説明

スプリングコネクタ

【課題】製造が容易で、軸心14方向に基板を移動させてワイピング効果が得られるスプリングコネクタを提供する。
【解決手段】筒状部材20の先端側の狭搾部20aと内周面20bを連ねる面として、軸心14方向に対して傾いた第2の軸心22を有する軸の異なる円錐状面20cを形成する。可動端子26に突出部26aと内側端部26bを連ねる同軸の円錐状面26cを形成する。可動端子26が最も外方に突出した状態では、コイルスプリング28の弾力により、円筒部材20の軸の異なる円錐状面20cに可動端子26の同軸の円錐状面26cが弾接し、突出部26aが軸心14方向に対して傾いた状態で突出する。突出部26aが筒状部材20内に挿入されると、狭搾部20aに規制されて突出部26aが徐々に軸心14方向にその姿勢を変化させ、突出部26aの先端が基板に弾接する位置が変化する。もって、ワイピング効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、当接して電気的導通を得る基板に付着した異物または生成された酸化皮膜を除去するワイピング効果を奏するスプリングコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯用の電子機器において、一般的に電池パックなどは着脱分離自在に構成され、装着状体では電池パックなどの接続端子として作用する基板が、電子機器本体に設けられたスプリングコネクタに弾接されて電気的導通が図られる。図15は、従来のスプリングコネクタの一例の縦断面図である。その構造を図15を参照して説明する。導電性の筒状部材10は、一端側の開口端部に狭搾部10aが形成され他端側は閉塞される。そして、導電性の可動端子12は、先端側が小径の突出部12aとされ後端側が大径の内側端部12bとされ、さらに内側端面12cが軸心14方向に対して傾斜して設けられる。なお、筒状部材10の狭搾部10aは、可動端子12の突出部12aは挿通し得るが内側端部12bは挿通し得ないように設定され、可動端子12は軸心14方向に摺動自在であるが外方に抜け出ないように構成されている。さらに、筒状部材10内で、可動端子12と他端側の閉塞部の間にコイルスプリング16が縮設される。もって、自然状態では、可動端子12が先端側に偏寄されて突出部12aを外方に突出させた状態とされる。しかも、コイルスプリング16の弾力により、可動端子12の傾きを持った内側端面12cに軸心14方向と直交する分力が作用し、内側端部12bが筒状部材10の内周面に弾接され、電気的導通が図られる。
【0003】
ここで、電池パックの基板に異物が付着し、または酸化皮膜が生成されると、スプリングコネクタに対して基板が軸心14方向に相対移動して、可動端子12の突出部12aの先端に当接しても、基板の異物や酸化皮膜が除去されることがなく、接触導通抵抗値が大きなものとなる。そこで、電気的導通の信頼性が得られないこととなる。
【0004】
かかる不具合を改善するために、異物や酸化皮膜を除去するワイピング効果が得られる技術が、特開平7−6833号公報(特許文献1)およびUSP5244396号公報(特許文献2)により提案されている。特開平7−6833号公報の技術は、筒状部材の内周面に螺旋状の溝を形成し、可動端子にこの溝に挿入係合する突部を設け、筒状部材に対して可動端子が軸心方向に相対移動するのに伴い、可動端子が軸心回りに相対回転するようにしたものである。また、USP5244396号公報の技術は、電池パックなどの基板の移動方向に対して、スプリングコネクタの可動端子の移動方向を傾けることで、基板の移動に伴い可動端子の突出部の先端が当接する基板の位置がずれるようにしたものである。
【特許文献1】特開平7−6833号公報
【特許文献1】USP5244396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特開平7−6833号公報で提案された技術は、スプリングコネクタの軸心方向に基板を移動させて弾接させることができる。そして、可動端子の軸心回りの相対回転により基板の異物や酸化皮膜が確実に除去され、確実な電気的導通が得られる。しかしながら、筒状部材の内周面に螺旋状の溝を形成するには、複雑な製造工程を必要とし、製造コストが嵩むという不具合がある。さらに、スプリングコネクタの径が小さくなるほど、その製造が極めて困難なものとなる。また、USP5244396号公報で提案された技術にあっては、基板の移動方向に対してスプリングコネクタの軸心方向を傾けて配設しなければならず、この点で製造しにくいものであった。
