説明

スプリットと挿入可能な薬剤コアとを含む涙管インプラント

眼の涙点及び関連する小管内に安全で定着可能な保持を提供する、涙管インプラント及び関連する方法が記載される。涙管インプラント(300)は、第1の(304)及び第2の部分(306)を含み第1の部分の近位端から第2の部分の遠位端まで延びるインプラント本体(302)を備える。第2の部分は、保持突起(312)を含む。インプラント本体は、第1の部分の近位端から第2の部分に向かって長手方向に延びるキャビティを更に含むことができる。キャビティは、挿入可能アクチュエータを受け入れるような形状及び大きさであり、保持突起は、挿入可能アクチュエータがキャビティ内に装着されているときに、外側に偏向するかまたは方向を変えるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年11月27日に出願された米国仮特許出願番号第61/283,100号の優先権の利益を主張するものであり、全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
この特許文書は、概ね眼科用デバイスに関し、特に眼のインプラントに関する。より具体的には、限定されるものではないが、この特許文書は、涙管インプラントと、そのようなインプラントの製造方法、及び、そのようなインプラントを使用する、眼、呼吸、内耳または他の疾患若しくは障害(例えば、肺若しくは免疫の障害)の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
乾性角結膜炎を含むドライアイは、治療を必要とし得る普通の眼の状態である。ドライアイは、広い人口帯によって経験され、高齢者では普通である。多様な現在の治療法は、通常の涙液の増加と、涙液膜成分生産の増強と、眼から涙小管を通過する涙の流れを閉塞する等の、涙の滞留時間を高めるための方法とを含み、ドライアイの原因となる生理学的条件に目標を定める。
【0004】
現在の涙の流れを閉塞する多くの技術は、自然には元に戻せないことを含めて欠点を持つ。例えば、いくつかの涙の流れを閉塞する技術は、関連する涙点開口部閉塞を縫うことによって、または、涙点開口部を封止するために電気またはレーザー焼灼を用いることによって、細管状の管を閉じることを含む。このような処置はドライアイを治療するために涙の流れを閉塞することの望ましい結果を提供することができるが、それらは再建手術をせずに元に戻すことはできない。
【0005】
ドライアイの症状緩和に加え、適切な薬剤または他の治療薬の眼、鼻腔または内耳への送達を含む、眼、呼吸、及び内耳の疾患または障害管理の分野において、様々な課題が患者と医師に直面している。眼の管理では、例えば、現在の多くの眼の薬剤送達システムは、反復的な手動による管理を必要とし、患者の服薬順守の欠如に起因してまたは眼に到達するのに不十分な薬剤濃度に起因して効果がないことも多い。例えば、点眼液が眼に点眼されるとき、それは結膜嚢(すなわち、眼と瞼との間のポケット)をいっぱいにすることも多く、瞼の縁に過剰流出すること、及び頬にこぼれ落ちることに起因して、液滴のかなりの部分を失わせる。眼表面に残っている液滴の大部分は、点眼後直ちに涙小管に流入し通過して洗い流すことができ、それによって、吸収的に眼を治療することができる前に、薬剤の濃度が希釈する。更に、局所的に点眼される薬剤は、点眼後約2時間に眼の効果のピークを有することが多く、その後、所望の薬剤治療効果を維持するために更なる点眼が施されるべきであるが、多くの場合には施されない。
【0006】
眼の管理とは異なる他の分野では、呼吸関連の(例えば、アレルギー)及び内耳の疾患または障害の管理は、しばしば薬剤の反復的な手動の消化または他の投薬の摂取(例えば、薬剤若しくは他の治療薬)を必要とし、かつ、患者の服薬順守の欠如または非局所化された薬剤送達のために無効になることがある。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、眼上の涙の滞留時間と眼、鼻腔、内耳、または他の身体系への薬剤若しくは他の治療薬の送達とを増加させる様々な有望な技術を認識している。これらの技術は、取り外し可能かつ選択的に薬剤を放出する涙管インプラントを、涙点を介して関連する小管に配置することを含むことができる。鼻涙排水系の1つまたは複数の特徴を利用する涙管インプラントを設計することによって(例えば、涙小管や涙小管膨大部の形状を模倣することによって)、患者の快適さ及び眼の解剖におけるインプラントの保持を満たすことができると信じられる。このように、本涙管インプラントは、自然には元に戻せない等の現在のドライアイ軽減に関連する欠点、及び、乏しい患者の服薬順守、浪費、不時の点眼、または非局在化送達等の、手動滴下または消化ベースの薬剤投与に関連する欠点のいくつかを克服することができる。
【0008】
そのうえ更に、本発明者らは、涙管インプラントが以下のうち1つまたは複数の利益を得ることができることを認識している:涙点または関連する小管に多く偏向すること(biasing)なく容易に着脱することができる機能、必要に応じて特定の涙点または小管の直径に対して所定の大きさであることなく、移植に際して特定の涙小管に確実に保持可能である機能、涙液、薬剤、または他の薬品が鼻涙系に流入することを可能にする機能、薬剤送達システムとして作られかつ用いられるときに、長期間にわたって所期の治療レベルで1つまたは複数の薬剤または他の治療薬を持続的、局所的に放出することを可能にする機能。
【0009】
これらの認識に照らして、疾患または障害を治療するための涙管インプラントが開示される。より具体的には、涙管インプラント、そのようなインプラントの製造方法、及び、そのようなインプラントを用いる、眼、呼吸、内耳、肺、または免疫の疾患または障害の治療方法が開示される。
【0010】
涙管インプラントの一例は、第1の及び第2の部分を含み第1の部分の近位端から第2の部分の遠位端まで延びるインプラント本体を備える。第2の部分は、保持突起を含む。インプラント本体は、更に、第1の部分の近位端から第2の部分に向かって長手方向に延びるキャビティを含むことができる。キャビティは、挿入可能アクチュエータを受け入れるような形状及び大きさであり、保持突起は、挿入可能アクチュエータがキャビティ内に装着されているときに、外側に偏向するかまたは方向を変えるように構成される。
【0011】
涙管インプラントを形成する方法の一例は、インプラント本体(インプラント本体の第1の及び第2の部分を含む)を形成すること、インプラント本体を第1の部分の近位端から第2の部分の遠位端まで延ばすこと、第1の部分の近位端から第2の部分に向かって長手方向に延びるキャビティを形成すること、挿入可能アクチュエータを受け入れるようにキャビティを形成するとともに大きさを決めること、かつ、挿入可能アクチュエータがキャビティ内に装着されているときに、外側に偏向するかまたは方向を変えるように第2の部分に保持突起を形成することを含む。
【0012】
本涙管インプラント及び方法の、上記及び他の実施形態と利点と態様とは、以下の詳細な説明の一部に記載される。この例示的な実施形態の欄は、本特許出願の主題の概要を提供することが意図される。本発明のインプラントの排他的または網羅的な説明を提供することは意図されない。詳細な説明は、本特許文書に関する更なる情報を提供するために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面では、類似の数字は、いくつかの図を通して同様の構成要素を記載するために用いることができる。異なる文字の末尾を有する類似の数字は、同様の構成要素の異なる実施例を表すために用いることができる。図面は、例示のためであり、限定のためではなく、本文書で論じられる様々な実施形態を一般的に示す。
【0014】
【図1】図1は、特定の組織構造が涙管インプラントを使用できる適切な環境を提供する、眼に関連する解剖学的組織構造例の図を示す。
【図2】図2は、特定の組織構造が涙管インプラントを使用できる適切な環境を提供する、眼に関連する解剖学的組織構造例の図を示す。
【図3A】図3Aは、涙点を通り関連する小管内に少なくとも部分的に挿入可能であり、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラント例の図を示す。
【図3B】図3Bは、涙点を通り関連する小管に少なくとも部分的に挿入可能であり、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラント例の図を示す。
【図3C】図3Cは、涙点を通り関連する小管に少なくとも部分的に挿入可能であり、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラント例の図を示す。
【図4】図4は、挿入可能アクチュエータを受け入れ、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラント例の断面図を示す。
【図5A】図5Aは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図5B】図5Bは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図5C】図5Cは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図6A】図6Aは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図6B】図6Bは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図6C】図6Cは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図7A】図7Aは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの更に他の実施例を示す。
【図7B】図7Bは、保持突起が圧縮方向にあるときの図7Aの涙管インプラント例を示す。
【図8】図8は、涙点を通り関連する小管に挿入可能な涙管インプラントの製造方法例のフローチャート図である。
【図9A】図9Aは、涙管インプラントを挿入するために用いることができる挿入具例の図を示す。
【図9B】図9Bは、涙管インプラントを挿入するために用いることができる挿入具例の図を示す。
【図9C】図9Cは、涙管インプラントを挿入するために用いることができる挿入具例の図を示す。
【図10A】図10Aは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図10B】図10Bは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図10C】図10Cは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図10D】図10Dは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図10E】図10Eは、切り込みまたは空隙を有する涙管インプラントの他の実施例の図を示す。
【図11A】図11Aは、涙管インプラントを挿入するために用いることができる挿入具例の図を示す。
【図11B】図11Bは、涙管インプラントを挿入するために用いることができる挿入具例の図を示す。
