説明

スプリンクラーヘッド

【課題】 スプリンクラーヘッドの作動時にスプリンクラーヘッド本体内部の部品がデフレクターやデフレクターを吊設しているロッドに係留されることを防止可能なスプリンクラーヘッドを提供する。
【解決手段】 本体1の内部の放水口1Bを閉塞する弁体3と、火災時に分解作動する一対のレバー11を有する感熱分解部4との間にサドル20が設置されており、放水口1Bとサドル20の延長上にデフレクター5が設けられ、サドル20は一対のレバー11が対向して係止される平面部Hを有しており、平面部Hの中心を通って縁に向かう線と交差する線を軸とした穴21を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用のスプリンクラーヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーヘッドは、建物内の天井面や壁面に設置され、一端に給水源に続いた配管と接続可能な放水口を有し、他端には感熱作動部が設けられている。平時において感熱作動部は放水口を閉止する弁体を支持している。
【0003】
上記スプリンクラーヘッドの一例として、特許文献1に記載されたスプリンクラーヘッドがある。図12に示す特許文献1のスプリンクラーヘッドは、スプリンクラー本体110の下部にフランジ140が形成されている。フランジ140の内周側にはオリフィス130を閉塞するシールキャップ135やフランジ140の内周下端に係止される一対のレバー325の一端が係止されている。レバーの他端側には2枚の薄板を低融点合金で接合したリンク320が係止されている。レバー325はヨーク710およびロードスクリュー740を介してシールキャップ135をオリフィス130側に押圧してオリフィス130の閉止状態を保持している。
【0004】
フランジ140には2つの穴が穿設されており、該穴に筒部材155が設置されている。筒部材155のフランジ140側の上端はフランジ140の表面に沿って折り曲げられている。反対側の下端は先端に向かうに従い内径が小さくなるように形成されている。筒部材155内にはロッド165が挿通されている。ロッド165の上端側は下端側と比べて直径が大きく、さらに上端部は筒部材155の下端内周に係止可能である。ロッド165の下端はデフレクター145に係止されており、デフレクター145はロッド165を介して筒部材155内をスライド移動可能である。
【0005】
上記のスプリンクラーヘッドは火災の熱によって作動する。火災時においてリンク320を接合していた低融点合金が溶融することでリンク320が剥がれ、レバー320の他端側の係止が外れる。するとレバー320はフランジ140に係止された側も支えを失いレバー320がそれぞれ離れる方向へ回転してレバー320がフランジ140から外れる。レバー320によって支えられていたヨーク710、シールキャップ135もフランジ140の外部へ落下してオリフィス130が開放される。
【0006】
開放されたオリフィス130からは水が放出される。放出された水はデフレクター145に衝突して四方に飛散され、火災を鎮静する。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国明細書第7275603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のスプリンクラーヘッドは、作動の際にヨーク710やシールキャップ135がデフレクター145上に落下・衝突して外部に放出される。デフレクター145にヨーク710やシールキャップ135等のスプリンクラーヘッド本体110内に設置されている部品が衝突した際にロッド165やデフレクター145に前述の構成品が引っ掛かって係留されると散水の障害となって規定の散水形状が得られない場合が、ごく少数の割合で発生する。この現象による消火への支障は少ないものの散水形状が乱れて散水密度に偏りが生じ、本来スプリンクラーヘッドが持っている性能が完全に発揮できないという問題があった。
【0009】
特に、スプリンクラーヘッドが作動してスプリンクラーヘッド内部の部品が落下した際に、本体の放水口の真下に落下した部品が、放水口から放出された水流によりデフレクター上に押し付けられた状態で係留されている現象が極稀に発生することがあった。
