説明

スプレイ結晶化方法を使用した改質ポリカーボネートの製造方法

高分子量の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。かかる方法は、エステル交換反応及び短時間の縮合重合が連続的になされる溶融縮重合工程、結晶化工程、及び固相重合工程を含む。
本発明の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法を利用すれば、粉砕過程及び乾燥過程なく固相重合を実施して手間を低減する。また、固相重合で結晶化された改質ポリカーボネート粒子の結晶性及び結晶サイズを効率的に制御して均一な物性の高分子量の改質ポリカーボネートを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質ポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。前記方法は、縮合重合及びスプレイ結晶化を含み、溶融縮合反応の結果生じた重合度3未満の反応副産物の末端基及び未反応ジアリールカーボネート中に存在するアリールカーボネートのモル分率を低くし、固相重合を通じて得られる改質ポリカーボネートの分子量増加を極大化できる。この方法では、スプレイ結晶化方法が使用され、別途の粉砕及び乾燥工程を必要としない。追加的な乾燥、粉砕及び分別工程なしに一つの反応器内でスプレイ結晶化及び固相重合を順次または同時に行わせて、同じ分子量の改質ポリカーボネートの製造にかかる時間を顕著に短縮できる。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、機械的強度、透明性などが非常に優れている。このような長所のため、コンパクトディスク、透明シート、包装材、紫外線遮断フィルムなどの製造に広範囲に使われており、その需要量も急速に増加しつつある。
【0003】
しかし、ポリカーボネートは、通常の溶剤に曝された場合にクレイジングまたはクラック現象を示すなど耐溶剤性が落ち、低温で衝撃強度が低いという問題点がある。したがって、このような問題点を改善するためにいろいろな改質ポリカーボネートが開発された。改質されたポリカーボネートは、その化学構造中にカーボネート基だけでなく他の官能基、例えば、エステル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、及びシロキサン基などを持つカーボネートを意味する。シロキサンで改質されたポリカーボネートは、特に低温耐衝撃性及び加工性面で優れた特性を示す。
【0004】
このような改質ポリカーボネートの製造において、従来の生産工程は、ホスゲンを使用する界面重合工程とホスゲンを使用しない溶融重合工程及び固相重合工程に分けることができる。
【0005】
まず、ポリエステルカーボネートの場合を説明すれば、界面重合工程は、米国特許第4,983,706号明細書に記述されているように、ビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、ホスゲン及びジカルボン酸の反応について開示がされている。前記方法は、有害な化学物質、ホスゲン、及び環境に有害な塩素系有機溶媒を使用するので、危険性が非常に大きく、したがって、設備コスト及び製造コストが高い。
【0006】
米国特許第6,232,429号明細書は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応と、芳香族ジヒドロキシ化合物とジカルボン酸化合物とのエステル反応とを、アルカリ土類金属触媒と4級アンモニウム塩触媒とを使用して同時に起こさせる工程を経た後、溶融重合して改質ポリカーボネートを製造する方法を開示している。前記溶融重合工程は、有毒物質を使用せず危険性が少ないという長所があるが、高分子量の押出し用改質ポリカーボネートを生産するためには、高粘度の反応物処理時に高温、高真空の設備が必要なだけでなく、これにより品質が低下するという問題点がある。
【0007】
また、米国特許第6,365,702号明細書は、改質ポリカーボネートの製造方法を開示している。さらに具体的には、ポリカーボネートオリゴマー、カルボン酸化合物、ジアリールカーボネート化合物をアンチモン系の触媒使用を使用してエステル反応及びエステル交換反応を行い、次に生成物を冷やした後に粉砕する。前記方法は、別途の粉砕過程及び乾燥過程を必要とする。
【0008】
次いで、シロキサンで改質されたコポリカーボネートの場合を説明すれば、米国特許第5,530,083号明細書は、触媒を使用して芳香族ヒドロキシ化合物及びジヒドロキシ−末端のジオルガノポリシロキサン化合物とホスゲンとを反応させることを含む界面重合工程を開示する。この場合に、高分子量のシロキサンで改質されたコポリカーボネート樹脂を連続工程で比較的容易に生産できるが、有毒ガスと環境に有害な塩素系有機溶媒を使用するので危険性が非常に大きく、したがって、設備コスト及び製造コストが高い。
【0009】
一方、溶融重合工程は、米国特許第6,252,013号明細書に開示されたように、出発物質を溶融させた状態で重合させることを含む。有毒物質を使用せず危険性が少ないという長所はあるが、改質された高分量の押出し用コポリカーボネートを生産するためには、高粘度の反応物が高温、高真空で処理されねばならず、これにより改質されたコポリカーボネートの品質が低下するという問題点がある。
【0010】
一方、固相重合工程は、低分子量の改質されたコポリカーボネートプレポリマーを結晶化させた後、溶融温度より低い範囲の温度で重合反応を進める方法である。この場合、有毒物質を使用せず、固相で反応が進むので品質低下を防止できるが、一般的に知られた固相重合工程は、比較的低分子量(重量平均分子量:2,000〜20,000g/mol)のプレポリマーと共に存在する重合度3未満の反応副産物及び未反応ジアリールカーボネートの除去工程なしにそのまま結晶化工程及び固相重合工程が行われる。結果的に、ヒドロキシル基とアリールカーボネート基との化学両論的均衡が破られて、高分子量の改質されたポリカーボネートの製造時間が長くなる。この方法では、非結晶性プレポリマーが溶媒に溶解され、次いで沈殿されて結晶化される。したがって、結晶化されたプレポリマーの大きさ及び結晶性が不規則であり、別途の乾燥、粉砕及び分別工程が必要である。
【0011】
したがって、危険性がなく、品質低下を防止でき、かつ高分子量の改質ポリカーボネートを短時間内に経済的に製造できる製造方法についての研究がさらに必要な実情である。
【特許文献1】米国特許第4,983,706号明細書
【特許文献2】米国特許第6,232,429号明細書
【特許文献3】米国特許第6,365,702号明細書
【特許文献4】米国特許第5,530,083号明細書
【特許文献5】米国特許第6,252,013号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、結晶性及び結晶化されたポリカーボネート粒子のサイズを効率的に制御して均一な物性を持つ高分子量の改質ポリカーボネートの製造方法を提供する。前記方法は、別途の乾燥過程、粉砕過程及び分別過程が不要なので運転時間及び運転コストを低減できる。
【0013】
本発明はまた、前記方法により製造された改質ポリカーボネートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記第1の課題を達成するために、本発明は別途の粉砕及び乾燥工程なしに一つの反応器で多少低分子量の改質ポリカーボネートを順次または同時に結晶化及び固相重合して改質されたポリカーボネート樹脂を製造する方法を提供する。
【0015】
前記第2の課題を達成するために、本発明は前記方法により製造された改質ポリカーボネートを提供する。
【0016】
本発明はまた、結晶性及び結晶サイズを効率的に制御して均一な物性の高分子量の改質ポリカーボネートを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法を利用すれば、追加的な粉砕過程及び乾燥過程なく固相重合を実施して運転時間及び運転コストを低減して、結晶性及び結晶サイズを効率的に制御して均一な物性の高分子量の改質ポリカーボネートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
固相重合工程による改質ポリカーボネート樹脂の製造方法において、固相重合実施前に非結晶性改質ポリカーボネートを結晶化処理する工程をさらに実施せねばならないが、これは、結晶化により非結晶性改質ポリカーボネートの融点を上昇させ、固相重合時に改質ポリカーボネートの融着などを起こせないためである。
【0019】
本発明の一実施形態では、図1の固相重合反応器で前記スプレイ−結晶化と固相重合とが同時に進む。さらに他の実施形態では、スプレイ−結晶化工程をまず経た後に固相重合をする方法がある。前記の非結晶性改質ポリカーボネートには、エステル基またはシロキサン基で改質されたコポリカーボネートが望ましい。
【0020】
まず、集約的固相重合方法について説明すれば、次の通りである。
【0021】
第1に、非結晶性改質ポリカーボネートを溶媒に溶解させる。ここで非結晶性改質ポリカーボネートは、界面重合工程で製造されたもの、ジアルキル(アリール)カーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応により製造されたもの、を使用することが望ましい。
【0022】
前記改質ポリカーボネート溶液の製造時に用いる溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メタクレゾール、シクロへキサン、ジオキサン、ジメチルアルデヒド、ピリジンまたはこれらの混合物などが望ましい。
【0023】
また、前記改質ポリカーボネート溶液の濃度は5.0ないし50.0重量%が望ましく、10.0ないし30.0重量%がさらに望ましい。前記改質ポリカーボネート溶液の濃度が5.0重量%未満であれば、製造された改質ポリカーボネートの結晶性が高くて高分子量の改質ポリカーボネート樹脂を製造し難く、多量の溶媒を回収し難い一方、50.0重量%を超えると、改質ポリカーボネート溶液の粘度が高くてスプレイ噴射が円滑に進行されないという問題点がある。
【0024】
その後、前記製造した改質ポリカーボネート溶液を固相重合反応器内に移送し、ノズルを通じて前記固相重合反応器内で噴射させる。この時、改質されたポリカーボネート溶液は、圧力ノズルを使用して噴射する方法と、空気ノズルを使用する方法のいずれも望ましく使われうる。空気ノズルが使用される場合、圧縮されたキャリアガスが別途注入される。
【0025】
圧力ノズルを使用する場合、前記噴射圧は2.0ないし51.0kgf/cmが望ましい。前記噴射圧が2.0kgf/cm未満であると、溶液の噴射時にノズル入口が容易に閉塞されてしまうという問題点があり、噴射圧が51.0kgf/cmを超えると、次の工程の気化量以上に溶液が噴射されて気化されずに残存する溶媒の含有量が多すぎて望ましくない。
