説明

スプライサユニット及び糸巻取機

【課題】糸屑を回収し周囲に飛散させないスプライサユニットを提供する。
【解決手段】スプライサ装置14は糸屑を回収するための専用の集塵器80を備える。前記集塵器80は略円柱形状に構成された集塵室81を備え、前記集塵室81内部で渦回転気流74を発生させることにより、いわゆるサイクロン方式によって前記糸屑75を回収する。前記スプライサ装置14は、糸継時に糸端が導入され圧縮空気によって前記糸端を解撚する解撚パイプ82を備え、前記集塵器80は前記集塵室81の略接線方向に糸屑を導入する糸屑導入口83を備える。そして、前記圧縮空気の噴射によって生成される前記解撚パイプ82からの空気流が前記糸屑導入口83に吹き付けられることにより、前記渦回転気流74を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸継作業を行うスプライサユニットに関する。詳細には、スプライサユニットの糸継時に発生する糸屑を回収する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスプライサユニットは、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1のスプライサ(糸継装置)は、解撚時に発生する糸屑を解撚パイプからワインダユニット機台の後方側に吹き飛ばす構成となっている。
【特許文献1】特開2001−199637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の構成は、吹き飛ばされた糸屑が周囲に飛散し、パッケージに付着して品質低下の原因となる恐れがあった。
【0004】
なお、この飛散を防止するには、解撚パイプと負圧源をホースで結合し、糸屑を回収する方法も考えられる。しかし、この方法では負圧源の容量が不足することがあった。
【0005】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、糸屑を回収し周囲に飛散させないスプライサユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、糸屑を回収するための専用の集塵器を備えたスプライサユニットが提供される。
【0008】
これにより、周囲に糸屑が飛散して機台本体やパッケージに付着することがなくなるので、作業環境及びパッケージ品質を向上させることができる。また、スプライサユニットが集塵器を備えているので複雑な集塵経路が必要なくなり、装置が簡素となるとともに、集塵経路の途中で糸屑が詰まるといった問題が発生しないので、メンテナンス作業を軽減することができる。
【0009】
前記のスプライサユニットにおいては、前記集塵器は略円柱形状又は略円錐形状に構成された集塵室を備え、前記集塵室内部で渦回転気流を発生させることにより前記糸屑を回収することが好ましい。なお、「略円柱形状又は略円錐形状」には、軸方向に垂直な面で切った断面がドーナツ状の場合が含まれる。
【0010】
これにより、渦回転気流により集塵室に糸屑を効率良く回収することができる。
【0011】
前記のスプライサユニットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このスプライサユニットは、糸継時に糸端が導入され圧縮空気によって前記糸端を解撚する解撚パイプを備える。前記集塵器は、前記集塵室の略接線方向に糸屑を導入する糸屑導入口を備え、前記圧縮空気の噴射によって生成される前記解撚パイプからの空気流が前記糸屑導入口に吹き付けられることにより、前記渦回転気流を発生させる。
【0012】
これにより、糸解撚時に発生する糸屑が集塵室内部に直接導入されるので、集塵が極めて容易になる。また、解撚パイプからの空気流を利用して渦回転気流を発生させるので、糸屑回収用の負圧源等を必要とせずに糸屑を回収することができる。
【0013】
前記のスプライサユニットにおいては、略円柱形状又は略円錐形状の前記集塵室の軸方向の少なくとも一端にエア抜きフィルタが備えられていることが好ましい。
【0014】
これにより、糸屑の集塵室からの飛散をエア抜きフィルタによって阻止できると同時に、渦回転気流は当該エア抜きフィルタを介してスムーズに排出することができる。従って、糸屑を含んだ空気流が解撚パイプ側に逆流することを防ぐことができる。
【0015】
前記のスプライサユニットにおいては、略円柱形状又は略円錐形状の前記集塵室の軸方向の少なくとも一端に、回収した前記糸屑を外部に排出するための糸屑排出開口部が備えられていることが好ましい。
【0016】
これにより、回収した糸屑を前記糸屑排出開口部を介して外部に容易に排出することができる。