【0006】
本発明は、上述したごとき従来のスプリングコネクタの事情に鑑みてなされたもので、製造が比較的に容易で、しかもスプリングコネクタの軸心方向に基板を移動させてワイピング効果が得られるスプリングコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明のスプリングコネクタは、導電性の筒状部材の開口端部に狭搾部を設け、導電性の可動端子を前記開口端部から突出部を外方に突出させるとともに外方に抜け出さないように大径の内側端部を設けて軸心方向に摺動自在に前記筒状部材内に配設し、前記筒状部材内に縮設されたコイルスプリングにより前記可動端子を外方に向けて弾性付勢したスプリングコネクタにおいて、前記コイルスプリングの弾力により前記可動端子が最も外方に突出した状態で、前記突出部が前記軸心方向に対して傾いた状態で突出するように構成されている。
【0008】
また、導電性の筒状部材の開口端部に狭搾部を設け、導電性の可動端子を前記開口端部から突出部を外方に突出させるとともに外方に抜け出さないように大径の内側端部を設けて軸心方向に摺動自在に前記筒状部材内に配設し、前記筒状部材内に縮設されたコイルスプリングにより前記可動端子を外方に向けて弾性付勢したスプリングコネクタにおいて、前記筒状部材の内側に前記コイルスプリングが先端方向に伸長するのを規制する段差部を設け、前記可動端子が最も外方に突出した状態で前記可動端子が前記コイルスプリングの弾力を受けずに重力により前記可動端子が前記軸心方向に対して傾き得るようになし、前記可動端子が挿入方向に移動されて前記コイルスプリングの弾力を受けるように構成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のスプリングコネクタにあっては、可動端子が最も外方に突出した状態で突出部が軸心方向に対して傾いた状態で突出しているので、コイルスプリングの弾力に抗して、突出部が筒状部材の狭搾部を通って筒状部材内に挿入されると、狭搾部に規制されて突出部が徐々に軸心方向にその姿勢を変化させる。そこで、基板が突出部の先端に弾接して軸心方向に移動されると、この移動に伴って突出部が姿勢を変化させ、その先端の基板に弾接する位置が変化する。もって、ワイピング効果が得られる。
【0010】
また、請求項5記載のスプリングコネクタにあっては、可動端子が最も外方に突出した状態では可動端子はコイルスプリングの弾力を受けておらず、可動端子は重力により突出部が軸心方向に対して傾いた状態となる。そして、突出部が筒状部材の狭搾部を通って筒状部材内に挿入されると、狭搾部に規制されて突出部が徐々に軸心方向にその姿勢を変化させる。よって、請求項1記載のスプリングコネクタと同様に、突出部の先端が弾接する基板の位置が変化し、ワイピング効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施例を、図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明のスプリングコネクタの第1実施例の縦断面図であり、(a)は可動端子が突出した状態を示し、(b)は可動端子が挿入された状態を示す。図2は、図1の筒状部材の縦断面図である。図3は、図1のスプリングコネクタにおいて、基板が当接されて可動端子が筒状部材内に挿入される状態を示し、(a)は基板が当接されるが可動端子が挿入されていない状態を示し、(b)は可動端子が挿入される途中の状態を示し、(c)は可動端子が挿入された状態を示す。
【0012】