【0026】
一方、空気ノズルを使用する場合、前記圧縮ガスの注入速度は200ないし800L/hourが望ましく、300ないし600L/hourがさらに望ましい。圧縮ガスの注入速度が200L/hour未満であると、製造された結晶性改質ポリカーボネート粒子内に気化されていない溶媒の含有量が大きく増加するという問題点があり、圧縮ガスの注入速度が800L/hourを超えると、製造された結晶性粒子の大部分が直径80μm未満の微細な粉末になり、結晶化度が5%未満に低くなるという問題点がある。前記圧縮ガスは、窒素、空気、二酸化炭素及びこれらの混合物からなる群から選択された1種以上が使われうる。
【0027】
その後、前記噴射された溶液を高温ガスと接触させて溶媒を気化させ、結晶性改質ポリカーボネートを得る。
【0028】
このようにスプレイ結晶化法を使用して結晶性改質ポリカーボネートを製造すれば、改質ポリカーボネートの結晶化と乾燥とを同時に実施でき、結晶化された改質ポリカーボネート粒子のサイズが非常に均一である。したがって、別途の乾燥、粉砕及び分別工程が必要なく、反応工程が簡単で生産コストを低減できるという長所がある。
【0029】
前記改質ポリカーボネート溶液の気化に使われる高温ガスは、窒素、空気、二酸化炭素またはこれらの混合ガスが望ましい。また前記ガスの温度は、溶液中の溶媒を十分に気化させうる程度の高温である40ないし250℃が望ましく、60ないし150℃がさらに望ましい。
【0030】
前記高温ガスの温度が40℃未満であると、溶媒の気化速度が遅くて溶媒が十分に気化されず、追加的な乾燥工程を経なければ固相重合に直ちに使用できないという問題点があり、250℃を超えると、溶媒気化速度が速すぎて結晶化度が低くなるので、生成物である結晶化された改質ポリカーボネート粒子が固相重合時に溶融されるため、本発明の高分子量の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法である固相重合法に直ちに使用し難いという問題点がある。
【0031】
結晶性改質ポリカーボネート粒子の平均直径は80ないし3,000μmが望ましく、前記粒子直径の誤差範囲は30%未満が望ましい。
【0032】
前記粒子の直径が80μm未満であるか、3,000μmを超えると、これらの結晶化度が低いか、過度に高くなるだけでなく、固相重合時に減圧または窒素流入条件に適していないという問題点がある。また、溶媒残留後に残留する粒子直径の誤差範囲が30%を超えると、結晶性ポリエステルカーボネートの物性が不均一になるという問題点がある。
【0033】
前記本発明の結晶性改質ポリカーボネートの製造方法を、図1を参照してさらに具体的に説明する。
【0034】
非結晶性改質ポリカーボネートを溶媒が満たされている溶解槽1で攪拌して、非結晶性改質ポリカーボネートを溶解させる。
【0035】
前記溶液は、移送管2を通じて固相重合反応器5に移送され、これと同時に圧縮ガス3により前記移送された溶液をスプレイノズル4を通じて噴射させる。圧縮ガス3の改質ポリカーボネート溶液のノズル4内への注入速度は、溶液の濃度によって最適値が変わる。もし、空気ノズルの代わりに圧力ノズルを使用する場合、圧縮ガスの使用の代わりに前記溶液の注入圧力を2.0kgf/cm以上に高めて噴射させる。
【0036】
前記溶液の噴射される方向と逆方向に高温ガス注入管を通じて高温ガス8を注入して、溶液中の溶媒を気化させる。前記過程で蒸発された溶媒と高温ガスとは、液相の溶媒とガスとに分離された後、溶媒は再び溶解槽1に還流され、ガスは再び加熱されて固相重合反応器5内に注入される。
【0037】
改質ポリカーボネートは、固相重合反応器5の下部の凝集槽12に集められ、微細な大きさの結晶化度の低い粒子は凝集サイクロン6に集められる。
【0038】
さらに他の実施形態は、結晶化工程をまず経た後に固相重合を行う方法である。すなわち、本発明はまた、非結晶性ポリカーボネートをスプレイ−結晶化して結晶性改質ポリカーボネートを得る工程と、前記結晶性された改質ポリカーボネートを固相重合して高分子量改質ポリカーボネートを製造する工程と、を含む。
【0039】
前記方法で、非結晶性改質ポリカーボネートがエステル基で改質されたカーボネートである場合には、前記方法はさらに具体的に、(a)数平均分子量が3,000ないし20,000g/molであるエステル基を持つ非結晶性改質ポリエステルカーボネートを結晶化して、エステル基を持つ結晶性改質ポリエステルカーボネートを得る工程と、(b)前記エステル基を持つ結晶性改質ポリカーボネートを固相重合して、数平均分子量が15,000ないし200,000g/molであるエステル基を持つ結晶性改質ポリカーボネートを製造する工程と、を含む。
【0040】
一方、前記方法で非結晶性改質ポリカーボネートがシロキサン基を持つ非結晶性改質シロキサン系コポリカーボネートである場合には、前記方法はさらに具体的に、(a’)重量平均分子量が10,000ないし30,000g/molであるシロキサン基を持つ非結晶性改質カーボネートを結晶化して、シロキサン基を持つ結晶性カーボネートを得る工程と、(b’)前記シロキサン基を持つ結晶性改質カーボネートを固相重合して重量平均分子量が20,000ないし200,000g/molであるシロキサン基を持つ改質カーボネートを製造する工程と、を含む。
【0041】
前記非結晶性改質ポリカーボネートは、界面重合工程で製造されたものと、ジアルキル(アリール)カーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応により製造されたものと、または、ジアルキル(アリール)カーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応及び縮合反応により製造されたものがいずれも可能である。
【0042】
前記スプレイ−結晶化工程は、非結晶性改質ポリカーボネートを溶媒に溶かして溶液を製造する工程と、前記溶液をノズルを利用して噴射する工程と、前記噴射された溶液に高温ガスを接触させることによって溶媒を気化及び除去して結晶性改質ポリカーボネートを得る工程と、を含む。
【0043】
前記スプレイ−結晶化の条件は、前述した集約的固相重合方法と同一である。
【0044】
前記固相重合法は、製造された結晶性改質ポリカーボネートを固相重合反応器に注入して窒素を持続的に注入して高分子量の改質ポリカーボネート樹脂を製造できる。あるいは、前記固相重合法は、0ないし50mmHgの減圧下、望ましくは0ないし20mmHgの減圧下で、製造された結晶性改質ポリカーボネートを固相重合反応器に注入して反応副産物を除去し、高分子量の改質ポリカーボネート樹脂を製造する方法がある。前記方法で、改質ポリカーボネート樹脂がエステル基を持つポリカーボネートである場合には、数平均分子量15,000ないし200,000g/molであるエステル基を持つ改質ポリカーボネート樹脂が製造され、シロキサン基を持つ改質ポリカーボネートである場合には、重量平均分子量が20,000ないし200,000g/molであるシロキサン基を持つ改質コポリカーボネート樹脂が製造される。
【0045】
前記スプレイ結晶化法により製造された改質ポリカーボネートは、別途の粉砕過程及び乾燥過程を経ずに使用する。
【0046】
固相重合温度Tが下記式1を満たせるように等温または昇温して固相重合を進める(T=溶融温度)。
【0047】
(式1)
−50≦T≦T
【0048】
また、前記固相重合には必要に応じて粉末、液体、またはガス状態の末端停止剤、分枝剤、酸化防止剤などの添加剤を追加で使用でき、これらは得られる改質ポリカーボネート樹脂の品質を向上させる作用をする。
【0049】
前記のような工程を経て製造された本発明の改質ポリカーボネート樹脂は、エステル基を持つポリカーボネートである場合には15,000ないし200,000g/molの数平均分子量で、シロキサン基を持つポリカーボネートである場合には20,000ないし200,000g/molの重量平均分子量で押出し用及びブロー成形用に望ましく使われうる。
【0050】
また、既存の結晶化方式により製造された改質ポリカーボネートを固相重合した結果、多分散指数(Polydispersity Index)が固相重合前の値と比較して55ないし65%増加する一方、本発明により製造された結晶性改質ポリカーボネートを利用して固相重合した場合、粒径及び結晶化度が均一であって固相重合実施後にも多分散指数の増加が14.5%以下で既存結晶化方式に比べて顕著に低下し、これによって分子量及び物性が均一な高分子量の改質ポリカーボネート樹脂を製造できた。
【0051】
本発明でスプレイ結晶化工程に使われる非結晶性改質ポリカーボネートがエステル基を持つ非結晶性ポリエステルカーボネートである場合には、前記エステル基を持つ非結晶性ポリカーボネートは、a)ジカルボン酸化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル反応及びジアリール(アルキル)カーボネート化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応が触媒下で同時に進行されて、数平均分子量が1,500ないし15,000g/molである低分子量の非結晶性ポリエステルカーボネートプレポリマーを製造する工程と、b)前記a)工程で得られる低分子量のエステル基を持つ非結晶性ポリカーボネートプレポリマーを縮合重合する工程と、により製造されうる。
【0052】
以下、エステル基を持つ非結晶性ポリカーボネートの製造方法を工程別に具体的に説明すれば、次の通りである。
【0053】
<第1工程> エステル交換反応及びエステル反応工程
前記触媒は、本発明のエステル交換反応の出発原料物質として使われるジヒドロキシ化合物1モルに対して10−1ないし10−6モルで含むことが望ましく、さらに望ましくは、10−2ないし10−5モルで含むことであり、最も望ましくは、10−3ないし10−4モルで含むことである。前記含有量が10−6モルより少ない場合には反応初期に触媒活性を十分に発揮できず、10−1モルより多い場合には非経済的であるという問題点がある。
【0054】
本発明に使われる触媒は、特にスズ系触媒が望ましいが、スズ系触媒を使用する場合には、既存のアルカリ土類金属触媒、4級アンモニウム塩触媒、アンチモン系触媒に比べて色度と透明度及び反応性において長所がある。
【0055】
前記スズ系触媒には、ジアルキルスズトリクロライド、ジアルキルスズジクロライド、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズジアルコキシド、ジアルキルスズジカルボキシレート、及びテトラアルキルスズからなる群で選択される。ここで、前記アルキルは炭素数1ないし20、望ましくは1ないし10、さらに望ましくは1ないし6である。
【0056】
このうち、望ましいスズ系触媒は、下記式で表した化合物であり、
【化1】

