説明

スプレー塗布用メタルマスクおよびこのマスクを用いた薄膜作製方法

【課題】スプレー工程時にマスク表面に付着した塗布液が、パターン形成用孔の内壁を伝ってマスクと被塗布物との間に流れ込むことを効率的に防止し得るスプレー塗布用メタルマスクを提供すること。
【解決手段】被塗布物の表面に当接する被塗布物当接面10Aおよびこれとは反対側の塗布液付着面10Bを有するマスク本体10と、上記各面10A,10Bとを連通するようにマスク本体10に設けられた少なくとも1個のパターン形成用孔40とを備え、当該孔40の被塗布物当接面10A側の開口端周囲には、マスク本体10と被塗装物との間に所望の隙間を形成するための凹部が設けられ、パターン形成用孔40の内壁41には、塗布液付着面10Bに付着した塗布液が当該付着面10Bから流れ落ちて被塗布物当接面10Aまで到達することを防ぐ内壁41を周回する溝43が1つ以上設けられたスプレー塗布用メタルマスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー塗布用メタルマスクおよびこのマスクを用いた薄膜作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーやオリゴマー等の有機化合物、無機化合物、および有機無機ハイブリッド材料は、電子デバイス材料中において、絶縁膜、電荷輸送性膜、保護膜および平坦化膜などの各種薄膜として使用されることが多い。
これらの薄膜を作製するためのプロセスは、真空蒸着法などに代表されるドライプロセスと、スピンコート法に代表されるウェットプロセスとに大別できる。
ドライプロセスとウェットプロセスとを比較した場合、ウェットプロセスで作製した薄膜の方が、ITO、IZOや、フィルムなどに代表される基材を被覆する能力が高く、基材表面の異物などを一様の膜厚で均一に被膜することができる。このため、ウェットプロセスは、大面積の電子デバイスを安価で、かつ、高い歩留まりで製造できる方法であり、優位性が高い。
【0003】
このウェットプロセスとしては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法、スプレー法などが、従来汎用されている。
スピンコート法や、印刷法によって薄膜を作製する場合、薄膜の作製に要する薬液量に対する廃棄薬液量の割合が非常に多く、コストパフォーマンスが悪い。
一方、スプレー法やインクジェット法は高効率で薄膜を作製することが可能であり、特に、装置の汎用性、メンテナンスの簡便性、ヘッドの薬液種依存性の低さから、スプレー法が大面積のデバイスを作製できるウェットプロセスとして有効である。
【0004】
これまで、本発明者らは有機エレクトロルミネッセンス素子に好適な電荷輸送性薄膜を見出し(例えば、特許文献1参照)、各電子デバイスに対応した電荷輸送性薄膜をウェットプロセスで作製するための技術を構築し(例えば、特許文献2参照)、特に、スプレー法に最適な電荷輸送性ワニスの検討を継続している。
ところで、スプレー法を実ラインに導入して薄膜を作製するためには、スプレー法に適したワニスおよび基材を試行錯誤して選択することに加え、薄膜を特定の位置にパターン化できることが要求される。この要求を満たすべく、基材に形成するパターンに応じたパターン形成用孔が設けられた各種メタルマスクが開発され、これらが利用されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0005】
メタルマスクを用いたスプレー工程では、薄膜を作製する基材の上にメタルマスクを載置し、薄膜形成用の塗布液をスプレーして基材上にパターンを形成した後、メタルマスクを取り除き、基材を焼成することが一般的である。
スプレー工程において噴霧されたワニスは、パターン形成用孔を通って基材に塗布されるだけでなく、メタルマスク表面にもウェット状態で付着する。このワニスが付着したメタルマスクを繰り返して使用すると、付着したワニスがパターン形成用孔の内壁を流れ落ちてマスクと基材の間に流れ込み、正確なパターンが作製できなくなる可能性がある。
したがって、目的とするパターンを、正確に、かつ、欠陥無く基材上に形成するためには、スプレー工程が終了するたびに、メタルマスクを交換または洗浄することが理想的である。
【0006】
しかし、スプレー工程毎にメタルマスクを交換したり、洗浄したりすることは、ラインのランニングコストおよびランニングタイムを悪化させるうえに、電子デバイスを作製する際の歩留まりの低下につながることから、現実的ではない。
【特許文献1】特開2002−151272号公報
【特許文献2】特開2005−108828号公報
【特許文献3】特開2005−78892号公報
【特許文献4】特開2006−73276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スプレー工程時にマスク表面に付着した塗布液が、パターン形成用孔の内壁を伝ってマスクと被塗布物との間に流れ込むことを効率的に防止し得るスプレー塗布用メタルマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、被塗布物の表面に当接する被塗布物当接面およびこの面とは反対側の塗布液付着面を有するマスク本体と、被塗布物当接面と塗布液付着面とを連通してマスク本体に設けられた少なくとも1個のパターン形成用孔とを備えるメタルマスクにおいて、パターン形成用孔の内壁に、当該内壁を周回する溝を1つ以上設けることで、塗布液付着面に付着した塗布液が塗布液付着面から被塗布物当接面へ流れ落ちる過程で上記溝内に塗布液が流入するため、被塗布物当接面と被塗布物との間に浸入することを防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明に係るスプレー塗布用メタルマスクは、被塗布物の表面に当接する被塗布物当接面およびこの面とは反対側の塗布液付着面を有する板状のマスク本体と、被塗布物当接面と塗布液付着面とを連通してマスク本体に設けられた少なくとも1個のパターン形成用孔とを備え、パターン形成用孔の被塗布物当接面側の開口端周囲には、マスク本体と被塗装物との間に所望の隙間を形成する凹部が設けられ、かつ、パターン形成用孔の内壁には、塗布液付着面に付着した塗布液が当該塗布液付着面から流れ落ちて被塗布物当接面まで到達することを防ぐ、当該内壁を周回する溝が1つ以上設けられているものである。
【0010】
このように、パターン形成用孔の被塗布物当接面側の開口端周囲に凹部を設けることで、マスク本体と被塗布物との間に隙間が形成されるため、パターン形成用孔を通過して被塗布物に付着した塗布液が毛細管現象などにより被塗布物とマスク本体との間隙に浸入することを防ぐことができる。
さらに、パターン形成用孔の内壁に、この内壁を周回する溝を1つ以上設けることで、この溝が、内壁を流れ落ちる余剰の塗布液のトラップとして作用するため、メタルマスク表面(塗布液付着面)に付着した余剰の塗布液が拡散し、重力にしたがって内壁を伝って流れ落ちた場合でも、この塗布液が溝でトラップされるため、トラップの許容量内であれば、余剰塗布液が被塗布物当接面まで到達することを防ぐことができる。
これにより、同一のメタルマスクを繰り返し用いて、正確かつ欠陥のないパターンを複数回形成できるようになるため、薄膜作製プロセスにおいて、メタルマスクの洗浄回数を大幅に削減でき、プロセスのランニングコストおよびランニングタイムを大幅に改善することができる。
【0011】
本発明において、溝の断面形状は任意であり、断面が、V字状の溝、U字状の溝、凹溝(コ字状の溝)などの適宜な形状を採用可能であるが、トラップした塗布液の再流出を防止するためには凹溝が好適である。
また、溝の数は1本以上であればよいが、複数本とすることで余剰塗布液のトラップ効率が高まることから2本以上としてもよい。ただし複数本とした場合は、メタルマスクの製造コストが高くなるだけでなく、メタルマスクの洗浄や乾燥の手間が余計にかかるようになるため、これらのデメリットと余剰塗布液のトラップ効率(プロセスのランニングコストおよびランニングタイム)とを勘案して適宜な数に設定すればよい。通常の薄膜作製工程においては、1〜2本の溝で十分な効果が発揮される。
【0012】
