し、分泌された細胞外ドメインを生成するアスパルチル−プロテアーゼである。結果として得られた10kDaのC末端フラグメントは、その後、APPの膜貫通ドメインで作用しかくしてAβを放出するガンマ−セクレターゼによって分割される。第3の酵素活性、アルファ−セクレターゼは、Aβ領域の中央でAPPを分割することにより、BACEの活性に対抗し、非アミロイド生成性の産物、すなわち、ベータフラグメント(分泌された細胞外ドメイン)及び同じくベータセクレターゼにより分割される短かいC末端スタブを生み出す。従って、アルファ分割は、その共通基質APPのためにベータ分割と直接競合する。脂質ラフトは、基質APPに対するベータセクレターゼのアクセスを調節する上で1つの役割を果たす。本書で提供されている化合物は、脂質ラフトを分断しかくしてベータ−セクレターゼ分割を阻害するものと想定されている。理論に束縛されることなく、これは、1)ラフト内のAPP及びBACEの分配と干渉することによって、2)同じラフト内部で遭遇するためのAPP及びBACEの細胞内トラフィキングによって、及び3)Aβフラグメントの産生及びアルツハイマ病の発生を阻害するためのラフト内のBACEの活性によって、達成することができる。
【0066】
同様に、プリオン障害は、本書に提供されている化合物の医療的使用により治療及び/又は改善され得る。アミロイド形成を結果としてもたらす配座変化も同様にプリオン疾患の病因に関与している。プリオン疾患は、宿主コード化タンパク質(PrPc)の異常形態(PrPsc)により促進されると考えられている。PrPscはその正常な対応物PrPcと相互作用し、タンパク質がPrPscに変わるような形でPrPcの配座を変化させる。このとき、PrPscは脳内で自己凝集し、これらの凝集体は、クロイツフェルト・ヤコブ病、クル、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカ症候群又は致死性家族性不眠症といったヒトにおいて現われる障害をひき起こすものと考えられている(McConnell, Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 32 (2003), 469-492)。PrPcをPrPscに転換させる機序には脂質ラフトが関与し得る。PrPは、GPI−定着されたタンパク質である。PrPc及びPrPscの両方共がコレステロール依存的にDRMと会合させられる。GPIアンカーは転換にとって必要である。GPIアンカーが膜貫通ドメインにより交換される場合、異常なタンパク質への転換は遮断される。インビトロでは、PrPプロテアーゼ耐性により監視されるようなPrPcからPrPscへの転換は、PrPscを含有するミクロソームがPrPを含有するDRMと融合された場合に起こる(Baron (2003) J. Biol. Chem. 278, 14883-14892; Stewart (2003) J. Biol. Chem. 278, 45960-45968)。界面活性剤での抽出は、DRM内でのラフトクラスタ化を導く。単に膜を混合するだけでは新しいPrPscの測定可能な生成を導くことがなかったことから、この実験では、DRMとのミクロソームの融合が必要であった。
【0067】
従って脂質ラフトは異常なプリオン転換を促進する。エンドサイトーシスも同様に、APPのBACE分割についてそうであるように、プリオン転換に1つの役割を果たすことが示されてきた。PrPc及びPrPscを含有するラフトは恐らく、エンドサイトーシスの後にクラスタ化された状態となる。変換を媒介するものとして仮定されているタンパク質因子Xがエンドサイトーシス後のラフトクラスタ化に関与しているということも同様に可能である。PrPc及びPrPscがエンドサイトーシスの後に同じラフトプラットフォーム内にクラスタ化されたならば、相互作用効率の増大が結果としてもたらされ、転換の増幅が導かれることになったと思われる。従って、該発明の化合物は、同じく、プリオン病の治療及び/又は予防においても有用である。
【0068】
宿主細胞を感染させるために、複数のウイルス及び細菌が脂質ラフトを利用している。特に、脂質ラフトは、複数のエンベロープウイルスの進入、集合及び退出に関与する。添付の技術的例に示されているように、インフルエンザウイルスは、このようなウイルスのプロトタイプである
【0069】
本発明に記述されている化合物(脱ラフト化物質)は、1)ラフトを分断し、細胞表面に対するヘマグルチニン及びノイラミニターゼの輸送と干渉し、2)Mタンパク質により誘発されたスパイク糖タンパク質を含有するラフトのMタンパク質により誘発されるクラスタ化を防止し、かくしてウイルスの集合と干渉するか又は3)脂質ラフトのサイズ/体積を増大させるか、又は4)ラフト(ウイルス膜)及び非ラフト(血漿膜)の相境界で発生する出芽細孔の分体(挟み切り)を防止するために応用することができる。この点で好ましい化合物は、 (10b)、(10e)、(10f)、(10g)、(10h)、(10i)、(10j)、(10p)、(10q)、(10r)、(10k)、(10n)、(10o)、(10u)、(10v)、及び(10w)である。また、化合物(10b)、(10g)、(10h)、(10i)、(10j)、(10p)、(10q)、(10r)、(10k)、(10n)、(10o)、(10u)、(10v)、及び(10w)は特に好ましい。さらにより好ましい化合物は、(10b)、(10g)、(10h)、(10j)、(10u)、及び(10v)である。対応の実験的証拠を添付の実施例において提供する。例えば、本明細書中に記載するSV40アッセイにおいて提供されるさらなるデータが、特に化合物(10a)において、良好な阻害効果を示したことは注目に値する。
【0070】
ウイルス感染においては、ラフトクラスタ化がウイルス集合プロセスに関与している。理論により束縛されないものの、弱い疎水充填能をもつスフィンゴシン誘導体は、ラフト・クラスタリングを阻害すると推定される。同様に、脂質秩序相に対するアフィニティーをもつがその濃縮に貢献することができない分子、例えば、一本鎖(リゾ)脂質は、充填相互作用を弱めるであろう。
【0071】
例えば、C2−ジヒドロセラミド(10b)は、その親油性にも拘らず、膜の完全な破壊を伴わずに、天然のラフト成分、例えば、C16−セラミドに比較して、その不斉形状に因り、一定量の乱れを誘導することができる。化合物(10e)と(10f)内の2−アミノ官能基に付着されたバルキーな、親油性置換基は、同一の結果を提供する。但し、この場合、増加した立体的要求が、ラフトの乱れの原因であると考えられる。
【0072】
同様の効果が、化合物(10i)、(10p)、及び(10r)の置換パターンから生じうる。ここでは、蓄積したシス二重結合(10iの場合)、トランス二重結合とメチル置換の組合せ(10pのfarnesyl残基の場合)、又は4つの非共役トランス二重結合の蓄積(10rの場合)が、ラフト・ドメインの親油相内への挿入後、炭化水素構造の減少された充填能力を導くと考えられる。
【0073】
別の概念においては、スフィンゴシン誘導体の極性頭基の内側の水素結合の供与能力の低下も、構造(10q)と(10k)において例示されるように、脂質ラフト・ドメイン内の当該構造のより弱い充填を導く。これらの構造における主要な特徴は、上述のファルネシル残基(10q)の場合又は2位における短いヘキサノイル置換基(10kの場合)との組合せにおける3−メトキシ置換基であり、これにより、低下した対称性に因り低下した充填能力が導かれる。
【0074】
2位において水素結合能を高めることは、高い能力をもつ化合物を誘導する他の原理を提供する。化合物(10n)と(10o)においては、2位のアミド官能基は、上記の構造において観察されるものよりも僅かに低い程度までであるが、ウイルス複製の高められた阻害をもたらす、高められたラフトの破壊を導くアミンに還元される。
【0075】
2位における長い、対称の側鎖の末端に極性基を導入することは、さらにより好ましい成分を導く他の構造的特徴を提供する。化合物(10j)内の極性アセテート基は、ラフト・ドメインの脂質相内深くへの当該位置の導入を防止し、それにより、U形を提示する曲ったコンホメーションをもたらし、そして強く低下された充填能をもたらす。同様の効果が、化合物(10g)、(10h)、(10u)、(10v)、及び(10w)において存在することができ、一般式(2)により表されるそのエーテル誘導側鎖は、脂質ラフト・ドメイン内に取り込まれるとき、僅かに高まった乱れを生じさせるかもしれない。
【0076】
特に、化合物(10v)において見られる、上記の3−メトキシ置換と上記ポリエーテル側鎖との組合せは、ウイルス再生産のひじょうに効果的な阻害により示されるような最大の効果をもたらす。
【0077】
ウイルス再生産の提示された阻害を導く上記の構造的特徴は、実験の部に示すインフルエンザ感染の治療のための医薬の開発のための好適な候補として上述の化合物を提供する。
【0078】
HIV−1についてのウイルス放出の機序は、ラフトの関与に関してインフルエンザウイルスのものと類似していることから、上述の化合物はエイズの治療のためにも開発可能である。これを実証するため、エイズの疾病モデルとしてのHIV−1菌株NL4−3(実験室適応されたB型菌株)によるHeLaTZM細胞の感染の阻害について化合物をテストした。上記目的のために特に好ましい化合物は化合物(10a)である。したがって、上記分子の親油性サブ構造の不斉形状をもたらすスフィンゴシン・コア構造の2位に付着した短いヘキサノイル側鎖は、HIV感染の場合において医薬の介在のための特に好ましい構造を提供する。同一の実験環境において示されるように、他の好ましい化合物は(10v)、(10w)及び(10x)である。上記化合物に共通の構造的特徴は、少なくとも4つのグリコール単位を含むポリエーテル側鎖であり、当該ポリエーテル側鎖の末端にある追加の極性官能基の付着は、化合物(10x)の場合に証明されるように、さらに高まった能力をもたらす。対応の証拠を実験の部において提供する。
【0079】
上述の化合物又はその誘導体でアプローチできるさらなるウイルス疾患(制限的意味のない例としての)としては、ヘルペス、エボラ熱、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、C型肝炎ウイルス、ロタウイルス及び呼吸器合胞体ウイルスがある。従って、特異的(ウイルス)検定又はテストシステムに関してここで提供されている特に好ましい化合物ならびに好ましい化合物は同様に、その他の感染性疾患、特にウイルス感染の医学的介入及び/又は予防において有用であるとも考えることができる。
【0080】
本書で詳述する通り、インフルエンザウイルスの感染を受けた細胞内での脂質ラフトの分断又はSV40検定において活性である化合物は同様に、その他の医療環境、特にその他のウイルス感染、最も好ましくはHIV感染においても利用され得る。エイズ診療/HIV感染において有用であることが示された化合物がその他のウイルス感染といったようなさらなる感染性疾患においても有用であることも考慮されている。
【0081】
単純ヘルペスウイルス(HSV)進入には、ヘルペスウイルス進入メディエータ(HVEM又はHveA)又はネクチン−1(HveC)といった細胞レセプタとウイルス糖タンパク質の相互作用が必要である。HSV感染の間、ウイルス糖タンパク質gBの分画は、界面活性剤耐性膜(DRM)中での存在により明らかになるように、脂質ラフトと会合する。コレステロール枯渇を介した脂質ラフトの分断がHSV感染を阻害し、このことは、HSVが進入及び細胞シグナリングのためのプラットフォームとして脂質ラフトを使用することを示唆している(Bender)。該発明のラフト分断作用物質は、HSVの感染及び複製を阻害するための戦略としてウイルス糖タンパク質又は相互作用する分子のいずれかをラフト内に分配するのを阻害する上で利用可能である。
【0082】
同様にエボラ熱ウイルス集合及び出芽も脂質ラフトに依存している。これらの機能は、脂質ラフト内のオリゴマーを形成するマトリクスタンパク質VP40に依存する。本発明中に記述されている化合物の使用は、脂質ラフトの分断を導く。これは、VP40オリゴマー化ひいてはエボラ熱ウイルスの感染及び集合を阻害するための手段として使用することができる。
【0083】
エンテロウイルスは、細胞を感染させるためのレセプタとして、補体調節タンパク質崩壊加速因子(DAF)、GPI−定着タンパク質を使用する。その他のGPI固定タンパク質と同様に、DAFは脂質ラフトに分配する。一貫して、このレセプタ系を介して細胞を感染させるウイルスは脂質ラフトに依存している。特に脂質ラフトは細胞表面に結合した後、ウイルス進入にとって不可欠であると思われる。さらに、DAFレセプタ系を用いてウイルスはDRM抽出検定において脂質ラフト構成要素と同時に精製する。脂質ラフトはエンテロウイルスが細胞内に進入できるようにすることから、脂質ラフト又は脂質ラフトへのDAFの分配又は細胞感染を導く結合後事象を分断する本発明で開示される通りの化合物は、エンテロウイルスに基づく障害の予防及び治療にも使用可能である。
【0084】
コクサッキーウイルスの進入及び細胞感染は脂質ラフトに依存している。レセプタ分子(インテグリンαVβ3及びGRP78)が、コクサッキーウイルス感染の後に脂質ラフト内に蓄積する。該発明のラフト分断化合物は、脂質ラフト又は脂質ラフトへのコクサッキーウイルスレセプタの分配又は細胞感染を導く結合後事象を分断し、従ってコクサッキーウイルスに基づく障害(ならびにコクサッキーウイルスに類似したウイルスによってひき起こされる障害)の予防及び治療のために使用可能である。
【0085】