図1ないし図3において、黄銅材等の導電材からなり導電性を有する筒状部材20の先端の開口端部に狭搾部20aが形成され、この狭搾部20aと筒状部材20の内周面20bを連ねる面として軸心14とはθの角度の第2の軸心22を有する軸の異なる円錐状面20cが形成される。筒状部材20の後端はブッシュ24が適宜に固定されて閉塞される。導電性を有する可動端子26は、先端側の小径の突出部26aと後端側の大径の内側端部26bおよび突出部26aと内側端部26bを連ねる面としての軸心14と同軸の円錐状面26cからなる。筒状部材20の狭搾部20aを突出部26aは挿通できるが内側端部26bは挿通し得ないように設定される。そして、突出部26aは先端側が大径で同軸の円錐状面26c側が小径のテーパー状に形成され、また内側端部26bは後端側に凸の略半球状に形成される。さらに、筒状部材20内で、可動端子26とブッシュ24の間にコイルスプリング28が縮設される。
【0013】
かかる構成において、本発明のスプリングコネクタは、まず可動端子26を突出部26aが外方に突出するようにして筒状部材20内に挿入し、さらにコイルスプリング28を挿入し、このコイルスプリング28を縮設させた状態でブッシュ24を筒状部材20の後端部に固定して組み立てられる。すると、自然状態で、コイルスプリング28の弾力により可動端子26の同軸の円錐状面26cが筒状部材20の軸の異なる円錐状面20cに弾接する。ここで、筒状部材20の軸の異なる円錐状面20cは軸14に対してθの角度の第2の軸心22を有するので、図1(a)のごとく、可動端子26の突出部26aは軸心14に対してθの角度を持って傾いて突出した状態となる。そして、コイルスプリング28の弾力に抗して可動端子26を筒状部材20内に挿入するならば、突出部26aは狭搾部20aに姿勢が規制され、図1(b)のごとく、突出部26aが軸心14と略一致した姿勢に変化する。
【0014】
そこで、図3(a)のごとく突出している可動端子26の突出部26aの先端に電池パックなどの基板30を当接して軸心14方向に押圧して移動させると、突出部26aが挿入されるのに伴って、突出部26aの姿勢が狭搾部20aに規制されて徐々に変化され、図3(b)の状態を経て図3(c)のごとくその姿勢が軸心14と略一致する。この姿勢の変化により、突出部26aが基板30に当接する位置は、図3(a)の当初の第1の位置P1から図3(c)の最終的な第2の位置P2にずれる。したがって、基板30の表面に付着した異物や生成した酸化皮膜が除去され、接触導通抵抗値の小さな電気的導通が得られる。
【0015】
この第1実施例では、筒状部材20に軸心14とθの角度の軸心22を有する軸の異なる円錐状面20cを形成すれば良く、比較的に製造が容易である。なお、θの角度は、適宜に設定すれば良いことは勿論である。また、突出部26aを先端側が太いテーパー状とすることで、突出部26aが最も突出された状態で、突出部26aと筒状部材20の狭搾部20aの間の隙間が大きなものとなり、それだけ突出部26aが軸心14に対して大きく傾くことができる。また、挿入された状態では狭搾部20aとの間の隙間が小さくなり、突出部26aが軸心14方向により一致した姿勢となる。もって、突出部26aの先端が当接する基板の位置が大きくずれる。そして、可動端子26の内側端部26bが後端側に凸の半球状であるので、可動端子26が傾きを変化させても姿勢が安定している。さらに、突出部26aが狭搾部20aに規制されてその姿勢を変化させるので、可動端子26は狭搾部20aに常に強く当接されており、可動端子26と筒状部材20の確実な電気的導通が得られる。
【0016】
図4は、第1実施例の筒状部材の第1の変形例を示す縦断面図である。図4の第1の変形例では、筒状部材20の先端の内側の面20dは、軸心14に対して回転対称であるが、狭搾部20aに近い一側面に外側から内側にポンチングなどのにより小さな突起部20eが形成されている。そこで、可動端子26の同軸の円錐状面26cは、突起部20eと反対側の内側の面20dに当接し、軸心14方向に対して傾き、第1実施例と同様に、可動端子26が最も突出した状態で、突出部26aは軸心14方向に対して傾いた姿勢となる。
【0017】