さらに、溝の位置は、パターン形成用孔の被塗布物当接面側の開口端周囲に設けられた凹部の底面(使用状態では天井面)より上でメタルマスク表面(塗布液付着面)より下であれば任意であるが、マスク表面(塗布液付着面)からより遠い場所に位置する方がトラップの効率が高まるため、パターン形成用孔の内壁の上下方向(孔の連通方向)中央部から凹部の底面までの間に設けられていることが好ましい。
なお、溝が複数本形成されている場合は、少なくとも1本が、上記パターン形成用孔の内壁の上下方向中央部から凹部の底面までの間に設けられていればよい。
【0013】
溝の深さ方向は、被塗布物当接面と平行でも、深くなるにつれて被塗布物当接面に向かうものでもよいが、被塗布物当接面と平行であれば、余剰塗布液のトラップ効果が十分に発揮される。
したがって、溝の形成を含めたマスク製造工程の簡便化を図るため、溝の深さ方向は、被塗布物当接面と平行とすることが好ましい。
【0014】
一方、パターン形成用孔の被塗布物当接面側の開口端周囲に設けられる凹部は、例えば、上述した特許文献3に記載されるような、開口端周囲に段状部を設けたものなどが採用できるが、パターン形成用孔の被塗布物当接面側の端縁が直接被塗布物と接しないような構成の凹部であれば、その形状や大きさなどは任意である。
【0015】
本発明において、メタルマスクは、その全体を1つの部材で構成し、上述の溝や凹部を、エッチングや掘削などの公知の手法により形成してもよいが、エッチングや掘削による溝の加工は難しいため、少なくとも溝部については、複数の部材を積層して構成することが好適である。
このような構成としては、例えば、被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側のパターン形成用孔が形成された第1部材と、塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側のパターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の下面側の開口端周囲に段状部が形成された第2部材とを用い、第1部材の上面と第2部材の下面とを、それぞれのパターン形成用孔の中心(軸)が一致する態様で積層し、第2部材の段状部と第1部材の上面とで上述の溝を形成するものが挙げられる。
【0016】
また、被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側のパターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の上面側の開口端周囲に段状部が形成された第1部材と、塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側のパターン形成用孔が形成された第2部材とを用い、第1部材の上面と第2部材の下面とを、それぞれのパターン形成用孔の中心(軸)が一致する態様で積層し、第1部材の段状部と第2部材との下面とで上述の溝を形成するものが挙げられる。
【0017】
さらに、被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側のパターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の上面側の開口端周囲に第1の段状部が形成された第1部材と、塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側のパターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の下面側の開口端周囲に第2の段状部が形成された第2部材とを用い、第1部材の上面と第2部材の下面とを、それぞれのパターン形成用孔の中心が一致する態様で積層し、第1の段状部と第2の段状部とで上述の溝を形成するものが挙げられる。
【0018】
これら3つの構成では、積層される2つの部材のいずれか一方または双方における、両部材の境界面に段状部を設けて溝を形成するものであり、このようにすることで、各部材を積層してメタルマスクを製造すると同時に溝が形成される結果、微細な溝加工が不要となり、マスクの製造工程が簡便になる。
なお、これらの場合、第1部材のパターン形成用孔の被塗布物当接面側の開口端周囲には、マスク部材の凹部に相当する段状部などが形成されている。
【0019】
さらに、上述した溝に加え、凹部についても複数部材の積層で構成することもできる。
このような構成としては、例えば、被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側のパターン形成用孔が形成された第1部材と、塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側のパターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の下面側の開口端周囲に段状部が形成された第2部材と、第1部材当接面および第2部材当接面を有し、中間部のパターン形成用孔が形成された第3部材とを用い、第1部材のパターン形成用孔の孔径を第2および第3部材のパターン形成用孔の孔径よりも大きくし、これらの第1部材、第2部材および第3部材を、第1部材の上面と第2部材の下面とが第3部材に接する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔の中心(軸)が一致する態様で積層し、第2部材の段状部と第3部材の第2部材当接面とで溝を形成し、さらに第1部材のパターン形成用孔と第3部材の第1部材当接面とで凹部を形成するものが挙げられる。
【0020】
また、被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側のパターン形成用孔が形成された第1部材と、塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側のパターン形成用孔が形成された第2部材と、第1部材当接面および第2部材当接面を有し、中間部のパターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の第2部材当接面側の開口端周囲に段状部が形成された第3部材とを用い、第1部材のパターン形成用孔の孔径を第2および第3部材のパターン形成用孔の孔径よりも大きくし、これらの第1部材、第2部材および第3部材を、第1部材の上面と第2部材の下面とが第3部材に接する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔の中心(軸)が一致する態様で積層し、第3部材の段状部と第2部材の下面とで溝を形成し、さらに第1部材のパターン形成用孔と第3部材の第1部材当接面とで凹部を形成するものが挙げられる。
【0021】
これら2つの構成では、第2部材および第3部材のいずれか一方のパターン形成用孔における、両部材の境界面に段状部を設けて溝を形成するとともに、第1部材のパターン形成用孔と第3部材の第1部材当接面とで凹部を形成するものであり、この場合も、各部材を積層してメタルマスクを製造すると同時に溝が形成される結果、微細な溝加工が不要となり、マスクの製造工程が簡便になる。
なお、これらの構成では、第2部材および第3部材のいずれか一方のパターン形成用孔における、両部材の境界面に段状部を設けていたが、双方に段状部を設けて幅の広い溝を形成することもできる。
【0022】
そして、溝および凹部の双方を複数部材で構成してもよい。
このような構成としては、例えば、被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側のパターン形成用孔が形成された第1部材と、塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側のパターン形成用孔が形成された第2部材と、第1部材当接面および第2部材当接面を有し、中間部のパターン形成用孔が形成されるとともに、第2部材側に位置する上側部材と、第1部材側に位置する下側部材とからなる第3部材と、を用い、この上側部材のパターン形成用孔の孔径を、第2部材のパターン形成用孔および下側部材のパターン形成用孔のそれぞれの孔径よりも小さくし、かつ、第1部材のパターン形成用孔の孔径を、下側部材のパターン形成用孔の孔径よりも大きくし、これら第1部材、第2部材および第3部材を、第1部材の上面と第2部材の下面とが第3部材に接する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔の中心が一致する態様で積層するものが挙げられる。