【0017】
前記のスプライサユニットにおいては、前記集塵室の中央部に、断面形状が円形の棒状部材が備えられることが好ましい。
【0018】
これにより、糸屑を棒状部材に絡み取らせつつ、集塵室の中央部に纏めることができる。従って、集塵室からの糸屑の回収が容易になる。
【0019】
前記のスプライサユニットにおいては、前記棒状部材の少なくとも一方の端部が先細状に構成されていることが好ましい。
【0020】
これにより、棒状部材の周囲に絡み付いた糸屑を先細状の端部に向かって移動させて抜き取るようにすることで、糸屑を容易に回収することができる。
【0021】
前記のスプライサユニットにおいては、略円柱形状又は略円錐形状の前記集塵室の軸方向の少なくとも一端が開放可能であることが好ましい。
【0022】
これにより、集塵室内部の掃除等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0023】
前記のスプライサユニットにおいては、前記集塵器を取り付けた状態で機台に対し着脱可能であることが好ましい。
【0024】
これにより、メンテナンス作業やスプライサユニットの変更等を容易に行うことができる。また、スプライサと集塵器を一体的に纏めて取り扱うことができるので、機台への着脱が容易になる。
【0025】
本発明の別の観点によれば、前記のスプライサユニットを備えた巻取ユニットを複数備える糸巻取機が提供される。
【0026】
これにより、糸屑が飛散せずパッケージに付着しないため、高品質のパッケージを製造することができる。
【0027】
前記の糸巻取機においては、前記集塵器に回収された糸屑を当該集塵器の外部へ排出させるための吸引手段を更に備えていることが好ましい。
【0028】
これにより、糸屑を集塵器外部へ効率良く排出できるので、メンテナンス作業がより容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係るスプライサ装置14を備えるワインダユニット(巻取ユニット)10の側面図である。
【0030】
図1に示すワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒される紡績糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。本実施形態に係る自動ワインダ(糸巻取機)は、並べて配置された複数のワインダユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、他端に配置された図略のブロアボックス(吸引手段)と、を備えている。
【0031】
それぞれのワインダユニット10は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム11(図1)と、このユニットフレーム11の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。
【0032】
前記巻取ユニット本体16は、巻取ボビン22を把持可能に構成されたクレードル23と、紡績糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を駆動するための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、を備えている。クレードル23は、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、パッケージ30が巻取ドラム24に対して接触又は離間される。前記巻取ドラム24の外周面には図略の螺旋状の綾振溝が形成されており、この綾振溝によって紡績糸20をトラバースさせるように構成している。
【0033】
前記クレードル23には、図略のリフトアップ機構及びパッケージブレーキ機構が備えられている。リフトアップ機構は、糸切れ時にクレードル23を上昇させて、パッケージ30を巻取ドラム24から離間させることができるようになっている。パッケージブレーキ機構は、前記リフトアップ機構によってクレードル23が上昇するのと同時に、クレードル23に把持されたパッケージ30の回転を停止させるように構成されている。
【0034】
前記巻取ユニット本体16は、給糸ボビン21と巻取ドラム24との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、バルーンコントローラ12と、テンション付与装置13と、スプライサ装置(スプライサユニット)14と、クリアラ(糸品質測定器)15と、を配置した構成となっている。
【0035】