図5は、第1実施例の筒状部材の第2の変形例を示す縦断面図である。図5の第2の変形例では、筒状部材20の先端面は軸心14に対して直交せずに傾いて形成され、この面に孔を穿設して狭搾部20aとしたものである。筒状部材20の先端の内側の面20f自体が軸心14に対して傾いている。そこで、第1の変形例と同様に、可動端子26は筒状部材20の先端の内側の面20fに当接して、軸心14に対して傾いた姿勢となる。もって、第1実施例と同様に、可動端子26が最も突出した状態で、突出部26aは軸心14方向に対して傾いた姿勢となる。
【0018】
図4および図5に示す第1実施例の第1と第2の変形例にあっては、筒状部材20を板金で成形するのに好都合である。なお、第1実施例では可動端子26の同軸の円錐状面26cを筒状部材20の軸の異なる円錐状面20cに当接させて、安定した座り状態を得ている。しかるに、第1と第2の変形例にあっては、可動端子26に同軸の円錐状面26cを設けても第1実施例のごとき安定した座りは得られない。そこで、可動端子26の突状部26と内側端部26bが、軸心14に直交する面で連ねられていても良い。
【0019】
次に、本発明の第2実施例を図6を参照して説明する。図6は、本発明のスプリングコネクタの第2実施例の縦断面図であり、(a)は可動端子が突出した状態を示し、(b)は可動端子が挿入された状態を示す。図6において、図1と同一部材には同一符号を付けて重複する説明を省略する。
【0020】
図6に示す第2実施例において、図1に示す第1実施例と相違するところは、可動端子26とコイルスプリング28の間に導電性のプランジャ32が介装されたことにある。このプランジャ32の先端側は、可動端子26の内側端部26bの略半球状に合致した凹なる半球状面32aが形成され、後端側は軸心14に対して傾斜した傾斜面32bが形成される。筒状部材20内でプランジャ32は摺動自在であることは勿論である。このプランジャ32を可動端子26とコイルスプリング28の間に介装させることで、可動端子26がプランジャ32に安定して弾接するとともにプランジャ32が筒状部材20の内周面20bに確実に弾接し、可動端子26と筒状部材20の電気的導通が確実になされ、安定した導通経路が得られる。
【0021】
図7は、第2実施例のプランジャの第1の変形例を示す縦断面図である。図7のプランジャの第1の変形例では、プランジャ32の先端側の面に軸心14と同軸の有底孔32cが形成される。かかる構成の第1の変形例のプランジャ32にあっては、可動端子26の内側端部26bがプランジャ32に弾接する面圧が高くなり、それだけ接触導通抵抗値が小さくなり電気的導通が安定する。
【0022】
図8は、第2実施例の可動端子の第1の変形例を示す縦断面図である。図8の可動端子の第1の変形例では、可動端子26の内側端部26bが略半球状に代えて略円錐状に形成される。かかる構成の第1の変形例の可動端子26にあっては、可動端子26の内側端部26dの略円錐状の先端部がプランジャ32に弾接する面圧が高くなり、図7に示すものと同様に、接触導通抵抗値が小さくなり電気的導通が安定する。
【0023】
上記第1と第2実施例にあっては、筒状部材20の形状によって、可動端子26が最も突出した状態で突出部26aが軸心14方向に対して傾くように構成されている。しかるに、可動端子26の形状によっても、可動端子26が最も突出した状態で突出部26aが軸心14方向に対して傾くように構成することができる。かかる構成につき以下説明する。図9は、本発明のスプリングコネクタの第3実施例の縦断面図であり、(a)は可動端子が突出した状態を示し、(b)は可動端子が挿入された状態を示す。図9に示す第3実施例において、筒状部材20の先端の内側の面として軸心14と同軸の円錐状面20gが形成される。この同軸の円錐状面20gに代えて、狭搾部20aと内周面20bを連ねる面が軸心14に対して回転対称であっても良い。そして、可動端子26は、軸心14に対して回転対称の同軸の円錐状面26cに対して突出部26dが軸心14に対してθの角度の第3の軸心34の傾きを持って形成される。そこで、可動端子26が最も突出した状態で、筒状部材20の先端の内側の同軸の円錐状面20gに可動端子の同軸の円錐状面26cが弾接して姿勢が定まり、図9(a)に示すごとく突出部26dは軸心14に対して傾いて突出する。そして、突出部26dが筒状部材20内に挿入されると、図9(b)に示すごとく突出部26dは軸心14と略一致した姿勢に変化する。