最も望ましくは、酸化ジブチルスズである。
【0057】
本発明の出発原料物質のうちの一つであるジカルボン酸化合物としては、下記化学式1で表される化合物を使用できる:
<化1>
HOOC−R−COOH
【0058】
前記化学式1で、Rは炭素数4ないし30の置換または非置換のアリール基、炭素数1ないし10のアルキル基、または炭素数5ないし30のシクロアルキル基である。
【0059】
前記ジカルボン酸化合物の例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、デカンジオン酸、ドデカンジオン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらの組み合わせで構成された群から選択されうる。
【0060】
前記ジカルボン酸化合物として最も望ましいものは、1,10−デカンジカルボン酸である。
【0061】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記化学式2で表される化合物を使用できる。
【化2】

前記化学式2で、R及びRは、それぞれ独立的にハロゲン原子または炭素数1ないし8のアルキル基であり;それぞれ独立的に、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素などのハロゲン原子またはメチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、またはオクチル基などの炭素数1ないし8のアルキル基であり、Zは、単結合であるか、炭素数1ないし8のアルキレン基、炭素数2ないし8のアルキリデン基、炭素数5ないし15のシクロアルキレン基、炭素数5ないし15のシクロアルキリデン基、−S、−SO−、−SO−、−O−、−CO−、下記化学式3で表される化合物または下記化学式4で表示される化合物である。この時、炭素数1ないし8のアルキレン基または炭素数2ないし8のアルキリデン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、エチリデン基、またはイソプロピレン基などがあり、炭素数5ないし15のシクロアルキレン基または炭素数5ないし15のシクロアルキリデン基としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチリデン基、またはシクロヘキシリデン基などがある。a及びbは、それぞれ独立して0ないし4の整数である。
【化3】