前記ワインダユニット10は、図1に示すように、給糸ボビン21を供給するためのマガジン式供給装置60を備えている。このマガジン式供給装置60は、ワインダユニット10の下部から正面上方向に斜めに延出するマガジン保持部61と、このマガジン保持部61の先端に取り付けられているボビン収納装置62と、を備えている。
【0036】
このボビン収納装置62はマガジンポケット63を備え、このマガジンポケット63には複数の収納孔が円状に並べて形成されている。この収納孔のそれぞれには、供給ボビン70を傾斜姿勢でセットすることができる。前記マガジンポケット63は図略のモータによって間欠的な回転送り駆動が可能であり、この間欠駆動とマガジンポケット63が備える図略の制御弁とによって、マガジン保持部61が有する図略のボビン供給路に供給ボビン70を1つずつ落下させることができる。前記ボビン供給路に供給された供給ボビン70は、傾斜姿勢のまま給糸ボビン保持部71へ導かれる。
【0037】
給糸ボビン保持部71は図略の回動手段を備えており、供給ボビン70を前記ボビン供給路から受け取った後、当該供給ボビン70を斜め姿勢から直立姿勢に引き起こすように回動する。これによって、供給ボビン70をワインダユニット10の下部に給糸ボビン21として適切に供給して、ワインダユニット10による巻取作業を行うことができる。なお、図1に示すようなマガジン式供給装置60に代えて、自動ワインダ下部に設けられた図略の搬送コンベアにより給糸ボビン21を図略の給糸ボビン供給部から各ワインダユニット10の給糸ボビン保持部71に供給する形態であっても良い。
【0038】
バルーンコントローラ12は、芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。規制部材40の近傍には前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが備えられており、このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40を例えばエアシリンダ(図略)によって下降させることができる。
【0039】
テンション付与装置13は、走行する紡績糸20に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、ロータリー式のソレノイドにより回動することができる。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。なお、テンション付与装置13には、上記ゲート式のもの以外にも、例えばディスク式のものを採用することができる。
【0040】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。また、このスプライサ装置14は集塵器80を備えている。なお、スプライサ装置14の詳細な構成については後述する。
【0041】
クリアラ15のクリアラヘッド49には、紡績糸20の太さを検出するための図略のセンサが備えられている。クリアラ15はこのセンサからの糸太さ信号を監視することにより糸欠陥を検出するように構成されている。また、前記クリアラヘッド49の近傍には、前記クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに紡績糸20を切断するための図略のカッタが付設されている。
【0042】
スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ26と、が設けられている。また、下糸案内パイプ25と上糸案内パイプ26は、それぞれ軸33,35を中心にして回動可能に構成されている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0043】
給糸ボビン21から解舒された糸は、スプライサ装置14の下流側に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。この巻取ドラム24は図略のドラム駆動モータの出力軸に連結されており、このドラム駆動モータの作動は図略のモータ制御部によって制御されている。
【0044】
以上の構成で、前記マガジン式供給装置60からボビンが給糸ボビン保持部71に供給されると、巻取ボビン22が駆動され、前記給糸ボビン21から解舒された紡績糸20を前記巻取ボビン22に巻き取ることで所定長のパッケージ30を形成することができる。
【0045】
次に、スプライサ装置14について図2を参照しながら説明する。図2は本実施形態に係るスプライサ装置14の外観斜視図である。
【0046】