【0010】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、スプリンクラーヘッドの作動時にスプリンクラーヘッド本体内部の部品が、デフレクターやデフレクターを吊設しているロッド等のデフレクター支持部材に係留されることを防止可能なスプリンクラーヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のスプリンクラーヘッドを提供する。
本発明は、本体内部の放水口を閉塞する弁体と、火災時に分解作動する一対のレバーを有する感熱分解部との間にサドルが設置されており、放水口とサドルの延長上にデフレクターが設けられ、サドルは一対のレバーが対向して係止される平面部を有しており、平面部の中心を通って縁に向かう線と交差する線を軸とした穴をサドルに設置したことを特徴とするスプリンクラーヘッドである。
これによれば、感熱分解部が作動してサドルがデフレクター上に落下した際に本体の放出口から放出される水によってサドルがデフレクター上に押し付けられた状態で係留されても、サドルに穿設した穴から噴出する水の勢いを利用してサドルを回転させながら移動させてデフレクター上から外部へ落下させることができる。より具体的に説明すると、放水口から放出される水がサドルに衝突してサドルの中心から縁の方へ流れる際に、穴を通過した水は穴の軸が平面部の中心を通って縁に向かう線と交差していることから流れが穴の軸の方向へ変換されて穴から噴出することでサドルに回転力が作用してサドルが移動可能となる。
【0012】
前記本発明については、平面部の中心を通って縁に向かう線に対して30°〜60°の角度で交差する線を軸とした穴を設置したことで構成可能である。
これによれば、穴をサドルの平面部の中心を通って縁に向かう線の延長上に複数穿設すると、サドルの中心を軸としてサドルを回転させることができる。また、穴の軸はサドルの中心に向けずにサドルの平面部の中心を通って縁に向かう線に対して斜めに交差する線、より具体的には10°〜80°の角度、好ましくは30°〜60°の角度で交差する線の方向に設定すると水流の勢いを効率よく回転する力に変換することができ、放水口から放出される水流が少ない場合でもサドルを回転させることができる。さらに穴は複数個所穿設することで、サドルの回転力を増加させることができる。
【0013】
前記本発明については、平面部のレバーが対向して係止される一対のレバー係止部の間の縁から脚部が延出して形成されており、穴を平面部から脚部にかけて穿設して構成可能である。
これによれば、例えばサドルの形状が平面部を矩形とした場合に、対向する2辺をレバー係止部とし、残りの2辺に脚部を延出させて形成する。または1辺のみに脚部を形成することも可能である。脚部の延出方向はサドルに対してデフレクター側である放水口からの放水方向に延出して形成するとスプリンクラーヘッドが作動した際に、脚部側からデフレクター表面に落下させることができる。さらに水を噴出させるための穴は、平面部から脚部にかけての屈曲した部分に穿設する。こうすることで、穴がサドルの中心から遠い位置に穿設され、穴から噴出した水の勢いによりサドルが回転しやすくなる。さらに、穴の脚部側から噴出する水はデフレクターの表面に沿うように噴出され、サドルが回転しやすくなる。一方、平面部側から噴出する水は、サドルとデフレクターの間に噴出してサドルとデフレクターを離してサドルを移動しやすくしている。
【0014】
前記本発明については、穴が平面部または脚部を斜めに貫通して構成可能である。
これによれば、例えば平面部に対して斜めに穴を穿設した場合、穴から斜め下方向に水が噴出され、サドルを回転させる流れと、サドルをデフレクター表面から離して移動しやすくする流れを発生させることができる。

【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サドルに穴を形成したことでスプリンクラーヘッドの作動時に、サドルが放出口から放出された水の勢いによりデフレクター上で係留されても、前記穴から水が噴出してサドルが回転しながら移動して、デフレクターの外部へ放出することができる。

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のスプリンクラーヘッドの断面図
【図2】図1のスプリンクラーヘッドの本体の正面図
【図3】図2の側面図
【図4】感熱分解部の断面図
【図5】感熱分解部の分解斜視図