【図11C】図11Cは、涙管インプラントを挿入するために用いることができる挿入具例の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この特許文献では、眼の涙点及び関連する小管内に安全で定着可能な保持を提供する、涙管インプラント及び関連する方法が記載される。涙管インプラントは、第1の及び第2の部分を含み第1の部分の近位端から第2の部分の遠位端まで延びるインプラント本体を備える。第2の部分は、保持突起を含む。インプラント本体は、第1の部分の近位端から第2の部分に向かって長手方向に延びるキャビティを更に含むことができる。キャビティは、挿入可能アクチュエータを受け入れるような形状及び大きさであり、保持突起は、挿入可能アクチュエータがキャビティ内に装着されているときに、外側に偏向するかまたは方向を変えるように構成される。
【0016】
様々な実施例では、涙管インプラントは、眼、鼻腔、または内耳系のうち1つまたは複数に薬剤または他の治療薬を持続放出することを提供する、別々の薬剤挿入体、統合された薬剤、又は、インプラント本体の第1の部分若しくは第2の部分の少なくとも一方に配置される他の薬品を更に含むことができる。
【0017】
図1及び図2は、眼100に関連する解剖学的組織構造例の図を示す。図示される特定の解剖学的組織構造は、ここに論じられる様々な涙管インプラント及び方法を用いる治療に適することができる。眼100は、三層すなわち外側の強膜102、中間の脈絡膜層104、及び内側の網膜106を有する壁を含む球状の構造体である。強膜102は、内側の層を保護する強靭な繊維の被膜を含む。それは、眼100に光を入れることを可能にする、角膜108として一般に知られる、前面にある透明な領域を除いて、大部分が白い。
【0018】
強膜102の内側に位置する脈絡膜層104は、多くの血管を含み、眼100の前面では色のついた虹彩110として変更される。両凸レンズ112は、ちょうど瞳の背後に位置する。レンズ112の背後にあるチャンバ114は、硝子体液、ゼラチン状の物質で満たされている。前部及び後部のチャンバ116は、それぞれ角膜108と虹彩110との間に位置し、房水で満たされている。眼100の背面は、光検出網膜106である。
【0019】
角膜108は、眼100の背面に像を伝える光学的に透明な組織である。それは、角膜108と強膜102との間の接合部を走る血管からと同様に、栄養素及び酸素が、涙液及び房水に浸されることを介して供給される無血管組織を含む。角膜108は、眼100に薬剤を浸透させるための経路を含む。
【0020】
図2を参照すると、分泌系230と、分配系と、排泄系とを含む涙液排水系を含む、眼100に関連する他の解剖学的組織構造が図示されている。分泌系230は、瞬きと涙の蒸発による温度変化とによって刺激される分泌と、物理的または感情的な刺激に応答して遠心性副交感神経に涙を供給及び分泌させる反射分泌とを含む。分配系は、瞬きによって眼の表面に涙を拡散して乾燥した領域の発生を減らす、瞼202と開いた眼の瞼縁周囲の涙液メニスカスとを含む。
【0021】
涙液排水系の排泄部分は、流動排水のために、涙点、涙小管、涙嚢204、及び涙管206を含む。涙管206から、涙液及び他の流動性物質は、鼻涙系の経路に排出される。涙小管は、上部212及び下部214の涙点内でそれぞれ終わる、上部(上位)涙小管208及び下部(下位)涙小管210を含む。上部212及び下部214の涙点は、結膜嚢218に近い睫毛及び涙管部分の接合部216において眼瞼縁の内側端にわずかに隆起している。上部212及び下部214の涙点は、一般的に、組織の結合リングに囲まれた、円形のまたはわずかに卵形の開口部である。各涙点212、214は、涙嚢204の入口で互いに結合するために小管の湾曲250でより水平に回転する前に、それぞれの小管の垂直部分220、222に通じる。小管208、210は、一般に形状が管状であり、これらが膨張するのを許容する弾性組織によって囲まれた重層扁平上皮によって被覆されている。図示したように、涙小管膨大部252は、各小管の湾曲250の外縁付近に存在している。
【0022】
図3A〜Cは、涙点212、214を介して関連する小管208、210(図2)に挿入可能になる涙管インプラント例300の図を示す。涙点212、214を介して関連する小管208、210に涙管インプラント300を挿入することは、以下の1つまたは複数を可能にすることができる:それを通過する涙流の抑制または閉塞(例えば、ドライアイを治療するために)、或いは、眼(例えば、感染症、炎症、緑内障、または他の眼の疾患若しくは障害を治療するために)、鼻腔(例えば、副鼻腔またはアレルギー疾患を治療するため)または内耳系(例えば、眩暈または頭痛を治療するために)への薬剤または他の治療薬の持続送達。
【0023】
この実施例に示すように、涙管インプラント300は、第1の部分304及び第2の部分306を含むインプラント本体302を含むことができる。インプラント本体302は、第1の部分304の近位端308から第2の部分306の遠位端310に延びている。第2の部分306は、保持突起312を含む。保持突起312は、涙小管208、210内で涙管インプラント300を保持または固定する手段になることができる。
【0024】
インプラント本体302は、長手方向に第2の部分306に向かって第1の部分304の近位端308から延在するキャビティ314を含む。特定の実施例では、キャビティ314は、形状が主に円筒形である。図3Bに示すように、キャビティ314は、キャビティ324の遠位端が保持突起312に存在するように、第2の本体部分306内に貫通はせずに長手方向に延びている。
【0025】
図4は、涙管インプラント400の他の実施例の断面図を示す。この実施例では、キャビティ414は、挿入可能アクチュエータ416を受け入れるような形状及び大きさである。特定の実施例では、挿入可能アクチュエータ416は、キャビティ414の円筒形の直径と概ね一致するように円筒状の形状及び大きさを有する。挿入可能アクチュエータ416は、代わりに他の形状を有することができる。例えば、挿入可能アクチュエータ416は、キャビティの幅と概ね一致するような幅を有する板形状を有してもよい。挿入可能アクチュエータ416は、締りばめによって保持されてもよい。特定の実施例では、キャビティ414の開口部の各側及び挿入可能アクチュエータの外周面に約0.5/1000インチ余裕幅の余裕幅がある。
【0026】
保持突起412は、涙管インプラント400の小管挿入後、挿入可能アクチュエータ416がキャビティ414内に装着されているとき、外側に偏向するかまたは方向を変えるように構成されている。これは、配置のために挿入体を用いて長手方向に延び、かつ、その後挿入体が除去されるときに拡張することができるインプラントよりも、涙管挿入体の配置を良くすることができる。また、挿入体を用いる長手方向に延びるインプラントの配置では、配置前に、必要な長手方向の拡張に起因して患者の小管の解剖学的構造に穴を開けるかもしれない。
【0027】
いくつかの実施例では、インプラント400の遠位端におけるキャビティ414の直径または幅は、近位端におけるキャビティの直径または幅よりも小さい。キャビティ414の遠位端の小さい直径または幅、及び挿入可能アクチュエータ416の直径または幅は、挿入可能アクチュエータ416がキャビティ414に完全に装着されたときに、保持突起412をキャビティに対して側方に偏向させる。これらの実施例では、挿入可能アクチュエータ416は、保持突起412を外側に偏向させるために、(例えば、流体の吸収によって)拡張する必要がないことに注意されたい。外側の偏向は、挿入可能アクチュエータ416の直径または幅と、キャビティ414の直径または幅との違いによって引き起こされる。特定の実施例では、キャビティ414は、保持突起412の近位点において広い直径から狭い直径に先細り始める。特定の実施例では、キャビティ414は、保持突起412内の点において広い直径から狭い直径に先細り始める。
【0028】
図3A〜図3Cに戻ると、涙管インプラント300は、キャビティ314の少なくとも一部から保持突起312を通って延びる、キャビティ314の長手方向の延びに対して実質的に横断する、切り込みまたは空隙318を含む。切り込みまたは空隙318は、射出成形であってもよく、または涙管インプラント300に切断されてもよい。様々な実施例では、切り込みまたは空隙318の幅は、挿入可能アクチュエータの幅より小さい。切り込みまたは空隙318は、保持突起312の第1の部分320及び保持突起312の第2の部分322を定義することができる。切り込みまたは空隙318は、涙管インプラント300の遠位端を、涙点及び様々な大きさの小管解剖学的構造に挿入するために圧縮することができる。保持突起312は、その後、涙管インプラント300を固定するために挿入可能アクチュエータの挿入後に外側に拡張する。大きな切り込みまたは空隙318は、挿入時に涙管インプラントの圧縮をより多くすることができる。しかしながら、大きな切り込みまたは空隙318は、涙管インプラント300の外側への拡張を小さくすることになる。従って、切り込みまたは空隙318の大きさ決定にはトレードオフがある。特定の実施例では、切り込みまたは空隙318の幅は、約0.008インチから約0.012インチまでの範囲である。特定の実施例では、切り込みまたは空隙318の幅は、約0.010インチである。
【0029】
図4に示すように、挿入可能アクチュエータ416がキャビティ414に装着されているとき、保持突起412の第1の部分420は、第1の外側方向に偏向し、保持突起412の第2の部分422は、第2の外側方向に偏向する。キャビティ414は、切り込みまたは空隙に少なくとも部分的に挿入可能アクチュエータ416を受け入れるように、切り込みまたは空隙を少なくとも部分的に通って延びる。挿入可能アクチュエータ416は、装着されているとき、保持突起412の拡張を増やすために、遠位端に巻きつけられた材料または接着剤の補助輪を含んでもよい。
【0030】
いくつかの実施例では、挿入可能アクチュエータ416は、外側方向の偏向を引き起こすかまたは強化するように、拡張してもよい。挿入可能アクチュエータ416は、例えば、相対的に低い温度での第1の形状と、涙点のより温かい温度にさらされたときの拡張形状とを有することによって、インプラントを涙点に挿入した後に拡張させる形状記憶特性を有する材料(例えば、ニチノール)を含むことができる。形状記憶特性を有する保持要素を含む涙管インプラント例は、“NASOLACRIMAL DRAINAGE SYSTEM IMPLANTS FOR DRUG THERAPY”と題し、2007年4月2日に出願され、De Juanらの所有者共通の米国特許公開番号第US−2007−0243230号に記載され、保持要素の記載を含め、その全体が参照によりここに組み込まれる。
【0031】
いくつかの実施例では、挿入可能アクチュエータ416は、流体の吸収を介して拡張するハイドロゲルを含む。保持要素に含まれるハイドロゲルを有する涙管インプラント例は、“LACRIMAL IMPLANTS AND RELATED METHODS”と題し、2009年2月17日に出願され、Jainらの所有者共通の米国特許公開番号第US−2009−0264861号に記載され、保持要素の記載を含め、その全体が参照によりここに組み込まれる。いくつかの実施例では、挿入可能アクチュエータ416は、直径または幅が変化するキャビティ内で拡張し、いくつかの実施例では、挿入可能アクチュエータは、直径または幅が均一なキャビティ内で拡張する。
【0032】