スプライサ装置14は、巻取ユニット本体16を構成するパネル91にボルト88によって固定されており、ボルト88を外すことにより取外し可能に構成されている。また、スプライサ装置14は、糸継ノズル94と、糸寄せレバー96と、クランプ部97と、糸押さえレバー98と、カッタ92,93と、解撚パイプ82と、集塵器80と、を主要な構成として備えている。
【0047】
糸継ノズル94は前記スプライサ装置14の本体正面側に配置されており、この糸継ノズル94には糸継孔90が形成されている。また、この糸継孔90の内側には圧縮空気を噴出するための図略の噴出口が形成されており、この圧縮空気によって糸継孔90内部に旋回気流を発生させるように構成されている。
【0048】
糸寄せレバー96、クランプ部97及び糸押さえレバー98は、何れも糸継ノズル94の上側及び下側に対で備えられている。糸寄せレバー96は、下糸案内パイプ25で案内された下糸及び上糸案内パイプ26で案内された上糸を糸継ノズル94へ寄せるように構成されている。また、クランプ部97は、糸継ノズル94に案内された状態の上糸及び下糸の所定の箇所をクランプ可能に構成されている。糸押さえレバー98は、糸継ノズル94での糸継時に上糸及び下糸を押さえて固定できるように構成されている。
【0049】
スプライサ装置14には上糸糸端用と下糸糸端用の解撚パイプ82が備えられている。2本の解撚パイプ82は細長い円筒状に形成されるとともに、その長手方向をスプライサ装置14の前後方向に向けて互いに平行に配置される。2本の解撚パイプ82は上下に並べて配置され、それぞれが一端をスプライサ装置14の正面に開口させている。上糸糸端用の解撚パイプ82の開口端は糸継ノズル94より下側に配置され、下糸糸端用の解撚パイプ82の開口端は糸継ノズル94より上側に配置される。
【0050】
各解撚パイプ82内には、図略の圧縮空気通路から圧縮空気が噴出されるように構成されている。また前記解撚パイプ82の装置背面側の端部には気流誘導チューブ89が接続されており、この気流誘導チューブ89は、解撚パイプ82内に噴射される圧縮空気による気流を、スプライサ装置14の背面側に配置された集塵器80へ誘導することができる。
【0051】
前記集塵器80は、スプライサ装置14の本体に対しネジ等の適宜の手段で固定されている。この集塵器80は、集塵室81と、糸屑導入口83と、棒状部材86と、蓋部87と、を備えている。
【0052】
集塵室81は筒状のケーシングの内部に形成されており、略円柱形状に構成されるとともに、その内部で渦回転気流を発生可能に構成されている。具体的には、集塵器80には、前記円柱状の集塵室81の略接線方向に空気流を導入するための糸屑導入口83が設けられている。この糸屑導入口83に向けて空気流を吹き付けることにより、集塵室81内部に渦回転気流を発生させることができる。また、前記気流誘導チューブ89は、この糸屑導入口83に向けて気流を誘導している。集塵室81の素材については特に制限はないが、透明又は半透明の樹脂等で構成すると、後述の糸屑の蓄積量等が外部から確認できて好適である。
【0053】
図3に示すように、前記棒状部材86は、円柱形状の集塵室81の中心部に軸を略一致させるようにして備えられている。また、棒状部材86は、断面が円形となるように形成されている。棒状部材86は前記集塵室81の底部から上方に突出するように設けられ、その下半部は太さが一様な円柱状に形成され、上半部は先細状(略円錐状)に形成されている。
【0054】
蓋部87は、エア抜きフィルタ84と、糸屑排出開口部85とを備えている。蓋部87は、集塵室81の上部に形成された開放部を覆うように例えば螺合部を介して装着されており、回転させることで取外し可能である。エア抜きフィルタ84は、空気抵抗があまり発生せず且つ糸屑を捕捉できる程度の粗さの、例えば金網状のフィルタによって構成されている。糸屑排出開口部85は蓋部87の中心部に円形に開口されており、この糸屑排出開口部85に吸引パイプ95を接続して外部の吸引装置により吸引することで、集塵室81内部に蓄積した糸屑を外部へ排出することができるように構成されている。また、糸屑排出開口部85の中心には棒状部材86の先端の先細部が一部挿入されている。
【0055】
次に、前記スプライサ装置14の糸継時の動作について説明する。糸継は、例えば、給糸ボビン21の糸が無くなって新しいボビンが供給された場合や、クリアラ15が糸欠点を検出して当該糸欠点の除去のためにカッタによって糸を切断した場合など、給糸ボビン21側の下糸とパッケージ30側の上糸とを繋ぐ必要があるときに行われる。
【0056】
この場合には、まずクレードル23が図略のリフトアップ機構によってクレードル23を上昇させて、パッケージ30を巻取ドラム24から離間させる。これと同時に、図略のパッケージブレーキ機構が、クレードル23に把持されたパッケージ30の回転を停止させる。パッケージ30の巻取が停止すると、スプライサ装置14による糸継動作が開始される。