【図6】シリンダー・プランジャーの分解断面図
【図7】図1のスプリンクラーヘッドの施工時における断面図
【図8】図7のX−X断面図
【図9】図7のY部拡大図
【図10】サドルの底面図
【図11】サドルの変形例
【図12】従来のスプリンクラーヘッドの断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のスプリンクラーヘッドの実施形態について図1〜図10を参照して説明する。
【0018】
スプリンクラーヘッドAは、本体1、弁体3、感熱分解部4、デフレクター5、サポートカップ6、カバープレート7を備えており、コンシールド型スプリンクラーヘッドとして構成されている。
【0019】
図1から図3に示す本体1は中空状であり、一端は充水された配管と接続可能な牡ネジが形成された配管接続部1Aとなっている。配管接続部1Aの他端側は放水口1Bとなっている。放水口1Bの端は弁体3によって閉塞されている。
【0020】
配管接続部1Aと放水口1Bの間には外周部の断面形状が多角形であるサポートカップ係止部1Cが形成されている。サポートカップ係止部1Cより放水口1B側には、サポートカップ係止部1Cの外周部より大きな外周を有する鍔部が形成されており、その鍔部の縁から放水側に向けて筒状のフレーム部2が形成されている。本体1は前述の配管接続部1Aと配管接続部1Aより大きな外周面を有するフレーム部2とで構成されている。
【0021】
フレーム部2の外周横断面形状は、円の2箇所を平行に切欠いた形状をしており、具体的には切欠かれた2箇所の直線部と各直線部の間の円弧部とが形成されている。従ってフレーム部2の外周面には断面円弧状の曲面部2Aと断面直線状の平面部2Bが形成されている。平面部2Bはフレーム部2の外周面を配管接続部1Aの側から後述する梁状部2Jまで切り欠くように形成された切欠面部として形成されており、そこに開口2Eが形成されている。フレーム部2の下部の外周断面形状は、平面部2Bが無くなり曲面部2Aと同じ半径寸法である円形となっている。即ち平面部2Bの下方にはフレーム部2の周方向に沿って架設した円弧状部分でなる梁状部2Jが形成されている。この梁状部2Jはフレーム部2の筒軸を中心とする対向位置に形成されている。
【0022】
フレーム部2の内周下部(曲面部2Aの下部と梁状部2Jの内周面)には内側に向かって拡張して形成された内方フランジ2Cが形成されている。曲面部2Aの下部に位置する内方フランジ2Cにはレバー挿通溝2D、2Dが形成されている(図1)。
【0023】
レバー挿通溝2Dから略90°回転したフレーム部2の平面部2Bには開口2Eが形成されている。開口2Eはフレーム部2の内側を曲線部2Aの外径寸法より小さく且つ2つの平面部2B間の寸法より大きい径寸法で切削することで形成される。
【0024】
開口2Eの下方に位置する梁状部2Jの内方フランジ2Cは、後述する感熱分解部4のレバー11が係止されるレバー係止部2Fとなる。開口2Eの下方の梁状部2Jにレバー係止部2Fを設けたことで、レバー係止部2Fに放水口1B側からフレーム部2の下端側へ荷重を印加すると、梁状部2Jは印加された荷重によって弾性変形するが、開口2Eを設けない場合と比較して梁状部2Jの弾性変形による変形量を大きくすることができる。そしてこの梁状部2Jの弾性変形(たわみ)がバネ力となり、そのバネ力はスプリンクラーヘッドAが作動した際に感熱分解部4の構成部品を外へはね飛ばす作用を有しておりロッジメントの防止に機能する。
【0025】
レバー挿通溝2Dの外周側にはフレーム部2の下端より下方へ垂下して形成されたデフレクター係止部2Gが形成されている。フレーム部2と放水口1Bとの境には、弁体3が収容可能な段部2Hが形成されている。段部2Hにより弁体3が振動や衝撃等によって放水口1Bから位置ずれした際の移動を段部2H内に留めて弁体3が放水口1Bから位置ずれして放水口1B内の水が漏れることを防止している。
【0026】
弁体3は円盤形状であり、前述の段部2Hに収容される。弁体3は後述するコンプレッションスクリュー22により放水口1Bの端に押圧され放水口1Bを閉塞している。
【0027】
感熱分解部4はフレーム部2の梁状部2Jに形成された内方フランジ2C(レバー係止部2F)に係止され、火災時には火災の熱によって分解作動して弁体3を解放する。感熱分解部4は、レバー11、支持板12、バランサー13、シリンダー14、プランジャー15、低融点合金16、セットスクリュー17から構成される。