【化4】

【0062】
前記化学式2で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)イソブタン、1,1−ビス(2−tert−アミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロフェニル)ブタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、または1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロへキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロへキサン、1,1−ビス(3−シクロへキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロへキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロへキサン、または1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、またはビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、またはビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのビス(ヒドロキシアリール)スルフィド;ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、またはビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、またはビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビス(ヒドロキシアリール)スルホン;または4,4’−ジヒドロキシフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−2、2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジシクロへキシルビフェニル、または3,3−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどのジヒドロキシビフェニルを使用できる。
【0063】
前記化学式2で表される化合物以外に使用可能な芳香族ジヒドロキシ化合物には、ジヒドロキシベンゼン、ハロゲン、またはアルキル置換されたジヒドロキシベンゼンを含み、その例としては、レゾルシン、3−メチルレゾルシン、3−エチルレゾルシン、3−プロピルレゾルシン、3−ブチルレゾルシン、3−tert−ブチルレゾルシン、3−フェニルレゾルシン、3−クミルレゾルシン、2,3,4,6−テトラフルオロレゾルシン、2,3,4,6−テトラブロモレゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、3−メチルヒドロキノン、3−エチルヒドロキノン、3−プロピルヒドロキノン、3−ブチルヒドロキノン、3−tert−ブチルヒドロキノン、3−フェニルヒドロキノン、3−クミルヒドロキノン、2,5−ジクロロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−tert−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、または2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノンなどがある。
【0064】
本発明に使われる出発原料物質である芳香族ジヒドロキシ化合物として最も望ましいものは、ビスフェノールAである。
【0065】
前記エステル交換反応に使われる出発原料物質のうち一つであるジアリールカーボネートは、下記化学式5で表される化合物または下記化学式6で表される化合物を使用できる。
【化5】

前記化学式5で、Ar及びArは、それぞれ独立的にアリール基である。
【0066】
【化6】

【0067】
前記化学式6で、Ar及びArは、それぞれ独立的にアリール基であり、Dは、前記化学式2で表される芳香族ジヒドロキシ化合物から2個のヒドロキシル基を除去して得られる残基である。
【0068】
前記化学式5または化学式6で表されるジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(m−クレジル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、またはビスフェノールA−ビスフェノールカーボネートなどがある。
【0069】
本発明のエステル交換反応に使われる出発原料物質である前記ジアリールカーボネートとして最も望ましいものは、ジフェニルカーボネートである。
【0070】
前記ジカルボン酸化合物は、ジアリールカーボネート化合物1モルに対して1ないし10−4モルで含まれることが望ましい。さらに望ましくは、0.5ないし10−3モルであり、最も望ましくは0.1ないし0.05モルである。前記含有量が10−4モルより少ないか、1モルより多い場合には、所望する改質ポリカーボネートの物性を確保できない。
【0071】
前記ジアリールカーボネートは、ジヒドロキシ化合物1モルに対して1.0ないし1.5モルで含まれることが望ましい。さらに望ましくは、1.0ないし1.3モルであり、最も望ましくは1.0ないし1.2モルである。前記含有量が1.0モルより少ないか、1.5モルより多い場合には、下記式による重合度が低くて望ましくない。
【数1】

【0072】
前記式で、rは、カーボネートグループに対するヒドロキシ化合物グループのモル比であり、Xは重合度であり、pは反応度である。この時、反応度であるpが1.0の値を持てば、前記数式1は下記数式2で表すことができて、rを1.0に近い値に調節して、重合度を短時間内に極大化させることができる。
【数2】

【0073】
本発明のエステル交換反応及びエステル反応を通じた改質ポリカーボネート樹脂の製造において、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤などの添加剤を追加で使用できる。
前記末端停止剤は、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、o−tert−ブチルフェノール、m−tert−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−n−ペンチルフェノール、m−n−ペンチルフェノール、p−n−ペンチルフェノール、o−n−へキシルフェノール、m−n−へキシルフェノール、p−n−へキシルフェノール、o−シクロへキシルフェノール、m−シクロへキシルフェノール、p−シクロへキシルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノールo−n−ノニルフェノール、m−n−ノニルフェノール、p−n−ノニルフェノール、o−クミルフェノール、m−クミルフェノール、p−クミルフェノール、o−ナフチルフェノール、m−ナフチルフェノール、p−ナフチルフェノール、2、6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、3,5−ジ−クミルフェノール、3,5−ジクミルフェノール、下記化学式7で表される化合物、下記化学式8で表される化合物、下記化学式9で表される化合物、下記化学式10で表される化合物、下記化学式11で表される化合物、下記化学式12で表される化合物、または下記化学式13または化学式14で表されるクロマン誘導体のような1価フェノールなどを使用できる。
【0074】
【化7】

【0075】
【化8】

【0076】
【化9】

【0077】
【化10】

【0078】
前記化学式9及び化学式10で、nは、7ないし30の整数である。
【0079】
【化11】

【0080】
【化12】

【0081】
前記化学式11及び化学式12で、R13は、それぞれ独立して炭素数1ないし12のアルキル基であり、kは、1ないし3の整数である。
【0082】
【化13】