【0024】
図10は、第3実施例の可動端子の種々の変形例を示し、(a)は軸心14に対して突出部26eを湾曲して傾けて形成した例であり、(b)は同軸の円錐状面26cに1つの突起26fを設けた例であり、(c)は突出部26aと内側端部26bを連ねる面として軸心14に対して傾いた面26gを設けた例である。図10(a)(b)(c)のいずれの変形例にあっても、筒状部材20から突出部26aまたは26eが軸心14に対して傾いて突出することとなる。
【0025】
さらに、本発明の第4実施例を図11および図12を参照して説明する。図11は、本発明のスプリングコネクタの第4実施例の縦断面図であり、(a)は可動端子が突出した状態を示し、(b)は可動端子が挿入された状態を示す。図12は、図11の筒状部材の縦断面図である。図11および図12において、図1および図2と同一部材には同一符号を付けて重複する説明を省略する。
【0026】
図11および図12において、導電性を有する筒状部材40の先端の開口端部に狭搾部40aが形成され、この狭搾部40aより少し後端側に後端側が大径の段差部40bが設けらて内周面40cに連なる。筒状部材40の先端の面は、軸心14に対して回転対称に形成されていれば良い。導電性を有する可動端子42は、先端側の小径の突出部42aと後端側の大径の内側端部42bおよび突出部42aと内側端部42bを連ねる面としての同軸の円錐状面42cからなる。なお、突出部42aと内側端部42bおよび同軸の円錐状面42cは、軸心14に対して回転対称である。そして、内側端部42bは後端側に凸の略半球状に形成され、突出部42aは軸心14方向に略同一太さに形成される。この可動端子42は、筒状部材40の狭搾部40aに対して、突出部42aが挿通できるが内側端部42bは挿通できず、しかも筒状部材40内で摺動自在であるように設定される。さらに、この可動端子42とコイルスプリング28の間に、軸心14方向に摺動自在の導電性を有するプランジャ44が介装される。このプランジャ44の先端面は可動端子42の内側端部42bの略半球状に合致した凹状の半球状面44aが形成され、外周面の軸心14方向の中間部に先端側が小径の段差44bが設けられ、後端面は軸心14に対して傾いた傾斜面44cが設けられる。そして、プランジャ44の段差44bは、筒状部材40の段差部40bに当接して先端方向の移動が規制される。しかも、プランジャ44の段差44bが筒状部材40の段差部40bに当接している状態で、可動端子42の同軸の円錐状面42cは筒状部材40の先端の内側の面に当接せずに僅かながら隙間が生ずるように設定される。
【0027】
かかる構成において、図11(a)のごとく、自然状態で、プランジャ44が最も先端側に偏寄されてプランジャ44の段差44cが筒状部材40の段差部40bに当接した状態では、可動端子42にはコイルスプリング28の弾力が加わらず、しかも筒状部材40の先端の内側の面にも当接していないので、可動端子42は自由な状態にあり、重力により傾いて突出部42aが軸心14に対して傾いた状態となり得る。そして、可動端子42を軸心14方向に挿入すれば、図11(b)のごとく、突出部42aは軸心14方向と略一致した姿勢に変化する。よって、第1実施例と同様に、ワイピング効果を奏する。
【0028】
図13は、図11に示す第4実施例の変形例を示し、(a)はプランジャ44の先端面に円錐状の凹部44dを設けたものであり、(b)はプランジャ44の先端面に軸心14と同軸に有底孔44eを設けたものである。図13(a)(b)いずれの構造にあっても、可動端子42がプランジャ44に当接する面圧が高いものとなり、それだけ接触導通抵抗値が小さなものとなる。
【0029】
図14は、本発明のスプリングコネクタの第5実施例の縦断面図であり、(a)は可動端子が突出した状態を示し、(b)は可動端子が挿入された状態を示す。図14において、図11および図12と同一部材には同一符号を付けて重複する説明を省略する。
【0030】