【0028】
感熱分解部4は図4に示すようなユニット部品として構成され、ユニット部品として保管、運搬が可能である。スプリンクラーヘッドの組立時においても図4で示すユニット部品の状態で本体1に組み込まれる。
【0029】
レバー11は、一対で用いられており一端が内方フランジ2Cに係止され外方に屈曲した形状をしている。レバー11の上部には左右対称に設けられた突起11Aが形成され(図5)、下部には矩形の穴11Bが穿設されている。一対のレバー11の間には支持板12とバランサー13が係止され、支持板12は突起11Aと係止し、バランサー13は下部の穴11Bに係止される。バランサー13の中心部には穴13Aが穿設されており、該穴13Aにシリンダー14が挿入される。
【0030】
シリンダー14は円筒形状をしており、内部には段が形成され、大径部14Aと小径部14Bが形成されている。大径部14Aには円環状の低融点合金16が収容されている。また大径部14A側の端には鍔部14Cが形成されており、該鍔部14Cがバランサー13の穴13Aと係合する。小径部14Bの内径は環状の低融点合金16の内径と略等しい。
【0031】
小径部14Bの先端はヒートコレクター18、19を挟んだ状態で折り曲げられ、ヒートコレクター18、19がシリンダー14に設置される。ヒートコレクター18、19は熱伝導性が良好な銅や銅合金等の金属から形成され、火災による熱を吸収してシリンダー14内の低融点合金16に伝える作用を有する。
【0032】
プランジャー15の外周部は段により大径部15Aと小径部15Bが形成されている。大径部15の外径はシリンダー14の大径部14Aの内径より僅かに小さく形成される。小径部15Bの外径はシリンダー14の小径部の内径および低融点合金16の内径より僅かに小さく形成される。
【0033】
プランジャー15は、シリンダー14の大径部14A側から挿通され、小径部15Bと、大径部15Aと小径部15Bの境の段部15Cとが低融点合金16に接触する。プランジャー15をシリンダー14に挿通した状態において、プランジャー15の外周面はシリンダー14Bおよび低融点合金16の内周面と摺動可能となっている。
【0034】
プランジャー15には貫通穴15Dが穿設されており、貫通穴15Dの中間にはセットスクリュー17の先端が接触する段部15Eが形成されている。
【0035】
セットスクリュー17は筒形をしており外部には牡ネジ17Aが螺刻されている。牡ネジ17Aを支持板12の牝ネジ12Aに螺入すると、セットスクリュー17の先端がプランジャー15の段部15Eを押圧するので低融点合金16はプランジャー15の段部15Eとシリンダー14の底部14Dにより圧縮方向の力が作用した状態にある。
【0036】
また一対のレバー11に係合した支持板12とバランサー13もレバー11との係止が強まる方向へ力が印加され、レバー11と支持板12、バランサー13の係合状態が保持される。これにより感熱分解部4がユニットとして構成される。
【0037】
感熱分解部4と弁体3の間にはサドル20が設置される。サドル20は金属の板材を屈曲させて形成しており、円弧状の縁を有する脚部Lと、略矩形状の平面部Hには一対のレバー11が係合する凹部20Aが形成されている。また、平面部Hの中心にはセットスクリュー17と螺合する牝ネジ20Bが螺刻されている。
【0038】
平面部Hの凹部20A、20Aが形成された辺と隣接した辺にはデフレクター5の方向に垂下して設置された円弧状の脚部L、Lが形成されており、平面部Hと脚部Lにかけて穴21が穿設されている。図10に示すように穴21は対角線30上に穿設され、サドル20の中心(牝ネジ20B)から最も遠い位置に穿設されている。穴21の軸21Aは、サドル20の中心を通って縁に向かう線である対角線30に対して略45°の角度で交差している。
【0039】
脚部Lはサドル20がデフレクター5上に落下した際に、脚部Lがデフレクター5と接触して載置された場合に、脚部Lの形状が円弧状をしているので不安定な状態でデフレクター5の上に載置されることから、サドル20の平面部Hが傾きやすい状態となり、傾いた平面部Hが水流の抵抗となってサドル20がデフレクター5の表面に沿って流れてデフレクター5の外部へ放出されやすくしている。
【0040】