【0083】
【化14】

【0084】
望ましくは、前記末端停止剤として、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−フェニルフェノール、前記化学式11で表される化合物、前記化学式12で表される化合物、前記化学式13で表される化合物または前記化学式14で表される化合物を使用することが望ましい。
【0085】
前記末端停止剤は、本発明のエステル交換反応の出発原料物質として使われる芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して0.01ないし10モル%で含まれることが望ましい。
【0086】
前記末端停止剤は、その全部をエステル交換反応にあらかじめ添加するか、または一部はあらかじめ添加して残りは反応進行によって添加できる。また場合によって、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートのエステル交換反応が一部進行した後に末端停止剤を全部添加してもよい。
【0087】
前記酸化防止剤は、リン系酸化防止剤を使用することが望ましく、その例としては、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリノニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリオクタデシル、次亜リン酸ジステアリールペンタエリトリトール、亜リン酸トリス(2−クロロエチル)、または亜リン酸トリス(2,3−ジクロロプロピル)などの亜リン酸トリアルキル;亜リン酸トリシクロへキシルなどの亜リン酸トリシクロアルキル;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリクレシル、亜リン酸トリス(エチルフェニル)、亜リン酸トリス(ブチルフェニル)、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、または亜リン酸トリス(ヒドロキシフェニル)などの亜リン酸トリアリール;亜リン酸2−エチルへキシルジフェニルなどの亜リン酸モノアルキルジアリール;亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリオクタデシル、次亜リン酸ジステアリールペンタエリトリトール、亜リン酸トリス(2−クロロエチル)、または亜リン酸トリス(2,3−ジクロロプロピル)などの亜リン酸トリアルキル;亜リン酸トリシクロへキシルなどの亜リン酸トリシクロアルキル;または、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリクレシル、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、または、亜リン酸2−エチルフェニルジフェニルなどの亜リン酸トリアリールなどがある。
【0088】
本発明の改質ポリカーボネート樹脂の製造に当って、エステル交換反応は、前記芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネートを重合触媒の存在下で実施し、この時、末端停止剤、分枝剤、酸化防止剤などの添加剤を追加で添加できる。
【0089】
前記エステル交換反応時に反応温度は特に制限されないが、100ないし330℃の温度で行われることがよく、望ましくは180ないし300℃の温度で行われることであり、さらに望ましくは、反応の進行によって順次に180℃から300℃の温度に上昇させることである。前記反応温度が100℃より低い場合にはエステル交換反応速度が遅くなり、330℃より高い場合には副反応または生成された改質ポリカーボネート樹脂を着色させうるという問題点がある。
【0090】
前記エステル交換反応時に反応圧力は特に制限されないが、使われた単量体の蒸気圧及び反応温度によって調節できるが、通常反応初期には1ないし10気圧の大気圧(常圧)になる加圧状態とし、反応後期には減圧状態にして最終的に0.1ないし100mbarにする。
【0091】
また、エステル交換反応時の反応時間は、目標とする重量平均分子量通常1,500ないし15,000g/molになるまで行うことができ、通常0.2ないし10時間実施する。
【0092】
前記エステル交換反応は通常不活性溶媒の不存在下で行われるが、必要に応じて、得られる改質ポリカーボネート樹脂の1ないし150重量%に当たる不活性溶媒の存在下で行ってもよい。前記不活性溶媒としては、ジフェニルエーテル、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ポリフェニレンエーテル、ジクロロベンゼン、メチルナフタレンなどの芳香族化合物;またはトリシクロ(5,2,10)デカン、シクロオクタン、シクロデカンなどのシクロアルカンなどを使用できる。
【0093】
また必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、前記不活性ガスには、アルゴン、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素などのガス;クロロフルオロ炭化水素、エタンまたはプロパンのようなアルカン、またはエチレンまたはプロピレンのようなアルケンなどがある。
【0094】
前記のような条件でエステル交換反応が進むにつれて使われたジアリールカーボネートに対応するフェノール類、これらのエステル類、水及び不活性溶媒が反応器から分離される。このような分離物は分離、精製、及び再生できる。前記エステル交換反応は、任意の装置を使用して回分式または連続式で行うことができる。
【0095】
<第2工程> 縮合重合反応工程
前記エステル交換反応工程を通じて製造された重量平均分子量が1,500ないし15,000g/molである低分子量のエステル基を持つポリエステルカーボネートプレポリマーを高温で減圧するか、窒素注入下で縮合重合して前記エステル交換反応後に未反応状態で存在するジアリールカーボネート及び重合度3未満である低重合度の反応副産物と反応途中で新たに発生するフェノールのような反応副産物を除去し、分子量が増大した重分子量の非結晶性ポリエステルカーボネートを製造する。
【0096】
縮合反応時に、反応副産物であるフェノール以外に相対的に沸点が低くて反応に参加できない未反応状態のジアリールカーボネートと重合度3未満の反応副産物がフェノールと共に気化して反応器外に抽出され、このような現象は既存工程と比較する時、固相重合時に改質ポリカーボネートの分子量増大を促進させる効果がある。
【0097】
また、従来の工程ではエステル交換反応工程において過剰量で使われたジアリールカーボネート及び重合度3未満の反応副産物が本発明のように固相重合前に縮合重合工程を経て除去されないだけでなく、結果的にプレポリマーの分子量増加につれて、生成されたプレポリマー末端のアリールカーボネートと芳香族ヒドロキシ末端基とのモル比差が大きくなって、以後の固相重合で高分子量のポリエステルカーボネートを製造するところに長時間が要求される。
【0098】
本発明の縮合重合反応は一般的な縮合反応器をいずれも使用でき、その例としては、ローテーティングディスク反応器またはローテーティングケージ反応器があり、それ以外にも薄膜反応器を使用できる。
【0099】
この時の反応温度は180ないし330℃が望ましく、さらに望ましくは200ないし300℃である。
【0100】
また、縮合重合反応は、エステル交換反応及びエステル反応後に未反応状態で存在するジアルキル(アリール)カーボネート及び重合度3未満の反応副産物と新たに発生する副産物であるフェノール及び水を前記のような高温の反応温度と0ないし50mmHgの減圧下で、さらに望ましくは0ないし20mmHgの減圧下で除去しつつ実施できる。
【0101】
本発明の一態様によれば、前記減圧の代わりに窒素注入によって反応副産物を除去しつつ行うこともできるが、この時に注入される窒素量は0.01ないし1.0Nm/kg・hであることが望ましい。反応時間は反応条件によって変化しうるが、一般的に2ないし120分程度が望ましい。
【0102】
前記のような工程で製造された中分子量の非結晶性ポリエステルカーボネートプレポリマーは、3,000ないし20,000g/molの重量平均分子量を持つことが望ましい。
【0103】
一方、本発明でスプレイ結晶化工程に使われる非結晶性改質ポリカーボネートが非結晶性シロキサン系コポリカーボネートである場合には、前記シロキサン系コポリカーボネートは、a’)炭酸ジエステル化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物及びポリシロキサンを触媒下で溶融及びエステル交換反応して重量平均分子量が1,500ないし20,000g/molの非結晶性シロキサン系コポリカーボネートプレポリマーを製造する工程と、b’)前記a’)工程の非結晶性シロキサン系コポリカーボネートプレポリマーを縮合重合する工程により行われうる。
【0104】
以下、工程別に具体的に説明すれば、次の通りである。
[第1工程:エステル交換反応工程]
本発明で使用する重合触媒としては、金属化合物触媒系と非金属化合物触媒系とがそれぞれ独立して使われるか、混合して使われうる。金属化合物触媒系としては、アルカリまたはアルカリ土類金属のヒドロキシド、アセテート、アルコキシド、カーボネート、水素化物、水酸化物、または酸化物などの塩化合物と亜鉛、カドニウム、チタン、または鉛などの遷移金属が含まれた有機金属化合物と水素化アルミニウムまたは水素化ホウ素が使われうる。
【0105】
また、非金属化合物触媒系としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムホルメート、テトラメチルアンモニウムカーボネート、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩;テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラメチルホスホニウムアセテート、テトラメチルホスホニウムホルメート、テトラメチルホスホニウムカーボネート、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド、水酸化テトラブチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルホスホニウムヒドロキシドなどの4級ホスホニウム塩;一級、二級または三級アミン化合物;またはピリジンのような窒素を含む芳香族化合物誘導体などを使用できる。
【0106】
前記非金属化合物触媒系は、本発明のエステル交換反応の出発原料物質として使われるジヒドロキシ化合物1モルに対して10−1ないし10−6モルで含まれることが望ましく、さらに望ましくは、10−2ないし10−5モルで含まれ、最も望ましくは、10−3ないし10−4モルで含まれることである。前記含有量が10−6モルより小さな場合には反応初期に触媒活性を十分に発揮できず、10−1モルより大きい場合にはコストが増加して非経済的であるという問題点がある。
【0107】
本発明に使われる前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有する化合物としては、特別な制限はないが、望ましくは、リチウム、ナトリウム、カルシウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのヒドロキシド、カーボネート、アセテート、アルコキシド、または水素化ホウ素化合物を使用することがよい。
【0108】
前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有する化合物は、本発明のエステル交換反応の出発原料物質として使われるジヒドロキシ化合物1モルに対して10−3ないし10−8モルで含むことが望ましく、さらに望ましくは、10−4ないし10−7モルで含み、最も望ましくは、10−5ないし10−6モルで含むことである。前記含有量が10−8モルより小さい場合には、反応後期工程で触媒活性を十分に発揮できず、10−3モルより大きい場合にはコストを上昇させ、最終シロキサン基を持つ改質ポリカーボネート樹脂の耐熱性、耐加水分解性などの物理的性質が劣るという問題点がある。
【0109】
本発明のエステル交換反応に使われる出発原料物質のうち一つである前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、化学式2で表される化合物を使用できる。
【0110】
前記エステル交換反応に使われる出発原料物質のうち一つであるジアリールカーボネートは、化学式5で表される化合物または化学式6で表される化合物を使用できる。
【0111】
前記エステル交換反応に使われる出発原料物質のうちの一つであるポリシロキサン化合物は、下記化学式15で表される化合物を使用できる。
【0112】
【化15】