【0057】
糸継動作が開始すると、下糸案内パイプ25の吸引口32が図1で示す位置で下糸を捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することでスプライサ装置14に下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、上糸案内パイプ26が図示の位置から軸35を中心として上方へ回動し、図略のドラム駆動モータによって逆転されるパッケージ30から解舒される上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、上糸案内パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、スプライサ装置14に上糸を案内する。
【0058】
スプライサ装置14に案内された上糸と下糸は、図3に示すように糸寄せレバー96によって寄せられ、糸継ノズル94の糸継孔90内に挿入される。このとき、上糸及び下糸はそれぞれクランプ部97によってクランプされるとともに、下糸は下糸用カッタ92、上糸は上糸用カッタ93に導入される。なお、図3以降の図において、上糸と下糸とを区別して判り易く図示するために、下糸は破線で描かれている。
【0059】
そして、上糸及び下糸は前記カッタ92,93によって所定の長さに切断されて糸端を形成する。そして、切断された残りの部分の糸は、吸引口32及びサクションマウス34に吸引されて除去される。
【0060】
前記の糸切断とほぼ同時に、圧縮空気通路73から解撚パイプ82の内部に向かって圧縮空気が噴出される。すると、図4に示すように、糸切断によって形成された糸端が解撚パイプ82内部に吸引される。そして、上糸及び下糸は、それぞれの解撚パイプ82の内部で空気流によって糸端のファイバーの撚りが解かれ、解撚される。このとき細かい糸屑75が発生し、空気流に飛ばされる。
【0061】
空気流に飛ばされた糸屑75は、解撚パイプ82に接続された気流誘導チューブ89を介して、集塵器80の糸屑導入口83から集塵室81内部に導入される。このとき、解撚パイプ82からの空気流が円柱形状の集塵室81の内部に略接線方向から導入されるので、集塵室81内部で渦回転気流74が発生する。この結果、サイクロン(粉体分離器)の原理により、糸屑75は遠心力で外周側に飛ばされ、重力によって集塵室81下部に堆積される。糸屑75が分離された清浄な空気流は、エア抜きフィルタ84を介して集塵室81の外部に放出される。またこのとき棒状部材86に糸屑75が絡み付くことにより、糸屑を集塵室81に効率良く回収することができる。
【0062】
糸端の解撚が終了すると、糸寄せレバー96の糸寄せ動作及び糸押さえレバー98の糸押さえ動作により、図5に示すように上糸と下糸の両糸端が解撚パイプ82から引き出され、糸継ノズル94の糸継孔90内で互いに重ね合わされた状態でセットされる。この状態で噴出孔72から圧縮空気を糸継孔90内に噴出させることで、圧縮空気の旋回流を発生させ、上糸と下糸のファイバーを絡ませ、加撚して糸継ぎを行う。糸継が終了すると、各レバー96,98の動作が解除されるとともにクランプ部97による糸のクランプが解除される。また、これとほぼ同時にパッケージ30が巻取ドラム24に対して接触するようにクレードル23を作動させ、糸の巻取を再開する。
【0063】
次に、集塵室81内に蓄積した糸屑75の排出について説明する。スプライサ装置14の運転を長期間続けると、集塵室81の底部には細かい糸屑75が堆積するが、この堆積量が多くなり過ぎると渦回転気流74が阻害されて捕集能力が低下し、最終的には糸屑排出開口部85から糸屑75が溢れることになる。従って、適宜のタイミングで糸屑75を集塵室81の外部へ排出する必要がある。
【0064】
本実施形態において、この糸屑75の排出は、オペレータ又はメンテナンス作業者が、前記吸引パイプ95を糸屑排出開口部85に接続することにより行うことができる。この吸引パイプ95は、図略の制御バルブを介して、前記ブロアボックスに配置された負圧源としてのブロアに接続されている。この構成で、例えばオペレータの操作に応じて図略の制御部が前記制御バルブを所定時間開くことにより、図6に示すように集塵室81内部の糸屑75が吸引パイプ95によって吸い出され、外部に排出される。
【0065】