一方、サドル20の平面部H側がデフレクター5上に落下して載置された場合には、放出口1Bから放出される水の勢いによりサドル20はデフレクター5の上面に押し付けられる場合がある。しかしながら、穴21より噴出した水の勢いによりサドル20は回転しながら移動してデフレクター5の外部へ放出される。より具体的に図10を参照して説明すると、放出口1Bから放出される水はサドル20に衝突してサドル20の中心(牝ネジ20B)から縁へ向かって流れる。そのとき対角線30上を流れて穴21を通過した水は、軸21Aの方向に変換されて穴21から噴出するので、サドル20の中心を軸として回転する力が作用してサドル20が回転しやすい状態となる。また、穴21は平面部Hから脚部Lにかけて穿設されており、脚部L側から噴出する水は主にサドル20を回転する作用を有しており、平面部H側から噴出する水は主にサドル20とデフレクター5の間に噴出され、サドル20とデフレクター5を噴流により引き離して移動しやすくする作用を有している。
【0041】
凹部20A、20Aの間には、牝ネジ20Bが螺刻されており、該牝ネジ20Bにはコンプレッションスクリュー22が螺入されている。コンプレッションスクリュー22を感熱分解部4側から弁体3に向かって牝ネジ20Bに螺入すると、コンプレッションスクリュー22の先端が弁体3を押圧して、弁体3が放水口1Bの端に押圧され放水口1Bを閉塞するとともに、一対のレバー11が係止されているフレーム部2の内方フランジ2Cを下方に押圧する。これによって梁状部2Jが弾性変形し極僅かな変位が生じる。このような梁状部2Jのたわみによる変位によって、分解作動時に感熱分解部4の構成部品をフレーム部2の外にはじき飛ばすバネ力が生じる。本実施形態ではコンプレッションスクリュー22とサドル20による簡易な部品構成と簡単な組立作業によって、弁体3の止水性と梁状部2Jのたわみ変形とに必要な荷重を得ることができる。
【0042】
デフレクター5は、平板状で周囲に複数のスリット5Aが形成されている。デフレクター5にはガイドピン5Cが嵌合される穴5B、5Bが穿設されており、該穴5Bにガイドピン5Cの一端が挿通され、カシメ固定される。ガイドピン5Cは本体1のデフレクター係止部2Gに穿設された穴5Eに挿通されている。ガイドピン5Cは穴5Eに挿通された状態で摺動可能である。ガイドピン5Cの他端側には鍔部5Dが形成されており、本体1のデフレクター係止部2Gの穴5Eの端面に係止可能である。
【0043】
サポートカップ6は、本体1のフレーム部2の外側を覆う有底円筒形状の部材である。サポートカップ6の底部6Aには前述の本体1のサポートカップ係止部1Cと嵌合可能な開口6Bが形成されている。サポートカップ係止部1Cと開口6Bを嵌合させることで、サポートカップ6が本体1に対して回転することを防止できる。
【0044】
開口6Bの周縁には外側へ向かって立設した筒状部6Cが形成されている。筒状部6Cの端面の位置はサポートカップ係止部1Cの端面より配管接続部1A側にあり、筒状部6Cの端は本体1の配管接続部1Aとサポートカップ係止部1Cとの間の括れ部1D付近に位置する。筒状部6Cの根元の数箇所に切り込みを入れた後、切り込みの上部を外周側から括れ部1D側に押圧して切り込みの上部を括れ部1D側に変形させ係合部6Dを形成することで係合部6Dと括れ部1Dが係合され、サポートカップ6を本体1に固定設置することができる。
【0045】
サポートカップ6の底面内側には前述の開口6Bと同様な開口が形成されたベースプレート6Eが設置されている。またサポートカップ6の底面6Aの周縁付近には均等間隔で複数の開口6Fが穿設されている。開口6Fはサポートカップの底面6Aから側面6Gにまで及んでいる。側面6Gの端面側には螺旋溝6Hが形成されている。
【0046】
カバープレート7は、サポートカップ6内の本体1や感熱分解部4、デフレクター5を覆い隠す薄板状の蓋7Aと、円筒形状のリテーナー7Bから構成される。カバープレート7は、本体1の配管接続部1Aを消火設備配管に接続した後にサポートカップ6に接続されることから、前述の本体1やサポートカップ6とは別部品として組立てられる。
【0047】
蓋7Aは円盤形状であり材質は熱を伝播しやすい銅や銅合金を用いる。リテーナー7Bは筒状であり下端から垂下した複数の脚の先端が折り曲げられ、蓋7Aとの接続面7Cが形成されている。接続面7Cと蓋7Aは低融点合金7Dにより接合される。低融点合金7Dは前述のシリンダー14内の低融点合金16より融点が低いものを用いる。
