説明

スプレーガン

【課題】スプレーガンにおいて、引金が工具レスで分解できて細部まで洗浄できるし、分解時、紛失や落下の虞のある細かいピン等がないようにする。
【解決手段】本体部3の内部に設けられる第1流出口8を上方方向である閉塞側に弾性付勢される弁頭で閉塞する開閉弁4と、係合構造によって本体部3に係合され、下方回動させることで弁頭の上部を構成する弁尾を下方に押動させて第1流出口8を開放して流体を流出させる引金5とを有するスプレーガンにおいて、本体部3にピン15を一体的に設け、引金5にピン15を工具レスで着脱可能に収受する収受部23を設けて係合構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や気体といった流体を噴出(流出)するスプレーガンに関するものであり、食品機械や薬品機械といった常に洗浄を必要とする装置、機械、器具を洗浄する洗浄液の噴出用に用いて好適なスプレーガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置、機械、器具(以下、装置類)は細菌の繁殖を極端に嫌うことから、特に、使用後は念入りに洗浄する。この洗浄は洗浄液を被洗浄物に噴出して行うが、そのためには、噴出を制御するスプレーガンを必要とする。スプレーガンによる噴出の制御は、噴射口を開閉する開閉弁を押引するものであり、これを引金の操作で行うようにしている。この引金は、特許文献1に見られるように、ピンを中心に回動可能なレバー体(引金)を一方向(多くは戻す方向)に弾性付勢して設けたものであり、引金を手で引いて噴出口を開放している。
【0003】
これに伴い、この種の装置類を洗浄する洗浄液のスプレーガンも、使用後はスプレーガン自体を洗浄する必要がある。この洗浄を完全に行うためには、スプレーガンを分解する必要があるが、特に、引金についてはその分解が厄介である。引金を枢着するピンはスプレーガンの本体部にナット締め、ボルト締め或いはストップリングで止められているが、取り外すためには専用の工具を必要とする上に部品が細かいこともあって取外しに難渋する。加えて、取り外した部品が落下して紛失したり、装置や製造物に紛れ込むようなことがある。
【0004】
このため、引金については分解しないで洗浄することがある。そうすると、引金と本体部との隙間に汚れが溜まり、細菌が繁殖することがある。引金までを分解して洗浄するためには、引金の取外しが容易であることはもちろんのこと、紛失や紛れ込みの虞がある細かな部品に分離しないことである。先の特許文献1にも、分解が容易なスプレーガンが提案されているが、この先行例のものは、スプレーガンの噴出口部分を迅速に分解できるものであって、引金の分解については触れられておらず、従来どおりと推察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−347199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、引金の分解を工具等を使用しない(工具レス)でワンタッチで取り外せること、分解した部材にピンやビスといった細かい部品が含まれないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、本体部の内部に設けられる第1流出口を上方方向である閉塞側に弾性付勢される弁頭で閉塞する開閉弁と、係合構造によって本体部に係合され、下方回動させることで弁頭の上部を構成する弁尾を下方に押動させて第1流出口を開放して流体を流出させる引金とを有するスプレーガンにおいて、本体部にピンを一体的に設け、引金にピンを工具レスで着脱可能に収受する収受部を設けて係合構造としたことを特徴とするスプレーガンを提供したものである。
【0008】
また、本発明は、以上の作業箱において、請求項2に記載した、収受部が引金の所定部位に開口している導入部を有しており、導入部から収受部までのピンの取込みが引金のワンタッチ操作で行われる手段、請求項3に記載した、引金が、弁尾で押圧される作用部と、作用部の後端から斜め下方に延びる握り部とで構成される手段、請求項4に記載した、本体部に対して握り部を握り込んで第1流出口を開放したとき、握り部の当該位置を保持する止め金を本体部に設けた手段、請求項5に記載した、本体部、開閉弁及び引金がステンレスで構成される手段を提供する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によると、スプレーガンは本体部と引金の二部品で着脱可能に構成されているから、引金を取り外すことで両者を細部まで洗浄できる。また、引金を係合するピンは本体部に一体的に設けられているから、落下や紛失の虞がない。さらに、本体部と引金の着脱は工具レスでできるから、簡便で即座にできる。
【0010】
請求項2の構成によると、引金の着脱がワンタッチ操作でできるから、簡単で迅速である。請求項3の構成によると、引金の絞り操作が容易であり、これに伴って噴出量の細かな調整ができる。請求項4の構成によると、引金から手を離していても、噴出状態を保てる。請求項5の手段によると、錆の発生しない衛生的なものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スプレーガンの断面側面図である。