この構成では、第2部材の下面と、上側部材のパターン形成用孔と、下側部材の上面とで溝が構成され、第1部材のパターン形成用孔と第3部材の第1部材当接面とで凹部が構成されることになる。
この場合も、各部材を積層してメタルマスクを製造すると同時に溝および凹部が形成される結果、微細な溝および凹部の加工が不要となり、マスクの製造工程が簡便になる。
【0023】
以上で説明した複数部材を積層するタイプのメタルマスクは、各部材を熱圧着などの公知の方法で積層一体化して作製することができる。
また、各部材の有する段状部は、エッチングや掘削などの公知の方法で形成すればよい。
【0024】
本発明のメタルマスクを構成する金属は、使用する塗布液に応じて従来公知のものから適宜選択して用いればよい。
メタルマスクの材質としては、磁性材料、非磁性材料があるが、スプレー塗布装置の被塗布物(基材)設置ステージを磁性材料で構成し、メタルマスクとステージとで被塗布物を挟み込んで固定することでアライン工程を無くし、ラインのスループット向上および歩留まりの向上を図るためには、メタルマスクも磁性材料を含むものが好ましい。
この場合、メタルマスクの磁力の強弱は、スプレー塗布装置のステージの材質を考慮した上で、スプレー塗布中にメタルマスクが被塗布物からずれない強さに設定すればよい。
【0025】
メタルマスクの構成として、上述の積層型を採用した場合、2層積層型では、第1部材および第2部材の双方またはいずれか一方を磁性材料から構成することができ、基材設置ステージの性質に応じた磁力の調節が容易に行える。
また、3層積層型では、第1部材、第2部材および第3部材の少なくとも1つを磁性材料から構成することができ、この場合も基材設置ステージの材質に応じた磁力の調節が容易に行える。
特に、被塗布物をしっかりと固定した上で、スプレー塗布中のマスクのずれを効率的に防止するためには、少なくとも第1部材を磁性材料から構成することが好ましい。
【0026】
メタルマスクを構成する非磁性材料の具体例としては、SUS201、SUS202、SUS301、SUS301J、SUS302、SUS302B、SUS303、SUS303Se、SUS304、SUS304L、SUS304N1、SUS304N2、SUS304LN、SUS304J1、SUS304J2、SUS304J3、SUS305、SUS305J1、SUS309S、SUS310S、SUS316、SUS316L、SUS316N、SUS316LN、SUS316Ti、SUS316J1、SUS316J1L。SUS317、SUS317L、SUS317LN、SUS317J1、SUS317J2、SUS317J3L、SUS317J4L、SUS317J5L、SUS321、SUS347、SUS384、SUS329J1、SUS329J3L、SUS329J4L、SUS403、SUS410、SUS410S、SUS410F2、SUS410J1、SUS431、SUS416、SUS420F、SUS420F2、SUS429J1、SUS405、SUS410L、SUS429、SUS430、SUS430F、SUS430LX、SUS430J1L、SUS434、SUS436L、SUS436J1L、SUS444、SUS447J1、SUS440A、SUS440B、SUS440C、SUS440F、SUS420J1、SUS420J2、SUS630、SUS631、SUS631J、SUS632J1、SUSXM7、SUSXM15J1、SUSXM27などが挙げられる。
【0027】
一方、磁性材料の具体例としては、SUS403、SUS410、SUS410S、SUS410F2、SUS410J1、SUS431、SUS416、SUS420F、SUS420F2、SUS429J1、SUS405、SUS410L、SUS429、SUS430、SUS430F、SUS430LX、SUS430J1L、SUS434、SUS436L、SUS436J1L、SUS444、SUS447J1、SUS440A、SUS440B、SUS440C、SUS440F、SUS420J1、SUS420J2、SUSXM27などが挙げられる。
【0028】
以上で説明したスプレー塗布用メタルマスクを、被塗布物当接面が被塗布物に接する態様で被塗布物上に載置し、パターン形成用孔を通して被塗布物表面に、電荷輸送性ワニスなどの薄膜形成用塗布液をスプレー塗布することで各種機能性薄膜を形成することができる。
ここで機能性薄膜とは、導電率、誘電率、透明性、仕事関数、光学特性、耐熱性、耐溶剤性等の種々の要求特性を満足する機能が付与された1〜1000nm程度の厚みを有する膜である。
【0029】
使用する被塗布物(基材)は、例えば、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄および乾燥を予め行って浄化しておき、使用直前にオゾン処理、酸素−プラズマ処理、エキシマ−UV処理などの表面処理を行うことが好ましい。なお、被塗布物(基材)が有機物を主成分とする場合、表面処理は施さなくともよい。
洗浄・表面処理した被塗布物(基材)表面に、薄膜形成用塗布液をスプレー塗布する工程は、スプレー装置内への被塗布物(基材)の導入、被塗布物(基材)上へのメタルマスク載置、スプレー塗布の一連の工程から構成される。この場合、スプレー塗布装置内の環境、スプレーヘッドのスペック、およびスプレー条件などのパラメータは、最適な薄膜パターンおよび成膜面を作製できるように調節・設定すればよい。なお、スプレー条件としては、スプレーヘッドが被塗布物(基材)をスキャンする移動範囲、ピッチ、ステージからヘッドまでの距離、スキャン速度、塗布液量、エア量、塗布待機時間、タンク内圧安定時間などが挙げられる。
【0030】
スプレー塗布後、塗布液をレベリングし、続いて塗布液が塗布された基材を焼成し、乾燥する。
レベリングは、大気雰囲気下や窒素雰囲気下などの適切な雰囲気下で行われる。
焼成は、例えば、ホットプレート、プロキシミティホットプレート、オーブンなどを用い、大気雰囲気下、窒素等の不活性ガス雰囲気下、または真空中で行われる。この場合、焼成温度は、溶媒を蒸発させることができれば特に限定されないが、40〜250℃で行うことが好ましい。なお、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよい。
【0031】
上記レベリング・焼成工程には、ラインのプロセス上、メタルマスクの除去工程が含まれる。
メタルマスクは、レベリングした後に除去しても、基材の乾燥が終了した後に除去してもよいが、基材乾燥後に除去する場合、メタルマスクに固形物が付着するため、レベリング後にメタルマスクを除去する順序が好ましい。
【0032】
本発明のメタルマスクは、上述したように、パターン形成用孔の被塗布物当接面側の開口端周囲にマスク本体と被塗装物との間に所望の隙間を形成する凹部を有するとともに、パターン形成用孔の内壁には、塗布液付着面に付着した塗布液が当該塗布液付着面から流れ落ちて被塗布物当接面まで到達することを防ぐ当該内壁を周回する溝を有しているため、溝が流れ落ちる塗布液をトラップできる限りは、メタルマスクを洗浄・交換することなく、連続して使用することができる。
複数回の繰り返し使用後、メタルマスクに付着する塗布液が溝のトラップ許容量を超える直前に、従来同様、メタルマスクの洗浄・乾燥工程を行えばよい。
【0033】
このメタルマスクの洗浄・乾燥工程は、メタルマスクに付着した塗布液を除去して清浄化した後、完全に乾燥させる工程である。
メタルマスクの洗浄処理は有機溶剤や水を用いて行われる。有機溶剤としては、メタルマスクに付着した塗布液や固形分を溶解・除去できるものであればよく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を用いることができる。中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、イソプロピルアルコールが好ましい。なお、有機溶剤で洗浄した後に、さらに洗剤、純水等で洗浄してもよい。
メタルマスクの乾燥は、完全に乾燥できれば限定されないが、エアや窒素気流で乾燥したり、オーブン等で熱をかけて乾燥したりしてもよい。