ラフトは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のライフサイクル、ひいてはAIDSにも関与している。理論により束縛されないものの、本発明の脱ラフト化物質は、ラフトを分断し、細胞表面に対するHIV糖タンパク質の輸送と干渉し、Gagタンパク質により誘発されるスパインク糖タンパク質を含有するラフトのクラスタ化を防止し、かくしてウイルスアセンブリと干渉するために応用できる。従って、本書に記述されている化合物は同様に、HIV感染及びエイズの治療及び改善においても医療上有用である。本書で上述したとおり、これに関して好ましい化合物は、本発明に従って「脱ラフト化物質」としての資格を有し、本書に記述した化合物の効能をテストするための検定である添付された「インフルエンザ検定」において陽性の結果を示す化合物である。従って、添付の「インフルエンザ検定」で陽性の結果を示す化合物は同様に、HIV感染(例えばエイズ)などのその他のウイルス感染の治療、予防及び/又は改善において利用することもできる。
【0086】
脂質ラフトは同様にC型肝炎ウイルス(HCV)の感染サイクルにも関与する。本発明で「脱ラフト化物質」として記述されている化合物は、脂質ラフト又は脂質ラフトに対するウイルス複製複合体のタンパク質構成成分の分配を分断するか又は、ウイルス集合に導く複製事象と干渉することができる。従って、本書で記述されている化合物は同様に肝炎、特にC型肝炎の予防及び治療においても有用である。
【0087】
ロタウイルスの細胞進入は、脂質ラフトにより左右される。ガングリオシドGM1、インテグリンサブユニットα2β3及び熱ショック同族タンパク質70(hsc70)といったようなロタウイルスレセプタとして関与する分子は、脂質ラフトと会合させられる。さらに、ロタウイルス感染性粒子は複製中にラフトと会合し、脂質ラフトは細胞表面への輸送のために運用される。本書で記述された化合物は、脂質ラフト又はロタウイルスのためのレセプタの分配、脂質ラフトを介した輸送及び複製に必要なタンパク質及び脂質複合体の形成を分断するために利用可能である。従って、これらは、ロタウイルス感染の予防及び治療において有用である。
【0088】
シミアンウイルス40(SV40)は、クラスリン被覆ピットを介してではなくむしろ非定型カベオラ媒介型エンドサイトーシス経路を介して細胞内に入る。(Anderson (1996) Mol. Biol. Cell 7, 1825-1834; Stang (1997) Mol. Biol. Cell 8, 47-57)。細胞摂取のこの機序は同様に、重症急性呼吸器症候群(SARS)及び上気道感染といったヒトの疾患をひき起こす原因である病原体であるウイルス族Coronaviridaeの成員、及び呼吸器合胞体ウイルス(Macnaughton (1980) J. Clin. Microbiol. 12, 462-468; Nomura (2004) J. Virol. 78, 8701-8708; Drosten (2003) N. Engl. J. Med. 348, 1967-1976; Ksiazek (2003) N. Engl. J. Med. 348, 1953-1966)によっても利用される。その上、細菌も又、結核をひき起こす例えばマイコバクテリウム種のように、細胞摂取のためにこの機序を使用する。かくして本書で提示されているSV40検定は、カベオラ媒介型細胞摂取のモデルとして役立ち、上述のウイルス及び細菌によりひき起こされる疾病の場合の薬学的診療のために本発明の中で記述される化合物を使用することができる。
【0089】
カベオララフト内へのシミアンウイルス40(SV40)の摂取は、細胞に進入するのにラフトを利用するさまざまな細胞及びウイルスによる感染の1つのモデルである(Pelkmans (2002) Science 296, 535-539)。カベオラ取込み、エンドサイトーシス及び早期細胞内トラフィキングの段階における細菌又はウイルス感染を阻害し得る化合物のためのスクリーンとして検定を使用する。この機序は、呼吸器合胞体ウイルス、コロナウイルス(例えばSARS)による感染及び結核を導くマイコバクテリウム種による細菌感染に特に関係する。従って、添付のSV40検定において陽性結果を示す化合物は、制限的な意味なく、Campylobacter spp., Legionella spp., Brucella spp., Salmonella spp., Shigella spp., Chlamydia spp., FimH and Dr+ Escherichia coli. による細菌侵入及び結核のような気道の感染の医学的診療という状況下で使用することもできる。
【0090】
本書に提示された化合物は、野生型SV40ウイルスでの感染を受けたHeLa細胞を用いてSV40検定により実証された通りのカベオラ媒介型機序により、かかる摂取を阻害するのに適している。その上、水疱性口内炎ウイルス(VSV)を用いた類似の検定における阻害の欠如は、VSVがクラスリン媒介型エンドサイトーシスを介して早期及び晩期エンドソーム内に進入するにつれてのこの作業仮説の能力を実証している。この状況下で、化合物10aは、ウイルス及び/又は細菌感染の場合の薬学的介入のためのさらに一層好ましい実施形態を表わしている。
【0091】
以上で指摘した通り、本書で記述した化合物は、分泌された細菌毒素により誘発される中毒及び細菌感染の治療又は改善において利用することもできる。
【0092】
コレラ(Vibrio cholerae 由来)、アエロリシン(Aeromonas hydrophilia)、炭疽菌(Bacillus anthracis)及びヘリコバクター毒素といったような細菌毒素は、その機能にとってきわめて重要であるラフト内のオリゴマー構造を形成する。ラフトは、コレラのためのガングリオシドGM1といったようなラフト脂質に対する結合によってターゲティングされる。オリゴマー化の防止は、ラフトクラスタ化の防止と等価であり、従ってウイルス感染に使用されるものと同じか又は類似の化合物は、細菌毒素の活性を阻害できるはずである。しかしながら、毒素は血液から急速に一掃されることになり、一連の治療が必要であり得るウイルス感染と比べて治療が短期間でありうることから、投与計画の差異が予想されると思われる。
【0093】
結核、細菌性赤痢及びクラミジア及び尿路疾患病原菌による感染といったような細菌感染においては、往々にしてカベオラが関与するラフト依存性内在化プロセスにおいて、細胞内に生体が取り上げられる。ラフト内での細菌レセプタの局在化の予防又は内在化の遮断が感染を防ぐことになる。
【0094】
結核は、ラフトが関与する細菌感染性疾患の一例である。まず第1に、補体レセプタ3型(CR3)が、ザイモサン及びC3b1−被覆粒子を内在化させることのできるレセプタであり、かつヒト好中球内のマイコバクテリウム・カンサシイの非オプソニン食作用の原因である。これらの細胞中では、CR3は血漿膜の脂質ラフト内に局在化された複数のGPI固定タンパク質と会合した状態で発見された。コレステロール枯渇は、ザイモサン又は血清オプソニン作用を受けたM・カンサシイの食作用に影響を及ぼすことなくM・カンサシイの食作用を著しく阻害する。CR3はGPIタンパク質と会合された時点で、M・カンサシイが内在化されているコレステロール富有ドメインの中で移転する。CR3がGPIタンパク質と会合されていない場合、それは、これらのドメインの外側にとどまり、ザイモサン及びオプソニン作用を受けた粒子の食作用を受けた粒子の食作用を媒介するが、V gamma 9 V delta 2 T細胞を特異的に刺激するマイコバクテリア抗原であるM・カンサシイイソペンテニルピロホスファート(IDP)の食作用は媒介しない。従って、本発明は同様に、マイコバクテリウム感染、好ましくはマイコバクテリウム結核感染の治療及び/又は改善における本書で開示された化合物の使用をも提供する。
【0095】
細菌性赤痢は、腸内細菌赤痢菌によりひき起される急性炎症性疾患である。脂質ラフト内部での感染中に分配する宿主タンパク質CD44、ヒアルロナンレセプタ及び赤痢菌インベイシンIpaBが関与する分子複合体が感染中に形成される。侵入プロセスには宿主細胞ならびにウイルスのタンパク質のラフト依存性相互作用が必要とされることから、脂質ラフト又は赤痢菌のレセプタの分配、赤痢菌タンパク質の分配、脂質ラフトを介した輸送及び複製に必要なタンパク質及び脂質複合体の形成を分断するために、本書に記述された化合物を利用することができる。従って、該発明は同様に、細菌性赤痢の治療又は改善における本書で記述されている化合物の医学/薬学的使用をも提供する。
【0096】
さらに心臓血管疾患と結びつけられるヒトにおける呼吸器感染の重要な原因であるクラジミア肺炎菌、ヒトにも感染する家畜及び鳥における重要な病原体であるオウム病クラミジアならびにその他のクラジミア菌株(クラジミア・トラコマチス血清型E及びF)は各々脂質ラフトを介して宿主細胞内に入る。
【0097】
該発明の化合物は、脂質ラフト又は脂質ラフトを介した複製及び輸送に必要なタンパク質及び脂質複合体の分配を分断するために使用され得、クラミジア感染、特にC、肺炎菌感染の予防及び治療のために使用可能である。
【0098】
1型線毛保有大腸菌は、その不浸透性構造にもかかわらず脂質ラフト依存性機序を介して尿路上皮組織に侵入する最も一般的なヒト尿路病原体である。本書で提供されている化合物は、脂質ラフト又はカベオラ、E. coliの結合、脂質ラフトを介した輸送及びその後の膀胱及び類似の上皮組織を横断した感染に必要なタンパク質及び脂質複合体の分配を分断することができる。従って、該発明において記述されている化合物は、細菌感染性疾患特に尿路疾患の予防及び治療のために使用可能である。
【0099】
さまざまな細菌毒素がその細胞毒性活性を及ぼすためにラフトを運用する。例えば、哺乳動物細胞上でアエロモナス細菌により産生される細孔形成性毒素アエロリシンは、BHK細胞上の80kDのグリュシル−ホスファチジルイノシトール(GPI)−定着タンパク質に結合し、ラフト内で分配する。このときプロトキシンは、宿主細胞プロテアーゼによりその成熟形態までプロセッシングされる。毒素と脂質ラフトの優先的会合は、局所的毒素濃度を増大させ、かくして、チャンネル形成のための前提条件であるオリゴマー化を促進する。従って、本書で記述されている化合物は同様に、細菌感染に関係する疾患の治療、予防又は改善においても有用である。本発明の状況下では、本書で記述されている化合物が同時療法アプローチにおいても利用されるということも考慮されている。従って、化合物が、さらなる薬物例えば抗生物質と組合せた形で、治療を必要とする患者に対して投与されるということも考慮されている。
【0100】
炭疽菌毒素の防御抗原(PA)は、細胞表面レセプタに対して結合し、かくして死的因子(LF)が取上げられその毒性効果を細胞質内で及ぼすことができるようにする。ヘプタマーPA又は抗体サンドイッチとの炭疽菌毒素レセプタ(ATR)のクラスタ化は、特殊化されたコレステロール及び血漿膜のグリコスフィンゴ脂質富有ドメイン(脂質ラフト)に対するその会合をひき起こす。薬物を用いてラフトの無欠性を改質することで、LF送達及びシトゾルMAPKキナーゼの分割が妨げられた。
【0101】
本書で開示されているとおりの「脱ラフト化物質」は、ラフトを分断し、毒素のクラスタ化/オリゴマー化と干渉するために利用可能である。従って、該発明の化合物は同様に、バシラス・アントラシス(炭疽菌)による感染の治療/予防においても有用である。
【0102】
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は、慢性胃炎、消化性潰瘍及び胃ガンの生成に関与してきた。脂質ラフトは、ヘリコバクター・ピロリ中毒の病原性機序において1つの役割を果たす。従って、本書で記述されている化合物は、例えば胃炎、消化性潰瘍及び/又は胃潰瘍の治療といったヘリコバクター感染の治療、予防又は改善においても有用である。
【0103】
本書で記述されている化合物は同様に、プラスモジウム感染、特に熱帯性マラリア原虫感染の治療/予防においても有用である。従って、本書で記述されている化合物は、脂質ラフト又はカベオラ、赤血球細胞に対する熱帯性マラリア原虫の結合又は脂質ラフトを介した輸送及びその後の感染に必要なタンパク質及び脂質複合体の分配を分断するために利用可能である。従って、これらをマラリアの予防及び治療のために用いることができる。
【0104】
同様に、本書で開示されている通りの化合物を用いることで、喘息及びその他の免疫疾患を治療することができる。この点で好ましい化合物は(10c)、(10g)、(10h)、(10l)、(10u)、(10v)又は(10w)であり、化合物(10c)、(10l)、(10v)、及び(10w)はより好ましく、化合物(10w)は特に好ましい。FcεRI媒介型シグナリングにおける脂質ラフトの役割を研究するために最も集中的に使用される細胞は、ラット好塩基球性白血病(RBL)細胞である。主としてT細胞の活性のためのリンカー(LAT)のまわりに集合したシグナリング複合体のFcεRI凝集に続く相互反応におけるラフトの役割が記述されている(Metzger, Mol, Immunol. 38 (2002), 1207-1211)。
【0105】
本書で記述されている通りの化合物は、RFを分断し、かつ1)細胞表面でのFcεRIの輸送及び凝集と干渉し、2)細胞表面でのLATによるラフトの輸送及び凝集と干渉するために利用され得る。従って、該発明は同様に、喘息の治療/予防における本書で開示されている化合物の使用をも提供する。本書で記述されている化合物は、免疫障害ならびに自己免疫障害において有用である物質をテストするための検定である細胞ベースの検定(脱顆粒検定)において陽性結果を提供する。
【0106】
上記治療のために特に好ましい化合物は、脱顆粒アッセイにおけるマーカーとして使用されるβ−ヘキソサミニダーゼの放出を効率的に阻害する化合物(10c)である。したがって、C2−セラミド(10c)により例示されるように、2−アミノ官能基のアセチル・キャッピングによる、スフィンゴ脂質の頭基の2位における長い親油性側鎖のほぼ完全な除去であって、当該分子の親油性サブ構造の強い非対称形状をもたらすものは、免疫学的疾患、特に喘息の場合における医薬介在のための特に好ましい置換パターンを提供する。この目的のために、セラミド骨格の4,5−二重結合は、脱顆粒アッセイにおけるC2−ジヒドロセラミド(10b)のより弱い阻害が示すように、かかる効果の発揮のために重要であるようである。
【0107】
免疫学的障害、特に喘息の治療のための他の好ましい態様においては、2位にポリエーテル側鎖を含むセラミドが使用される。この場合、例えば化合物(10g)、(10v)、及び(10w)を用いて、良好な結果が得られ、化合物(10v)と(10w)が好ましく、そして化合物(10w)がより好ましい。
【0108】
免疫学的障害、例えば、喘息の治療のためのスフィンゴシン誘導体の開発のための3−メトキシ置換の価値は、上記実験環境において脱顆粒プロセスを阻害する化合物(10l)により、さらに証明される。したがって、化合物(10l)は、免疫学的障害、特に喘息に対する医薬の開発のための本発明における他の好ましい態様を提供する。
【0109】
過アレルギー形成性応答、例えば喘息は、免疫グロブリンE受容体(Fc(eta)RI)の過活動から生じうる。この活動は、タンパク質と協調し、そして長期シグナリング・プラットフォームを確立するいくつかのラフト・プロセスを含む。当該プラットフォームの破壊又はアセンブリーの防止が、シグナリングを阻害する。これゆえ、ウイルス感染と同様に、弱められた疎水充填能をもつスフィンゴシン誘導体、又は液体乱れ相に対するアフィニティーを有するがその濃縮に寄与することができない分子、例えば、単鎖(リゾ)脂質は、充填相互作用を弱めるであろう。さらに、膜の曲がりを増加させる分子、例えば、スフィンゴシン誘導体の筒状形状よりもむしろ全体的に見て円錐状の形状をもたらす短いアシル基をもつスフィンゴシン誘導体は、効率的なタンパク質−タンパク質間相互作用を防止するために十分なラフトの一体性を破壊することができる。N−(3,6,9,12,15−オキサ−パルミトイル)−D−エリスロ−スフィンゴシン、及びC2−セラミドは、マスト細胞脱顆粒において強い阻害性であり、そしてそれゆえ、抗−喘息医薬の開発にとって有用である。C2−ジヒドロセラミドも、添付の実施例において証明されるように、上記アッセイにおいて中程度に活性である。
【0110】
従って、同様に自己免疫疾患ならびに高アレルギー性応答が、本書で開示されている化合物により治療され得る。
【0111】
バッテン病とも呼ばれるニューロンセロイド脂褐素症は、網膜ジストロフィに二次的な進行性神経障害、精神機能低下、発作及び視力喪失をひき起こす常染色体性劣性遺伝性障害の混成群である。視覚喪失が該障害の最も早期の症候であることから、若年性タイプでは、眼科医にとって特に関心が高いものである。これは、既知の機能が全く無い推定上の膜貫通タンパク質細胞N3Pをコードする細胞N3遺伝子内の突然変異の結果として発生する。細胞N3Pは脂質ラフト上に常在する。従って、本書で記述されている化合物は、例えばバッテン病の治療において有用である。
【0112】
全身性紅斑性狼瘡(SLE)は、Tリンパ球レセプタ媒介型シグナル変換経路内の異常により特徴づけされる。リンパ球特異性タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)は、SLE患者からのTリンパ球の中で減少し、この減少は疾患の活性と結びつけられている。CD45、C末端5rcキナーゼ(CSK)及びc−CblといったようなLCKホメオスターシスを調節する分子は、脂質ラフト内に局在化されている。従って、SLEも又、本書で開示されている化合物の使用のための医学的標的である。
【0113】
該発明のさらなる実施形態においては、アテローム性動脈硬化症が、医療環境内での及び/又は医薬組成物の調製のための本書で記述されている化合物の使用により治療/改善されることになる。
【0114】
同様にガンなどの増殖性障害も本書で記述されている化合物の標的となり得る。多数のシグナリング化合物が、ラフトに対するその分配を通して調節される。例えば、EGFレセプタのチロシンキナーゼ活性はラフト内で抑制され、コレステロールがこのプロセス中で調節の役割を果たす。同様にして、H−Rasはラフト内で不活性であり、そのシグナリング活性はラフト退出時点で起こる。ラフトは同様に、アポトーシスの調節において1つの役割を果たすことも示されてきた。本書で開示される脱ラフト化物質/化合物は、ガン治療、例えば白血病又は腫瘍性疾患ならびに黒色腫の治療において使用可能である。
【0115】
最近の抗癌プログラムは、アポトーシスのための癌細胞のターゲッティングを含む。疎水性相互作用を高めることができる本発明において記載されるスフィンゴ脂質誘導体は、より密なラフトの充填、及びアポトーシスの誘発を、導くであろう。これゆえ、上記化合物は、抗癌剤の開発のために有用であろう。
【0116】
さらなる介在的機会は、細胞分裂受容体シグナリングを防止することである。免疫原性シグナリングと同様に、これは、リガンドにより活性化された受容体のためのラフト・ベースのシグナリング・プラットフォームの確立を含む。免疫グロブリンE受容体シグナリングに関して記載したものと同様の分子が、細胞分裂誘発シグナリングをも阻害すると予想される。
【0117】
GLUT−4転座を導くインシュリンシグナリングは、血漿膜における脂質ラフト又はカベオラから発するインシュリンレセプタ−シグナリングに依存している。従って、該発明のさらなる実施形態においては、本書で記述されている化合物は、例えば糖尿病といった全身性障害のようなインシュリン関連性障害の治療のための医薬組成物の調製において使用可能である。
【0118】
したがって、本発明で記述されている化合物は、医薬組成物の製造及びヒト又は動物の疾患の治療、改善及び/又は予防のために、医療環境において特に有用である。かかる医薬組成物で治療されるべき患者は、好ましくはヒトの患者である。
【0119】
本書で「脱ラフト化物質」として記述されている化合物は、それ自体その薬理作用団又は医薬組成物としての使用における化合物として投与されてもよいし、又は薬剤として処方されてもよい。該医薬組成物は任意には、担体、希釈剤、充てん剤、錠剤分解物質、潤滑剤、結合剤、着色剤、顔料、安定剤、防腐剤又は酸化防止剤といったような薬学的に許容可能な賦形剤を含むことができる。
【0120】
該医薬組成物は、Remington's Pharmaceutical Sciences第20版の中で公表された技術といったような当業者にとって既知の技術により処方可能である。該医薬組成物は、筋内、静脈内、皮下、真皮下、動脈内、直腸内、鼻腔内、局所又は膣内投与といったような非経口、及び経口投与向けの剤形として処方可能である。経口投与向けの剤形としては、コーティング錠、素錠、軟ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、口中錠、トローチ、溶液、エマルジョン、懸濁液、シロップ、エレキシル剤、戻し用粉末及び顆粒、分散性粉末及び顆粒、薬用ガム、そしゃく錠及び発泡錠が含まれる。非経口投与向けの剤形としては、溶液、エマルジョン、懸濁液、分散及び戻し用の粉末及び顆粒が含まれる。非経口投与のためには、エマルジョンが好ましい剤形である。直腸内及び膣内投与のための剤形には座薬及びオブラ(ovula)が含まれる。鼻腔内投与向けの剤形は、例えば計量式吸入器などにより吸入及び送気を介して投与され得る。局所投与向けの剤形には、クリーム、ジェル、軟こう、こう薬、パッチ及び経皮送達(デリバリー)系が含まれる。
【0121】
本書で記述されているこれらの医薬組成物は、適切な用量で対象に投与することができる。投薬計画は、担当医及び臨床的要因によって決定される。医術において周知のとおり、いずれか1人の患者のための剤形は、患者の身長体重、体表面積、年令、投与すべき特定の化合物、性別、投与時間及び経路、全身健康状態、及び併用されるその他の薬物を含めた数多くの要因によって左右される。一般に、薬学組成物の規則的投与としての投薬計画は、一日に0.1μg〜5000mg単位、一部の実施形態では0.1μg〜1000mg単位の範囲内にあるべきである。投薬計画が連続輸液である場合、それは、それぞれ一分、体重1キログラムあたり0.1ng〜10μg単位の範囲内でもあり得る。進捗は、定期評価により監視可能である。
【0122】
本発明で使用可能な化合物の薬学的に許容可能な塩はさまざまな有機及び無機酸及び塩基を用いて形成可能である。酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、caphorate、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、へプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルスルホン酸塩、リン酸塩、picate、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩例えばトシル酸塩、ウンデカン酸塩などが含まれる。塩基付加塩の例としては、<成2>アンモニウム塩、アルカリ金属塩たとえばナトリウム、リチウム及びカリウム塩;アルカリ土類金属たとえばカルシウム及びマグネシウム塩;有機塩基(例えば有機アミンなど)を用いた塩例えばベンズアゼチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラビン、N−メチル−D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミド、t−ブチルアミンなど、アミノ酸を伴う塩例えばアルギニン、リジンなどが含まれる。
【0123】
本発明において使用可能な化合物の薬学的に許容可能な溶媒和物は、例えば水和物といった水との溶媒和物は、又はメタノール、エタノール又はアセトニトリルなどの有機溶媒とのすなわちそれぞれメタノラート、エタノラート又はアセトニトラートとしての溶媒和物の形で存在し得る。
【0124】
本発明の中で使用され得る化合物の薬学的に許容可能なプロドラッグは、化学的又は代謝的に分割可能な基を有しかつ、加溶媒分解によってか又は生理学的条件下で、インビボで薬学的に活性である該発明の化合物となる誘導体である。本発明の中で使用可能な化合物のプロドラッグは、アミノ又はヒドロキシ基といったような化合物の官能基を用いて従来の要領で形成され得る。プロドラッグ誘導体形態は、哺乳動物生体体内での溶解性、組織適合性又は遅延放出といった利点を提供することが多い(Bundgaard, H., Design of Prodrugs, pp. 7-9, 21-24, Elsevier, Amsterdam 1985を参照のこと)。
【0125】
本発明は同様に、哺乳動物細胞の脂質ラフト構造の中、その上又はその内部で発生する生化学的及び/又は生物物理学的プロセスに起因する(又はそれに関係づけされる)障害又は疾患の治療、改善又は予防方法をも提供する。対応する疾患/障害は本書で以上に提供されており、かかる改善、治療及び/又は予防を必要とする患者に対して投与すべき対応する有用な化合物は、同様に以上で開示され、添付の実施例及びクレーム中で特徴づけされている。最も好ましい環境においては、本書で記述される化合物(脱ラフト化物質)は、かかる治療を必要とする対象、特にヒトの対象に対する前記化合物の投与によりこれらの治療方法の中で使用される。
【0126】
本発明の状況下で記述されている脱ラフト化化合物の医療上の重要性のため、該発明は同様に、単数又は複数の薬学的に受容可能な賦形剤と本書に定義されている化合物の混和物を含む薬学組成物の調製のための方法をも提供している。対応する賦形剤は、本書中で以上に言及されており、シクロデキストリンを含むが、これに制限されるわけではない。以上で指摘した通り、該発明の薬学組成物を注射又は輸液により投与すべきであるならば、その薬学組成物はエマルジョンであることが好ましい。
【実施例】
【0127】
実施例
略号リスト
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP N,N−ジメチルアミノピリジン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
HATU 2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1, 3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート
MeOH メタノール
PE 石油エーテル
r.t. 室温
TBAF テトラブチルアンモニウム・フルオリド
TBDPS tert−ブチルジフェニル・シリル
THF テトラヒドロフラン
【0128】
一般手順
アシル側鎖の導入のための一般手順
DIPEA(2.55当量)を、DMF/CH2Cl2(1:1)中対応の酸(1.2当量)及びHATU(1.2当量)の溶液に添加し、そして得られた混合物を、5分間r.t.で撹拌する。次いで、溶液を、CH2Cl2中対応アルコール(1.0当量)の溶液に添加し、その後、r.t.で2時間撹拌する。反応混合物を、CH2Cl2(100mL)で希釈し、そして1N HClで洗浄し、そしてCH2Cl2(3×100mL)で抽出する。併合有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空下で濃縮する。フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカ、PE/EtOAc)による残渣の精製により、上記生成物を得る。
【0129】
TBDPS基の除去のための一般手順
TBAFの溶液(THF中1M溶液)(4.25当量)を、THF(15mL)中所定のTBDPS保護セラミド(1.0当量)の溶液に添加し、そして得られた反応混合物を、60℃で3時間加熱する。反応混合物を冷却し、そしてCH2Cl2(100mL)で希釈し、1N HClで洗浄し、そしてCH2Cl2(3×100mL)で抽出する。併合有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空下で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/EtOAc/MeOH)による残渣の精製により、上記生成物を得る。
【0130】
主要構成ブロックとしてのD−エリスロ−スフィンゴシン2の合成
化合物2を、それ自体文献(Koskinen, Synthesis 1998, 1075)中に記載されたように得られた化合物1から合成した。
【化9】

1M HCl(3mL)を、メタノール(10mL)中1(2.0g、4.5mmol)の溶液に添加し、そして1.5時間還流下で加熱した。反応を室温に冷却し、そしてCH2Cl2(100mL)で希釈し、H2O(30mL)でクエンチし、そして塩基性pHを、6M NaOH溶液の添加により調整し、その後、CH2Cl2(2×150mL)で抽出する。併合有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CH2Cl2/MeOH 10:1)による残渣の精製により、白色結晶として2(921mg、68%)を得た。
【化10】

【0131】
主要構成ブロックとしての3−TBDPS保護D−エリスロ−スフィンゴシン6の合成
化合物6を、以下の反応シーケンスにより得た。
【化11】

DMF(25mL)中の1(10.9g、24.8mmol)、イミダゾール(3.4g、50mmol)、及びTBDPSCl(10.4mL、40mmol)の溶液を、80℃で3時間、そして100℃で2時間撹拌した。反応混合物を、室温に冷却し、そしてH2O(300mL)でクエンチし、そしてEt2O(2×150mL)で抽出した。併合有機層を、1N HCl(100mL)溶液、飽和NaHCO3溶液(100mL)、及びH2O(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、PE/EtOAc 30:1)による残渣を精製により、無色油として化合物5を得た(13.7g、81%)。
【化12】

【0132】
1M HCl(25mL)を、1,4−ジオキサン(150mL)中5(13.7g、20.2mmol)の溶液に添加し、そして100℃で1時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、そして飽和水性NaHCO3(100mL)でクエンチし、そしてEt2O(2×150mL)で抽出した。併合有機層を、ブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CH2Cl2/MeOH 20:1)による残渣の精製により、明黄色油として6を得た(7.97g、73%)。
【化13】

【0133】
実施例1:化合物10e:N−(トランス−4−tert−ブチルシクロヘキシルカルボニル)−D−エリスロ−スフィンゴシンの合成
アルゴン雰囲気下、ジメチルホルムアミド(1.3ml)中1,4−トランス−4−tert−ブチルシクロヘキサンカルボン酸(99mg、0.54mmol)及びHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート(205mg,0.54mmol)の溶液に、N−メチルピロリジン(0.7ml、1.12mmol)中1.6Mジイソプロピルエチルアミン溶液を添加した。室温で5分間撹拌した後、ジクロロメタン(1ml)中D−エリスロ−スフィンゴシン(150mg、0.5mmol)の溶液を添加した。反応混合物を、1時間撹拌した。ジクロロメタン(20ml)で希釈した後、反応混合物を、1M塩酸と水で洗浄し、そして硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、そして残渣を、クロマトグラフィー精製(シリカ・ゲル、ジクロロメタン/メタノール 10:1)にかけて、明ベージ色の固体として上記生成物146mg(63%)を得た。
【化14】

【0134】
実施例2:化合物10f:N−(1−アダマンチルカルボニル)−D−エリスロ−スフィンゴシンの合成
アルゴン雰囲気下、ジメチルホルムアミド(1ml)中、1−アダマンチルカルボン酸(102mg、0.57mmol)及びHATU(217mg、0.57mmol)の溶液に、N−メチルピロリジン(0.72ml、1.15mmol)中1.6Mジイソプロピルエチルアミン溶液を添加した。室温で5分間撹拌した後、ジクロロメタン(1ml)中D−エリスロ−スフィンゴシン(152mg、0.51mmol)の溶液を添加した。反応混合物を、室温で1時間撹拌した。ジクロロメタン(20ml)で希釈した後、反応混合物を、1M塩酸及び水で洗浄し、そして硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を、減圧下で除去し、そして残渣をクロマトグラフィー精製(シリカゲル、ジクロロメタン/メタノール 10:1)にかけて、無色のワックス状固体として上記生成物150mg(64%)を得た。これを、その後、メタノール(1ml)から再結晶化した。
【化15】

【0135】
実施例3:化合物10g:N−(3,6,9,12,15−ペントキサヘキサデカノイル)−D−エリスロ−スフィンゴシンの合成
アルゴン雰囲気下、ジメチルホルムアミド(2ml)中、3,6,9,12,15−ペントキサヘキサデカン酸(160mg、0.6mmol)及びHATU(228mg、0.6mmol)の溶液に、N−メチルピロリジン(1.5ml、1.2mmol)中0.8Mジイソプロピルエチルアミン溶液を添加した。室温で5分間撹拌した後、ジクロロメタン(2ml)中、D−エリスロ−スフィンゴシン(150mg、0.5mmol)の溶液を添加した。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。ジクロロメタン(60ml)で希釈した後、反応混合物を、1M塩酸、飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液、及び水で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、溶媒を減圧下で除去し、そして残渣をクロマトグラフィー精製(シリカゲル、ジクロロメタン/メタノール 20:1)にかけて、明黄色油として上記生成物170mg(62%)を得た。
【化16】

【0136】
実施例4:化合物10h:N−(3,6−ジオキサヘプタノイル)−D−エリスロ−スフィンゴシンの合成
アルゴン雰囲気下、ジメチルホルムアミド(1mL)中、3,6−ジオキサヘプタン酸(52mg、0.39mmol)及びHATU(148mg、0.39mmol)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.14mL、0.86mmol)を添加した。室温で5分間撹拌した後、ジクロロメタン(3mL)中D−エリスロ−スフィンゴシン(114mg、0.38mmol)の溶液を添加した。反応混合物を1.5時間撹拌した。ジクロロメタン(30mL)で希釈した後、溶液を、1M塩酸で洗浄し、そして硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、そして残渣を、クロマトグラフィー精製(シリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル/メタノール 10:10:1)にかけて、無色固体として上記生成物109mg(69%)を得た。
【化17】

【0137】
実施例5:化合物10l:3−メチル化D−エリスロ−スフィンゴシンの合成
化合物10lを、以下の反応シーケンスにより得た。
【化18】

NaH(60%、200mg、5mmol)及びMeI(0.34mL、5.5mmol)を、次いで、THF(10mL)中1(1.1g、2.5mmol)の溶液に添加し、そして得られた反応混合物を、室温で18時間撹拌した。反応を、H2O(20mL)及び水性NaHCO3(20mL)でクエンチし、その後、Et2O(2×50mL)で抽出した。併合有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、PE/EtOAc 10:1)による残渣の精製により、無色油として2(720mg、63%)を得た。
【化19】

【0138】
1M HCl(4mL)を、ジオキサン(8mL)中3(950mg、2.09mmol)の溶液に添加し、そして95℃で2時間加熱した。反応を、室温に冷却し、そして飽和水性NaHCO3(100mL)でクエンチし、その後、Et2O(2×150mL)で抽出した。併合有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CH2Cl2/MeOH 10:1)による残渣の精製により、明黄色油として10l(650mg、99%)を得た。
【化20】

【0139】
実施例6:化合物10iの合成
上記一般手順に記載した化合物2のアシル化により化合物10iを得た。
収率:94mg;58%。
【化21】

【0140】
実施例7:化合物10jの合成
上記一般手順に記載した化合物2のアシル化により、化合物10jを得た。
収率:180mg;67%。
【化22】

【0141】
実施例8:化合物10kの合成
上記一般手順に記載した化合物10lのアシル化により、化合物10kを得た。
収率:80mg;67%。
【化23】

【0142】
実施例9:化合物10mの合成
上記一般手順に記載した化合物2のアシル化により、化合物10mを得た。
収率:65mg;53%。
【化24】

【0143】
実施例10:化合物10nの合成
以下の反応シーケンスにより化合物10nを得た。
【化25】

上記一般手順に記載した化合物2のアシル化により、化合物8を得た。
収率:62mg;41%。
【化26】

【0144】
乾燥THF(20mL)中の8(146mg、0.27mmol)の溶液を、LiAlH4(THF中1M溶液)(2.0mL、2.0mmol)の溶液に滴下した。混合物を還流下で16時間加熱し、水(100mL)でクエンチし、そしてEtOAc(3×100mL)で抽出した。併合有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CH2Cl2/MeOH 10:1)による残渣の精製により、白色固体として10n(49mg、34%)を得た。
【化27】

【0145】
実施例11:化合物10oの合成
化合物10oを以下の反応シーケンスにより得た。
【化28】

上記一般手順に記載した化合物6のアシル化により、化合物7を得た。
収率:1.685g、87%。
【化29】

【0146】
乾燥THF(15ml)中7(217mg、0.28mmol)の溶液を、0℃に冷却し、そしてLiAlH4の溶液(THF中1M溶液)(0.842mL;0.84mmol)を滴下した。混合物を0℃で2時間、そして室温で16時間撹拌した。反応を、水(100mL)でクエンチし、そしてCH2Cl2(3×100mL)で抽出した。併合有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、EtOAc)による残渣の精製により、白色固体として10o(83mg、57%)を得た。
【化30】

【0147】
実施例12:化合物10pの合成
上記一般手順に記載したfarnesoic acidによる化合物2のアシル化により、化合物10pを得た。
収率:426mg;82%。
【化31】

【0148】
実施例13:化合物10qの合成
上記一般手順に記載したfarnesoic acidによる化合物10lのアシル化により、化合物10qを得た。
収率:50mg;25%。
【化32】

【0149】
実施例14:化合物10rの合成
上記一般手順に記載したfarnesoic acidによる化合物2のアシル化により、化合物10rを得た。
収率:345mg;88%。
【化33】

【0150】
実施例15:化合物10sの合成
上記一般手順に記載した化合物10lのアシル化により、化合物10sを得た。
収率:100mg;26%。
【化34】

【0151】
実施例16:化合物10uの合成
上記一般手順に記載した化合物2のアシル化により、化合物10uを得た。
収率:67mg;45%。
【化35】

【0152】
実施例17:化合物10vの合成
上記一般手順に記載した化合物10lのアシル化により、化合物10vを得た。
収率:70mg;43%。
【化36】

【0153】
実施例18及び19:化合物10wと10xの合成
化合物10wと10xを、以下の反応シーケンスにより得た。
【化37】

上記一般手順に記載した化合物2のアシル化により、化合物13を得た。粗製材料を、次の変換に用いた。
収率:188mg;64%。
【0154】
CH2Cl2(10mL)中13(178mg、234mmol)の溶液に、ピペリジン(231μL、2.34mol)を添加し、そして得られた混合物を、室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、そしてフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CH2Cl2/MeOH 10:1)による残査の精製により、白色固体として10w(105mg、82%)を得た。
【化38】

【0155】
上記一般手順に記載した酢酸による化合物10wのアシル化により、化合物10xを得た。
収率:10mg;10%。
【化39】

【0156】
実施例20:脱ラフト化物質検定、脱ラフト化物質−リポソームラフト親和性検定
本発明に従って、一定の与えられた化合物の脱ラフト化能力及び脂質ラフトプロセスに関係する疾患の改善、治療又は予防におけるその医学的有用性を、本書で提供されているD−脂質ラフトAによってテストすることができる。
【0157】
或る種の螢光指標のラフト親和性は、それ自体その脂質組成及びラフトモジュレータの存在によって決定されるリポソームのラフト含有量と共に変動する。
【0158】
D−LRA検定は、ラフト変調の2つの極端すなわち脱ラフト化とラフト増大を検出する。0未満の脱ラフト化%は、リポソームのラフト含有率の増大によってひき起こされる指標の分配の実際の増加の結果としてもたらされる。これはラフトの再構築、すなわち密度増加又はラフトの数量を増大させるリポソーム内へのテスト化合物の物理的挿入の結果としてもたらされ得る。25%超(脱ラフト化)及び−25%未満(「増大」による脱ラフト化物質)の場合に有意であるとみなされる。
【0159】
約50%のラフト含有率をもつリポソーム(以下で定義する)は、潜在的脱ラフト化物質と共にインキュベートされる。ラフト含有率の変化はこのとき、1つの指標(標準的ラフト親和性)を用いて決定される。
【0160】
D−LRA用材料
1. リポソーム
ラフトリポソーム:(コレステロール35%、スフィンゴミエリン(SM)10.5%、GM1 3.5%、ホスファチジルエタノールアミン(PE)25.5%及びホスファチジルコリン(PC)25.5%)
非ラフトリポソーム:Nリポソーム(50%のPE、PC)
リポソームを、窒素で洗い流した回転蒸発器内で50℃で、tertブタノール中に溶解させた脂質をガラス表面上に展延させることによって調製する。6時間の乾燥後、1mg/mlの濃度まで40mMのオクチル−β−D−グルコシド(OG)中に脂質を取り込み、22℃で25gのBiobeads(Amberlite XAD-2)での5lのPBSの交換2回に対し24時間透析を行なった。
【0161】
2. 指標
指標は、ラフト内に優先的に分配する螢光化合物である。これらは、異なる構造クラス及び異なる励起/発光波長を代表するように選択される。このことは、指標螢光と干渉するラフトモジュレータがテストされる場合に重要である。
【0162】
2.1. ペリレンは、膜内に完全に埋込まれるラフト親和性化合物である。
【0163】
2.2. GS−96は、一般的構造コレステロール・リンカー・ローダミン・ペプチドのラフト親和性アダクツ(コレステロールのみが膜挿入されている)である。GS−96の構造は、コレステリル−Glc−RR−βA−D(Rho)−βA−GDVN−Sta−VAEF(1文字アミノ酸コード;Glc=グリコール酸、βA=β−アラニン、Rho=ローダミン、Sta=スタチン;Fmoc-Statine Neo-system FA08901, Strasbourg, フランス)であり、標準的手順を用いて出願人によって生成された。すなわち、Applied Biosystems 433Aペプチド合成装置を利用して、脱保護試薬としてピペリジンを用いかつカップリング試薬として2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3,−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)を用いて、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)方法を使い、固体支持体上でペプチド合成を実施した。基質として市販のFmoc−グルタミン酸tert−ブチルエステルを用い、文献(T. Nguyen, M, B, Francis, Org, Lett. 2003, 5, 3245-3248)から抜粋された修正済み手順により調製されたローダミン標識されたFmoc−グルタミン酸を除いて、Fmoc保護されたアミノ酸構築ブロックは市販のものである。最終的ケン化により、ペプチド合成において使用された遊離酸が生成された。文献(S. L. Hussey, E. He, B. R. Peterson, Org. Lett. 2002, 4, 415-418)に記述された通りにコレステリルグリコール酸を調製し、手作業でN末端アルギニンのアミノ官能基にカップリングさせた。ペプチド合成において既知の標準的手順を用いた固体支持体からの最終的分割及び分取HPLCによるその後の精製により、GS−96を得た。
【0164】
2.3. J−12Sは同じ目的に役立つより小さいアダクツである:コレステリル−Glc−RR−βA−D(Rho)。例えばスフィンゴミエリンアダクツといったその他の指標が同等に適している。
【0165】
素描されたD−LRA方法
・ 200μg/mlの最終脂質濃度に至るまで、リポソームをPBS中に希釈させる(R:302μMのN:257μMの合計脂質)
・ サーモミキサー(1000rpm)上で37℃で30分間100μlのリポソームを予めインキュベートする。
・ 1μlのテスト化合物原液(100μMの最終濃度)又は適切な溶媒対照を添加し、上述の通り2時間インキュベートする。
・ 指標(GS−96 0.2μM又はペリレン2μM)を添加し、さらに1時間インキュベートする。
・ LRAと同じ要領で作業を進める。すなわち、400,000g及び37℃でBeckman Optima遠心分離機のTLA−100回転子内で20分間遠心分離する。
・ 上清(S)の上部50mlを撤去し、150μlの50.3mM OGが入ったマイクロタイタープレートに移す。
・ 並行してインキュベートした管から、80mMのOGが100μl入ったマイクロタイターウェルまで全リポソーム(L)を移す。
・ 接着性(A)指標を溶出させるべくサーモミキサー(1400rpm)上で50℃で100mMのC8E12(ペリレン)又は40mMのOG(GS−96)200μlを用いて管を洗浄し、中味をマイクロタイタープレートに移す。
・ マイクロタイタープレート内で40mMで200μlの指標濃度標準を調製する。
・ 螢光計/平板読取り装置(Tecan Safire)の中でS、L及びA中の指標濃度を決定する。
・ 分配係数CpN、CpR及びCpNとの関係におけるラフト親和性(rΦ=CpR/CpN)を計算する。

【数1】

として脱ラフト化活性を計算する。
【0166】
詳細な方法
N及びRリポソームを200μg/mlの最終脂質濃度までPBS中に希釈し、100μlのアリコートをサーモミキサー(1000rpm)上で37℃で30分間予備インキュベートした。
【0167】
1μlのDMSO(溶媒対照)及びテスト化合物原液(指摘されている場合を除き全てDMSO中10mM)を添加し、上述のとおり2時間インキュベートした。
【0168】
その後DMSO中の1μlの指標を添加し(最終指標濃度GS−96 0.2μM、ペリレン2μM)、上述の通り1時間インキュベーションを続行した。
【0169】
400,000g(37℃)でBeckman Optima遠心分離機のTLA−100回転子中で20分間、インキュベーションミックスを遠心分離に付した。PBS中の53.3mMのOG150μlが入った96ウェルのマイクロタイタープレートに対し管の上部から50μlの上清(S)を移した。
【0170】
並行してインキュベートした管から、PBS中の80mMのOGが100μl入ったマイクロタイターウェルまで、全リポソーム(L)を移した。接着性(A)指標を溶出させるべくサーモミキサー(1400rpm)上で50℃で100mMのC8E12(ペリレン)又は40mMのOG(GS−96)200μlで管を洗浄し、中味をマイクロタイタープレートに移した。
【0171】
マイクロタイタープレート内で40mMのOGの中で200μlの指標濃度標準を調製した。
【0172】
適切な波長、励起411nm、発光442nm(ペリレン);励起553nm、発光592nm(GS−96)で、螢光計/平板読取り装置(Tecan Safire)内で96−ウェル平板を読みとった。濃度標準に基づいて、螢光読取り値を指標濃度に換算した。
【0173】
濃度データから分配係数CpN及びCpRを以下の通り計算した:
それぞれの相内の指標濃度を、L(全リポソーム中)、A(管壁に接着)、S(水相中)と表わす。
【0174】
Cp=f*(L−S)/S。f*(L−S)は膜内の化合物濃度であり、ここでfは、インキュベーション体積対実際の脂質2重層体積の比である。
【0175】
ラフト親和性は、2つの分配係数の割当量、rΦ=CpR/CpNとして計算した。
【0176】
脱ラフト化活性を以下の通りに計算した:
【数2】

【0177】
結果:以下の表中、好ましい化合物の脱ラフト活性は、先に概説したようにマーカーとしてペリレンを用いて提供する。但し、化合物(10p)においては、マーカーとしてGS−96を使用した。全てのテスト化合物を、100μMの濃度においてDLRAに提出した。
【0178】
【表1】