【0113】
前記化学式15で、nは、1ないし500の整数であり、R、R3’、R及びR4’は、それぞれ独立的に水素原子または炭素原子数1ないし20のアルキル基であり、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が独立的にハロゲン原子に置換され、R及びRは、それぞれ独立的に炭素原子数1ないし20の直鎖型または分枝型アルキレン基、炭素原子数6ないし30個の単環式または多環式アリーレン基、または−R−X−R−であり、前記R及びRは、それぞれ独立的に炭素原子数1ないし20の置換または非置換されたアルキレン基、または炭素原子数6ないし30個の置換または非置換されたアリーレン基であり、Xは−O−、−S−、−SO−、−SO−、または−CO−である。
前記化学式15で表されるポリシロキサン化合物としては、ポリジアルキルシロキサン−ビスアルキルオキシアルコールなどがある。
【0114】
本発明のエステル交換反応に使われる出発原料物質である前記ポリシロキサン化合物として最も望ましいものは、下記化学式16で表される化合物である。
【0115】
【化16】

【0116】
前記式で、xは、1ないし500の整数である。
【0117】
前記ジアリールカーボネートは、ジヒドロキシ化合物1モルに対して1.0ないし1.5モルで含まれることが望ましい。さらに望ましくは、1.00ないし1.30モルであり、最も望ましくは1.00ないし1.20モルである。前記含有量が1.0モルより少ないか、または1.5モルより多い場合には、数式1及び2によって得られる重合度が低くて望ましくない。重合度に関する式は、前記エステル基を持つ改質ポリカーボネートに使われた数式1及び2を使用する。
【0118】
ジヒドロキシル化合物を基準に、添加されたポリシロキサンの含有量は、0.01ないし20モル%で含ませることが望ましい。さらに望ましくは、0.1ないし15モル%であり、最も望ましくは0.5ないし5モル%である。前記含有量が0.01モル%より少ない場合には改質効果が微少であり、20モル%より多い場合には局部的にポリシロキサンの濃度が増加しつつ生じるゲル化が進行して反応に不利な影響を及ぼす。
【0119】
本発明のエステル交換反応を通じた改質ポリカーボネート樹脂の製造に当たっても、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤、分枝剤などの添加剤をさらに使用でき、その具体的な内容は、ポリエステルカーボネートの場合と同一である。
【0120】
また反応温度、反応圧力などの具体的な反応条件に関する内容も前記の場合と同一である。
【0121】
[第2工程:縮合重合反応工程]
前記エステル交換反応工程を通じて製造された重量平均分子量が1,500ないし20,000g/molである低分子量のシロキサン基を持つ改質ポリカーボネートプレポリマーを高温で減圧するか、または窒素注入下で縮合重合して前記エステル交換反応後に未反応状態で存在するジアリールカーボネート、及び重合度3未満の低重合度の反応副産物との反応途中に新たに発生するフェノールのような反応副産物を除去し、低分子量のシロキサン基を持つ非結晶性の改質ポリカーボネートプレポリマーより分子量が増大した中分子量の非結晶性シロキサン基を持つ改質ポリカーボネートを製造する。
【0122】
縮合反応時に反応副産物であるフェノール以外に相対的に沸点が低くて反応に参加できない未反応状態のジアリールカーボネートと重合度3未満の反応副産物がフェノールと共に気化して反応器外に抽出され、このような現象は既存工程と比較した時、固相重合時にポリカーボネートの分子量増大を促進させる効果がある。
【0123】
また、従来の工程では、エステル交換反応工程で過剰量で使われたジアリールカーボネート及び重合度3未満の反応副産物が、本発明のように固相重合前に縮合重合工程を経て除去されないだけでなく、結果的にプレポリマーの分子量増加につれて、生成されたプレポリマーのアリールカーボネート末端基と芳香族ヒドロキシル末端基とのモル比差が大きくなって、以後の固相重合で高分子量のシロキサン基を持つ改質ポリカーボネートの製造に長時間が必要となる。
【0124】
本発明の縮合重合反応は一般的な縮合反応器をいずれも使用でき、その例としては、ローテーティングディスク反応器またはローテーティングケージ反応器があり、それ以外にも薄膜反応器を使用できる。
【0125】
この時、反応温度は180ないし330℃が望ましく、さらに望ましくは200ないし300℃である。
【0126】
また、縮合重合反応は、エステル交換反応後に未反応状態で存在するジアルキル(アリール)カーボネート及び重合度3未満の反応副産物と新たに発生する副産物であるフェノールを、前記のような高温の反応温度と0ないし50mmHgの減圧下で、さらに望ましくは、0ないし20mmHgの減圧下で除去しつつ実施される。
【0127】
本発明の一態様によれば、前記減圧の代わりに窒素注入によって反応副産物を除去しつつ実施されることもあるが、この時に注入される窒素量は0.01ないし1.0Nm/kg・hであることが望ましい。反応時間は反応条件によって変化するが、一般的に2ないし120分程度が望ましい。
【0128】
前記のような工程で製造された重分子量のシロキサン基を持つ非結晶性改質ポリカーボネートプレポリマーは10,000ないし30,000g/molの重量平均分子量を持つことが望ましい。
【0129】
また本発明は、前記の製造方法により製造された改質ポリカーボネート樹脂を提供する。さらに具体的には、ポリエステルカーボネート樹脂またはシロキサン系コポリカーボネート樹脂を提供する。
【0130】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するだけで、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0131】
[実施例1]
(エステル基を持つ非結晶性の改質ポリカーボネートプレポリマーの製造)
ビスフェノール−A、ジフェニルカーボネート、そして1,10−デカンジカルボン酸を、それぞれ1,500g(6.57モル)、1,463g(6.83モル)、そして15.89g(6.9×10−2モル)を混合して窒素雰囲気下で反応器内に投入した後、重合触媒として酸化ジブチルスズをビスフェノール−A 1モル当たり2.5×10−4のモル濃度で添加した後、攪拌すると共にジャケット温度230℃で5分間反応させた。次いで、1ないし4mmHgの減圧下で30分間エステル反応とエステル交換反応を行って数平均分子量が3,452g/molである低分子量の非結晶性ポリエステルカーボネートプレポリマーを製造した。
【0132】
(縮合重合反応を通じた非結晶性の改質ポリカーボネートの製造)
反応器の温度が300℃であり、反応圧力が1mmHg以下に合わせられた薄膜反応器に上記で製造された低分子量のエステル基を持つ非結晶性の改質ポリカーボネートプレポリマーを投入し、30分間縮合重合反応を進めた。結果として、数平均分子量が5,342g/molである非結晶性ポリエステルカーボネートを製造した。
【0133】
(集約的固相重合工程−高分子量ポリカーボネートの製造)
前記溶融縮重合により製造された数平均分子量が5,342g/mol(多分散指数(polydispersity index、PDI=2.69)であるエステル基を持つ改質ポリカーボネートを、塩化メチレンを溶媒として2Lの溶解槽で溶解させて15重量%の溶液を作った後、前記溶液を図1のようにノズルを通じて400L/hの流速で注入される圧縮窒素ガスと共に集約的固相重合反応器内に噴射し、重合部の下端部から提供される高温窒素と接触させることによって溶媒をいずれも蒸発させ、乾燥粒子形態の結晶性ポリエステルカーボネートを重合部に集めて、固相重合を進めた。
【0134】
重合部の下端部から提供される200℃の高温窒素を、温度調節部を経て120℃に冷却した後、溶液と接触させた。乾燥部で蒸発された溶媒と高温窒素はいずれも上端側面に設置されたサイクロンを通過した後、凝縮機を通じて液相の溶媒と気相の窒素とに分離された後、溶媒は再び攪拌器を持つ溶解槽に還流され、窒素は圧縮機を通じて加熱器に還流された。乾燥部では結晶性の非常に低い(10%未満)、直径が80μm未満の粒子も少量得られるが、これは反応器の上端に設置されたサイクロンで収集されて溶解槽に還流された。重合部に落ちる結晶性粒子を電子顕微鏡及びイメージ分析機で調べた結果、平均直径は400μm±35μmで粒径が非常に均一であった。また、示差走査熱量計を使用し測定した結果、結晶化度が22.8%であった。
【0135】
反応器での滞留時間が12時間経過した後、得られる高分子量のエステル基を持つ改質ポリカーボネートを分析した結果、数平均分子量が20,463g/molであり、多分散指数が3.06であった。
【0136】
反応時間による数平均分子量及び多分散指数を下記の表1に表した。
【0137】
[比較例1]
(エステル交換反応−低分子量のエステル基を持つ改質ポリカーボネートプレポリマーの製造)
ビスフェノール−A、ジフェニルカーボネート、そして1,10−デカンジカルボン酸をそれぞれ1,500g(6.57モル)、1,463g(6.83モル)、そして15.89g(6.9×10−2モル)を混合して窒素雰囲気下で反応器内に投入した後、攪拌と共にジャケット温度230℃で5分間反応させた。次いで、1ないし4mmHgの減圧下で30分間エステル交換反応させて、数平均分子量が3,452g/molである低分子量の非結晶性ポリエステルカーボネートプレポリマーを製造した。
【0138】
(結晶化工程−エステル基を持つ結晶性改質ポリカーボネートの製造)
前記工程で製造された低分子量のエステル基を持つ改質ポリカーボネートプレポリマー(多分散指数、PDI=2.38)を、塩化メチレンに0.1g/mLの濃度になるように溶解し、製造された溶液の200%量のメタノールを非溶媒として使用して、粉末状の結晶性粒子を沈殿物として得た。この時、エステル基を持つ結晶化された改質ポリカーボネートの平均直径は570μmであり、直径が10mmを超える塊状も複数存在して、固相重合実験のためには前記結晶化された粒子塊の粉砕過程が必要であり、結果的に粉砕された粒子の直径が200μm±42μmであり、示差走査熱量計を使用して測定した結晶化度は20.2%であった。
【0139】
(固相重合工程−高分子量のエステル基を持つ改質ポリカーボネートの製造)
前記製造された結晶化されて粉砕されたエステル基を持つ改質ポリカーボネートを一般的な円筒形固相重合反応器に注入し、窒素を反応器の下端で1分当たり3Lの速度で持続的に注入しつつ200℃の等温条件で固相重合反応を進行させて、高分子量のポリエステルカーボネート樹脂を製造し、その結果を下記の表1に示した。
【0140】
【表1】