【0034】
本発明のメタルマスクは、各種機能性薄膜の成膜に使用することができ、例えば、コンデンサ電極保護膜、帯電防止膜、ガスセンサ、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、光センサ、放射線センサ、イオンセンサ、バイオセンサ、フィールドエミッショントランジスタセンサ等に利用される有機膜;一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、ポリマー電池に利用される有機膜;電磁シールド膜、紫外線吸収膜、ガスバリア膜、光情報記録媒体、光集積回路に利用される有機膜などの成膜に使用することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のメタルマスクによれば、メタルマスクの洗浄工程において洗浄回数を大幅に減らした場合でも、作製される薄膜パターンの欠陥が生じにくいため、良好な薄膜パターンを効率的に作製することが可能となる。
これにより、メタルマスクを利用する電子デバイスの作製ラインのランニングコストの低減化およびランニングタイムの短縮化を図ることができる。
ITO、IZOおよびフィルムなどの被塗布物(基材)に本発明のメタルマスクを使用することで、薄膜パターンの作製が必要な種々の電子デバイスのプロセスマージンを拡大できる。例えば、有機ELにおけるパッシブマトリクスまたはアクティブマトリクスなどの、塗布面および非塗布面の明確な区別が必要な電子デバイスを作製する場合、歩留まりが向上する等、多大な効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るメタルマスク1は、図1〜3に示されるように、被塗布物である基材90の表面91に当接する被塗布物当接面10Aおよびこれとは反対側の塗布液付着面10Bを有するマスク本体10と、被塗布物当接面10Aと塗布液付着面10Bとを連通してマスク本体10に設けられた、平面視矩形状の4つのパターン形成用孔40とを備えて構成されている。
パターン形成用孔40の被塗布物当接面10A側の開口端周囲40Aには、マスク本体10と基材90との間に、所定幅の隙間を形成する凹部42が設けられている(図2(b)、図3参照)。
また、パターン形成用孔40の内壁41には、塗布液付着面10Bに付着した塗布液が塗布液付着面10Bから流れ落ちて被塗布物当接面10Aまで到達することを防ぐ当該内壁41を周回する断面コ字状の溝43が、内壁41の上下方向Dの略中央部に1つ設けられている(図1、図3参照)。溝43の深さ方向は、メタルマスク1の被塗布物当接面10Aおよび塗布液付着面10Bと平行となっている。
【0037】
本実施形態のメタルマスク1は、被塗布物当接面10Aおよび上面11Aを有し、被塗布物当接面10A側のパターン形成用孔11Cが形成された、磁性材料製(SUS430製)の第1部材11と、塗布液付着面10Bおよび下面12Aを有し、塗布液付着面側10B側のパターン形成用孔12Cが形成された、磁性材料製(SUS430製)の第2部材12とを備えている(図3参照)。
【0038】
これら第1部材11と第2部材12とは、第1部材11の上面11Aと第2部材12の下面12Aとが相対する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔11C,12Cの中心(軸)が一致する態様で積層され、熱圧着されて一体化されている。
ここで、第2部材12は、そのパターン形成用孔12Cの下面12A側の開口端周囲に、エッチング等により段状部12Bが形成されている。このため、第1部材11および第2部材12が積層されることにより、第2部材12の段状部12Bと第1部材11の上面11Aとで溝43が構成されることになる。
【0039】
また、第1部材11におけるパターン形成用孔11Cの被塗布物当接面10A側の開口端周囲には、同じくエッチング等により段状部11Bが形成されている。この第1部材11の段状部11Bは、上述したマスク本体10と基材90との間に隙間を形成する凹部42を兼ねている。
【0040】
本実施形態において、メタルマスク1は、図2に示されるように、平面視で一片の長さd1=50mmの正方形であり、パターン形成用孔40の開口部の寸法はd2=d3=15mmである。
また、溝43および凹部42の寸法は、図3に示されるように、x1=x2=x3=x4=2mm、y2=y5=y4=y6=50μmである。y1およびy3は150μmである。
【0041】
以上のように構成されたメタルマスク1を用いたスプレー塗布方法の一例を、図4を参照しながら説明する。
まず、スプレー装置(図示省略)内に、表面処理を施した基材90を導入し、この基材90の上に、メタルマスク1を載置する。
この状態で、薬液タンク101およびスプレーヘッド102を備えた薬液噴射装置100から、薄膜形成用塗布液である電荷輸送性ワニス110(以下、ワニス110という)を噴霧する。噴霧されたワニス110は、メタルマスク1のパターン形成用孔40を通過して基材90上に付着する。続いて、付着したワニス110をレベリングし、メタルマスク1を基材90上から取り除いた後、ワニス110が塗布された基材90を焼成、乾燥し、パターン120が形成される。
【0042】
ここで、スプレーヘッド102から噴霧されたワニス110は、パターン形成用孔40を通過して基材90上に付着するだけでなく、メタルマスク1の塗布液付着面10Bや、パターン形成用孔40の内壁41にも付着してしまう。これら余剰のワニス110Aは、メタルマスク1の表面を拡散し、重力にしたがって上記内壁41を伝って、被塗布物当接面10A側に流れ落ちることになるが、流れ落ちる途中で、当該余剰ワニス110Aはメタルマスク1の溝43でトラップされる。このため、溝43のトラップ許容量内であれば、余剰ワニス110Aの基材90への到達が防止される。
【0043】
また、メタルマスク1における被塗布物当接面10A側のパターン形成用孔40の開口端周縁には凹部42が設けられているため、メタルマスク1と基材90との間に隙間が形成されている。このため、基材90に付着したワニス110が、毛細管現象などにより基材90とメタルマスク1との間隙に浸入することを防ぐことができる。
したがって、上記溝43のトラップ許容範囲内であれば、メタルマスク1を洗浄、交換することなく、繰り返し使用して薄膜を作製することが可能となる。
【0044】
[第2実施形態]
図5には、本発明の第2実施形態に係るメタルマスク2が示されている。なお、以下の説明においては、第1実施形態と同一の部材・構成については同一符号を付すのみで、その説明を省略する。
メタルマスク2は、被塗布物当接面20Aおよび上面21Aを有し、被塗布物当接面20A側のパターン形成用孔21Cが形成された第1部材21と、塗布液付着面20Bおよび下面22Aを有し、塗布液付着面側20B側のパターン形成用孔22Cが形成された第2部材22とが、第1部材21の上面21Aと第2部材22の下面22Aとが相対する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔21C,22Cの中心(軸)が一致する態様で積層され、熱圧着されて一体化されている。これにより、第2部材22の段状部22Bと第1部材21の上面21Aとで溝43が構成される。
【0045】
なお、メタルマスク2では、第1部材21の厚みがメタルマスク1のそれよりも厚く、第2部材22の厚みがメタルマスク1のそれよりも薄く構成されており、溝43の位置が、内壁41の上下方向Dの中央部よりも塗布液付着面20B側に位置している以外は、上記第1実施形態のメタルマスク1の構成と同一である。
具体的な寸法は、x1=x2=x3=x4=2mm、y1=y2=y4=150μm、y3=250μmである。
【0046】
[第3実施形態]
図6には、本発明の第3実施形態に係るメタルマスク3が示されている。なお、以下の説明においては、第1実施形態と同一の部材・構成については同一符号を付すのみで、その説明を省略する。