【0048】
リテーナー7Bの周面には前述のサポートカップ6の螺旋溝6Hと螺合可能な突起7Eが形成されている。該突起7Eはリテーナー7Bの周面に切り込みを入れ、突起7Eが斜め下方に突出するように形成されている。突起7Eはストッパーの作用を有しておりサポートカップ6の螺旋溝6Hと螺合状態の際にリテーナー7Bを下方に引き抜こうとすると突起7Eが螺旋溝6Hに引っ掛かり抜け止めとなる。
【0049】
逆にサポートカップ6にリテーナー7Bを嵌め入れる際には突起7Eは螺旋溝6H上で弾性変形して螺旋溝6H上を通過することが可能である。従って、サポートカップ6にリテーナー7Bを嵌め込む際にはリテーナー7Bをサポートカップ6に押し込むワンプッシュ操作で設置可能である。
【0050】
続いて、第1実施形態のスプリンクラーヘッドの組立手順および施工手順について説明する。
【0051】
先ず、本体1のフレーム部2の端から弁体3を段部2H内に嵌め入れる。続いてコンプレッションスクリュー22が螺合されたサドル20をフレーム部2内に入れる。
【0052】
さらにサドル20の凹部20Aの位置にレバー11が係合するように、予め組立てておいた図4の状態の感熱分解部4をフレーム部2内に挿入する。その際、レバー11を内方フランジ2Cのレバー挿通溝2Dを通過させてフレーム部2内に挿入し、レバー11の先端が内方フランジ2Cより奥へ挿通した後に感熱分解部4を回転させて凹部20Aとレバー11を係合させる。さらに感熱分解部4を回転させ、レバー11の位置がレバー挿通溝2Dから略90°回転した位置にセットする。
【0053】
続いて感熱分解部4のセットスクリュー17の貫通穴からコンプレッションスクリュー22を回転可能なレンチやドライバー等の工具を挿通させ、コンプレッションスクリュー22を牝ネジ20Bに螺入させる。するとコンプレッションスクリュー22の先端が弁体3を押圧するとともにレバー11の先端が内方フランジ2Cを押圧して内方フランジ2Cを弾性変形させる。コンプレッションスクリュー22を所定のトルクで締め付けることにより弁体3が放出口1Bを押圧する荷重を所定範囲内にコントロールすることが可能である。このようにフレーム部2の内部に弁体3等の構成部品をすべて入れた後に、貫通穴に工具を挿入しコンプレッションスクリュー22を牝ネジ20Bに螺合させることで組立作業が完了するので、組立作業を容易に行うことができる。
【0054】
次にデフレクター5を本体1に設置する。ガイドピン5Cを本体1のデフレクター係止部2Gに穿設された穴5Eに挿通した後、ガイドピン5Cの端とデフレクター5の穴5Bをカシメ固定する。
【0055】
続いて、サポートカップ6を本体1に設置する。本体1のサポートカップ係止部1Cとサポートカップ6の筒状部6Cを嵌め合わせた状態で、筒状部6Cの根元の数箇所に切り込みを穿設する。その後切り込みの上部を筒状部6Cの外周側から括れ部1Dに向かって押圧すると、切り込みの上部が括れ部1Dの外周形状に沿って変形され係合部6Dが形成される。係合部6Dと括れ部1Dが係合されてサポートカップ6が本体1に固定完了となる。ここまででスプリンクラーヘッドの製品としての組立手順は完了する。
【0056】
カバープレート7は、上記の製品を配管に接続して天井ボードWを施工した後(図7の状態)にサポートカップ6に接続される。カバープレート7の設置は、カバープレート7の突起7Eをサポートカップ6の螺旋溝6Hに螺合させて接続する。
【0057】
このとき消火設備配管の接続口と天井面との間の距離は、設計上や施工上、消火設備配管の接続口ごとに異なることがある。このような場合にはサポートカップ6に対するリテーナー7Bの差し込み長さを調整することで、個々の接続口と天井面との間の距離に対応して設置することが可能である。
【0058】
例えば図1ではサポートカップ6に対してリテーナー7Bが最も深く差し込まれているが、図1よりも配管の接続口と天井面との間が離れている場合にはリテーナー7Bの差し込み長さを浅くすればよい。
【0059】
そしてこの場合に、本実施形態ではデフレクター係止部2Gを天井面にできるだけ近いフレーム部2の開口端側に設けられており、デフレクター5の移動範囲が大きい。このためリテーナー7Bの差し込み長さが浅く、デフレクター5が図1よりも下方位置でカバープレート7の裏面に載置させた状態になったとしても問題なく施工することができる。即ちコンシールド型スプリンクラーヘッドAの施工上の取付調整代を大きく取ることができ施工が容易になる。