【0141】
前記表1によれば、本発明によってエステル基を持つ非結晶性の改質ポリカーボネートを溶融縮重合してスプレイ結晶化した後、固相重合反応した実施例1の高分子量のエステル基を持つ結晶性の改質ポリカーボネートは、4時間の固相重合後に数平均分子量が13,000g/mol以上であった。これに対し、エステル基を持つ非結晶性改質ポリカーボネートをエステル交換反応と非溶媒による結晶化後、固相重合反応を実施する従来工程によって製造した比較例1では、エステル基を持つ改質ポリカーボネートは、10時間を超える固相重合時間にもかかわらず、数平均分子量が13,000g/molに到達できなかった。
【0142】
実施例1と比較例1とを比較した場合、本発明によって実施例1で製造された結晶化された粒子の結晶化度は固相重合に合う20%ないし30%を持つ一方、比較例で示される既存の結果と異なって粒径分布が、粉砕過程なしでも噴射条件調節によって平均直径が80μmないし3,000μm間の値で誤差範囲20%未満の非常に狭い分布度を示した。
【0143】
また本発明では、従来工程で必要とする付加的な乾燥装置及び粉砕装置を必要とせずに工程時間及び運転コストを大きく低減でき、結果的に製造された高分子量のエステル基を持つ改質ポリカーボネート樹脂の数平均分子量が、固相反応12時間の結果、最大20,463g/molまで高くなる。
【0144】
固相重合後にエステル基を持つ改質ポリカーボネートの多分散指数は、実施例1でその増加度が僅か14.0%であり、これは、既存方式による比較例1で示される61.3%の約1/4に過ぎない。したがって、実施例1では、商業的生産時に多分散指数が大きくなるにつれて現れうる物性の劣る低品質の生成物を未然に防止でき、均一な分子量及び物性の生成物を安定的に量産できる。
【0145】
[実施例2]
(シロキサン基を持つ非結晶性の改質ポリカーボネートプレポリマーの製造)
ビスフェノール−A、ジフェニルカーボネート、そしてジヒドロキシルポリシロキサン(ダウ・コーニング3058)を、それぞれ1,484g(6.50モル)、1,478g(6.90モル)、そして5.08g(1.13×10−3モル)を混合して窒素雰囲気下で反応器内に投入した後、重合触媒として酢酸ナトリウムと水酸化テトラブチルホスホニウムをそれぞれビスフェノールA 1モルを基準に1×10−6と2.5×10−4のモル濃度で添加した後、攪拌と共にジャケット温度230℃で5分間反応させた。次いで、1〜4mmHgの減圧下で30分間エステル反応とエステル交換反応を行って、重量平均分子量が8,804g/molであるシロキサン基を持つ非結晶性の改質ポリカーボネートプレポリマーを製造した。
【0146】
(縮合重合反応を通じたシロキサン基を持つ非結晶性の改質ポリカーボネートの製造)
反応器の温度が300℃であり、反応圧力が1mmHg以下に合わせられた薄膜反応器に、前記製造された低分子量のシロキサン基を持つ非結晶性の改質ポリカーボネートプレポリマーを投入し、30分間縮合重合反応を進めた。その結果、重量平均分子量が15,578g/molであるシロキサン基を持つ非結晶性の改質ポリカーボネートを製造した。
【0147】
(集約的固相重合工程−シロキサン基を持つ高分子量の改質ポリカーボネートの製造)
前記溶融縮重合により製造された重量平均分子量が15,578g/mol(多分散指数、PDI=2.79)であるシロキサン基を持つ非結晶性の改質ポリカーボネートを2Lの塩化メチレンに溶解して15重量%の溶液を作った後、前記溶液を図1のようにノズルを通じて400リットル/hの流速で注入される窒素ガスと共に集約的固相重合反応器内に噴射させ、反応器の下端部から提供される高温窒素ガスと接触させることによって溶媒をいずれも蒸発させ、乾燥粒子状のシロキサン基を持つ結晶化された改質ポリカーボネートが得られた。
【0148】
得られた結晶化された粒子を電子顕微鏡及びイメージ分析機で調べた結果、平均直径は400μm±35μmであり、結晶化された粒径が非常に均一であった。また示差走査熱量計を使用して測定した結果、結晶化度が23.2%であった。
【0149】
重合部での滞留時間が10時間を経過した後、得られる高分子量のシロキサン系コポリカーボネートを分析した結果、重量平均分子量が39,500g/molであり、多分散指数が3.19であった。
【0150】
反応時間による重量平均分子量及び多分散指数を下記の表2に示した。
【0151】
[比較例2]
(エステル交換反応−シロキサン基を持つ改質ポリカーボネートプレポリマーの製造)
ビスフェノール−A、ジフェニルカーボネート、そしてポリシロキサン(ダウ・コーニング3058)を、それぞれ1,484g(6.50モル)、1,478g(6.90モル)、そして5.08g(1.13×10−3モル)を混合して窒素雰囲気下で反応器内に投入した後、攪拌と共にジャケット温度230℃で5分間反応させた。次いで、1〜4mmHgの減圧下で30分間エステル交換反応して、重量平均分子量が8,804g/molであるシロキサン基を持つ低分子量の非結晶性の改質ポリカーボネートプレポリマーを製造した。
【0152】
(結晶化工程−シロキサン基を持つ結晶化された改質ポリカーボネートの製造)
前記エステル交換反応を通じて製造されたシロキサン基を持つ低分子量の改質ポリカーボネートプレポリマー(多分布指数、PDI=2.40)を塩化メチレンに0.1g/mLの濃度になるように溶解し、製造された溶液の2倍量のメタノールを非溶媒として使用して、粉末状のシロキサン基を持つ結晶性の改質ポリカーボネートを沈殿物として得た。この時に結晶化されたポリカーボネートの平均直径は570μmであり、直径が10mmを超える塊状の結晶化された粒子も複数存在し、固相重合実験のためには粉砕過程が必要であり、結果的に粉砕された粒子の直径は200μm±42μmであり、示差走査熱量計を使用して測定した結晶化度は20.5%であった。
【0153】
(固相重合工程−シロキサン基を持つ高分子量の改質ポリカーボネートの製造)
前記製造されたシロキサン基を持つ結晶化された改質ポリカーボネートを一般的な円筒形の固相重合反応器に注入し、熱い窒素を反応器の下端から分当たり3Lの速度で持続的に注入しつつ200℃の等温条件で固相重合反応を進行して、シロキサン基を持つ高分子量の改質ポリカーボネートを製造し、その結果を下記の表2に表した。
【0154】
【表2】