メタルマスク3は、被塗布物当接面30Aおよび上面31Aを有し、被塗布物当接面30A側のパターン形成用孔31Cが形成された第1部材31と、塗布液付着面30Bおよび下面32Aを有し、塗布液付着面側30B側のパターン形成用孔32Cが形成された第2部材32とが、第1部材31の上面31Aと第2部材32の下面32Aとが相対する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔31C,32Cの中心(軸)が一致する態様で積層され、熱圧着されて一体化されている。これにより、第2部材32の段状部32Bと第1部材31の上面31Aとで溝43が構成される。
【0047】
なお、メタルマスク3では、第1部材31の厚みがメタルマスク1のそれよりも薄く、第2部材32の厚みがメタルマスク1のそれよりも厚く構成されており、溝43の位置が、内壁41の上下方向Dの中央部よりも被塗布物当接面30A側に位置している以外は、上記第1実施形態のメタルマスク1の構成と同一である。
具体的な寸法は、x1=x2=x3=x4=2mm、y2=y3=y4=50μm、y1=250μmである。
【0048】
なお、本発明は上記各実施形態で説明したものに限られず、例えば、図7に示されるメタルマスク5(第4実施形態)や、図8に示されるメタルマスク6(第5実施形態)、および図9に示されるメタルマスク7(第6実施形態)のような構成とすることもできる。
第4実施形態に係るメタルマスク5は、図7に示されるように、被塗布物当接面50Aおよび上面51Aを有し、被塗布物当接面側のパターン形成用孔51Cが形成された第1部材51と、塗布液付着面50Bおよび下面52Aを有し、塗布液付着面50B側のパターン形成用孔52Cが形成された第2部材52と、を備えている。
【0049】
これら第1部材51と第2部材52とは、第1部材51の上面51Aと第2部材52の下面52Aとが相対する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔51C,52Cの中心(軸)が一致する態様で積層され、熱圧着されて一体化されている。
ここで、第1部材51は、そのパターン形成用孔51Cの上面51A側の開口端周囲に、エッチング等により段状部51Bが形成されている。このため、第1部材51および第2部材52が積層されることにより、第1部材51の段状部51Bと第2部材52の下面52Aとで溝43が構成されることになる。
【0050】
第5実施形態に係るメタルマスク6は、図8に示されるように、被塗布物当接面60Aおよび上面61Aを有し、被塗布物当接面60A側のパターン形成用孔61Cが形成された第1部材61と、塗布液付着面60Bおよび下面62Aを有し、塗布液付着面60B側のパターン形成用孔62Cが形成された第2部材と、第1部材当接面63Aおよび第2部材当接面63Bを有し、中間部のパターン形成用孔63Cが形成された磁性材料製(SUS430製)の第3部材63と、を備えている。ここで、第1部材61のパターン形成用孔61Cの孔径は、第2部材62および第3部材63のパターン形成用孔62C,63Cの孔径よりも大きくされている。
【0051】
これら第1部材61、第2部材62および第3部材63は、第1部材61の上面61Aと第2部材62の下面62Aとが第3部材63に接する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔61C,62C,63Cの中心(軸)が一致する態様で積層され、熱圧着されて一体化されている。
ここで、第2部材62は、そのパターン形成用孔62Cの下面62A側の開口端周囲に、エッチング等により段状部62Bが形成されている。このため、第2部材62および第3部材63が積層されることにより、第2部材62の段状部62Bと第3部材63の第2部材当接面63Bとで溝43が構成されることになる。
また、第1部材61のパターン形成用孔61Cと第3部材63の第1部材当接面63Aとで凹部42が構成されることになる。
なお、このような構成において、第2部材ではなく、第3部材に段状部を形成してもよい。
【0052】
第6実施形態に係るメタルマスク7は、図9に示されるように、被塗布物当接面70Aおよび上面71Aを有し、被塗布物当接面70A側のパターン形成用孔71Cが形成された第1部材71と、塗布液付着面70Bおよび下面72Aを有し、塗布液付着面70B側のパターン形成用孔72Cが形成された第2部材72と、第1部材当接面73Aおよび第2部材当接面73Bを有し、中間部のパターン形成用孔73Cが形成されるとともに、第2部材72側に位置する上側部材731と、第1部材71側に位置する下側部材732とからなる磁性材料製(SUS430製)の第3部材73と、を備えている。
ここで、上側部材731のパターン形成用孔731Cの孔径は、第2部材72のパターン形成用孔72Cおよび下側部材732のパターン形成用孔732Cのそれぞれの孔径よりも小さくされている。
また、第1部材71のパターン形成用孔71Cの孔径は、下側部材732のパターン形成用孔732Cの孔径よりも大きくされている。
【0053】
これら第1部材71、第2部材72および第3部材73は、第1部材71の上面71Aと第2部材の下面72Aとが第3部材73に接する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔71C、72C、73Cの中心(軸)が一致する態様で積層され、熱圧着されて一体化されている。
これにより、第2部材72の下面72Aと、上側部材731のパターン形成用孔731Cと、下側部材732の上面732Aとで溝43が構成され、一方、第1部材71のパターン形成用孔71Cと第3部材73の第1部材当接面73Aとで凹部42が構成されることになる。
この場合、上側部材731のパターン形成用孔731Cと、第1部材71のパターン形成用孔71Cの孔径はそれぞれ同一とされているが、異なるものとすることもできる。
【0054】
また、上記各実施形態では、全ての部材が磁性材料であるSUS430製であるが、一部の部材のみを磁性材料としてもよく、全ての部材を非磁性材料としてもよい。磁性材料、非磁性材料については、上述したような任意の材料を採用できる。
さらに、溝43は1本とされていたが2本以上でもよい。溝43の深さ方向は、メタルマスク1〜7の被塗布物当接面10A,20A,30A,50A,60A,70Aと平行とされていたが、深くなるにつれて被塗布物当接面に向かう溝でもよく、溝の断面形状も、U字状などのその他の形状でもよい。
【0055】
また、溝43や、凹部42の寸法は、上述したものに限られるものではない。例えば、x1はx2と等しく、x3はx4と等しいことが好ましいが、x1およびx2は、x3およびx4と等しい必要はない。すなわち、x1、x2>x3、x4でも、x1、x2<x3、x4でもよい。
具体的な、x1、x2、x3およびx4の寸法は、メタルマスクの外寸にも依存するが、0.1〜100mmが好ましく、0.1〜10mmがより好ましく、特に0.1〜3mmが好ましい。
【0056】
また、y2はy5と等しく、y4はy6と等しいことが好ましいが、y2およびy5は、y4およびy6と等しい必要はない。すなわち、y2、y5>y4、y6でも良く、y2、y5<y4、y6でもよい。y1はy3と等しくても、等しくなくてもよい。
y1+y2+y3+y4は、強度の観点から200〜10000μmであることが好ましい。200μm未満であると、メタルマスクが折れ曲がり易くなり、正確な薄膜パターンが得られないことがある。また、メタルマスクの質量に制限がある場合があり、プロセスの観点からは200〜1000μmがより好ましい。
【0057】
その他、各部材を構成する具体的な材料や、形状・構造等は、上記説明のものに限定されず、本発明の目的を達成できる限りにおいて、適宜変更することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実験例および比較実験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実験例に限定されるものではない。なお、実験例で用いた各装置は以下のとおりである。
【0059】
[スプレー塗布装置]
株式会社藤森技術研究所製 NVDコーティング装置 NVD−200を使用した。基材を設置するステージの材質にはSUS430を使用した。
[UV−O3洗浄装置]
株式会社テクノビジョン製 UV−O3洗浄システム Model208を使用した。
[接触角測定装置]
協和界面科学株式会社製 全自動接触角計 CA−W型を使用した。
[光学顕微鏡]
株式会社Nikon製 ECLIPSE E600 POLを使用した。