図14において、第4実施例と相違するところは、プランジャが設けられておらず、コイルスプリング50の先端肩部50aが筒状部材40の段差部40bに当接して先端側への伸長が規制されるように構成したことにある。そして、コイルスプリング50が最も伸長して先端肩部50aが筒状部材40の段差部40bに当接した状態で、可動端子42の同軸の円錐状面42cは筒状部材40の先端の内側の面40dに当接しないように設定されている。すると、第4実施例と同様に、自然状態では、可動端子42にコイルスプリング50の弾力が加わらず、可動端子は自由な状態にあり、重力により傾いて突出部42aが軸心14方向に対して傾いて突出される。そして、突出部42aを筒状部材40内に挿入すれば、その姿勢を変化させ、ワイピング効果が得られる。
【0031】
なお、第4実施例において、可動端子42の突出部42aを第1実施例のごとく先端側が大径のテーパー状としても良いことは勿論である。また、可動端子26、42や筒状部材20、40およびプランジャ32、44は、その表面が良導電体であれば良く、必ずしも材質自体が導電性を有するものでなくても良い。例えば、絶縁素材の表面に導電性の良い薄膜が配設されて構成されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のスプリングコネクタの第1実施例の縦断面図であり、(a)は可動端子が突出した状態を示し、(b)は可動端子が挿入された状態を示す。
【図2】図1の筒状部材の縦断面図である。
【図3】図1のスプリングコネクタにおいて、基板が当接されて可動端子が筒状部材内に挿入される状態を示し、(a)は基板が当接されるが可動端子が挿入されていない状態を示し、(b)は可動端子が挿入される途中の状態を示し、(c)は可動端子が挿入された状態を示す。
【図4】第1実施例の筒状部材の第1の変形例を示す縦断面図である。
【図5】第1実施例の筒状部材の第2の変形例を示す縦断面図である。
【図6】本発明のスプリングコネクタの第2実施例の縦断面図であり、(a)は可動端子が突出した状態を示し、(b)は可動端子が挿入された状態を示す。
【図7】第2実施例のプランジャの第1の変形例を示す縦断面図である。
【図8】第2実施例の可動端子の第1の変形例を示す縦断面図である。
【図9】本発明のスプリングコネクタの第3実施例の縦断面図であり、(a)は可動端子が突出した状態を示し、(b)は可動端子が挿入された状態を示す。
【図10】第3実施例の可動端子の種々の変形例を示し、(a)は軸心に対して突出部を湾曲して傾けて形成した例であり、(b)は同軸の円錐状面に1つの突起を設けた例であり、(c)は突出部と内側端部を連ねる面として軸心に対して傾いた面を設けた例である。
【図11】本発明のスプリングコネクタの第4実施例の縦断面図であり、(a)は可動端子が突出した状態を示し、(b)は可動端子が挿入された状態を示す。
【図12】図11の筒状部材の縦断面図である。
【図13】第4実施例の変形例を示し、(a)はプランジャの先端面に円錐状の凹部を設けたものであり、(b)はプランジャの先端面に軸心と同軸に有底孔を設けたものである。
【図14】本発明のスプリングコネクタの第5実施例の縦断面図であり、(a)は可動端子が突出した状態を示し、(b)は可動端子が挿入された状態を示す。
【図15】従来のスプリングコネクタの一例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10、20、40 筒状部材
10a、20a、40a 狭搾部
12、26、42 可動端子
12a、26a、26d、26e、42a 突出部
12b、26b、26d、42b 内側端部
14 軸心
16、28、50 コイルスプリング
20b、40c 内周面
20c 軸の異なる円錐状面
20d、20f、20g、40d 先端の内側の面
20e 突起部
20g、26c、42c 同軸の円錐状面
22 第2の軸心
24 ブッシュ
26f 突起
26g 傾いた面
30 基板
32、44 プランジャ
32a、44a 半球状面
32b、44c 傾斜面
32c、44e 有底孔
34 第3の軸心
40b 段差部
44b 段差
44d 円錐状の凹部