なお、本実施形態において、前記集塵室81の内部に棒状部材86が配置されている。従って、糸屑75が一定程度蓄積した場合、棒状部材86の周囲で糸屑75が纏まってリング状に成長することはあっても、大きなボール状の塊を呈することは防止される。従って、糸屑75の堆積量が多い場合でも糸屑排出開口部85及び吸引パイプ95を詰まらせることなく容易に吸引することができるので、吸引パイプ95による吸引の頻度を減らすことができ、メンテナンス作業を低減することができる。また、棒状部材86が糸屑排出開口部85へ向けて先細状に形成されているので、リング状に成長して棒状部材86に絡み付いた糸屑75であっても、棒状部材86から容易に抜き取って糸屑排出開口部85から回収することができる。
【0066】
また、前記の吸引作業は強力な負圧源による吸引を伴うものであるため、前述した解撚パイプ82による糸端の解撚に影響を及ぼす恐れがある。これを回避するため、吸引パイプ95による糸屑75の吸引は、解撚時以外のタイミングで行うことが好ましい。
【0067】
一方、糸屑75が絡み付いたり大量に蓄積した場合は、吸引パイプ95による吸引では排出できないことがある。このような場合は、蓋部87を取り外すことで、集塵室81の上部を開放することができる。これにより、メンテナンス作業者は集塵室81内部の掃除を行うことが容易になり、手で糸屑75を摘んで取り除くことができる。
【0068】
また、スプライサ装置14全体の汚れが酷いときや、故障が発生したとき等は、ボルト88を外すことによりスプライサ装置14全体を取り外すことができる。これにより、丸ごと洗浄を行ったり、新しい装置に交換したりすることができる。
【0069】
以上に示したように、本実施形態のスプライサ装置14は、糸屑75を回収するための専用の集塵器80を備えている。
【0070】
これにより、周囲に糸屑75が飛散してワインダユニット10の機台本体やパッケージ30に付着することがなくなるので、作業環境及びパッケージ品質を向上させることができる。またスプライサ装置14が集塵器80を備えているので複雑な集塵経路が必要なくなり、装置が簡素となるとともに、集塵経路の途中で糸屑75が詰まる問題が発生しないのでメンテナンス作業を軽減することができる。
【0071】
また、本実施形態のスプライサ装置14において、前記集塵器80は略円柱形状に構成された集塵室81を備え、前記集塵室81内部で渦回転気流74を発生させることにより糸屑75を回収している。
【0072】
これにより、渦回転気流74により集塵室81に糸屑75を効率良く回収することができる。
【0073】
また、本実施形態のスプライサ装置14は、糸継時に糸端が導入され圧縮空気によって前記糸端を解撚する解撚パイプ82を備える。また、前記集塵器80は、集塵室81の略接線方向に糸屑75を導入する糸屑導入口83を備え、圧縮空気の噴射によって生成される解撚パイプ82からの空気流が糸屑導入口83に吹き付けられることにより、渦回転気流74を発生させている。
【0074】
これにより、糸解撚時に発生する糸屑75が集塵室81内部に直接導入されるので、集塵が極めて容易になる。また、解撚パイプ82からの空気流を利用して渦回転気流74を発生させるので、負圧源等を必要とせずに糸屑75を集塵室81に回収することができる。
【0075】
また、本実施形態のスプライサ装置14においては、略円柱形状の集塵室81の軸方向の一端にエア抜きフィルタ84が備えられている。
【0076】
これにより、糸屑75の集塵室81からの飛散をエア抜きフィルタ84によって阻止できると同時に、渦回転気流74はエア抜きフィルタ84を介してスムーズに排出することができる。従って、糸屑75を含んだ空気流が解撚パイプ82側に逆流することを防ぐことができる。
【0077】
また、本実施形態のスプライサ装置14においては、略円柱形状の集塵室81の軸方向の一端(上端)に、回収した糸屑75を外部に排出するための糸屑排出開口部85が備えられている。
【0078】
これにより、集塵器80に回収した糸屑75を、糸屑排出開口部85を介して外部に容易に排出することができる。
【0079】
また、本実施形態のスプライサ装置14においては、集塵室81の中央部に、断面形状が円形の棒状部材86を備えている。
【0080】
これにより、糸屑75を棒状部材86に絡み取らせつつ、集塵室81の中央部に纏めることができる。従って、集塵室81からの糸屑75の回収が容易になる。
【0081】
また、本実施形態のスプライサ装置14においては、棒状部材86の一方の端部が先細状に構成されている。
【0082】
これにより、棒状部材86の周囲に絡み付いた糸屑75を先細状の端部に向かって移動させて抜き取るようにすることで、糸屑75を容易に回収することができる。
【0083】
また、本実施形態のスプライサ装置14においては、略円柱形状の集塵室81の軸方向の一端側(上端側)を、蓋部87を取り外すことで開放可能に構成されている。