【0060】
[参考例1]電荷輸送性ワニスAの調製
ブレティン・オブ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bulletin of Chemical Society of Japan)、1994年、第67巻、p.1749−1752に従って、p−ヒドロキシジフェニルアミンとp−フェニレンジアミンとから、式(1)に示すフェニルテトラアニリン(以下PTAと略す)を合成した(収率85%)。
【0061】
【化1】

【0062】
上記で得られたPTA0.0637g(0.1439mmol)と、式(2)に示す5−スルホサリチル酸(5−SSA)(和光純薬工業(株)製)0.1256g(0.5757mmol)とを、窒素雰囲気下、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にシクロヘキサノール(CHA)6.2050g、次いでブチルセロソルブ(BCS)4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスAを調製した(固形分1.5%)。
【0063】
【化2】

【0064】
[参考例2]電荷輸送性ワニスBの調製
PTA0.0637g(0.1439mmol)と、式(3)に示すナフタレンジスルホン酸オリゴマー(NSO−2)0.5601g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI8.1926gに完全に溶解させた。得られた溶液に2,3−ブタンジオール12.2889g、次いでイソプロピルアルコール20.4814gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスBを調製した(固形分1.5%)。
なお、NSO−2は、国際公開第2006/025342号パンフレットに従って合成した(収率81%)。
【0065】
【化3】

【0066】
[実験例1]
[1]基材の洗浄・表面処理
被塗布物である基材には、インジウム錫酸化物(ITO)付きガラス基板を用いた。基板の厚さは0.7mmであり、サイズは、メタルマスクと同じ50mm×50mmものを使用した。
基材を、クラス1000のクリーンルーム内で純水、中性洗剤、純水リンス、純水中で超音波、電子工業用アセトン、電子工業用イソプロピルアルコールの順で洗浄し、乾燥エアで乾燥させた後、さらにクリーンオーブン中で完全に乾燥させた。乾燥後の基材を、UV−O3洗浄装置内に導入し、表面処理を行った。表面処理後、ITO表面は極性項が上がり、水の接触角は5°以下となった。
【0067】
[2]スプレー塗布
上記で得られた基材90を、スプレー塗布装置内に導入し、基材90上に、メタルマスク1を載置した。
続いて、薬液タンク101およびスプレーヘッド102を備えた薬液噴射装置100から、ワニス110として電荷輸送性ワニスAをスプレー塗布し、薄膜パターン作製を行った。この場合、スプレー塗布条件Aは、XYスキャン範囲が200mm×200mm、ピッチが12mm、ステージからヘッドまでの距離が80mm、スキャン速度が400mm/sec、薬液量が1.0mL/min、エア量が5.0L/min、スプレー後待機時間が30sec、タンク内圧安定時間が10sec、スプレー塗布待機時間が10secである。
【0068】
スプレー塗布後、ウェット膜付き基材を、ホットプレートにて80℃で5分乾燥した後、オーブンにて200℃で1時間焼成し、厚み15nmの薄膜を得た。
焼成後、十分に余熱をとった基材の成膜面を光学顕微鏡で観察した。観察した場所はマスク部と非マスク部とのエッジ部分であり、エッジの一方の側が基材、他方の側が膜の部分である。
スプレー塗布後のメタルマスク1は、洗浄を行わずに、再び薄膜パターン作製工程に移行した。エッジ部分の成膜面に、図13に示されるような、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
図12に12回目の工程で得られた薄膜のエッジ部分の成膜面を、図13に欠陥が発生した薄膜のエッジ部分の成膜面を示す。
【0069】
図12に示されるように、本来、エッジ部分には基材と膜との境界領域が1つしか存在しないが、メタルマスク1の塗布液付着面10Bに付着したワニス110が、メタルマスク1の被塗布物当接面10Aまで到達すると、基材90とメタルマスク1の隙間に毛細管現象によりワニス110が浸入し、図13に示されるような複数の境界領域が発生する。
【0070】
[実験例2]
メタルマスク2を用いた以外は、実験例1と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0071】
[実験例3]
メタルマスク3を用いた以外は、実験例1と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0072】
[比較実験例1]
図10に示されるメタルマスク8を用いた以外は、実験例1と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
なお、メタルマスク8は、被塗布物当接面80Aおよび塗布液付着面80Bを有するマスク本体80に、メタルマスク1と同一の大きさおよび深さのパターン形成用孔40が4つ形成されたものであり、上述した溝も凹部も有しないものである。また、メタルマスク8は、平面視で、一片の長さ50mmの正方形である。
【0073】
[比較実験例2]
図11に示されるメタルマスク9を用いた以外は、実験例1と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
なお、メタルマスク9は、被塗布物当接面85Aおよび塗布液付着面85Bを有するマスク本体85に、メタルマスク1と同一の大きさおよび深さのパターン形成用孔40が4つ形成されるとともに、パターン形成用孔40の被塗布物当接面85A側の開口端周囲に凹部42が形成されているが、溝を有しないものである。また、メタルマスク9は、平面視で、一片の長さ50mmの正方形である。
【0074】
上記実験例1〜3、比較実験例1,2において、欠陥が生じた塗布回数を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
[実験例4]
スプレー塗布条件を下記スプレー塗布条件Bに変更した以外は、実験例1と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
なお、スプレー塗布条件AとBは薬液量が異なるだけである。スプレー塗布条件Bのほうが、薬液量が多いため、基材やメタルマスクに付着する薬液も多くなる。スプレー塗布条件Bで得られた薄膜は30nmである。
[スプレー塗布条件B]
XYスキャン範囲が200mm×200mm、ピッチが12mm、ステージからヘッドまでの距離が80mm、スキャン速度が400mm/sec、薬液量が3.0mL/min、エア量が5.0L/min、スプレー後待機時間が30sec、タンク内圧安定時間が10sec、スプレー塗布待機時間が10secである。
【0077】
[実験例5]
スプレー塗布条件を下記スプレー塗布条件Bに変更した以外は、実験例2と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0078】
[実験例6]
スプレー塗布条件を下記スプレー塗布条件Bに変更した以外は、実験例3と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0079】
[比較実験例3]
スプレー塗布条件を下記スプレー塗布条件Bに変更した以外は、比較実験例1と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0080】
[比較実験例4]
スプレー塗布条件を下記スプレー塗布条件Bに変更した以外は、比較実験例2と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0081】
上記実験例4〜6、比較実験例3,4において、欠陥が生じた塗布回数を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
[実験例7]