【図2】スプレーガンの断面側面図である。
【図3】第1噴射口の要部の断面側面図である。
【図4】スプレーガンの要部の断面側面図である。
【図5】図1のA−A断面図である。
【図6】スプレーガンの要部の他の実施例の断面側面図である。
【図7】スプレーガンの要部の他の実施例の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1及び図2はスプレーガンの断面側面図であるが、スプレーガンは、直立した本体部1と、第1本体部1の上部から斜め上方に分岐する第2本体部2とで逆くの字状に形成された本体部3、及び第1本体部1の中に上下にスライド可能に挿入されて上端が覗く開閉弁4と、開閉弁4の上方に設けられる引金5とからなる。そして、これら本体部3、開閉弁4及び引金は錆の発生しないステンレスで構成して衛生面を保っている。なお、図示は省略するが、第1本体部1の下部には洗浄液管をカプラ6で接続している。
【0013】
第1本体部1の内部は空洞7に形成されており、第2本体部2の下方位置辺りの空洞7の上部には径細のテーパ部を経て空洞7の径よりも小さい径のストレートな狭窄部8が形成され、狭窄部8の上方から同じく空洞9が形成された第2本体部2が分岐している。この場合の狭窄部8は第1本体部1の内部に形成された第1流出口8を構成していることになる。開閉弁4は、第1流出口8の下方に位置する弁頭10と、第1本体部1の上方に覗く弁尾11とを有する弁棒であり、第1本体部1の空洞7内に設けられるスプリング12で常時上方に弾性付勢されているものである。
【0014】
弁頭10は、下方から第1流出口8の径よりも大きな径を有する径大部10a、第1流出口8の内周に沿うストレート部10b、ストレート部10bから連続して上方が径細のテーパ部10cとからなっており、径大部10aとストレート部10bとの間に第1流出口8の径よりも大きな径を有するOリング13を保持しているものである。したがって、開閉弁4がスプリング12で上方に(閉塞側に)弾発されているときには、Oリング13が第1流出口8で閉塞している。
【0015】
第2本体部2の上部にはブラケット14が突設されており、このブラケット14にピン15を水平に突設してこのピン15を回動中心として引金5が設けられている。引金5は、その裏面に開閉弁4の弁尾11が押当している作用部16と、作用部16から斜め下方に延びる握り部17とでへの字状に形成されたものである。なお、引金5のこの形態は開閉弁4の長さを調整することで設定されている。
【0016】
そこで、第1本体部1に対して握り部17を手で握り込むと(絞り込むと)、作用部16は弁尾11を押し下げ、弁頭10を第1流出口8から離してここを開放する。すると、第1本体部1の空洞7内の洗浄液は第2本体部2の先端に設けられた第2噴出口18から噴出される。このことから、第2噴出口18から噴出される洗浄液は握り部17(引金5)の絞り量に対応するものとなり、閉塞から全開まで無断階で調整できることになる。
【0017】
この場合、握り部17の握りストロークに比べて作用部16が弁尾11を押し下げるストロークは小さくなっているから、弁頭10が第1噴射口8を開放して洗浄液を流通させる量を引金5の大きなストロークで細かく調整できることになり、調整能力が高い。なお、第2噴出口18にはノズル19とフィルター20とが設けられている。また、握り部17を最大に握って目一杯の噴射状態を保つために、握り部17をその位置で保持する止金21が第1本体部1に設けられている。この状態にしておけば、引金5から手を離しても噴出でき、別の作業もできる。
【0018】
図3は引金5を最大に引いたときの第1流出口8と弁頭10との関係を示す要部の断面側面図であるが、引金5を緩めたときには、弁頭9のストレート部10bとテーパ部10cとが第1噴射口8の中に入り込み、その下に設けられているOリング13が第1流出口8の入口を塞いでいる。そして、引金5を一杯に引いたときには、弁頭10の上端が第1流出口8の入口の位置かその下方まで降下している。この場合の弁頭10のテーパ部10cは、引金5をある程度引いた場合でも、洗浄液の流量が十分に確保できるのに寄与している。
【0019】
本発明は、ピン15と引金5との係合構成に関するものであり、図4は第1実施例の要部の断面側面図であるが、引金5には、前端に開口し、後方に水平に延びてピン15が通過できる高さを有する導入部22と、導入部22の後端から下方にピン15全体がほぼ落ち込む(没入する)収受部23が形成されている。したがって、引金5を本体部3に装着するには、開閉弁4を押えた状態で(作用部16で弁尾11を押し下げた状態で)導入部22にピン15を銜え込み、そのまま前方に押してピン15が収受部23に来た位置で押えを解くと、スプリング12の作用でピン15は収受部23に入り込む。
【0020】
この状態は、スプリング12で引金5を上方に弾発した状態であるから、握り部17を握り込んで開閉弁4を押し下げても引金5は外れることはない。図5は図1のA−A断面図であるが、作用部15の両側には壁24を垂らせており、この両方の壁24に導入部22や収受部23をそれぞれ形成している。したがって、ピン15はブラケット14から左右に突設して導入部22や収受部23に係合しており、壁24はブラケット14を挟んでいて安定が強化されている。