保持突起412の、上記の部分または翼420、422は、挿入時に涙管インプラント400に沿って折り畳んでもよい。涙管インプラント400は、保持突起412の翼を強化する構造体を含んでもよい。この構造体は、保持突起412の各部分420、422に配置された、プラスチックまたは形状記憶金属(例えば、ニチノール)製の補強梁を含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施例では、図3の切り込みまたは空隙318は、保持突起312を貫通しては延びない。図5A〜図5Cは、涙点に少なくとも部分的に挿入可能な涙管インプラント500の他の実施例の図を示す。図示の実施例では、切り込みまたは空隙518は、保持突起512を部分的に通って延びるだけである。上述したように、切り込みまたは空隙518は、保持突起512の第1の部分520及び保持突起512の第2の部分522を定義することができ、挿入可能アクチュエータ(図示せず)の装着は、第1の部分520を第1の外側方向に、第2の部分を第2の外側方向に偏向させることができる。インプラント本体を通って延びる切り込みまたは空隙518を有さないことは、保持突起512の一部が挿入時に折り畳まれることを妨げる。また、涙管インプラント500の遠位端に先端を保有することは、インプラントが挿入されるように組織を膨張させる先端を提供し(すなわち、硬い導入部分を提供し)、同様に挿入可能アクチュエータの遠位移動を抑制することを助ける。
【0034】
図6Aは、保持突起612を部分的にだけ通って延びている切り込みまたは空隙618を有する涙管インプラント600の他の図を示す。涙管インプラント600は、挿入されたアクチュエータのない成形状態で示す。図6Bは、挿入されているときの圧縮された状態で涙管インプラント600を示す。図6Cは、挿入可能アクチュエータ616またはコアがキャビティに装着されているときの拡張した状態で涙管インプラント600を示す。
【0035】
図3に戻ると、いくつかの実施例では、インプラント本体302の第1の部分304の近位端308は、その外周の少なくとも一部を取り囲んで側方に突出する把持可能な突起332を含む。突起は、ピンセットまたは鉗子で把持されることができる。特定の実施例では、把持可能な突起332の周囲長は、保持突起312の近位端の周囲長に数値的にほぼ等しい。
【0036】
いくつかの実施例では、把持可能な突起332は、特にアクチュエータが挿入されているときに、涙管インプラント300が涙小管208、210内を完全に通過することを抑制または防止する等のために、涙点開口部212、214に対してまたは涙点開口部212、214の近くに装着するように構成され得る。把持可能な突起332はまた、例えば、インプラントが完全に移植されるかどうかについて、移植中のユーザに、触覚または視覚的なフィードバック情報を提供する。特定の実施例では、把持可能な突起332は、挿入可能アクチュエータを近位側で保持するようにキャビティに突出する、内側に延びる保持口を含む。
【0037】
把持可能な突起332は、移植されたとき、眼100と平行な方向に、または眼100と離れて側方へ延びることができる。把持可能な突起332の側方の突出は、突起の一部が眼100の方向に延びる場合に比べて、眼100に対する刺激を低減することがあると信じられる。
【0038】
図7Aは、涙点に少なくとも部分的に挿入可能な涙管インプラント700の他の実施例を示す。この実施例に示すように、涙管インプラント700は、第1の部分704及び第2の部分706を含むインプラント本体702を含むことができる。インプラント本体702の第1の部分704の近位端708は、長手方向の近軸726を定義し、インプラント本体702の第2の部分704の遠位端710は、長手方向の遠位軸728を定義する。非直線の角度がついた交点は、小管の湾曲(図2の250)に位置するか、または更に遠位に位置する涙小管の少なくとも一部に対して、インプラント本体702の少なくとも一部を偏向させるために、近軸726と遠位軸728との間に存在する。いくつかの実施例では、交点の角度は、約45度と約135度との間である。様々な実施例では、第1の部分の遠位端部は、第2の部分の近位端部と一体式である。
【0039】
いくつかの実施例では、第2の部分706は、第1の部分704の4倍の長さよりも短い大きさを有する長さを含むことができる。一実施例では、第2の部分706は、約10ミリメートル未満の長さを含むことができる。必要に応じて、インプラント本体702の1つまたは複数の部分は、解剖学的な装着のために卵形の断面形状を含むことができる。
【0040】
保持突起712は、第2の部分706の近位端730に位置している。キャビティ714は、第1の部分704の近位端708から第2の部分706に向かって長手方向に延びる。キャビティ714は、挿入可能アクチュエータ716を受け入れるような形状及び大きさである。図示したアクチュエータは円筒形状を有するが、挿入可能アクチュエータ716は、キャビティ714ができるように、異なる形状を有することができる。第2の部分706の近位端730は、挿入可能アクチュエータ716がキャビティ714に装着されているとき、涙小管膨大部(図2の252)に向かって偏向している。いくつかの実施例では、涙管インプラント700は、第1の部分704の切り込みまたは空隙718を含む。
【0041】
図7Bは、切り込みまたは空隙718が、挿入時に第1の部分704に向かって保持突起712の圧縮を可能にすることを示す。キャビティ714の側壁は内側に偏向し、保持突起712は、挿入可能アクチュエータ716がキャビティ714内にないとき、第1の部分704に向かって内側に偏向している。いくつかの実施例では、涙管インプラント700が成形あるいは別のやり方で形成されるとき、内側の偏向が作り出される。
【0042】
挿入後、保持突起712は、図7Aに示す位置に向かって戻る。挿入可能アクチュエータ716をキャビティ内に装着することは、涙管インプラント(例えば、プラグ)700を固定するために、第1の部分704の方向から外側に元の位置に向かって保持突起712を偏向させる。この実施例では、第1の部分704と第2の部分706との間の交点の角度は、挿入可能アクチュエータ716がキャビティ内に装着されているとき、約90度である。特定の実施例では、図7A及び図7Bの図示におけるキャビティの左側は、キャビティの遠位端の近く(インプラント本体の第1の部分704及び第2の部分706の交点近く)のキャビティの直径または幅を狭くするテーパーを含むことができる。キャビティ714の左側のこのテーパーは、挿入可能アクチュエータ716が装着されたとき、保持突起を第1の部分704の方向から外側に更に偏向させてもよい。
【0043】
図10A〜図10Eは、涙点212、214を介して、関連する小管208、210(図2)内に挿入可能であり得る涙管インプラント例1000の図を示す。涙点212、214を介する関連する小管208、210内への涙管インプラント1000の挿入は、以下の1つまたは複数を可能にすることができる:それを通過する涙流の抑制または閉塞(例えば、ドライアイを治療するために)、或いは、眼(例えば、感染症、炎症、緑内障、または他の眼の疾患若しくは障害を治療するために)、鼻腔(例えば、副鼻腔またはアレルギー疾患を治療するため)または内耳系(例えば、眩暈または頭痛を治療するために)への薬剤または他の治療薬の持続送達。
【0044】
この実施例に示すように、涙管インプラント1000は、第1の部分1004及び第2部分1006を含むインプラント本体1002を含むことができる。インプラント本体1002は、第1の部分1004の近位端1008から第2の部分1006の遠位端1010まで延びている。第2の部分1006は、保持突起1012を含む。保持突起1012は、涙小管208、210に涙管インプラント1000を保持するかまたは固定する手段になり得る。
【0045】
インプラント本体1002は、また、第1の部分1004の近位端1008から、第2の部分1006に向かって長手方向に延びるキャビティ1014を含む。特定の実施例では、キャビティ1014は、形状が主に円筒形である。図10Bに示すように、キャビティ1014は、キャビティ1024の遠位端が保持突起1012に存在するように、第2の本体部分1006内に貫通はせずに長手方向に延びている。
【0046】
図10A〜図10Cに示すように、涙管インプラント1000は、キャビティ1014の少なくとも一部から保持突起1012を介して延びる、キャビティ1014の長手方向の延びに対して実質的に横断する、切り込みまたは空隙1018を含む。切り込みまたは空隙1018は、射出成形であってもよく、または涙管インプラント1000に切断されてもよい。様々な実施例では、切り込みまたは空隙1018の幅は、挿入可能アクチュエータの幅より小さい。切り込みまたは空隙1018は、保持突起1012の第1の部分1020及び保持突起1012の第2の部分1022を定義することができる。切り込みまたは空隙1018は、涙管インプラント1000の遠位端を、涙点及び様々な大きさの小管解剖学的構造に挿入するために圧縮することができる。保持突起1012は、その後、涙管インプラント1000を固定するために挿入可能アクチュエータの挿入後に外側に拡張する。大きな切り込みまたは空隙1018は、挿入時に涙管インプラントの圧縮をより多くすることができる。しかしながら、大きな切り込みまたは空隙1018は、涙管インプラント1000の外側への拡張を小さくすることになる。従って、切り込みまたは空隙1018の大きさ決定にはトレードオフがある。特定の実施例では、切り込みまたは空隙1018の幅は、近位端1018Pにおいて約0.010インチであり、遠位端1018Dにおいて約0.003インチの幅まで先細りする。特定の実施例では、保持突起1012のテーパーは、図10A〜図10Eに示した角度より大きいかまたは小さい涙管インプラント1000の長手方向軸に対する角度によって定義されてもよい。例えば、図10A〜図10Eに図示した涙管インプラント1000の実施例では、保持突起1012のテーパーを定義する角度は、保持突起1012に保持突起312の表面よりも急なまたは鋭い表面を与える、図3A〜図3Cに図示した涙管インプラント300の保持突起312のテーパーを定義する角度よりも小さい。この実施例では、保持突起1012のテーパー面と涙管インプラント1000の長手方向軸との間の角度は、約26度であってもよい。
【0047】
いくつかの実施例によれば、涙管インプラント(例えば、図4の涙管インプラント400、または図7の涙管インプラント700)は、1つまたは複数の治療薬を含む。特定の実施例では、治療薬は、挿入可能アクチュエータ416または716に含まれ、それによって、涙管インプラント400または700の薬剤コアを形成する。薬品放出性薬剤コアは、持続的な治療薬(例えば、薬剤)を眼に放出させる。いくつかの実施例では、挿入可能アクチュエータ/薬剤コアは、涙管インプラント400または700から取り外し可能であり、新しい挿入可能アクチュエータ/薬剤コアは、新鮮な治療薬の供給を提供するために、インプラントのキャビティ414または714に挿入されてもよい。
【0048】
様々な実施例では、薬剤コアは、少なくとも21マイクログラム、少なくとも42マイクログラム、少なくとも44マイクログラム、少なくとも66マイクログラム、少なくとも81マイクログラム、または少なくとも95マイクログラムの薬剤(例えば、ラタノプロスト)を含むことができ、次のような“SUSTAINED RELEASE DELIVERY OF ACTIVE AGENTS TO TREAT GLAUCOMA AND OCULAR HYPERTENSION”と題し、2009年5月8日に出願されたButunerらの所有者共通の米国特許公開番号第US−2009−0264861号、及び、“IMPROVED DRUG CORES FOR SUSTAINTED OCULAR RELEASE OF THERAPEUTIC AGENTS”と題し、2009年9月18日出願された、Utkhedeの所有者共通の米国特許出願番号第61/277,000号において更に議論され、これらは、薬剤または他の薬品の濃度及び賦形剤の濃度の説明を含め、その全体が参照により組み込まれる。
【0049】
様々な実施例では、図4に示すように、薬剤コアは、少なくとも1つのコア露出面を定義するために、挿入可能アクチュエータ416の薬剤コアの少なくとも一部上に配置されたシース本体434を含むことができる。特定の実施例では、薬剤コアは、円筒形状を有し、約0.022インチの直径及び約0.072インチの長さ有してもよい。特定の実施例では、シース本体434は、薬剤コアの周りにポリイミド管を含む。ポリイミド層は、薬剤が、キャビティ414の壁からの圧力で薬剤コアが押し出されることを防止することができる。
【0050】
挿入可能アクチュエータ416の薬剤コアの露出面は、インプラント本体の近位端408に、またはその近くに配置することができ、例えば、それによって、涙管インプラント400が涙点212、214を介して関連する小管208、210に挿入されている持続的な期間にわたって、涙液または涙膜液との直接接触と、薬剤コアからの薬剤または他の治療薬の放出とを可能にする。露出面は、挿入可能アクチュエータ416の薬剤コアがインプラント本体の外側に突出しないように流体で溢れさせるか、または涙管インプラント400の近位端408に僅かに下にすることができる。いくつかの実施例では、薬剤コアの露出面は、薬剤コアが少なくとも部分的にインプラント本体の外側に突出するように、近位端408上に配置することができる。
【0051】
いくつかの実施例では、障壁は、薬剤が鼻涙系に放出されることを防止するために、薬剤コアの遠位端部436に含まれる。特定の実施例では、障壁は、挿入可能アクチュエータの薬剤コアの遠位端436に塗布された接着剤を含む。いくつかの実施形態では、障壁は、薬剤コアの遠位端部436には存在せず、薬剤コアが、鼻涙系に放出される薬品を含む。
【0052】
いくつかの実施例では、薬剤または他の治療薬の放出は、挿入可能アクチュエータ416の、露出し、シースで被覆されていない表面を少なくとも部分的に介して起きることができる。露出面の形状を制御することにより、所定の薬剤または薬品放出速度を達成することができる。例えば、露出面は、外来患者の医師往診の間に、例えば急性的にまたは慢性的に、眼100への薬剤または他の治療薬の放出速度を制御するために適切な、特定の形状または他の技術で構築することができる。薬剤コアまたは挿入体から1つまたは複数の薬剤または他の治療薬の効果的な放出速度に関する詳細な説明は、前述のDe Juanらの“NASOLACRIMAL DRAINAGE SYSTEM IMPLANTS FOR DRUG THERAPY”に記載され、特定の放出速度を得るための記述が含まれる。
【0053】
いくつかの実施例では、挿入可能アクチュエータ416の薬剤コアは、マトリックス中に分散させることができる、複数の治療薬の封入体を含むことができる。いくつかの実施例では、封入体は、治療薬の濃縮された(例えば、結晶)形状を含むことができる。いくつかの実施例では、マトリックスは、シリコーンマトリックス等を含むことができ、マトリックス内の封入体の分布は、実質的に均質あるいは非均質にすることができる。いくつかの実施例では、薬品封入体は、ラタノプロスト油などの油の液滴を含むことができる。更に他の実施例では、薬品封入体は、結晶形のビマトプロスト粒子等の固体粒子を含むことができる。いくつかの実施例では、薬剤コアは、眼または周囲の組織に送達可能な治療薬の封入体を含有する、ウレタン系(例えば、ポリウレタン)重合体または共重合体を含む。封入体は、多種の大きさ及び形状にすることができる。例えば、封入体は、約1マイクロメートルから約100マイクロメートルまでのオーダーの寸法を有する微粒子を含むことができる。薬剤放出性または他の薬品放出性の薬剤挿入体の詳細な説明は、“DRUG CORES FOR SUSTAINED RELEASE OF THERAPEUTIC AGENTS”と題し、2008年9月5日に出願された、Utkhedeらの一般的に権利を所有する米国特許公開番号US−2009−0104243号に記載され、その全体が参照によりここに組み込まれる。
【0054】
第2の薬剤放出性または他の薬品放出性の挿入体(例えば、第2の薬剤コア)は、例えば、鼻腔または内耳系への持続的な薬剤または他の治療薬の放出を提供するために、キャビティ414内に配置することができる。従って、第1の薬剤コアは徐放性眼薬を含むことができ、第2の薬剤コアは、徐放性に基づいて鼻涙系の組織に送達可能な薬剤を含むことができる。
【0055】
第2の薬剤コアは、涙管インプラント400のキャビティ414の第1の薬剤コアに対して遠位に配置することができ、第2の薬剤コアは、図7A、図7Bの涙管インプラントのインプラント本体の第2の部分に位置することができる。インプラント本体の隔壁は、2つの治療薬間で材料(例えば、薬品)の伝達を抑制または防止するために、第1の薬剤コアと第2の薬剤コアとの間に配置されてもよい。
【0056】
図3A〜図3Cに戻ると、様々な実施例では、インプラント本体302は、例えば、シリコーン、ポリウレタンまたは他のウレタン系重合体または共重合体、NuSil(例えば、2%6‐4800のNuSil 4840)、または非生分解性、部分的に生分解性または生分解性質の(すなわち、体内で侵食可能な)アクリル等の弾性材料を用いて成形することができる。シリコーンは、例えば、患者にとって快適であるように十分軟らかく、かつ、介護者の医師による挿入が容易であるように十分硬いと考えられている。いくつかの実施例では、40及び48のデュロメータを有する重合体が、インプラント本体302を形成するために用いられる。
【0057】
特定の実施例では、インプラント本体302は、不活性な非膨張材を含み、いくつかの実施例では、1つまたは複数の治療薬は、インプラント本体302と統合されている。インプラント本体302は、1つまたは複数の本体部分全体に統合された1つまたは複数の薬剤または他の薬品を受け入れるように構成することができる。このように、インプラント本体302全体またはそれらの一部は、薬剤放出性または他の薬品放出性の挿入体として機能することができる。特定の実施例では、第1の治療薬は、挿入可能アクチュエータ314に含まれ、第2の治療薬は、インプラント本体302に含まれる。
【0058】
特定の実施例では、薬品の放出は、インプラント本体302の一部を囲む、不透過性のまたは実質的に不透過性のカバー(例えば、パリレンカバー)に予め形成された開口部を用いて注ぐことができる。他の実施例では、透過性のカバー材料は、薬剤または他の薬品の放出を可能にするために用いることができる。
【0059】
いくつかの実施例によれば、涙管インプラント300は、介護者によって容易に検出するために設計されている。例えば、生体適合性の着色剤(例えば、緑色の着色剤)は、患者及びその介護者がより容易にインプラントを検出し、それが移植位置のままであるかどうかを確認することができるように、インプラント本体302の弾性材料と混合することができる。いくつかの実施例では、生体適合性の着色剤は、インプラントのフィードバックのために、または、インプラントの種類、大きさ、薬品または他の特性を示すために、薬剤溶出型の挿入可能アクチュエータの材料と混合することができる。検出可能な涙管インプラントを形成する他の方法は、“LACRIMAL IMPLANT DETECTION”と題し、2008年9月5日に出願された、De Juanらの所有者共通の米国特許出願公開番号US−2009−0099626号に記載され、その全体が参照によりここに組み込まれる。
【0060】
いくつかの実施例では、涙管インプラントは、生分解性の弾性材料を含む。これらの材料は、ポリ(ビニルアルコール)等の架橋重合体を含むことができる。いくつかの実施例では、インプラント本体302は、シリコーン/ポリウレタン共重合体を含むことができる。インプラント本体302を形成するために用いることができる他の共重合体は、これらに限定されるものではないが、シリコ−ン/ウレタン、シリコーン/ポリ(エチレングリコール)(PEG)、及び、シリコーン/2ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含む。“DRUG CORES FOR SUSTAINED RELEASE OF THERAPEUTIC AGENTS”と題し、2008年9月5日に出願され、その全体が参照によりここに組み込まれる、Utkhedeらの所有者共通の米国特許公開番号第US−2009−0104243号に記載されているように、ウレタン系重合体及び共重合体材料は、様々な処理方法を可能にし、かつ、互いによく結合する。
【0061】
いくつかの実施例では、インプラント本体302の外表面上に配置または含浸させた滑らかなコーティングは、解剖学的組織352への涙管インプラント300の挿入を更に補助するために用いることができる。一実施例では、滑らかなコーティングは、シリコーン潤滑剤を含むことができる。
【0062】
様々な実施例では、インプラント本体302の外表面は、細菌を涙管インプラント300に付着すること及び培養することを抑制するために、全体に滑らかに形成するかまたは表面処理することができる。全体に滑らかな外表面は、移植時に、涙点212、214(図2)または関連する小管208、210(図2)等の受け入れる解剖学的組織の内側への損傷を防止することもできる。“SURFACE TREATMENT OF IMPLANTS AND RELATED METHODS”と題し、2008年9月5日に出願され、その全体が参照によりここに組み込まれる、Rapackiらの所有者共通の米国特許公開番号第US−2009−0298390号で詳細に記載されているように、インプラント本体302の外表面は、研磨プロセスを介して全体に滑らかになるように表面処理することができる。研磨プロセスは、本体302が拡大され膨らんだ状態にある時間の継続期間中に、成形インプラント本体302を研磨メディアに圧接させることができる。これは、インプラント本体302の1つまたは複数の表面または縁を滑らかにすることができる。様々な実施例では、研磨メディアは、直径約3ミリメートルを超える、少なくともいくつかの顆粒を含むことができる。
【0063】
様々な実施例では、抗菌性コーティングが、インプラント本体302上での細菌の増殖を更に防ぐために、外表面の少なくとも一部に配置されるかまたは含浸させることができる。いくつかの実施例では、抗菌性コーティングは、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン、7-エチルビシクロオキサゾリシン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ホウ酸、ブロノポール、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジンジグルコン酸塩、クロロアセトアミド、クロロブタノール、クロロメチルイソチアゾリン及びメチルイソチアゾリノン、ジトメキサン、ジメチルオキサゾリジン、ジメチルヒドロキシメチルピラゾール、クロロキシレノール、デヒドロ酢酸、ジアゾリジニル尿素、ジクロロアルコール、DMDMヒダントイン、エチルアルコール、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサクロロフェン、ヘキセチジン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾリジニル尿素、ヨードプロピニルブチルカルバメート、イソアゾールキナゾリンケトン、メテンアンモニウム、塩化メチルジブロモグルタロニトリル、MDMヒダントイン、ミノサイクリン、オルトフェニルフェノール、p-クロロ-m-クレゾール、パラベン(ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン)、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ピロクトンオラミン、ポリアミノプロピルビグアニド、ポリメトキシ二環式オキサゾリジン、ポリオキシメチレン、ポリクオタニウム-42、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、クオタニウム-15、リファンピン、サリチル酸、セレンジスルフィド、ホウ酸ナトリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ナトリウムピリチオン、ソルビン酸、チメロサール、トリクロサン、トリクロカルバン、ウンデシレン酸、フェノールスルホン酸亜鉛、亜鉛ピリチオンからなる群から選択された薬品を含むことができる。いくつかの実施例では、抗菌性コーティングは、乳酸銀、リン酸銀、クエン酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、ヨウ化銀、ヨウ素酸銀、硝酸銀、スルファジアジン銀、パルミチン酸銀から成る群またはそれらの1つまたは複数の混合物から選択される物質を含むことができる。いくつかの実施例では、抗菌性コーティングは、抗生物質または消毒剤のうち少なくとも1つを含むことができる。例えば、抗菌性コーティングは、平均して数時間及び一日の間、一時的な麻酔耐久性を含むことができる。更に他の実施例では、抗菌性コーティングは、即時効果のために、ボーラス等の基礎疾患を治療するために用いる薬剤または他の治療薬を含むことができる。
【0064】
いくつかの実施例では、涙管インプラント300はキットに含まれている。キットは、1つまたは複数の涙管インプラントと、眼疾患または他の種類の疾患を治療するために涙管インプラントを使用するための1つまたは複数の使用説明書を含むことができる。
【0065】
図8は、涙小管に挿入可能な涙管インプラントを製造する方法の一実施例を示す。ブロック802において、第1の及び第2の部分を有するインプラント本体が形成される。ブロック804において、インプラント本体は、第1の部分の近位端から第2の部分の遠位端まで延びている。
【0066】
ブロック806において、キャビティは、第1の部分の近位端から第2の部分に向かって長手方向に延びるインプラント本体に形成されている。キャビティは、挿入可能アクチュエータを受け入れるような形状及び大きさをしている。
【0067】
ブロック808において、保持突起は、第2の部分内に形成されている。保持突起は、挿入可能アクチュエータがキャビティ内に装着されたときに、外側に偏向するように、または向きを変更するように構成されている。
【0068】
いくつかの実施例では、キャビティは、インプラント本体第2の部分の保持突起内に延びている。様々な実施例では、保持突起のキャビティの直径または幅が、挿入可能アクチュエータの直径または幅より小さい。従って、挿入可能アクチュエータが保持突起のキャビティ内に十分に装着されているとき、アクチュエータ挿入可能アクチュエータは保持突起を外側に偏向する。
【0069】
特定の実施例では、この方法は、キャビティ内に少なくとも部分的に挿入可能アクチュエータを配置することを含む。挿入可能アクチュエータは、保持突起を外側に偏向させるのに必要な範囲までキャビティ内に装着されてはいない。涙管インプラントが涙小管に挿入されているときに、挿入可能アクチュエータは、その後、保持突起を外側に偏向させるために必要な範囲まで装着することができる。
【0070】
いくつかの実施例では、この方法は、挿入可能アクチュエータに少なくとも1つの治療薬を配置することを含む。このように、挿入可能アクチュエータは、涙管インプラントが移植されている間、涙小管に涙管インプラントを保持する働きをすること、及び、治療薬を提供すること(例えば、徐放によって)という二重の目的を果たす。いくつかの実施例では、この方法は、薬品の放出を実装するために挿入可能アクチュエータの周囲にシースを形成することが含まれている。
【0071】
(シース本体例)
様々な方法では、シース本体は、独自の薬剤挿入体からの、あるいは統合された薬剤または他の薬品を含むインプラント本体からの薬剤または他の治療薬の移動を制御するために適切な形状及び材料を含むことができる。いくつかの実施例では、シース本体は、涙点または関連する小管の解剖学的構造等の、インプラントの解剖学的構造に適合するように構成されている。いくつかの実施例では、シース本体は、薬剤挿入体を少なくとも部分的に被覆するかまたは囲んでおり、マトリックス/薬品の混合物の外表面に対して密接に適合することができる。他の実施例では、シース本体は、1つまたは複数の統合された薬品を含むインプラント本体の一部を被覆するかまたは囲んでいる。薬剤または薬品の移動速度が、シース本体によって被覆されていない薬剤挿入体またはインプラント本体の露出表面積によって主として制御されるように、シース本体は、薬剤または他の治療薬に対して実質的に不透過性である材料から作ることができる。多くの実施例では、シース本体を介する薬品の移動は、薬剤挿入体の露出面を介する薬品の移動の約10分の1以下にすることができる。
【0072】
適切なシース本体の材料は、とりわけ、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはパリレンを含むことができる。シース本体は、外側のマトリックス/薬品の混合物の表面に隣接するシース表面から、外表面とは離れた反対側のシース表面までと定義されるような、約0.00025インチから約0.0015インチまでの厚さを有することができる。薬剤挿入体を横切って延びるシースの総直径は、約1.2ミリメートルから約0.2ミリメートルの範囲であることができる。薬剤挿入体は、シース本体のマトリックスを浸漬被覆することによって形成することができる。いくつかの実施例では、シース本体は、マトリックス/薬品の混合物が導入された管を含むことができる。シース本体は、例えば、予め形成されたマトリックス/薬品コアまたはインプラント本体の周囲を浸漬被覆する等、マトリックス/薬品の混合物の周囲に浸漬被覆することもできる。
【0073】
シース本体は、ここに説明された涙管インプラントの臨床使用を容易にする等のために、1つまたは複数の追加機能を提供することができる。例えば、シースは、インプラント本体が患者に移植されている間またはその除去後に、生体内原位置で交換可能な薬剤挿入体を受け入れることができる。いくつかの実施例では、シース本体は、マトリックス/薬品の混合物をシース本体から排出させる圧搾時にシース本体に力を加える、1つまたは複数の外部突起を設けることができる。交換用の薬剤挿入体は、その後、シース本体内に配置することができる。
【0074】
(治療薬例)
治療薬(または、単に「薬品」)は、とりわけ、以下の1つまたは任意の配合から作られた薬剤、または、その同等物、誘導体、若しくは類似体を含むことができる:抗緑内障薬(例えば、アドレナリン作動性アゴニスト、アドレナリン拮抗薬(ベータ閉塞薬)、炭酸脱水酵素抑制剤(CAI、全身及び局所)、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン及び降圧脂質、及び、それらの配合)、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬、抗真菌剤等)、コルチコステロイドまたは他の抗炎症剤(例えば、NSAIDまたは他の鎮痛薬及び疼痛管理の化合物)、充血緩和剤(例えば、血管収縮剤)、アレルギー反応を抑制するまたは緩和する薬品(例えば、抗ヒスタミン薬、サイトカイン抑制薬、ロイコトリエン抑制剤、IgE抑制剤、免疫調整薬)、肥満細胞安定化薬、毛様体筋麻痺薬、散瞳薬等が挙げられる。
【0075】
使用可能な薬品例は、これらに限定されるものではないが、トロンビン抑制剤;抗血栓剤;血栓溶解剤;血栓溶解剤;血管抑制剤;血管拡張薬;抗高血圧剤;抗生物質(例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフイソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウム等)、抗真菌剤(例えば、アムホテリシンBとミコナゾール等)、及び、抗ウイルス剤(例えば、イドクスウリジントリフルオロ、ガンシクロビル、アシクロビル、インターフェロン等)等の抗菌剤;表面糖タンパク質受容体の抑制剤;抗血小板剤;抗有糸分裂薬;微小管抑制剤;抗分泌剤;活性抑制剤;リモデリング抑制剤;アンチセンスヌクレオチド;抗代謝産物;細胞増殖阻害薬(抗血管新生剤を含む);抗癌化学療法剤;抗炎症剤(例えば、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン21-リン酸、フルオシノロンアセトニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-リン酸塩、酢酸プレドニゾロン、フルオロメトロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド等);非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、サリチル酸、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム及びナブメトン等)を含む。本涙管インプラントで使用するために考えられるこのようなステロイド系抗炎症薬例は、トリアムシノロンアセトニド(一般名)、及び、例えば、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド、コルチゾン、プレドニゾロン、フルメトロン、及びそれらの誘導体を含むコルチコステロイド;抗アレルギー薬(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリレン、クロルフェニラミン、セチリジン、ピリラミン、プロフェンピリダミン等);抗増殖剤(例えば、1,3-シスレチノイン酸、5-フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンC、シスプラチン等);充血緩和剤(例えば、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン等);縮瞳薬及び抗コリンエステラーゼ(例えば、ピロカルピン、サリチル酸、カルバコール、アセチルコリン塩化物、フィゾスチグミン、エゼリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、ホスホリンヨウ素、臭化デメカリウム等)、抗腫瘍薬(例えば、カルムスチン、シスプラチン、フルオロウラシル3等;免疫学的薬剤(例えば、ワクチン及び免疫刺激剤等);ホルモン剤(例えば、エストロゲン、‐‐エストラジオール、プロゲステロン、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチド、バソプレッシン視床下部放出因子等);免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗薬、成長因子(例えば、上皮成長因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、ソマトトロピン、フィブロネクチンなど);血管新生抑制剤(例えば、アンジオスタチン、アネコルタブアセテート、トロンボスポンジン、抗VEGF抗体等);ドパミンアゴニスト;放射線治療薬;ペプチド;タンパク質;酵素;細胞外マトリックス;コンポーネント;ACE抑制剤;フリーラジカルスカベンジャー;キレート剤;酸化防止剤;抗ポリメラーゼ;光線力学治療薬;遺伝子治療薬;及び、プロスタグランジンと、抗プロスタグランジンと、チモロール、ベタキソロール、レボブノロール、アテノロールなどのβ閉塞薬を含む抗緑内障薬を含むプロスタグランジン前駆体と、ビマトプロスト、トラボプロスト、ラタノプロスト等のプロスタグランジン類似体とを含む他の治療薬;アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ジクロルフェナミド、ダイアモックス等の炭酸脱水酵素阻害薬;及び、ルベゾール、ニモジピン及び関連化合物等の神経保護剤;並びに、ピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミン等の副交感神経興奮薬を含む。
【0076】
本涙管インプラントで使用できる更なる薬品は、これらに限定されるものではないが、米国連邦食品医薬品化粧品法のセクション505の下で、または公衆衛生法の下で承認された薬剤であり、そのうちの一部は、米国食品医薬品局(FDA)のウェブサイトhttp://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/drugsatfda/indexで見ることができるものを含む。本涙管インプラントは、この特許文書の提出日と同じ日付か、前の日付か、または後の日付を有するかまたは記録される、FDAオレンジブックウェブサイト(http://www.fda.gov/cder/ob/))で見ることができる、紙または電子フォームのいずれかでオレンジブックに記載された薬品も使用することができる。例えば、これらの薬品は、とりわけ、ドルゾラミド、オロパタジン、トラボプロスト、ビマトプロスト、シクロスポリン、ブリモニジン、モキシフロキサシン、トブラマイシン、ブリンゾラミド、アシクロビルチモロールマレイン酸塩、ケトロラクトロメタミン、酢酸プレドニゾロン、ヒアルロン酸ナトリウム、ネパフェナク、ブロムフェナク、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、スプロフェナク(suprofenac)、ビノキサン(binoxan)、パタノール、デキサメタゾン/トブラマイシン化合物、モキシフロキサシン、またはアシクロビルを含むことができる。
【0077】
上記に列挙した薬剤で処理することができる疾患または障害の例としては、これらに限定されるものではないが、緑内障、手術前後の眼の治療、ドライアイ、抗眼アレルギー、抗感染、術後炎症若しくは痛み、呼吸関連疾患、アレルギー等、内耳障害、目眩若しくは頭痛等、または、高血圧、コレステロールの管理、肺疾患若しくは免疫疾患等の、他の全身性疾患。いくつかの実施例において、治療薬は、例えば、ドライアイを治療するため等の、潤滑剤潤滑剤や界面活性剤を含むことができる。他の実施例では、治療薬は、眼から涙液を吸収することが可能な吸収剤を含むことができる。
【0078】
(薬剤コア例)
薬剤コアまたは挿入体は、1つまたは複数の薬剤または他の治療薬を含むことができ、いくつかの実施例では、薬剤または他の薬剤の徐放性を提供する1つまたは複数のマトリックス材料を含むことができる。同様に、大量の薬品が所望される場所では、インプラント本体の実質的な部分は、1つまたは複数の統合された薬剤または他の薬品と、薬品の放出を提供するように構成されたマトリックス材料とを含むことができる。
【0079】
1つまたは複数の薬剤または他の治療薬は、薬剤挿入体の露出面から、マトリックス内の薬剤または薬品の溶解度に少なくとも部分的に基づいて、標的組織に移動することができる。薬剤または薬品の露出面からの移動速度は、また、マトリックスに溶解した薬剤または薬品の濃度に関連することができる。いくつかの実施例では、薬剤の挿入体に溶解した薬剤または薬品の濃度は、薬剤または薬品の所期の放出速度を提供するために制御することができる。加えて、または組み合わせて、露出面からの薬剤または薬品の移動速度は、シリコーンマトリックス製剤の性質等の、薬剤または薬品が溶解したマトリックスの1つまたは複数の性質に関連することができる。いくつかの実施例では、薬剤の挿入体に含まれている薬剤または薬品は、液体、固体、固体ゲル、固体結晶、非晶質固体、固体粒子、または溶解した形態を含むことができる。そのような一実施例では、液体ラタノプロスト滴または固体ビマトプロスト粒子が、シリコーンマトリックス中に分散されている。
【0080】
薬剤コアまたは薬剤挿入体は、1つまたは複数の薬剤または薬品の徐放を提供することができる1つまたは複数の生体適合性材料を含むことができる。薬剤コアは、主に、そこに位置する薬剤または薬品の溶解性含有物に実質的に非分解性のシリコーンマトリックスを含むマトリックスからなる実施例に関して上述されているが、薬剤挿入体は、例えば、生分解性マトリックス、多孔質の薬剤挿入体、液体薬剤挿入体または固体薬剤挿入体等の、薬剤または薬品の徐放を提供する他の構造を含むことができる。薬剤または薬品を含むマトリックスは、生分解性または非生分解性重合体のいずれかから形成することができる。いくつかの実施例では、非生分解性薬剤の挿入体は、シリコーン、アクリレート、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリウレタン、ハイドロゲル、ポリエステル(例えば、デラウェア州ウィルミントンのE.I.Du Pont de Nemours and Company製のダクロン(登録商標))、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE(ePTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、押出しコラーゲン、ポリマーフォーム、シリコーンゴム、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン、ポリイミド、ステンレス鋼、ニッケル‐チタン合金(例えば、ニチノール)、チタン、ステンレス鋼、コバルトクロム合金(例えば、Elgin Specialty Metals, Elgin, III製のELGIROY(登録商標)、ペンシルバニア州ワイオミッシングCarpenter Metals Corp.製のCONICHROME(登録商標))を含むことができる。いくつかの実施例では、生分解性薬剤の挿入体は、蛋白質、ハイドロゲル、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L‐乳酸)(PLLA)、ポリ(L‐グリコール酸、(PLGA)、ポリグリコリド、ポリ‐L‐ラクチド、ポリ‐D‐ラクチド、ポリ(アミノ酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグリコナート、ポリ乳酸‐ポリエチレンオキシド共重合体、変性セルロース、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリ無水物、ポリリン酸エステル、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、及びそれらの配合等の、1つまたは複数の生分解性重合体を含むことができる。いくつかの実施例では、薬剤コアは、ハイドロゲル重合体を含むことができる。
【0081】
(涙管インプラント挿入器具例)
図9A及び図9Bは、ここに記載される涙管インプラントを挿入するために用いることができる挿入器具900の実施例を示す。挿入工具900の本体は、前部分902及び背面部分904を含む。涙管インプラント300(例えば、図3参照)は、挿入工具本体に対して主に内部であり得る中空管906によって、挿入工具900の端部に保持される。挿入工具本体の遠位端における栓924は、涙管インプラント本体の近位端に係合する。中空管906の遠位端は、栓924を越えた位置まで延伸可能であり、涙管インプラント300のキャビティ内に少なくとも部分的に挿入可能である大きさである。中空管906は、涙管インプラント300を定位置に保持するための器具アクチュエータ908によってキャビティに前進させられる。中空管906は、内腔または筒体910を貫通している。いくつかの実施例では、中空管906は、接着剤922(例えば、Loctite(登録商標))を用いて、筒体910に固定されている。器具アクチュエータ908は、ネジ914等のファスナーを用いて、筒体910に固定することができる。
【0082】
中空管906の遠位端は、挿入可能アクチュエータ916の少なくとも一部を保持する大きさである。挿入可能アクチュエータ916の挿入は、涙管インプラント300の保持突起を外側に偏向させるかまたはその方向を変える。いくつかの実施例では、挿入可能アクチュエータ916は、涙管インプラント300に部分的にあらかじめ組み込まれる。細長い部材918は、挿入可能アクチュエータ916に係合するように、かつ、中空管906から涙管インプラントのキャビティに挿入可能アクチュエータ916を挿入するように、中空管906内で摺動可能である。
【0083】
特定の実施例では、細長い部材は、ワイヤを含む。特定の実施例では、細長い部材918は、プラスチック等の非金属材料製の軸を含む。挿入工具の背面にあるアクチュエータ(例えば、ボタン920)は、細長い部材918に取り付けられている。
【0084】
図9Cは、挿入可能アクチュエータ916を涙管インプラント300に前進させるために、ボタン920が細長い部材918を前進させるように用いることができることを示す。通常、挿入可能アクチュエータ916は、涙管インプラント300が涙点に挿入されているときに前進する。挿入可能アクチュエータが涙管インプラント300のキャビティ内に装着されているとき、挿入可能アクチュエータ916は外側に偏向するか、または涙管インプラント300の保持突起912を拡張する。
【0085】
中空管906の遠位端は、涙管インプラント300を解放するために、挿入器具の栓924の近位置まで伸縮自在である。涙管インプラント300を涙点に挿入後に、中空管906及び細長い部材918は、外側に偏向された保持突起912が挿入された涙管インプラント300を残して、器具アクチュエータ908を用いて引き込められる。
【0086】
図9A〜図9Cは、図3及び図5の真直ぐなインプラントに関する挿入工具を示す。挿入工具900はまた、図7に表されるもの等の涙管インプラントを挿入するために効果的である。
【0087】
図11A及び図11Bは、ここに記載される涙管インプラントを挿入するために用いることができる挿入工具1100の実施例を示す。挿入工具1100の本体は、前部分1102及び背面部分1104を含む。涙管インプラント(図示せず)は、挿入工具本体に対して主に内部であり得る中空管1106によって、挿入工具1100の端部に保持される。挿入工具本体の遠位端における栓1124は、涙管インプラント本体の近位端に係合する。中空管1106の遠位端は、栓1124を越えた位置まで延伸可能であり、涙管インプラントのキャビティ内に少なくとも部分的に挿入可能である大きさである。中空管1106は、涙管インプラントを定位置に保持するための器具アクチュエータ1108によってキャビティに前進している。中空管1106は、内腔または筒体1110を貫通している。いくつかの実施例では、中空管1106は、接着剤1122(例えば、Loctite(登録商標))を用いて、筒体1110に固定されている。器具アクチュエータ1108は、ネジ1114等のファスナーを用いて、筒体1110に固定することができる。
【0088】
中空管1106の遠位端は、挿入可能アクチュエータ1116の少なくとも一部を保持する大きさである。挿入可能アクチュエータ1116の挿入は、涙管インプラントの保持突起を外側に偏向させるか、またはその方向を変える。いくつかの実施例では、挿入可能アクチュエータ1116は、涙管インプラントに部分的に予め組み込まれる。細長い部材1118は、接着剤1122(例えば、Loctite(登録商標))を用いて、挿入器具1100の前部分1102に固定されている。特定の実施例では、細長い部材は、ワイヤを含む。特定の実施例では、細長い部材918は、プラスチック等の非金属材料製の軸を含む。細長い部材1118の遠位端は、栓1124と同一平面上になるように配置され、挿入可能アクチュエータ1116が、図11Cに図示したような中空管1106内に位置するときに、挿入可能な1116と係合してもよい。
【0089】
通常、挿入可能アクチュエータ1116は、涙管インプラントが涙点に挿入されているときに、解放されている。挿入可能アクチュエータが涙管インプラントのキャビティ内に装着されているとき、挿入可能アクチュエータ1116は、外側に偏向するかまたは涙管インプラントの保持突起を拡張する。涙管インプラントを涙点に挿入後に、中空管1106は、外側に偏向された保持突起が挿入された涙管インプラントを残して、器具アクチュエータ1108を用いて引き込められる。中空管1106の遠位端が挿入工具の栓1124の近位置まで引き込められているときに、細長い部材1118の遠位端1119は、挿入可能アクチュエータ1116が挿入器具1100の本体の前部分1102に入ることを防止し、涙管インプラントが挿入工具1100から解放されるように挿入可能アクチュエータ1116を中空管1106から涙管インプラントのキャビティに解放させる。
【0090】
とりわけ、眼の涙点及び関連する小管内に安全で定着可能な保持を提供する、涙管インプラント及び関連する方法が説明されている。涙管インプラントは、涙点を介して関連する小管に少なくとも部分的に挿入するために構成されたインプラント本体を含むことができる。インプラント本体は、第1の及び第2の部分を含み、長手方向の近位軸を定義する第1の部分の近位端から長手方向の遠位軸を定義する第2の部分の遠位端まで延びることができる。インプラント本体は、一体式膨張器を用いて移植したときに、少なくとも45度の角度を有する交点が近軸及び遠位軸の間に存在するように構成することができる。この方法では、インプラント本体の少なくとも一部は、小管の湾曲にまたは小管の湾曲より遠位に位置する涙管の少なくとも一部に対して偏向することができ、それによって、解剖学的構造を用いて涙管インプラントの移植位置を保持することができる。
【0091】
様々な実施例では、涙管インプラントは更に、例えば、眼、鼻腔、または内耳系に薬剤または他の治療薬を持続放出することを提供するインプラント本体の第1の部分または第2の部分の少なくとも一方に配置される薬剤挿入体を含むことができる。薬剤挿入体は、インプラント本体のキャビティ内に配置された別々の薬剤コアを含むことができるか、または1つまたは複数のインプラント本体部分全体に、薬剤または他の薬品粒子の混合物を含むことができるか、あるいはその両方であることができる。
【0092】
有利なことに、いくつかの実施例では、本涙管インプラントは、涙の流れを正常に遮断することができるか、または、数日から数カ月まで数年まで等の様々な期間に、眼、鼻腔、または内耳への薬剤または他の治療薬の徐放を提供することができる。更に、必要に応じて、第1の及び第2のインプラント本体のキャビティまたは薬剤放出インプラント本体部分を含むことによって、二重の薬剤または他の治療薬の放出特性を可能にすることができる。例えば、2つの別々な薬剤は、2つの異なるインプラントの位置から放出することができる。更に、本インプラント本体の小管保持構成は、涙点及び小管の過伸展と、インプラントの不慮の脱落を減少せることができる。本涙管インプラントは、必須ではないが、フリーサイズ体制を提供するように実装されることができる。本涙管の拡張可能な性質は、インプラントの保持機能の一部が移植後に作動することができるように、容易な移植を可能にすることができる。
【0093】
本涙管インプラントはまた、例えば、第1のインプラント部分の近位端のキャップ状突起、第2のインプラントの部分の近位端の踵状の保持突起、または、第1または第2のインプラント部分上の中間または遠位に位置する1つまたは複数の突起の組み合わせにより、患者の涙点及び小管内に良好に保持することができる。更に上述したように、キャップ状の突起は、インプラントが涙点下で涙小管内に移動することを完全に抑制してもよい。中間、遠位、かつ踵状の突起は、介護者の医師がそれを除去することを選択するまで、インプラントを定位置に保持するのに役立つことがある。
【0094】
この特許文書で言及されるように、挿入可能アクチュエータ(例えば、薬剤コア)、涙管インプラント、及び、それらを製造する方法は、上記のものを超えて多数の異なるデザイン、構成、または配置のいずれかを用いることができ、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる、以下の所有者共通の特許文献に記載されている:“DRUG DELIVERY METHODS, STRUCTURES, AND COMPOSITIONS FOR NASOLACRIMAL SYSTEM”と題し、2007年4月2日に出願された米国特許出願公開第US−2007−0269487号;“PROSTAGLANDIN ANALOGUES FOR IMPLANT DEVICES AND METHODS”と題し、2007年9月7日出願された米国特許出願番号第60/970,755号;“LACRIMAL IMPLANTS AND RELATED METHODS”と題し、2009年10月15日に出願された米国特許出願番号第61/252,057号;“LACRIMAL IMPLANTS AND RELATED METHODS”と題し、2008年9月5日に出願された米国特公開番号第US−2009−01042748号;“COMPOSITE LACRIMAL INSERT AND RELATED METHODS”と題し、2009年4月29日に出願された米国特許公開番号第US−2010−0034870号;“LACRIMAL IMPLANT BODY INCLUDING COMFORTING AGENT”と題し、2009年7月8日に出願された米国特許公開番号第US−2010−0274224号;及び、“DRUG DELIVERY VIA PUNCTAL PLUG”と題し、2004年4月15日に出願された米国特許公開番号第US−2005−0232972号。
【0095】
上記の詳細な説明は、詳細な説明の一部をなす添付の図面への参照を含む。図面は、例示として、本発明を実施することができる特定の実施形態を示す。これらの実施形態はまた、ここで「実施例」とも呼ばれている。この文書で言及された全ての刊行物、特許及び他の特許文書は、参照により個々に組み込まれながら、その全体が参照によりここに組み込まれている。この文書と、参照によりそのように組み込まれたそれらの文書との間で矛盾する用法がある場合、組み込まれた参照中の用法は、この文書のそれを補足するものと考慮する必要がある;すなわち、相容れない矛盾のために、この文書における用法を統制する。
【0096】
この文書では、用語“a”または“an”は、特許文献において共通であるように、任意の他の実例または「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」という用法とは独立して、1つまたは1つ以上を含むように用いられる。この文書では、用語「または」は、特に断らない限り、非排他的なものを意味するように、或いは、「AまたはB」が「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、及び「AかつB」のように用いられる。この文書において、用語「約」は、近似的に、ほぼ、ほとんど、または所定量に等しい近傍にある量を意味するために用いられる。
【0097】
この文書では、用語「近位」は、眼の角膜に比較的近い場所を意味し、用語「遠位」は、角膜から比較的に遠く、涙小管内に深く挿入された位置を意味する。
【0098】
この文書では、用語「ハイドロゲル」は、例えば、超吸収性重合体、親水コロイド、及び吸水性親水性重合体等の吸収あるいは保持材料(例えば、物質を吸着する)を意味するために用いられる。本涙管インプラントで使用するためのハイドロゲル例は、とりわけ、このように、親水性の、脂肪族の、及びポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン等の脂肪族熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む。適切な熱可塑性ポリウレタンは、商品名Tecophilicでオハイオ州クリーブランドのLubrizol Corporationから市販されているものを含む。特定の用途では、商品名“Tecophilic TG−500”(または、単に“TG−500”)及び“Tecophilic TG−2000”(または、単に“TG−2000”)で市販されているハイドロゲルを利用することができる。用語「ハイドロゲル」は、ハイドロゲルが拡張されず、水分量をほとんど含まないときのような「乾いた」状態の超吸収性重合体粒子を意味することができる。用語「ハイドロゲル」はまた、水和または拡張した状態の超吸収性重合体粒子を意味するために用いることができ、より具体的には、自らの数百倍の重量の水等の、少なくとも自らの重量の水を吸収したハイドロゲル(例えば、約500倍の重量の水を吸収することができるTG−500、及び、約2000倍の重量の水を吸収することができるTG−2000)を意味するために用いることができる。ハイドロゲル材料が流体を吸収するにつれ、その大きさは増加させる(例えば、膨潤)ことができ、その形状は、涙管膨大部または涙小管壁の少なくとも一部に対して偏向するように、または、周囲の材料を偏向させるように変化することができる。
【0099】
添付の特許請求の範囲では、用語「含む(including)」及び「を特徴とする(in which)」は、それぞれの用語「含む(comprising)」及び「を特徴とする(wherein)」の平易な英語の同等表現として用いられる。また、以下の特許請求の範囲では、用語「含む(including)」及び「備える(comprising)」は無制限であり、すなわち、請求項中のそのような用語の後に記載されたものに加えて構成要素を含む、システム、アセンブリ、デバイス、物品、または処理も、その請求項の範囲内にあるとみなされる。更に、以下の特許請求の範囲では、用語は「第1の」、「第2の」、及び「第3の」等は、単にラベルとして用いており、それらの対象に数値要件を課すことを意図するものではない。
【0100】
上記の詳細な説明は、例示的であり、限定的ではないことを意図している。例えば、上述の実施例(または、その1つまたは複数の特徴)は、互いに組み合わせて用いることができる。一例として、図示または説明される様々なインプラントの実施例からの1つまたは複数の寸法は、所期の薬剤濃度を提供することが可能なインプラントの実施形態を形成するために一緒にグループ化することができる。他の実施形態は、上記の説明を確認の上で、当業者等によって使用することができる。また、上記の詳細な説明では、様々な特徴は、開示を合理化するために一緒にグループ化することができる。これは、未請求の開示された特徴が、いずれかの請求項に不可欠であることを意図するように解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示された実施形態の全ての特徴より少なく存在することができる。従って、以下の特許請求の範囲は、これによって、個別の実施形態として単独で成り立つ各請求項を有して詳細な説明に組み込まれている。本発明の範囲は、そのような請求項が権利を与えられた等価物の完全な範囲に沿って、添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0101】
米国特許施行規則(37C.F.R.)§1.72(b)に準拠するために、読者がすぐに技術的開示の性質を把握できるようにするために、要約が提供されている。特許請求の範囲または意味を解釈または限定するために使用されるものでないことを理解した上で提出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に涙点に挿入可能な涙管インプラントであって、
第1の及び第2の部分を含むインプラント本体であって、前記第1の部分の近位端から前記第2の部分の遠位端まで延びるインプラント本体と;
保持突起を含む前記第2の部分と;
第1の部分の近位端から第2の部分に向かって長手方向に延びるキャビティであって、挿入可能アクチュエータを受け入れるような形状及び大きさであり、かつ、前記挿入可能アクチュエータがキャビティ内に装着されているとき前記保持突起が外側に偏向するかまたは方向を変えるように構成されているキャビティと;
を備える涙管インプラント。
【請求項2】
前記涙管インプラントは、前記キャビティの少なくとも一部から保持突起を少なくとも部分的に通って延び前記キャビティの長手方向の延長線に対して実質的に横断する、切り込みまたは空隙を含むことを特徴とする請求項1に記載の涙管インプラント。
【請求項3】
前記保持突起が少なくとも第1の部分及び第2の部分を含み、前記挿入可能アクチュエータがキャビティに装着されているときに、前記保持突起の前記第1の部分が第1の外側方向に偏向されるとともに前記保持突起の前記第2の部分が前記第2の外側方向に偏向される、ことを特徴とする請求項2に記載の涙管インプラント。
【請求項4】
前記の切り込みまたは空隙は、前記保持突起の前記第1の部分及び前記第2の部分を定義するように、前記保持突起を通って延びていることを特徴とする請求項3に記載の涙管インプラント。
【請求項5】
前記キャビティは、前記の切り込みまたは空隙に少なくとも部分的に前記挿入可能アクチュエータを受け入れるように、前記の切り込みまたは空隙を少なくとも部分的に通って延びることを特徴とする請求項2に記載の涙管インプラント。
【請求項6】
前記インプラント本体の前記第1の部分の近位端が長手方向の近位軸を定義するとともに、前記インプラント本体の前記第2の部分の遠位端が長手方向の遠位軸を定義し、かつ、
非直線の角度がついた交点は、小管の湾曲に位置するかまたは該小管の湾曲より遠位に位置する涙小管の少なくとも一部に対して、前記インプラント本体の少なくとも一部を偏向させるために、前記近位軸と前記遠位軸との間に存在する、
ことを特徴とする請求項1に記載の涙管インプラント。
【請求項7】
前記第2の部分の前記近位端は、前記挿入可能アクチュエータが前記キャビティに装着されているとき、涙小管膨大部に向かって偏向していることを特徴とする請求項6に記載の涙管インプラント。
【請求項8】
前記挿入可能アクチュエータが前記キャビティ内に装着されていないとき、前記キャビティの側壁は内側に偏向され、かつ、前記保持突起は前記第1の部分に向かって内側に偏向されていることを請求項6に記載の涙管インプラント。
【請求項9】
前記キャビティは、該キャビティの遠位端が前記保持突起内に存在するように、前記第2の部分に貫通せずに長手方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の涙管インプラント。
【請求項10】
前記遠位端における前記キャビティの幅は、前記近位端における前記キャビティの幅より小さいことを特徴とする請求項1に記載の涙管インプラント。
【請求項11】
前記キャビティ内に置かれたときに拡張するように構成された挿入可能アクチュエータを含むことを特徴とする請求項1に記載の涙管インプラント。
【請求項12】
前記第1の部分の前記近位端は、その外周の少なくとも一部を取り囲んで側方に突出する把持可能突起を含むことを特徴とする請求項1記載の涙管インプラント。
【請求項13】
前記把持可能突起の周囲長は、前記保持突起の近位端の周囲長に数値的にほぼ等しいことを特徴とする請求項12の涙管インプラント。
【請求項14】
更に、前記挿入可能アクチュエータを備え、該挿入可能アクチュエータは1つまたは複数の治療薬を含むことを特徴とする請求項1に記載の涙管インプラント。
【請求項15】
更に、前記インプラント本体と一体化された1つまたは複数の治療薬を備えることを特徴とする請求項1に記載の涙管インプラント。
【請求項16】
前記の1つまたは複数の治療薬は、徐放性眼薬を含むことを特徴とする請求項14または15に記載の涙管インプラント。
【請求項17】
前記の1つまたは複数の治療薬は、徐放性に基づいて鼻涙系の組織に送達可能であることを特徴とする請求項14または15に記載の涙管インプラント。
【請求項18】
前記の1つまたは複数の治療薬は、徐放性に基づいて眼の涙膜液に送達可能であることを特徴とする請求項14または15に記載の涙管インプラント。
【請求項19】
前記インプラント本体は、不活性な非膨張材を含むことを特徴とする請求項1に記載の涙管インプラント。
【請求項20】
請求項1に記載の涙管インプラントと、眼疾患を治療するために前記涙管インプラントを使用するための使用説明書とを含むキット。
【請求項21】
挿入可能アクチュエータを含むことを特徴とする請求項18に記載のキット。
【請求項22】
涙小管に挿入可能な涙管インプラントの製造方法であって、
第1の及び第2の部分を含む、インプラント本体を形成することと;
前記第1の部分の近位端から前記第2の部分の遠位端までインプラント本体を延ばすことと;
前記第1の部分の前記近位端から前記第2の部分に向かって前記長手方向に延びるキャビティを形成すること、及び、挿入可能アクチュエータを受け入れるように前記キャビティの形状及び大きさを決めることと;
前記挿入可能アクチュエータが前記キャビティ内に装着されているとき、外側に偏向するかまたは方向を変えるように保持突起を形成することと;
を含む方法。
【請求項23】
前記挿入可能アクチュエータを少なくとも部分的に前記キャビティ内に配置することを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記挿入可能アクチュエータ内に少なくとも1つの治療薬を配置することを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも部分的に涙点に挿入可能な涙管インプラントであって、
第1の及び第2の部分を含むインプラント本体であって、前記第1の部分の近位端から前記第2の部分の遠位端まで延びるインプラント本体と;
保持突起を含む前記第2の部分と;
前記インプラント本体の前記キャビティ内に配置可能な挿入可能アクチュエータであって、前記キャビティが前記第1の部分の前記近位端から前記第2の部分に向かって長手方向に延びており、前記挿入可能アクチュエータが前記キャビティ内に装着されたときに前記保持突起が外側に偏向するかまたは方向を変えるように構成されている、挿入可能アクチュエータと;
を備える涙管インプラント。
【請求項26】
前記挿入可能アクチュエータは、1つまたは複数の治療薬を含むことを特徴とする請求項25に記載の涙管インプラント。
【請求項27】
前記挿入可能アクチュエータは、該挿入可能アクチュエータの1つまたは複数の表面を囲むシース本体を含むことを特徴とする請求項25に記載の涙管インプラント。
【請求項28】
前記涙管インプラントは、前記キャビティの少なくとも一部から前記保持突起を少なくとも部分的に通って延び、かつ、前記キャビティの長手方向の延長線に対して実質的に横断する、切り込みまたは空隙を含むことを特徴とする請求項25に記載の涙管インプラント。
【請求項29】
前記インプラント本体の前記第1の部分の前記近位端が長手方向の近位軸を定義するとともに、前記インプラント本体の前記第2の部分の前記遠位端が長手方向の遠位軸を定義し、かつ、
非直線の角度がついた交点は、小管の湾曲に位置するかまたは該小管の湾曲より遠位に位置する涙小管の少なくとも一部に対して、前記インプラント本体の少なくとも一部を偏向させるために、前記近位軸と前記遠位軸との間に存在する、
ことを特徴とする請求項25に記載の涙管インプラント。
【請求項30】
前記第2の部分の前記近位端は、前記挿入可能アクチュエータが前記キャビティに装着されているとき、涙小管膨大部に向かって偏向していることを特徴とする請求項29に記載の涙管インプラント。
【請求項31】
前記挿入可能アクチュエータは、移植後に前記キャビティから取り外し可能となるように構成されていることを特徴とする請求項25に記載の涙管インプラント。
【請求項32】
請求項25に記載の涙管インプラントと;
涙管インプラント挿入器具と;
を備えるキットであって、該涙管インプラント挿入器具は、
前記挿入器具本体の遠位端において前記インプラント本体の近位端に係合する栓と;
前記挿入器具本体の少なくとも部分的に内部にあるとともに、前記栓を越えて伸張可能な遠位端を有する中空管であって、該中空管の遠位端は、前記涙管インプラントの前記キャビティに少なくとも部分的に挿入可能な大きさであるとともに、前記挿入可能アクチュエータの少なくとも一部を保持するような大きさであり、かつ、前記中空管の前記遠位端は、前記涙管インプラントを開放するように前記栓の近位置に引き込み可能である、中空管と;
前記挿入可能アクチュエータを前記中空管から前記涙管インプラントの前記キャビティに促すように、前記中空管内で摺動可能な細長い部材と;
を含むキット。
【請求項33】
前記栓は、前記涙管インプラントが前記涙点に浸透する深さを制限することを特徴とする請求項32記載のキット。
【請求項34】
前記細長い部材は、ワイヤを含むことを特徴とする請求項32に記載のキット。
【請求項35】
眼疾患を治療するために前記涙管インプラントを使用するための使用説明書を含み、かつ、前記挿入可能アクチュエータは1つまたは複数の治療薬を含む、ことを特徴とする請求項32に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公表番号】特表2013−512045(P2013−512045A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541214(P2012−541214)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/058129
【国際公開番号】WO2011/066479
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(502254176)キュー エル ティー インク. (13)
【氏名又は名称原語表記】QLT Inc.
【Fターム(参考)】