【0155】
前記表2に示すように、実施例2により、重量平均分子量が35,000g/molであるシロキサン基を持つ改質ポリカーボネートを4時間内に製造された。これに対し、比較例2によっては、重量平均分子量が35,000g/molであるシロキサン基を持つ改質ポリカーボネートは10時間の反応時間後でもほとんど得られなかった。
【0156】
実施例2と比較例2との比較を通じて、本発明による実施例2で製造された結晶化された粒子の結晶化度は、比較例2と比較して固相重合に適した20%ないし30%範囲であった。また、実施例2によって製造された結晶化された粒子は、粉砕過程なしで噴射条件を変化させることによって、平均直径が80μmないし3,000μm間の値で誤差範囲20%未満である狭い直径分布度を示した。
【0157】
また本発明では、従来工程で必要とする付加的な結晶化装置だけでなく、乾燥装置及び粉砕装置を必要としないので、手間を大きく低減でき、結果的に実施例2で重量平均分子量が固相反応10時間の結果、最大39,500g/molまで高くなった。
【0158】
実施例2で、固相重合後に多分散指数は僅か14.5%しか増加せず、比較例2の58.1%の約1/4に過ぎない。したがって、実施例2で多分散指数が大きくなるにつれて現れる低品質の生成物の発生を防止でき、均一な分子量及び物性を持つ生成物を安定的に量産できる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は安定的で品質を保証し、かつ高分子量の改質ポリカーボネートの製造時に短時間が要求される改質ポリカーボネートの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】改質ポリカーボネートの集約的固相重合のための装置図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非結晶性改質ポリカーボネートを溶媒に溶解させた非結晶性改質ポリカーボネート溶液を固相重合反応器でスプレイ結晶化及び固相重合を同時に実施して改質ポリカーボネートを製造する高分子量の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記非結晶性改質ポリカーボネートが、その化学構造中にエステル基またはシロキサン基を持つポリエステルカーボネートのうちの一つであることを特徴とする請求項1に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒が、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メタクレゾール、シクロへキサン、ジオキサン、ジメチルアルデヒド、ピリジンまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記非結晶性改質ポリカーボネート溶液の濃度が5.0ないし50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記非結晶性改質ポリカーボネートの結晶化が、非結晶性改質ポリカーボネート溶液をノズルを利用して噴射する工程、及び前記噴射された溶液に高温ガスを接触させることによって溶媒を気化及び除去して結晶性改質ポリカーボネートを製造する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ノズルが、圧力ノズルまたは空気ノズルであることを特徴とする請求項5に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ノズルが圧力ノズルであり、前記非結晶性改質ポリカーボネート溶液が2.0ないし51.0kgf/cmの噴射圧で噴射されることを特徴とする請求項6に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ノズルが圧力ノズルであり、圧縮ガスが200ないし800L/hourの注入速度で注入されることを特徴とする請求項6に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記圧縮ガスは、窒素、空気、及び二酸化炭素からなる群から選択された1種以上のガスを含むことを特徴とする請求項8に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記高温ガスは、40ないし250℃の窒素、空気または二酸化炭素であることを特徴とする請求項5に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記結晶性改質ポリカーボネート粒子が結晶性ポリエステルカーボネート粒子である場合に、前記粒子の平均直径が80ないし3000μmの値をもち、誤差範囲が30%未満であることを特徴とする請求項5に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項12】
非結晶性改質ポリカーボネートをスプレイ結晶化して、結晶化された改質ポリカーボネートを得る工程と、
結晶化された改質ポリカーボネートを固相重合して高分子量の改質ポリカーボネートを製造する工程と、を含む改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記非結晶性改質ポリカーボネートが、数平均分子量が3,000ないし20,000g/molであるエステル基を持つ非結晶性改質ポリカーボネートであり、前記固相重合した改質ポリカーボネートが、数平均分子量が15,000ないし200,000g/molであるポリエステル基を持つポリカーボネートであることを特徴とする請求項12に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記非結晶性改質ポリカーボネートは、重量平均分子量が10,000ないし30,000g/molであるシロキサン基を持つ非結晶性改質シロキサン系コポリカーボネートであり、前記固相重合された改質ポリカーボネートは、重量平均分子量が20,000ないし200,000g/molであるシロキサン基を持つ改質ポリカーボネートであることを特徴とする請求項13に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項15】
前記非結晶性改質ポリカーボネートは、界面重合工程で製造されたもの、ジアルキル(アリール)カーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応により製造されたもの、または、ジアルキル(アリール)カーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応及び縮合反応により製造されたものであることを特徴とする請求項12に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項16】
前記非結晶性改質ポリカーボネートをスプレイ結晶化する工程が、非結晶性改質ポリカーボネートを溶媒に溶かして溶液を製造する工程と、前記溶液をノズルを利用して噴射する工程と、前記噴射された溶液に高温ガスを接触させることによって溶媒を気化及び除去して結晶性ポリカーボネートを得る工程と、を含むことを特徴とする請求項13に記載の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−513594(P2008−513594A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533408(P2007−533408)
【出願日】平成17年11月5日(2005.11.5)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003737
【国際公開番号】WO2006/049466
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】