【0084】
これにより、集塵室81内部の掃除等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0085】
また、本実施形態のスプライサ装置14は、集塵器80を取り付けた状態で、ワインダユニット10の機台(前記パネル91)に対し着脱可能である。
【0086】
これにより、メンテナンス作業やスプライサ装置14の交換等を容易に行うことができる。また、糸継を行うスプライサ本体と集塵器80とを一体的に纏めて取り扱うことができるので、ワインダユニット10の機台への着脱が容易になる。
【0087】
また、本実施形態の自動ワインダはワインダユニット10を複数備えており、それぞれのワインダユニット10は前記のスプライサ装置14を備えている。
【0088】
これにより、糸屑75が飛散せずパッケージに付着しないため、高品質のパッケージを製造することができる。
【0089】
また、本実施形態の自動ワインダは、集塵器80に回収された糸屑75を当該集塵器80の外部へ排出させるためのブロアボックスを備えている。
【0090】
これにより、糸屑75を集塵器80の外部へ効率良く排出できるので、メンテナンス作業がより容易になる。
【0091】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0092】
集塵室81の形状は、断面形状が円形であることが渦回転気流を円滑に発生させるために好ましいが、円柱形状に限定されず、例えば集塵室をテーパ状(円筒形状)に構成することができる。このようにすれば、テーパの大径部から小径部に向かって渦回転気流が進むに従って遠心力が増し、集塵性能が向上するので好ましい。また、集塵室を中空のドーナツ状に形成することもできる。
【0093】
糸屑排出開口部85及びエア抜きフィルタ84は、蓋部87に設ける構成に代えて、例えば集塵室81を構成する部材に直接形成する構成に変更することができる。
【0094】
また、糸屑排出開口部85及びエア抜きフィルタ84は、集塵室81の上部に設ける構成に代えて、例えば集塵室81の底(下部)に設ける構成に変更することができる。ただし、渦回転気流によって糸屑を下部に回収し、エアは上部から排出するという観点からは、エア抜きフィルタ84は集塵室81の上部に設けることが好ましい。
【0095】
糸屑排出開口部85は省略することができる。ただし、この場合は吸引パイプ95による吸引作業ができないので、集塵室81の一部を開放させて、手作業で糸屑75の除去を行うことになる。
【0096】
エア抜きフィルタ84は金網状とする構成に代えて、より細かいフィルタに変更できる。ただし、解撚パイプ82側への空気流の逆流を防止するため、空気抵抗の小さいフィルタを用いることが好ましい。
【0097】
蓋部87は樹脂製とすることに代えて、例えばゴムのような弾性体で形成し、弾性変形させながら集塵室81に取り付けることで固定する構成に変更することができる。
【0098】
棒状部材86は、下部を円柱形状、上部を略円錐形状とする構成に代えて、例えば全体が円柱形状の構成や、全体が円錐形状の構成に変更できる。また、円錐形状以外の先細形状に形成することも可能である。
【0099】
前記棒状部材86は省略することもできる。ただし、糸屑を絡み付かせて回収を容易とするとともに、糸屑のボール状の成長を防止して糸屑排出開口部85の詰まりを回避するという観点からは、上記実施形態のように棒状部材86を備えることが好ましい。
【0100】
吸引作業のタイミングは糸屑が蓄積してから行うのではなく、例えば糸継終了時に毎回吸引を行っても良い。また、例えば吸引パイプ95を糸屑排出開口部85に常時接続しておき、糸継終了時に自動的に前記制御バルブを開いて糸屑を吸引する構成に変更することができる。このように糸継終了時に自動的に吸引を行えば、糸屑が蓄積することもなく、また吸引によって糸端の解撚に悪影響を与える心配もないので特に好適である。なお、複数のワインダユニット10それぞれの糸屑排出開口部85を単一のブロアに共通に接続した場合、前記制御バルブはワインダユニット10ごとに設けると、ワインダユニット10ごとに糸屑の排出を制御できるので更に好ましい。
【0101】
前記糸屑排出開口部85には、自動ワインダのブロアボックスのブロアを接続することに代えて、例えばメンテナンス作業者が持運び可能な小型の負圧源を接続するように変更することができる。
【0102】
蓋部87は集塵室の上部に配置する構成に代えて、例えば集塵室の下部(底)を開放し、この開放部を塞ぐように蓋部を配置する構成に変更することができる。この場合、集塵室の底を形成する蓋部の上に糸屑が蓄積するので、蓋部を開くことにより糸屑を自重によって落下させて簡単に回収することができる。