【0179】
上記DLRAアッセイにおいてテストした化合物は全て、中〜高の正の値を提供し、そして本発明においてディテクターであると考えうるし、そして医薬組成物中で好適に使用しうる。上記DLRAアッセイにおいて得られた正の値により示されるように、全ての化合物が、先に与えた定義にしたがってディテクティングによりラフト調節を発揮する。
【0180】
実施例21:ウイルス出芽検定(インフルエンザ検定)
この検定のねらいは、ラフト依存性ウイルス出芽をターゲティングする化合物の同定、及びウイルス繁殖のその他の段階に対する阻害剤の効果と区別することにある。
【0181】
ウイルス出芽検定の原理
細胞表面上の発生期ウイルス(インフルエンザ)は、感染から6又は13時間後にパルス−ビオチニル化され、1時間テスト化合物で処理される。ビオチニル化ウイルスは、ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレート上で捕捉される。捕捉されたウイルスは、ウイルス特異的な一次及びペルオキシダーゼ標識された二次抗体で検出される。ペルオキシダーゼ基質から生成された螢光シグナルは、CCDカメラ(LAS3000)で記録される。強度はデンシトメトリによって評価される。
【0182】
100%未満の値がウイルス出芽の阻害を明らかにする。80%未満、好ましくは70%未満の値の場合有意であるとみなされ得る。100%超の値は、未処理の対照中よりも多くのウイルスが放出されることを意味している。これは、さまざまな原因を有し得るウイルス放出の調節の変化を反映している。この場合、130%超の値は優位とみなされ得る。これらの値は、その化合物がウイルス複製の検定において阻害性を示す場合、持続することになる。
【0183】
ウイルス出芽検定の材料
1. 感染
・ 96ウェルのプレートMDCK1−2d
・ インフルエンザウイルス原料
IM(感染培地):MEM+Earle's(Gibco/Invitrogen 21090-022)プラス2mMのL−グルタミン、10mMのHepes、ウシ血清アルブミン(BSA)0.2%。
【0184】
2. ビオチン標識
・ 原液:20%のグルコース(約1M)、1Mのグリシン
・ PBS8G:PBSpH8、1mMのグルコース、氷冷
・ ビオチン、20μg−100μl(96ウェル平板のウェルあたり)、1mgのビオチン/5mlのPBS8G、氷上で調製されたばかりのもの。
・ 急冷媒質(1M、10mMのグリシン)、氷冷。
【0185】
3. 追跡及び収獲
・ 平板Tシフト及びテスト化合物希釈のためのアルミニウムサーモブロック
・ IM+/−テスト化合物、37℃
・ TBS(トリス緩衝生理食塩溶液pH7.4、10mMトリス、150mMのNaCl);TBS+++=TBSプラスプロテアーゼ阻害物質;希釈5%トリプシン阻害物質1:250、200mMのAEBSF1:200及び1mg/mlのアプロチニン1:100。
・ 氷冷96ウェル平板(V底)及びMultifuge 1−S−R(Heraeus)遠心分離機のMP3300マルチウェル平板回転子、2℃。
【0186】
4. 捕捉
・ ストレプトアビジンコーティングされた96ウェル平板Reacti-Bind TM ストレプトアビジンHBC(Pierce 15500)。
【0187】
ウイルス出芽検定方法概略
1. 感染及びノイラミニダーゼ処理
2×200μlのIMでウェルを洗浄する。37℃で30分間、細胞1個あたり0.5〜2感染性単位という感染多重度でIM内に希釈された100μlのウイルスで感染させる。接種材料を除去し、150μlのIMで交換する。
・ 感染後(p.i.)6〜13時間インキュベートする。
【0188】
2. ビオチニル化
・ 氷上に平板を置き、0.20mlの氷冷PBS8Gで4回洗浄する。
・ 1ウェルあたりPBS8G中0.1のビオチニル化溶液を添加する。
・ 冷蔵庫内で氷上で12分間揺動させる。
・ 氷上で0.25mlの急冷培地で5回洗浄する。
【0189】
3. 出芽/追跡
・ プレートを予熱されたアルミニウムブロックに移す。
・ 最後の洗浄液を125μlの予め温めた培地+/−テスト化合物(すなわち上述のD−LRAにおいて「脱ラフト化物質」、「脱ラフト化化合物」とみなされたテスト対象化合物)。
・ ブロック上の平板を37℃で1時間インキュベータに戻す。
【0190】
4. 収獲
・ 氷上に置く。
・ 氷上で50μlのTBS+++(1:1希釈)の入ったV底遠心分離平板に50μlのオーバーレイを移す。
・ 平板を30分間2℃、4400rpmで遠心分離する。
・ 代替的な等価プロトコル:オーバーレイをMillipore(MSDVS6510)透明ろ過平板MSHTSTMDV、0.65μm親水性低タンパク質結合に移し、Nunc検定平板内へと1分間1500gで遠心分離する。
【0191】
5. 捕捉
・ 200μlのTBS/0.1%のTweenで3回、TBSで1回洗浄することにより、ストレプトアビジンでコーティングされた平板を調製する。
・ 50μlのウイルスオーバーレイ上清を捕捉用平板に移す。
・ 37℃で2時間又は4℃で一晩、ロッカー上で捕捉する。
【0192】
6. 検出
・ 捕捉用平板に対し、50μlのTBS、40mMのOGを添加し、4℃で20分間ロッカー上でインキュベートする。
・ 200μlのTBSで1回洗浄する。
200μlのブロックを添加し、室温で2時間、又は4℃で一晩インキュベートする。
・ 室温で1時間、ブロックで1:1000に希釈された抗NPモノクローナル(MAbプール5、US Biological 17650-04A)を用いて現像し、3回洗浄する。
・ 1時間室温で二次抗体としてウサギ抗マウスペルオキシダーゼ接合体1:2000を使用し、3回洗浄する。
・ Pierce Super Signal(West-Dura)発光性又は螢光性又は比色分析基質を用いて現像する。
・ CCDカメラ(LAS3000、Raytest)で撮像し、デンシトメトリで定量化する。
【0193】
結果:(10b)(C2ジヒドロセラミド)、10d(N−オレオイル−D−スフィンゴシン)、及び(10h)(N−(3,6−オキサ−ヘプタノイル)−D−エリスロ−スフィンゴシン)により上記ウイルス出芽アッセイにおいて、特に良好な結果が得られたことが例示されている。従ってこれらの化合物は、インフルエンザ感染の治療に用いられる医薬組成物の開発用として適切な化合物である。それでも、インフルエンザウイルス繁殖及び感染力検定(以下の例を参照のこと)において見られた効果は、医療環境における本発明で提供される化合物の有用性を実証するために使用されるべきさらなる実験結果である。
【0194】
実施例22:ウイルス繁殖及び感染力検定(病巣減少検定)
この検定のねらいは、ウイルス複製を阻害するか又はウイルス感染力を低下させる脱ラフト化化合物を同定することにある。
【0195】
原理
マイクロタイタープレート上で行なわれ、細胞Elisaとして現像されるという点を除いて従来のプラーク減少検定と等価である、ウイルス滴定条件下の抗ウイルス効果の検定。細胞はテスト化合物希釈物と共に簡単に予めインキュベートされ、次に連続希釈されたウイルスで感染させられる。
【0196】
材料
低保留管及びガラス製希釈平板(フード下で乾燥された、70%のEtOHからの(Zinsser))。
2台のサーモミキサー、1.5ml入りエッペンドルフ型及び96ウェルのブロック
96ウェル平板MDCK細胞1−2d
既知の力価をもつウイルスアリコート
IM(感染培地)
トリプシン1又は2mg/ml原液、調製されたばかりのもの。
グルタルアルデヒド(Sigma、アンプル、−20℃で保管されたもの)。
PBS中0.05%(1:500希釈)、調製されたばかりのもの、1平板につき250ml。
細胞Elisa現像用抗体;Pierce Super Signal(West Dura)基質。
【0197】
方法
1. 化合物希釈物
・ 37℃でテスト化合物を解凍し、必要とあらば超音波分解する。
・ サーモミキサー内で37℃で低保留管中のIMを予熱し、以下の通りにテスト化合物[μl]を添加する:
100μM;1078+22μl
50μM;1089+11μl
25μM;1094.5+5.5μl
10μM;1098+2.2
・ 少なくとも30分間振とうさせた後、化合物希釈物を、37℃でサーモミキサーマイクロプレートブロック内で予熱したガラス製の96ウェル平板の中に移す。
・ 2枚の滴定平板について1枚のガラス平板で充分であり、左半分は、平板1用のテスト培地を収容し、右半分は平板2用のテスト培地を収容する。各ウェルは250μlのテスト培地を収容する(以下の鋳型を参照のこと)。
【0198】
2. 感染
・ IM中に1:64でウイルスを予備希釈する(630μl+10μl)。低温IM中にウイルスを1:2000(=1)で希釈し、次にさらに2つの2倍希釈物を作る。1つの96ウェル平板用には、3、1.5、1.5mlを調製し、2つの平板用には平板6、3.3mlを調製し、4℃に保つ。
・ トリプシンを検量し、溶液20μg/mlを調製し、0.2μmの無菌注射器フィルタに通す。次にIM中で4μg/mlまで希釈する。
・ 感染の直前に1体積のトリプシン(4μg/ml)をウイルス希釈物又はIMに(模擬感染のため)添加し、感染まで4℃に保つ。
・ 200μlのIMで2回単層を洗浄する。
・ マルチチャンネルピペットで100μlのテスト化合物又はIM中の溶媒対照を加え、各カラム(2〜11)が1つのテスト化合物希釈物を含有するようにする。(1及び12はIMを収容し、エッジ効果が最小限である場合さらなる対照として役立てることができる。
・ マルチチャンネルピペットを用いて、列A及びH(模擬感染)に100μlのIM、2μgのトリプシン/mlを添加する。その他の列に対しウイルス希釈物を加え、毎回先端部を交換する。各々の付加毎にピペット操作する。
・ 37℃で16時間インキュベートする。
・ 顕微鏡:模擬感染ウェル内で毒性/細胞形態学/沈殿を査定する。
・ 室温で少なくとも20分間250mlの0.05%グルタルアルデヒドを用いて、平板全体を固定、浸漬/充てんすることで感染を終結させる。
【0199】
3. 検出
・ グルタルアルデヒドを振り落としPBSで洗浄する。
・ 50μlのPBS中の0.1%TX−100で30分間、浸透化処理し、PBSで洗い流す。
・ RT(室温)で1時間又は4℃で一晩、TBS/Tween/10%FCS中でロッカー上で遮断を行なう。
・ ブロックで1:1000に希釈された抗NP(MAbプール5)を用いて、RTで1時間現像し、TBS/Tweenで3回洗浄する。
・ 約1:2000のペルオキシダーゼ接合された二次抗マウス抗体を、RTでロッカー上で1時間添加し、TBS/Tweenで2回、TBSで一回洗浄する。
【0200】
4. 撮像
・ Super Signal West Dura(Pierce 34076)で現像する。
・ 高解像度でCCDカメラLAS3000(Fuji/Raytest)で撮像する。フレネルレンズを使用する。
・ 模擬感染を受けた対照を背景として用いてデンシトメトリにより定量化する。
【0201】
検定結果の定量化
MDCK細胞単層を伴う96ウェル平板のエッジカラムは、感染を受けていないがテスト化合物で処理されており、デンシトメトリ評価(以下参照)用の背景対照(ウェルa)として役立つ。3つのさらなるウェルb、c及びdはウイルス希釈物(例えば1:512000、1:256000及び1:128000)での感染を受けており、かくして1:128000希釈物が50〜100の病巣を生成するようになっている。適切な希釈物はウイルス滴定によって決定された。
【0202】
感染を受けた細胞の病巣は、免疫組織化学的に発達させられる。最初に、1時間又は一晩、PBS+10%熱不活性化されたウシ胎児血清の混合物(ブロック)を1ウェルあたり200μL用いてロッカー上で全てのウェルを遮断する。この後、ブロックで1:1000に希釈されたウェルあたり50μLの抗体対ウイルス核タンパク質(MAbプール5、US Biological 17650-04A)での1時間の遮断が続く。TBS(Tris緩衝生理食塩水)/Tween(0.1%)(TT)で5分間3回洗浄することによって抗体を除去する。次のインキュベーションは、ブロックで1:2000希釈されたウェルあたり50μLのウサギ抗マウス−HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされているもの)での1時間である。最終的に、上述の通りの2回の洗浄と、TBSで1回の洗浄が行なわれる。
【0203】
最後の洗浄液を定量的に除去し、ウェルあたり50μLの基質(Pierce 34076)で交換する。平板は、LAS3000CCDカメラの定焦点フレスネルレンズを通して5〜10分露光される(高解像度モード)。
【0204】
画像はデンシトメトリで評価する。最初に背景が減算される(ウェルa、以上参照)。デンシトメトリ強度は以下の通りに計算される:
I=[0.25×i(ウェルb)+0.5×i(ウェルc)+i(ウェルd)]/1.75
なお式中、iは関係するウェルb、c又はdについて測定された1部域あたりの強度の10000倍として定義される。この計算は従来のプラーク検定に対応する。因数は個々の値の重みづけを表わす。
【0205】
結果は以下の通りに定義される阻害%として表わされる:
阻害%=100−対照%
なお対照%は、テスト化合物についての既定のIに100を乗じ、適切な溶媒対照についてのIで除することによって計算される。Iが対照つまり溶媒対照である場合、その値は100%として設定される。
【0206】
結果:上述のDLRAテストで共に陽性となり、脱ラフト化合物として同定された2つの化合物10e及び10fは、PR8ウイルス複製検定においてその阻害効果を評価した場合、両方共優れた結果を提供した。10eは10μMの濃度でウイルス複製を21%阻害し、一方10fは10μMの濃度で同じプロセスを17%阻害した。かくして、両方の物質共、インフルエンザ感染における薬学的介入のための好ましい化合物である。DLRAテストで陽性であったさらに8つの化合物すなわち化合物(10i)、(10k)、(10n)、(10o)、(10p)、(10q)、(10r)、及び(10w)は、インフルエンザウイルス複製検定の中で特に優れた結果を提供しており、かくして、インフルエンザ感染の治療のために本書に記述されている医薬組成物の中で使用されるためのさらに一層好ましい化合物である。化合物(10i)の場合、PR8ウイルス複製は、溶媒ビヒクル単独に比べ50μMの濃度で48.9%程阻害された。同様に、化合物(10k)は、(20μM濃度において)59.3%同一プロセスを阻害し、化合物(10n)は(100μMにおいて)34.7%、化合物(10o)は(100μMにおいて)40.8%、化合物(10p)は(100μMにおいて)39.2%、化合物(10q)は(100μMにおいて)61.6%、化合物(10r)は(100μMにおいて)38%、そして化合物(10w)は(25μM)において50.3%程、阻害した。50μMの濃度において化合物(10b)を使用したとき、ウイルス複製は74%程阻害され、これは、化合物(10b)を、インフルエンザ感染の治療のためにさらにより好ましい化合物にした。さらに、化合物(10g)、(10h)、(10j)、(10u)、及び(10v)もPR8インフルエンザ・アッセイにおいて特に良好な阻害活性を提供した。化合物(10g)は、20μMの濃度において使用されたとき、ウイルス複製を70%程阻害した。一方、化合物(10h)は、同一濃度において75%程阻害し、化合物(10j)は(50μMにおいて)44.6%、化合物(10u)は(20μMにおいて)70.3%、そして化合物(10v)は(20μMにおいて)87.4%程阻害した。したがって、上記物質はインフルエンザ感染に対する治療薬として使用されるためのさらにより好ましい態様である。
【0207】
実施例23:脱顆粒検定
肥満細胞は、過剰アレルギー反応又は喘息のために広く用いられているモデル系である。その表面上で、これらの細胞は、IgE(FcεRI)についての高親和性レセプタを発現する。レセプタに対する抗原特異的IgEの結合時点で、細胞は抗原(アレルゲン)に対し感応性をもつようになる。感作された細胞が多価抗原に遭遇した時点で、IgE−FcεRI複合体のクラスタ化が、細胞事象カスケードを開始させ、このカスケードは究極的に脱顆粒、すなわちサイトカイン、エイコサノイド、ヒスタミン及び酵素といったような炎症及び細胞活性化のメディエータの放出を導く。このカスケード内の複数の段階は、ラフトに対するFcεRIの抗原により誘発された再配置、LATのまわりに集合したシグナリング複合体の分断及び/又はホスホイノシチドの転位、Ca2+−流入(血漿膜カルシウムチャンネルのラフト局在化)、膜波打ち運動(Akt/WASP/FAKが関与する細胞骨格再組織)及びエクソサイトーシスといったようにラフト依存性のものである。従って、該検定は、ラフト変調化合物、特に喘息の医学的管理において有用である化合物を同定するためのスクリーニング方法として使用することができる。特に、ラフト変調化合物の予備選択のためのその他の検定と併せると、該検定は生物学的プロセスにおける介入のためのかかる化合物の有効性を実証するための強力な手段である。
【0208】
1. 序