電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、実験例1と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0084】
[実験例8]
電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、実験例2と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0085】
[実験例9]
電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、実験例3と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0086】
[比較実験例5]
電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、比較実験例1と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0087】
[比較実験例6]
電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、比較実験例2と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0088】
上記実験例7〜9、比較実験例5,6において、欠陥が生じた塗布回数を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
[実験例10]
電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、実験例4と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0091】
[実験例11]
電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、実験例5と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0092】
[実験例12]
電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、実験例6と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0093】
[比較実験例7]
電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、比較実験例3と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0094】
[比較実験例8]
電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、比較実験例4と同様にし、毛細管現象による欠陥が発生するまで連続して薄膜パターンを作製した。
【0095】
上記実験例10〜12、比較実験例7,8において、欠陥が生じた塗布回数を表4に示す。
【0096】
【表4】

【0097】
スプレー塗布により得られた成膜面を光学顕微鏡で観察して欠陥発生回数を調べた表1〜4の結果から、溝および凹部を備えたメタルマスクは、洗浄・交換なしに繰り返し使用した場合でも、作製された薄膜パターンに欠陥が発生しにくいことがわかる。
したがって、メタルマスクの洗浄や交換回数を大幅に減らすことが可能となり、メタルマスクを利用する電子デバイスの作製ラインのランニングコストの低減化およびランニングタイムの短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1実施形態に係るメタルマスクを示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るメタルマスクを示す上面図(a)および底面図(b)である。
【図3】第1実施形態に係るメタルマスクを被塗布物に載置した状態を示す、図1(a)におけるIII−III線に沿う端面図である。
【図4】第1実施形態のメタルマスクを用いたスプレー塗布工程の模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るメタルマスクを示す図3相当の端面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るメタルマスクを示す図3相当の端面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るメタルマスクを示す図3相当の端面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係るメタルマスクを示す図3相当の端面図である。
【図9】本発明の第6実施形態に係るメタルマスクを示す図3相当の端面図である。
【図10】比較例に係るメタルマスクを示す図3相当の端面図である。
【図11】比較例に係るメタルマスクを示す図3相当の端面図である。
【図12】欠陥のない薄膜のエッジ部分の成膜面を示す光学顕微鏡写真である。
【図13】欠陥が発生した薄膜のエッジ部分の成膜面を示す光学顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0099】
1,2,3,5,6,7 メタルマスク
10,20,30,50,60,70 マスク本体
10A,20A,30A,50A,60A,70A 被塗布物当接面
10B,20B,30B,50B,60B,70B 塗布液付着面
40 パターン形成用孔
40A 被塗布物当接面側の開口端周囲
41 内壁
42 凹部
43 溝
11,21,31,51,61,71 第1部材
11A,21A,31A,51A,61A,71A 上面
11C,21C,31C,51C,61C,71C 被塗布物当接面側のパターン形成用孔
12,22,32,52,62,72 第2部材
12A,22A,32A,52A,62A,72A 下面
12C,22C,32C,52C,62C,72C 塗布液付着面側のパターン形成用孔
12B,22B,32B,51B,62B 段状部
63,73 第3部材
63A,73A 第1部材当接面
63B,73B 第2部材当接面
63C,73C 中間部のパターン形成用孔
731 上側部材
732 下側部材
732A 下側部材の上面
731C 上側部材のパターン形成用孔
732C 下側部材のパターン形成用孔
90 基材(被塗布物)
110 電荷輸送性ワニス(塗布液)
D 上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布物の表面に当接する被塗布物当接面およびこの面とは反対側の塗布液付着面を有するマスク本体と、前記被塗布物当接面と塗布液付着面とを連通して前記マスク本体に設けられた少なくとも1個のパターン形成用孔と、を備え、
前記パターン形成用孔の前記被塗布物当接面側の開口端周囲には、前記マスク本体と前記被塗装物との間に所望の隙間を形成する凹部が設けられ、かつ、前記パターン形成用孔の内壁には、前記塗布液付着面に付着した塗布液が当該塗布液付着面から流れ落ちて前記被塗布物当接面まで到達することを防ぐ当該内壁を周回する溝が1つ以上設けられていることを特徴とするスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項2】
前記溝が、前記パターン形成用孔における内壁の上下方向の中央部から前記凹部底面までの間に設けられている請求項1記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項3】
前記溝は、その深さ方向が前記被塗布物当接面と平行になるように設けられている請求項1または2記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項4】
前記被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側の前記パターン形成用孔が形成された第1部材と、
前記塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側の前記パターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の前記下面側の開口端周囲に段状部が形成された第2部材と、を備え、