50a 先端肩部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の筒状部材の開口端部に狭搾部を設け、導電性の可動端子を前記開口端部から突出部を外方に突出させるとともに外方に抜け出さないように大径の内側端部を設けて軸心方向に摺動自在に前記筒状部材内に配設し、前記筒状部材内に縮設されたコイルスプリングにより前記可動端子を外方に向けて弾性付勢したスプリングコネクタにおいて、前記コイルスプリングの弾力により前記可動端子が最も外方に突出した状態で、前記突出部が前記軸心方向に対して傾いた状態で突出するように構成したことを特徴とするスプリングコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のスプリングコネクタにおいて、前記筒状部材の内周面と前記狭搾部とを連ねる面を、前記軸心方向に対して傾いた軸心を有する円錐状面に形成して構成したことを特徴とするスプリングコネクタ。
【請求項3】
請求項1記載のスプリングコネクタにおいて、前記筒状部材の内周面と前記狭搾部とを連ねる面を前記軸心に対して回転対称に形成し、前記可動端子の前記突出部と前記内側端部を連ねる面を円錐状面に形成し、前記突出部の軸心が前記円錐状面の軸心から傾いて形成して構成したことを特徴とするスプリングコネクタ。
【請求項4】
請求項1記載のスプリングコネクタにおいて、前記可動端子と前記コイルスプリングの間に、導電性のプランジャを介装し、このプランジャの後端面を傾斜面に形成して前記筒状部材の内周面に弾接して摺動するように構成したことを特徴とするスプリングコネクタ。
【請求項5】
導電性の筒状部材の開口端部に狭搾部を設け、導電性の可動端子を前記開口端部から突出部を外方に突出させるとともに外方に抜け出さないように大径の内側端部を設けて軸心方向に摺動自在に前記筒状部材内に配設し、前記筒状部材内に縮設されたコイルスプリングにより前記可動端子を外方に向けて弾性付勢したスプリングコネクタにおいて、前記筒状部材の内側に前記コイルスプリングが先端方向に伸長するのを規制する段差部を設け、前記可動端子が最も外方に突出した状態で前記可動端子が前記コイルスプリングの弾力を受けずに重力により前記可動端子が前記軸心方向に対して傾き得るようになし、前記可動端子が挿入方向に移動されて前記コイルスプリングの弾力を受けるように構成したことを特徴とするスプリングコネクタ。
【請求項6】
請求項5記載のスプリングコネクタにおいて、前記可動端子と前記コイルスプリングの間に導電性のプランジャを介装するとともに、このプランジャが前記筒状部材の前記内周面に弾接して摺動自在とするとともに前記筒状部材の前記段差部で先端方向への移動が規制されるように構成したことを特徴とするスプリングコネクタ。
【請求項7】
請求項5記載のスプリングコネクタにおいて、前記コイルスプリングの先端肩部が前記筒状部材の前記段差部に当接して前記コイルスプリングの先端方向への伸長が規制されるように構成したことを特徴とするスプリングコネクタ。
【請求項8】
請求項1ないし4記載のいずれかのスプリングコネクタにおいて、前記可動端子の前記内側端部を後端側に凸の略半球状に形成して構成したことを特徴とするスプリングコネクタ。
【請求項9】
請求項1ないし8記載のいずれかのスプリングコネクタにおいて、前記可動端子の前記突出部を先端側が太いテーパー状に形成して構成したことを特徴とするスプリングコネクタ。
【請求項10】
請求項4または6記載のスプリングコネクタにおいて、前記可動端子の前記内側端部を後端側に凸の略半球状に形成し、前記プランジャの先端面を前記内側端部の略半球状に対応した凹の略半球面に形成して構成したことを特徴とするスプリングコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−73287(P2006−73287A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253762(P2004−253762)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)