【0060】
以上によって図1に示すスプリンクラーヘッドの組立および施工が完了する。
【0061】
続いて、本発明のスプリンクラーヘッドの作動について説明する。
【0062】
上記のスプリンクラーヘッドは本体1に図示しない給水管と接続され、放水口1B内には水が充填された状態にある。火災が発生すると、蓋7Aとリテーナー7Bを接合している低融点合金7Dが溶融して蓋7Aが落下する。蓋7Aの落下により蓋7A上に載置されていたデフレクター5は自重によって図中下方へ移動する。デフレクター5はガイドピン5Cの一端に固定設置されており他端側に形成された鍔部5Dによりデフレクター係止部2Gに係止される。
【0063】
火災の熱によって感熱分解部4内の低融点合金16が溶融すると低融点合金16を収容しているシリンダー14内のプランジャー15がシリンダー14の底面側に没入する。このプランジャー15の移動によって感熱分解部4の構成品は支えを失い分解作動する。
【0064】
感熱分解部4が分解作動して外部に放出されると共に、サドル20および弁体3もフレーム部2から外部へ放出される。その際、サドル20はデフレクター5上に落下するが、サドル20は放水口1Bから放出される水の流れを受けて回転してデフレクター5の表面に沿って移動して外部に落下する。放水口1Bより放出された水はデフレクター5に衝突して四方へ散布され、火災の抑制・消火が行われる。
【0065】
次に、上記に説明した実施形態の変形例を説明する。図11(a)は脚部Lに穴21を穿設したものである。同図(b)は穴21の代わりに切欠き21Cを形成したものであり、穴21と同様の作用・効果を有する。同図(c)はサドルの底面図であり脚部Lを有しない構成となっており、穴21が平面部Hを斜めに貫通して形成したものである。これにより穴21から水が斜め下方へ噴出され、サドル20をデフレクター5から離す作用と、サドル20を回転させる作用の両方を有する。
【0066】
前述の実施形態と変形例(a)〜(c)において、穴または切欠きの形状を円、長丸、矩形、多角形とすることも可能である。また、穴または切欠きの数についても適宜増加・減少することができる。

【符号の説明】
【0067】
1 本体
1A 配管接続部
1B 放水口
2 フレーム部
2B 平面部
2C 内方フランジ
2D レバー挿通溝
2E 開口(開口部)
2F レバー係止部
2G デフレクター係止部
2H 段部
2J 梁状部
3 弁体
4 感熱分解部
5、37 デフレクター
6 サポートカップ
7 カバープレート7
11 レバー
12 支持板
13 バランサー
14 シリンダー
15 プランジャー
16、32 低融点合金
17 セットスクリュー
20 サドル
20A 凹部
20B 牝ネジ
21 穴
21A 穴の軸
22 コンプレッションスクリュー
L 脚部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内部の放水口を閉塞する弁体と、火災時に分解作動する一対のレバーを有する感熱分解部との間にサドルが設置されており、放水口とサドルの延長上にデフレクターが設けられ、サドルは一対のレバーが対向して係止される平面部を有しており、平面部の中心を通って縁に向かう線と交差する線を軸とした穴をサドルに設置したことを特徴とするスプリンクラーヘッド。

【請求項2】
平面部の中心を通って縁に向かう線に対して30°〜60°の角度で交差する線を軸とした穴を設置した請求項1記載のスプリンクラーヘッド。

【請求項3】
平面部のレバーが対向して係止される一対のレバー係止部の間の縁から脚部が延出して形成されており、穴を平面部から脚部にかけて穿設した請求項1または請求項2記載のスプリンクラーヘッド。

【請求項4】
穴は平面部または脚部を斜めに貫通している請求項1〜請求項3の何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−56084(P2013−56084A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196918(P2011−196918)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】