【0021】
一方、引金5を本体部2から外すときも、作用部16を押し下げてピン15を収受部23から導入部22まで浮かせてそのまま後方に滑らすと、ピン15は導入部22から外れて分解できる。したがって、この取付け、取外しがワンタッチによる一連の動作ででき、操作が簡単、迅速であるとともに、工具も必要としない。この場合、引金5がへの字状をしていることは、これらの操作のときに力を入り易いという効果を有している。
【0022】
加えて、分解した後は、本体部3と引金5だけになり、細かいピン15等は単独では存在しない。この点で、ピン15は本体部3と一体成形又は溶接等で一体に成形されるのが好ましいといえる。ピン15は本体部3に対して抜けることのない緊嵌の状態にしてもよいが、嵌合孔の中に細菌等が入り込む虞があるから、これを避けるためである(この点で、一体とはこの孔を塞ぐ意味でもある)。なお、分解した後は本体部3と引金5をそれぞれ洗浄し、洗浄後は再度組み付けることになる。
【0023】
図6は本体部3(ピン15)と引金5との係合構成の第2実施例を示す要部の断面側面図であるが、本例のものは、導入部22と収受部23を側面視で凹陥形状にしたものであり、上方が導入部22、下方の凹陥底が収受部23ということになる。引金5の装着は、導入部22の前端をピン15の下側にあてがい、作用部16を弁尾11に当てて握り部17を下側に回動させればよく、取外しはこの逆の操作をすればよい。
【0024】
図7は第3実施例を示す同じく要部の断面側面図であるが、本例のものは、収受部23が存在する部分の斜め下後方に開口する導入部22と導入部22から斜め上方前側に延びて下方に陥没する収受部23を設けたものである。引金5をピン15に装着するには、作用部16で弁尾11を押し下げて導入部22にピン15を銜え込み、そのまま後方に引いて握り部17を上方に回動させると、ピン15は収受部23に入り込む。また、取外しはこれと逆の操作をすることになる。
【0025】
これら三つの実施例に共通していることは、引金5のワンタッチ操作で着脱できることであり、これにおいて工具等を必要としない工具レスで操作できるということである。そして、このスプレーガンは食品機械等を洗浄する洗浄液に適用されることから、本体部4、開閉弁4及び引金5を始めとするすべての部材をステンレスで構成している。錆が発生せず、衛生的であるからであるが、見た目も清潔に見えるのも理由の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上は、使用後、分解して洗浄する必要のある食品機械や薬品機械を洗浄する洗浄液のスプレーガンについてのものであるが、本発明は、これに限らない。具体的には塗装液を噴出するスプレーガンや農薬や殺虫剤を散布するスプレーガンにも適用できる。これらスプレーガンも、使用後にそのままにしておくと、固体分がこびり付いたり、次の噴射液と混ざったりする。
【0027】
このため、洗浄することになるが、面倒なこともあって、普通は引金までは分解して洗浄しない。これらのスプレーガンでも、引金を分解して洗浄することは、その機能を保持すると同時にその周辺全体が洗浄できて好ましいのはいうまでもない。さらに、噴出するのは液体に限らず気体であってもよい。具体的には高圧空気を噴出して汚れを落としたりするスプレーガンであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 第1本体部
2 第2本体部
3 本体部
4 開閉弁
5 引金
6 カプラ
7 空洞
8 狭窄部(第1流出口)
9 空洞
10 弁頭
10a径大部
10bストレート部
10cテーパ部
11 弁尾
12 スプリング
13 Oリング
14 ブラケット
15 ピン
16 引金の作用部
17 引金の握り部
18 第2噴出口
19 ノズル
20 フィルター
21 止金
22 導入部
23 収受部
24 引金の壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部の内部に設けられる第1流出口を上方方向である閉塞側に弾性付勢される弁頭で閉塞する開閉弁と、係合構造によって本体部に係合され、下方回動させることで弁頭の上部を構成する弁尾を下方に押動させて第1流出口を開放して流体を流出させる引金とを有するスプレーガンにおいて、本体部にピンを一体的に設け、引金にピンを工具レスで着脱可能に収受する収受部を設けて係合構造としたことを特徴とするスプレーガン。
【請求項2】
収受部が引金の所定部位に開口している導入部を有しており、導入部から収受部までのピンの取込みが引金のワンタッチ操作で行われる請求項1のスプレーガン。
【請求項3】
引金が、弁尾で押圧される作用部と、作用部の後端から斜め下方に延びる握り部とで構成される請求項1又は2のスプレーガン。
【請求項4】
本体部に対して握り部を握り込んで第1流出口を開放したとき、握り部の当該位置を保持する止金を本体部に設けた請求項3のスプレーガン。
【請求項5】
本体部、開閉弁及び引金がステンレスで構成される請求項1〜4いずれかのスプレーガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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