前記第1部材の上面と前記第2部材の下面とが、それぞれのパターン形成用孔の中心が一致する態様で積層されて前記第2部材の段状部と前記第1部材の上面とで前記溝が構成される請求項1〜3のいずれか1項記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項5】
前記被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側の前記パターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の前記上面側の開口端周囲に段状部が形成された第1部材と、
前記塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側の前記パターン形成用孔が形成された第2部材と、を備え、
前記第1部材の上面と前記第2部材の下面とが、それぞれのパターン形成用孔の中心が一致する態様で積層されて前記第1部材の段状部と前記第2部材との下面とで前記溝が構成される請求項1〜3のいずれか1項記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項6】
前記被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側の前記パターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の前記上面側の開口端周囲に第1の段状部が形成された第1部材と、
前記塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側の前記パターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の前記下面側の開口端周囲に第2の段状部が形成された第2部材と、を備え、
前記第1部材の上面と前記第2部材の下面とが、それぞれのパターン形成用孔の中心が一致する態様で積層されて前記第1の段状部と第2の段状部とで前記溝が構成される請求項1〜3のいずれか1項記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項7】
前記被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側の前記パターン形成用孔が形成された第1部材と、
前記塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側の前記パターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の前記下面側の開口端周囲に段状部が形成された第2部材と、
第1部材当接面および第2部材当接面を有し、中間部の前記パターン形成用孔が形成された第3部材と、を備え、
前記第1部材のパターン形成用孔の孔径が、前記第2および第3部材のパターン形成用孔の孔径よりも大きく、
前記第1部材、第2部材および第3部材が、前記第1部材の上面と前記第2部材の下面とが前記第3部材に接する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔の中心が一致する態様で積層されて前記段状部と前記第3部材の第2部材当接面とで前記溝が構成されるとともに、前記第1部材のパターン形成用孔と前記第3部材の第1部材当接面とで前記凹部が構成される請求項1〜3のいずれか1項記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項8】
前記被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側の前記パターン形成用孔が形成された第1部材と、
前記塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側の前記パターン形成用孔が形成された第2部材と、
第1部材当接面および第2部材当接面を有し、中間部の前記パターン形成用孔が形成されるとともに、このパターン形成用孔の第2部材当接面側の開口端周囲に段状部が形成された第3部材と、を備え、
前記第1部材のパターン形成用孔の孔径が、前記第2および第3部材のパターン形成用孔の孔径よりも大きく、
前記第1部材、第2部材および第3部材が、前記第1部材の上面と前記第2部材の下面とが前記第3部材に接する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔の中心が一致する態様で積層されて前記段状部と前記第2部材の下面とで前記溝が構成されるとともに、前記第1部材のパターン形成用孔と前記第3部材の第1部材当接面とで前記凹部が構成される請求項1〜3のいずれか1項記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項9】
前記被塗布物当接面および上面を有し、被塗布物当接面側の前記パターン形成用孔が形成された第1部材と、
前記塗布液付着面および下面を有し、塗布液付着面側の前記パターン形成用孔が形成された第2部材と、
第1部材当接面および第2部材当接面を有し、中間部の前記パターン形成用孔が形成された第3部材と、を備え、
前記第3部材は、前記第2部材側に位置する上側部材と、前記第1部材側に位置する下側部材とから構成され、この上側部材の前記パターン形成用孔の孔径が、前記第2部材のパターン形成用孔および前記下側部材のパターン形成用孔のそれぞれの孔径よりも小さく、かつ、前記第1部材のパターン形成用孔の孔径が、前記下側部材のパターン形成用孔の孔径よりも大きく、
前記第1部材、第2部材および第3部材が、前記第1部材の上面と前記第2部材の下面とが前記第3部材に接する態様、かつ、それぞれのパターン形成用孔の中心が一致する態様で積層されて、前記第2部材の下面と、前記上側部材のパターン形成用孔と、前記下側部材の上面とで前記溝が構成され、前記第1部材のパターン形成用孔と前記第3部材の第1部材当接面とで前記凹部が構成される請求項1〜3のいずれか1項記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項10】
前記第1部材および第2部材の少なくとも1つが、磁性材料から構成される請求項4〜6のいずれか1項記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項11】
前記第1部材、第2部材および第3部材の少なくとも1つが、磁性材料から構成される請求項7〜9のいずれか1項記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項12】
前記第1部材が、磁性材料から構成される請求項4〜9のいずれか1項記載のスプレー塗布用メタルマスク。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のスプレー塗布用メタルマスクを、被塗布物上に、前記被塗布物当接面が前記被塗布物に接する態様で載置し、前記パターン形成用孔を通して被塗布物表面に薄膜形成用塗布液をスプレー塗布する工程を含むことを特徴とする薄膜作製方法。
【請求項14】
前記塗布液が、電荷輸送性ワニスである請求項13記載の薄膜作製方法。
【請求項15】
被塗布物の表面に当接する被塗布物当接面およびこの面とは反対側の塗布液付着面を有するマスク本体と、前記被塗布物当接面と塗布液付着面とを連通して前記マスク本体に設けられた少なくとも1個のパターン形成用孔と、を備えるスプレー塗布用メタルマスクの前記塗布液付着面から塗布液が流れ落ちて前記被塗布物当接面まで到達するのを防ぐ塗布液流出防止方法であって、
前記パターン形成用孔の内壁に、当該内壁を周回する溝を1つ以上設けることを特徴とする塗布液流出防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−237964(P2008−237964A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78199(P2007−78199)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】