【0103】
なお、上記実施形態は自動ワインダについて説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られず、例えば紡績機に集塵器つきのスプライサ装置を備える構成など、他の糸巻取機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の一実施形態に係るスプライサ装置を備えるワインダユニット10の側面図。
【図2】スプライサ装置の外観斜視図。
【図3】スプライサ装置に上糸及び下糸がセットされた状態を示す概略的な断面図。
【図4】スプライサ装置が糸端を解撚する様子を示す概略的な断面図。
【図5】スプライサ装置が糸端同士を加撚して糸継ぎする様子を示す概略的な断面図。
【図6】スプライサ装置の集塵器の糸屑を排出する様子を示す概略的な断面図。
【符号の説明】
【0105】
10 ワインダユニット
14 スプライサ装置(スプライサユニット)
20 紡績糸
21 給糸ボビン
30 パッケージ
80 集塵器
81 集塵室
82 解撚パイプ
83 糸屑導入口
84 エア抜きフィルタ
85 糸屑排出開口部
86 棒状部材
87 蓋部
88 ボルト
89 気流誘導チューブ
90 糸継孔
91 パネル
92,93 カッタ
94 糸継ノズル
96 糸寄せレバー
97 クランプ部
98 糸押さえレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸屑を回収するための専用の集塵器を備えることを特徴とするスプライサユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のスプライサユニットであって、
前記集塵器は略円柱形状又は略円錐形状に構成された集塵室を備え、前記集塵室内部で渦回転気流を発生させることにより前記糸屑を回収することを特徴とするスプライサユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のスプライサユニットであって、
糸継時に糸端が導入され圧縮空気によって前記糸端を解撚する解撚パイプを備え、
前記集塵器は、前記集塵室の略接線方向に糸屑を導入する糸屑導入口を備え、
前記圧縮空気の噴射によって生成される前記解撚パイプからの空気流が前記糸屑導入口に吹き付けられることにより、前記渦回転気流を発生させることを特徴とするスプライサユニット。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のスプライサユニットであって、
略円柱形状又は略円錐形状の前記集塵室の軸方向の少なくとも一端にエア抜きフィルタが備えられていることを特徴とするスプライサユニット。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載のスプライサユニットであって、
略円柱形状又は略円錐形状の前記集塵室の軸方向の少なくとも一端に、回収した前記糸屑を外部に排出するための糸屑排出開口部が備えられていることを特徴とするスプライサユニット。
【請求項6】
請求項2から5までの何れか一項に記載のスプライサユニットであって、
前記集塵室の中央部に、断面形状が円形の棒状部材が備えられることを特徴とするスプライサユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のスプライサユニットであって、
前記棒状部材の少なくとも一方の端部が先細状に構成されていることを特徴とするスプライサユニット。
【請求項8】
請求項2から7までの何れか一項に記載のスプライサユニットであって、
略円柱形状又は略円錐形状の前記集塵室の軸方向の少なくとも一端が開放可能であることを特徴とするスプライサユニット。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載のスプライサユニットであって、
前記集塵器を取り付けた状態で機台に対し着脱可能であることを特徴とするスプライサユニット。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のスプライサユニットを備えた巻取ユニットを複数備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項11】
請求項10に記載の糸巻取機であって、
前記集塵器に回収された糸屑を当該集塵器の外部へ排出させるための吸引手段を更に備えていることを特徴とする糸巻取機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate