説明

スプリンクラヘッド

【課題】外力の影響を受けやすい、最下層の感熱板の強度を高めたスプリンクラヘッドを得る。
【解決手段】ヘッド本体1の下端に、複数枚の感熱板38a、38bを有するスプリンクラヘッドSPにおいて;最下層に設けられた感熱板38bは、断面波形に形成され、板厚が大きく、その上に設けられた感熱板38aよりも高い強度を有する。前記感熱板は、感熱体を収納したシリンダの外周面に突設され、互いに熱気流空間を介して対向する水平な感熱板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、消火設備に設けられているスプリンクラヘッドに関するものであり、更に述べると、複数枚の感熱板を有するスプリンクラヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスプリンクラヘッドは、高感度化を図るために、感熱部である半田をヘッドの最下端部に設ける構造をとっている。前記半田は、シリンダに収納され、該シリンダの外周面には、上下方向に間隔をあけて2枚の感熱板が設けられている。この感熱板は、スプリンクラヘッドの周囲の熱を効率よく半田に伝えて、半田の加熱を促進するように機能する。前記感熱板は、受熱効率を考えて、非常に薄い金属板(例えば、厚さ0.3mm)から形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2529259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の感熱板は、上述した様に、薄い金属板で構成され、かつ、ヘッドの最下端部に設けられることから、スプリンクラヘッドの取り付施工時などに、無理な力がかかると変形してしまう。このような感熱板の変形は、ヘッドの感度を低下させるので、仕様感度を維持できなくなる。つまり、従来例において、一番下側(最下層)の感熱板が、上方向に折れ曲がる様に変形すると、2枚の感熱板の間の隙間(熱気流空間)がなくなり、その隙間から入ってくる水平の熱気流が半田に当たらなくなるので、ヘッドの感度が低下するのである。又、同様に、2枚の感熱版の間隔が広がるように変形しても、ヘッドの感度が低下する。
【0005】
この発明は、外力の影響を受けやすい、最下層の感熱板の強度を高めたスプリンクラヘッドを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ヘッド本体の下端に、複数枚の感熱板を有するスプリンクラヘッドにおいて;最下層部に設けられた感熱板は、その上に設けられた感熱板よりも高い強度を有することを特徴とする。
【0007】
この発明の最下層部に設けられた感熱板は、断面波形に形成されていることを特徴とする。この発明の最下層部に設けられた感熱板は、その上に設けられた感熱板よりも板厚が大きいことを特徴とする。この発明の感熱板は、感熱体を収納したシリンダの外周面に突設され、互いに熱気流空間を介して対向する水平な感熱板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の最下層部に設けられた感熱板は、その上に設けられた感熱板よりも高い強度を有するので、ヘッドの取り付け時などに、作業者の手が触れたりして、外力が該感熱板にかかっても変形したりすることはない。よって、感熱板同士の間隔(熱気流空間)を、設定した大きさに維持できるので、ヘッドの感度が低下することはない。特に、最下層部に設けられる感熱板を、断面波状に形成する場合においては、板厚を大きくする場合に比べ、受熱効果を低下させずに、強度を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本件発明者は、前記目的を達成させるためには、階層状に配設されている複数枚の感熱板のうち、最下層部の感熱板を感熱板の機能と保護板の機能とを合わせ持つようにすれば良いと考え、実験研究を重ねた。その結果、前記最下層部の感熱板を、その上に設けた感熱板よりも高い強度にすればよいことがわかった。
その具体的な方法として、最下層部の感熱板を他の感熱板より厚くしたり、又は、最下層部の感熱板を断面波状に形成する。
【実施例】
【0010】
この発明の実施例1を図1により説明する。
スプリンクラヘッドSPの本体1には、放水口3が設けられ、その下部には鍔部5が設けられている。この鍔部5には筒状フレーム7が螺着され、このフレーム7には荷重調節用のスリット9が設けられている。この筒状フレーム7には、感熱分解部Sが設けられている。
【0011】
13はデフレクタ、15は前記放水口3を閉鎖する弁体、17はアームガイドの基板、19は前記基板17の長手方向の両側に設けた一対のガイド片、21は第1アーム23と第2アーム25により支持されているバランサであり、このバランサ21の中央凹部には、弁体15の凸部が当接している。27はリンク押え板、29は椀状の受熱板、30はアーム支持板、をそれぞれ示す。
【0012】
前記受熱板29は、第1シリンダ31と第2シリンダ33とにより挟持されている。第1シリンダ31には、感熱体、例えば、72℃で溶融する半田35が収納され、該半田35の上面には、ピストン37が重設されている。前記ピストン37は、ピストンロッド39により押圧されている。このピストンロッド39の先端部は、円錐台状に形成され、その後端部は、押え板27に螺着されている。この第1シリンダ31の上部は、拡径部となっており、該拡径部には、第2シリンダ33の嵌着部が挿着されている。
【0013】
前記シリンダ31の外周面には、上下2板の水平感熱板38a、38bが、軸方向に間隔W(熱気流空間)、例えば、1.5mm〜3mm、をおいて設けられている。この感熱板38a、38bの直径は、同一径、例えば、19mmであるが、その板厚は、上層部の感熱板38aがt=0.3mm、下層部の感熱板38bはt1=0.4mmである。この下層部の感熱板38bは、集熱板及び防護板としての機能とを果たせる厚さに形成され、その値は、例えば、0.35mm〜1.0mmの範囲内で適宜選択される。
【0014】
なお、上層部の感熱板38aは、下層部の感熱板38bにより守られているので、できるだけ板厚を薄くして、感度を高めことができる。又、感熱板38a、38bは、プレス製法で成型してもよいが、切削加工で一体物で製造する。
【0015】
次に、本実施例の作動について説明する。
感熱板に衝撃が加わると、その外力は最下層部の感熱板38bにかかるが、前記下層部の感熱板38bは板厚が厚いので、変形をおこしにくい。そのため、対向する感熱板38a、38bの間隔(熱気流空間)は変化しないので、仕様感度を維持することができる。
【0016】
なお、このスプリンクラヘッドSPでは、火災が発生すると、火災熱により前記半田35が溶融する。そうすると、ピストン37が摺動し、感熱分解部Sの第1アーム23、第2アーム25が外れるとともに、弁体15を支持しているバランサ21が外れ、感熱板38a、38bや前記弁体15等が落下するので、放水口3が開き、放水が開始される。
【0017】
この発明の第2実施例を図2により説明するが、図1と同一図面符号はその名称も機能も同一である。
この実施例と第1実施例との相違点は、感熱板が3枚設けられ、又、その板厚が異なることである。前記感熱板38a、38cの板厚t2は、0.2mm、最下層部の感熱板38bの板厚t1は、0.5mmに形成されている。なお、上層部の感熱板38a、38cの板厚は、必ずしも同一である必要はない。
【0018】
この発明の実施例3を図3により説明するが、図1と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。この実施例と実施例1との相違点は、最下層部の感熱板38bが断面波形に環状の凹凸が連続して形成されていることである。この感熱板38bの板厚t3は、上層部の感熱板38aの板厚tと同一であり、例えばt3=0.3mmである。
この様に、感熱板を断面波形にする場合は、板厚を大きくする場合に比べ、受熱効果を低下させず強度を高めることができる。
【0019】
なお、本実施形態において、板厚を大きくする代わりに、最下層部の感熱板だけにニッケルクロムメッキなどのメッキ処理を施して、メッキの膜厚分だけ感熱板の厚みを大きくさせるようにしても良い。
【0020】
また、最下層部の感熱板にサンドブラストなどの表面処理を施して、梨地状にして強度を高めるようにしても良い。このような場合は、実施例3と同様に、板厚を大きくせずに、強度を高められるので、受熱効果が低下しない。
【0021】
また、最下層部の感熱板を、その上に設けられた感熱板よりも高い強度を有する材質で形成するようにしても良い。なお、上下の感熱板の外径は、同じ径のものを使用して説明したが、最下層部の感熱部の外径を、その上に設けられた感熱板の外径よりも大きくする様にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本件発明の実施例1を示す縦断面図である。
【図2】本件発明の実施例2を示す縦断面図である。
【図3】本件発明の実施例3を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ヘッド本体
38a 感熱板
38b 最下層部の感熱板
SP スプリンクラヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体の下端に、複数枚の感熱板を有するスプリンクラヘッドにおいて;
最下層部に設けられた感熱板は、その上に設けられた感熱板よりも高い強度を有することを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項2】
前記最下層部に設けられた感熱板は、断面波形に形成されていることを特徴とする請求項1記載のスプリンクラヘッド。
【請求項3】
前記最下層部に設けられた感熱板は、その上に設けられた感熱板よりも板厚が大きいことを特徴とする請求項1記載のスプリンクラヘッド。
【請求項4】
前記感熱板は、感熱体を収納したシリンダの外周面に突設され、互いに熱気流空間を介して対向する水平な感熱板であることを特徴とする請求項1、2、又は、3記載のスプリンクラヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−252745(P2007−252745A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82931(P2006−82931)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】