該検定は、多価抗原−IgE複合体を用いた高親和性IgEレセプタ(FcεRI)のクラスタ化に応えたさまざまな予備形成された薬理学的作用物質の放出のマーカーとしてβ−ヘキソサミダーゼの放出を測定する。肥満細胞脱顆粒の一般的に用いられるモデルであるラット好塩基球性白血病(RBL−2H3)細胞が、抗DNP特異的IgEで感作され、多価PNP−BSAで攻撃誘発される。上清内へのβ−ヘキソサニダーゼの放出は、N−アセチル−β−D−グルコサミン及び高螢光メチルウンベリフェロンへの螢光発生基質4−メチルウンベリフェリル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドの酵素的転換によって測定され、Tecan SafireTM平板読取り装置内での螢光検出により定量化される。
【0209】
2. 材料
化学物質及び専門試薬
Surfact-Amps X-100溶液はPierce社から、DNA−ウシアルブミン接合体(DNP−BSA)及び4−メチルウンベリフェリル−N−アセチル−β−D−グルコサミニド(MUG)はCalbiochem社から、トリ(エチレングリコール)モノエチルエーテル(TEGME)はAldrich社から、DMSO Hybri-Max及びヒトDNP−アルブミンはSigmaから入手した。全ての細胞培地、緩衝液及び補助物質は、PAA研究所(Coelbe、ドイツ)からのものであったウシ胎児血清(FCS)を除いてInvitrogenから入手した。その他の試薬は、標準的な実験室品質又はそれ以上の品質のものであった。
【0210】
その他の化学物質は、相反する規定のないかぎり、標準的実験室グレード又はそれ以上のものである。
【0211】
緩衝液及び溶液
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び1MのHEPESは、社内サービス設備により提供された。タイロード緩衝液(TyB)は、2mMのGluta MAXTM-I Supplement (Invitrogen)及び10mMのHEPESで補足されたフェノールレッドを含まない最小必須培溶液(Invitrogen)で構成されていた。溶菌緩衝液は、25mMのトリス−HCl、pH7.5、150mMのNaCl、5mMのEDTA及び1%(w/v)のTriton X-100から成っていた。ヒトDNP−BSAは、Millipore水中で1mg/mlまで溶解された。MUG基質溶液は、2.5mMの4−メチルウンベリフェリル−N−アセチル−β−D−グルコサミニド0.05Mクエン酸塩、pH4.5であり、停止溶液は0.1MのNaHCO3/0.1MのNa2CO3、pH10であった。
【0212】
細胞培養
ドイツ微生物及び細胞培養収集機関(Braunschweig、ドイツ)から入手したRBL−2H3細胞を、37℃でEarleの塩を伴う70%の最小必須培養液/20%のRPMI1640/5%CO2中の2mMのGluta MAXTM-Iで補足された10%の熱不活性化されたウシ胎児血清の中に維持し、マイコプラズマ汚染を受けていないことを日常的に検査した。175cm2入りフラスコ内で成長させられた細胞を0.05%のトリプシン/EDTAで分割し、20mlの新鮮な培地中で再懸濁させた。ウェルあたり100及び50μlの細胞懸濁液を24ウェルのクラスタ平板(Costar Schiphol-Rijk、オランダ)内に平板固定し、それぞれ平板固体から1日後又は2日後に細胞を使用した。
3. β−ヘキソサミニダーゼ放出の測定
方法
テスト化合物でのインキュベーションより2〜24時間前に、培地を除去し、細胞を新鮮な培地内で0.4μg/mlの抗DNPIgEで感作させた。感作の後、細胞を温かいTyBで一回洗浄し、最大100μM又は最高非毒性濃度(合計ビヒクル濃度は1%に調整)のテスト化合物又はTyB中の1%のビヒクルと共に37℃で60分間インキュベートした。DNP−HSA(0.1μg/mlの最終濃度)又は緩衝液単独を添加し、37℃で15分間細胞をインキュベートした。250×gで5分間4℃にて平板を遠心分離に付し、直ちに氷に移した。上清を収集し、細胞を溶菌緩衝液で溶解させた。上清及び溶解物中のヘキソサニダーゼ活性を、30分間37℃で96ウェル平板内で100μlのMUG基質溶液と共に25μlのアリコートをインキュベートすることによって測定した。150μlの停止溶液を添加することによって反応を終結させた。365nmの励起及び440nmの発光環境でTecan SafireTM平板読取り装置内で螢光を測定した。
【0213】
検定結果の定量化
少なくとも3つの独立した実験においてデュプリケートで各化合物をテストする。以下の公式を用いて、非特異的放出(抗原の付加無しの放出)を差し引いた後、β−ヘキソサミニダーゼ放出を計算する:
脱顆粒%=100×RFU上清/PFU溶解物
【0214】
対照との関係におけるβ−ヘキソサミニダーゼ放出の阻害は以下のように計算される:
阻害%=100×(1−(RFU化合物上清/RFU対照の上清))
【0215】
独立した実験からのCTB内在化のための値は平均化され、標準偏差(SD)が15%以下である場合受容される。
【0216】
結果:DLRAにおいてテストされ陽性であった全ての化合物を脱顆粒検定においてさらに評価した。化合物(10g)、(10h)、及び(10u)について特に良好な結果が得られ、それゆえ、喘息及び関係する免疫疾患の治療について本書で記述されている薬物組成物の中で使用されるべき好ましい化合物である。化合物(10g)は、溶媒単独に比較して、25μMの濃度において65%程β−ヘキソサミニダーゼの放出を阻害した。同様に、化合物(10h)は(25μMにおいて)71%同一プロセスを阻害し、そして化合物(10u)は(25μMにおいて)63%阻害した。化合物(10c)を評価したとき、さらに良好な結果が得られた。化合物(10c)は(100μMにおいて)94%同一プロセスを阻害し、化合物(10l)は(25μMにおいて)84%阻害し、そして化合物(10v)は(12.5μMにおいて)74%阻害した。特に、喘息及び関連免疫学的疾患の治療のために最も好ましい化合物は、(6.25μMにおいて)69%阻害した化合物(10w)である。
【0217】
実施例24:シミアンウイルス40(SV40)検定
シミアンウイルス40(SV40)の摂取は、細胞内に進入するためにラフトドメインを利用するさまざまな細菌及びウイルスによる感染についてのモデルである(Pelkmans (2002) Science 296, 535-539)。さらに詳細には、SV40はカベオラ媒介型エンドサイトーシスの時点でカベオソームを介して(Pelkmans (2001) Nature Cell Biol. 3, 473-483)、ならびに非カベオラ脂質ラフト媒介型エンドサイトーシスにより(Damm (2005) J. Cell Biol. 168, 477-488)小胞体に輸送される。
【0218】
本書に記述されたSV40検定は、カベオラ取込み、エンドサイトーシス及び早期細胞内トラフィキングの段階での細菌又はウイルス感染を阻害することのできる化合物のためのスクリーンとして使用される。この機序は特に、呼吸器合胞体ウイルス、コロナウイルス(例えばSARS又は上気道感染をひき起こすもの)及び結核を導くマイコバクテリウム種による感染に、特に関係するものである。
【0219】
これとは対照的に、水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、早期及び晩期エンドソーム内へのクラスリン媒介型エンドサイトーシスを介して細胞に進入する(Sieczkarski (2003) Traffic 4, 333-343)。かくして、本書に記述されているVSV検定は、カベオラ/脂質ラフト媒介型エンドサイトーシスとは独立した機序を介して細胞内に入ることのできる化合物を明らかにする概念実証カウンタスクリーン(counterscreen)として役立つ。
【0220】
細胞培養
HeLa細胞をDSMZ、Braunschweigから入手し、10%のウシ胎児血清(FBS;PAN Biotech, GmbH)、2mMのL−グルタミン及び1%のペニシリン−ストレプトマイシンで補足されたフェノールレッド無しのD−MEM培地(Gibco BRL)の中に維持した。細胞を5%の二酸化炭素中で37℃でインキュベートした。細胞数をCASY細胞計数器(Schaerfe Syotem GmbH)で決定し、Multidrop 384ディスペンサ(Thermo)を用いて播種した。化学化合物を添加する前日に96ウェル平板(Greiner)の中でウェルあたり次の細胞数を播種した(100μLの培地中):VSV、即刻、ウェルあたり細胞10000個;SV40、即刻、ウェルあたり細胞7500個。
【0221】
スクリーン
化合物溶解度に応じて、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(TEGME)又はDMSO30%とTEGME70%の混合物を用いて3枚のマスター平板を調製した。テスト化合物の濃度は30mMであった。物質を96ウェルのガラス平板(100μL:6×9フォーマット)内に移し、細胞に添加する前に1:100で希釈した。
【0222】
スクリーンを細胞毒性及び機能的部分に分け、かくして物質の非毒性濃度を確保するため毒性プロファイル(アデニラート/キナーゼ放出、生/死検定及びアポトーシス検定)を実施した。結果に従って、物質を対応する溶媒で希釈した。スクリーンをトリプリケートで実施し、全ての検定について物質の最終濃度で2回反復した。
【0223】
マスター平板を−20℃で保管した。作用液の調製のためには、ライブラリ含有平板を37℃で霜取りした。血清無しでD−MEM培地中で物質を希釈した。細胞から培地を除去し、トリプリケート平板の各々に対して作用液を添加した。成長対照培地を添加し、各検定のための付加的な特異的対照を適用した。最終的に、血清を細胞に供給し、5%の二酸化炭素を含有する雰囲気中で37℃で平板でインキュベートした。
【0224】
VSV感染検定
約50%の感染細胞を発生させた濃度で細胞に対し物質を添加した後直ちにVSV−GFPを添加した。4時間のインキュベーションの後、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、DRAQ5TMで染色した。488及び633nmのレーザー励起及び液浸20倍対物レンズを用いて、自動共焦点螢光顕微鏡OPERA(Evotec Technologies GmbH)での顕微鏡分析を実施した。完全に自動的に、ウェルあたり10個の画像を撮り、細胞合計数(DRAQ5)及び感染細胞数(VSV−GFP)を自動画像解析により決定し、トリプリケートについての平均及び標準偏差を計算した。VSV感染核の数を合計核数(DRAQ5染色済み)で除し、それに100%を乗じることによって、VSV感染(百分率で)を計算した。計算値は、未処理細胞の百分率として表わされる。
【0225】
SV40感染検定
細胞への物質添加の後直ちに野生型SV40ウイルスを加えた。36時間のインキュベートの後、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、DRAQ5TMで染色した。T−抗原発現を検出するために、Alexa Fluor 488に直接接合されたモノクローナル抗体を使用した。488及び633nmのレーザー励起及び液浸20倍対物レンズを用いて、自動共焦点螢光顕微鏡OPERA(Evotec Technologies GmbH)での顕微鏡分析を実施した。完全に自動的に、ウェルあたり10個の画像を撮り、細胞合計数(DRAQ5)及び感染細胞数(SV40T−抗原に結合されたモノクローナル抗体)を自動画像解析により決定し、トリプリケートについての平均及び標準偏差を計算した。SV40感染核の数を合計核数(DRAQ5染色済み)で除し、それに100%を乗じることによって、SV40感染(百分率で)を計算した。計算値は、未処理細胞の百分率として表わされる。
【0226】
結果を定量化
SV40検定の粗データは、96ウェル平板のウェル毎に決定されたうまく感染を受けた細胞及び合計細胞の計数である。(合計細胞はDRAQ5により染色され、一方感染細胞は上述にように、発現されたSV−40T−抗原の特異的免疫−組織化学染色によって計数される)。まず第1に、以下の要領で、感染細胞対合計細胞の比が決定される。
【0227】
各々の個々の検定において、1つのテスト化合物あたり3枚の平行平板上の3つのウェルが評価され、感染細胞対合計細胞の比が平均され、標準偏差が決定される。その後、データは百分率に変換される:対照又はSV対照は100%に設定され、各テスト化合物についてのデータは、適切なSV対照との関係における百分率値に変換される。各テスト化合物は、2回又は3回の独立した検定に付される。個々の独立した検定の対照%及び標準偏差%として、平均対照%及び標準偏差%が決定される。最後に、以下の公式を用いて阻害値が計算される;
阻害%=100−対照%
【0228】
結果:化合物(10a)は、SV40において特に良好な結果を提供した。6μMの濃度でテストしたとき、溶媒単独に比較して、SV40感染は37.2%阻害された。したがって、化合物(10a)は上述のウイルス及び細菌感染の場合における薬学的介入のための好ましい化合物である。これに反し、VSVカウンタスクリーン内で化合物(10a)をテストした場合、ウイルス感染に対する阻害効果は全く観察されず、かくして本発明で記述されている化合物の作用様式について本書で提供された作業仮説が証明された。
【0229】
実施例25:HIV検定
HIV感染によりひき起される後天的免疫不全症候群(AIDS)の治療のために用いられる薬物組成物の開発のためのその特異的有用性を評価するために、化合物を、HIV−1菌株NL4−3(実験室適合されたB型菌株)によるHeLaTZM細胞の感染の阻害についてテストした。TZMは、HIV−1LTR駆動されたルシフェラーゼリポータ遺伝子を含むCD4−陽性でHIV感染可能なHeLa誘導体である。HIV感染は、ルシフェラーゼ発現を誘発するウイルストランスアクチベータTatの産生を導き、かくしてルシフェラーゼ活性を感染細胞について評定するのに使用することが可能である。
【0230】
テスト化合物は、化合物溶解度に応じてジメチルスルホキシド(DMSO)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(TEGME)又はDMSO30%とTEGME70%の混合物中の溶液として提供された。これらの原液中のテスト化合物の濃度は3mMであった。
【0231】
全ての検定はデュプリケートで実施された。収獲の前に、細胞を可視的細胞毒性効果について顕微鏡検査により分析した。
【0232】
一般に、HIV−1、NL4−3での感染は、約5000〜10,000の任意光単位を導いたが、実験及び溶媒の使用に応じて幾分か変動した。ウイルスを全く含まない溶媒対照及びPBS対照は、100〜200の任意光単位を生成した。
【0233】
一日目に、ウェルあたり50000前後のTZM細胞を、48ウェル平板内に播種した。翌日、37℃で化合物を解凍し、手短かにボルテックス処理し、組織培養細胞に加える直前に細胞培地内で1:100に希釈した。148μLのDMEM(10%のFCS及び抗生物質を含有する)に対して2μLの化合物溶液を加え、混合した。培地をTZM細胞から除去し、150μLの化合物含有培地を添加した。その後、5%の二酸化炭素を含有する雰囲気内で37℃で24時間細胞をインキュベートした。(10%のFCS及び抗生物質を含有する)PRMI1640培地中の50μLのウイルス(HIV−1、NL4−3菌株に感染したMT−4細胞から産生されたもの)を添加し、5%の二酸化炭素を含有する雰囲気内で37℃で24時間細胞をインキュベートした。3日目に、培地を除去し、細胞をDMEMで一回洗浄し、100μLのDMEMを添加し、その後100μLのSteady-Glo基質を添加した。室温で30〜60分間細胞をインキュベートし、その後180μLを48ウェル平板から96ウェル平板へと移し、TECAN平板照度計を用いてルシフェラーゼ活性を測定した(ウェルあたり5s)。ウイルスを伴う及び伴わない溶媒対照の両方が実施された。
【0234】
結果の定量化
各検定平板は、各々のテスト化合物と適切な溶媒対照についてのデュプリケートを含む。照度計読取り値を記録するとき、未感染細胞対照の背景は差し引かれる。デュプリケートを平均し、該平均を関係する溶媒対照の平均で除しかつ100を乗じることにより対照%に換算する。検定を1回又は2回反復し、対照%を2つ又は3つの独立した検定から平均することにより、最終的結果を決定した。
【0235】
最終的に、阻害値を以下の公式を用いて計算する:
阻害%=100−対照%
【0236】
結果:最初のDLRAでテストして陽性でありかくして脱ラフト化合物として同定された4つの化合物すなわち、(10a)、(10v)、(10w)、及び(10x)が、HIV感染検定において評価された。これらは優れた結果を提供した。10aは、30μMの濃度で75%HIV感染を阻害し、一方10vは、溶媒に比べ20μMの濃度で45%同じプロセスを阻害した。同様にして、化合物10wは52%(20μMで)、そして化合物10xは63%(30μM)でHIV感染を阻害した。かくして、これらの化合物は、AIDSの場合における薬学的介入のための好ましい化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1):
【化1】

{式中、
【化2】

は、単結合、二重結合又は三重結合であり;
Xは、NH、NHCO、NHCONH、NHCO2及びNHSO2から選ばれ;
1は、OR、NR2又はOPO32-又はOCO(C1-4アルキル)(ここで、RはH又はC1-4アルキルである)であり;
2は、NH2、NH(C1-4アルキル)、OH、H、ハロゲン、O、N(C1-4アルキル)2又はO(C1-4アルキル)であり、但し、R2がOである場合、
【化3】

は二重結合であり、他の全ての場合、
【化4】

は単結合である;
3は、C9-25炭化水素基であり、ここで、1以上の水素は場合によりハロゲンにより置換され;
4は、C1-5炭化水素基(ここで、1以上の水素は場合によりハロゲンにより置換される);C3-8シクロアルキル環であって場合により1以上のC1-4アルキル又はハロゲンにより置換されるもの;(C3-8シクロアルキル)メチレン基(ここで、シクロアルキル環は場合により1以上のC1-4アルキル又はハロゲンにより置換される);〔2−(C3-8シクロアルキル)〕エチレン基(ここで、シクロアルキル環は場合により1以上のC1-4アルキル又はハロゲンにより置換される);1−アダマンチル基、(1−アダマンチル)メチレン基、(1−アダマンチル)エチレン基;C6-30炭化水素基であって場合により、1以上の二重結合を含むもの(ここで、1以上の水素は場合によりハロゲンにより置換され、かつ、末端炭素原子上の水素の内の1つはOH、O(C1-4アルキル)、OCO(C1-4アルキル)により置換されることができる);あるいは以下の式(2):
【化5】

(式中、
21は、1〜3の整数であり、但し、XがNH、NHCONH又はNHCO2である場合、n21は1でない;
22は、1又は2の整数であり;
23は、0〜5の整数であり;
各R22は、独立にH又はC1-3アルキルであり;
23は、O−R21又はNH−R24であり;
21は、C1-4アルキル、CO(C1-4アルキル)又はHであり;
そして
24は、C1-4アルキル、CO(C1-4アルキル)又はHである)
であり;
あるいは、R4はHであることができる、但し、この場合、XはNH又はNHCONHである。}
を有する化合物、あるいは医薬として許容されるその塩、誘導体、溶媒和物又はプロドラッグを含む医薬組成物。
【請求項2】
式中、XがNHCOである医薬組成物。
【請求項3】
式中、R1がOH又はOPO32-である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
式中、R2がOH又はOCH3である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
式中、R3がC13-15アルキル基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
式中、R4が、C1-5アルキル、C5-7シクロアルキル環であって場合により1以上のC1-4アルキルにより置換されたもの;1−アダマンチル、C6-20アルケニルであって1以上のトランス二重結合を含むものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
式中、R4が、請求項1に記載の式(2)の基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記式(1)を有する化合物が、以下の式(10a)〜(10h):
【化6】

の内の1を有する化合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記式(1)を有する化合物が、以下の式(10i)〜(10s)及び式(10u)〜(10x):
【化7】

の内の1を有する化合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
脂質ラフトにおいて生じる生化学/生物物理学的プロセスにより引き起こされる疾患/障害の治療、予防、及び/又は改善のための医薬組成物の製造のための請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項11】
前記疾患/障害が、神経変性疾患、感染性疾患、免疫学的疾患/障害、増殖性障害、及び全身性疾患から成る群から選ばれる、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病又はプリオン疾患である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記プリオン疾患が、クロイツフェルト−ヤコブ病、クール−ゲルストマン−シュトロイスラー−シュネイカー症候群、及び致死性化族性不眠症から成る群から選ばれる、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記感染性疾患が、ウイルス、細菌又は寄生虫により引き起こされる、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記ウイルスが、インフルエンザ、HIV、肝炎ウイルス(A、B、C、D)、ロタウイルス、呼吸器合胞体(RS)細胞ウイルス、ヘルペトウイルス科(例えば、単純ヘルペス・ウイルス、エプスタイン−バール・ウイルス)、エコウイルス(Echovirus)1型、はしかウイルス、ピコルナウイルス科(例えば、腸内ウイルス、コクサッキー・ウイルス)、フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス、マルバーグウイルス)、パピローマウイルス科、及びポリオーマウイルス科からなる群から選ばれる、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記細菌が、マイコバクテリウム・チューバーキュローシス(結核菌Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、シゲラ種(Shigella spp.)カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、エシェリキア・コリ(大腸菌Escherichia coli)、エアロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)、クロストリジウム・ジフィシル(Clostridium difficle)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、及びヘリオバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)から成る群から選ばれる、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記寄生虫が、プラスモディウム・ファルシパラム(Plasmodium falciparum)、トクソプラズマ・ゴンジイ(Toxoplasma gondii)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、及びレイシュマニア(Leishmania)から成る群から選ばれる、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
前記免疫学的疾患/障害が、自己免疫疾患又は過アレルギー形成性疾患である、請求項11に記載の使用。
【請求項19】
前記過アレルギー形成性疾患が喘息である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記自己免疫疾患が、バッテン病、全身性紅斑性狼瘡又はアテローム性動脈硬化症である、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
前記増殖性障害が癌疾患である、請求項11に記載の使用。
【請求項22】
前記全身性疾患が糖尿病である、請求項11に記載の使用。
【請求項23】
前記化合物が、式(10b)、(10e)、(10f)、(10g)、(10h)、(10i)、(10j)、(10k)、(10n)、(10o)、(10p)、(10q)、(10r)、(10u)、(10v)又は(10w)を有し、かつ、前記医薬組成物が、インフルエンザ感染の治療、予防、及び/又は改善のために調製される、請求項15に記載の使用。
【請求項24】
前記化合物が、式(10a)、(10v)、(10w)又は(10x)を有し、かつ、前記医薬組成物が、HIV感染の治療、予防、及び/又は改善のために調製される、請求項15に記載の使用。
【請求項25】
前記化合物が、式(10c)、(10g)、(10h)、(10l)、(10u)、(10v)又は(10w)を有し、かつ、前記医薬組成物が、喘息の治療、予防、及び/又は改善のために調製される、請求項19に記載の使用。

【公表番号】特表2008−504330(P2008−504330A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518535(P2007−518535)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007033
【国際公開番号】WO2006/002909
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(507002491)ヤド テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【出願人】(507003513)マックス−プランク ゲゼルシャフト ツァー フォルデルング デア ビッセンシャフテン エー.ファウ. (2)
【出願人】(507002527)テクニシェ ウニベルシテート ドレスデン (2)
【Fターム(参考)】